説明

内燃機関の空燃比制御装置

【課題】排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適に抑制することのできる内燃機関の空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】EGR実施の有無によりメインフィードバック制御の目標空燃比を変更するとともに、サブフィードバック補正値の収束時のEGR量が要求に満たない状態となっていたときには(S101:YES)、EGR非実施時のメインフィードバック制御の目標空燃比をリーン側に修正する(S103)ようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行う内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載等の内燃機関では、排気通路に設けられた触媒により、排気中の有害成分を浄化している。触媒の排気の浄化能力は、燃焼室で燃焼された混合気の空気と燃料の比率である空燃比によって変化し、その排気浄化能力が最大限に発揮される空燃比の範囲は限定されている。例えば三元触媒の場合、混合気の空燃比が、理論上、混合気中の酸素のすべてが燃料の燃焼に使用される理論空燃比の近傍であるときに、その排気浄化能力が最大限に発揮される。そこで、車載等の内燃機関の多くでは、排気中に残存する酸素の濃度から燃焼された混合気の空燃比を求めるとともに、その求められた空燃比に応じて燃料噴射量を補正して、混合気の空燃比を排気の浄化に最適な値とする空燃比フィードバック制御を行っている。
【0003】
なお、排気の酸素濃度を検出する酸素濃度センサーが理想的な特性を示すのであれば、その出力と、燃焼された混合気の空燃比とが一義的な関係を示す。この場合には、触媒ウィンドウに入るように目標空燃比を設定し、検出された排気の酸素濃度から算出された空燃比が目標空燃比となるようにフィードバック制御を実行すれば、触媒の下流には、浄化された排気だけが流出することとなる。
【0004】
しかしながら、現実には、酸素濃度センサーやその信号伝送系の個体差や経年変化、内燃機関の運転状態の変化等のため、酸素濃度センサーは、必ずしも理想的な出力特性を発揮しない。このため、空燃比フィードバック制御が実行されている状況下でも、触媒の下流に、未浄化の排気が流出することがある。こうしたときの触媒下流の排気酸素濃度は、排気中の酸素が浄化反応に過不足なく使用される理論空燃比相当の値から逸脱する。そのため、触媒での排気の浄化が適切に行われているか否かを、触媒下流の排気酸素濃度の検出結果から判断することができる。そこで、触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御に加え、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御を行うことで、より的確な空燃比制御を実現している。
【0005】
なお、サブフィードバック制御の結果が最適な値に収束するまでには、ある程度の長い時間が必要となる。そこで、過去のサブフィードバック制御において求められたサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶しておき、その値をサブフィードバック制御に反映することで、収束時間の短縮を図ることがなされている。
【0006】
ところで、車載等の内燃機関では、排気の一部を吸気中に再循環させる排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)を行うことがある。こうしたEGRを行う内燃機関では、EGRが実施されると、触媒ウィンドウが変化することが確認されている。そこで従来、特許文献1に記載のように、EGRの実施時と非実施時とで、空燃比フィードバック制御のフィードバック目標値(目標空燃比)に異なる値を設定する空燃比制御装置が提案されている。こうした空燃比制御装置では、EGRの有無による触媒ウィンドウの変化に追従して混合気の空燃比を変化させることができ、触媒の排気浄化効率を確保したまま、EGRの実施によるNOxや燃費の低減効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−030339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようなサブフィードバック制御を行う内燃機関の空燃比制御装置でも、メインフィードバック制御のフィードバック目標値(目標空燃比)にEGR実施の有無によって異なる値を設定すれば、触媒の排気浄化効率の確保と、EGRの実施によるNOxや燃費の低減効果との両立を図ることができる。しかしながら、そうした場合、状況によっては、次のような問題が生じることがある。
【0009】
バルブが閉じたまま開かなくなる閉固着がEGRバルブに発生したときなどには、EGR実施中に吸気中に再循環される排気の量が、本来要求される量よりも少なくなってしまうことがある。このときのEGRの実施による触媒ウィンドウの変化は、EGRが正常に行われた場合よりも小さくなる。
【0010】
しかしながら、このときのメインフィードバック制御の目標空燃比は、要求通りのEGR量が確保されていることを前提に設定されており、実情の触媒ウィンドウから乖離した値となっている。こうした場合、目標空燃比と実際の触媒ウィンドウとの乖離分は、サブフィードバック制御によって補償される。そのため、この状態で空燃比フィードバック制御が継続されると、その乖離分がサブフィードバック学習値に取り込まれてしまうようになる。すなわち、このときのサブフィードバック学習値は、正常時との触媒ウィンドウの差分だけ、適正な値からずれたものとなってしまう。そのため、その後のEGRの停止により、メインフィードバックのフィードバック目標値がEGR非実施時の値に変更されると、そうしたサブフィードバック学習値のずれ分のずれが空燃比に生じてしまい、空燃比フィードバック制御が収束するまで、内燃機関のエミッション(排気性能)が悪化してしまう。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適に抑制することのできる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行うとともに、前記サブフィードバック制御のサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶し、かつ排気再循環の実施時と非実施時とで前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値を設定する内燃機関の空燃比制御装置において、排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、前記メインフィードバック制御における排気再循環の非実施時のフィードバック目標値の修正を行うようにしている。
【0013】
上記構成では、排気再循環の実施時と非実施時とでメインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値が設定される。そしてこれにより、排気再循環の実施の有無による触媒ウィンドウの変化に合わせて混合気の空燃比が変化されるようになる。一方、排気再循環の実施時の排気再循環量が要求に満たない状態となると、そのときに学習されたサブフィードバック学習値には、要求通りに排気再循環量が確保されたときの触媒ウィンドウと、要求に満たない現状の排気再循環量に即した触媒ウィンドウとの差分がその値に取り込まれてしまい、サブフィードバック学習値がその差分だけ適正な値からずれた値となってしまう。その点、上記構成では、そうした状態で学習されたサブフィードバック学習値として記憶されていれば、メインフィードバック制御における排気再循環の非実施時のフィードバック目標値が修正され、それにより、サブフィードバック学習値のずれによる空燃比のずれが補償されるようになる。したがって、上記構成によれば、排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適に抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項2に記載の発明は、触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行うとともに、前記サブフィードバック制御のサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶し、かつ吸気中への排気再循環の実施時と非実施時とで前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値を設定する内燃機関の空燃比制御装置において、排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、前記サブフィードバック制御における排気再循環の非実施時のフィードバック目標値の修正を行うようにしている。
【0015】
上記構成では、排気再循環の実施時と非実施時とでメインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値が設定される。そしてこれにより、排気再循環の実施の有無による触媒ウィンドウの変化に合わせて混合気の空燃比が変化されるようになる。一方、排気再循環の実施時の排気再循環量が要求に満たない状態となると、そのときに学習されたサブフィードバック学習値には、要求通りに排気再循環量が確保されたときの触媒ウィンドウと、要求に満たない現状の排気再循環量に即した触媒ウィンドウとの差分がその値に取り込まれてしまい、サブフィードバック学習値がその差分だけ適正な値からずれた値となってしまう。その点、上記構成では、そうした状態で学習されたサブフィードバック学習値として記憶されていれば、サブフィードバック制御における排気再循環の非実施時のフィードバック目標値が修正され、それにより、サブフィードバック学習値のずれによる空燃比のずれが補償されるようになる。したがって、上記構成によれば、排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適に抑制することができる。
【0016】
なお、排気再循環量が要求に満たない状態で学習されたサブフィードバック学習値の適正値からのずれにより、排気再循環の非実施時の空燃比は、排気再循環量の要求に対する不足量が大きいほど、リッチ側にずれる。そのため、請求項3によるように、上記目標空燃比の修正を、排気再循環量の要求に対する不足量が大きいほど、排気再循環の非実施時における前記フィードバック目標値を、空燃比をよりリーンとする側の値とするように行えば、排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化をより的確に抑制することができる。
【0017】
上記課題を解決するため、請求項4に記載の発明は、触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行うとともに、前記サブフィードバック制御のサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶し、かつ排気再循環の実施時と非実施時とで前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値を設定する内燃機関の空燃比制御装置において、排気再循環の非実施時に、排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、同サブフィードバック学習値の修正を行っている。
【0018】
上記構成では、排気再循環の実施時と非実施時とでメインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値が設定される。そしてこれにより、排気再循環の実施の有無による触媒ウィンドウの変化に合わせて混合気の空燃比が変化されるようになる。一方、排気再循環の実施時の排気再循環量が要求に満たない状態となると、そのときに学習されたサブフィードバック学習値には、要求通りに排気再循環量が確保されたときの触媒ウィンドウと、要求に満たない現状の排気再循環量に即した触媒ウィンドウとの差分がその値に取り込まれてしまい、サブフィードバック学習値がその差分だけ適正な値からずれた値となってしまう。その点、上記構成では、排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、サブフィードバック学習値の修正が行われ、そのずれが是正される。したがって、上記構成によれば、排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適に抑制することができる。
【0019】
なお、請求項5によるように、このときのサブフィードバック学習値の修正を、前記排気再循環量の要求に対する不足量が大きいほど、同サブフィードバック学習値による空燃比のリッチ側への補正量が小さくなるように行えば、排気再循環が正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化より的確に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る空燃比制御装置の適用される内燃機関の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態に適用される目標空燃比修正ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図3】同目標空燃比修正ルーチンによる修正後の目標空燃比とEGRの不足量との関係を示すグラフ。
【図4】同実施の形態の空燃比フィードバック制御時の制御動作の一例を示すタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施の形態に適用される学習値修正ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図6】同サブフィードバック学習値修正ルーチンによる修正後のサブフィードバック学習値とEGRの不足量との関係を示すグラフ。
【図7】同実施の形態の空燃比フィードバック制御時の制御動作の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の内燃機関の空燃比制御装置を具体化した第1の実施の形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0022】
まず、図1を参照して、本実施の形態の空燃比制御装置が適用される内燃機関の構成を説明する。同図に示すように、本実施の形態の制御装置の適用される内燃機関は、吸気が通過する吸気管1と、その吸気管1を通じて吸入された空気と燃料との混合気が燃焼される燃焼室2と、燃焼によって生じた排気が通過する排気管3とを備えている。
【0023】
内燃機関の吸気管1には、その上流から順に、吸気を浄化するエアクリーナー4、吸入空気量を検出するエアフローメーター5、吸気の流量を調節するスロットルバルブ6、吸気中に燃料を噴射供給するインジェクター7、吸気圧を検出する吸気圧センサー8が配設されている。こうした吸気管1に吸気ポート9を介して接続された燃焼室2には、同燃焼室2に導入された空気と燃料との混合気を点火する点火プラグ10が配設されている。また、この燃焼室2に排気ポート11を介して接続された排気管3には、その上流から順に、排気の酸素濃度を検出するメイン酸素濃度センサー12、排気を浄化するフロント触媒13、排気中の酸素濃度を検出するサブ酸素濃度センサー14、及び排気を浄化するリア触媒15が配設されている。
【0024】
またこの内燃機関には、排気の一部を吸気中に還流させるための排気再循環(EGR)通路16が設けられている。EGR通路16は、排気管3におけるフロント触媒13とリア触媒15の間の部分から取り出され、その末端は、吸気管1のスロットルバルブ6の下流部分に接続されている。なお、EGR通路16には、再循環される排気を冷却するEGRクーラー17、及びEGR量を調節するEGRバルブ18が配設されている。
【0025】
こうした内燃機関は、電子制御ユニット19により制御されている。電子制御ユニット19は、機関制御に係る各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)と、制御用のプログラムやデータの記憶された読込専用メモリー(ROM)を備えている。また電子制御ユニット19は、CPUの演算結果やセンサーの検出結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリー(RAM)と、外部との信号の授受を媒介するインターフェイスとして機能する入出力ポート(I/O)とを備えている。
【0026】
電子制御ユニット19の入力ポートには、上記エアフローメーター5、吸気圧センサー8、メイン酸素濃度センサー12及びサブ酸素濃度センサー14を始め、機関回転速度を検出するNEセンサー20や上記スロットルバルブ6の開度を検出するスロットルセンサー22などのセンサーが接続されている。また電子制御ユニット19の出力ポートには、上記スロットルバルブ6、インジェクター7、点火プラグ10、EGRバルブ18を始めとする機関制御用のアクチュエーターの駆動回路が接続されている。
【0027】
(空燃比フィードバック制御)
こうした内燃機関において、電子制御ユニット19は、燃焼室2で燃焼される混合気の空燃比を、フロント触媒13による排気の浄化に最適な値とするための空燃比フィードバック制御を行っている。この空燃比フィードバック制御は、フロント触媒13上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、フロント触媒13下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて行われる。
【0028】
空燃比フィードバック制御に際して、電子制御ユニット19は、メイン酸素濃度センサー12の出力と、サブ酸素濃度センサー14の出力とに基づいて、次式(1)に表される補正後A/F出力evabyfを算出し、その補正後A/F出力evabyfが目標空燃比に対応する値となるように燃料噴射量を制御している。下式(1)における右辺第1項の「evafbse」は、メイン酸素濃度センサー12の出力電圧を、右辺第2項の「evafsfb」は、サブ酸素濃度センサー14の出力に基づいて算出されるサブフィードバック補正値を、右辺第3項の「evafsfbg」は、サブフィードバック学習値をそれぞれ示している。
【0029】

evabyf=evafbse+evafsfb+evafsfbg ・・・(1)

電子制御ユニット19は、上式(1)に従って算出された補正後A/F出力evabyfを、目標空燃比相当の値に近づけるためのメインフィードバック制御を実行する。具体的には、このメインフィードバック制御において電子制御ユニット19は、補正後A/F出力evabyfを空燃比に換算する処理、その結果得られた空燃比と目標空燃比との偏差ΔA/Fを算出する処理、及びその偏差ΔA/Fを所定のゲインで燃料噴射量の補正に反映させる処理を実施する。
【0030】
ここで、メイン酸素濃度センサー12が理想的な特性を示すのであれば、その出力evafbseと、燃焼された混合気の空燃比とが一義的な関係を示す。この場合には、フロント触媒13の触媒ウィンドウに入るように目標空燃比を設定し、メイン酸素濃度センサー12の出力evafbseが目標空燃比相当の値となるようにメインフィードバック制御を実行すれば、フロント触媒13の下流には、浄化された排気だけが流出することとなる。
【0031】
しかしながら、現実には、メイン酸素濃度センサー12及びその信号伝送系の個体差や経年変化、内燃機関の運転状態の変化等のため、メイン酸素濃度センサー12は、必ずしも理想的な出力特性を発揮しない。このため、メインフィードバック制御が実行されている状況下でも、フロント触媒13の下流に、未浄化の排気が流出することがある。こうしたときのフロント触媒13下流の排気酸素濃度は、排気中の酸素が浄化反応に過不足なく使用される理論空燃比相当の値から逸脱する。そのため、フロント触媒13での排気の浄化が適切に行われているか否かを、サブ酸素濃度センサー14の検出結果から判断することができる。
【0032】
例えば理論空燃比相当の値よりも低い酸素濃度がサブ酸素濃度センサー14により検出されたときには、混合気の空燃比が全体としてフロント触媒13の触媒ウィンドウよりもリッチ側にシフトしていると判断することができる。したがって、この場合には、燃料噴射量が現状よりも少なく算出されるように、メイン酸素濃度センサー12の出力evafbseを補正すれば、メインフィードバック制御の結果として得られる混合気の空燃比を、フロント触媒13の触媒ウィンドウに近づけることができる。
【0033】
一方、理論空燃比相当の値よりも高い酸素濃度がサブ酸素濃度センサー14により検出されたときには、混合気の空燃比が全体としてフロント触媒13の触媒ウィンドウよりもリーン側にシフトしていると判断することができる。したがって、この場合には、燃料噴射量が現状よりも多く算出されるように、メイン酸素濃度センサー12の出力evafbseを補正すれば、メインフィードバック制御の結果として得られる混合気の空燃比を、フロント触媒13の触媒ウィンドウに近づけることができる。
【0034】
上式(1)に含まれるサブフィードバック補正値evafsfbは、こうしたメイン酸素濃度センサー12の出力evafbseの補正に使用される補正値となっている。電子制御ユニット19は、サブフィードバック補正値evafsfbを、サブ酸素濃度センサー14の出力と、理論空燃比相当の出力値として設定されたサブフィードバック目標値との偏差に、所定の演算を施すことで算出している。より具体的には、サブフィードバック補正値evafsfbは、サブ酸素濃度センサー14の出力とサブフィードバック目標値との偏差に基づく比例項、積分項、及び微分項の和として算出されている。
【0035】
こうしたサブフィードバック補正値evafsfbに含まれる積分項の成分は、メインフィードバック制御の定常偏差を示している。上式(1)におけるサブフィードバック学習値evafsfbgは、サブフィードバック補正値evafsfbからその積分項成分を所定の更新タイミングで移し替えることで算出されている。
【0036】
このような処理によれば、メインフィードバック制御の定常偏差成分をサブフィードバック学習値evafsfbgに吸収させ、メインフィードバック制御に内包される誤差成分の変動分だけをサブフィードバック補正値evafsfbに吸収させることができる。そして、学習が進むと、サブフィードバック学習値evafsfbgは、上記の定常的な誤差成分を適正に反映した値に収束し、安定した値をとるようになる。
【0037】
(目標空燃比の設定)
ところで、EGRを実施する上記内燃機関では、EGRの実施の有無により、フロント触媒13の触媒ウィンドウに変化が生じる。そこで、本実施の形態では、こうしたEGRの実施の有無によるフロント触媒13の触媒ウィンドウに空燃比を追従させるため、EGRの実施時と非実施時とで、メインフィードバック制御のフィードバック目標値である目標空燃比に異なる値を設定している。
【0038】
具体的には、電子制御ユニット19は、目標空燃比eabyfrefを、下式(2)に従い算出している。

eabyfref=γ×G(NE,KL)+(1−γ)×F(NE,KL) ・・・(2)

上式(2)における「F(NE,KL)」は、現状の機関回転速度NE及び機関負荷KLにおけるEGR非導入時のフロント触媒13の触媒ウィンドウを示している。また、上記(2)における「G(NE,KL)」は、現状の機関回転速度NE及び機関負荷KLにおけるEGRフル導入時のフロント触媒13の触媒ウィンドウを示している。なお、EGRフル導入とは、EGRバルブ18を全開とした状態でEGRを行うことを指している。なお、EGRが実施されると、フロント触媒13の触媒ウィンドウは、リーン側に遷移する。そのため、同一の機関回転速度NE、機関負荷KLにおけるEGRフル導入時のフロント触媒13の触媒ウィンドウG(NE,KL)は、EGR非導入時のフロント触媒13の触媒ウィンドウF(NE,KL)よりもリーン側の値となる。
【0039】
一方、上式(2)の「γ」は、現状の機関回転速度NE及び機関負荷KLにおけるEGRフル導入時のEGR量とEGRの要求量(要求EGR量)との比を示している。EGR非導入時には、この比γの値が「0」となるため、目標空燃比eabyfrefは、EGR非導入時のフロント触媒13の触媒ウィンドウF(NE,KL)に設定される。また、要求EGR量が多いほど、上記比γの値が「1」に近づくようになり、目標空燃比eabyfrefは、よりリーン側の値に設定される。
【0040】
(EGR故障時のエミッション悪化抑制制御)
上記のようなEGR実施の有無による目標空燃比eabyfrefの変更を行う場合、EGRバルブ18の閉固着等により、EGR量が要求に満たなくなることがあると、要求通りのEGRが実施されていることを前提に設定された目標空燃比eabyfrefは、そのときの実際のフロント触媒13の触媒ウィンドウよりもリッチ側にずれた値となる。このときのメインフィードバック制御は、そうした目標空燃比eabyfrefに空燃比を近づけるように行われ、その目標空燃比eabyfrefのずれ分は、サブフィードバック制御により補償される。そのため、このときのサブフィードバック補正値evafsfbには、実際のフロント触媒13の触媒ウィンドウと目標空燃比eabyfrefとの差分が取り込まれることになる。そして、こうした状態で空燃比フィードバック制御が継続されると、そうした差分がサブフィードバック学習値evafsfbgに取り込まれてしまう。
【0041】
この状態でEGRが停止されると、目標空燃比eabyfrefがEGR非実施時における値に変更され、EGR実施中のEGR量の不足により生じたフロント触媒13の触媒ウィンドウとの乖離は解消される。しかしながら、このときのサブフィードバック補正値evafsfbには、EGR実施中のEGR量の不足に起因した目標空燃比eabyfrefとフロント触媒13の触媒ウィンドウとの乖離分が取り込まれてしまっている。そのため、そうしたサブフィードバック補正値evafsfbがそのまま空燃比フィードバック制御に反映されると、EGR停止直後の空燃比にその乖離分のずれが生じてしまい、空燃比フィードバック制御が収束するまで、内燃機関のエミッションが悪化してしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態では、下記のようなEGR故障時のエミッション悪化抑制制御を実施することで、そうしたエミッションの悪化を抑制している。
こうした本実施の形態でのEGR故障時のエミッション悪化抑制制御は、図2に示される目標空燃比修正ルーチンの処理を通じて行われる。なお、同ルーチンの処理は、機関運転中、電子制御ユニット19によって、規定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとなっている。
【0043】
さて、本ルーチンの処理が開始されと、まずステップS100において、サブフィードバック(サブF/B)学習値evafsfbgの収束時における要求EGR量と実際のEGR量とが読み込まれる。要求EGR量は、機関回転速度NEと機関負荷KLとに応じて設定され、実際のEGR量は、吸気圧センサー8の検出値から算出されている。ちなみに、EGRが実施されると、吸気中に再循環された排気の量だけ吸気管1の流量が増加し、その結果、吸気圧が低下する。そのため、EGRの実施に伴う吸気圧の変化から、実際に導入されたEGR量を推定することが可能である。
【0044】
続くステップS101においては、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時にEGR量が不足していたか否かが判定される。すなわち、ここでは、EGR量が要求に満たないときのサブフィードバック補正値evafsfbの恒常成分がサブフィードバック学習値evafsfbgとして記憶されているか否かが判定される。
【0045】
ここで、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時のEGR量が不足していなかったのであれば(S101:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。一方、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時にEGR量が不足していたのであれば(S101:YES)、ステップS102に処理が移行される。
【0046】
処理がステップS102に移行されると、そのステップS102において、現在、EGRが非実施であるか否かが判定される。ここで、EGRが実施中であれば(S102:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了され、非実施であれば(S102:YES)、処理がステップS103に移行される。
【0047】
処理がステップS103に移行されると、そのステップS103において、目標空燃比eabyfrefの修正が行われ、その後、今回の本ルーチンの処理が終了される。このときの目標空燃比eabyfrefの変更は、図3に示すように、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時における、EGR量の要求に対する不足量が大きいほど、目標空燃比eabyfrefをリーン側の値とするように行われる。
【0048】
次に、こうした本実施の形態における空燃比フィードバック制御時の動作を、図4を参照して説明する。
空燃比フィードバック制御中の時刻t1にEGRが開始されると、その開始に伴うフロント触媒13の触媒ウィンドウの変化に合わせて、メインフィードバック制御の目標空燃比eabyfrefが、EGR非実施時の値よりもリーン側の値に変更される。そして、メインフィードバック制御は、補正後A/F出力evabyfを、その変更された目標空燃比eabyfrefに相当する値に近づけるように行われる。
【0049】
なお、このときの実施のEGR量は、EGRバルブ18の固着のため、要求EGR量に満たない量となっている。このときのEGRの実施に伴うフロント触媒13の触媒ウィンドウの変化は、本来よりも小さいものとなる。そのため、要求通りのEGR量が確保されていることを前提に設定された目標空燃比eabyfrefと、このときの実際のフロント触媒13の触媒ウィンドウとの間には、乖離が生じるようになる。こうした目標空燃比eabyfrefの乖離分は、サブフィードバック補正値evafsfbによる空燃比の補正を通じて補償される。
【0050】
こうした状態のまま、空燃比フィードバック制御が継続されると、サブフィードバック補正値evafsfbの積分項成分がサブフィードバック学習値evafsfbgに反映される。そのため、EGR量の不足による目標空燃比eabyfrefの乖離分は、サブフィードバック学習値evafsfbgに取り込まれることになる。
【0051】
その後の時刻t2において、EGRが停止されると、EGR非実施時におけるフロント触媒13の触媒ウィンドウに対応した値に目標空燃比eabyfrefも変更されるため、目標空燃比eabyfrefと、フロント触媒13の触媒ウィンドウとの乖離は解消される。しかしながら、このときのサブフィードバック学習値evafsfbgには、EGR実施中のそれら乖離分が取り込まれており、その値がそのまま空燃比に反映されると、空燃比がフロント触媒13の触媒ウィンドウから大幅に逸脱してしまうようになる。
【0052】
その点、本実施の形態では、サブフィードバック学習値evafsfbgが収束したときのEGR量が要求に満たない状態であったことを条件に、EGR非実施時の目標空燃比eabyfrefがリーン側に修正される。一方、このときのサブフィードバック学習値evafsfbgは、空燃比をリッチ側に補正する。そのため、サブフィードバック学習値evafsfbgによる空燃比の補正が目標空燃比eabyfrefの修正により相殺され、EGR量が不足した状態で学習されたサブフィードバック学習値evafsfbgによる、フロント触媒13の触媒ウィンドウからの空燃比の逸脱は抑制されるようになる。
【0053】
以上の本実施の形態の内燃機関の空燃比制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、EGR量が要求に満たないときのサブフィードバック補正値evafsfbの恒常成分がサブフィードバック学習値evafsfbgとして記憶されているときには、メインフィードバック制御のEGR非実施時の目標空燃比eabyfrefの修正を行うようにしている。そのため、EGR量が要求に満たない状態で学習されたサブフィードバック学習値evafsfbgがEGR停止後の空燃比フィードバック制御に反映されることで生じる空燃比のずれが抑えられる。したがって、本実施の形態によれば、EGRが正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適抑制することができる。
【0054】
(2)本実施の形態では、上記EGR非実施時の目標空燃比eabyfrefの修正を、EGR量の要求に対する不足量が大きいほど、EGR非実施時における目標空燃比eabyfrefがよりリーン側の値となるように行っている。そのため、EGRが正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化をより的確に抑制することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の内燃機関の空燃比制御装置を具体化した第2の実施の形態を、図5〜図7を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態のものと、構成及びその作用を同様とする構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0056】
第1の実施の形態では、EGR量の不足により、サブフィードバック学習値evafsfbgに不適切な値が学習されているときには、EGR非実施時の目標空燃比eabyfrefを修正することで、EGR停止後の空燃比のずれを抑制していた。これに対して、本実施の形態では、不適切な値が学習されたサブフィードバック学習値evafsfbgを修正することで、EGR停止後の空燃比のずれを抑制している。
【0057】
こうした本実施の形態でのEGR故障時のエミッション悪化抑制制御は、図5に示される学習値修正ルーチンの処理を通じて行われる。なお、同ルーチンの処理は、機関運転中、電子制御ユニット19によって、規定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとなっている。
【0058】
さて、本ルーチンの処理が開始されと、まずステップS200において、サブフィードバック(サブF/B)学習値evafsfbgの収束時における要求EGR量と実際のEGR量とが読み込まれ、続くステップS201において、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時にEGR量が不足していたか否かが判定される。そして、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時にEGR量が不足していたのでなければ(S201:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。一方、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時にEGR量が不足していたのであれば(S201:YES)、ステップS202に処理が移行される。
【0059】
処理がステップS202に移行されると、そのステップS202において、現在、EGRが非実施であるか否かが判定される。ここで、EGRが実施中であれば(S202:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了され、非実施であれば(S202:YES)、処理がステップS203に移行される。
【0060】
処理がステップS203に移行されると、そのステップS203において、サブフィードバック学習値evafsfbgの修正が行われ、その後、今回の本ルーチンの処理が終了される。このときのサブフィードバック学習値evafsfbgの修正は、図6に示すように、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時のEGR量の要求に対する不足量が大きいほど、同サブフィードバック学習値evafsfbgによる空燃比のリッチ側への補正量が小さくなるように行われる。
【0061】
次に、こうした本実施の形態における空燃比フィードバック制御時の動作を、図7を参照して説明する。
同図の制御例では、時刻t3にEGRが開始され、時刻t4にEGRが停止されている。そして、時刻t3から時刻t4までのEGRの実施中には、EGRバルブ18の固着により、EGR量が要求EGR量に満たない状態となっている。そのため、EGR実施中の目標空燃比eabyfrefは、フロント触媒13の触媒ウィンドウから乖離したものとなり、その乖離分がサブフィードバック補正値evafsfbによる空燃比の補正を通じて補償される。また、そうした状態での空燃比フィードバック制御の継続により、そうした目標空燃比eabyfrefの乖離分が、サブフィードバック学習値evafsfbgに取り込まれる。そのため、時刻t4におけるEGRの停止後、目標空燃比eabyfrefとフロント触媒13の触媒ウィンドウとの乖離が解消された状態で、サブフィードバック学習値evafsfbgがそのまま空燃比に反映されると、空燃比がフロント触媒13の触媒ウィンドウからリッチ側に大幅に逸脱してしまうようになる。
【0062】
その点、本実施の形態では、EGR非実施時に、サブフィードバック学習値evafsfbgが収束したときのEGR量が要求に満たない状態であったことを条件に、サブフィードバック学習値evafsfbgの修正が行われる。この修正は、サブフィードバック学習値evafsfbgによる空燃比のリッチ側への補正量が小さくなるように行われる。そのため、EGR量が不足した状態で学習されたサブフィードバック学習値evafsfbgによる、フロント触媒13の触媒ウィンドウからの空燃比の逸脱は抑制されるようになる。
【0063】
以上の本実施の形態の内燃機関の空燃比制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(3)本実施の形態では、EGR非実施時に、EGR量が要求に満たないときのサブフィードバック補正値evafsfbの恒常成分がサブフィードバック学習値evafsfbgとして記憶されているときには、サブフィードバック学習値evafsfbgの修正を行っている。そのため、EGR量が要求に満たない状態で学習されたサブフィードバック学習値evafsfbgがEGR停止後の空燃比フィードバック制御にそのまま反映されることで生じる空燃比のずれが抑えられる。したがって、本実施の形態によれば、EGRが正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を好適抑制することができる。
【0064】
(4)本実施の形態では、上記EGR非実施時のサブフィードバック学習値evafsfbgの修正を、EGR量の要求に対する不足量が大きいほど、サブフィードバック学習値evafsfbgによる空燃比のリッチ側への補正量が小さくなるように行っている。そのため、EGRが正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化をより的確に抑制することができる。
【0065】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・第1の実施の形態では、目標空燃比修正ルーチンのステップS103において、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時のEGRの不足量が大きいほど、EGR非実施時の目標空燃比eabyfrefをリーン側の値に修正していた。尤も、このときの目標空燃比eabyfrefの修正を、EGRの不足量によらず一律に行っても、エミッションの悪化をある程度に抑えることは可能である。
【0066】
・第1の実施の形態では、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時のEGR量が要求に満たない状態であったときには、EGR非実施時にメインフィードバック制御の目標空燃比eabyfrefをリーン側に修正することで、EGRが正常に行われなかったときの内燃機関のエミッションの悪化を抑制していた。メインフィードバック制御の目標空燃比eabyfrefの代わりに、サブフィードバック目標値を修正することでも、同様のエミッション悪化の抑制が可能である。この場合、通常は、理論空燃比相当のサブ酸素濃度センサー14の出力値が設定されるEGR非実施時のサブフィードバック目標値を、理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する出力値に修正することで、エミッションの悪化を抑制することができる。また、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時のEGRの不足量が大きいほど、EGR非実施時のサブフィードバック目標値を、よりリーンな空燃比に相当する出力値とすることで、的確なエミッション悪化の抑制が可能となる。
【0067】
・第2の実施の形態では、学習値修正ルーチンのステップS203において、サブフィードバック学習値evafsfbgの収束時のEGRの不足量が大きいほど、EGR非実施時のサブフィードバック学習値evafsfbgを、そのサブフィードバック学習値evafsfbgによる空燃比のリッチ側への補正量がより小さくなるように修正していた。尤も、このときのサブフィードバック学習値evafsfbgの修正を、EGRの不足量によらず一律に行っても、エミッションの悪化をある程度に抑えることは可能である。
【0068】
・上記実施の形態では、上式(2)に従って目標空燃比eabyfrefを算出するようにしていたが、目標空燃比eabyfrefの設定態様は、EGRの実施時と非実施時とで異なる値が設定されるのであれば、これに限らず、適宜に変更しても良い。
【0069】
・上記実施の形態では、フロント触媒13下流の排気酸素濃度に基づいてメイン酸素濃度センサー12の出力を補正することで、サブフィードバック制御を行うようにしていたが、これ以外の方法でサブフィードバック制御を行うようにしても良い。例えばフロント触媒13下流の排気酸素濃度に基づいてメインフィードバック制御の目標空燃比eabyfrefを補正するようにサブフィードバック制御を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…吸気管、2…燃焼室、3…排気管、4…エアクリーナー、5…エアフローメーター、6…スロットルバルブ、7…インジェクター、8…吸気圧センサー、9…吸気ポート、10…点火プラグ、11…排気ポート、12…メイン酸素濃度センサー、13…フロント触媒、14…サブ酸素濃度センサー、15…リア触媒、16…EGR通路、17…EGRクーラー、18…EGRバルブ、19…電子制御ユニット、20…NEセンサー、22…スロットルセンサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行うとともに、前記サブフィードバック制御のサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶し、かつ排気再循環の実施時と非実施時とで前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値を設定する内燃機関の空燃比制御装置において、
排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、排気再循環の非実施時における前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値の修正を行う
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項2】
触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行うとともに、前記サブフィードバック制御のサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶し、かつ吸気中への排気再循環の実施時と非実施時とで前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値を設定する内燃機関の空燃比制御装置において、
排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、前記サブフィードバック制御における排気再循環の非実施時のフィードバック目標値の修正を行う
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項3】
前記フィードバック目標値の修正は、前記排気再循環量の要求に対する不足量が大きいほど、排気再循環の非実施時における前記フィードバック目標値を、空燃比をよりリーンとする側の値とするように行われる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項4】
触媒上流の排気酸素濃度に基づくメインフィードバック制御と、触媒下流の排気酸素濃度に基づくサブフィードバック制御とを通じて空燃比フィードバック制御を行うとともに、前記サブフィードバック制御のサブフィードバック補正値の恒常成分をサブフィードバック学習値として記憶し、かつ排気再循環の実施時と非実施時とで前記メインフィードバック制御のフィードバック目標値に異なる値を設定する内燃機関の空燃比制御装置において、
排気再循環の非実施時に、排気再循環量が要求に満たないときの前記サブフィードバック補正値の恒常成分が前記サブフィードバック学習値として記憶されているときには、同サブフィードバック学習値の修正を行う
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項5】
前記サブフィードバック学習値の修正は、前記排気再循環量の要求に対する不足量が大きいほど、同サブフィードバック学習値による空燃比のリッチ側への補正量が小さくなるように行われる
請求項4に記載の内燃機関の空燃比制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113092(P2013−113092A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256736(P2011−256736)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】