説明

内燃機関

【課題】筒状部と筒状部の内部を移動する移動部材とを含む容積可変装置を備え、容積可変装置の内部に配置される潤滑油の量を推定できる内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、燃焼室に連通する筒状部、および筒状部の内部に移動可能に配置されている移動部材を含む容積可変装置と、筒状部と移動部材との摺動部分に潤滑油を供給する潤滑油供給装置とを備える。筒状部材の内部で移動部材が停止している期間にガス室の圧力変化を検出し、ガス室の圧力変化に基づいて、筒状部と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃焼室に燃料および空気が供給されて、燃焼室にて燃料が燃焼することにより駆動力を出力する。燃焼室において燃料を燃焼させるときには、空気と燃料との混合気を圧縮した状態になる。内燃機関の圧縮比は、出力および燃料消費量に影響を与えることが知られている。圧縮比を高くすることにより出力トルクを大きくしたり、燃料消費量を少なくしたりすることができる。
【0003】
特開2000−230439号公報には、燃焼室に圧力調整弁を介して通じる副室を設け、圧力調整弁は、弁体と弁体に接続されて燃焼室側に付勢された弁棒とを有する自着火式の内燃機関が開示されている。この自着火式の内燃機関は、過早着火等により燃焼圧が所定の許容圧値を超えた場合に、弾性体の圧力に抗して圧力調整弁を押し上げて副室に圧力を逃すことが開示されている。この公報には、過早着火等が生じる圧力よりも大きな圧力で圧力調整弁が動くことが開示されている。また、この公報においては、燃焼室に通じる副室が形成され、副室に上下に移動可能な副ピストンが挿入されている内燃機関が開示されている。副ピストンは、機械ばねで押圧されている。燃料が燃焼した時に、燃焼室の圧力により機械ばねが縮んで副ピストンが上昇し、燃焼室に通じる副室の容積が大きくなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−230439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料が燃焼したときの燃焼室の圧力を制御する装置は、燃焼室の圧力が上昇したときに縮む部材として、上記の特開2000−230439号公報に開示されている機械ばねの他に、気体が封入された気体ばねを採用することができる。気体ばねは、内部の気圧を高くすることにより、燃焼室の高い圧力に容易に対応することができる。すなわち、気体ばねを採用することにより、容易に弾性を強くすることができる。
【0006】
気体ばねは、気体が密閉されたガス室を含み、ガス室の気体の圧力によりピストンを押圧することができる。この場合に、ピストンは、筒状の部材の内部で移動可能に配置される。ピストンは、筒状部材と接触しながら移動する。ピストンと筒状の部材とが摺動する部分には潤滑油を配置することができる。
【0007】
ところが、内燃機関の運転を継続すると、この潤滑油が徐々に不足するという問題がある。潤滑油が不足すると、ピストンと筒状の部材との摺動部分の摩擦が大きくなって焼き付いてしまう虞がある。また、潤滑油が不足するとガス室から燃焼室に向かう気体の漏れ量が多くなるという問題がある。更に、ガス室から燃焼室に気体が漏れるときに、気体と共に潤滑油も燃焼室に流入し、潤滑油の消費量が多くなるという問題がある。上記の特開2000−230439号公報には、潤滑油の状態を判定する装置が開示されておらず、ピストンと筒状の部材との間に潤滑油を配置する場合に、潤滑油の状態が把握できないという問題があった。
【0008】
本発明は、筒状部と筒状部の内部を移動する移動部材とを含む容積可変装置を備え、容積可変装置の内部に配置される潤滑油の量を推定できる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内燃機関は、燃焼室に連通する筒状部、および筒状部の内部に移動可能に配置されている移動部材を含む容積可変装置と、筒状部と移動部材との摺動部分に潤滑油を供給する潤滑油供給装置とを備える。移動部材は、筒状部の内部の空間を区画して、燃焼室に向かう側に副室を形成し、燃焼室に向かう側と反対側に密閉可能なガス室を形成している。容積可変装置は、燃焼室の圧力が制御圧力に到達したときに、燃焼室の圧力変化を駆動源として移動部材が移動し、副室の容積が大きくなるように形成されている。内燃機関は、筒状部の内部で移動部材が停止している期間にガス室の圧力変化を検出し、ガス室の圧力変化に基づいて、筒状部と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定する。
【0010】
上記発明においては、潤滑油供給装置は、ガス室の内部に潤滑油を供給するように形成されており、筒状部と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量が予め定められた判定値未満の場合に、ガス室の内部に潤滑油を供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内燃機関によれば、筒状部と筒状部の内部を移動する移動部材とを含む容積可変装置を備え、容積可変装置の内部に配置される潤滑油の量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態における内燃機関の概略図である。
【図2】実施の形態における内燃機関の容積可変装置、気体供給装置および潤滑油供給装置の概略図である。
【図3】本実施の形態における容積可変装置を備える内燃機関の運転状態を説明するグラフである。
【図4】実施の形態における気体ばねの副室用ピストンと筒状部材との摺動部分の拡大概略断面図である。
【図5】実施の形態における運転制御のフローチャートである。
【図6】実施の形態における空気供給制御のフローチャートである。
【図7】実施の形態における運転制御において、制御禁止期間を説明するタイムチャートである。
【図8】実施の形態における空気供給制御のタイムチャートである。
【図9】実施の形態における潤滑油供給制御のフローチャートである。
【図10】実施の形態における潤滑油供給制御のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図10を参照して、実施の形態における内燃機関について説明する。本実施の形態においては、車両に配置されている内燃機関を例に取り上げて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態における内燃機関の概略図である。本実施の形態における内燃機関は、火花点火式である。内燃機関は、機関本体1を備える。機関本体1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド4とを含む。シリンダブロック2の内部には、ピストン3が配置されている。ピストン3は、シリンダブロック2の内部で往復運動する。本発明においては、ピストンが圧縮上死点に達したときにピストンの冠面とシリンダヘッドとに囲まれる気筒内の空間、および任意の位置にあるピストンの冠面とシリンダヘッドとに囲まれる気筒内の空間を燃焼室と称する。
【0015】
燃焼室5は、それぞれの気筒ごとに形成されている。燃焼室5には、機関吸気通路および機関排気通路が接続されている。機関吸気通路は、燃焼室5に空気または燃料と空気との混合気を供給するための通路である。機関排気通路は、燃料の燃焼により生じた排気ガスを燃焼室5から排出するための通路である。
【0016】
シリンダヘッド4には、吸気ポート7および排気ポート9が形成されている。吸気弁6は吸気ポート7の端部に配置され、燃焼室5に連通する機関吸気通路を開閉可能に形成されている。排気弁8は、排気ポート9の端部に配置され、燃焼室5に連通する機関排気通路を開閉可能に形成されている。シリンダヘッド4には、点火装置としての点火プラグ10が固定されている。点火プラグ10は、燃焼室5にて燃料を点火するように形成されている。
【0017】
本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5に燃料を供給するための燃料噴射弁11を備える。本実施の形態における燃料噴射弁11は、吸気ポート7に燃料を噴射するように配置されている。燃料噴射弁11は、この形態に限られず、燃焼室5に燃料を供給できるように配置されていれば構わない。たとえば、燃料噴射弁は、燃焼室5に直接的に燃料を噴射するように配置されていても構わない。
【0018】
燃料噴射弁11は、電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ29を介して燃料タンク28に接続されている。燃料タンク28内に貯蔵されている燃料は、燃料ポンプ29によって燃料噴射弁11に供給される。
【0019】
各気筒の吸気ポート7は、対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結されている。サージタンク14は、吸気ダクト15およびエアフローメータ16を介してエアクリーナ(図示せず)に連結されている。吸気ダクト15には、吸入空気量を検出するエアフローメータ16が接続されている。吸気ダクト15の内部には、ステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置されている。一方、各気筒の排気ポート9は、対応する排気枝管19に連結されている。排気枝管19は、触媒コンバータ21に連結されている。本実施の形態における触媒コンバータ21は、三元触媒20を含む。触媒コンバータ21は、排気管22に接続されている。
【0020】
本実施の形態における内燃機関は、電子制御ユニット31を備える。本実施の形態における電子制御ユニット31は、デジタルコンピュータを含む。電子制御ユニット31は、双方向バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を含む。
【0021】
エアフローメータ16は、燃焼室5に吸入される吸入空気量に比例した出力電圧を発生する。この出力電圧は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。アクセルペダル40には、負荷センサ41が接続されている。負荷センサ41は、アクセルペダル40の踏込量に比例した出力電圧を発生する。この出力電圧は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0022】
クランク角センサ42は、クランクシャフトが、例えば所定の角度を回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスは入力ポート36に入力される。クランク角センサ42の出力により、機関回転数を検出することができる。また、クランク角センサ42の出力により、クランク角度を検出することができる。たとえば、第1気筒の圧縮上死点を0°としたときのクランク角度を検出することができる。すなわち、クランクシャフトの回転角度を検出することができる。
【0023】
電子制御ユニット31の出力ポート37は、それぞれの対応する駆動回路39を介して燃料噴射弁11および点火プラグ10に接続されている。本実施の形態における電子制御ユニット31は、燃料噴射制御や点火制御を行うように形成されている。すなわち、燃料を噴射する時期および燃料の噴射量が電子制御ユニット31により制御される。更に点火プラグ10の点火時期が電子制御ユニット31により制御されている。また、出力ポート37は、対応する駆動回路39を介して、スロットル弁18を駆動するステップモータ17および燃料ポンプ29に接続されている。これらの機器は、電子制御ユニット31により制御されている。
【0024】
図2に、本実施の形態における内燃機関の燃焼室の部分の概略断面図を示す。本実施の形態における内燃機関は、複数の気筒を有する。図2は、複数の気筒が並ぶ方向に機関本体を切断したときの断面図である。
【0025】
本実施の形態における内燃機関は、燃料が燃焼したときの燃焼室の圧力を制御する燃焼圧力制御装置を備える。本実施の形態における燃焼圧力制御装置は、燃焼室に連通する空間の容積が変化する容積可変装置を備える。容積可変装置は、気体ばね50を含む。気体ばね50は、それぞれの気筒において燃焼室5に接続されている。本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5に連通する空間としての副室60を有する。本実施の形態における容積可変装置は、副室60の容積が変化する。
【0026】
本実施の形態における容積可変装置は、燃焼室5の圧力が制御圧力に到達したときに、燃焼室5の圧力変化を駆動源として副室60の容積が変化する。すなわち、容積可変装置は、燃焼室5の圧力が変化することにより作動する。本発明における制御圧力は、容積可変装置が作動し始めるときの燃焼室の圧力である。すなわち、副室用ピストン55が移動し始める時の燃焼室の圧力である。容積可変装置は、燃焼室5の圧力が異常燃焼の発生圧力以上になることを抑制する。本実施の形態においては、燃焼室5の圧力が異常燃焼の発生する圧力以上にならないように制御圧力を定めている。
【0027】
本発明における異常燃焼は、たとえば、点火装置により混合気が点火し、点火した点から順次燃焼が伝搬する状態以外の燃焼を含む。異常燃焼は、たとえば、ノッキング現象、デトネーション現象およびプレイグニッション現象を含む。ノッキング現象は、スパークノック現象を含む。スパークノック現象は、点火装置において点火し、点火装置を中心に火炎が広がっているときに、点火装置から遠い位置にある未燃燃料を含む混合気が自着火する現象である。点火装置から遠い位置にある混合気は、点火装置の近傍の燃焼ガスにより圧縮されて高温高圧になって自着火する。混合気が自着火するときに衝撃波が発生する。
【0028】
デトネーション現象は、高温高圧の混合気の中を衝撃波が通過することにより、混合気が着火する現象である。この衝撃波は、たとえば、スパークノック現象によって発生する。
【0029】
プレイグニッション現象は、早期着火現象とも言われる。プレイグニッション現象は、点火プラグの先端の金属または燃焼室内に堆積するカーボンスラッジ等が加熱されて、所定の温度以上を維持した状態になり、この部分を火種として点火時期の前に燃料が着火して燃焼する現象である。
【0030】
気体ばね50は、内部に気体を密閉することにより弾性を有するように形成されている。気体ばね50は、内部に気体を封入する封入機構を有する。気体ばね50は、燃焼室5に連通している筒状部を構成する筒状部材51を含む。本実施の形態における筒状部材51は、円筒状に形成されている。筒状部材51の内部には、移動部材としての副室用ピストン55が配置されている。
【0031】
筒状部材51の内部の空間は、副室用ピストン55により区画されている。筒状部材51の内部には、燃焼室5に向かう側に副室60が形成され、燃焼室5に向かう側と反対側にガス室61が形成されている。副室用ピストン55は、筒状部材51に固定されておらず、矢印201に示すように、筒状部材51の軸方向に移動するように形成されている。
【0032】
気体ばね50のガス室61には、燃焼室5の圧力が所望の制御圧力に到達したときに、副室用ピストン55が移動し始めるように、加圧された気体が封入されている。本実施の形態においては、ガス室61に空気が封入されている。密閉されたガス室61の圧力により副室用ピストン55が押圧されている。
【0033】
筒状部材51は、燃焼室5に向かう側の端部に形成された係止部52を有する。係止部52は、副室用ピストン55を筒状部材51の端部で係止する。副室用ピストン55が係止部52に接触している状態が、副室用ピストン55が筒状部材51の内部で着底している状態である。
【0034】
本実施の形態における内燃機関は、容積可変装置の気体ばねに気体を供給する気体供給装置を備える。本実施の形態における気体供給装置は、気体ばね50のガス室61に空気を供給する。
【0035】
本実施の形態における気体供給装置は、モータ71と、モータ71により駆動される圧縮機72と含む。圧縮機72の出口には、逆止弁82が配置されている。逆止弁82は、ガス室61の気体が逆流して流出することを防止する。圧縮機72には、逆止弁81およびフィルタ73が接続されている。フィルタ73は、圧縮機72に吸入される空気から異物を除去する。逆止弁81は、圧縮機72から空気が逆流することを防止する。
【0036】
気体ばね50には、気体を供給する流路が接続されている。本実施の形態における気体供給装置は、気体ばね50のガス室61の圧力を変更する機能を有する。気体供給装置は、空気排出弁84を含む。空気排出弁84は、ガス室61の気体を排出することができるように配置されている。気体供給装置は、圧力調整弁85を含む。圧力調整弁85は、開閉することによりガス室61に供給する空気の圧力を調整する。本実施の形態においては、副室用ピストン55が移動する期間中は、圧力調整弁85が閉止される。圧力調整弁85を閉止することにより、ガス室61に接続される流路を遮断して、ガス室61を密閉することができる。
【0037】
本実施の形態における気体供給装置は、気体ばね50のガス室61の圧力を検出するガス室圧力検出器としての圧力センサ74を含む。本実施の形態における圧力センサ74は、圧縮機72と筒状部材51とを接続する流路に配置されているが、この形態に限られず、ガス室圧力検出器は、ガス室61の圧力を検出することができる任意の位置に配置することができる。
【0038】
気体供給装置は、電子制御ユニット31により制御されている。本実施の形態においては、モータ71が電子制御ユニット31に制御されている。本実施の形態における空気排出弁84および圧力調整弁85は電磁弁であり、電子制御ユニット31により制御されている。圧力センサ74の出力は、電子制御ユニット31に入力される。
【0039】
本実施の形態における内燃機関は、運転期間中または停止期間中にガス室61から空気が漏れても、ガス室61に空気を充填することができる。たとえば、モータ71にて圧縮機72を駆動し、更に圧力調整弁85を開くことにより、気体ばね50のガス室61に空気を供給することができる。
【0040】
また、本実施の形態における気体供給装置は、ガス室61の圧力を上昇させることができる。更に、本実施の形態における気体供給装置は、気体ばね50のガス室61から気体を排出することができる。圧力調整弁85および空気排出弁84を開くことにより、ガス室61の圧力を下降させることができる。このように、ガス室61の圧力を変更することにより、制御圧力を変更することができる。気体供給装置としては、この形態に限られず、気体ばねのガス室に気体を供給できる任意の装置を採用することができる。
【0041】
本実施の形態における内燃機関は、気体ばねに潤滑油を供給する潤滑油供給装置を備える。本実施の形態における潤滑油供給装置は、機関本体に使用されている潤滑油を気体ばね50に供給するように形成されている。潤滑油供給装置は、潤滑油噴射弁92に潤滑油を移送するための潤滑油ポンプ91と、潤滑油を噴射する潤滑油噴射弁92とを含む。本実施の形態における潤滑油ポンプ91は、高圧のガス室61の内部に潤滑油を噴射できるように高圧ポンプが採用されている。
【0042】
潤滑油供給装置は、電子制御ユニット31に制御されている。本実施の形態においては、潤滑油ポンプ91および潤滑油噴射弁92が電子制御ユニット31に制御されている。本実施の形態における潤滑油供給装置は、ガス室61の内部に潤滑油を供給するように形成されている。潤滑油ポンプ91が作動することにより、矢印202に示されるように、潤滑油噴射弁92に高圧の潤滑油が供給される。潤滑油噴射弁92が開くことにより、潤滑油が筒状部材51の内部に向かって噴射される。
【0043】
本実施の形態における潤滑油供給装置は、ガス室の内部に潤滑油を噴射するように形成されているが、この形態に限られず、潤滑油供給装置は、筒状部と移動部材との摺動部分に潤滑油を供給するように形成されていれば構わない。
【0044】
図3に、本実施の形態の内燃機関における燃焼室の圧力のグラフを示す。横軸がクランク角度であり、縦軸が燃焼室の圧力および副室用ピストンの変位である。図3には、燃焼サイクルのうち圧縮行程および膨張行程のグラフが示されている。副室用ピストン55は、筒状部材51の底部に着底しているときの変位が零である。本実施の形態における容積可変装置は、燃焼サイクルの圧縮行程から膨張行程の期間中に、燃焼室の圧力が制御圧力に到達した場合に、副室用ピストン55が移動する。この結果、気体ばね50の副室60の容積が大きくなる。
【0045】
図2および図3を参照して、圧縮行程の開始時には副室用ピストン55が筒状部材51の底部に着底している。圧縮行程ではピストン3が上昇して、燃焼室5の圧力が上昇する。ここで、ガス室61には制御圧力に対応する圧力の気体が封入されているために、燃焼室5の圧力が制御圧力になるまでは、副室用ピストン55は着底した状態が維持される。
【0046】
図3に示す実施例では、クランク角度が0°(TDC)より僅か後に点火される。点火されることにより燃焼室5の圧力が急激に上昇する。燃焼室5の圧力が制御圧力に達したときに、副室用ピストン55が移動し始める。混合気の燃焼が進むと、ガス室61が縮んで副室用ピストン55の変位が大きくなる。副室60の容積が大きくなる。このために、燃焼室5および副室60の圧力が上昇することが抑制される。図3に示す例では、燃焼室の圧力がほぼ一定に保たれる。なお、厳密には副室用ピストン55が移動することによりガス室61内の圧力が上昇するために、燃焼室5の圧力も僅かに上昇する。
【0047】
燃焼室において、更に燃料の燃焼が進むと、副室用ピストン55の変位は最大になった後に小さくなる。ガス室61の圧力が減少して、副室用ピストン55の変位が零に戻る。すなわち、副室用ピストン55は着底する位置まで戻る。燃焼室5の圧力が制御圧力未満になった場合には、クランク角度の進行とともに燃焼室5の圧力が減少する。
【0048】
このように、本実施の形態における燃焼圧力制御装置は、燃焼室5の圧力が制御圧力に到達したときに燃焼室の圧力上昇を抑制し、燃焼室の圧力が異常燃焼の発生する圧力以上にならないように制御することができる。
【0049】
図3には、比較例1および比較例2の燃焼室の圧力のグラフが示されている。比較例1および比較例2は、本実施の形態における容積可変装置を有していない内燃機関である。内燃機関は、点火時期に依存して、燃焼室の圧力が変動する。内燃機関は、出力トルクが最大になる点火時期θmaxを有する。比較例1は、点火時期θmaxで点火したときのグラフである。出力トルクが最大になる点火時期で点火することにより、燃焼室の圧力が高くなり熱効率が最良になる。ところが、比較例1のように点火時期が早いと、燃焼室の圧力が異常燃焼の発生する圧力よりも高くなる。比較例1のグラフは、異常燃焼が発生しないと仮定している。一方で、実際の内燃機関では、燃焼室の最大圧力(Pmax)が異常燃焼の発生する圧力よりも小さくなるように点火時期を遅角させている。
【0050】
比較例2の内燃機関では、異常燃焼を回避するために、出力トルクが最大になる点火時期よりも遅らせて点火している。点火時期を遅角させた場合には、出力トルクが最大になる点火時期で点火した場合よりも燃焼室の最大圧力が小さくなる。
【0051】
本実施の形態における内燃機関は、燃焼室の圧力が異常燃焼の発生する圧力未満で燃焼を行なうことができる。点火時期を早くしても異常燃焼の発生を抑制することができる。特に、圧縮比が高いエンジンにおいても異常燃焼を抑制することができる。さらに、燃焼室の圧力が高い時間を長くすることができる。このため、比較例2の点火時期を遅らせた内燃機関よりも熱効率が改善され、出力トルクを大きくすることができる。または、燃料消費量を少なくすることができる。
【0052】
図4に、本実施の形態における気体ばねの副室用ピストンの部分の拡大概略断面図を示す。図4に示す状態は、副室用ピストン55が筒状部材51の底部に着底している状態である。副室用ピストン55は、ピストン本体55aと、封止部材としてのピストンリング55bとを含む。副室用ピストン55は、ピストンリング55bが筒状部材51に接触している。副室60には燃焼ガスが流入するために、ピストンリング55bは、耐熱性を有する材料で形成されている。ピストンリング55bは、たとえば金属により形成されている。
【0053】
ガス室61の内部に供給された潤滑油93は、ガス室61の高い圧力により、矢印204に示すように押圧される。潤滑油93は、副室用ピストン55と筒状部材51との摺動部分に配置される。十分な量の潤滑油93が副室用ピストン55と筒状部材51との摺動部分に配置されている場合には、潤滑油の粘性により気密性が高くなる。このため、ガス室61から気体が漏れることを効果的に抑制することができる。
【0054】
ところが、潤滑油93の量が少なくなると、副室用ピストン55と筒状部材51との間に生じる隙間を通って、ガス室61に密封されている気体が燃焼室5に漏れる。または、ピストン本体55aとピストンリング55bとの間を通って気体が漏れる。また、潤滑油93の量が少なくなると、副室用ピストン55が焼き付く虞がある。このために、筒状部材51と副室用ピストン55との摺動部分には、所定の量の潤滑油93が保持されていることが好ましい。本実施の形態における内燃機関は、ガス室の圧力変化に基づいて、筒状部材51と副室用ピストン55との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定する潤滑油保持量推定装置を備える。
【0055】
図5に、本実施の形態における内燃機関の運転制御のフローチャートを示す。本実施の形態の運転制御においては、ステップ101において、ガス室の圧力が低い場合にはガス室に空気を供給する空気供給制御を行う。また、ステップ102において、筒状部材と副室用ピストンとの摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定し、潤滑油の量が少ないと推定される場合には、上記の摺動部分に潤滑油を供給する潤滑油供給制御を行う。
【0056】
図6に、本実施の形態における空気供給制御のフローチャートを示す。図6に示す制御は、例えば、予め定められた時間間隔ごとに繰り返して行うことができる。図2を参照して、本実施の形態の空気供給制御においては、ガス室61に密封されている空気の圧力が予め定められた圧力範囲内であるか否かを判別する。ガス室61の圧力は、制御圧力に対応する。本実施の形態においては、制御圧力の範囲に対応したガス室61の圧力範囲が予め定められている。ガス室61から空気が燃焼室5に向かって漏れた場合には、ガス室61の圧力が予め定められた圧力範囲よりも低くなる。この場合には、ガス室61に、空気を供給する制御を行う。本実施の形態の空気供給制御においては、気体ばね50のガス室61の圧力が、予め定められた圧力範囲内になるように制御を行う。
【0057】
始めに、ステップ111においては、内燃機関のクランク角度が制御禁止期間内か否かを判別する。図7に、本実施の形態における内燃機関を運転したときのタイムチャートを示す。内燃機関の圧縮行程から膨張行程において燃焼室の圧力が上昇して制御圧力まで到達する。クランク角度θ2からクランク角度θ3までの期間は、燃焼室の圧力が制御圧力に到達している期間である。クランク角度θ2からクランク角度θ3までは、副室用ピストンが移動している。
【0058】
本実施の形態における空気供給制御においては、ガス室の圧力を検出するために、ガス室の圧力が変化しないことが好ましい。また、ガス室に空気を供給する場合があるために、ガス室の容積は変化しないことが好ましい。また、本実施の形態における潤滑油供給制御においても、ガス室の圧力を検出するために、ガス室の圧力が変化しないことが好ましい。
【0059】
このために、本実施の形態における空気供給制御および潤滑油供給制御は、容積可変装置が作動している期間、すなわち副室用ピストンが移動している期間内を避けて制御を行う。図7に示す運転例では、クランク角度θ2からクランク角度θ3までの期間が副室用ピストンの移動する期間である。本実施の形態においては、副室用ピストンの移動する期間を含むクランク角度θ1からクランク角度θ4までを制御禁止期間としている。本実施の形態においては、副室用ピストンの移動する期間に余裕を含めた期間を制御禁止期間としている。制御禁止期間は、この形態に限られず、容積可変装置が作動している期間を含む任意の期間を選定することができる。
【0060】
本実施の形態においては、制御禁止期間を避けた期間内において空気供給制御および潤滑油供給制御を行うことにより、副室用ピストンが停止している状態で、それぞれの制御を行うことができる。このため、副室用ピストンの移動中にガス室の圧力が変化して、内燃機関の運転に悪影響を与えることを抑制できる。または、空気供給制御または潤滑油供給制御を精度良く行うことができる。
【0061】
図6を参照して、空気供給制御のステップ111において、内燃機関のクランク角度が制御禁止期間内である場合には、この制御を終了する。
【0062】
ステップ111において、内燃機関のクランク角度が制御禁止期間でない場合には、ステップ112に移行する。ステップ112においては、ガス室の圧力PGを検出する。図2を参照して、ガス室61の圧力は、圧力センサ74により検出することができる。
【0063】
次に、ステップ113およびステップ115においては、ガス室61の圧力PGが予め定められた圧力範囲から外れているか否かが判別される。ステップ113においては、検出したガス室61の圧力PGが、予め定められた圧力範囲の低圧側の判定値よりも低いか否かを判別する。さらに、ステップ115においては、ガス室の圧力PGが、予め定められた圧力範囲の高圧側の判定値よりも大きいか否かを判別する。
【0064】
ステップ113において、ガス室61の圧力PGが低圧側の判定値よりも低い場合には、ステップ114に移行する。ステップ114においては、空気供給フラグを1にする。ステップ114が終了したら、ステップ115に移行する。また、ステップ113において、ガス室61の圧力PGが、低圧側の判定値以上であれば、ステップ115に移行する。
【0065】
ステップ115において、ガス室61の圧力PGが高圧側の判定値よりも高い場合には、ステップ116に移行する。ステップ116においては、空気供給フラグを零にする。ステップ116が終了したら、ステップ117に移行する。また、ステップ115において、ガス室61の圧力PGが、高圧側の判定値以下であれば、ステップ117に移行する。なお、ステップ113,114とステップ115,116は、順序を入れ替えても構わない。
【0066】
ステップ117においては、空気供給フラグが1か否かを判別する。ステップ117において空気供給フラグが1である場合には、ステップ118に移行する。ステップ118においては、圧力調整弁85を開く制御を行う。図2を参照して、圧力調整弁85を開くことにより、ガス室61に空気を供給することができる。すなわち、気体ばねに空気を補充することができる。圧力調整弁85が既に開いている場合には、開いている状態を継続する制御を行う。
【0067】
ステップ117において、空気供給フラグが1でない場合、すなわち空気供給フラグが零である場合には、ステップ119に移行する。ステップ119においては、圧力調整弁を閉じる制御を行う。圧力調整弁85が既に閉じている場合には、閉じている状態を継続する制御を行う。
【0068】
図8に、本実施の形態における空気供給制御のタイムチャートを示す。図8の運転例においては、クランク角度θ3からクランク角度θ4が制御禁止期間である。内燃機関の運転とともにガス室の圧力が徐々に減少している。
【0069】
クランク角度θ1において、ガス室の圧力が低圧側の判定値未満になっている。クランク角度θ1において、圧力調整弁85を開く制御が行われている。圧力調整弁85を開くことにより、ガス室の圧力が上昇する。クランク角度θ2において、ガス室の圧力が、高圧側の判定値を超えている。クランク角度θ2において、圧力調整弁が閉じる制御が行われている。
【0070】
このように、本実施の形態の空気供給制御においては、ガス室の圧力が所望の圧力範囲内に維持されるように制御を行なうことができる。
【0071】
図9に、本実施の形態における潤滑油供給制御のフローチャートを示す。図9に示す制御は、例えば、予め定められた時間間隔ごとに繰り返して行うことができる。本実施の形態の潤滑油供給制御においては、図2を参照して、副室用ピストン55が着底し、停止している期間におけるガス室61の圧力変化を検出する。本実施の形態においては、繰り返して制御を行っている期間中に、前回のガス室61の圧力と今回のガス室61の圧力との差を検出する。ガス室61の圧力変化に基づいて、筒状部材51と副室用ピストン55との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定する。推定した潤滑油の量が、予め定められた判定値未満である場合には、潤滑油供給装置によりガス室の内部に向かって潤滑油を供給する。
【0072】
始めに、ステップ131においては、内燃機関のクランク角度が制御禁止期間内か否かを判別する。本実施の形態における潤滑油供給制御は、制御禁止期間を避けた期間にて行う。ステップ131において、クランク角度が制御禁止期間内であれば、この制御を終了する。ステップ131において、クランク角度が制御禁止期間内でなければ、ステップ132に移行する。なお、本実施の形態においては、空気供給制御の制御禁止期間と、潤滑油供給制御の制御禁止期間とが同一であるが、この形態に限られず、それぞれの制御禁止期間が互いに異なっていても構わない。
【0073】
次に、ステップ132においては、空気供給制御における空気供給フラグが1であるか否かを判別する。図6を参照して、空気供給制御において、空気供給フラグが1である場合には、ガス室の圧力が低圧側の判定値よりも低い状態であり、ガス室に空気が供給される。または、空気供給フラグが1である場合には、ガス室の圧力が予め定められた圧力範囲内であり、ガス室に空気が供給されている。このために、空気供給フラグが1である場合には、潤滑油供給制御を終了している。本実施の形態の潤滑油供給制御においては、ガス室に空気が供給される期間を避けて潤滑油を供給するか否かの判別を行う。ステップ132において、空気供給フラグが1でない場合、すなわち空気供給フラグが零である場合には、ステップ133に移行する。
【0074】
ステップ133においては、今回のガス室の圧力PGを検出する。
【0075】
次に、ステップ134においては、予め定められた時間における圧力差を算出する。本実施の形態においては、ガス室の圧力PG0からガス室の圧力PGを減算した圧力差PGDELTを算出する。ガス室の圧力PG0は、予め定められた前の時間におけるガス室の圧力である。本実施の形態のガス室の圧力PG0は、前回の制御において検出されたガス室の圧力が採用されている。すなわち、本実施の形態における圧力差PGDELTは、前回のガス室の圧力から今回のガス室の圧力を減算した値である。
【0076】
次に、ステップ135においては、算出された圧力差PGDELTが、予め定められた圧力差判定値よりも大きいか否かが判別される。ステップ135において、圧力差PGDELTが、予め定められた圧力差判定値以下の場合には、ステップ137に移行する。一方で、圧力差PGDELTが、予め定められた圧力差判定値よりも大きい場合には、潤滑油の量が少ないと推定することができる。または、潤滑油が不足していると推定することができる。この場合には、ステップ136に移行する 。
【0077】
ステップ136においは、潤滑油供給装置により潤滑油を気体ばねに供給する制御を行う。本実施の形態においては、潤滑油噴射弁を開く制御を行う。例えば、予め定められた時間の間、潤滑油噴射弁を開く制御を行なうことができる。図2を参照して、潤滑油噴射弁92を開くことにより、ガス室61の内部に潤滑油を供給することができる。筒状部材51の内面等に潤滑油を供給することができて、筒状部材51と副室用ピストン55との摺動部分に潤滑油を供給できる。
【0078】
次に、ステップ137においては、ガス室の圧力PG0に、今回のガス室の圧力PGを入力する。このように、図9に示す潤滑油供給制御を繰り返すことができる。
【0079】
前述のとおり、筒状部材と副室用ピストンとの間に保持されている潤滑油の量が少なくなると、ガス室61から漏れる空気の量が多くなる。そこで、本実施の形態においては、予め定められた時間におけるガス室の圧力差を検出し、ガス室の圧力差が予め定められた圧力差判定値よりも大きい場合には、筒状部材と副室用ピストンとの間に保持されている潤滑油の量が予め定められた判定値未満であると判別している。
【0080】
本実施の形態においては、ガス室の圧力変化として、前回のガス室の圧力と今回のガス室の圧力との差分を検出しているが、この形態に限られず、ガス室の圧力変化の検出方法としては、ガス室の圧力低下の速度を検出する任意の制御を採用することができる。たとえば、前回のガス室の圧力としては、予め定められた複数回前に検出したガス室の圧力を採用しても構わない。または、単位時間あたりのガス室の圧力低下量を算出しても構わない。
【0081】
図10に、本実施の形態における潤滑油供給制御のタイムチャートを示す。図10に示す運転例においては、クランク角度θ3からクランク角度θ4までの期間が、制御禁止期間である。制御禁止期間以外の期間中には、副室用ピストン55が停止している。潤滑油の量が少なくなると、ガス室の圧力の低下速度が徐々に速くなる。図10に示す制御においては、クランク角度θ1において、ガス室の圧力差PGDELTが圧力差判定値を超えている。そこで、クランク角度θ1からクランク角度θ2まで、潤滑油噴射弁を開く制御が行われている。潤滑油噴射弁を予め定められた時間の間、開いている。潤滑油噴射弁からガス室の内部に潤滑油を供給することにより、ガス室の気体の漏れ速度を小さくすることができる。クランク角度θ2以降では、クランク角度θ1以前よりも、ガス室の圧力の低下速度が遅くなっている。すなわち、クランク角度θ2以降では、筒状部材と副室用ピストンとの摺動部分に潤滑油が十分に保持されており、ガス室からの空気の漏れが抑制されている。
【0082】
このように、本実施の形態においては、筒状部材の内部で移動部材が停止している期間にガス室の圧力変化を検出し、ガス室の圧力変化に基づいて、筒状部材と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定している。この制御を行なうことにより、容積可変装置において潤滑油が不足することを検出することができる。
【0083】
また、本実施の形態においては、筒状部材と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量が、予め定められた判定値未満である場合には、ガス室の内部に潤滑油を供給する制御を行なっている。すなわち、容積可変装置において、潤滑油が不足していると判別される場合には、ガス室の内部に潤滑油を供給する制御を行なっている。この制御により、潤滑油の量を、ほぼ適量に維持することができる。潤滑油が不足して、副室用ピストンが焼きついたり、ガス室からの気体が漏れたりすることを抑制できる。
【0084】
容積可変装置における潤滑油の量が不足していると判別される場合には、ガス室の内部に潤滑油を供給する制御に限られずに、任意の制御を行うことができる。例えば、容積可変装置における潤滑油の量が不足していると判別される場合には、容積可変装置のガス室の圧力を非常に高くして、副室用ピストンが移動しないように制御しても構わない。または、燃焼室における点火時期を遅角して、燃焼室の最高圧力を低下させる制御を行なっても構わない。
【0085】
上記の実施の形態においては、ガス室の圧力変化のうち、ガス室の圧力低下が速くなる場合を例示したが、この形態に限られず、ガス室の圧力低下が遅くなる場合にも本発明を適用することができる。たとえば、潤滑油が不足しているためにガス室の内部に徐々に潤滑油を供給している期間に、ガス室の圧力が低下する速度に基づいて、筒状部と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定することができる。推定された潤滑油の量が予め定められた判定値を超えたときに、ガス室の内部への潤滑油の供給を停止することができる。この制御により、ガス室に供給される潤滑油の量が多くなりすぎることを抑制できる。たとえば、ガス室の内部に多くの潤滑油を保持すると、潤滑油の消費量が多くなり、潤滑油が無駄に消費されてしまう。ガス室に供給される潤滑油の量が多くなりすぎることを抑制することにより、潤滑油の消費を抑制することができる。
【0086】
本実施の形態の潤滑油供給制御は、内燃機関の運転期間中に行っているが、この形態に限られず、内燃機関の停止期間中にも行うことができる。また、本実施の形態における潤滑油供給制御は、空気供給制御と共に行われているが、この形態に限られず、潤滑油供給制御を単独で行っても構わない。また、上記のそれぞれの制御においては、適宜順序を変更することができる。
【0087】
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される変更が含まれている。
【符号の説明】
【0088】
1 機関本体
5 燃焼室
31 電子制御ユニット
50 気体ばね
51 筒状部材
55 副室用ピストン
55a ピストン本体
55b ピストンリング
60 副室
61 ガス室
72 圧縮機
84 空気排出弁
85 圧力調整弁
91 潤滑油ポンプ
92 潤滑油噴射弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に連通する筒状部、および筒状部の内部に移動可能に配置されている移動部材を含む容積可変装置と、
筒状部と移動部材との摺動部分に潤滑油を供給する潤滑油供給装置とを備え、
移動部材は、筒状部の内部の空間を区画して、燃焼室に向かう側に副室を形成し、燃焼室に向かう側と反対側に密閉可能なガス室を形成しており、
容積可変装置は、燃焼室の圧力が制御圧力に到達したときに、燃焼室の圧力変化を駆動源として移動部材が移動し、副室の容積が大きくなるように形成されており、
筒状部の内部で移動部材が停止している期間にガス室の圧力変化を検出し、ガス室の圧力変化に基づいて、筒状部と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量を推定することを特徴とする、内燃機関。
【請求項2】
潤滑油供給装置は、ガス室の内部に潤滑油を供給するように形成されており、
筒状部と移動部材との摺動部分に保持されている潤滑油の量が予め定められた判定値未満の場合に、ガス室の内部に潤滑油を供給することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−52484(P2012−52484A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196825(P2010−196825)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】