説明

冷却システム及び冷却システムの制御方法

【課題】燃料電池の発電効率を安定に保ちつつ、燃料電池が配置された冷却回路を流れる冷却水を、効率良く上昇させることのできる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】冷却システムは、流量制御部の制御モードとして、燃料電池の発電状態に応じて冷却回路を流れる冷媒の流量である第1の流量を制御する第1の流量制御モードと、燃料電池の発電状態に応じて第1の流量を制御する第2の流量制御モードであって、所定の発電状態における第1の流量が第1の流量制御モードに比べ小さい第2の流量制御モードと、を有する。冷却システムの流量制御部は、非連結状態から連結状態に切り替える連結要求があった場合に、燃料電池の出口水温が所定値より小さい場合は、流量制御部に第2の流量制御モードでの運転を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システム及び冷却システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を搭載した車両において、燃料電池の廃熱を車室内の温度調節の熱源に利用する技術が知られている。例えば、燃料電池が配置された冷却回路(冷却水循環供給流路)を流れる冷却水を空調用のヒータコアが配置された流路に供給し、該冷却水を空調のための熱源として利用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113539号公報
【特許文献2】特開2005−263200号公報
【特許文献3】特開昭62−198058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却回路を流れる冷却水の温度が低い場合は、空調の熱源として利用可能な温度まで冷却水の温度を上昇させる必要がある。特許文献1の技術では、冷却水の温度が所定の閾値以下になった場合に、燃料電池から放出される熱を増加させることで冷却水の温度を上昇させている。より具体的には、比較的発電効率の高い通常運転から比較的発電効率の低い低効率運転に切り替えることで電力損失を大きくし燃料電池の温度を上昇させている。
【0005】
しかしながら、燃料電池の廃熱を空調のための熱源に利用するために、燃料電池の発電効率を変化させることで、冷却水の温度を上昇させる技術では、車両の出力に影響を与える場合があった。また、このような問題は、車両に限らず、燃料電池の廃熱を室内の空調に利用する各種システムに共通する問題であった。
【0006】
従って、本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、燃料電池の発電効率を安定に保ちつつ、燃料電池が配置された冷却回路を流れる冷却水を、効率良く上昇させることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]冷却システムであって、燃料電池と、前記燃料電池を通過する冷媒を循環させるための冷却回路と、冷媒を循環させるための空調用回路であって、冷媒と室内に送風する空気との間で熱交換を行う熱交換器を有する空調用回路と、前記燃料電池出口の冷媒の温度である出口温度を検出するための第1の温度検出部と、前記燃料電池から流出した冷媒が前記空調用回路に流入し、前記熱交換器を通過して前記冷却回路に流入する連結状態と、前記冷却回路と前記空調用回路との冷媒の流通を遮断する非連結状態とを切り替え可能な切替部と、前記冷却回路を循環する冷媒の流量である第1の流量を制御する流量制御部と、を備え、
さらに、前記流量制御部の制御モードとして、前記燃料電池の発電状態に応じて前記第1の流量を制御する第1の流量制御モードと、前記燃料電池の発電状態に応じて前記第1の流量を制御する第2の流量制御モードであって、所定の発電状態における前記第1の流量が前記第1の流量制御モードに比べ小さい第2の流量制御モードと、を有し、
非連結状態から連結状態に切り替える連結要求があった場合に、前記出口温度が所定値より小さい場合は、前記流量制御部に前記第2の流量制御モードでの運転を実行させる、冷却システム。
【0009】
適用例1の冷却システムによれば、出口温度が所定値より小さい場合は、流量を低減させた第2の流量制御モードで運転を実行するため、燃料電池の発電効率を安定に保ちつつ冷却回路の冷媒の温度を効率良く上昇させることができる。ここで、所定値は、空調側の暖房要求に対して冷却回路の冷媒を空調の熱源として利用することが可能な最低値以上を設定する。例えば、所定値は40℃〜60℃の範囲で設定することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の冷却システムであって、前記発電状態は、前記燃料電池の電流値と電圧値に基づいて定められる発電量である、冷却システム。
適用例2の冷却システムによれば、ある所定の発電量において、第1の流量制御モードよりも第1の流量を小さく制御する第2の流量制御モードで運転を実行することで、冷却回路の冷媒の温度を効率良く上昇させることができる。
【0011】
[適用例3]適用例1又は適用例2に記載の冷却システムであって、さらに、前記燃料電池入口の冷媒の温度である入口温度を検出するための第2の温度検出部を有し、前記第1の流量制御モードは、前記入口温度と、前記出口温度との差である温度差が、第1の目標値となるように制御される制御モードであり、前記第2の流量制御モードは、前記温度差が、前記第1の目標値よりも大きい第2目標値となるように制御される制御モードである、冷却システム。
適用例3の冷却システムによれば、第1と第2の流量制御モードでの流量制御を、所定の温度差を設定することで容易に行うことができる。具体的には、例えば、以下の式(1)に基づいて流量を制御することができる。
Q=C×m×△T (1)
ここで、Qは燃料電池の発熱量(kW)、mは第1の流量(kg/s)、Cは燃料電池を通過する冷媒の比熱(kJ/g・℃)、△Tは燃料電池に流入する冷却水と燃料電池から流出する冷却水の温度差(℃)。
【0012】
上記式(1)に各流量制御モードにおける目標とする温度差と、既値の冷媒の比熱と、発電量から算出した発熱量とを代入する。これにより、各流量制御モードでの第1の流量mを容易に決定することができる。ここで、第1の目標値は、冷媒により燃料電池を冷却することができ、かつ、燃料電池の耐久性をより確実に維持できる温度範囲で設定することが好ましい。例えば、第1の目標値は10℃〜15℃の範囲で設定することができる。また、第2の目標値は、第1の目標値よりも大きい値であって、かつ、燃料電池の耐久性を維持できる温度範囲で設定することが好ましい。例えば、第2の目標値は20℃〜25℃の範囲で設定することができる。
【0013】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の冷却システムであって、前記流量制御部の制御モードとして、さらに、前記出口温度が前記所定値よりも大きい第1の基準値を維持するように前記第1の流量を制御する第3の流量制御モードを有し、前記燃料電池の所定の発電量における前記第3の流量制御モードにより制御される前記第1の流量は、前記第2の流量制御モードにより制御される前記第1の流量より大きく、かつ、前記第1の流量制御モードにより制御される前記第1の流量よりも小さく、前記流量制御部に前記第2の流量制御モードでの運転を実行させた後、前記出口温度が前記第1の基準値に達した場合は、前記第2の流量制御モードから前記第3の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる、冷却システム。
適用例4の冷却システムによれば、出口温度が不必要に上昇することを抑制することができる。また、出口温度は、一般に燃料電池の内部温度と考えることができる。燃料電池の内部温度を一定に維持することで、一定に維持しない場合に比べ発電状態を安定に維持することができる。
【0014】
[適用例5]適用例3に従属する適用例4に記載の冷却システムであって、前記流量制御部に前記第3の流量制御モードでの運転を実行させた後、前記温度差が前記第1の目標値に達した場合は、前記第3の流量制御モードから前記第1の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる、冷却システム。
適用例5の冷却システムによれば、温度差をより低減させた運転を行うことで、燃料電池に生じる不具合を低減することができる。例えば、温度差をより小さくすることで、燃料電池内部の温度分布のばらつきを低減することができる。これにより、燃料電池を構成する各部材に生じる歪みを低減し、燃料電池内部を通過するガス(燃料ガスや酸化剤ガス)や冷媒が外部へ漏れ出す可能性を低減できる。
【0015】
[適用例6]適用例4又は適用例5に記載の冷却システムであって、前記第1の基準値は、前記燃料電池が安定的に運転可能な上限温度以下である、冷却システム。
適用例6の冷却システムによれば、冷却回路の冷媒の温度を効率良く上昇させると共に、燃料電池を安定的に運転することができる。ここで、燃料電池が安定的に運転可能な状態とは、燃料電池の少なくとも1つ以上のセル電圧が0V以下にならない状態を意味する。例えば、燃料電池が固体高分子型燃料電池の場合、上限温度は80℃〜95℃付近である。
【0016】
[適用例7]適用例3に記載の冷却システムであって、前記第2の目標値は、前記燃料電池を構成する各部材が熱応力により歪むことで前記燃料電池の内部を流通する流体が外部へ漏れることを防止できる範囲で定められる、冷却システム。
適用例7の冷却システムによれば、さらに、冷却回路の冷媒の温度を効率良く上昇させる場合であっても、燃料電池に生じる不具合を低減することができる。
【0017】
[適用例8]冷却システムの制御方法であって、当該冷却システムは、燃料電池と、前記燃料電池を通過する冷媒を循環させるための冷却回路と、冷媒を循環させるための空調用回路であって、冷媒と室内に送風する空気との間で熱交換を行う熱交換器を有する空調用回路と、前記燃料電池出口の冷媒の温度である出口温度を検出するための第1の温度検出部と、前記燃料電池から流出した冷媒が前記空調用回路に流入し、前記熱交換器を通過して前記冷却回路に流入する連結状態と、前記冷却回路と前記空調用回路との冷媒の流通を遮断する非連結状態とを切り替え可能な切替部と、前記冷却回路を循環する冷媒の流量である第1の流量を制御する流量制御部と、を有し、
非連結状態から連結状態に切り替える連結要求を受け付ける受付工程と、前記連結要求を受け付けた後に、前記出口温度が所定値よりも小さいか否かを判定する判定工程と、前記出口温度が所定値より小さいと判定した場合に、前記出口温度が所定値以上の場合よりも、前記燃料電池の所定の発電状態における前記第1の流量を低減させることで、前記冷却回路を流れる冷媒の温度を上昇させる工程と、を有する制御方法。
適用例8の制御方法によれば、出口温度が所定値より小さい場合は、流量を低減させているため、燃料電池の発電効率を安定に保ちつつ冷却回路の冷媒の温度を効率良く上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例としての冷却システム1の構成を示す図である。
【図2】連結状態と非連結状態の冷却水の流れを示した図である。
【図3】流量制御モードを説明するための図である。
【図4】冷却システム1の流量制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】冷却システム1の各種状態の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.実施例:
B.変形例:
【0020】
A.実施例:
A−1:システムの構成:
図1は、本発明の実施例としての冷却システム1の構成を示す図である。本実施例において、冷却システム1は車両に搭載されている。
【0021】
図1に示すように、本実施例の冷却システム1は、燃料電池スタック100(単に「FC100」ともいう。)と、燃料電池スタック100を通過する冷却水を循環させるための冷却回路10と、車室内40の空調に利用される冷却水を循環させるための空調用回路20と、第1と第2の連通流路216,218と、バルブV3と、冷却システム1の運転を制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)30とを主に備える。なお、図示は省略するが、冷却システム1は、燃料ガスとしての水素を給排する水素給排系と、酸化剤ガスとしての空気を給排する空気給排系とを備える。水素給排系は、燃料電池スタック100のアノードに水素を供給すると共に、燃料電池スタック100から排出されるアノード排ガスをシステム1の外部へ排出する。空気給排系は、燃料電池スタック100のカソードに空気を供給すると共に、燃料電池スタック100から排出されるカソード排ガスをシステム1の外部へ排出する。
【0022】
燃料電池スタック100は、比較的小型で発電効率に優れる固体高分子型燃料電池であり、燃料ガスとしての純水素と、酸化剤ガスとしての空気に含まれる酸素が、各電極において電気化学反応を起こすものである。燃料電池スタック100は、セパレータ(図示しない)を介在させて単セル(図示しない)を複数積層したスタック構造を成し、その積層数は、燃料電池スタック100に要求される出力に応じて任意に設定可能である。
【0023】
燃料電池スタック100には、負荷140が電気的に接続されており、燃料電池スタック100の電気化学反応により生じた電力が負荷140に供給される。燃料電池スタック100と負荷140との間には、電流センサ142及び電圧センサ144が配置されている。なお、負荷140には、例えば、車両の駆動用モータや、後述する各種アクチュエータ(ウォーターポンプWP1,WP2、バルブV1,V2、ファン112、ブロア220、電気ヒータ202)がある。
【0024】
冷却回路10は、第1の冷却流路120と、第2の冷却流路126と、第3の冷却流路128とを備える。冷却回路10は、バルブV1の弁の開閉を制御することで、第1の冷却流路120と第2の冷却流路126による循環流路、又は、第1の冷却流路120と第3の冷却流路128による循環流路を形成する。詳細には、バルブV1は、3つの冷却流路120、126、128に接続されている。バルブV1は、弁の開度を調整することにより、第1の冷却流路120の出口側流路124から第2の冷却流路126へ流入する冷却水と、出口側流路124から第3の冷却流路128へ流入する冷却水との流量比を調整する。このように、冷却回路10は、燃料電池スタック100を通過する冷媒を循環させるための循環流路である。
【0025】
第1の冷却流路120は、燃料電池スタック100を途中に配置している。また、第1の冷却流路120は、燃料電池スタック100に流入する冷却水が流れる入口側流路122と、燃料電池スタック100から流出する冷却水が流れる出口側流路124とを有する。入口側流路122は、冷却回路10内に冷却水を循環させるためのウォーターポンプWP1(以下、単に「ポンプWP1」ともいう。)と、温度センサ130とを配置している。温度センサ130は、入口側流路122の部分のうち、燃料電池スタック100の冷却水入口近傍に配置されている。また、出口側流路124の部分のうち、燃料電池スタック100の冷却水出口近傍には温度センサ132が配置されている。温度センサ130は、主に、燃料電池スタック100の冷却水入口の冷却水温度(「冷却水入口温度Tin」ともいう。)を検出するために用いられる。温度センサ132は、主に、燃料電池スタック100の冷却水出口の冷却水温度(「冷却水出口温度Tout」ともいう)を検出するために用いられる。すなわち、温度センサ130は、主に、燃料電池スタック100に流入する冷却水の温度を検出するために用いられ、温度センサ132は、主に、燃料電池スタック100から流出する冷却水の温度(詳細には、後述する連結状態において、燃料電池スタック100から流出し、空調用回路20に流入する冷却水の温度)を検出するために用いられる。なお、温度センサ130の配置位置はこれに限定されるものではない。例えば、入口側流路122のいずれかの部分に温度センサ130を配置することができる。また、温度センサ132の配置位置はこれに限定されるものではない。例えば、出口側流路124の部分のうち、燃料電池スタック100が配置された地点と、第1の連通流路216が出口側流路124に接続された地点との間に温度センサ132を配置することができる。ここで、温度センサ132が課題を解決するための手段に記載の「第1の温度検出部」に相当し、温度センサ130が課題を解決するための手段に記載の「第2の温度検出部」に相当する。
【0026】
第2の冷却流路126は、第1の冷却流路120の両端に接続されている。第2の冷却流路126は、冷却水を冷却するためのラジエータ110と、温度センサ134とを有する。ECU30は、温度センサ134の検出値に基づいて、ファン112の運転を制御することで燃料電池スタック100に流入する冷却水の温度を調節する。
【0027】
第3の冷却流路128は、出口側流路124を流れる冷却水を第2の冷却流路126を通過させることなく入口側流路122に流入させるためのバイパス流路である。
【0028】
ポンプWP1は、燃料電池スタック100の発電量に応じて、冷却回路10を循環する冷却水の流量(「第1の流量m」ともいう。)を可変させる。この具体的態様については後述する。
【0029】
空調用回路20は、第1の空調用流路210と、第1の空調用流路210の両端に接続されている第2の空調用流路214とを有する。この第1の空調用流路210と第2の空調用流路214とにより冷却水の循環流路を形成することが可能となっている。
【0030】
第1の空調用流路210は、電気ヒータ202と、熱交換器としてのヒータコア200と、ウォーターポンプWP2(以下、単に「ポンプWP2」ともいう。)と、2つの温度センサ230,232とを配置している。また、第1の空調用流路210は、ヒータコア200に流入する冷却水が流れる入口側空調流路212と、ヒータコア200を流れた冷却水が流出する出口側空調流路213とを有する。
【0031】
冷却システム1は、2つの連通流路216、218により、冷却回路10中の冷却水が空調用回路20に流入し、流入した冷却水が空調用回路20を流れ、再び冷却回路10に流入することが可能となっている。すなわち、冷却システム1は、冷却回路10を流れる冷却水が空調用回路20に流入し、流入した冷却水が空調用回路20を流れ、再び冷却回路10中に流入する連結状態と、冷却回路10と空調用回路20との冷却水の流通を遮断する非連結状態とを有する。この2つの状態の切り替えは、第2の連通流路216と第1の空調用流路210と第2の空調用流路214との3つの流路の接続地点に設けられたバルブV3の弁の開閉を切り替えることで行われる。ここで、バルブV3が課題を解決するための手段に記載の「切替部」に相当する。
【0032】
図2は、連結状態と非連結状態の冷却水の流れを示した図である。図2(a)が連結状態における冷却水の流れを示した図であり、図2(b)が非連結状態における冷却水の流れを示した図である。なお、図2は冷却システム1のうち、説明に必要な構成を抽出し図示している。図2(a)に示すように、連結状態では、第1と第2の連通流路216,218により、共通の冷却水が冷却回路10と空調用回路20とを循環する。一方、図2(b)に示すように、非連結状態では、冷却回路10の冷却水は冷却回路10のみを循環し、空調用回路20の冷却水は空調用回路20のみを循環する。このように、連結状態は、燃料電池スタック100の廃熱を車室内の温度調節のための熱源として利用可能な状態であり、非連結状態は、燃料電池スタック100の廃熱を車室内40の温度調節のための熱源として利用不可能な状態である。
【0033】
図1に示すように、ヒータコア200は、通風ダクト24内に設置されており、通風ダクト24の上流側に設置された送風機としてのブロア220から吹き出す空気を加熱する。具体的には、ヒータコア200内部を流れる冷却水と、ブロア220からヒータコア200に向かって吹き出された空気との間で熱交換を行う。熱交換された空気は、通風ダクト24から移動体の内部である車室内40に送られる。ECU30は、ユーザにより設定された目標車室内温度、現在の車室内温度、現在の車室外温度等に応じて、ポンプWP2の回転数(「回転速度」ともいう。)及びブロア220の回転数(「回転速度」ともいう。)を制御することでヒータコア200の放熱量を調節する。すなわち、ECU30は、空調側の暖房要求に応じて冷却システム1の運転を実行する。
【0034】
車室内40には温度設定器401が配置され、ユーザが温度設定器401に目標とする車室内温度を設定する。また、温度設定器401は、車室内40を暖房する暖房モードを有効にする暖房スイッチ(図示せず)が配置されており、ユーザにより暖房スイッチがONされると、ECU30がスイッチON信号を受信し、空調用回路20を用いた暖房運転を行う。また、温度設定器401を用いてユーザが設定した車室内温度は、ECU30に出力信号として送られ、暖房運転の際の各種アクチュエータの制御に利用される。
【0035】
電気ヒータ202は、ヒータコア200で熱交換する冷却水の熱量が不足している場合に、ヒータコア200へ流入する冷却水を加温するために用いられる。例えば、冷却システム1が非連結状態にある場合は、燃料電池スタック100の廃熱を利用できないため、暖房要求に応じてヒータコア200に流入する冷却水を加温する。
【0036】
温度センサ230は、ヒータコア200に流入する冷却水の温度を検出する。また、温度センサ232は、ヒータコア200を通過した冷却水の温度を検出する。2つの温度センサ230,232に検出された温度は、出力信号としてECU30に送信され、冷却システム1の制御に利用される。
【0037】
ECU30は、CPU310と、メモリ320と、入出力ポート330とを主に備える。入出力ポート330は、各種アクチュエータ及び各種センサとECU30とを制御用信号線を介して接続している。ここで、各種アクチュエータとしては、例えば、ファン112、ポンプWP1,WP2、電気ヒータ202、ブロア220、バルブV1,V3がある。また、各種センサとしては、例えば、温度センサ130,132,134,230,232、温度設定器401、電流センサ142、電圧センサ144がある。
【0038】
メモリ320には、CPU310により実行される各種プログラムと、発熱量マップ322が記録されている。発熱量マップ322は、燃料電池スタック100の発電量(単に「FC発電量」ともいう。)と、FC発電量に比例して変化する燃料電池スタック100の発熱量(単に「FC発熱量Q」ともいう。)とを対応付けるマップである。CPU310は、メモリ320に記録されている各種プログラム及び発熱量マップ322を用いて、冷却システム1の運転を制御する。例えば、流量制御部312は、ポンプWP1,WP2の回転数(「回転速度」ともいう。)を制御し、冷却回路10及び空調用回路20を流れる冷却水の流量を制御する。
【0039】
A−2.流量制御モード:
図3は、流量制御モードを説明するための図である。冷却システム1は、第1の流量制御モードと第2の流量制御モードと第3の流量制御モードとを有する。各流量制御モードでは、FC発熱量Qが同じ場合における第1の流量mが異なる。冷却システム1は、通常、第1の流量制御モードで流量制御が実行される。
【0040】
第1の流量制御モードは、ポンプWP1の回転数を制御することで、燃料電池スタック100の冷却水入口温度Tinと、冷却水出口温度Toutとの温度差△Tが、第1の目標値△T1となるようにFC発熱量Qに応じて第1の流量mを制御する。本実施例では第1の目標値△T1は10℃に設定している。なお、第1の目標値ΔT1は、10℃に限定されるものではなく、燃料電池スタック100の温度分布のばらつきにより生じる不具合(ガスや冷却水の外部への漏れ)を確実に防止できる範囲で設定可能である。例えば、第1の目標値ΔT1は、10℃〜15℃の範囲で設定することが好ましい。
【0041】
CPU310は、以下の式(2)に基づいて第1の流量mを算出し、算出した流量を満足するようポンプWP1の回転数を制御する。
Q=C×m×(Tout−Tin) (2)
ここで、Qは燃料電池スタック100の発熱量(kW)、mは第1の流量(kg/s)、Cは燃料電池スタックを通過する冷却水の比熱(kJ/g・℃)である。
【0042】
具体的には、CPU310は、電流センサ142及び電圧センサ144により検出した燃料電池スタック100の電圧値Vと電流値Iを元にFC発電量Eを算出する。CPU310は、算出したFC発電量Eを元に発熱量マップ322を参照し、現在のFC発熱量Qを算出する。そしてCPU310は、算出したFC発熱量Qと、既知の比熱Cと、第1の目標値△T1(10℃)を元に、式(2)により第1の流量mを算出する。
【0043】
第2の流量制御モードは、ポンプWP1の回転数を制御することで、温度差△Tが、第1の目標値△T1よりも大きい第2の目標値△T2となるようにFC発熱量Qに応じて第1の流量を制御する。本実施例では第2の目標値△T2は20℃に設定している。すなわち、図3に示すように、FC発熱量Qが同じ値である場合に、第2の流量制御モードで制御される第1の流量mの方が、第1の流量制御モードで制御される第1の流量mよりも小さい関係にある。例えば、FC発熱量Qが発熱量Q1の場合、第1の流量制御モードで冷却回路10に流通させる第1の流量mは流量L1であるのに対し、第2の流量制御モードで冷却回路10に流通させる第1の流量mは流量L1よりも小さい流量L2となる。なお、第2の目標値ΔT2は、20℃に限定されるものではなく、第1の目標値ΔT1よりも大きい値であれば良い。なお、燃料電池スタック100の耐久性を確実に確保するために、25℃以下の範囲(例えば20℃〜25℃)で設定することが好ましい。
【0044】
第3の流量制御モードは、ポンプWP1の回転数を制御することで、冷却水入口温度Tinの温度上昇にかかわらず冷却水出口温度Toutを第1の基準値Taに維持するようにFC発熱量Qに応じて第1の流量mを制御する。本実施例の場合、第1の基準値Taは、90℃に設定している。なお、第1の基準値Taは90℃に限らず、後述する所定値Twより大きく、燃料電池スタック100の耐熱温度以下の範囲で設定することができる。また、第1の基準値Taは、燃料電池スタック100の発電状態を安定に維持することができる範囲(例えば80℃〜95℃)で設定することが好ましい。具体的には、燃料電池スタック100の少なくとも1つ以上のセル電圧が0V以下にならない範囲で設定可能である。
【0045】
第3の流量制御モードは、冷却水入口温度Tinが上昇し、第2の目標値△T2を維持した第2の流量制御モードでは冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taを超えてしまう場合に実行される流量制御モードである。第3の流量制御モードは、上記式(2)の冷却水出口温度Toutを90℃とし、算出したFC発熱量Qと検出した冷却水入口温度Tinを元に第1の流量mを算出する。このように算出される第1の流量mは、図3に示すように、FC発熱量Qが同じ値である場合、第1の流量制御モードで制御される第1の流量mより小さく、かつ、第2の流量制御モードで制御される第1の流量mよりも大きい関係にある。
【0046】
第1〜第3の流量制御モードにおいて第1の流量mが制御されている間は、燃料電池スタック100の発電効率は略一定に維持されている。すなわち、燃料電池スタック100の発電効率のモード(発電効率が比較的高いモードと、発電効率が比較的低いモード)を切り替えることなく運転が実行される。具体的には、エアストイキ比を1.5〜2.0に設定した状態で冷却システム1の運転が実行される。ここで、「エアストイキ比」とは、燃料電池スタック100に供給される酸化剤ガス量と、燃料電池スタック100で消費される酸化剤ガス量との比(消費される酸化剤ガス量/供給される酸化剤ガス量)を意味する。燃料電池スタック100に供給される酸化剤ガス中の酸素がすべて発電に利用される場合には、エアストイキ比は1.0である。
【0047】
A−3.制御フロー:
図4は、冷却システム1の流量制御を説明するためのフローチャートである。図5は、冷却システム1の各種状態の時間変化を示す図である。図5(a)は、冷却水入口温度Tinと、冷却水出口温度Toutの時間変化を示す図であり、図5(b)は、第1の流量mの時間変化を示す図であり、図5(c)は、FC発熱量Qの時間変化を示している。なお、図5の各図は、流量制御モードの理解を容易にするために作成した図であり、実際の流量制御モードでの冷却システム1の各種状態変化を表すものではない。なお、本実施例の場合、第2と第3の流量制御モード、及び、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに達していない条件下での第1の流量制御モードで運転を実行する場合は、冷却回路10の冷却水は、第3の冷却流路128を流通し、ラジエータ110が配置された第2の冷却流路126には流通してない状態にしている。
【0048】
図4に示すように、ECU30は、非連結状態から連結状態に切り替える要求(「連結要求」ともいう。)の有無を判断する(ステップS10)。本実施例の場合、ユーザにより暖房スイッチがONされたかどうかをECU30が判断する。連結要求が無いと判断した場合は、ステップS10を繰り返し実行する。
【0049】
連結要求が有ると判断した場合は、ECU30は冷却水出口温度Toutを検出する(ステップS12)。次に、ECU30は、冷却水出口温度Toutが所定値Twより小さいか否かを判断する(ステップs30)。所定値Twは、例えば、燃料電池スタック100から流出した冷却水を、空調側の熱源として利用可能な最低温度に設定する。例えば、所定値Twは、40℃〜60℃の範囲で設定することができる。所定値Twが40℃よりも低いと、冷却回路10を流れる冷却水の熱を有効に利用できず、暖房要求に応じた車室内40への送風ができない場合があるからである。なお、本実施例の場合、所定値Twは50℃に設定している。
【0050】
図4に示すように、冷却水出口温度Toutが所定値Tw以上と判断した場合(ステップS14:NO)は、ECU30はバルブV3の弁の開閉を制御し、冷却システム1を非連結状態から連結状態に切り替える(ステップS22a)。これにより、燃料電池スタック100の廃熱を空調側の熱源に利用することができる。この場合、流量制御部312は、第1の流量制御モードでの運転を継続する。なお、第1の流量制御モードでの運転を継続する場合であっても、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに到達した場合は、バルブV1の弁の開閉、及び、ファン112の回転数を制御して燃料電池スタック100に流入する冷却水の温度を調整し、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taを維持するようにしている。
【0051】
一方、冷却水出口温度Toutが所定値Twより小さいと判断した場合(ステップS14:YES)は、冷却システム1は、流量制御部312に第1の流量制御モードから第2の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる(ステップS18)。例えば、図5(a)において、時間t1で連結要求が有った場合、時間t1では冷却水出口温度Toutが所定値Twよりも小さい。この場合、図5(b),(c)に示すように、FC発熱量Qにおける第1の流量mの割合を低減させる。これにより、冷却水出口温度Toutをより短時間で所定値Twまで上昇させることができ、燃料電池スタック100から流出する冷却水をより短時間に空調側の熱源として利用可能な状態にすることができる。
【0052】
図4に示すように、ステップS18の後、ECU30は冷却水出口温度Toutが所定値Twに達したか否かを判断する(ステップS20)。所定値Twに達していないと判断した場合(ステップS20:NO)は、ステップS20の判断を繰り返し行う。なお、連結要求が有った後から冷却水出口温度Toutが所定値Twに達するまでの間は、ユーザにより設定された目標車室内温度に応じて、電気ヒータ202により入口側空調流路212の冷却水が加熱され、加熱された冷却水が空調側の熱源に利用される。
【0053】
第2の流量制御モードでの運転を実行後、冷却水出口温度Toutが所定値Twに到達したとECU30が判断した場合(ステップS20:YES)は、冷却システム1を非連結状態から連結状態に切り替える(ステップS22)。例えば、図5(a)に示すように、時間t2で冷却水出口温度Toutが所定値Twに達しているため、時間t2で非連結状態から連結状態に切り替える。なお、連結状態にした後においても、必要に応じて、電気ヒータ202を用いて入口側空調流路212の冷却水を加熱する。
【0054】
図4に示すように、第2の流量制御モードでの運転を実行後、ECU30は、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Ta(90℃)に達したかどうかを判断する(ステップS24)。冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに達していないと判断した場合は、繰り返しステップS24の判断を行う。
【0055】
一方、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに達したと判断した場合(ステップS24:YES)は、冷却システム1は、流量制御部312に第2の流量制御モードから第3の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる(ステップS26)。例えば、図5(a)では、時間t3で冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに達しているため、流量制御モードを第2の流量制御モードから第3の流量制御モードに切り替える。より、具体的には、図5の時間t3〜t4の各種状態変化に示すように、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taを維持するために、冷却水入口温度Tinの上昇につれ、所定のFC発熱量Qに対する第1の流量mの割合を大きくしている。このように、冷却水出口温度Toutが所定値Twよりも大きい第1の基準値Taに到達するまで第2の流量制御モードでの運転を実行することで、空調側の暖房要求に利用できる熱源を、冷却回路10を循環する冷却水に充分に保持させることができる。また、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに到達した場合は、第2の流量制御モードから第3の流量制御モードに切り替えて運転を実行することで、燃料電池スタック100の温度を略一定に保持し、燃料電池スタック100の発電状態を安定に保つことができる。
【0056】
図4に示すように、第3の流量制御モードに切り替えた後、ECU30は、温度差△Tが第1の目標値ΔT1以下になったかどうかを判断する(ステップS28)。ステップS28は、温度差△Tが第1目標値△T1以下となるまで繰り返し行われる。温度差△Tが第1の目標値△T1以下である判断した場合(ステップS28:YES)は、冷却システム1は流量制御部312に第3の流量制御モードから第1の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる(ステップS30)。これにより、温度差△Tをより低減させた運転を行うことができ、燃料電池スタック100を構成する各部材(セパレータ、固体高分子電解質膜、触媒層、ガス拡散層)の歪みを低減し、燃料電池スタック100を通過するガスや冷却水が外部へ漏れだす可能性を低減できる。なお、冷却水出口温度Toutが第1の基準値Taに達した以降に、第1の流量制御モードで運転を実行する場合は、冷却水入口温度Tinの温度上昇を抑制するために、第2の冷却流路126に第1の冷却水を流通させ、ラジエータ110とファン112を用いて冷却水を所定の温度まで冷却する制御を行う(図1)。
【0057】
このように、本実施例の冷却システム1によれば、連結要求があった場合に、冷却水出口温度Toutが所定値Twよりも小さい場合は、所定のFC発熱量Qにおける第1の流量mを低減させる運転(第2の流量制御モードでの運転)を実行することで、発電効率を安定に保ちつつ、冷却水出口温度Toutをより短時間に所定値Twまで上昇させることができる。これにより、燃料電池スタック100から流出する冷却水を空調側の熱源としてより短時間に利用可能となるため、電気ヒータ202等の他の熱源の利用を低減でき、暖房性能を向上させることができる。
【0058】
B.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
B−1.第1変形例:
上記実施例では、第1の流量制御モードと第2の流量制御モードでは、異なる温度差△T(第1の目標値△T1と第2の目標値△T2)を設定し制御していたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、第2の流量制御モードは、温度差△Tの目標値を定めずに、燃料電池スタック100の通常運転により制御される第1の流量mに比べ、FC発熱量Qが同じ値における第1の流量mを小さくした流量制御を行っても良い。第1の流量mを小さくすることで、第1の流量mを小さくしないで流量制御を行う場合に比べ、冷却水出口温度Toutをより短時間に所定値Twまで上昇させることができる。
【0060】
B−2.第2変形例:
上記実施例では、暖房の熱源として燃料電池スタック100の廃熱と電気ヒータ202とヒータコア200とを利用可能であったが、暖房の熱源に利用可能な熱源は特にこれに限定されるものではない。例えば、通風ダクト24内にヒートポンプや空気加熱ヒータ等の熱交換器を設けても良い。
【0061】
B−3.第3変形例:
上記実施例では、ECU30は燃料電池スタック100を有する冷却回路10と、車室内40の送風に利用される空調用回路20の双方の制御に利用されていたが、冷却回路10を制御するためのECUと、空調用回路20を制御するためのECUとをそれぞれ設けても良い。この場合、各ECU間で必要な情報(温度センサ132の検出値等)を通信する。
【0062】
B−4.第4変形例:
上記実施例では、冷媒として冷却水を用いたが、特にこれに限定されるものではなく各種流体を冷媒として用いることができる。例えば、冷媒として水にエチレングリコールなどを添加した不凍液を用いても良いし、二酸化炭素などの気体を用いても良い。このようにしても上記実施例と同様の効果を奏する。
【0063】
B−5.第5変形例:
上記実施例では、冷却システム1が車両に搭載される場合を例に挙げて説明を行ったが、各種移動体用に本発明を適用することができる。例えば、列車、船舶、航空機の各種移動体に本発明に係る冷却システムを適用できる。さらには、移動体に限らず、家屋の空調の熱源として燃料電池スタック100の廃熱を利用するシステムにも本発明の冷却システムを適用することができる。
【0064】
B−6.第6変形例:
上記実施例では、燃料電池スタック100として固体高分子型燃料電池を用いたが、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物形燃料電池等、種々の燃料電池を用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…冷却システム
10…冷却回路
20…空調用回路
24…通風ダクト
30…ECU
40…車室内
100…燃料電池スタック
110…ラジエータ
112…ファン
120…第1の冷却流路
122…入口側流路
124…出口側流路
126…第2の冷却流路
128…第3の冷却流路
130,132,134…温度センサ
140…負荷
142…電流センサ
144…電圧センサ
200…ヒータコア
202…電気ヒータ
210…第1の空調用流路
212…入口側空調流路
213…出口側空調流路
214…第2の空調用流路
216…第1の連通流路
218…第2の連通流路
220…ブロア
230,232…温度センサ
310…CPU
312…流量制御部
320…メモリ
322…発熱量マップ
330…入出力ポート
401…温度設定器
Tin…冷却水入口温度
Tout…冷却水出口温度
V1,V3…バルブ
Ta…第1の基準値
Tw…所定値
WP1,WP2…ウォーターポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池を通過する冷媒を循環させるための冷却回路と、
冷媒を循環させるための空調用回路であって、冷媒と室内に送風する空気との間で熱交換を行う熱交換器を有する空調用回路と、
前記燃料電池出口の冷媒の温度である出口温度を検出するための第1の温度検出部と、
前記燃料電池から流出した冷媒が前記空調用回路に流入し、前記熱交換器を通過して前記冷却回路に流入する連結状態と、前記冷却回路と前記空調用回路との冷媒の流通を遮断する非連結状態とを切り替え可能な切替部と、
前記冷却回路を循環する冷媒の流量である第1の流量を制御する流量制御部と、を備え、
さらに、前記流量制御部の制御モードとして、
前記燃料電池の発電状態に応じて前記第1の流量を制御する第1の流量制御モードと、
前記燃料電池の発電状態に応じて前記第1の流量を制御する第2の流量制御モードであって、所定の発電状態における前記第1の流量が前記第1の流量制御モードに比べ小さい第2の流量制御モードと、を有し、
非連結状態から連結状態に切り替える連結要求があった場合に、前記出口温度が所定値より小さい場合は、前記流量制御部に前記第2の流量制御モードでの運転を実行させる、冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムであって、
前記発電状態は、前記燃料電池の電流値と電圧値に基づいて定められる発電量である、冷却システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷却システムであって、さらに、
前記燃料電池入口の冷媒の温度である入口温度を検出するための第2の温度検出部を有し、
前記第1の流量制御モードは、前記入口温度と、前記出口温度との差である温度差が、第1の目標値となるように制御される制御モードであり、
前記第2の流量制御モードは、前記温度差が、前記第1の目標値よりも大きい第2目標値となるように制御される制御モードである、冷却システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冷却システムであって、
前記流量制御部の制御モードとして、さらに、前記出口温度が前記所定値よりも大きい第1の基準値を維持するように前記第1の流量を制御する第3の流量制御モードを有し、
前記燃料電池の所定の発電量における前記第3の流量制御モードにより制御される前記第1の流量は、前記第2の流量制御モードにより制御される前記第1の流量より大きく、かつ、前記第1の流量制御モードにより制御される前記第1の流量よりも小さく、
前記流量制御部に前記第2の流量制御モードでの運転を実行させた後、前記出口温度が前記第1の基準値に達した場合は、前記第2の流量制御モードから前記第3の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる、冷却システム。
【請求項5】
請求項3に従属する請求項4に記載の冷却システムであって、
前記流量制御部に前記第3の流量制御モードでの運転を実行させた後、前記温度差が前記第1の目標値に達した場合は、前記第3の流量制御モードから前記第1の流量制御モードに切り替えて運転を実行させる、冷却システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の冷却システムであって、
前記第1の基準値は、前記燃料電池が安定的に運転可能な上限温度以下である、冷却システム。
【請求項7】
請求項3に記載の冷却システムであって、
前記第2の目標値は、前記燃料電池を構成する各部材が熱応力により歪むことで前記燃料電池の内部を流通する流体が外部へ漏れることを防止できる範囲で定められる、冷却システム。
【請求項8】
冷却システムの制御方法であって、
当該冷却システムは、燃料電池と、前記燃料電池を通過する冷媒を循環させるための冷却回路と、冷媒を循環させるための空調用回路であって、冷媒と室内に送風する空気との間で熱交換を行う熱交換器を有する空調用回路と、前記燃料電池出口の冷媒の温度である出口温度を検出するための第1の温度検出部と、前記燃料電池から流出した冷媒が前記空調用回路に流入し、前記熱交換器を通過して前記冷却回路に流入する連結状態と、前記冷却回路と前記空調用回路との冷媒の流通を遮断する非連結状態とを切り替え可能な切替部と、前記冷却回路を循環する冷媒の流量である第1の流量を制御する流量制御部と、を有し、
非連結状態から連結状態に切り替える連結要求を受け付ける受付工程と、
前記連結要求を受け付けた後に、前記出口温度が所定値よりも小さいか否かを判定する判定工程と、
前記出口温度が所定値より小さいと判定した場合に、前記出口温度が所定値以上の場合よりも、前記燃料電池の所定の発電状態における前記第1の流量を低減させることで、前記冷却回路を流れる冷媒の温度を上昇させる工程と、を有する制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−23795(P2012−23795A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157509(P2010−157509)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】