説明

内燃機関の制御装置

【課題】混合燃料を使用する内燃機関において、PMの発生を抑制しつつ未燃燃料を低減する。
【解決手段】内燃機関の制御装置(100)は、軽油及びアルコールを夫々単独又は混合して燃料とする内燃機関(200)を制御する。内燃機関の制御装置は、燃料中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段(420)と、内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段(430)と、燃料の噴射圧力を変更可能な燃料圧力調整手段(450)と、燃料中のアルコール濃度が高いほど、且つ内燃機関の負荷が低いほど、燃料の噴射圧力を低くするように燃料圧力調整手段を制御する制御手段(440)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油及びアルコールを混合した混合燃料を使用可能な内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関では、複数種類の燃料を混合した混合燃料(例えば、軽油及びアルコールの混合燃料)を使用するものが知られている。混合燃料は、例えば異なる燃料タンクに夫々貯留された後に混合されることで、混合比率が可変とされる場合がある。この場合、混合燃料の混合比率は、内燃機関の運転状況等の各種条件に応じて適宜決定される。例えば特許文献1では、一方の燃料のみが排気ガス性状を悪化させるほどに過剰に噴射されることを防止するため、混合比率が一定濃度の範囲となるよう制御するという技術が提案されている。
【0003】
他方で混合燃料は、混合される燃料の種類や混合比率に応じて噴射量が制御される場合がある。例えば特許文献2では、内燃機関の始動時の温度が所定範囲内である場合にアルコールを含む混合燃料の揮発性が高くなるという現象が起きるため、混合燃料がアルコールを含むか否かに応じて噴射量を補正するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−307307号公報
【特許文献2】特開2009−079582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、軽油及びアルコールを混合した混合燃料では、軽油の割合を少なくすると燃焼後の黒煙発生を抑制可能であるが、軽油が少なくなるほど着火性は悪くなる傾向にある。このように、混合燃料は、混合比率が変化することで特性も変化するため、混合比率に応じた燃料制御を行うことが好ましい。言い換えれば、混合比率に応じた燃料制御を行うことができなければ、実践上の様々な不都合が生じてしまうおそれがある。具体的には、上述した軽油及びアルコールを混合した混合燃料を使用する場合に適切な燃料制御が行われないとすれば、混合気の過希薄化や壁面付着により、未燃燃料が増大してしまうおそれがある。
【0006】
ここで特許文献1では、混合燃料の混合比率の制御について記載されているものの、予め混合された混合燃料に対する噴射量制御については何ら記載されていない。また特許文献2では、アルコール燃料を含む混合燃料の始動機関における噴射量の制御について記載されているものの、上述した混合気の過希薄化や壁面付着の発生については何ら考慮されていない。よって、これらの技術には、混合燃料の混合比率に応じた適切な燃料制御が行えず、結果的に未燃燃料の増大等の不都合を回避するのが困難であるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、アルコールを含む混合燃料を使用する内燃機関において、未燃燃料を低減することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内燃機関の制御装置は上記課題を解決するために、軽油及びアルコールを夫々単独又は混合して燃料とする内燃機関の制御装置であって、前記燃料中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、前記内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段と、前記燃料の噴射圧力を変更可能な燃料圧力調整手段と、前記燃料中のアルコール濃度が高いほど、且つ前記内燃機関の負荷が低いほど、前記燃料の噴射圧力を低くするように前記燃料圧力調整手段を制御する制御手段とを備える。
【0009】
本発明に係る内燃機関は、例えば車両に搭載される内燃機関であり、軽油及びアルコールを夫々単独又は混合して燃料として使用することが可能とされている。即ち、本発明に係る内燃機関は、軽油及びアルコールが様々な混合比率で混合された混合燃料によって運転することが可能である。内燃機関は、上述した混合燃料が気筒内部の燃焼室において燃焼した際に発生する力を、ピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成されている。
【0010】
本発明に係る内燃機関の制御装置は、上述した内燃機関を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
【0011】
本発明に係る内燃機関の制御装置の動作時には、アルコール濃度検出手段によって、燃料中のアルコール濃度が検出される。アルコール濃度検出手段は、例えば混合燃料が貯留される燃料タンクに設けられるアルコール濃度センサ等を含むものとして構成される。アルコール濃度検出手段は、燃料中のアルコール濃度を具体的な数値として検出するものであってもよいし、燃料中のアルコール濃度が予め設定された基準値より高いか低いかを検出する程度のものであってもよい。
【0012】
本発明に係る内燃機関の制御装置の動作時には更に、負荷検出手段によって、内燃機関の負荷が検出される。負荷検出手段は、例えばスロットル開度、吸入空気量又はアクセル開度等を検出するセンサ等を含むものとして構成される。負荷検出手段は、内燃機関の負荷状態を具体的に数値化して検出するものであってもよいし、内燃機関の負荷状態が予め設定された基準より高いか低いかを検出する程度のものであってもよい。
【0013】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、上述したアルコール濃度検出手段によって検出されたアルコール濃度、及び負荷検出手段によって検出された内燃機関の負荷に応じて、燃料の噴射圧力が調整される。具体的には、燃料の噴射圧力を変更可能な燃料圧力調整手段が、アルコール濃度及び内燃機関の負荷に応じて噴射圧力を決定する制御手段によって制御される。
【0014】
制御手段は特に、燃料中のアルコール濃度が高いほど、且つ内燃機関の負荷が低いほど、燃料の噴射圧力を低くするように燃料圧力調整手段を制御する。制御手段は、例えば内燃機関の負荷と燃料の噴射圧力との相関を示すマップを、アルコールの濃度別に複数記憶している。そして制御手段は、検出されたアルコール濃度に応じて適宜マップを切替えて燃料の噴射圧力を決定する。
【0015】
ここでアルコールは、軽油と比べると、低セタン価であるため着火に要する時間が長い、低沸点なため燃料気化が早い、低動粘度及び低表面張力により噴霧が微粒化し気化し易いという特性を有している。このため、混合燃料におけるアルコールの混合比率(言い換えれば、アルコール濃度)が増加すると、混合気の希薄化や燃料の燃焼室壁面への付着が抑制できる。特に、圧縮端温度が低い低負荷条件では、このような効果が顕著に発揮される。
【0016】
従って、アルコール濃度が高く、内燃機関の負荷が低い場合に燃料の噴射圧力を低下させれば、未燃燃料を低減することができる。尚、この背反として、混合気形成が悪化するが、アルコールは軽油と比べてPM(Particulate Matter:粒子状物質)の生成量が少ない。よって、アルコール濃度が高い場合は、燃料の噴射圧力を低下させたとしても、PMの発生を抑制することができる。
【0017】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、アルコールを含む混合燃料を使用する内燃機関において、PMの発生を抑制しつつ未燃燃料を低減することが可能である。
【0018】
本発明の内燃機関の制御装置の一態様では、前記燃料の給油を検出する給油検出手段を備え、前記アルコール濃度検出手段は、前記給油が検出される度に前記燃料中のアルコール濃度を検出する。
【0019】
この態様によれば、内燃機関への給油は、給油検出手段によって監視された状態となる。給油検出手段は、例えば燃料タンクにおける燃料の貯留量を検出するセンサ等を含むものとして構成されており、燃料の貯留量が増加した場合に給油を検出する。
【0020】
本態様では特に、アルコール検出手段は、上述した給油検出手段によって給油が検出された場合にアルコール濃度を検出する。即ち、アルコール検出手段は、常時或いは定期的にアルコール濃度を検出する訳ではなく、給油が検出された場合(より具体的には、給油が終わった後)にアルコール濃度を検出する。
【0021】
燃料タンクに貯留されている混合燃料のアルコール濃度は、異なる混合比率の混合燃料が給油された場合に変動する。言い換えれば、混合燃料のアルコール濃度は、給油が行われない限り大きく変動しないと考えられる。従って、給油が検出された場合にアルコール濃度を検出するようにすれば、アルコール濃度が変化し得るタイミングで効率的に検出を行うことができる。
【0022】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】エンジンシステムの全体構成を示す概略図である。
【図2】ECUの構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る内燃機関の制御装置による燃料噴射圧力の制御マップ変更処理を示すフローチャートである。
【図4】アルコール濃度と燃料噴射圧力との相関を示すグラフである。
【図5】実施形態に係る内燃機関の制御装置による燃料噴射制御処理を示すフローチャートである。
【図6】エンジン負荷と燃料噴射圧力との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、本実施形態に係るエンジンシステム全体の構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、エンジンシステムの全体構成を示す概略図である。尚、図1では、説明の便宜上、エンジンシステムを構成する各要素のうち本実施形態と関わりの深いもののみを選択的に図示しており、その他の要素については適宜図示を省略してある。
【0026】
図1において、本実施形態に係るエンジンシステムは主に、ECU100と、コンプレッサ110と、タービン120と、エンジン200と、燃料タンク300とを備えて構成されている。
【0027】
ECU100は、本発明の「内燃機関の制御装置」の一例であり、例えばCPU、ROM及びRAM等を備え、エンジンシステムの動作全体を制御する電子制御ユニットである。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って各種制御を実行可能に構成されている。ECU100の具体的な構成については、後に詳述する。
【0028】
コンプレッサ110は、流入された空気を圧縮し、圧縮空気として下流に供給する。タービン120は、エンジン200から排気管215を介して供給された排気を動力として回転する。タービン110は、シャフトを介してコンプレッサ110に連結されており、相互に一体に回転することが可能に構成されている。即ち、タービン120とコンプレッサ110とによって、ターボチャージャが構成されている。
【0029】
エンジン200は、例えば自動車等の車両の動力源たるディーゼルエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。エンジン200は、シリンダブロック内に気筒201が4本直列に配置されてなる直列4気筒エンジンである。
【0030】
エンジン200における吸気側(即ち、気筒201より上流側)には、エアクリーナ101、吸気制御弁103、コンプレッサ110、インタークーラ113及びスロットル弁208が設けられている。
【0031】
エアクリーナ101は、外部から吸入した空気を浄化し、吸気管102を介して、コンプレッサ110へと供給する。エアクリーナから供給される空気量は、吸気制御弁103によって制御される。コンプレッサ110の下流に設けられたインタークーラ113は、吸入空気を冷却して空気の過給効率を上昇させることが可能に構成されている。
【0032】
インタークーラ113の下流には、スロットルバルブ208が設置されている。スロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。スロットルバルブ208は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
【0033】
吸気側から気筒201内部に導かれた混合気は、圧縮着火方式によって点火せしめられ、気筒201内で爆発工程が行われる。爆発工程が行われると、燃焼済みの混合気(一部未燃状態の混合気を含む)は、爆発工程に続く排気工程において、不図示の排気ポートに排出される。排気ポートに排出された排気は、排気管215に導かれる。
【0034】
エンジン200における排気側(即ち、気筒201より下流側)には、EGR管117と、HPLEGR制御弁118と、タービン120と、排気浄化触媒122とが設けられている。
【0035】
EGR管117は、エンジン200から排出された排気管215における排気を、エンジン200の吸気側である吸気管207に還流可能である。EGR管117には、EGR制御弁118が設けられており、EGRガスの量が調節可能とされている。EGR制御弁118は、例えば全開及び全閉の二値的な開閉状態を採り得る電磁開閉弁であり、ECU100と電気的に接続されることによって、その開閉状態がECU100により制御される構成となっている。
【0036】
排気浄化触媒122は、排気管121上に設けられており、タービン120を通過した排気中に含まれるHC(炭化水素)、CO(二酸化炭素)及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化する。
【0037】
燃料タンク300は、エンジン200の燃料となる軽油及びアルコールの混合燃料を貯留している。燃料タンク300に貯留された燃料は、燃料供給管310を介して、気筒201に燃料を噴射するインジェクタ210へと供給される。尚、インジェクタ210における燃料噴射圧力は可変であり、ECU100において制御されている。
【0038】
燃料タンク300に貯留されている燃料の量は、燃料センサ320によって検出され、ECU100に伝達可能とされている。また、燃料のアルコール濃度が、アルコール濃度センサ330によって検出され、ECU100に伝達可能とされている。尚、燃料のアルコール濃度は、燃料タンク300ではなく、燃料供給管310等において検出可能とされてもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置であるECU100の具体的な構成について、図2を参照して説明する。ここに図2は、ECUの構成を示すブロック図である。
【0040】
図2において、ECU100は、給油検出部410と、アルコール濃度検出部420と、エンジン負荷検出部430と、燃料噴射圧力決定部440と、インジェクタ制御部450とを備えている。
【0041】
給油検出部410は、本発明の「給油検出手段」の一例であり、燃料タンク300に対する給油を検出する。具体的には、給油検出部410は、燃料タンク300における燃料の残量を燃料センサ320によって検出し、燃料の残量が増加した場合に給油が行われたことを検出する。給油検出部410による給油の検出は、アルコール濃度検出部420へと伝達可能とされている。
【0042】
アルコール濃度検出部420は、本発明の「アルコール濃度検出手段」の一例であり、燃料タンク300内に貯留されている燃料のアルコール濃度を検出する。アルコール濃度検出部420は、燃料タンク300に設けられたアルコール濃度センサ330を用いて燃料のアルコール濃度を検出する。尚、アルコール濃度は直接的に検出されるのではなく、間接的に算出されるような値(即ち、推定値)であってもよい。検出されたアルコール濃度は、燃料噴射圧力決定部440へと伝達可能とされている。
【0043】
エンジン負荷検出部430は、本発明の「負荷検出手段」の一例であり、エンジン200の負荷を検出する。エンジン負荷検出部430は、例えばスロットル開度、吸入空気量又はアクセル開度等を用いてエンジン200の負荷を検出(言い換えれば、推定)する。検出されたエンジン200の負荷は、燃料噴射圧力決定部440へと伝達可能とされている。
【0044】
燃料噴射圧力決定部440は、本発明の「制御手段」の一例であり、インジェクタ210から噴射される燃料の圧力を決定する。具体的には、燃料噴射圧力決定部440は、アルコール濃度検出部420において検出された燃料のアルコール濃度、及びエンジン負荷検出部430において検出されたエンジン200の負荷に応じて、燃料の噴射圧力を決定する。燃料噴射圧力決定部440は、例えば燃料のアルコール濃度、エンジン200の負荷及び燃料の噴射圧力の相関を示すマップや数式等を記憶しており、それらを用いて燃料噴射圧力を決定する。
【0045】
燃料噴射圧力制御部450は、本発明の「燃料圧力調整手段」の一例であり、インジェクタ210から噴射される燃料の圧力を調整可能とされている。燃料噴射圧力制御部450は、上述した燃料噴射圧力決定部440において決定された噴射圧力を実現するようにインジェクタ210等を制御する。
【0046】
上述した各部位を含んで構成されたECU100は、一体的に構成された電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各部位は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置であるECU100が行う処理及びその効果について、図3から図6を参照して説明する。
【0048】
先ず、アルコール濃度に基づく燃料噴射圧力の制御マップの変更処理について、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置による燃料噴射圧力の制御マップ変更処理を示すフローチャートである。また図4は、アルコール濃度と燃料噴射圧力との相関を示すグラフである。
図3において、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作時には、先ず給油検出部410によって燃料が給油されたか否かが検出される(ステップS101)。尚、給油が検出されていない場合(ステップS101:NO)、以下に示す各処理は省略される。即ち、以下に示す各処理は、給油が行われたことを開始条件としている。
【0049】
給油検出部410によって燃料の給油が検出されると(ステップS101:YES)、アルコール濃度検出部420によって燃料のアルコール濃度が検出される(ステップS102)。燃料タンク300に貯留されている混合燃料のアルコール濃度は、異なる混合比率の混合燃料が給油された場合に変動する。言い換えれば、混合燃料のアルコール濃度は、給油が行われない限り大きく変動しないと考えられる。従って、給油が検出された場合にアルコール濃度を検出するようにすれば、アルコール濃度が変化し得るタイミングで効率的に検出を行うことができる。
【0050】
アルコール濃度が検出されると、燃料噴射圧力決定部440では、検出されたアルコール濃度に基づいて、燃料噴射圧力を決定するための制御マップが変更される(ステップS103)。具体的には、燃料噴射圧力決定部440は、燃料噴射圧力を決定するための制御マップを、アルコール濃度別に複数記憶している。そして燃料噴射圧力決定部440は、複数の制御マップの中から検出されたアルコール濃度に対応する制御マップを選択する。これにより、アルコール濃度に応じた燃料噴射制御が行われることになる。
【0051】
ここで特に、燃料噴射圧力を決定するための制御マップは、アルコール濃度が高くなるほど、燃料噴射圧力が低くなるように夫々設定されている。よって、アルコール濃度と燃料噴射圧力とは、例えば図4に示すような関係となる。
【0052】
次に、燃料噴射圧力の制御マップに基づいた燃料噴射制御処理について、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置による燃料噴射制御処理を示すフローチャートである。また図6は、エンジン負荷と燃料噴射圧力との相関を示すグラフである。
【0053】
図5において、燃料噴射制御を行う場合には、先ずエンジン負荷検出部430によってエンジン200の負荷が検出される(ステップS201)。
【0054】
エンジン200の負荷が検出されると、燃料噴射圧力決定部440では、制御マップを用いた燃料噴射圧力の決定が行われる(ステップS202)。具体的には、燃料噴射圧力決定部440が用いる制御マップは、図6に示すようにエンジン200の負荷と燃料噴射圧力との相関を示すマップであり、エンジン200の負荷が低くなるほど、燃料噴射圧力が低い値として決定される。
【0055】
尚、図6に示すマップは、上述したように、複数のマップの中からアルコール濃度に応じて選択されたものである。よって、燃料噴射圧力は、アルコール濃度が高いほど、且つエンジン200の負荷が低くなるほど、より低い値として決定される。
【0056】
燃料噴射圧力決定部440において燃料噴射圧力が決定されると、燃料噴射圧力調整部450では、決定された値に応じた燃料噴射制御が行われる。これにより、燃料を噴射するインジェクタ210では、燃料噴射圧力決定部440において決定された噴射圧力が実現される。
【0057】
ここで、混合燃料に含まれるアルコールは、軽油と比べると、低セタン価であるため着火に要する時間が長い、低沸点なため燃料気化が早い、低動粘度及び低表面張力により噴霧が微粒化し気化し易いという特性を有している。このため、混合燃料におけるアルコールの混合比率(言い換えれば、アルコール濃度)が増加すると、混合気の希薄化や燃料の燃焼室壁面への付着が抑制できる。特に、圧縮端温度が低い低負荷条件では、このような効果が顕著に発揮される。
【0058】
従って、上述したように、アルコール濃度が高く、且つ内燃機関の負荷が低い場合に燃料の噴射圧力を低下させれば、未燃燃料を低減することができる。尚、この背反として、混合気形成が悪化するが、アルコールは軽油と比べてPM生成量が少ない。よって、アルコール濃度が高い場合は、燃料の噴射圧力を低下させたとしても、PMの発生を抑制することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、アルコールを含む混合燃料を使用する内燃機関において、PMの発生を抑制しつつ未燃燃料を低減することが可能である。
【0060】
尚、上述した実施形態では、アルコール濃度に応じて制御マップが選択され、エンジン200の負荷に応じて燃料噴射圧力を決定するという方法について説明したが、アルコール濃度が高いほど、且つエンジン200の負荷が低くなるほど、燃料噴射圧力が低い値として決定されるような方法であれば、他の方法を用いてもよい。即ち、燃料噴射圧力を決定するための具体的な方法については、特に限定されない。
【0061】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
100…ECU、101…エアクリーナ、110…コンプレッサ、113…インタークーラ、117…EGR管、118…EGR制御弁、120…タービン、122…排気浄化触媒、200…エンジン、201…気筒、207…吸気管、208…スロットル弁、210…インジェクタ、300…燃料タンク、310…燃料供給管、320…燃料センサ、330…アルコール濃度センサ、410…給油検出部、420…アルコール濃度検出部、430…エンジン負荷検出部、440…燃料噴射圧力決定部、450…燃料噴射圧力制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽油及びアルコールを夫々単独又は混合して燃料とする内燃機関の制御装置であって、
前記燃料中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、
前記内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段と、
前記燃料の噴射圧力を変更可能な燃料圧力調整手段と、
前記燃料中のアルコール濃度が高いほど、且つ前記内燃機関の負荷が低いほど、前記燃料の噴射圧力を低くするように前記燃料圧力調整手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記燃料の給油を検出する給油検出手段を備え、
前記アルコール濃度検出手段は、前記給油が検出される度に前記燃料中のアルコール濃度を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255422(P2012−255422A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130226(P2011−130226)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】