説明

内燃機関の排気微粒子測定装置に関する。

【課題】測定精度が向上した内燃機関の排気微粒子測定装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路に配置された酸化触媒73と、酸化触媒73を加熱して酸化触媒73に堆積したPMを燃焼させるヒータ71と、酸化触媒73の温度を検出する温度センサ72と、PMの燃焼時における酸化触媒73の温度に基づいてPMの堆積量を推定するECU4とを備え、ECU4は、ヒータ71の作動時にPMの排出が抑制されるように機関運転状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気微粒子測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気微粒子(Particulate Matter、以下「PM」と称する。)を検出するためのセンサが知られている(特許文献1乃至4参照)。
このようなセンサは、PMが含まれる排気中に酸化触媒を配置し、ヒータなどにより酸化触媒を加熱して酸化触媒に堆積したPMを燃焼させ、その燃焼時の温度上昇に基づいて、酸化触媒に堆積したPMの量を測定するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−221759号公報
【特許文献1】特開2005−337782号公報
【特許文献1】特開2005−226547号公報
【特許文献1】特願2006−135602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなセンサが、内燃機関の排気中に含まれるPMの量を測定するために、内燃機関の排気通路に配置すると、堆積したPMが燃焼されている間に、排気中のPMが新たに堆積する場合があり、PMの測定精度が低下する恐れがある。
【0005】
したがって本発明の目的は、測定精度が向上した内燃機関の排気微粒子測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、内燃機関の排気通路に配置された酸化触媒と、前記酸化触媒を加熱して前記酸化触媒に堆積した排気微粒子を燃焼させる加熱手段と、前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段と、前記排気微粒子の燃焼時における前記酸化触媒の温度に基づいて前記排気微粒子の堆積量を推定する堆積量推定手段とを備え、前記加熱手段の作動時に排気微粒子の排出が抑制されるように機関運転状態を制御する運転状態制御手段を有している、ことを特徴とする内燃機関の排気微粒子測定装置によって達成できる。
このような構成により、加熱手段の作動時に、排気微粒子の排出が抑制されるように機関運転状態が制御されるので、加熱手段の作動時、即ち酸化触媒に堆積した排気微粒子が燃焼している間に、排気中の排気微粒子が更に酸化触媒に堆積することを抑制できる。従って、排気微粒子の測定精度が向上する。
【0007】
また、上記構成において、吸気通路内に燃料を噴射するポート噴射弁と、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射弁とを備え、前記運転状態制御手段は、前記筒内噴射弁による燃料噴射から前記ポート噴射弁による燃料噴射へと切り替える、構成を採用できる。
筒内噴射弁による燃料噴射よりポート噴射弁による燃料噴射の方が排気微粒子の発生が少ないため、排気微粒子の排出を抑制できる。
【0008】
上記構成において、前記運転状態制御手段は、該内燃機関へ燃料を供給するときにメイン噴射に先立って実行されるパイロット噴射を禁止する、構成を採用できる。
パイロット噴射は、排気微粒子の発生原因となってしまう場合があるため、パイロット噴射を禁止することにより、排気微粒子の排出を抑制することができる。
【0009】
また、上記目的は、内燃機関の排気通路に配置された酸化触媒と、前記酸化触媒を加熱して前記酸化触媒に堆積した排気微粒子を燃焼させる加熱手段と、前記加熱手段の作動を制御する加熱制御手段と、前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段と、前記排気微粒子の燃焼時における前記酸化触媒の温度に基づいて前記排気微粒子の堆積量を推定する堆積量推定手段とを備え、排気微粒子の排出が抑制される機関運転状態を検出する運転状態検出手段を有し、前記加熱制御手段は、前記運転状態検出手段の検出結果に応じて、前記加熱手段の作動時を制御する、ことを特徴とする内燃機関の排気微粒子測定装置によって達成できる。
このような構成により、排気微粒子の排出が抑制される機関運転状態において、加熱手段の作動時を制御することにより、排気微粒子の排出が抑制されるときに加熱手段を作動させて、排気微粒子を燃焼させることができる。従って、酸化触媒に堆積した排気微粒子が燃焼している間に、排気中の排気微粒子が更に酸化触媒に堆積することを抑制できるので、排気微粒子の測定精度が向上する。
【0010】
上記構成において、該内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段を備え、前記運転状態検出手段は、前記冷却水温度検出手段の検出結果に応じて、前記機関運転状態を検出する、構成を採用できる。
冷却水温度を検出することによって、内燃機関の温度を推定でき、内燃機関の温度によって、排気中に含まれる排気微粒子は変動するため、冷却水温度に応じて、排気微粒子の排出が抑制される機関運転状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定精度が向上した内燃機関の排気微粒子測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例について説明する。
【0013】
図1は、本実施例に係るエンジンシステムの構成を示した模式図であり、自動車に搭載された多気筒ガソリンエンジン(以下「エンジン」と略す)2及びその電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)4の概略構成を示している。図1では1つの気筒の構成を中心として示している。
ここでエンジン2の出力は変速機(図示略)を介して最終的に車輪に走行駆動力として伝達される。エンジン2には、燃焼室10内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁12と、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁11と、この噴射された燃料に点火する点火プラグ14とがそれぞれ設けられている。
【0014】
燃焼室10に接続している吸気ポート16は吸気バルブ(図示略)の駆動により開閉される。吸気ポート16に接続された吸気通路20の途中にはサージタンク22が設けられ、サージタンク22の上流側にはスロットルモータ24によって開度が調節されるスロットルバルブ26が設けられている。
【0015】
このスロットルバルブ26の開度(スロットル開度TA)により吸気量が調整される。スロットル開度TAはスロットル開度センサ28により検出され、サージタンク22内の吸気圧PMは、サージタンク22に設けられた吸気圧センサ30により検出されて、ECU4に読み込まれている。
また、吸気通路20にはエアフロメータ21が配置されて、吸入空気量をECU4に出力する。
【0016】
燃焼室10に接続している排気ポート32は排気バルブ(図示略)の駆動により開閉される。排気ポート32に接続された排気通路36には、排気ガス中の未燃成分(HC,CO)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを行い、酸素吸蔵、放出機能を有する三元触媒であるスタートキャタリスト38が設けられている。また、排気通路36には、スタートキャタリスト(以下、単に「触媒」という。)38の下流にNOx吸蔵還元触媒40が設けられている。
【0017】
また、排気通路36には、触媒38の上流側に、空燃比センサ64が、触媒38とNOx吸蔵還元触媒40との間に酸素センサ66が、それぞれ配置されている。空燃比センサ64として、触媒38に流入する排気ガスの空燃比に応じた電圧信号を出力するリニア空燃比センサが使用されている。酸素センサ66は、それぞれ排気ガス中の残留酸素濃度に基づき空燃比が理論空燃比よりもリッチかリーンかを感知するセンサである。
【0018】
また、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ41が設けられ、検出したエンジン冷却水温度は、ECU4に出力される。
【0019】
また、NOx吸蔵還元触媒40の下流側には、排気中のPM量を測定するPMセンサPMセンサ70が配置されている。PMセンサ70の詳細については後述する。
【0020】
ECU4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成され、エンジン全体の作動を制御する。
このECU4は、スロットル開度センサ28及び吸気圧センサ30以外に、アクセルペダル44の踏み込み量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ56からの信号を入力している。更に、ECU4は、クランク軸54の回転からエンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ58、空燃比センサ64、酸素センサ66からそれぞれ信号を入力している。
【0021】
ECU4は、上述した各種センサからの検出内容に基づいて、筒内噴射量、ポート噴射量、噴射時期、及びスロットル開度TAを適宜制御する。
【0022】
ECU4は、触媒38の酸化・還元能力を高めるために、触媒38に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射量を、空燃比センサ64の出力、或いはその出力と酸素センサ66の出力とに基づいてフィードバック制御する。
【0023】
次に、PMセンサ70について詳細に説明する。
図2は、PMセンサ70の構成を示した模式図である。
PMセンサ70は、図2に示すように、ヒータ71、温度センサ72、酸化触媒73、等から構成される。
ヒータ71は、酸化触媒73を加熱するための加熱手段として機能する。ヒータ71は、ECU4によってその作動が制御される。
温度センサ72は、ヒータ71と酸化触媒73との間に配置されて酸化触媒73の温度を検出し、その検出値をECU4に出力する。
【0024】
酸化触媒73は、触媒コート74、基材75から構成される。触媒コート74は、基材75の表面に形成されている。基材75は、セラミックにより形成され、触媒コート74は、白金や、パラジウムなどの金属から形成される。また、触媒コート74には、排気ガス中の酸素を吸蔵、放出機能を有するセリアが添加されている。
【0025】
図2に示すように、ヒータ71は、PMを捕集するための凹部が形成され、この凹部が排気ガスの上流側を向くように、PMセンサ70は、排気通路36に配置される。
【0026】
従って、PMセンサ70は、酸化触媒73が排気ガス中のHC、CO成分を酸化(酸素と反応)してCO、HOに変換することができると共に、排気ガス中のPMを捕集することができる。また、酸化触媒73は、前述したように酸素吸蔵、放出機能を有するので、酸化触媒73における酸素吸蔵量が十分である場合に、ヒータ71を作動させることにより、酸化触媒73が加熱されて活性化し、堆積しているPMが酸化触媒73に吸蔵されている酸素を利用して燃焼することとなり、ECU4は、このときの温度センサ72からの出力に基づいてPMの堆積量を推定することができる。
【0027】
図3は、ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
ヒータ71が作動すると、酸化触媒73が加熱されるため、図3に実線で示すように、ヒータ温度が上昇するのに伴って、温度センサ72が検出した酸化触媒73の温度が比例して上昇する。このとき、酸化触媒73にPMが堆積していると、酸化触媒73の温度がPMを燃焼可能な温度までに上昇した時点で、このPMが燃焼する。このPMの燃焼により、図3に示した一点鎖線で示すように、温度センサ72が検出した酸化触媒73の温度が急激に上昇する。そして、PMが全て燃焼すると、温度センサ72の検出温度が急激に低下する。
従って、PMセンサ70の酸化触媒73にPMが堆積した期間の吸入空気量と、このときの温度上昇量とに基づいて、所定のマップを用いてECU4は、PMの堆積量を推定することができる。これにより、排気ガス中に含まれるPM量を測定することができる。
【0028】
次に、このようなPMセンサを用いてPMを検出する際に起こりえる問題点について簡単に説明する。
前述したように、PMセンサ70は、酸化触媒73に堆積したPMを燃焼させ、そのときの温度上昇に基づいてPMの堆積量を推定するものである。従って、PMを燃焼させているときに、排気ガス中に含まれるPMが新たに酸化触媒73に堆積すると、PM量の測定精度が低下する。
【0029】
図4は、PM燃焼中に更にPMが堆積した場合の、ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
図4に示すように、一点鎖線で示した酸化触媒73の温度が上昇してピークを迎えた後に、温度は下降するはずであるが、新たに酸化触媒73にPMが堆積すると、その新たに堆積した分のPMが燃焼し始め、再び酸化触媒73の温度は上昇する。このような状況は、PMの排出の多いエンジン運転領域でPM量の測定を行った場合に発生しうる。従って、本実施例に係るエンジンシステムは、以下の処理を実行することにより、このような不都合が解消される。
【0030】
次に、ECU4が実行するPM量測定処理について説明する。
図5は、ECU4が実行するPM量測定処理の一例を示したフローチャート図である。
ECU4は、PMセンサ70周辺に十分な酸素が存在しているかどうかを判定する(ステップS1a)。酸化触媒73に堆積したPMを十分に燃焼させるためには酸素が必要だからである。
具体的には、例えば、エンジンの運転状態がフューエルカット中であるかどうかに基づいて判定してもよいし、例えば、PMセンサ70周辺に新たに酸素センサを配置してこの酸素センサの出力に基づいて判定してもよい。
【0031】
PMセンサ70周辺に十分な酸素が存在している場合には、ECU4は、ヒータ71を作動させ(ステップS1)、酸化触媒73に堆積したPMの燃焼が終了したかどうかを判定する(ステップS2)。PMの燃焼終了の判定は、図3に示したように、温度センサ72の出力に基づいて判定する。
【0032】
燃焼が終了した場合には、ECU4は、PMセンサ70の作動を停止しする(ステップS3)。以上の処理により、酸化触媒73に既に堆積したPMを燃焼除去することができる。
次に、温度センサ72の出力値が、規定値以下まで低下したかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、温度センサ72の出力値が、PMを燃焼不能な温度以下に低下したかどうかを判定する。
【0033】
温度センサ72の出力値が規定値以下にまで低下すると、ECU4は、吸入空気量の積算を開始する(ステップS5)。具体的には、ECU4は、エアフロメータ21により検出された吸入空気量を積算する。吸入空気量の積算を開始し、吸入空気量の積算値Σgaが、予め設定された所定値Aより大きくなったかどうかを判定する(ステップS6)。小さい場合には、ECU4は、吸入空気量の積算を継続する(ステップS7)。
【0034】
吸入空気量の積算値Σgaが、所定値Aを超えた場合、再度ECU4は、PMセンサ70周辺に十分な酸素が存在しているかどうかを判定する(ステップS8a)。
【0035】
十分な酸素が存在している場合には、ECU4は、現在のエンジンの運転状態が、筒内噴射弁12による直噴運転状態であるかどうかを判定する(ステップS8b)。
直噴運転の場合には、ECU4は、ポート噴射運転へと切り替える(ステップS8c)。ポート噴射運転に切り替えることにより、PMの排出量を、直噴運転状態でのPMの排出量よりも減少させることができる。
【0036】
ステップS8bにおいて直噴運転状態ではない場合、またはステップS8cにおいてポート噴射運転に切り替えられた場合には、ECU4は、ヒータ71を作動させ(ステップS9)、酸化触媒73に堆積したPMを燃焼させる。そして、このときの温度センサ72の出力温度と、吸入空気量の積算値とに基づいて、ECU4は、酸化触媒73へのPMの堆積量を算出する(ステップS10)。
【0037】
次に、酸化触媒73に堆積したPMが完全に燃焼したかどうかでPM量の算出処理が終了したかどうかを判定する(ステップS11)。この場合、酸化触媒73に堆積したPMが燃焼することで酸化触媒73の温度が急激に上昇した後に、酸化触媒73の温度が低下し、図3に実線で示す変化に戻ることにより判定することができる。そして、PM量の算出処理が終了するまで、ECU4は、上記ステップS9、S10、の処理を実行する。
【0038】
その後、PM量の算出処理が終了した場合には、ECU4は、ヒータ71の作動を停止して(ステップS12)、PM量測定処理を終了する。
【0039】
このように、ECU4は、ステップS8bで実行した処理のように、ヒータ71の作動時にPMの排出が抑制されるようにエンジン運転状態を制御する。このような構成により、ヒータ71の作動時、即ち酸化触媒73に堆積したPMが燃焼している間に、排気ガス中のPMが更に酸化触媒73に堆積することを抑制できる。従って、PMの測定精度が向上する。
【0040】
次に、ECU4が実行するPM量測定処理の第1変形例について説明する。
図6は、ECU4が実行するPM量測定処理の第1変形例を示したフローチャートである。
図6に示すように、ECU4は、PMセンサ70周辺に十分な酸素が存在しているかどうかを判定し(ステップS1a)、十分な酸素が存在している場合には、エンジン冷却水の温度が所定温度Tよりも超えているかどうかを判定する(ステップS1b)。具体的には、ECU4は、41からの出力値に基づいて上記判定を行う。ECU4は、エンジン冷却水の温度が所定値Tを超えるまで繰り返し上記ステップSを実行する。
【0041】
エンジン冷却水の温度が所定温度Tを超えた場合には、ステップS1〜S8a、ステップS9〜S12の処理を実行する。
【0042】
このように、エンジン冷却水の温度が所定値Tよりも低い場合には、ECU4は、PM量を測定するための処理の実行はしない。エンジン冷却水の温度が低い場合には、PMの排出量が増えるからである。これにより、酸化触媒73に堆積したPMが燃焼している間に、排気ガス中のPMが更に酸化触媒73に堆積することを抑制できる。
従って、エンジン冷却水の温度が所定値Tよりも高い場合に、ECU4は、ヒータ71を作動させて、PMの燃焼させることになる。
このように、ECU4は、PMの排出が抑制される機関運転状態を検出し、この検出結果によって、ヒータ71を作動させるので、PMの測定精度が向上する。
尚、上記処理は、直噴式エンジンに特に有効である。
【0043】
次に、ECU4が実行する、PM量測定処理の第2変形例について説明する。
図7は、ECU4が実行するPM量測定処理の第2変形例を示したフローチャートである。
尚、第2変形例に係る処理は、上記で説明した処理と異なり、ガソリンエンジンを前提とするものではなく、ディーゼルエンジンを前提とするものである。ディーゼルエンジンの場合には、図1に示したガソリンエンジンの構成と一部分で異なり、ポート噴射弁11、点火プラグ14、三元触媒として機能する触媒38は設けられていない。
【0044】
図7に示すように、ステップS6において、吸入空気量の積算値Σgaが所定値Aより大きくなった場合、ECU4は、現在の運転領域が、PMの排出量が少ない運転領域であるかどうかを判定する(ステップS8d)。
【0045】
図8は、ディーゼルエンジンにおける、当量比と燃焼温度との関係において、PMが発生しやすい領域を示したグラフである。一般的に、エンジンの燃焼状態が不完全燃焼である場合に、PMの排出量が増大する。
従って、ECU4は、現在の運転領域が、PMの排出量が少ない運転領域であるかどうかを判定し、排出量が少ない運転領域である場合には、ECU4は、ヒータ71を作動させる。このように、処理することによっても、PMの測定精度が向上する。
【0046】
現在の運転領域が、PMの排出量が少ない運転領域であるかどうかを判定は、具体的には、ECU4は、エンジン回転数センサから出力されたエンジン回転数や、空燃比センサ64から出力された空燃比、内燃機関の負荷状態や、エアフロメータ21により算出された吸入空気量などに基づいて判定する。
【0047】
次に、ECU4が実行する、PM量測定処理の第3変形例について説明する。
図9は、ECU4が実行するPM量測定処理の第3変形例を示したフローチャートである。
尚、第3変形例に係る処理は、第2変形例に示した処理と同様に、ディーゼルエンジンを前提とするものである。
【0048】
図9に示すように、ステップS8dにおいて、現在の運転領域が、PMの排出量が少ない運転領域である場合には、ECU4は、パイロット噴射を禁止する(ステップS8e)。
パイロット噴射は、PMの発生原因となってしまう場合があるため、パイロット噴射を禁止することにより、PMの排出を抑制することができる。PMが発生する原因としては、主噴射の燃料噴霧が、燃焼室内に残存しているパイロット噴射の火炎もしくは燃焼ガスと重なることが一因と考えられている。
このように、ECU4は、ヒータ71の作動時にPMの排出が抑制されるように機関運転状態を制御する。
【0049】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施例に係るエンジンシステムの構成を示した模式図である。
【図2】PMセンサの構成を示した模式図である。
【図3】ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
【図4】PM燃焼中に更にPMが堆積した場合の、ヒータ温度に対するセンサ温度を示したグラフである。
【図5】ECUが実行するPM量測定処理の一例を示したフローチャート図である。
【図6】ECUが実行するPM量測定処理の第1変形例を示したフローチャートである。
【図7】ECUが実行するPM量測定処理の第2変形例を示したフローチャートである。
【図8】ディーゼルエンジンにおける、当量比と燃焼温度との関係において、PMが発生しやすい領域を示したグラフである。
【図9】ECUが実行するPM量測定処理の第3変形例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
2 エンジン
4 ECU(堆積量推定手段、運転状態制御手段、運転状態検出手段、加熱制御手段)
10 燃焼室
11 ポート噴射弁
12 筒内噴射弁
14 点火プラグ
16 吸気ポート
20 吸気通路
22 サージタンク
24 スロットルモータ
26 スロットルバルブ
28 スロットル開度センサ
30 吸気圧センサ
32 排気ポート
36 排気通路
38 触媒
40 NOx吸蔵還元触媒
41 水温センサ
44 アクセルペダル
54 クランク軸
56 アクセル開度センサ
58 エンジン回転数センサ
64 空燃比センサ
66 酸素センサ
70 PMセンサ
71 ヒータ
72 温度センサ
73 酸化触媒
74 触媒コート
75 基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置された酸化触媒と、
前記酸化触媒を加熱して前記酸化触媒に堆積した排気微粒子を燃焼させる加熱手段と、
前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段と、
前記排気微粒子の燃焼時における前記酸化触媒の温度に基づいて前記排気微粒子の堆積量を推定する堆積量推定手段とを備え、
前記加熱手段の作動時に排気微粒子の排出が抑制されるように機関運転状態を制御する運転状態制御手段を有している、ことを特徴とする内燃機関の排気微粒子測定装置。
【請求項2】
吸気通路内に燃料を噴射するポート噴射弁と、
燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射弁とを備え、
前記運転状態制御手段は、前記筒内噴射弁による燃料噴射から前記ポート噴射弁による燃料噴射へと切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の排気微粒子測定装置。
【請求項3】
前記運転状態制御手段は、該内燃機関へ燃料を供給するときにメイン噴射に先立って実行されるパイロット噴射を禁止する、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気微粒子測定装置。
【請求項4】
内燃機関の排気通路に配置された酸化触媒と、
前記酸化触媒を加熱して前記酸化触媒に堆積した排気微粒子を燃焼させる加熱手段と、
前記加熱手段の作動を制御する加熱制御手段と、
前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段と、
前記排気微粒子の燃焼時における前記酸化触媒の温度に基づいて前記排気微粒子の堆積量を推定する堆積量推定手段とを備え、
排気微粒子の排出が抑制される機関運転状態を検出する運転状態検出手段を有し、
前記加熱制御手段は、前記運転状態検出手段の検出結果に応じて、前記加熱手段の作動時を制御する、ことを特徴とする内燃機関の排気微粒子測定装置。
【請求項5】
該内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段を備え、
前記運転状態検出手段は、前記冷却水温度検出手段の検出結果に応じて、前記機関運転状態を検出する、ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気微粒子測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−261323(P2008−261323A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106502(P2007−106502)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】