説明

円盤状物の位置決め方法並びに、その方法を使用する円盤状物の位置決め装置、搬送装置および半導体製造設備

【課題】位置決め装置と搬送ロボットとを具える半導体製造装置における設備立ち上げ時の各ポートでの基準位置教示の時間短縮を目的とする。
【解決手段】ウエハ等の円盤状物47の円周と検出手段の軌跡43とが交わる2点W1、W2を検出し、この2点とこれらを結ぶ線分の垂直二等分線42上の特定点Oと円盤状物の半径rとを用いて円盤状物の中心位置Aを算出する。これにより搬送ロボットに位置決め作業をさせ、その結果を用いて搬送経路の修正ばかりでなく設備立ち上げの際の基準位置教示も大部分自動化できた。ノッチがある場合は、円盤状物の円周を検出手段の2本の軌跡で検出し、正しい中心位置を見いだす。またノッチを有する半径未知の円盤状物では、その円周を検出手段の、共にノッチに掛からない距離だけ互いに離間した3本の軌跡で検出して半径を求めることで、直径の異なるウエハを用いる混合生産も可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の円盤状物を複数場所間で移送する等取り扱う際に必ず行う必要がある、その取扱装置の位置を含む基準座標系における円盤状物の位置の基準となる基準位置の教示のための方法および装置に関するとともに、その教示における中心位置の求め方を用いた位置決め方法および装置と、その位置決めを利用して搬送軌道を自動修正する搬送方法および装置とに関し、さらに、それらの装置を利用する半導体製造設備にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1および図2に示すように、一般に半導体製造設備1は、半導体ウエハ等が棚段上に収納されているカセット6から各種多様な処理チャンバ7の搬送口であるロードロック室8へ、またそのロードロック室8から処理チャンバ7へとウエハを搬送ロボット4で搬送する又は搬送装置2を有している。この搬送ロボット4は、図3に示すように、ウエハ等を載置又は固定する保持部14を持つとともに屈伸、旋回および昇降動作することができる搬送アーム12を備えており、搬送ロボット4の各軸の動作は制御部11により制御されている。制御部11は、搬送ロボット4の位置座標を含む基準座標系における搬送の手順、経路および搬送位置の座標情報を記憶し、それを基に搬送ロボット4の各軸へと動作命令を出す。これにより搬送ロボット4はウエハ13等の円盤状物を所定の搬送位置へと自動的に搬送することができ、そのためには制御部11は、上記基準座標系での前記各種機器やウエハの位置座標をそれぞれ認識しておく必要がある。
【0003】
図26は、半導体製造設備1の立ち上げ時に原点座標を定めるための、図25に示す従来の搬送装置2における教示(ティーチング)工程のフローチャートの一部を示す。ここにおける「教示」とは、搬送ロボット4と、カセット6、ロードロック室8との間、必要ならば別途設ける位置決め装置10等との間でウエハ13等を受け渡しするための基準位置を決定するための作業である。
【0004】
例えば、カセット6に収納されているウエハ13等の円盤状物をロードロック室8へ搬送する工程に関して教示を行う場合、先ずステップS1で設計上の搬送ロボット4の仮位置情報(初期値)を制御部11に入力し、次いでステップS2により、基準位置としての、設計図面に基づいたカセット6との受け渡し位置へと、搬送ロボット4の保持部14を少しずつ手動操作(マニュアル)で移動させる。ただし、円盤状物はカセット6内の棚段の正常位置に載置されたままで、保持部14に固定されていない状態である。
【0005】
次いでステップS3で、図3に示すように、保持部14上に案内治具20を取り付け、円盤状物の載置位置と設計図上の保持位置とが完全に一致しているか否かを目視により確認する。ずれている場合はステップS4で、搬送ロボットを少しずつ手動操作で旋回、屈伸、昇降動作させて、保持部14の位置を適正な位置に修正し、続くステップS5で、ステップS4で得た位置情報を制御部11に伝達して初期位置情報を更新する。
【0006】
ステップS3での確認でずれが無い場合は、ステップS6で、保持した円盤状物をロードロック室8との受け渡し位置へ搬送し、次いでステップS7で、円盤状物の搬送位置が設計図面通りであるかを目視で確認する。実際の搬送位置にずれがある場合はステップS4へ戻ってステップS5へと進む。ずれがない場合、一連の教示は終了する。
【0007】
以下、搬送ロボット4に関しては位置決め装置10や他のカセット6、各ロードロック室8との間、また真空ロボット31に関しては各ロードロック室8や各処理チャンバ7等の他のポートとの間について、同様にステップS1からステップS7の手順に従って一つ一つ基準位置の教示作業を行っている。
【0008】
また、従来の生産工程中における、その都度の円盤状物の位置決めは、図25に示す如き位置決め装置(専用機)10を用いて行っている。図25に示す搬送装置2においては、搬送中のウエハ13の軌道がカセット6や各出入口の縁と干渉するのを防止するために、搬送ロボット4とは別途の円盤回転式位置決め装置10にウエハ13を一旦引き渡して正常位置に位置決めした後、再び搬送ロボット4がウエハ13を受け取って目的場所へ搬送するのが通常である。
【0009】
特公平7−27953号公報では、上記受け渡し工程を省略して生産性向上を図るために、ウエハを保持したまま搬送ロボットの搬送アームを動作させ、図27に示すような、各々発光部9aと受光部9bとを持ち光束9cでウエハ13を検出する3個のセンサ9が取り付けられた門型位置決め装置を通過させて、ウエハの中心位置を算出する方法を提案している。この方法では、ウエハの基準保持位置は予め教示してあり、教示位置と前記の門型位置決め装置で検出したウエハ中心位置との偏移量から保持部14の軌道を修正し、他の機器と干渉することなく目的場所に搬送する。これによって位置決め装置10に対する引き渡しと受け取りに要する時間が短縮され、上記方法は生産性の向上に寄与した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、先に述べた従来の教示作業は、図26のフローチャートに示すように、搬送ロボット4が関与する全ての機器との間で、案内治具20を用いて黙視で確認しながら試行錯誤を繰り返し基準位置を設定するという、全手動方式のもので、非常に労力を要する方法である。これは熟練した技術者による緊張した作業の連続であるため、図25に示す搬送装置のみで、丸一日或いはそれ以上の時間が必要であった。
【0011】
また、生産中における円盤状物の位置決め用として、前述のように図27に示す特公平7−275953号公報記載の門型位置決め装置が提案されているが、ここでも初期の教示は前記従来の方法を用いるため、設備立ち上げに要する労力には何ら変わりはない。しかも、門を通過させる装置であるため各ロードロック室や各処理チャンバの入り口ごとに1台設置しなければならないという問題があり、またこの装置はウエハ等円盤状被検物の直径以上に大きな装置であるため投資額が大きくなるという問題があった。さらに、円盤状物を前記門型位置決め装置に挿入する前には位置決め工程がないため、円盤状物がこの装置に衝突しないように予め前述のような手間が掛かる手動による位置決めをしておく必要があった。そして万一衝突した場合は、ごみの発生は必定で、さらにウエハ等被検物の破損に繋がりかねないという問題もあった。
【0012】
さらに、上記特公平7−27953号公報記載の位置決め方法では、切り欠き部の判別の仕方は幾何学的には図示されているが、代数学的に判別する方法が見いだされていない。従って、近似式法である最少自乗法によって円盤中心を算出する方法をとるため、検出手段であるセンサ9を少なくとも3個必要とし、円盤の周縁上の少なくとも6点と円盤保持部の中心1点、合計少なくとも7点を測定しなければならない。しかも周縁上6点の中に、切り欠き部縁上にあって円周上にない点が必ず含まれ、厳密には正しい位置が算出されず精度が良くなかった。また、切り欠き部を含まない周縁上4点から、公知のピタゴラスの定理に基づいて円盤の半径を求める計算式を提示しているが、切り欠き部上の点を除外出来ないため、実際には正確な円盤半径を求めることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、これらの問題点を解決するため鋭意検討した結果、新規、且つ、厳密な計算方法を開発してウエハ等円盤状物の中心位置の偏移量を測定、算出し、半導体設備の迅速な立ち上げを実現する新規な自動教示(オートティーチング)方法および位置決め方法を提案するものである。また、この理論に基づく教示装置、位置決め装置、算出した偏移量に基づいて搬送軌道の修正を行う搬送方法、搬送装置、さらにはこれらを利用した半導体設備をも提案するものである。ちなみに本発明でいう「教示」とは、円盤状物の搬送その他の取扱いを行う取扱装置の保持部等の動作の基準となる、円盤状物を置く場所の、その取扱装置の位置を含む基準座標系での位置座標である基準位置を、その取扱装置に入力して記憶させることをいい、また本発明における「位置決め」とは、保持部上等の任意の位置に載置された円盤状物やそれを保持する保持部等の位置が、先に入力された基準位置からどれだけずれているかを求めることをいう。
【0014】
先ず始めに、本発明の原理を説明する。図4は、円盤の円周と1個のセンサの円弧状の軌跡とが交差する場合を示す。測定すべき円盤47は、既知半径rの上記円周とセンサの既知半径Rの円弧状の検出軌跡43との交点をW1 ,W2 、それらの交点間の上記円周の円弧の頂点をW3 とすると、円弧W132 を形成する。この円弧の両端が為す線分W12 の垂直二等分線42は、測定円盤47の中心Aおよびセンサの円弧軌跡の中心Oの双方を通る。この垂直二等分線42と、予め教示した方向41との偏移角度αは、測定により求めることができる。また、垂直二等分線42と円弧の一端W1 との為す角度θも測定により求めることができる。
【0015】
次に測定円盤47の中心位置として、未知長さである線分AO(=L1 )を求める。W1 から垂直二等分線42の線分W3 Oに垂線を下ろしその交点をBとすると、
△W1 BOより、BO=Rcos θ,W1 B=Rsin θ ・・・(式1)
△W1 BAより、BO=rcos φ+ L1 ,W1 B=rsin φ・(式2)
即ち、Rcos θ=rcos φ+L1 ・・・・・・・・(式3)
Rsin θ=rsin φ ・・・・・・・・(式4)
移項して整理すると、rcos φ=Rcos θ−L1 ・・・・・(式5)
rsin φ=Rsin θ ・・・・・・・・(式6)
(式5)と(式6)を2乗し、左右両辺をそれぞれ加えると、
cos2φ+sin2φ=1だから、
2 =(Rcos θ−L1)2 +R2sin2 θ ・・・・・(式7)
従って、L1 =Rcos θ±(r2 −R2sin2 θ)1/2 ・・・・(式8)
【0016】
ここで、図4の様にセンサの検出軌跡43に対し測定すべき円盤の中心Aがその検出軌跡の乗る円の内側にある場合は、
1 =Rcos θ−(r2 −R2sin2 θ)1/2 ・・・・(式9)
外側にある場合は、
1 =Rcos θ+(r2 −R2sin2 θ)1/2 ・・・(式10)
となる。
ここでは、予め教示した円盤46の中心位置Cは既知であるから、線分COをL0 とすると、
直径方向の偏移長さΔH=L1 −L0 ・・・・・・・(式11)
よって、前期偏移角度αと、(式11)による直径方向の偏移長さΔHとを用いて、円盤の位置決めをすることができる。
【0017】
次に図5において、基準となる円盤状物46の円周を、1個のセンサの直線状の検出軌道43が円弧状に切る場合について説明する。予め教示した位置にある円盤46の円弧の両端が為す線分EFと、その垂直二等分線との交点をDとすると、中心Cとの距離CD(=X0)は予め教示してあるため判明している。
【0018】
同じく図5で、中心が未知の位置Aにある、既知半径rの測定すべき円盤状物47の円周を、センサの直線状検出軌道43によって円弧状に切る場合について述べる。前記円弧の両端点をW1 ,W2 とすると、線分W12 の長さは測定により既知となる。線分W12 の垂直二等分線とこの線分W12 との交点をBとし、未知の距離AB=X1 とすると、
△ABW2 は直角三角形であるから、
12+(BW2)2 =r2 ・・・・・・・(式12)
ここでBW2 =W12 /2であるから、
1 =±{r2 −(W12 /2)21/2 ・・・・・(式13)
従って、X方向の偏移量は
ΔX=X0 −X1 ・・・・・・・(式14)
として算出される。
【0019】
ここで検知軌道43上のD点は教示位置であるから既知であり、B点は線分測定点W12 の中点であるから測定により求まる。
従って、Y方向の偏移量
ΔY=BD ・・・・・・・(式15)
も測定により求まる。
よって偏移量(ΔX,ΔY)が算出される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1および請求項2記載の発明は、前記原理を用いて基準位置を教示する方法に関する。即ち本発明は、円盤状物の取扱装置にその取扱装置の位置を含む基準座標系での前記円盤状物の位置の基準となる基準位置を教示する方法において、基準位置とする所定場所に半径既知の円盤状物を置く工程と、前記基準座標系での前記円盤状物の中心位置を求める工程と、前記中心位置に基づいて演算で求めた前記基準座標系での前記所定場所の位置を基準位置として前記取扱装置に記憶させる工程と、を含み、前記円盤状物の中心位置を求める工程が、前記円盤状物に対し検出手段を相対的に移動させて前記円盤状物の円周に対し前記検出手段の1本の軌跡を交叉させる工程と、前記交叉による2個の交点の、前記基準座標系での位置を求める工程と、前記2個の交点を結ぶ線分の垂直二等分線上の特定点と前記2個の交点と前記円盤状物の半径とを用いて前記中心位置を算出する工程と、を含むことを特徴とする円盤状物の基準位置教示方法を提案している。請求項7は、この方法を実現するための装置に関するものである。
【0021】
ここでの特定点とは、既知又は測定により定まる点と定義する。即ち、検出手段の軌跡が円である場合はこの円の旋回中心であり、これは既知である。また検出手段の軌跡が直線である場合は前記円周との2つの交点を結ぶ線分の中点で、測定により直ちに求まる。本教示方法においては、基準位置とする所定場所に円盤状物を置く時に、好ましくは手動で行い、その際、その円盤状物として市販のウエハを用いる場合には、好ましくはノッチやオリエンテーションフラットなどの凹部を検出軌道からさけて置くようにする。またウエハ以外の、凹部や凸部がない円盤状物を用いてもよい。なお、画像処理等で凸部や凹部の位置を自動的に認識して、自動的に凸部や凹部を検出軌道からさけて置くようにしてもよい。
【0022】
同様に前述の原理により、円盤状物に凹部や凸部がない場合、或いはこれらが上記のようにして避けられる場合について、1個の検出手段を用いて請求項3記載の円盤状物の位置決め方法および請求項9記載の位置決め装置を提案した。前述の教示装置および位置決め装置には、具体的形態として、公知のロボット、搬送装置、位置決め専用装置など、本発明の方法が機能として実現できる、すべての装置を含む。
本発明では、円盤状物を検出するためのセンサが固定され、円盤状物が運動してもよいし、或いは、円盤状物が固定され、センサが運動してもよい。また、この運動は直線運動でもよいし、円運動でもよい。
また、請求項3〜請求項5の方法においては、円盤状物の中心位置を予め教示する必要があるが、その際、請求項1または請求項2記載の方法を用いてもよいし、従来公知の方法を用いてもよい。
【0023】
〔切り欠き部をよける方法1〕
請求項4および請求項10記載の発明は、半導体ウエハのようにノッチやオリエンテーションフラット等の周縁上の基準場所としての切り欠き部(凹部)や、円盤に付けられた取手のような凸部がある場合について、その位置決め方法および位置決め装置を提案したものである。即ちここでは、円盤状物の中心位置を算出するに際し、図6に示すように、例えば2つの検出手段9を用いて異なる検出軌道43,44を設ける。検出軌道43が凹部である切り欠き部51を通った場合、そこに切り欠き部が無かった場合に比べて円盤の外周との2つの交点がなす線分は短くなり、前記計算法で算出すると円盤中心は旋回中心O寄りにあると算出される。
【0024】
さらに詳しく説明すると、検知軌道43,44が共に切り欠き部を通らなかった場合は、図6において、垂直二等分線42の左側2つの三角形から(式16)のように、円盤の中心Aと旋回中心Oとの距離は共にAOであると算出する。
【数1】

一方、検出軌道43が切り欠き部51を通った場合は、旋回中心と円盤中心との距離COは、切り欠き部51がなかった場合に比べてΔL1 だけ短くなり、円盤49であると誤認する。即ち、
【数2】

と算出する。従って、(式16)と(式17)の計算結果を比べて大きい方を選べばよい。
【0025】
図7において、検出軌道44に切り欠き部がある場合も、同様にして大きい方の距離AOを選べばよい。
即ち、切り欠き部上を検出軌道が通れば、算出された円盤中心は必ず旋回中心O寄りにあって小さいと算出される。共には切り欠き部が入らないように2つの検出軌道を離間しておき、円盤の円周を2つの円弧状に切ってそれぞれの両端を測定し、旋回中心から見て外側にある円盤中心、即ち距離AOの値が大きい方を選べばよい。
ちなみに、2つの検出軌道43,44上にともに切り欠き部がない場合は、同じ場所に中心位置を見出すため、どちらを採用してもよい。
【0026】
〔切り欠き部をよける方法2、1つのセンサで2回通過する方法〕
請求項4では、次に図8,図9に示すように、1個のセンサと2回の旋回動作で2つの異なる円弧を形成させてもよい。即ち、円盤状物の中心を算出するに際し、旋回中心Oから検出軌道43までの距離Rはそのままに、2回目は円盤状物の中心位置を距離mだけずらして旋回する。ただし距離mは、2回の旋回動作で共には切り欠き部に掛らない程度に広げ、円盤の直径より狭い間隔とする必要がある。
【0027】
先ず、図8で検出軌道43が切り欠き部51を通らなかった場合と、通った場合とについて検出手順を説明する。先ず、検出軌道43が切り欠き部51に通らなかった場合は、垂直二等分線42の左側にある旋回角度θ1 の三角形から計算式(式18)により、円盤47を認識してその中心はAと算出する。
AO=Rcos θ1 −(r2 −R2sin2 θ1)1/2 ・・・・・(式18)
一方、検出軌道43が切り欠き部51を通った場合は、垂直二等分線42の右側にある旋回角度θ2 の三角形から、円弧の両端間距離が短いと誤認して円盤49を認識し、円盤中心はCであると誤認する。
CO=Rcos θ2 −(r2 −R2sin2 θ2)1/2 ・・・・(式19)
AO−CO=ΔL1 ・・・・・・・(式20)
即ち、切り欠き部に掛ると中心CはΔL1 だけ旋回中心O側に寄っていると算出している。
【0028】
次に、図9に示すように、距離mだけずらして2回目の旋回動作させた場合について述べる。1回目の旋回で円盤47の切り欠き部51を検出軌道43が通った場合、円弧が小さくなったと誤認して、式19と同様な計算により本来の中心A' からΔL1 だけ旋回中心O側に寄ったC' に円盤中心があると算出する。次いで距離mだけ旋回半径が大きくなる方向にずらし、検出軌道43が円盤50の切り欠き部51を通らないようにすると、式9から円盤中心はA" であると認識する。
従って、CO(=A' O−ΔL1 )とA" O−mとを比較して大きい方(A"O−m)を採用すればよい。
同様にして、1回目の旋回動作で切り欠き部を発見せず、2回目の旋回動作で発見しても、円盤の正しい中心と旋回中心との距離として、大きい方を選べばよい。
【0029】
次に、円盤の円周上に図示しない凸部がある場合は、これが無かった場合に比べて2つの交点がなす線分に比べて必ず大きくなる。従って、円盤の円周上に凸部がある場合は、これが無かった場合に比べて円盤中心が必ず旋回中心から遠い方にあると算出する。即ち、2つの線分から式9で計算される距離のうち、円盤中心と旋回中心との正しい距離として凸部がある場合は常に小さい方を選べばよい。従って、凹部や凸部に掛からない検出軌道による円盤中心を選ぶことができる。
凹部や凸部が2つの検出軌道上になかった場合は、前記同様同じ場所に中心位置を見出すため、どちらを採用してもよい。
【0030】
また、請求項4および請求項10において、2本の検出軌道43,44が直線の場合も同様のことがいえ、これらを図10、図11に示す。切り欠き部上を検出軌道が通れば、通らなかった場合に比べて、算出された円盤中心は検出軌道から必ず外寄りにあると算出される。2つの検出軌道43,44を切り欠き部が共には入らないように平行間距離mだけ離しておき、円盤の円周を2つの円弧に切ってそれぞれの両端を測定し、検出軌道から見て内側にある円盤中心を選べばよい。
【0031】
さらに詳しく説明すると、図10において、検出軌道43,44がともに切り欠き部がなければ、それぞれからの算出は、円盤状物の中心位置はAであるとなり、XAP=XAB+mとなる。
しかし、検出軌道44が切り欠き部に掛かった場合は、本発明の計算方法では円弧は小さく円は49と誤認し、その中心はA' であると算出する。
従って、XAP<XA'Q となるから、XAB+m<XA'Q となる。
即ち、検出軌道43と検出軌道44とでの検出結果による中心位置情報を比較し、小さい方の距離XAB+mを正しい値として選択すればよい。
【0032】
同様に、検出軌道43が切り欠き部に掛かった場合について、図11に示す。検出軌道43上に共に切り欠き部がない場合の算出結果は、XAB=XAP−mとなる。
検出軌道43上に切り欠き部がある場合は円49と認識し、XAB<XA'B` 即ち、XAP− m<XA'B` となる。
従って、検出軌道43と検出軌道44との検出結果での中心位置情報を比較して切り欠き部がない方の小さい距離XAP−mを正しい値として選択すればよい。即ち、検出軌道から見て近い方にある円盤中心を常に選べばよいことになる。
【0033】
さらに請求項4および請求項10は、1個のセンサと2回の直線動作で2つの異なる円弧を形成させる場合も含む。即ち、図10、図11において検出手段9の軌跡が、1回目動作で検出軌道43、2回目動作で検出軌道44を描くか、或いはその逆の順に軌跡を描くとすれば、前記説明がそのまま当てはまる。
次に請求項6および請求項12では、搬送機能を有する装置に本発明の原理を応用し、求めた中心位置の偏移量から、ウエハなど円盤状物を目的場所に搬送するに際し、衝突や干渉が起きないように搬送軌道を予め定めた軌道から修正する方法およびそのための搬送装置を提案している。
【0034】
〔3本の検出軌道でウエハ半径rを求める方法〕
円盤状物のうち半導体ウエハは、国際半導体製造装置材料協会によるSEMI規格によって、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、300mmの6種類が定められ、それらの半径も規格化されており、且つ、サイズ毎に専用カセットに収納されている。従って、カセットが置かれた時点でウエハの半径rは分るため、前述の計算課程においては既知の値として扱ってきた。しかし、搬送工程中どのウエハサイズか確認する場合、また細かくは、ウエハ直径のメーカーによる差、ロット間のバラツキなどのための半径を測定したい場合がある。
本発明では、そのような要求に応え、円盤状物の半径rも測定算出することができる。
【0035】
請求項13から請求項16では、半径未知の円盤状物を測定しその半径および中心位置を算出し、その算出結果に基づいて円盤状物を位置決めする方法および装置について述べ、さらに請求項17では、その算出結果に基づき搬送経路を修正する搬送装置について述べている。
【0036】
ここで円盤の半径を求める原理を、図12を用いて、円盤円周と3つのセンサの旋回軌道とを交叉させた場合について説明する。旋回基線40は、予め定めたものである。3本の検出軌道43,44,45のうち43が切り欠き部を通ったとすると、他の検出軌道44および検出軌道45のウエハ外周縁との交点2つずつのそれぞれの間の線分の垂直二等分線42は共通で、旋回基線40とのなす角度はα1 であるが、検出軌道43の場合の垂直二等分線48と旋回基線40とのなす角度はα2 で、先のα1 と異なっている。従って、一つだけ垂直二等分線の角度が異なる検出軌道43を除外する。
検出軌道44および検出軌道45のウエハ外周縁との交点2つずつのそれぞれと旋回中心Oとからなる三角形はともに二等辺三角形で、線42は直角三角形を4つ作っている。旋回角度θ1 、θ2 はともに測定角、旋回半径R1 、R2 はともに設定距離、Lは未知数である。
2 =(R1cosθ1 −L)2+R12sin2θ1 ・・・(式21)
2 =(R2cosθ2 −L)2+R22sin2θ2 ・・・(式22)
旋回中心からみて検出軌道44と45が円盤中心より遠い距離にある場合、
L=R1cosθ1 −(r2 −R12sin2θ1)1/2 ・・・(式23)
L=R2cosθ2 −(r2 −R22sin2θ2)1/2 ・・・(式24)
式21に式24を代入すると、
【数3】

【0037】
ここで、
S=(r2 −R22sin2θ2)1/2 ・・・(式26)
とおき、式25に式26を代入すると、
【数4】

Sについて解くと
【数5】

両辺二乗して
【数6】

式24に式31を代入すると、
【数7】

ここで、旋回角度θ1 、θ2 はともに測定値であるからLが求まり、円盤状物47の中心Aは、共通垂直二等分線42上の、旋回中心Oから距離Lのところに求まる。
ちなみに、半径未知の円盤状物の半径rは、正の数だから、(式33)で求められる。
【数8】

ここでは、検出手段の3本の検出軌跡が円弧の場合を説明したが、これら検出軌跡が3本の平行線であってもよい。その場合は、旋回基線40に代えて、3本の平行線上の1点、または他の任意の1点を基点とすれば、同様にして半径未知の円盤状物の半径と、中心位置とを求めることができる。
【0038】
請求項2,5,14および請求項8,11,16は、前述の原理を応用した教示方法や位置決め方法および教示装置や位置決め装置のうち、センサ軌跡が円軌道である新規な方法および装置に限定している。この円軌道上をセンサが運動してもよいし、円盤状物が旋回運動してもよい。
さらに、本発明は請求項18において、前記のような教示装置、位置決め装置および搬送装置のいずれか1つ又は複数を用いることによって、改善された半導体製造設備を提供する。
本発明は、位置決め専用装置においても、搬送装置においても実現できる。また、ここで言う搬送装置は、旋回運動機構および/又は直線運動機構をもつ搬送装置、例えば、スカラ型ロボット、多関節ロボット、XY軸移動テーブル等公知の装置を含む。
【0039】
前記円盤状物の外周上の2点を検知するセンサの種類としては、非接触型のセンサを用いることが好ましい。電子部品である半導体ウエハを取り扱うことが多いため、電磁気的センサや機械的センサではなく、透過型または反射型の光センサーが好ましく、その中で、画像処理手段を伴うCCD等の二次元センサであっても、光量が定量化されるラインセンサであっても、ON、OFFが分る点センサであってもよい。この光センサは本発明を実現するためには、最小限点センサ1個で充分であるが、前述の如くノッチやオリエンテーションフラットを検出させるために2個のセンサを用いてもよい。偏移角を測定するセンサとしては、エンコーダなど公知の角度センサを用いてもよいが、サーボモータやステッピングモータ等のパルスモータにより角度としてのパルス値を採用してもよい。
本発明において記述した上記各計算式は、通常のコンピュータプログラムにより、搬送装置の搬送ロボットの制御用等のコンピュータで構成する算出手段で容易にその計算を実行でき、その計算結果は、搬送装置のロボット等の制御用のコンピュータで構成する制御手段に用いれば、容易に搬送装置の各部の運動軌道に反映することができる。
また、本発明における基準座標系は、直角座標系だけでなく極座標系であってもよく、またその座標系での位置を座標値で直接的に表されるものだけでなく搬送ロボットの各軸の作動量等で間接的に表されるものでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明に係る半導体製造設備について、円盤状物を位置決めする方法の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示す半導体製造設備1は、円盤状物であるウエハ13をカセット6からロードロック室8等へ搬送する搬送装置2と、ロードロック室8に接続してウエハ13に対し成膜、拡散、エッチング等の各種処理を行う処理装置3とを具えてなる。そのうちの搬送装置2は、ウエハが棚段状に収納されるカセット6を載置できる1個又は複数個のステージ19と、搬送アーム12を有するスカラ型の搬送ロボット4と、その搬送ロボット4を並んでいる複数個のステージの前でその列に平行に動かす移動手段17と、検出手段としてのセンサ9と、それら搬送ロボット4と移動手段17とセンサ9との作動を制御する、通常のコンピュータを有する制御部11とを具えて構成されている。なお、円盤状物の正確な位置補正を行なったり、ウエハ縁部のノッチ等切り欠き部を検出するために、図25に示す如き従来の位置決め装置10を搬送装置2の構成に含めることもできる。
【0041】
同じく図1に示す処理装置3は、レジスト塗布、露光、エッチング等各種処理を行う1個ないし複数個のチャンバ7と、前記チャンバ7同士をつなぐ移載室16と、移載室16内に備えられ円盤状物を搬送する真空ロボット31と、検出手段であるセンサ9と、搬送装置2のスカラ型搬送ロボット4により搬送された円盤状物の受け渡しを行うロードロック室8と、それらチャンバ7と真空ロボット31とセンサ9とロードロック室8の後述するドアとの作動を制御する、搬送装置2と共用の制御部11とを具えて構成されている。
なお、ロードロック室8には、複数枚の円盤状物を棚段上に載置するための図示しないポケットを設けてある。また、ロードロック室8内を真空状態とするため、搬入出口にはロードロックドア32が配設されている。
【0042】
〔基準位置教示方法(1)〕
各カセット、各ロードロック室、各処理チャンバなど各ポートでの教示を行う前にまず保持部と円盤状物との位置関係を示す原点座標を教示する。
図2の半導体製造設備1内でウエハ13を自動搬送させるには、事前に、搬送装置2と処理装置3との制御部11に、搬送ロボット4および真空ロボット31の少なくとも一方の位置を含む基準座標系上で原点座標とする基準位置を教示した後に、搬送軌道を教示する必要がある。教示前の位置は通常余裕を含めて設計されているので、詳細は現場合わせが必要である。本発明の基準位置教示方法の一実施例を、一つのロードロック室8を用いる場合について、図13のフローチャートに示す。
【0043】
先ずステップS11で、教示前の設計上の、上記基準座標系での第1ロードロック室8の仮位置情報(初期値)を制御部11に入力する。次いでステップS12で、搬送ロボット4の保持部14をロードロックドア32経由で導入して、その保持部14で、第1ロードロック室8内の、基準位置とする所定場所に手作業で置いたウエハまたはそれと同一直径の他の板からなる円盤状物(ここではウエハと同一符号で示す)13を保持し搬出する。
次いでステップS13で、搬送ロボット4が、保持した円盤状物13を検知手段としてのセンサ9のところに搬送し、ロボット4の胴体軸を中心に旋回して、センサ9の光で円盤状物13の外周縁部を円弧に切ってその円盤状物13の外周縁とセンサ光との交点の2点の、保持部14に対する位置ひいては上記基準座標系での位置を検出する。そしてステップS14で、得られた外周縁上の2点の位置情報から先に述べた計算式で求めた、上記所定場所での円盤状物13の中心位置を、基準位置として、制御部11の持つ搬送ロボット作動制御プログラムへ伝達し、ステップS11で入力した仮位置情報を書きかえ、原点座標教示作業を終了する。
ちなみに、これらステップS11〜S14は、制御部11に予め与えられたプログラムにより、制御部11自身が実行する。
【0044】
同様にして、真空ロボット31を用いて他のロードロック室8など各ポートについてそれぞれ教示する。即ち、本発明では、各ポートに関し最初に手動で基準位置とする所定場所にウエハなど基準円盤を置く以外は、すべて自動教示(オートティーチング)することができる。その際、保持部14が円盤状物13を保持する時に保持部14の保持中心と円盤状物13の中心とが従来の教示方法のように完全一致する必要はなく、搬送ロボット4のアームがロードロックドア32や他の機器に干渉しない程度なら多少ずれていてもよい。
【0045】
〔基準位置教示方法(2)〕
本発明の基準位置の教示方法の他の実施例においては、従来の案内治具を使用してもよい。保持部14を人が作業し易い適当な位置に移動させて、図3に示す如き案内治具20を保持部14に設置し、円盤状物を保持部14上に載置してその案内治具20に手で押し当て、その時の円盤状物の中心位置を基準位置とする方法である。この案内治具20は、ウエハと合致する曲面と、保持部14からなる平面の基準面を以って、物理的にウエハの位置を固定するものである。図14は、図3の装置においてオートティーチング(自動教示)を実施するときの処理手順のフローチャートを示しており、この処理では、各カセット、各ロードロック室など各ポートでの教示を行う前に、先ず保持部と円盤状物との位置関係を基準位置として教示する。
【0046】
先ずステップT1で、保持部14に対する円盤状物の仮位置情報(初期値)を制御部11に入力する。次いでステップT2で、保持部14上に案内治具20と円盤状物13とを手作業で載置し、円盤状物の中心位置が適正な位置に来るように手作業で調整する。
次いでステップT3で、検知手段としてのセンサ9のところで円盤状物13を旋回運動させて、円盤状物13の外周縁とセンサ光との交点の2点の、保持部14に対する位置ひいては上記基準座標系での位置を検出する。そしてステップT4で、得られた位置情報から先に述べた計算式で求めた保持部14上での円盤状物13の中心位置を、保持部14上の基準位置として、制御部11の持つ搬送ロボット作動制御プログラムへ伝達し、制御部11に記憶させる。
ちなみに、これらステップT1〜T4は、ステップT2を除き、制御部11に予め与えられたプログラムにより、制御部11自身が実行する。
【0047】
〔その他のポートの教示方法〕
前述のように定めた基準位置を基に、オートティーチングにより円盤状物をカセットから搬出する場合の教示(位置決めおよび軌道修正を含む)の手順について、図15のフローチャートに示す。
【0048】
先ずステップU1で、搬送仮位置情報(初期値)および基準位置情報を制御部11に入力する。次いでステップU2で、カセット6および円盤状物13を手作業で設計上の位置へ載置する。
次いでステップU3で、搬送ロボット4がカセット6内の受け渡し場所から円盤状物13を受け取る。そしてステップU4で、搬送ロボット4が円盤状物13をセンサ9のところに移動させて旋回させ、上記と同様に外周縁の2点を検出する。
次いでステップU5で、ステップT4で得られた情報(測定値)を偏移量算出手段へ伝達する。次いでステップT6で、偏移量算出手段により測定値と基準位置を比較し偏移量を算出する。次いでステップU7で、ずれている場合、偏移量を制御部11の持つ搬送ロボット作動制御プログラムへ伝達する。
ちなみに、これらステップU1〜U7は、ステップU2を除き、制御部11に予め与えられたプログラムにより、制御部11自身が偏移量算出手段等となって実行する。
そしてステップU8で、制御部11は、上記偏移量を考慮して搬送ロボット4の軌道を修正する。つまりは設計図面上の搬送位置である初期値を更新する。ずれていなければ一連の教示は終了する。
【0049】
同様に、他のカセット6、各ロードロック室8など各ポートとの受け渡し場所についても、それぞれ図15のステップU1からステップU8までの手順に沿って行われる。本発明に基づく教示方法によって、ステップU2における円盤状物を手作業で設計図面上の位置へ載置する工程以外は、全て自動的に行うことができるようになった。
【0050】
また、メンテナンス時にカセット6等の位置を移動させた場合、従来は図26の手間の掛かるステップS1からS7まで工程を全て手動で再度行っていたが、本発明に基づくオートティーチングでは、図15のステップU2のみ手動で行えば、後は自動的に進む。また、保持部14を取り替えた場合は、基準位置の教示をステップU1から再び行い、新旧の情報を比べ、偏移量をそれぞれの測定値に反映させればよい。これにより、ロードロック室8への搬送位置は常に一定となり、各処理チャンバ7付近での干渉がなくなり、ごみも軽減される。
【0051】
図16は、本発明の円盤状物の位置決め装置の一実施例としての、搬送ロボット4と、検出手段である光学式点センサ9とを備えた搬送装置2を示す。この搬送ロボット4の搬送アーム12を動作させる駆動手段は、あらかじめ設定された基準点を持ち、偏移量は光学センサ9の出力信号と上記駆動手段のステッピングモータのパルスとを計測し演算して求める。搬送アーム12が始動する際、搬送ロボット4の全軸が基準点にあることを制御部11により確認し、制御部11からの命令により、搬送ロボット4の各軸を屈伸、昇降動作させ、センサ9のところで旋回させ、ウエハ13の位置決めを実施する。
【0052】
図16はまた、ウエハ13の基準位置が予め教示されている本発明の位置決め方法の一実施例を説明したものである。ウエハ13をカセット6から搬送アーム12の保持部14上に載置して搬出した搬送ロボット4は、その胴体の回転軸を中心に旋回して、検出手段としての固定された光学センサ9のコの字状枠の間にウエハ13を通過させ、ウエハ13の外周縁部をセンサ光で円弧に切る。これによってウエハ13の中心位置が計測算出され、偏移量とウエハ外周縁の位置座標とが上記偏移量算出手段により算出されて、搬送アーム12の保持部14上におけるウエハ位置が決まる。
【0053】
算出された偏移量は、搬送アーム12の動作を制御している制御部11に送られ、予め教示された搬送位置の情報に、偏移量を考慮した補正値を加えることにより、搬送位置および搬送軌道が修正される。また、図16中の検知手段としてのセンサ9は、ウエハ13を保持した搬送アーム12が旋回動作するとき、搬送ロボット4に対し定められた位置で、且つ、円盤状物13を検知することができる位置に設置される。
図16の右側の処理装置3内の真空ロボット31も、同様にして検出手段としてのセンサを用いて、各ロードロック室8、各処理チャンバ7における基準位置の教示、ウエハ13を受け取った後の位置補正のための位置決めを実施するものである。
【0054】
〔位置決め装置(アライナ)に採用した場合1〕
図17は、本発明の位置決め方法を位置決め装置に用いた一実施例について示すものである。この位置決め装置10はウエハ13を真空吸着できる保持台19を備え、保持台19の下方には回転手段と1軸ないしは2軸方向へ移動可能にするX軸移動手段、Y軸移動手段と、昇降手段21を備えている。ここでは、搬送ロボット4等により載置されたウエハ13が静置された状態で、ステージ上に設けられた検出アーム24が旋回して検出軌跡43を描き、検出アーム24の先端部に設けられた検出手段としての光学式センサ9によりウエハ13の外周縁上の2点が検出される。この2点の位置を用い、前述した本発明の計算方法を適用してウエハ中心を算出し、X,Y軸方向の修正を行い、持ち替えて正常位置におかれたウエハを回転させ、別のセンサがそのウエハ13の縁部にある切り欠き部を検出し回転を停止する。
【0055】
〔位置決め装置(アライナ)に採用した場合2〕
図18は、検出アーム24がウエハ半径より短い場合についての位置決め装置10を示し、動作方法および位置決め方法は図17と同様である。
【0056】
〔位置決め装置(アライナ)に採用した場合3〕
図19は、従来の位置決め装置で本発明の位置検出方法を実施する場合について示したものである。この位置決め装置10は、回転しうる保持台19とX軸移動手段およびY軸移動手段と昇降手段と検知手段としての点センサ9とを備えている。回転するウエハ13が偏芯している場合は、回転によりウエハ13と同じ半径の検出軌道43で、ウエハ縁部が切られ2点を検出する。それ以降の位置決め方法は図17の装置と同様である。
【0057】
従来、搬送ロボット等により載置台に搬送された円盤状物は、光学式のラインセンサを用いる特開平6−224285で示される検出方法等で円盤状物の中心位置情報が得られる。この方法では載置部を回転駆動させ、1周分の縁部の位置情報を検知する必要があり、図20に示すように縁部の一部がラインセンサの検出範囲外にある場合については、X軸、Y軸の移動手段を駆動させ検出範囲内に入るように円盤状物を持ち替えることを前提に位置決め動作を行っている。そこで、本発明の位置決め方法を用いると、縁部の一部が検出範囲外に出ていても、ウエハの回転により必ず他の部分がセンサに入るので、ラインセンサ上の1点を検出点として定めておけば、図19と同様、本発明の中心位置算出方法により円盤状物の中心位置情報が算出される。即ち、持ち替えは全く不要でウエハの中心を算出することができる。
なお、ウエハの中心位置が分れば、位置決め装置のX,Y駆動部は不要で、図21に示すように、搬送ロボット4を動作させることにより、載置前に保持部14を正常位置に移動させて円盤状物13の位置決めをすることができる。
【0058】
〔保持部にセンサ〕
図22に示すように、搬送ロボット4の保持部14の先端ないし側部にセンサ9を設けて、搬送ロボット4の旋回や屈伸動作により、載置された円盤状物13の外周縁の2点を検出し、円盤状物13の中心位置を算出することができる。なお、検出軌道上に切り欠き部等が重なるか否かの判別をする場合、図10、図11に示した方法により、保持部14に2つの検出手段を配設するか、1つの検出手段で円盤状物13を2回走査させればよい。
【0059】
〔ポートドアにセンサ〕
図23は、搬送装置2のカセット用ドアにセンサ9を2個を取り付け(図では片方のみ示す)、搬送ロボット4の搬送アーム12を駆動して直線運動させ、ウエハ13を取り出す際、その中心を算出して位置決めし、搬送すべき他のポートへの正しい軌道に修正する。計算方法は図10、図11に示した通りである。
【0060】
〔直線運動〕
図24は、請求項9記載の本発明の位置決め装置の一実施例である。搬送ロボット4に付属させてセンサ1個からなる検出手段9を設け、搬送ロボット4の搬送アーム12を駆動してウエハ13を直線運動させ、ウエハ13の外周縁上の2点を検出する。これらによって中心を算出して位置決めし、搬送すべき他のポートへの正しい軌道に修正する。計算方法は先に(式12)から(式15)に示した通りである。
なお、本発明の教示方法や位置決め方法や搬送方法を実施するための位置計算等は、上記実施例では搬送装置2の制御部11が行ったが、本発明はこれに限られず、上記制御部11に接続した別途のコンピュータ等が行ってもよい。
また、図13のステップS11と、図14のステップT1と、図15のステップU1とでの初期値の入力は、上記実施例ではプログラムの実行により自動的に行っているが、キーボード操作等で人手で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明の円盤状物の基準位置教示方法および位置決め方法により、位置決め専用機を特に必要しないので、省スペース化が図れ、装置コストも押さえることができる。また、検出手段であるセンサも1個又は2個の安価な点センサで充分であり、コスト低下に貢献できた。
【0062】
さらに、本発明を基にした自動教示により、図1の半導体製造設備の場合、作業工数が大幅に短縮でき、作業時間も従来の約10分の1の1〜2時間程度に短縮することができた。さらに、搬送位置の目視確認等の人為的な誤差がなくなったので、メンテナンスを行っても作業前の状態に容易に回復できる。また円盤状物の搬送中に偏移量を算出することができるため、位置決め装置へ搬送する往復時間が省かれ、生産性も向上した。そして検出手段を常時作動させておき必要に応じて検出手段9を通過させれば、位置ずれ検出が行われるため、搬送が正常に行われているかを管理し、常に正常運転させることができる。
【0063】
加えて、未知の円盤状物の半径も測定、判別することができるため、枚葉毎に本発明の装置で半径を確認すれば、サイズが異なるウエハを同時に半導体処理装置に供給して処理することができ、ライン稼働率と生産性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を実施するための半導体製造設備の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】上記実施例の半導体製造設備を示す平面図である。
【図3】上記実施例の半導体製造設備における搬送ロボットを示す一部切り欠き斜視図である。
【図4】本発明の方法の原理を示す平面図である。
【図5】本発明の方法の原理を示す他の平面図である。
【図6】本発明の方法の2個の検出手段による切り欠き部検出原理を示す平面図である。
【図7】本発明の方法の2個の検出手段による切り欠き部検出原理を示す他の平面図である。
【図8】本発明の方法の1個の検出手段による切り欠き部検出原理を示す平面図である。
【図9】本発明の方法の1個の検出手段による切り欠き部検出原理を示す他の平面図である。
【図10】本発明の方法の2個の検出手段による切り欠き部検出と位置決めの原理を示す平面図である。
【図11】本発明の方法の2個の検出手段による切り欠き部検出と位置決めの原理を示す他の平面図である。
【図12】本発明の方法に基づく円盤半径の算出原理を示す平面図である。
【図13】本発明の教示方法の一実施例を用いた搬送装置への教示手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の教示方法の一実施例を用いた搬送装置への教示手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の位置決め方法の一実施例を用いた搬送装置へのその他のポートの教示手順を示すフローチャートである。
【図16】本発明を実施するための搬送装置の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図17】本発明を実施するための位置決め装置の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図18】本発明を実施するための位置決め装置の他の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図19】本発明を実施するための位置決め装置の他の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図20】本発明を実施するための位置決め装置の他の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図21】本発明を実施するための位置決め装置の他の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図22】本発明の1個の検出手段による切り欠き部検出と位置決めの一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図23】本発明の2個の検出手段による切り欠き部検出と位置決めの一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図24】本発明を実施するための搬送装置の一実施例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図25】従来の搬送装置を示す一部切り欠き斜視図である。
【図26】従来の搬送装置における教示手順を示すフローチャートである。
【図27】従来の位置決め装置の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 半導体製造設備
2 搬送装置
3 処理装置
4 搬送ロボット
5 ロードポート
6 カセット
7 処理チャンバ
8 ロードロック室
9 検出手段(センサ)
10 位置決め装置
11 制御部
12 搬送アーム
13 円盤状物(ウエハ)
14 保持部
15 カセット載置台
16 移載室
17 直線移動手段
18 ネジ軸
19 保持台
20 案内治具
21 昇降手段
22 ネジ軸
23 モータ
24 検出アーム
25 プーリ
26 タイミングベルト
27 ウエハ載置台
31 真空ロボット
32 ロードロックドア
40 旋回基線
41 旋回中心から基準円盤状物の中心へ向かう直線
42 旋回中心から円盤状物の中心へ向かう直線
43 検出軌道
44 43と異なる検出軌道
45 44と異なる検出軌道
46 基準となる円盤状物
47 測定しようとする円盤状物
48 凹部を検出した際の垂直二等分線
49 仮想の円盤状物
50 47と異なる旋回半径上にある円盤状物
51 切り欠き部(ノッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状物の取扱装置の位置を含む基準座標系での、周縁の一部に1個のノッチを有する半径未知の円盤状物の位置決めを行う方法において、
前記基準座標系での、前記ノッチを有する円盤状物の中心位置を求める工程と、
前記基準座標系での、予め教示された中心位置から前記求められた中心位置への偏移量を算出する工程と、
を含み、
前記ノッチを有する円盤状物の中心位置を求める工程は、
前記円盤状物に対し検出手段を相対的に移動させて前記円盤状物の周縁に対し、前記検出手段の、共に前記ノッチに掛からない距離だけ互いに離間した3本の軌跡を交叉させて1組2点からなる3組の交点の、前記基準座標系での位置を求める工程と、
前記3組の交点のそれぞれについての3本の垂直二等分線のうち共通する垂直二等分線を選択する工程と、
前記共通する垂直二等分線上の特定点とその共通する垂直二等分線についての2組の交点とから前記円盤状物の半径および中心位置を算出する工程と、
を含むことを特徴とする、円盤状物の位置決め方法。
【請求項2】
前記検出手段の軌跡は円弧であることを特徴とする、請求項1記載の円盤状物の位置決め方法。
【請求項3】
円盤状物の取扱装置の位置を含む基準座標系での、周縁の一部に1個のノッチを有する半径未知の円盤状物の位置決めを行う装置において、
前記基準座標系での、前記ノッチを有する円盤状物の中心位置を求める手段と、
前記基準座標系での、予め教示された中心位置から前記求められた中心位置への偏移量を算出する手段と、
を具え、
前記ノッチを有する円盤状物の中心位置を求める手段は、
前記円盤状物に対し検出手段を相対的に移動させて前記円盤状物の周縁に対し、前記検出手段の、共に前記ノッチに掛からない距離だけ互いに離間した3本の軌跡を交叉させて1組2点からなる3組の交点の、前記基準座標系での位置を求める手段と、
前記3組の交点のそれぞれについての3本の垂直二等分線のうち共通する垂直二等分線を選択する手段と、
前記共通する垂直二等分線上の特定点とその共通する垂直二等分線についての2組の交点とから前記円盤状物の半径および中心位置を算出する手段と、
を有することを特徴とする、円盤状物の位置決め装置。
【請求項4】
前記検出手段の軌跡は円弧であることを特徴とする、請求項3記載の円盤状物の位置決め装置。
【請求項5】
周縁の一部に1個のノッチを有する半径未知の円盤状物の搬送装置において、
請求項3または請求項4記載の円盤状物の位置決め装置と、
前記位置決め装置が算出した偏移量に基づいて搬送装置の保持部の予め教示された搬送軌道を修正する修正手段と、
前記搬送装置の前記保持部の作動を制御して、前記修正した搬送軌道に沿って前記保持部で前記円盤状物を所定の搬送位置に搬送する手段と、
を具えることを特徴とする、円盤状物の搬送装置。
【請求項6】
請求項3または請求項5記載の円盤状物の位置決め装置と、
請求項5記載の円盤状物の搬送装置と、
の何れか一方を具えることを特徴とする、半導体製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−99998(P2009−99998A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299857(P2008−299857)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2002−157393(P2002−157393)の分割
【原出願日】平成14年5月30日(2002.5.30)
【出願人】(591213232)ローツェ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】