説明

凍結処理装置、凍結処理方法および基板処理装置

【課題】応力集中が発生するのを抑制しながら基板の被処理面に形成された液膜を効率的に凍結させる。
【解決手段】基板Wの下面に向けて、液膜11f、11bを構成するDIWの凝固点より低い温度を有する冷却ガスが供給されて液膜11f、11bの凍結が行われる。また、冷却ガスは基板Wの下面中央部に向けて局部的に吐出され、該下面中央部に対する冷却能力が基板Wの下面周縁部に対する冷却能力よりも高くなっている。このため、液膜11f、11b全体のうち基板中央部に対応する液膜部分がまず凍結し、それに続いて、液膜凍結が基板周縁部に向けて進行する。したがって、基板Wの周縁部に対応する液膜部分が最終的に凍結することとなる。その結果、最終的に凍結する部分、つまり液膜の周縁部分では、体積膨張による応力の一部は外周方向に解放されて応力集中が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)の被処理面に形成された液膜を凍結させる凍結処理装置、該凍結処理装置を備えた基板処理装置および凍結処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に対する処理のひとつとして基板表面に液膜を付着させた状態で基板を冷却することにより液膜を凍結させる技術が用いられている。特に、このような凍結技術は基板に対する洗浄処理の一環として用いられている。すなわち、半導体装置に代表されるデバイスの微細化、高機能化、高精度化に伴って基板表面に形成されたパターンを倒壊させずに基板表面に付着しているパーティクル等の微小な汚染物質を除去することが益々困難になっている。そこで、上記した凍結技術を用いて次のようにして基板表面に付着しているパーティクルを除去している。
【0003】
先ず、基板表面に液体を供給して基板表面に液膜を形成する。続いて、基板を冷却することにより液膜を凍結させる。これにより、パーティクルが付着している基板表面に凍結膜が生成される。そして、最後に基板表面から凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクルを凍結膜とともに除去している。
【0004】
ここで、基板表面に形成された液膜を凍結させる液膜凍結技術としては次のようなものがある。例えば特許文献1に記載の装置は、基板を零下に冷却して凍結膜を形成するために冷却プレートが設けられている。この冷却プレートは、アルミ等の金属材料から構成され、チャンバー内底部に配設されている。また、冷却プレートの上面には、複数の突起が形成されており、それらの突起によって基板が冷却プレートの上面から僅かに離間しながら支持する。また、冷却プレートの内部には、冷却媒体を流し込むための管体が蛇行状に埋め込まれている。このため、冷却媒体の供給により冷却プレートに保持された基板は冷却されて凍結膜が形成される。
【0005】
【特許文献1】特許第3343013号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した凍結方式を採用した装置では、次のような問題が発生することがあった。すなわち、上記装置では、冷却プレートにより基板下面全体が同時に冷却されて該基板に形成された液膜の凍結も全体的に、かつ同時に開始される。そして、液膜各部で凍結が進行していく。このとき、凍結による体積膨張に伴い、最終的に凍結が完了する位置において比較的大きな応力が発生することがある。例えば液膜の周縁部から凍結が進行して中央部が最終的に凍結するような場合、最終凍結部位はその周囲から応力を集中的に受けながら凍結することとなる。その結果、最終凍結部位で基板に応力集中が発生し、基板に形成されたパターンや回路などに悪影響を及ぼす可能性があった。
【0007】
また、基板表面のうち冷却プレートと対向する面、つまり基板の下面に液膜を形成する場合には、基板と冷却プレートとの距離を十分にとる必要がある。なんとなれば、基板と冷却プレートを近接配置した状態で液膜凍結を行うと、凍結膜を介して基板と冷却プレートとが強固に接着されてしまうからである。また、基板の上面のみに液膜を形成する場合にも同様の配慮が必要である。それは、液膜を構成する液体が基板の下面に回り込んでいる可能性があるためである。したがって、冷却プレートを用いて液膜を凍結させる際には、基板と冷却プレートの間での液体凍結を防止するのに十分な距離を設ける必要がある。その結果、基板−冷却プレート間の距離が広がり、冷却プレートからの冷熱が基板に到達し難く、効率的な凍結処理を行うことが困難であった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、応力集中が発生するのを抑制しながら基板の被処理面に形成された液膜を効率的に凍結させることができる凍結処理装置、該凍結処理装置を備えた基板処理装置および凍結処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる凍結処理装置は、基板の被処理面に形成された液膜を凍結する凍結処理装置であって、上記目的を達成するため、基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを、基板保持手段に保持された基板の下面に向けて供給して液膜を凍結させる下方冷却手段とを備え、下方冷却手段は冷却ガスを基板の下面中央部に向けて局部的に吐出して下面中央部に対する冷却能力を基板の下面周縁部よりも高めた状態で基板全体を冷却することを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる凍結処理方法は、基板の被処理面に形成された液膜を凍結する凍結処理方法であって、上記目的を達成するため、基板を水平姿勢で保持する基板保持工程と、基板の下面に向けて液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを供給して液膜を凍結させる液膜凍結工程とを備え、液膜凍結工程では、基板の下面中央部に向けて冷却ガスを局部的に吐出することによって該下面中央部に対する冷却能力を基板の下面周縁部に対する冷却能力よりも高めて液膜の凍結を基板中央部から基板周縁部に向けて進行させることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明(凍結処理装置および方法)では、被処理面に液膜が形成された基板の下面に向けて、液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスが供給されて液膜が凍結される。つまり、基板上面のみが被処理面となっており、該基板上面に液膜が形成されている場合には、基板下面に直接冷却ガスの冷熱が与えられ、また基板下面が被処理面となっており、該基板下面に液膜が形成されている場合には液膜を介して冷却ガスによる冷熱が与えられる。したがって、基板の位置を問わず、冷熱によって基板および液膜が冷却されて液膜が効率よく凍結される。
【0012】
また、本発明では、冷却ガスが基板の下面中央部に向けて局部的に吐出されるため、該下面中央部に対する冷却能力は基板の下面周縁部に対する冷却能力よりも高くなっている。このため、液膜全体のうち基板中央部に対応する液膜部分がまず凍結し、さらなる液膜凍結が基板周縁部に向けて進行する。したがって、基板の周縁部に対応する液膜部分が最終的に凍結することとなり、応力集中の発生が抑制される。また、基板の周縁分にはパターンや回路などは形成されないため、この点からも液膜の周縁部分が最終凍結部位となるように凍結処理をコントロールすることはパターン等への応力集中を防止する上で効果的である。
【0013】
ここで、基板保持手段を、基板の下面よりも低い位置で基板下面に対向して設けられたベースプレートと、ベースプレートの上面に設けられて基板を支持する支持部材とで構成するとともに、下方冷却手段をベースプレートの中央部に設けられた開口部を介して基板の下面中央部に向けて冷却ガスを吐出する下方ガス吐出部で構成してもよい。このような構成を採用した場合には、基板の下面中央部に向けて局部的に吐出された冷却ガスはさらにベースプレートと基板下面との間に挟まれた空間に通って基板の径方向に移動していく。したがって、冷却ガスが基板から離散しまうのを防止することができ、高い冷却効率で液膜凍結処理を実行することができる。また、上記のように供給された冷却ガスは基板とベースプレートに案内されて下面中央部を中心として放射状に広がっていく。このため、液膜の凍結を基板中央部から基板周縁部に向けて確実に進行させることができる。このように冷却ガスを基板の径方向に広げていくために、基板の下面中央部に向けて吐出された冷却ガスを基板の下面周縁部に案内する案内部材をさらに設けてもよい。
【0014】
また、基板下面に向けて冷却ガスを供給するのみならず、基板の下面に冷却ガスを供給した状態で基板上面に向けても冷却ガスを供給するように構成してもよい。これによって、液膜凍結をさらに短時間で行うことができる。このガス供給態様のひとつとして、例えばノズルから冷却ガスを回転中心回りに回転している基板の上面に向けて局部的に吐出しつつ、該ノズルを基板の上面中央部から上面周縁部に向けて相対移動させて基板の上面全体に冷却ガスを供給してもよい。この冷却ガス供給によって、中央部から周縁部への液膜凍結を一層確実なものとすることができる。
【0015】
さらに、この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、被処理面に液膜が形成された基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを、基板保持手段に保持された基板の下面に向けて供給して液膜を凍結させる下方冷却手段と、凍結後の液膜に後処理液を供給して該液膜を基板の被処理面から除去する膜除去手段とを備え、下方冷却手段は冷却ガスを基板の下面中央部に向けて局部的に吐出して下面中央部に対する冷却能力を基板の下面周縁部よりも高めることを特徴としている。
【0016】
このように構成された基板処理装置では、上記した発明(凍結処理装置および方法)と同様に、被処理面に液膜が形成された基板の下面に向けて、液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスが供給されて液膜が凍結されるため、液膜が効率よく凍結される。また、冷却ガスが基板の下面中央部に向けて局部的に吐出されるため、該下面中央部に対する冷却能力は基板の下面周縁部に対する冷却能力よりも高くなっているため、基板に与えられる応力集中は抑制される。そして、このようにして凍結された液膜に後処理液が供給されて該液膜が基板の被処理面から除去される。したがって、基板の被処理面に対してダメージを与えることなく、該被処理面に対して所望の表面処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、被処理面に液膜が形成された基板の下面に向けて、液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを供給して液膜を凍結するため、液膜が効率よく凍結することができる。しかも、その冷却ガスは基板の下面中央部に向けて局部的に吐出されるため、該下面中央部に対する冷却能力は基板の下面周縁部に対する冷却能力よりも高くなっており、液膜凍結が中央部から周縁部に向けて進行し、液膜の周縁部分が最終凍結部分となる。その結果、体積膨張による応力の一部を外周方向に解放することができ、基板に与えられる応力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、基板表面Wfおよび裏面Wbに液膜を形成した後、該液膜を凍結させてから凍結後の液膜(凍結膜)を基板表面Wfおよび裏面Wbから除去することにより、基板Wに対して一連の洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)を施す装置である。
【0019】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1を備え、処理チャンバー1内に基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2(本発明の「基板保持手段」に相当)と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3と、基板表面Wfに処理液の液滴を供給する二流体ノズル5と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて薬液を吐出する薬液吐出ノズル6と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材9が設けられている。処理液としては、薬液または純水やDIW(脱イオン水:deionized Water)等のリンス液などが用いられる。
【0020】
このように、本実施形態では、スピンチャック2は微細パターンが形成された基板表面Wfを上方に向けた水平姿勢で基板Wを保持しているため、基板表面Wfが本発明の「基板の上面」に相当し、基板裏面Wbが本発明の「基板の下面」に相当する。もちろん、基板裏面Wbを上方に向けて保持した場合には、該裏面Wbが本発明の「基板の上面」に相当し、基板表面Wfが本発明の「基板の下面」に相当する。また、この実施形態では、表面Wfおよび裏面Wbの両面を被処理面とし、以下に説明する一連の洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)が実行される。
【0021】
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。このように、この実施形態では、チャック回転機構22が本発明の「回転駆動手段」として機能する。
【0022】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0023】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。このように、本実施形態では、スピンベース23およびチャックピン24がそれぞれ本発明の「ベースプレート」および「支持部材」として機能している。
【0024】
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。
【0025】
図3は図1の基板処理装置に装備された冷却ガス吐出ノズルの動作を示す図である。ここで、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。第1の回動モータ31を駆動して第1のアーム35を揺動させると、冷却ガス吐出ノズル3は基板表面Wfに対向しながら同図(b)の移動軌跡T、つまり基板Wの回転中心位置Pcから基板Wの端縁位置Peに向かう軌跡Tに沿って移動する。ここで、回転中心位置Pcは基板表面Wfと対向しながら基板Wの回転中心A0上に位置する。また、冷却ガス吐出ノズル3は基板Wの側方に退避した待機位置Psに移動可能となっている。
【0026】
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部64(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガス供給部64から冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3に供給する。このため、冷却ガス吐出ノズル3が基板表面Wfに対向配置されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。したがって、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら該冷却ガス吐出ノズル3を移動軌跡Tに沿って移動させることで、冷却ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給できる。これにより、後述するように基板Wに液膜11f、11bが形成されていると、該液膜11f、11bの全体を凍結させて基板表面Wfの全面に凍結膜13fを生成するとともに基板裏面Wbの全面に凍結膜13bを生成することが可能となっている。
【0027】
基板表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さは、冷却ガスの供給量によっても異なるが、例えば50mm以下、好ましくは数mm程度に設定される。このような基板表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さおよび冷却ガスの供給量は、(1)冷却ガスが有する冷熱を液膜11fに効率的に付与する観点、(2)冷却ガスにより液膜の液面が乱れることがないように液膜を安定して凍結する観点から実験的に定められる。
【0028】
冷却ガスとしては、基板Wに形成された液膜11f、11bを構成する液体の凝固点より低い温度を有するガス、例えば窒素ガス、酸素ガスおよび清浄なエア等が用いられる。このような冷却ガスによれば、基板Wへのガス供給前にフィルタ等を用いて冷却ガスに含まれる汚染物質を除去することが容易である。したがって、液膜11f、11bを凍結させる際に基板Wが汚染されるのを防止できる。この実施形態では、後述するように基板表面WfにDIWによる液膜11fが形成されるとともに基板裏面WbにDIWによる液膜11bが形成された状態で冷却ガス吐出ノズル3から基板表面Wfに向けて冷却ガスを吐出することで、液膜11f、11bを凍結させる。したがって、冷却ガスは液膜11fを構成するDIWの凝固点(氷点)よりも低い温度に調整されたものが用いられる。
【0029】
このように、この実施形態では、ノズル3と、ノズル3を基板表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる第1の回動モータ31とによって本発明の「上方冷却手段」が構成されており、回動モータ31が本発明の「相対移動機構」に相当する。なお、この実施形態では、上方冷却手段のほかに、基板裏面Wbに向けて上記と同じ冷却ガスを供給して液膜11f、11bの凍結を行う「下方冷却手段」が設けられている。その構成および動作については後で詳述する。
【0030】
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、二流体ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。二流体ノズル5は、基板表面Wfを洗浄するために処理液と気体とを混合して生成した処理液の液滴を吐出する。
【0031】
図4は二流体ノズルの構成を示す図である。この二流体ノズルは、処理液としてDIWと窒素ガス(N2)とを空中(ノズル外部)で衝突させてDIWの液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。二流体ノズル5は、胴部501の内部に処理液吐出口521を有する処理液吐出ノズル502が挿通される。この処理液吐出口521は、二流体ノズル5の傘部511の上面部512に配置されている。このため、DIWが処理液吐出ノズル502に供給されると、DIWが処理液吐出口521から基板Wに向けて吐出される。
【0032】
また、ガス吐出ノズル503が処理液吐出ノズル502に近接して設けられており、該処理液吐出ノズル502を囲んだリング状のガス通路を規定している。ガス吐出ノズル503の先端部は先細りにテーパ状とされており、このノズル開口は基板Wの表面に対向している。このため、ガス吐出ノズル503に窒素ガスが供給されると、窒素ガスがガス吐出ノズル503のガス吐出口531から基板Wに向けて吐出される。
【0033】
このように吐出される窒素ガスの吐出軌跡は、処理液吐出口521からのDIWの吐出軌跡に交わっている。すなわち、処理液吐出口521からの液体(DIW)流は、混合領域内の衝突部位Gにおいて気体(窒素ガス)流と衝突する。気体流はこの衝突部位Gに収束するように吐出される。この混合領域は、胴部501の下端部の空間である。このため、処理液吐出口521からのDIWの吐出方向の直近においてDIWはそれに衝突する窒素ガスによって速やかに液滴化される。こうして、洗浄用液滴が生成される。
【0034】
図5は下方冷却手段の構成および動作を模式的に示す図である。スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。そして、図1および図5に示すように、回転支軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに処理液を供給するための処理液供給管25が挿通されている。処理液供給管25はスピンベース23の中央部に設けられた開口部231を通過してスピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びている。また、処理液供給管25の先端には、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する処理液ノズル27が設けられている。処理液供給管25は薬液供給部61およびリンス液供給部62と接続されており、薬液供給部61からSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液が、リンス液供給部62からDIW等のリンス液が選択的に供給される。
【0035】
回転支軸21の内壁面と処理液供給管25の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路29を形成している。このガス供給路29は冷却ガス供給部64と乾燥ガス供給部65に接続されており、基板裏面Wbの中央部(下面中央部)に向けて冷却ガスと乾燥ガスとを選択的に供給可能となっている。
【0036】
この実施形態では、後述するように液膜凍結処理を実行する際には、ガス供給路29を介して基板裏面Wbの中央部に向けて冷却ガスが吐出される。このように中空状の回転支軸21が本発明の「下方ガス吐出部」として機能しており、開口部231を介して基板Wの下面中央部に向けて冷却ガスを吐出する。こうして基板Wの下面中央部に与えられた冷却ガスはさらに基板裏面Wbとスピンベース23とに挟まれた空間を通じて基板Wの径方向に流通される。このため、下方からの冷却ガス供給により基板Wおよび液膜11f、11bが冷却されて液膜の凍結が行われる。しかも、その冷却能力(つまり、基板Wおよび液膜11f、11bを凍結させる能力)に着目すると、次の特徴を有している。すなわち、図5の最上部グラフに示すように、基板中央部に対応する冷却能力が基板周縁部よりも高くなっている。なお、この実施形態では、ガス供給路29に冷却ガスを流通させているため、ガス供給路29に対して断熱構造を採用するのが望ましい。
【0037】
一方、後述するように乾燥処理を実行する際には、ガス供給路29を介して基板裏面Wbの中央部に向けて窒素ガスは乾燥ガスとして吐出される。そして、この窒素(乾燥)ガスは、冷却ガスと同様に、スピンベース23と基板裏面Wbとの間に形成される空間に供給される。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給部65から乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出してもよい。
【0038】
図1に戻って説明を続ける。スピンチャック2の外方には、第3の回動モータ67が設けられている。第3の回動モータ67には、第3の回動軸68が接続されている。また、第3の回動軸68には、第3のアーム69が水平方向に延びるように連結され、第3のアーム69の先端に薬液吐出ノズル6が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第3の回動モータ67が駆動されることで、薬液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動させることができる。薬液吐出ノズル6は薬液供給部61と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてSC1溶液等の薬液が薬液吐出ノズル6に圧送される。
【0039】
また、スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材9が設けられている。遮断部材9は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
【0040】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
【0041】
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材9を下降させる。
【0042】
支持軸91は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材9の開口に連通したガス供給路95が挿通されている。ガス供給路95は、乾燥ガス供給部65と接続されており、乾燥ガス供給部65から窒素ガスが供給される。この実施形態では、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、ガス供給路95から遮断部材9と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路95の内部には、遮断部材9の開口に連通した液供給管96が挿通されており、液供給管96の下端にノズル97が結合されている。液供給管96はリンス液供給部62に接続されており、リンス液供給部62よりリンス液が供給されることで、ノズル97からリンス液を基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。
【0043】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図6および図7を参照しつつ説明する。図6は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図7は図1の基板処理装置の動作を示す模式図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)が実行される。ここで、基板表面Wfに微細パターンが形成されることがある。つまり、基板表面Wfがパターン形成面になっている。そこで、この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS1;基板保持工程)。なお、このとき、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0044】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル27、97からDIWを基板Wに供給する。基板Wに供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、図7(a)に示すように、基板表面Wfおよび裏面Wbの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールしながら、基板表面Wfおよび裏面Wbの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)を形成することができる(ステップS2;液膜形成工程)。なお、液膜形成に際して、上記のように基板Wに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板Wに液膜を形成してもよい。このように本実施形態では、ノズル27、97が本発明の「液膜形成手段」として機能している。
【0045】
こうして、液膜形成工程が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置させる。そして、制御ユニット4はノズル27からのDIWの供給を停止させるとともに、ガス供給路29を介して冷却ガスを基板裏面Wbの中央部に吐出する。これにより、該冷却ガスによる冷熱が液膜の中央部および基板Wの中央部に与えられて液膜11f、11bの中央部が最先に冷却され、基板中央部に対応する冷却能力が基板周縁部よりも高くなっている。また、この実施形態では、基板裏面Wbに冷却ガスを供給した状態で、制御ユニット4は次のように冷却ガス吐出ノズル3を作動させて基板の上方からも冷却ガスを供給する。すなわち、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから冷却ガス供給開始位置、つまり回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出する。このように本実施形態では、基板Wの下方側からの冷却ガスと、上方側からの冷却ガスとを基板中央部に供給しているため、図7(a)に示すように、液膜11f、11b全体のうち基板中央部に対応する液膜部分がまず凍結されて凍結膜13f、13bが形成される。こうして、液膜凍結処理が開始される(ステップS3)。
【0046】
そして、ガス供給路29からの冷却ガスを基板裏面Wbの中央部に供給し続けた状態のまま、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。このように本実施形態では、基板Wの下方側からの冷却ガスによる冷却能力が図5(a)に示す分布を有するとともに、ノズル3の移動により液膜11f、11bが凍結した領域(凍結領域)が基板中央部から周縁部へと広げられ、基板表面Wfおよび裏面Wbの全面に凍結膜が生成される(ステップS3;液膜凍結工程)。なお、冷却ガス吐出ノズル3を移動させながら基板Wを回転させることによって、液膜の厚み分布に偏りが生じるのを抑制しつつ、基板表面Wfおよび裏面Wbの全面に凍結膜を生成させることができるが、基板Wを高速回転させた場合、基板Wの回転によって生じる気流により、冷却ガスが拡散してしまい、液膜の凍結の効率が悪くなる場合がある。したがって、液膜凍結工程時の基板Wの回転速度は、例えば1〜300rpmに設定することができる。また、冷却ガス吐出ノズル3の移動速度、吐出ガスの温度および流量、液膜の厚みも考慮して基板Wの回転速度は設定される。
【0047】
このようにして液膜凍結工程を実行すると、基板Wとパーティクルの間に入り込んだ液膜の体積が増加(摂氏0℃の水が摂氏0℃の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクルが微小距離だけ基板Wから離れる。その結果、基板Wとパーティクルとの間の付着力が低減され、さらにはパーティクルが基板Wから脱離することとなる。このとき、基板表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、液膜の体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しく、つまりパターンに加えられる力が相殺される。そのため、パターンを剥離あるいは倒壊させることなく、パーティクルのみを選択的に優先して、基板表面Wfから除去できる。
【0048】
液膜の凍結が完了すると、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psに移動させるとともに遮断部材9を対向位置に配置させる。また、制御ユニット4はガス供給路29からの冷却ガスの供給を停止する。そして、凍結膜13f、13bが融解しないうちにノズル97および処理液ノズル27からリンス液としてDIWをそれぞれ基板Wの表裏面Wf,Wbに供給する。これにより、基板Wの凍結膜13f、13bがDIWによって解凍される。また、凍結膜13f、13bと基板Wに供給されたDIWとに基板Wの回転による遠心力が作用する。その結果、基板Wからパーティクルを含む凍結膜13f、13bが除去され、基板外に排出される(ステップS4;膜除去工程)。このように、この実施形態では、ノズル97および処理液ノズル27が本発明の「膜除去手段」としても機能している。なお、この膜除去工程では、基板Wの回転とともに遮断部材9を回転させるのが好ましい。これにより、遮断部材9に付着する液体成分が振り切られるとともに、遮断部材9と基板表面Wfとの間に形成される空間に基板周辺からミスト状の処理液が侵入するのを防止することができる。
【0049】
また、膜除去工程では、次のようにして上方側の凍結膜13fを解凍除去してもよい。すなわち、液膜の凍結後、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置した状態で二流体ノズル5を基板Wの上方で揺動させながらDIWの液滴を基板表面Wfに供給する。これにより、液滴が基板表面Wfに付着するパーティクルに衝突して、液滴が有する運動エネルギーによってパーティクルが物理的に除去(物理洗浄)される。したがって、基板表面Wfからのパーティクル除去を容易にして、基板表面Wfを良好に洗浄することができる。この場合、二流体ノズル5が本発明の「膜除去手段」として機能する。
【0050】
こうして、膜除去工程が終了して基板Wの洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)が完了すれば(ステップS5でYES)、続いて基板Wの乾燥処理が実行される。その一方で、被処理面である基板表面Wfおよび裏面Wbの表面状態あるいは除去対象であるパーティクルの粒径、種類によっては、一度の洗浄処理では基板Wから十分にパーティクルを除去しきれない場合がある。この場合(ステップS5でNO)には、膜除去工程が終了した後に液膜凍結工程と膜除去工程とが繰り返し実行される。すなわち、膜除去工程後には基板Wにリンス液(DIW)が残留付着している。このため、新たに基板Wに液膜を形成しなくとも、リンス液による液膜で基板Wが覆われている。したがって、膜除去工程後に液膜凍結工程が実行されると、リンス液で構成された凍結膜が生成される。そして、膜除去工程において凍結膜が除去されることによって基板表面Wfに付着するパーティクルが凍結膜とともに基板表面Wfから除去される。こうして、膜除去工程と液膜凍結工程とが所定回数だけ繰り返し実行されることにより、基板表面Wfからパーティクルが除去されていく。なお、このような繰り返し実行回数を予め処理レシピとして規定しておき、適宜選択した処理レシピで規定される実行回数だけ膜除去工程と液膜凍結工程とを繰り返すようにしてもよい。
【0051】
基板Wの洗浄が完了すると、制御ユニット4はチャック回転機構22および遮断部材回転機構93のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させる。これにより、基板Wの乾燥処理(スピンドライ)が実行される(ステップS6)。さらに、この乾燥処理においては、ガス供給路95,29から窒素ガスを供給することで、遮断部材9と基板表面Wfとの間に挟まれた空間およびスピンベース23と基板裏面Wbとの間に挟まれた空間が窒素ガス雰囲気とされる。これにより、基板Wの乾燥が促進され、乾燥時間を短縮することができる。乾燥処理後は基板Wの回転が停止され、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される(ステップS7)。
【0052】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wに形成された液膜11f、11bを凍結させるために下方冷却手段が設けられている。すなわち、基板Wの下面(この実施形態では基板裏面Wb)に向けて、液膜11f、11bを構成する液体(DIW)の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを供給することによって液膜11f、11bの凍結を行っている。したがって、基板Wがスピンベース23に近接して位置決めされている場合はもちろんのこと、比較的離して位置決めされている場合にも、冷却ガスによる冷熱によって基板Wおよび液膜11f、11bを確実に冷却することができ、液膜11f、11bを効率よく凍結させることができる。
【0053】
また、この実施形態では、冷却ガスを基板Wの下面中央部に向けて局部的に吐出しているため、図5(a)のグラフに示すように、該下面中央部に対する冷却能力が基板Wの下面周縁部に対する冷却能力よりも高くなっている。このため、液膜11f、11b全体のうち基板中央部に対応する液膜部分(図7(b)における凍結膜13f、13bに相当する部分)がまず凍結し、それに続いて、液膜凍結が基板周縁部に向けて進行する。したがって、基板Wの周縁部に対応する液膜部分が最終的に凍結することとなる。その結果、最終的に凍結する部分、つまり液膜の周縁部分では、体積膨張による応力の一部は外周方向に解放されて応力集中が抑制される。また、基板Wの周縁分にはパターンや回路などは形成されないため、この点からも液膜11f、11bの周縁部分を最終凍結部位にコントロールすることはパターン等の形成位置で応力集中が発生するのを効果的に防止することができる。
【0054】
また、基板Wの下面(この実施形態では基板裏面Wb)よりも低い位置で基板下面に対向してスピンベース23が設けられており、該スピンベース23から上方に離間した状態で基板Wが保持されている。そして、スピンベース23の開口部231を介して冷却ガスが基板下面に供給されるため、該冷却ガスは基板Wの下面中央部を冷却した後、スピンベース23と基板下面との間に挟まれた空間に通って基板Wの径方向に移動していく。したがって、冷却ガスが基板Wから離散しまうのを防止することができ、高い冷却効率で凍結処理を実行することができる。しかも、上記空間を移動する冷却ガスは下面中央部を中心として放射状に広がっていくため、液膜11f、11bの凍結を基板中央部から基板周縁部に向けて確実に進行させることができる。
【0055】
また、この実施形態では、下方冷却手段のみならず、基板上面に向けて冷却ガスを供給する上方冷却手段をさらに設け、両者によって液膜凍結処理を行うように構成しているので、液膜凍結処理に要する時間を短縮することができる。しかも、この実施形態では、ノズル3から冷却ガスを基板Wの上面(この実施液体では基板表面Wf)に向けて局部的に吐出しつつ、該ノズル3を回転している基板Wの上面中央部から上面周縁部に向けて相対移動させて基板Wの上面全体に冷却ガスを供給しているため、基板中央部から周縁部への液膜凍結を一層確実なものとすることができる。
【0056】
さらに、この実施形態では、上記のようにして凍結された液膜、つまり凍結膜13f、13bに後処理液としてDIWが供給されて該凍結膜13f、13bが基板Wから除去される。したがって、基板Wに対してダメージを与えることなく、基板Wに対して洗浄処理を施すことができる。なお、この実施形態では、後処理液としてDIWを用いているが、図8に示すように、基板Wに対して化学洗浄を施して凍結膜を除去してもよい。すなわち、液膜11f、11bを凍結させた後、制御ユニット4は薬液吐出ノズル6を吐出位置に配置するとともに、SC1溶液を薬液吐出ノズル6に圧送する。これにより、薬液吐出ノズル6からSC1溶液が基板表面Wfに供給される。ここで、SC1溶液中の固体表面のゼータ電位(界面動電電位)は比較的大きな値を有することから、基板表面Wfと該基板表面Wf上のパーティクルとの間がSC1溶液で満たされることにより、基板表面Wfとパーティクルとの間に大きな反発力が作用する。したがって、基板表面Wfからのパーティクルの脱離をさらに容易にして、基板表面Wfからパーティクルを効果的に除去することができる。また、基板表面WfへのSC1溶液の供給と同時に基板裏面Wbにも処理液ノズル27からSC1溶液を供給する。これにより、SC1溶液の化学洗浄作用により汚染物質を基板Wから効果的に除去することができる。なお、SC1溶液による洗浄後、基板Wの表裏面Wf,WbにDIWが供給され、DIWによるリンス処理が行われる。
【0057】
ところで、上記実施形態では、基板下面に対してリンス液などの処理液を処理液ノズル27から吐出しているため、処理液がガス供給路29に落下することがある。そして、落下した処理液が凍結されてガス供給路29を塞ぐ可能性がある。そこで、例えば図9(a)に示すように、ガス供給路29と同一またはそれ以上の外径を有するフランジ部271をノズル27の先端部に取り付けてもよい。これによりフランジ部271がガス供給路29を上方から覆うこととなり、ガス供給路29への処理液の進入を防止することができる。また、フランジ部271の代わりに、同図(b)に示すように傘部272を設けてもよい。すなわち、この傘部272はノズル27の先端から斜め下方向に傘状に展開してガス供給路29を上方から覆っている。これにより、フランジ部271と同様の作用効果が得られる。なお、フランジ部271および傘部272のいずれを採用した場合にも、フランジ部271および傘部272の外周端は回転支軸21やスピンベース23と離間しており、ガス供給路29から供給されるガスはフランジ部271などの下面側から回り込んで基板Wの下面中央部に供給される。
【0058】
また、ガス供給路29を介して供給される冷却ガスにより基板W全体を効率的に冷却するためには、下面中央部を冷却ガスで集中的に冷却するのみならず、冷却ガスを基板Wの外周縁側にも均等に送り込む必要がある。そこで、例えば図10に示すように、ノズル27の先端部に対して4枚の案内部材273を90゜間隔で取り付けて基板Wの下面中央部に吐出された冷却ガスを基板Wの下面周縁部に案内するように構成してもよい。このように案内部材273に設けることで冷却ガスが基板Wの外周縁部の全周に渡って、しかも均一に広がっていく。その結果、基板W全体を効率的に、しかも均一に冷却することができ、均一な凍結膜13f、13bを形成することができる。なお、この実施形態では4枚の案内部材273をプロペラ状にノズル27の先端部に取り付けているが、案内部材273の枚数や配置関係などについては任意である。
【0059】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、下方冷却手段に加えて上方冷却手段を設けているが、上方冷却手段の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に向けて冷却ガスを供給するものを用いることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、下方冷却手段と上方冷却手段を組み合わせて基板Wに形成された液膜11f、11bを凍結させているが、上記下方冷却手段のみを用いて液膜凍結処理を実行するようにしてもよい。この場合にも、上記した作用効果が得られる。ただし、上下面に液膜を形成する場合や凍結に要する時間を短縮したい場合などにおいては、下方冷却手段に上方冷却手段を組み合わせるのが望ましい。
【0061】
また、上記実施形態では、基板Wの上面および下面に対して一連の洗浄処理を施しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、いずれか一方面にのみ洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)を施す装置に対しても本発明を適用することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、処理チャンバー1内で基板Wの被処理面に液体(DIW)を供給して基板Wの被処理面に液膜を形成しているが、予め基板Wの被処理面に液膜が形成された基板Wを処理チャンバー1に搬入してもよい。
【0063】
また、上記実施形態ではDIWにより基板Wに液膜を形成しているが、他のリンス液により液膜を形成してもよい。例えば、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水、希薄濃度の塩酸などを用いて液膜を形成してもよい。さらに、リンス液の他、薬液を用いて液膜を形成してもよい。例えば、液膜凍結工程と薬液を用いた膜除去工程とを繰り返し実行する際には、膜除去工程において基板Wに残留付着する薬液により構成された液膜が、液膜凍結工程において凍結される。
【0064】
また、上記実施形態では液膜の凍結完了後、直ちに膜除去工程に移行しているが、膜除去工程への移行タイミングを後側にずらしてタクトタイムを調整してもよい。この場合、凍結膜が形成された状態のまま基板Wが装置内部で待機することになるが、凍結膜が保護膜として機能する。その結果、基板Wの被処理面が汚染されるのを確実に防止できる。
【0065】
また、上記実施形態では基板表面Wfに対して主に化学的な洗浄作用を有する化学洗浄としてSC1溶液による洗浄(SC1洗浄)を実行しているが、本発明で実行される化学洗浄としては、SC1洗浄に限定されない。例えば、化学洗浄としてSC1溶液以外のアルカリ性溶液、酸性溶液、有機溶剤、界面活性剤などを処理液として、またはそれらを適宜に組み合わせたものを処理液として使用する湿式洗浄が挙げられる。
【0066】
また、上記実施形態では、基板表面Wfに対して主に物理的な洗浄作用を有する物理洗浄として二流体ノズルを用いた液滴による洗浄(液滴洗浄)を実行しているが、本発明で実行される物理洗浄としては、液滴洗浄に限定されない。例えば、物理洗浄として基板表面Wfに対してブラシやスポンジ等を接触させることで基板Wを洗浄するスクラブ洗浄、超音波振動によって基板表面Wfに付着するパーティクルを振動させて脱離させたり、処理液中に発生したキャビテーションや気泡を基板表面Wfに作用させて基板Wを洗浄する超音波洗浄などが挙げられる。さらに、基板表面Wfに対して物理洗浄と化学洗浄とを必要に応じて組み合わせた洗浄を施して基板表面Wfから凍結後の液膜を除去してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、二流体ノズルからの液滴吐出による物理洗浄を行う際に、いわゆる外部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行しているが、これに限定されず、いわゆる内部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行してもよい。すなわち、二流体ノズルの内部で処理液とガスとを混合させて洗浄用液滴を生成するとともにノズル吐出口から基板Wに向けて吐出してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、基板の被処理面に形成された液膜を凍結させる凍結処理装置を基板処理装置に適用して基板Wの被処理面に付着するパーティクル等の汚染物質を除去する場合について説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、本発明にかかる凍結処理装置および方法を用いて凍結させた液膜(凍結膜)を基板表面保護用の保護膜として利用してもよい。すなわち、基板Wの被処理面に液膜を形成し、該液膜を凍結させることで凍結膜が基板Wの被処理面に対する保護膜として作用して基板Wの被処理面を周囲雰囲気からの汚染より保護することができる。したがって、凍結膜を保護膜として基板Wの被処理面の汚染を防止しつつ基板Wを保存したり待機させておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の被処理面に形成された液膜を凍結させる凍結処理装置、凍結処理方法および該凍結処理装置を装備した基板処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1の基板処理装置に装備された冷却ガス吐出ノズルの動作を示す図である。
【図4】二流体ノズルの構成を示す図である。
【図5】図1の基板処理装置に装備された下方冷却手段の構成および動作を模式的に示す図である。
【図6】図1の基板処理装置の洗浄処理を示すフローチャートである。
【図7】図1の基板処理装置の洗浄処理の動作を示す模式図である。
【図8】図1の基板処理装置の膜除去処理の動作を示す模式図である。
【図9】この発明にかかる基板処理装置の他の実施形態を示す図である。
【図10】この発明にかかる基板処理装置の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
2…スピンチャック(基板保持手段)
3…冷却ガス吐出ノズル(上方冷却手段)
5…二流体ノズル(膜除去手段)
11b、11f…液膜
13b、13f…凍結膜
21…回転支軸(下方ガス吐出部)
22…チャック回転機構(回転駆動手段)
23…スピンベース(ベースプレート)
24…チャックピン(支持部材)
27、97…ノズル(液膜形成手段、膜除去手段)
29…ガス供給路
31…回動モータ(上方冷却手段、相対移動機構)
231…(スピンベースの)開口部
273…案内部材
Wf…基板表面
Wb…基板裏面
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の被処理面に形成された液膜を凍結する凍結処理装置において、
基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、
前記液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを、前記基板保持手段に保持された前記基板の下面に向けて供給して前記液膜を凍結させる下方冷却手段とを備え、
前記下方冷却手段は前記冷却ガスを前記基板の下面中央部に向けて局部的に吐出して前記下面中央部に対する冷却能力を前記基板の下面周縁部よりも高めた状態で前記基板全体を冷却することを特徴とする凍結処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段は、前記基板の下面よりも低い位置で前記基板下面に対向して設けられたベースプレートと、前記ベースプレートの上面に設けられて前記基板を支持する支持部材とを有し、
前記下方冷却手段は、前記ベースプレートの中央部に設けられた開口部を介して前記基板の下面中央部に向けて前記冷却ガスを吐出する下方ガス吐出部を有している請求項1記載の凍結処理装置。
【請求項3】
前記基板の下面中央部に向けて吐出された前記冷却ガスを前記基板の下面周縁部に案内する案内部材をさらに備えている請求項2記載の凍結処理装置。
【請求項4】
前記基板保持手段に保持された前記基板の上面に向けて前記冷却ガスを供給して前記液膜を凍結させる上方冷却手段をさらに備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の凍結処理装置。
【請求項5】
前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に伸びる回転中心回りに回転する回転駆動手段をさらに備え、
前記上方冷却手段は、前記冷却ガスを前記基板保持手段に保持された前記基板の上面に向けて局部的に吐出するノズルと、前記ノズルを前記基板上面に沿って前記基板に対して相対移動させる相対移動機構とを有し、
前記相対移動機構は、前記下方冷却手段により前記基板の下面に前記冷却ガスが供給された状態で、前記基板の上面中央部から上面周縁部に向けて前記ノズルを相対移動させる請求項4記載の凍結処理装置。
【請求項6】
基板の被処理面に形成された液膜を凍結する凍結処理方法であって、
基板を水平姿勢で保持する基板保持工程と、
前記基板の下面に向けて前記液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを供給して前記液膜を凍結させる液膜凍結工程とを備え、
前記液膜凍結工程では、前記基板の下面中央部に向けて前記冷却ガスを局部的に吐出することによって該下面中央部に対する冷却能力を前記基板の下面周縁部に対する冷却能力よりも高めて前記液膜の凍結を基板中央部から基板周縁部に向けて進行させることを特徴とする凍結処理方法。
【請求項7】
前記液膜凍結工程では、前記基板の下面に前記冷却ガスを供給した状態で、前記冷却ガスを前記基板の上面に供給して前記液膜を凍結させる請求項6記載の凍結処理方法。
【請求項8】
前記液膜凍結工程では、前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に伸びる回転中心回りに回転しながら、前記冷却ガスを前記基板の上面に向けて局部的に吐出するノズルを前記基板の上面中央部から上面周縁部に向けて相対移動させて前記基板の上面全体に前記冷却ガスを供給する請求項7記載の凍結処理方法。
【請求項9】
被処理面に液膜が形成された基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、
前記液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを、前記基板保持手段に保持された前記基板の下面に向けて供給して前記液膜を凍結させる下方冷却手段と、
凍結後の液膜に後処理液を供給して該液膜を前記基板の被処理面から除去する膜除去手段とを備え、
前記下方冷却手段は前記冷却ガスを前記基板の下面中央部に向けて局部的に吐出して前記下面中央部に対する冷却能力を前記基板の下面周縁部よりも高めることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段に保持された前記基板の上面に向けて前記冷却ガスを供給して前記液膜を凍結させる上方冷却手段をさらに備えた請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板保持手段に保持された基板に前記液体を供給して液膜を形成する液膜形成手段をさらに備えた請求項9または10記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−21409(P2009−21409A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183081(P2007−183081)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】