説明

処理装置及び方法

【課題】大流量のガス導入時にも被処理基体の表面近傍に不均一なガスの流れが発生することを防止し、ラジカル拡散濃度の空間分布を均一化し、被処理基体の表面の均一な処理を行うことができるラジカル処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】処理室101、排気手段106、ガス導入手段105、処理室101内の上部のラジカル発生領域111に中性ラジカルを生成する中性ラジカル生成手段108、ラジカル発生領域111よりもガス流の上流に設置され、被処理基体102を支持する被処理基体支持手段103とを有し、ガス導入手段105をラジカル発生領域111と被処理基体支持手段103との間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基体の表面の均一な処理を行うことができるエッチング装置、アッシング装置、表面改質装置等の処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、処理装置としては、エッチング装置、アッシング装置、表面改質装置等が知られている。
従来、マイクロ波プラズマにより励起したラジカルの被処理基体への微小入射フラックスを精密制御する処理装置及び方法が、例えば、特開2005−142234号公報(特許文献1)で提案されている。
この従来の処理装置を図5に示す。処理室501、半導体ウェハ等から成る被処理基体502、被処理基体502を支持する支持体503、被処理基体502の温度調整手段504、処理室501の排気手段506、プラズマ処理用ガスの導入手段505、電力を処理室501に導入する電力導入手段508、コンダクタンス制御手段509等から成る。
この従来例において、排気手段506を介して処理室501内を真空状態になるように排気し、処理用ガスを処理室501下部に設けられたガス導入手段505を介して所定の流量で導入する。排気手段506に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室501内を所定の圧力に保持する。電力導入手段508を介し所望の電力を処理室501に導入し、プラズマ発生領域511においてプラズマを発生させる。
導入された処理用ガスは、発生したプラズマにより励起し、イオン化して活性化し、支持体503上に載置された被処理基体502の表面を処理する。
この際、プラズマで励起された中性ラジカルなどの活性種の多くは被処理基体502に到達することなく排気され、被処理基体502まで拡散して到達した一部の活性種のみがプラズマ処理に寄与する。ガス流量と排気コンダクタンスを変え流速を変化することにより、処理速度を高精度に制御でき、数分子層の極薄膜も形成可能になる。
【特許文献1】特開2005−142234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来例では、ラジカルの被処理基体への入射フラックスを極微小にする為に大流量の処理ガスを導入する場合があり、このとき導入ガスに起因する強いガスの流れが形成される恐れがあった。
このため、被処理基体支持手段近傍において、導入ガスの流れの影響によるラジカルの濃度ムラが発生し、被処理基体表面への均一な処理ができなくなる恐れがあった。
そこで、本発明は、大流量のガス導入時にも被処理基体の表面近傍に不均一なガスの流れが発生することを防止し、ラジカル拡散濃度の空間分布を均一化し、被処理基体の表面の均一な処理を行うことができるプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために本発明に係る処理装置は、被処理基体を収納する処理室と、
前記処理室内にラジカルを生成するラジカル生成手段と、
前記処理室内で前記被処理基体を支持する被処理基体支持手段と、を有する処理装置において、
前記ラジカルの生成領域と前記被処理基体との間に処理用ガスを導入するガス導入手段と、
前記ラジカル生成領域と前記ガス導入手段との間に前記処理用ガスを排出するガス排出手段と、を備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る処理装置は、前記ガス導入手段と前記ラジカル発生領域の間にコンダクタンス調整手段を備える。
さらに、本発明に係る処理装置は、前記ガス導入手段と前記被処理基体支持手段との間にフラックス均一化手段を備える。
さらに、本発明に係る処理装置は、前記フラックス均一化手段は複数の孔が穿られた板から成る。
さらに、本発明に係る処理装置は、前記中性ラジカルはマイクロ波により生成される。
さらに、本発明に係る処理装置は、前記中性ラジカルは紫外光により生成される。
さらに、本発明に係る処理装置は、前記コンダクタンス調整手段及び/又は前記フラックス均一化手段は、前記紫外光に対し不透明な材質から成る。
さらに、本発明に係る処理方法は、処理室内に中性ラジカルを生成し被処理基体をラジカル処理する処理方法において、
前記被処理基体と前記ラジカル生成領域との間に処理用ガスを導入すると共に、前記処理用ガスを前記ラジカル生成領域と前記処理用ガスの導入部との間から排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の処理装置及び方法によれば、ガス導入手段をラジカル発生領域と被処理基体支持手段との間に設けることによって、被処理基体支持手段のある空間からの排気経路が存在せず、導入された処理ガスに起因する強いガスの流れが形成されない。これにより、ガスの滞留状態が被処理基体支持手段近傍に生じる。このため大流量のガスを導入した場合においても被処理基体支持手段近傍においては導入ガスの流れの影響による、ラジカル拡散のムラが殆ど発生せず均一に拡散し被処理基体の表面の均一な処理が可能となる。このため、大流量のガス導入時にも被処理基体の表面近傍に不均一なガスの流れが発生することを防止し、ラジカル拡散濃度の空間分布を均一化し、被処理基体の表面の均一な処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を、その実施例に基づいて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
本発明の実施例1の処理装置について図1を用いて説明する。
処理室101は、半導体等の被処理基体102にラジカル処理を行う室である。排気手段106は、処理室101内を排気する処理用ガスの排気口である。ガス導入手段105は、処理室101に処理用ガスを導入する手段である。中性ラジカル生成手段108は、処理室101の上面に設けられ、処理室101内の上部のラジカル発生領域111に中性ラジカルを生成する手段である。被処理基体支持手段103は、ラジカル発生領域111よりもガス流の上流に設置され、被処理基体102を支持する手段である。ここで、ガス導入手段105をラジカル発生領域111と被処理基体支持手段103との間に設け、この点が図5に示される従来例と異なる。温度調整手段104は被処理基体102の温度調整を行う手段で、ガス導入手段105とラジカル発生領域111との間にコンダクタンス制御手段109が設けられる。
ラジカル処理は、まず、排気手段106であるガスの排気口を介して処理室101内をほぼ真空状態に排気する。続いて処理室101に設けられたガス導入手段105を介して処理用ガスを所定の流量で処理室101内に導入する。次に106に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室101内を所定の圧力に保持する。さらに、ラジカル生成手段108に所望の電力投入し、処理室101に導入した処理用ガスを励起してラジカル発生領域111においてラジカルを発生させる。励起された活性なラジカルの多くは被処理基体102に到達することなく排気され、被処理基体102まで拡散してきた一部のラジカルのみが処理に寄与し、被処理基体支持手段103上に載置された被処理基体102の表面を処理する。またガス導入手段105によりガス流量を制御し、コンダクタンス制御手段109により排気コンダクタンスを変え流速を変化することにより、処理速度を高精度に制御することが可能となる。
本実施例1では、ガス導入手段105をラジカル発生領域111と被処理基体支持手段103との間に設け、被処理基体支持手段103のある空間からの排気経路が存在しない。よって、導入された処理ガスに起因する強いガスの流れが形成されず、ガスの滞留状態が被処理基体支持手段103近傍に生じる。このため大流量のガスを導入した場合においても被処理基体支持手段103近傍においては導入ガスの流れの影響による、ラジカル拡散のムラが殆ど発生せず均一に拡散し被処理基体102の表面の均一な処理が可能となる。このため、大流量のガス導入時にも被処理基体102の表面近傍に不均一なガスの流れが発生することを防止し、ラジカル拡散濃度の空間分布を均一化し、被処理基体102の表面の均一な処理を行うことができる。
【0008】
さらに、本実施例1の処理装置には、被処理基体支持手段103傍におけるラジカルの拡散の均一性を向上させるため、ガス導入手段105と被処理基体支持手段103との間にフラックス均一化手段110を設置してもよい。フラックス均一化手段110は、複数の孔が穿けられた板等から成り、その形状は導入ガスの流れが被処理基体支持体103のある領域への均一なラジカル拡散を阻害するものでなければ平板状や、その他いかなる形状もよい。複数の孔の配置は等間隔格子状配列や、同心円状配列等のいかなる配列でもよく、また個々の孔の径は同一径であっても、異なる径であってもよい。
フラックス均一化手段110の材質は、金属汚染が問題になる場合には石英,窒化シリコン等のSi系絶縁体材料を使用する。金属汚染が問題にならず、被処理基体102への電磁波照射をカットしたい場合には、アルミニウム等の金属を使用しても良い。金属汚染も電磁波照射も問題になる場合には、金属を内蔵したSi系絶縁体を用いる場合もある。
またラジカル生成時に放射される高エネルギーの紫外光が被処理基体102に悪影響を及ぼす虞がある場合には、紫外光に対して不透明な材質でフラックス均一化手段110を形成しても良い。
本実施例1の処理装置に用いられるラジカル生成手段108は高周波プラズマ励起、紫外光励起のいずれの励起手段を用いることが可能であり、併用することも可能である。高周波プラズマ励起としてはCCP、ICP、ヘリコン、ECR、マイクロ波、表面波、表面波干渉型プラズマ源等のいかなるプラズマ励起手段について適用可能である。
また紫外光励起手段としては所望のラジカル状態に励起可能なエネルギーを有する光が放射可能なものであればいずれの光源も適用可能である。例えばキセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、ショートアーク型超高圧水銀ランプ、キャピラリーランプ、ロングアークランプ、低圧水銀ランプ、DeepUVランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、窒素レーザー、エキシマレーザなどの光源が挙げられる。エキシマランプを用いた場合F2、Cl2、Br2、I2、ArBr、KrBr,XeBr、ArCl、KrCl、XeCl、ArF、KrF、XeF、XeIなど封止ガスによって発光中心波長が異なり、それらの中からラジカルの生成に最も適した波長の光を効率よく発光させることができるものを選ぶのが好ましい。
【0009】
本実施例1の処理装置を用いた処理方法における処理室内の圧力は0.1mTorr乃至10Torrの範囲、より好ましくは、中間流から粘性流側の10mTorrから5Torrの範囲が適当である。
本実施例1の処理装置を用いた処理方法による堆積膜の形成は、使用するガスを適宜選択することによりSi、SiO、SiOF,Ta、TiO、TiN、Al、AlN、MgFなどの絶縁膜、a−Si、poly−Si、SiC、GaAsなどの半導体膜、Al、W、Mo、Ti、Taなどの金属膜等、各種の堆積膜を効率よく形成することが可能である。
本実施例1の処理装置を用いた処理方法により処理する被処理基体102は、半導体であっても、導電性のものであっても、あるいは電気絶縁性のものであってもよい。
導電性基体としては、Fe,Ni,Cr,Al,Mo,Au,Nb,Ta,V,Ti,Pt,Pbなどの金属またはこれらの合金、例えば真鍮、ステンレス鋼などが挙げられる。
絶縁性基体としては、SiO系の石英や各種ガラス、Si,NaCl,KCl,LiF,CaF,BaF,Al,AlN,MgOなどの無機物、ポリエチレン,ポリエステル,ポリカーボネート,セルロースアセテート,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの有機物のフィルム、窓などが挙げられる。
CVD法により基板上に薄膜を形成する場合に用いられるガスとしては、一般に公知のガスが使用できる。
a−Si、poly−Si、SiCなどのSi系半導体薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して処理室101へ導入するSi原子を含有する原料ガスとしては、SiH,Siなどの無機シラン類,テトラエチルシラン(TES),テトラメチルシラン(TMS),ジメチルシラン(DMS),ジメチルジフルオロシラン(DMDFS),ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類、SiF,Si,Si,SiHF,SiH,SiCl,SiCl,SiHCl,SiHCl,SiHCl,SiClなどのハロゲン化シラン類等、常温常圧でガス状態であるものまたは容易にガス化し得るものが挙げられる。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。
【0010】
Si,SiO などのSi化合物系薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入するSi原子を含有する原料としては、SiH、Siなどの無機シラン類,テトラエトキシシラン(TEOS),テトラメトキシシラン(TMOS),オクタメチルシクロテトラシラン(OMCTS),ジメチルジフルオロシラン(DMDFS),ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類、SiF,Si,Si,SiHF,SiH,SiCl,SiCl,SiHCl,SiHCl,SiHCl,SiClなどのハロゲン化シラン類等、常温常圧でガス状態であるものまたは容易にガス化し得るものが挙げられる。また、この場合の同時に導入する窒素原料ガスまたは酸素原料ガスとしては、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、O、O、HO、NO、NO、NOなどが挙げられる。
Al、W、Mo、Ti、Taなどの金属薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する金属原子を含有する原料としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO))、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)などの有機金属、AlCl、WF、TiCl、TaClなどのハロゲン化金属等が挙げられる。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。
Al、AlN、Ta、TiO、TiN、WOなどの金属化合物薄膜を形成する場合の処理用ガス導入手段105を介して導入する金属原子を含有する原料としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO))、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)などの有機金属、 AlCl、WF、TiCl、TaClなどのハロゲン化金属等が挙げられる。また、この場合の同時に導入する酸素原料ガスまたは窒素原料ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
基体表面をエッチングする場合の処理用ガス導入口105から導入するエッチング用ガスとしては、F、CF、CH、C、C、C、CFCl、SF、NF、Cl、CCl、CHCl、CClなどが挙げられる。
【0011】
また使用するガスを適宜選択することにより、本発明の実施例1の処理装置による処理方法を表面改質にも適用可能である。例えば基体もしくは表面層としてSi、Al、Ti、Zn、Taなどを使用してこれら基体もしくは表面層の酸化処理あるいは窒化処理さらにはB、As、Pなどのドーピング処理等が可能である。更に本発明において採用する成膜技術はクリーニング方法にも適用できる。その場合酸化物あるいは有機物や重金属などのクリーニングに使用することもできる。
被処理基体102を酸化表面処理する場合の処理用ガス導入口105を介して導入する酸化性ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NOなどが挙げられる。また、被処理基体102を窒化表面処理する場合の処理用ガス導入口115を介して導入する窒化性ガスとしては、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
被処理基体102の表面の有機物をクリーニングする場合、またはフォトレジストなど基体表面上の有機成分をアッシング除去する場合の処理用ガス導入口105から導入するクリーニング/アッシング用ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、Hなどが挙げられる。また、被処理基体102の表面の無機物をクリーニングする場合の処理用ガス導入口105から導入するクリーニング用ガスとしては、F、CF、CH、C、C、CFCl、SF、NFなどが挙げられる。
また、本発明の実施例1の処理装置による処理方法に用いられる不活性ガスとしては、He,Ne,Ar,Kr,Xeなどの希ガス、N2、もしくはそれらの混合ガスなどが挙げられる。
【実施例2】
【0012】
次に、本発明の処理装置の実施例2として、スロット付無終端環状導波管を用いたマイクロ波励起表面波干渉型プラズマ装置について図2を用いて説明する。
処理室201は、半導体ウェハ等の被処理基体202にラジカル処理を行う室である。排気手段206は、処理室201内を排気する処理用ガスの排気口である。ガス導入手段205は、処理室201に処理用ガスを導入する手段である。スロット付無終端環状導波管208は、処理室201の上面に設けられ、処理室201内の上部のラジカル発生領域211に中性ラジカルを生成する手段である。
スロット付無終端環状導波管208は誘電体窓207を透してマイクロ波を処理室201に導入する。被処理基体支持手段203は、ラジカル発生領域211よりもガス流の上流に設置され、被処理基体202を支持する手段である。ここで、ガス導入手段205をラジカル発生領域211と被処理基体支持手段203との間に設け、この点が図5に示される従来例と異なる。温度調整手段204は被処理基体202の温度調整を行う手段で、ガス導入手段205とラジカル発生領域211との間にコンダクタンス制御手段209が設けられる。さらに、ガス導入手段205と被処理基体支持手段203との間にフラックス均一化手段210を設置してもよい。
コンダクタンス制御手段209は平板形状であり、φ1〜φ3孔が20mmピッチで形成されている。またフラックス均一化手段210も板形状で、ラジカルフラックスが均一になるようにφ5〜φ10の孔が20mmピッチで形成されている。
スロット付無終端環状導波管208は、TE10モードで、内壁断面の寸法が27mm×96mm(管内波長158.8mm)、導波管の中心径が151.6mm(一周長は管内波長の3倍)のものを用いた。スロット付無終端環状導波管208の材質は、マイクロ波の伝搬損失を抑えるため、すべてAl合金を用いている。スロット付無終端環状導波管208のH面には、マイクロ波をプラズマ処理室201へ導入するためのスロットが形成されている。スロットは、長さ40mm,幅4mmの矩形で、中心直径が151.6mmの位置に、放射状に60°間隔で6本形成されている。スロット付無終端環状導波管208には、4Eチューナ、方向性結合器、アイソレータ、2.45GHzの周波数を持つマイクロ波電源(不図示)が順に接続されている。
プラズマ処理は、まず、排気手段206を介して処理室201内をほぼ真空状態に排気する。続いて処理用ガスを処理室201に設けられたガス導入手段205を介して所定の流量で処理室201内に導入する。次に排気手段206に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室201内を所定の圧力に保持する。マイクロ波電源(不図示)より所望の電力をスロット付無終端環状導波管208を介し誘電体窓207を透過して処理室201内に供給する。
周辺から導入された処理用ガスは、発生したプラズマにより励起し、イオン化して活性化し、被処理基体支持体203上に載置された被処理基体202の表面を低速かつ高品質に処理する。
この際、プラズマで励起された中性ラジカルなどの活性種の多くは被処理基体202に到達することなく排気さる。コンダクタンス制御手段201、フラックス均一化手段210の孔を逆流し被処理基体202にまで拡散してきた一部の活性種のみが処理に寄与する。ガス流量と排気コンダクタンスを変え流速を変化することにより、処理速度を高精度に制御でき、例えば導入ガスとして酸素、被処理基体202としてシリコン基板を選べば数分子層の均一な極薄シリコン酸化膜も形成可能になる。
【0013】
ここで、図2に示した本発明の実施例2のマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、半導体素子の極薄ゲート酸化膜形成を行った。
被処理基体202としては、洗浄により表面の自然酸化膜を除去したφ8”P型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉,抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、被処理基体202であるシリコン基板を被処理基体支持台203上に設置した後、排気手段206を介して処理室201内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。続いて温度調整手段204であるヒータに通電し、被処理基体202であるシリコン基板を280℃に加熱し、被処理基体202をこの温度に保持した。プラズマ処理用ガス導入口205を介して酸素ガスを2000sccmの流量で処理室201内に導入した。ついで、排気手段206に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室201内を3Torrに保持した。次に、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より1.0kWの電力をスロット付無終端環状導波管208を介して供給した。かくして、処理室201内にプラズマを発生させ、60秒間処理を行った。
この際、プラズマ処理用ガス導入口205を介して導入された酸素ガスは処理室201内で励起、分解されてOイオンやOラジカルなどの活性種となる。その内一部の活性種は、拡散によってガスの流れに逆流しコンダクタンス制御板209の孔を抜け、さらにフラックス均一化板210を通過することにより被処理基体202であるシリコン基板の表面全体に均一なフラックスで微量到達する。
処理後、酸化膜厚,均一性,耐圧などの膜質について評価した。酸化膜厚は0.9nm,膜厚均一性は±1.5%,耐圧は12.5MV/cmで良好であった。
【0014】
次に、図2に示した本発明の実施例2のマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、半導体素子の極薄ゲート窒化膜形成を行った。
被処理基体202としては、洗浄により表面の自然酸化膜を除去したφ8”P型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉,抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、被処理基体202であるシリコン基板を被処理基体支持台203上に設置した後、排気手段206を介して処理室201内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。続いて温度調整手段204であるヒータに通電し、被処理基体202であるシリコン基板を380℃に加熱し、被処理基体202であるシリコン基板をこの温度に保持した。プラズマ処理用ガス導入口205を介して窒素ガスを700sccmの流量で処理室201内に導入した。次に、排気手段206に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室201内を0.1Torrに保持した。次に、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より1.5kWの電力をスロット付無終端環状導波管208を介して供給した。かくして、処理室201内にプラズマを発生させ、100秒間処理を行った。
この際、プラズマ処理用ガス導入口205を介して導入された窒素ガスは処理室201内で励起、分解されてN2イオンやNラジカルなどの活性種となる。その内一部の活性種は、コンダクタンス制御手段209の孔を逆流して被処理基体202であるシリコン基板の表面に到達し、被処理基体202であるシリコン基板の表面を窒化した。
処理後、窒化膜厚,均一性,耐圧,リーク電流などの膜質について評価した。窒化膜厚は1.3nm,膜厚均一性は±1.5%,耐圧は12.5MV/cm,リーク電流は0.1mA/cm@1Vで良好であった。
【0015】
次に、図2に示した本発明の実施例2のマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、半導体素子の極薄ゲート酸化膜の表面窒化を行った。
被処理基体202としては、1.2nm厚の酸化膜付きφ8”P型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉,抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、被処理基体202であるシリコン基板を被処理基体支持台203上に設置した後、排気手段206を介して処理室201内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。続いてヒータ204に通電し、被処理基体202であるシリコン基板を350℃に加熱し、被処理基体202であるシリコン基板をこの温度に保持した。プラズマ処理用ガス導入口205を介して窒素ガスを200sccmの流量で処理室201内に導入した。次に、排気手段206に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室201内を0.2Torrに保持した。次に、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より1.5kWの電力をスロット付無終端環状導波管208を介して供給した。かくして、処理室201内のラジカル発生領域211にプラズマを発生させ、30秒間処理を行った。
この際、プラズマ処理用ガス導入口205を介して導入された窒素ガスは処理室201内で励起、分解されてN2イオンやNラジカルなどの活性種となる。その内一部の活性種は、コンダクタンス制御手段209の孔を逆流して被処理基体202であるシリコン基板の表面に到達し、被処理基体202であるシリコン基板の表面の酸化膜を窒化した。
処理後、酸窒化膜厚,均一性,耐圧,リーク電流などの膜質について評価した。酸化膜換算膜厚は1.0nm,膜厚均一性は±1.9%,耐圧は13.9MV/cm,リーク電流は0.2mA/cm@1Vで良好であった。
【実施例3】
【0016】
次に、本発明の実施例3の紫外光励起ラジカル処理装置を図3を用いて説明する。
処理室301は、半導体ウェハ等の被処理基体302にラジカル処理を行う室である。排気手段306は、処理室301内を排気する処理用ガスの排気口である。ガス導入手段305は、処理室301に処理用ガスを導入する手段である。中性ラジカル生成手段である紫外光光源308は、処理室301の上部に設けられ、処理室301内の上部のラジカル発生領域311に中性ラジカルを生成する手段である。
紫外光光源308は、電力を投入する事により紫外光を放射する。処理用ガスはこの紫外光により励起されラジカルを発生する。被処理基体支持手段303は、ラジカル発生領域311よりもガス流の上流に設置され、被処理基体302を支持する手段である。ここで、ガス導入手段305をラジカル発生領域311と被処理基体支持手段303との間に設け、この点が図5に示される従来例と異なる。温度調整手段304は被処理基体302の温度調整を行う手段で、ガス導入手段305とラジカル発生領域311との間にコンダクタンス制御手段309が設けられる。さらに、ガス導入手段305と被処理基体支持手段303との間にフラックス均一化手段310を設置してもよい。
コンダクタンス制御手段309はアルミ製の板形状であり、φ3〜φ5孔が20mmピッチで形成されている。またフラックス均一化手段210も板形状で、ラジカルフラックスが均一になるようにφ5〜φ10の孔が20mmピッチで形成されている。
紫外光励起手段である紫外光光源308としては所望のラジカル状態に励起可能なエネルギーを有する光が放射可能なものであればいずれの光源も適用可能である。例えばキセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、ショートアーク型超高圧水銀ランプ、キャピラリーランプ、ロングアークランプ、低圧水銀ランプ、DeepUVランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、窒素レーザー、エキシマレーザなどの光源が挙げられる。エキシマランプを用いた場合F2、Cl2、Br2、I2、ArBr、KrBr,XeBr、ArCl、KrCl、XeCl、ArF、KrF、XeF、XeIなど封止ガスによって発光中心波長が異なる。それらの中からラジカルの生成に最も適した波長の光を効率よく発光させることができるものを選ぶのが好ましい。
ラジカル処理は、まず、排気手段306を介して処理室301内をほぼ真空状態に排気する。続いて処理用ガスを処理室301の周辺に設けられたガス導入手段305を介して所定の流量で処理室301内に導入する。次に、排気手段306に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室301内を所定の圧力に保持する。所望の電力を紫外光光源308に投入し紫外光を放射させる。
周辺から導入された処理用ガスは、放射された紫外光より励起し、被処理基体支持体303上に載置された被処理基体302の表面を低速かつ高品質に処理する。
この際、紫外光で励起された中性ラジカルの多くは被処理基体302に到達することなく排気される。コンダクタンス制御手段309、フラックス均一化手段310の孔を逆流し被処理基体302まで拡散してきた一部の活性種のみが処理に寄与する。ガス流量と排気コンダクタンスを変え流速を変化することにより、例えば導入ガスとして酸素、被処理基体302としてシリコン基板を選べば数分子層の均一な極薄シリコン酸化膜も形成可能になる。
【0017】
ここで、図3に示した本発明の実施例3の紫外光励起ラジカル処理装置を使用し、半導体素子の極薄ゲート酸化膜形成を行った。
被処理基体302としては、φ8”P型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉,抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、被処理基体302であるシリコン基板を被処理基体支持体303上に設置した。排気手段306を介して処理室301内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。続いて温度調整手段304であるヒータに通電し、被処理基体302であるシリコン基板を450℃に加熱し、被処理基体302であるシリコン基板をこの温度に保持した。ラジカル処理用ガス導入口305を介して酸素ガスを1000sccmの流量で、処理室301に導入した。ついで、排気手段306に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室301内を1Torrに保持した。次に、紫外光光源308である低圧水銀ランプに300Wの電力を供給し紫外光を発光させた。紫外光光源308である低圧水銀ランプから放射された紫外光のうち254nmの光は酸素ガスを解離して活性な一重項酸素原子へと解離することができる。かくして、原子状酸素ラジカルを処理室301内のラジカル発生領域311に発生させた。その極一部は導入ガス流れに逆らって被処理基体302であるシリコン基板方向に輸送され、被処理基体302であるシリコン基板の表面が0.8nm程度酸化された。
処理後、均一性,耐圧、リーク電流について評価した。均一性は±1.3%、耐圧は10.9MV/cm、リーク電流は1.3mA/cm@1Vと良好であった。
【実施例4】
【0018】
次に、フラックス均一化手段を使用しない本発明の実施例4のラジカル処理装置を図4を参照して説明する。
図2に示される本発明の実施例2とは、フラックス均一化手段210が無いことのみが異なり、ラジカル処理方法は図1に示される本発明の実施例1と同様である。
この際、ガス導入手段405から導入された処理用ガスはコンダクタンス制御手段409の貫通孔を抜け排気手段から排気される。被処理基体402の近傍では導入ガスによるガスの流れの影響が少ない状態となり、拡散により逆流してきたラジカルは均一な面内分布をもって基体に到達する。当然ながらガス流量と排気コンダクタンスを変え流速を変化することにより、処理速度を制御可能になる。
【0019】
ここで、図4に示したフラックス均一化手段を使用しない本発明の実施例4のマイクロ波プラズマ処理装置であるラジカル処理装置を使用し、半導体素子キャパシタ絶縁用酸化チタン膜の形成を行った。
被処理基体402としては、φ8”P型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉,抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、被処理基体402であるシリコン基板を被処理基体支持体403上に設置した。排気手段406を介して処理室401内を真空排気し、10−7Torrの値まで減圧させた。続いて温度調整手段404であるヒータに通電し、被処理基体402であるシリコン基板を300℃に加熱し、被処理基体402であるシリコン基板をこの温度に保持した。プラズマ処理用ガス導入口405を介して酸素ガスを200sccmの流量で、また、ArのキャリアガスによりTiCl蒸気を10sccmの流量で処理室401内に導入した。次に、排気手段406に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室401内を50mTorrに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源より2.0kWの電力を環状導波管403を介して処理室401内に供給した。かくして、処理室401内のラジカル発生領域411にラジカルを発生させた。プラズマ処理用ガス導入口405を介して導入された原料ガスは処理室401内で励起、分解されて被処理基体402であるシリコン基板の方向に輸送され、酸化チタン膜が被処理基体402であるシリコン基板上に5nmの厚さで形成された。
処理後、均一性、耐圧について評価した。均一性は±2.7%、耐圧は8.2MV/cmと良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1のラジカル処理装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例2のラジカル処理装置の断面図である。
【図3】本発明の実施例3のラジカル処理装置の断面図である。
【図4】本発明の実施例4のラジカル処理装置の断面図である。
【図5】従来例のラジカル処理装置の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
101、201、301、401、501 処理室
102、202、302、402、502 被処理基体
103、203、303、403、503 被処理基体支持体
104、204、304、404、504 基体温度調整手段
105、205、305、405、505 処理用ガス用導入手段
106、206、306、406、506 排気手段
207、407 誘電体窓
108、208、308、408、508 ラジカル生成手段
109、209、309、409,509 コンダクタンス制御手段
110、210、310 フラックス均一化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基体を収納する処理室と、
前記処理室内に中性ラジカルを生成するラジカル生成手段と、
前記処理室内で前記被処理基体を支持する被処理基体支持手段と、を有する処理装置において、
前記ラジカルの生成領域と前記被処理基体との間に処理用ガスを導入するガス導入手段と、
前記ラジカル生成領域と前記ガス導入手段との間に前記処理用ガスを排出するガス排出手段と、を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記ガス導入手段と前記プラズマ発生領域との間にコンダクタンス調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記ガス導入手段と前記被処理基体支持手段との間にフラックス均一化手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の処理装置。
【請求項4】
前記フラックス均一化手段は複数の孔が穿られた板から成ることを特徴とする請求項3記載の処理装置。
【請求項5】
前記プラズマはマイクロ波により生成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の処理装置。
【請求項6】
前記プラズマは紫外光により生成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の処理装置。
【請求項7】
前記コンダクタンス調整手段及び/又は前記フラックス均一化手段は、前記紫外光に対し不透明な材質から成ることを特徴とする請求項6記載の処理装置。
【請求項8】
処理室内に中性ラジカルを生成し被処理基体をラジカル処理する処理方法において、
前記被処理基体と前記ラジカル生成領域との間に処理用ガスを導入すると共に、前記処理用ガスを前記ラジカル生成領域と前記処理用ガスの導入部との間から排出することを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−88200(P2007−88200A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275048(P2005−275048)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】