説明

冷却器

【課題】フィンを狭ピッチ化しても製造が容易な冷却器を提供すること。
【解決手段】第1基板4及び第1基板4に突設された複数の第1凸部5を有する第1凸基板2と、第2基板6及び第2基板6に突設された複数の第2凸部7を有する第2凸基板3とを備え、第1及び第2凸基板2、3は、第1凸部5が第2基板6に向けて突出して第2凸部7が第1基板4に向けて突出すると共に、隣り合う2つの第1凸部5の間に少なくとも1つの第2凸部7が配置されるように対向配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップなどの電子部品が実装される回路基板などの発熱体で発生した熱を放散させる冷却器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、DBA(Al/AlN/Al)やDBC(Cu/AlN/Cu)などのように、絶縁セラミックスの両面に接合によって金属層を形成した絶縁回路基板を有するパワーモジュールが知られている。この種のパワーモジュールは、絶縁回路基板上に搭載された電子部品で発生した熱を放散させる液冷式のヒートシンクを備えている。
このようなヒートシンクとして、例えばピン状のフィンを複数突設したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−110868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のヒートシンクには、以下の課題が残されている。すなわち、表面積を広くして放熱効果を高めるため、フィンの狭ピッチ化が望まれている。しかし、フィンを狭ピッチ化すると、より微細な加工が求められるために製造が困難になる。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、フィンを狭ピッチ化しても製造が容易な冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の冷却器は、第1基板及び該第1基板に突設された複数の第1凸部を有する第1凸基板と、第2基板及び該第2基板に突設された複数の第2凸部を有する第2凸基板とを備え、前記第1及び第2凸基板は、前記第1凸部が前記第2基板に向けて突出して前記第2凸部が前記第1基板に向けて突出すると共に、隣り合う2つの前記第1凸部の間に少なくとも1つの前記第2凸部が配置されるように対向配置されていることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、隣り合う2つの第1凸部の間に第2凸部を配置することで、第1及び第2凸部をそれぞれ狭ピッチ化させることなく、複数の凸部を狭ピッチで配置することができる。したがって、高い放熱効果を有する冷却器を容易に製造できる。
【0007】
また、本発明の冷却器は、前記複数の第1及び第2凸部が相対的に高い密度で配置された領域と、該複数の第1及び第2凸部が相対的に低い密度で配置された領域とを有することが好ましい。
この発明によれば、第1及び第2凸部の配置状態に粗密分布を形成することで、冷却器の内部に流動抵抗の分布が形成される。そして、冷却器内部を流通する流体は、相対的に流動抵抗の低い領域に沿って流通する。このため、第1及び第2凸部の配置を適宜設定することで、冷却器内部を流通する流体の流路を形成できる。したがって、より高い放熱効果を有する冷却器を製造できる。
【0008】
また、本発明の冷却器は、前記第1及び第2凸部が、ピン状であることとしてもよい。
この発明によれば、第1及び第2凸部をピン状にすることで、第1及び第2凸部の表面積を広げることができる。
【0009】
また、本発明の冷却器は、前記第1及び第2凸部が、リブ状であることとしてもよい。
この発明によれば、リブ状の凸部が狭ピッチで配置された冷却器を容易に製造できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる冷却器によれば、第1及び第2凸部の形成間隔をそれぞれ狭くすることなく凸部を狭ピッチ化させることができるので、高い放熱効果を有する冷却器を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による冷却器の第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0012】
本実施形態における冷却器1は、水冷式のヒートシンクであって、図1に示すように、互いに接合された第1及び第2凸基板2、3を備えている。
第1凸基板2は、例えばCu(銅)やAl(アルミニウム)などで構成されており、第1基板4と、第1基板4に突設された複数のピン状の第1凸部5とを備えている。
第1基板4は、箱形状を有しており、平面視でほぼ矩形状の平板部4aと、平板部4aの外周に沿って形成された枠状の壁部4bとを有している。ここで、壁部4bの高さと第1凸部5の高さとは、ほぼ同等となっている。なお、第1基板4と第1凸部5とは、切削加工により第1基板4と一体的に形成されている。
第1凸部5は、ほぼ四角柱形状を有しており、図1(b)に示すように、第1基板4の表面の2方向においてマトリックス状に等間隔となるように立設されている。また、第1凸部5のうち第1基板4に近接する基端部は、図1(a)に示すように、第1凸部5の強度を十分に確保するため、他の部分と比較して太くなっている。
【0013】
第2凸基板3は、第1凸基板2と同様に、例えばCuやAlなどで構成されており、第2基板6と、第2基板6に突設された複数の第2凸部7とを備えている。
第2基板6は、平面視でほぼ矩形状の平板形状を有している。なお、第2基板6は、切削加工により第2凸部7と一体的に形成されている。
第2凸部7は、第1凸部5と同様に、ほぼ四角柱形状を有しており、図1(b)に示すように、第2基板6の表面の2方向において等間隔となるように立設されている。
ここで、隣り合う2つの第2凸部7の間隔であるピッチは、第1凸部5のピッチと同等となっている。そして、第1及び第2凸部5、7は、2方向において千鳥状に等間隔となるように配置されている。すなわち、第2凸部7が隣り合う2つの第1凸部5の間に配置されると共に、第1凸部5が隣り合う2つの第2凸部7の間に配置されている。そして、第1及び第2凸部5、7全体でも、2方向においてマトリックス状に等間隔となるように配置されている。
また、第2凸部7のうち第2基板6に近接する基端部は、図1(a)に示すように、他の部分と比較して太くなっている。なお、第2凸部5の高さは、第1凸部5とほぼ同等となっている。
【0014】
また、第1及び第2凸基板2、3は、第1凸部5が第2基板6と接触すると共に第2凸部7が第1基板4と接触するように対向配置されている。そして、第1及び第2凸基板2、3は、ロウ付けにより接合固定されている。このように接合固定された第1及び第2凸基板2、3の内部空間に冷却水が流動可能となっている。
【0015】
以上のような構成の冷却器1は、例えば図2に示すようなパワーモジュール10に用いられる。このパワーモジュール10は、上述の冷却器1と、冷却器1上に設けられた放熱板11と、放熱板11上に固着された被冷却部材である絶縁回路基板12とを備えている。
【0016】
放熱板11は、平面視でほぼ矩形状の平板形状を有しており、例えばAlやCu、AlSiC(アルミシリコンカーバイド)、Cu−Mo(モリブデン)などで形成されている。そして、放熱板11は、熱伝導グリースなどを介して冷却器1に対してネジ15により固定されている。
絶縁回路基板12は、絶縁セラミックス21と、絶縁セラミックス21の両面に配置された金属層22、23とによって構成されており、金属層22の上面に発熱体である電子部品25が配置されている。
絶縁セラミックス21は、例えばAlN(窒化アルミニウム)やAl(アルミナ)、Si(窒化シリコン)などの板状のセラミックス材料によって構成されている。
【0017】
金属層22、23は、例えばAlのような高熱伝導率を有する金属により形成されており、ロウ付けにより絶縁セラミックス21に接合固定されている。
金属層22には、例えばエッチングや打抜き加工などを行うことで、金属層22を適宜分断した回路が形成されており、電子部品25がハンダ層26によって固着されている。ここで、電子部品25としては、例えば半導体チップが適用可能であり、半導体チップとしてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーデバイスが挙げられる。
そして、金属層23の下面は、ハンダ層(図示略)を介して放熱板11に固着されている。
なお、パワーモジュール10は、放熱板11を設けずに冷却器1の上面に絶縁回路基板12を設ける構成としてもよい。
【0018】
このような構成の冷却器1によれば、隣り合う2つの第1凸部5の間に第2凸部7を配置することで、第1及び第2凸部5、7をそれぞれ狭ピッチ化させることなく隣り合う第1及び第2凸部5、7のピッチを狭くできる。これにより、複数の第1及び第2凸部5、7による表面積を広くして高い放熱効果を有する冷却器1を容易に製造できる。ここで、第1及び第2凸部5、7がピン状となっているため、複数の第1及び第2凸部5、7による表面積を容易に広くできる。
なお、本実施形態において、第1及び第2凸部5、7は、それぞれ平面視でほぼ矩形状の平板部4aのうち互いに直交する2辺に沿って等間隔となるように配置されているが、図3に示すように、平板部4aのうちの2辺に対して傾いた方向に沿って等間隔となるように配置するなど、他の方向に沿って等間隔となるように配置されてもよい。
【0019】
次に、本発明による冷却器の第2の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図4においては、図1と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0020】
第2の実施形態における冷却器50は、第1及び第2凸基板51、52に設けられた第1及び第2凸部5、7が等間隔となるように配置されておらず、第1及び第2凸部5、7の配置に粗密の分布が形成されている。すなわち、例えば図4(b)に示すように、複数の第2凸部7は、複数の第1凸部5が等間隔で配置されている2辺からずらして配置されている。そのため、第1及び第2凸部5、7がそれぞれ等間隔で配置されている2方向に対して傾斜する方向において、第1及び第2凸部5、7が相対的に高い密度で配置された領域と、第1及び第2凸部5、7が相対的に低い密度で配置された領域とが形成されている。
ここで、第1及び第2凸部5、7を高い密度で配置すると、この領域を流通する冷却水の流動抵抗が高くなる。したがって、第1及び第2凸部5、7の配置分布に応じて、流動抵抗分布が形成される。そして、相対的に流動抵抗の低い領域に沿って流体である冷却水が流れるため、相対的に流動抵抗の低い領域に沿って流路53が形成される。
【0021】
このような構成の冷却器50によっても、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を奏するが、第1及び第2凸部5、7の配置を適宜調整して第1及び第2凸部5、7による流動抵抗分布を形成することで、流路53を形成できる。したがって、流路53の形状を適宜設定することにより、より高い放熱効果を有する冷却器50とすることができる。
なお、本実施形態において、第1及び第2凸部5、7の配置に応じた流動分布が形成できれば、一部の第1及び第2凸部5、7を接触するように配置してもよい。
【0022】
次に、本発明による冷却器の第3の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図5においては、図1(b)と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0023】
第3の実施形態における冷却器60は、第1及び第2凸基板61、62に設けられた複数の第1及び第2凸部63、64がリブ形状となっている。
第1凸基板61は、第1基板65と第1凸部63とを備えている。
第1基板65は、箱形状を有しており、平板部65aと、平板部65aの外周に沿って形成された枠状の壁部65bとを有している。なお、第1凸部63と第1基板65を構成する壁部65bのうち平板部65aの延在方向と直交する一部を除く他の部分とは、押出成型により一体的に形成されている。
第1凸部63は、平面視でほぼ矩形状の平板部65aの一辺に沿って立設されていると共に、一辺と直交する他辺に沿って等間隔となるように配列されている。
【0024】
第2凸基板62は、第2基板6と第2凸部64とを備えている。
第2凸部64は、平面視でほぼ矩形状の第2基板6の一辺に沿って立設されていると共に、一辺と直交する他辺に沿って等間隔となるように配列されている、ここで、第2凸部64のピッチは、第1凸部63のピッチと同等となっている。そして、第1及び第2凸部63、64は、交互に配置されると共に、隣り合う第1及び第2凸部63、64が等間隔となるように配置されている。なお、第2基板6と第2凸部64とは、押出成型により一体的に形成されている。
【0025】
このような構成の冷却器60によっても、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、第1及び第2凸部がそれぞれ同じピッチで配置されているが、異なるピッチで配置された第1及び第2凸部を有する第1及び第2凸基板を対向配置した構成としてもよい。
また、第1及び第2凸部をそれぞれ2方向で等間隔となるように配置しているが、等間隔に限らず、第1及び第2凸部の配置パターンは適宜変更してもよい。
そして、第1及び第2凸部を交互に配置しているが、隣り合う2つの一方の凸部の間に複数の他方の凸部を配置してもよい。
さらに、第1及び第2凸部の先端部がそれぞれ第1及び第2基板と接触しているが、非接触であってもよい。
また、第1及び第2凸部は、四角柱形状やリブ形状となっているが、他の形状であってもよい。
そして、第1及び第2凸部は、内部が中空であってもよい。これにより、第1及び第2凸部を打抜により容易に形成することができる。
さらに、水冷式の冷却器としているが、空冷式の冷却器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明によれば、フィンを狭ピッチ化しても製造が容易な冷却器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態における冷却器を示すもので、(a)が構成図、(b)が(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】図1の冷却器を備えるパワーモジュールを示す構成図である
【図3】第1の実施形態における他の凸部の配置状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における冷却器を示すもので、(a)が構成図、(b)が(a)のB−B矢視断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における冷却器を示すもので、(a)が構成図、(b)が(a)のC−C矢視断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1,50,60 冷却器
2,61 第1凸基板
3,62 第2凸基板
4,65 第1基板
5,63 第1凸部
6 第2基板
7,64 第2凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板及び該第1基板に突設された複数の第1凸部を有する第1凸基板と、
第2基板及び該第2基板に突設された複数の第2凸部を有する第2凸基板とを備え、
前記第1及び第2凸基板は、前記第1凸部が前記第2基板に向けて突出して前記第2凸部が前記第1基板に向けて突出すると共に、隣り合う2つの前記第1凸部の間に少なくとも1つの前記第2凸部が配置されるように対向配置されていることを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記複数の第1及び第2凸部が相対的に高い密度で配置された領域と、該複数の第1及び第2凸部が相対的に低い密度で配置された領域とを有することを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記第1及び第2凸部が、ピン状であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記第1及び第2凸部が、リブ状であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−294196(P2008−294196A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137703(P2007−137703)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】