分波器
【課題】フィルタの損失を抑えた分波器を提供する。
【解決手段】分波器は、共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタF1,F2を備え、フィルタF1、F2の少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器S1〜Snと、前記線路に並列に接続された並列共振器P1〜Pmを含み、直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスL1が並列接続されており、インダクタンスL1が並列接続された直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄されている。
【解決手段】分波器は、共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタF1,F2を備え、フィルタF1、F2の少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器S1〜Snと、前記線路に並列に接続された並列共振器P1〜Pmを含み、直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスL1が並列接続されており、インダクタンスL1が並列接続された直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、通信機器等の電気回路に用いられる分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線機器の急速な普及により、分波器への需要は急速に拡大している。例えば、小型で高い急峻性を有する弾性波素子を用いた分波器への需要は旺盛である。
【0003】
近年、ラダー型フィルタとして、図1に示すような回路構成が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。図1の構成では、直列共振器S1に、並列にインダクタンスLPが接続されている。これにより、フィルタ通過帯域より低周波の領域に減衰極を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-332885号公報
【特許文献2】特開2003-69382号公報
【特許文献3】特開2004-135322号公報
【特許文献4】特開2004-242281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記の図1に示すフィルタ(以下、自フィルタと称する)と、通過帯域の異なる他のフィルタ(以下、相手フィルタと称する)とを組み合わせて分波器を構成することができる。この分波器を構成する際に、自フィルタの減衰極が現れる帯域が相手フィルタの通過帯域に合うように調整すると、優れた分波特性を得ることが可能になる。
【0006】
しかしながら、自フィルタの減衰極は、インダクタが並列接続された共振器により生じるので、この減衰極を相手フィルタの通過帯域に配置すると、インダクタンスが並列接続された共振器のスプリアスも、相手フィルタの通過帯域に配置される。これにより、相手フィルタの通過帯域の損失が大きくなるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、フィルタの損失を抑えた分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の分波器は、共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタを備える。前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されている。前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、直列に接続された複数の共振器に分轄されている。
【発明の効果】
【0009】
本願開示によれば、フィルタの損失を抑えた分波器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のラダー型フィルタの構成を示す図
【図2】ラダー型フィルタを説明するための図
【図3】ラダー型フィルタを説明するための図
【図4】ラダー型フィルタを説明するための図
【図5】SAW共振器の構造例を示す図
【図6】境界波共振器の構成例を示す図
【図7】Lamb波共振器の構成例を示す図
【図8】FBARの構成例を示す図
【図9】FBARにおける励振部から振動エネルギーの散逸を防ぐための構成例
【図10】第1の実施形態にかかる分波器の構成例を示す回路図
【図11】フィルタF1、F2の通過特性の一例を示すグラフ
【図12】ラダー型フィルタの直列共振器にインダクタンスを並列接続した場合のフィルタ特性について説明するための図
【図13】リップルが生成される例を示す図
【図14】第2の実施形態における分波器の回路構成例を示す図
【図15】直列共振器S1として、弾性波共振器を用いた場合の構成例を示す図
【図16】図14に示す回路構成の分波器において、得られる特性を示すグラフ
【図17】送信フィルタF2から見た受信フィルタF2の反射係数Γを示すグラフ
【図18】図14に示した直列共振器S1〜S7が、FBARである場合の、共振器S11〜S13の構成例を示す図
【図19】第3の実施形態にかかる分波器の構成例を示す回路図
【図20】FBARの製作工程の一例を示す図
【図21】楕円形状を有するFBARに対し、軸比を様々に変化させたときの応答を計測した結果を示すグラフ
【図22】楕円形状を有するFBARに対し、軸比を様々に変化させたときの共振点におけるQ値を測定した結果を示すグラフ
【図23】図19に示すフィルタF2の構成の一例を示す平面図である
【図24】上記第1〜3の実施形態における分波器を用いたRFモジュールの一例
【図25】通信機器の構成例を示す図
【図26】第5の実施形態における分波器の回路構成図
【図27】図26に示す送信フィルタF1および受信フィルタをチップ化する場合の構成の一例を示す図
【図28】デュプレクサパッケージの構成例を示す図
【図29】デュプレクサパッケージ37およびインダクタを基板に実装した場合の構成例を示す図
【図30】インダクタL1、L2、L3を石英基板上に形成した部品の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
まず、本実施形態において用いることができる共振器,フィルタおよび分波器の例を説明する。分波器は、送信用フィルタと受信用フィルタとを備える。これらのフィルタを、弾性波素子を用いて実現する手法として、例えば、ラダー型フィルタが広く受け入れられている。ラダー型フィルタは共振周波数の異なる二つの共振器を梯子状に結線して構成される高周波フィルタである。ここで、図2〜3を用いて、ラダー型フィルタについて説明する。
【0013】
図2(a)は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列に接続される直列共振器S、図2(b)は、入力端子Tinと出力端子Toutとを繋ぐ線路に対して並列に接続される並列共振器Pを示す。直列共振器Sは、frsなる共振周波数とfasなる反共振周波数を有する。並列共振器Pは、frpなる共振周波数とfapなる反共振周波数を有する。図2(c)は、直列共振器Sおよび並列共振器Pの周波数特性を示すグラフである。図2(c)に示す例では、fapとfrsがほぼ同じ値となっている。
【0014】
図3(a)は、直列共振器Sを直列腕に、並列共振器Pを並列腕に配した1段のフィルタ(一対の梯子型回路)の回路構成を示す図である。fapとfrsがほぼ同じ値であるとき、図3(a)のように、直列共振器Sと、並列共振器Pを配することで図3(b)に示すようなフィルタ特性が実現される。
【0015】
ラダー型フィルタは、図3(a)に示した一対の梯子型回路を多段に接続して構成される。図4(a)は、ラダー型フィルタの構成例を示す回路図である。図4(a)に示す例では、各段間での反射を防ぐため、隣り合う梯子型回路は互いにミラー反転させた形で接続される。図4(a)において、直列腕の共振器の静電容量はCs、並列腕の共振器の静電容量はCpである。
【0016】
図4(a)に示すようなフィルタの多段接続においては、直列腕において同種の共振器が直列接続されている箇所と、並列腕において同種の共振器が並列接続されている箇所が存在する。直列腕および並列腕において、隣り合う同種の共振器はまとめて1つの共振器で構成することができる。例えば、図4(b)に示すように、隣り合う同種の共振器は一つの共振器として、容量的に合成されてもよい。すなわち、直列腕において隣り合う2つの共振器(それぞれの静電容量=Cs)は、静電容量Cs/2の1つの共振器で構成することできる。並列腕において隣り合う2つの共振器(それぞれの静電容量=Cp)は、静電容量2Cpの1つの共振器で構成することができる。
【0017】
ラダーフィルタを構成する弾性波素子として、弾性表面波 (Surface Acoustic Wave: SAW)共振器や圧電薄膜共振器(例えば、FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などが広く用いられている。
【0018】
図5(a)は、SAW共振器の構造例を示す平面図であり、図5(b)は、断面図である。SAW共振器は圧電基板10上に励振電極となるIDT(InterDigitated Transducer)2と、その両端に配置されるグレーティング反射器3を備える。IDTには、入力端子inと出力端子outが、配線パターンにより接続される。IDTは、櫛形電極とも呼ばれ、例えば、等間隔で平行に並ぶ複数の電極指と、これら電極指を接続するバスバーを有する。電極指の並ぶ方向が弾性波の伝播方向になる。
【0019】
SAW共振器の変種として、例えば、境界波共振器やLamb波共振器などが存在する。図6(a)は、境界波共振器の構成例を示す平面図であり、図6(b)は、その断面図である。図6に示す例では、境界波共振器は、圧電基板10上に、IDT2および反射器3を覆うようにに誘電体膜が設けられる。図7(a)は、Lamb波共振器の構成例を示す平面図であり、図7(b)は、その断面図である。図7に示す例では、基板11上に設けられた圧電体膜16の上に、IDT2および反射器3が設けられる。IDT2および反射器3が設けられる部分(励起領域)の下には、圧電体膜16と基板11との間に空隙9が形成されている。境界波共振器およびLamb波共振器は、本願では、これらのSAW共振器、境界波共振器およびLamb波共振器のようにIDTを有する共振器を総称として、弾性表面波共振器と呼ぶことにする。
【0020】
図8(a)は、FBARの構成例を示す平面図であり、図8(b)は、その断面図である。図8に示す例では、FBARは、基板10の上に設けられた圧電膜17と、圧電膜17を挟む上部電極19および下部電極18を備える。上部電極19と下部電極18が圧電膜17を挟んで対向する領域が励振部(共振領域)となる。励振部直下は基板への振動エネルギーの散逸を防ぐため空隙9aとなっている。
【0021】
FBARにおける空隙には、図8(b)に示すような励振部下部の基板を貫通するタイプの空隙(バイアホール(via hole))の他、励振部と基板との間に形成されるタイプの空隙(キャビティ)が含まれる。
【0022】
キャビティの形成方法としては、例えば、図9(a)に示すように基板表面を加工して空隙9bを形成する方式や、図9(b)に示すように基板上にドーム上の空隙9cを形成するエアブリッジ方式等がある。
【0023】
また、例えば、図9(c)に示すように、励振部から振動エネルギーの散逸を防ぐために、空隙の代わりに、高インピーダンス層と低インピーダンス層を交互に積層した音響多層膜を励振部の下部に設けてもよい。この構成は、SMR(Solidly Mounted Resonator)と呼ばれる。本願では、圧電薄膜共振器には、FBARおよびSMRいずれも含まれるものとする。
【0024】
(第1の実施形態)
図10は、第1の実施形態にかかる分波器(デュプレクサ)の構成例を示す回路図である。図10に示す分波器は、共通端子Pcomに接続される、通過帯域の異なる2つのフィルタF1、F2を備える。フィルタF2は、フィルタF2の共通端子PcomとフィルタF2の入出力端子P2とを繋ぐ線路上に直列に接続された複数の直列共振器S1〜Snと、この線路に並列に接続された並列共振器P1〜Pmを含む。直列共振器S1〜Snの少なくとも1つ(ここでは、一例としてS1およびS4)には、インダクタンスが並列接続されている。直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄されている。
【0025】
このように、直列共振器S1〜Snの少なくとも1つにインダクタを並列接続することで、フィルタF2の通過帯域外に減衰極を生成することができる。ここで、フィルタF1(相手フィルタ)の通過帯域に減衰極が含まれるように調整することで、優れた分波特性を得ることができる。そのため、フィルタ損失を抑えた分波器が得られる。図11は、減衰極Gが相手フィルタの通過帯域に含まれる場合のフィルタF1、F2の通過特性の一例を示すグラフである。
【0026】
本実施形態においては、インダクタが並列接続された直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄(直列分轄)されているので、共振器S1におけるスプリアスのフィルタF1の通過特性への影響が抑制される。このように共振器を直列分轄することによって、個々の共振器の容量、すなわち、面積を大きくすることができる。一般的に、共振器で生成されるスプリアスは、共振器内を伝搬する波動と、共振器端面の相互作用によって生成される。そのため、共振器の直列分轄により共振器のサイズを大きくすることによって、波動が面方向に共振器端面の影響を受けずに伝搬できる距離を十分に確保でき、スプリアスを抑制することができる。
【0027】
分轄された複数の共振器S11〜S13は、それぞれの形状が互いに異なることが好ましい。これにより、スプリアスが発生する帯域が分散されるため、スプリアスがフィルタの通過特性に与える影響をさらに抑制することができる。
【0028】
また、分轄された共振器S11〜S13の静電容量は等しいことが好ましい。これにより、分轄された共振器S11〜S13それぞれに供給される電気エネルギーは略一定になるので、非線形応答を抑制することができる。
【0029】
共振器S11〜S13が、圧電基板の上に設けられたIDTとその両側に配置される反射器とをそれぞれ有する弾性波共振器である場合、共振器S11〜S13それぞれの開口長を異ならせることができる。これにより、共振器S11〜S13においてスプリアスが発生する周波数帯域を分散させることができる。さらに、共振器S11〜S13の電気エネルギーを等しくする観点からは、各共振器S11〜S13の対数と開口長の積は一定であることが望ましい。
【0030】
共振器S11〜S13が、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器である場合、共振器S11〜S13それぞれにおける共振領域を互いに異なる形状とすることができる。ここで共振領域は、上部電極と下部電極が圧電膜を挟んで対向している領域である。これにより、共振器S11〜S13においてスプリアスが発生する周波数帯域を分散させることができる。
【0031】
あるいは、分轄された共振器S11〜S13の共振周波数がそれぞれ異なる態様であってもよい。これにより、共振器S11〜S13においてスプリアスが発生する周波数帯域を分散させ、フィルタF1へのスプリアスの影響を抑制することができる。例えば、FABARの膜圧を変えるか、あるいは、共振領域の面積を変えることにより、共振周波数を変化させることができる。
【0032】
なお、図10に示すフィルタF2は、ラダー型フィルタの例であるが、ラティス型フィルタであっても上記と同様の効果を奏する。また、インダクタンスが並列接続される直列共振器は、図10に示す構成例のように、ラダー型フィルタまたはラティス型フィルタにおいて最も端にある直列共振器とすることが、フィルタ特性の観点からは好ましい。ただし、インダクタンスが並列接続される直列共振器は、必ずしもに端部の共振器に限定されない。
【0033】
[効果の説明]
次に、本実施形態にかかる分波器の効果について説明する。図12は、ラダー型フィルタの直列共振器にインダクタンスを並列接続した場合のフィルタ特性について説明するための図である。図12の一番上のグラフは、その左に示すラダー型フィルタのフィルタ特性を示す。上から2番目のグラフは、上記ラダー型フィルタの並列共振器のアドミッタンス特性を示す。上から3番目のグラフは、上記ラダー型フィルタの直列共振器のアドミッタンス特性を示す。上から4番目のグラフは、上記ラダー型フィルタにおいて、インダクタンスが並列接続された直列共振器のアドミッタンス特性を示す。
【0034】
図12に示す例では、並列共振器の共振点はf2、反共振点はf3であり、直列共振器の、共振点はf4、反共振点はf5である。直列共振器にインダクタンスが並列接続された場合、共振器の静電容量と並列接続されたインダクタンスの反共振によって、f1に反共振点が生成される。この反共振点が、フィルタにおける減衰極を生成する。ここで、直列共振器自身の反共振点f5は並列接続されたインダクタンスとの相互作用により、高周波帯f6にシフトする。また、直列共振器自身の共振点f4はインダクタンスの付加によって変動しない。
【0035】
なお、図12に示す例では、インダクタンスが並列接続される直列共振器の共振点f4を、並列共振器の反共振点f3と同じとせず、f4とf3を近傍に配置することによって、通過帯域の広帯域化ができる。
【0036】
図12に示すラダー型フィルタを分波器のフィルタの1つに採用した場合、生成される減衰極が、相手フィルタの通過帯域に配置されることによって、分波特性の向上を図ることができる。
【0037】
例えば、相手フィルタの通過帯域に配置される該減衰極は、相手フィルタ通過帯域の中心周波数に配置することが望ましい。しかし、例えば、WCDMA Band2(送信帯:1850 MHz〜1910 MHz、受信帯:1930 MHz〜1990 MHz)や、Band3(送信帯:1710 MHz〜1785 MHz、受信帯:1805 MHz〜1880 MHz)のように送信フィルタの通過帯域と受信フィルタの通過帯域とが近接する仕様の場合、自フィルタ通過帯域の低周波端の急峻性と両立させるため、該減衰極は相手フィルタの通過帯域の中心周波数よりも、高周波端よりに配置されることが望ましい。
【0038】
ここで、インダクタンスが並列接続される共振器がスプリアスを有していた場合、フィルタ特性にもスプリアスが生成されることとなる。しかし、スプリアスの生成される周波数がフィルタの通過帯域と非通過帯域とで、その影響は大きく異なる。なぜなら、通過帯域では、電気信号は主に機械振動として弾性波素子である共振器内を伝搬するため、弾性波素子内の不要振動に起因するスプリアスの影響を強く受ける。一方、非通過帯域では、電気信号は信号配線間の電磁・静電結合によって主に伝搬されるため、弾性波素子内の不要振動の影響を受ける度合いは少なくなる。
【0039】
弾性波素子では、共振点以下の領域でスプリアスが発生するが、例えば、直列共振器の共振点を並列共振器の反共振点近傍に配置する等により、問題となるスプリアスをフィルタの非通過帯域に配置し、フィルタ特性への影響を抑制することが考えられる。
【0040】
しかし、分波器において、該減衰極を相手帯域に配置する場合は、インダクタンスが並列接続される直列共振器のスプリアスが相手フィルタの通過帯域に配置される。この場合、相手フィルタの通過特性にリップルが生成される。したがって、共振器の共振点および反共振点の調整によって、リップルを抑制することは困難である。以下にその具体例を説明する。
【0041】
図13は、インダクタンスが並列接続された直列共振器のスプリアスに起因する相手フィルタの通過帯域におけるリップル生成の例を示す図である。図13に最上のグラフは、インダクタンスが並列接続された直列共振器のアドミッタンス特性の一例を示すグラフである。この例では、共振点と反共振点の間にスプリアスが発生している。上から2番目のグラフは、自フィルタの減衰量の周波数特性(実線)と、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数の周波数特性(点線)とを示す。反射係数においても、スプリアスに対応する位置にリップが発生している。上から3番目のグラフは、相手フィルタの減衰量の周波数特性(実線)と、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数の周波数特性(点線)とを示す。この例では、相手フィルタの通過帯域においてリップルが発生している。
【0042】
このように、インダクタンスが接続される共振器がスプリアスを有していた場合、図13に示すように、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数の全反射条件が局所的に擾乱され、リップルが生成される。このリップルの影響によって、相手フィルタの通過帯域にもリップルが生成される。
【0043】
相手帯域の通過帯域において、相手フィルタの損失を低く抑えるためには、相手フィルタ自身の損失の低減とともに、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数が全反射(0 dB)の状態であることが望ましい。しかし、例えば、WCDMA Band2や、Band 3のように送信フィルタと受信フィルタの通過帯域が近接する仕様では、インダクタンスが並列接続される共振器のスプリアスは相手フィルタの通過帯域に配置されることとなり、共振点や反共振点などの周波数配置の調整によって、リップルを抑制することは困難である。
【0044】
一方、本実施形態の分波器では、上記したように、インダクタが並列接続された直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄されているので、共振器S1におけるスプリアスのフィルタF1の通過特性への影響が抑制される。そのため、自フィルタの減衰極を相手フィルタの通過帯域に配置する場合でも、相手フィルタの通過帯域におけるリップルを抑制することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態における分波器の回路構成例を示す図である。図14の回路は、例えば、WCDMA Band2用分波器に用いることができる。図14に示す例では、アンテナに接続される共通端子Ant(port1)に送信フィルタF1と、受信フィルタF2が接続されている。受信フィルタF2は、バラン回路B1に接続される。バラン回路B1は、平衡不平衡変換器であり、受信フィルタF2のシングル出力を、バランス出力に変換する。なお、本実施形態では、インダクタンスが並列接続された共振器S1を有する受信フィルタF2が自フィルタ、送信フィルタF1が相手フィルタとなる。
【0046】
受信フィルタF2は、直列腕の直列共振器S1〜S4および並列腕の並列共振器P1〜P4により、7段構成のラダー型フィルタを形成している。初段の直列共振器S1には、インダクタンスL1が並列接続されている。直列共振器S1には、上記第1の実施形態と同様、複数の直列に接続された共振器に分轄されている。
【0047】
直列共振器S1〜S7を構成する弾性波素子には、例えば、弾性表面波共振器を用いることができる。図15は、直列共振器S1として、弾性表面波共振器を用いた場合の構成例を示す図である。図15(a)は、分轄された共振器はいずれも同じ形状である場合の構成例である。共振器S11〜S13は、いずれもIDT2a〜2cとその両側の反射器3a〜3cを備える。共振器S11〜S13のIDT2a〜2cは、電極4によって直列に接続されている。共振器S11〜S13のIDT2a〜2cの開口長および電極指の対数は同じである。
【0048】
図15(b)は、分轄された共振器それぞれの形状が異なる場合の構成例である。図15(b)の共振器S11〜S13は、共振器S11〜S13のIDT2a〜2cの開口長および電極指の対数は異なっている。図15(b)では、IDT2a〜2cの開口長をそれぞれk1〜k3で示し、IDT2a〜2cの電極指の対数をt1〜t3で示している。
【0049】
受信フィルタF2のインダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1が有するスプリアスは、送信フィルタF1の通過特性におけるリップルとなって現れる。そこで、図15(a)および図15(b)に示すようにインダクタンスL1が並列接続された共振器S1を分轄して直列に接続された共振器S11〜S13とすることで、このスプリアスを抑制することができる。また、図15(b)に示すように、共振器S1を分轄し、且つ、分轄された共振器それぞれの電極指の対数と開口長を異ならせることで、さらに、このスプリアスを抑制することができる。
【0050】
ここで、受信フィルタF2のインダクタンスL1が並列接続された共振器S1が初段にある場合は、特に、非線形応答を抑制するために、分轄された共振器S11〜S13それぞれに供給される電気エネルギーは一定であることが望ましい。そのため、各共振器S11〜S13の静電容量は同一であることが望ましい。具体的には、各共振器S11〜S13の対数と開口長の積が同じである態様とすることができる。すなわち、k1×t1=k2×t2=k3t3となるように、各共振器S11〜S13の対数と開口長を調整することができる。
【0051】
[効果の説明]
図16は、図14に示す回路構成の分波器において、得られる特性を示すグラフである。図16(a)に示すグラフは、送信フィルタF1の通過特性S12と、送信フィルタF1からみた受信フィルタF2の反射係数Γの一例を示している。図16(b)は、図16(a)における送信フィルタ通過帯域の端部を拡大したものである。図16のグラフに示すS12やΓは、例えば、有限要素法による電磁界シミュレーションを用いて計算することができる。
【0052】
図16より、送信フィルタF1の通過特性S12において、通過帯域端部に、リップルR1が生成されていることが確認される。このリップルR1が生成される周波数は、受信フィルタF2の反射係数におけるリップルの生成周波数とほぼ一致している。
【0053】
図17(a)は、図15(b)に示すように各共振器S11〜S13の形状が異なる場合(D)と、図15(a)に示すように各共振器S11〜S13の形状が同じ場合(W)の、送信フィルタF2から見た受信フィルタF2の反射係数Γを示すグラフである。図17(b)は、各共振器S11〜S13の形状が異なる場合と同じ場合の送信フィルタF1の通過特性S12を示すグラフである。ここでは、図17(a)および図17(b)のグラフは、各共振器の対数、開口長が、下記表1に示す値である場合の解析結果である。
【0054】
【表1】
図17(a)および図17(b)のグラフより、受信フィルタF2の分轄された共振器S11〜S13の開口長および対数を異ならせることによって、受信フィルタF2の反射係数が改善され、送信フィルタF1の通過帯域におけるリップルが軽減されることを確認することができる。
【0055】
[FBARの場合の構成例]
図18は、図14に示した直列共振器S1〜S7が、FBARである場合の、共振器S11〜S13の構成例を示す図である。図18(a)〜(c)は、FBARを上から見た図である。上部電極および下部電極が圧電膜を挟んで対向する領域(共振領域)はハッチングで示している。図18(a)〜(c)に示す例では、分轄された共振器S11〜S13は、いずれも共振領域の形状が異なっている。図18(a)に示す例では、共振器S11〜S13の共振領域はいずれも四角形である。共振器S11〜S13の共振領域の面積(S1、S2、S3)は、すべて同じである(S1=S2=S3)。これにより、各共振器S11〜S13の静電容量が同じになる。
【0056】
図18(b)に示す例では、共振器S11〜S13の共振領域は、楕円である。共振器S11〜S13の共振領域において、長軸aと短軸bとの比が互いに異なっている。これにより、スプリアスが発生する周波数が共振器S11〜S13ごとに異なる。そのため、共振器S11〜S13のスプリアスが分散され、スプリアスが送信フィルタF1の通過特性に与える影響が小さくなる。
【0057】
ここで、共振器S11〜S13において、共振領域の楕円の長軸と短軸との積が同じになるように形成することにより、各共振器S11〜S13の静電容量を同じにすることができる。すなわち、a1×b1=a2×b2=a3×b3となるように、共振器S11〜S13のそれぞれにおける共振領域の楕円の長軸a1、a2、a3および短軸b1、b2、b3が決定されることが好ましい。
【0058】
図18(c)に示す例では、共振器S11〜S13の共振領域は長方形である。長方形の長辺aと短辺bとの比は、共振器S11〜S13ごとに異なっている。これにより、共振器S11〜S13のスプリアスが分散され、スプリアスが送信フィルタF1の通過特性に与える影響が抑制される。さらに、長辺aと短辺bとの積は同じである(a1×b1=a2×b2=a3×b3)。このように、共振器S11〜S13それぞれにおける共振領域の長方形の長軸a1、a2、a3および短軸b1、b2、b3が決定されることにより、各共振器S11〜S13の静電容量を同じにすることができる。
【0059】
図18に例示したように、フィルタに用いる共振器がFBARである場合も、FBARの形状によってスプリアスを調整することが可能である。また、FBARにおいても、分轄される共振器の静電容量が同じであることが望ましく、上部電極と下部電極が対向する領域の面積が等しいことが望ましい。
【0060】
(第3の実施形態)
図19は、第3の実施形態にかかる分波器の構成例を示す回路図である。図19に示す分波器は、共通端子Pcomに接続された通過帯域の異なる2つのフィルタF1、F2を備える。フィルタF2は、フィルタF2の共通端子PcomとフィルタF2の入出力端子P2とを繋ぐ線路上に直列に接続された複数の直列共振器S1〜S4と、この線路に並列に接続された並列共振器P1〜P4を含む。直列共振器S1〜S4の少なくとも1つ(ここでは、一例としてS1およびS4)には、インダクタンスL1、L2が並列接続されている。直列共振器S1〜S4は、圧電膜を挟んで上部電極および下部電極が対向する共振領域をそれぞれ有する圧電薄膜共振器(例えば、FBAR)である。インダクタンスL1が並列接続された直列共振器S1の共振領域の電極平面方向における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)は、その他の直列共振器S2〜S4の共振領域における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)より小さい。
【0061】
ここで、図20(a)〜図20(c)を用い、FBARの製作工程の一例を説明する。図20(a)を参照に、例えば主にSiで構成される基板10に、下部電極18としてRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング法を用いて形成する。その後、露光技術およびエッチング技術を用い、下部電極18を所定の形状にする。
【0062】
図20(b)を参照に、基板10上および下部電極18上に、圧電膜17としてAlN膜を、約0.3Paの圧力下のAr/N2混合ガス雰囲気中でスパッタリング法を用い形成する。圧電膜17上に、上部電極19としてRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング法を用い形成する。
【0063】
図20(c)を参照に、Deep−RIE(反応性ドライエッチング)法を用い、基板10裏面からエッチングすることにより、圧電膜17を挟み下部電極18と上部電極19とが対向する領域(共振領域)の下の基板10に空隙9aを形成する。以上の工程により、FBARが形成される。
【0064】
次に、FBARの共振領域の形状とスプリアスとの関係および、共振領域の形状と損失の関係について説明する。図21は楕円形状の共振領域を有するFBARに対し、共振領域の軸比を様々に変化させたときの、その応答を計測した結果である。ここで、共振領域を形成する楕円における長軸をa、短軸をbとし、軸比をa/bとする。測定は2端子共振器に対してS11(反射係数)を計測したものであり、図中の点線はFBARの共振点を示している。図21に示す計測結果は、膜構成がRu上部電極250nm、AlN圧電薄膜1200nm、Ru下部電極250nmであり、容量が0.75pFであるFBARの計測結果である。図21(a)は軸比が10:5の場合、図21(b)は軸比が8:5の場合、図21(c)は軸比が6:5の場合の計測結果をそれぞれ示している。軸比が小さいほど、共振点以下のスプリアスが小さいことがわかる。
【0065】
FBARにおいて、スプリアスは主として電極平面を伝搬するLamb波によって生成される。スプリアスは伝搬距離が短いほど減衰が少なく、その大きさは顕著になる。従って、楕円共振器の場合、最も伝搬距離の短い短軸の長さがスプリアスの大小に大きく影響する。同じ電極面積で比較した場合、軸比が小さいほど短軸は長く、スプリアスは抑制されて評価される。
【0066】
図22は楕円形状を有するFBARに対し、軸比を様々に変化させたときの共振点におけるQ値を測定した結果である。図22の結果より、軸比が大きいほど共振点におけるQが大きいことが確認される。直列共振器と並列共振器とで構成されるラダー型フィルタにおいて、直列共振器は共振Qが高いことが重要であり、FBARを用いた場合、直列共振器の軸比は大きいことが望まれる。
【0067】
ここで、インダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1は、共振点を並列共振器の反共振点近傍に配置することで、必ずしも、共振点のQ値が高い必要性を持たない。むしろ、分波器を想定した場合は、反射係数に悪影響を与えるスプリアスが十分に抑制されていることの方が望まれる。このように、直列共振器S1の共振領域の好ましい形状については、スプリアスと損失の間にトレードオフの関係があると言える。したがって、インダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1の軸比は、他の直列共振器の軸比に対して、小さくなるよう共振領域を構成することが好ましい。
【0068】
このように、インダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1に関しては、周波数の関係上、損失よりもスプリアスを重視すべきという観点から軸比を調整することができる。その結果、スプリアスの低減とQ値の双方を考慮した適切な設計が可能になる。なお、本実施形態は、楕円形状のFBARに関して述べたが、長方形やその他多角形に関しても、同様に構成し上記効果を得ることが可能である。
【0069】
図23は、図19に示すフィルタF2の構成の一例を示す平面図である。直列共振器S1〜S4および並列共振器P1〜P3は、上部電極4および下部電極2が圧電膜3を挟んで対向する共振領域に形成される。図23では、下部電極2の位置を点線で示している。これらの7つの共振器は、例えば、基板と共振器間にドーム状のキャビティ(図示せず)を有する。また、並列腕の並列共振器P1〜P3については、上部電極の300nmのルテニウム(Ru)膜上に110のチタン(Ti)が設けられていてもよい。
【0070】
図23に示す例では、初段の直列共振器S1の下部電極2は、圧電膜3上部のパッド5aに導通しており、直列共振器S1の上部電極4とS2の上部電極4との間の配線パターンはパッド5bに導通している。パッド5aとパッド5bとの間にはインダクタンスL1が接続される。
【0071】
インダクタンスL1が並列接続された直列共振器S1の共振領域における長軸a1と短軸b1の比(a1/b1)は、その他の直列共振器S2〜S4の共振領域における長軸a2と短軸b2の比(a2/b2)より小さくなっている。このように、インダクタンスが並列接続される直列共振器の軸比を、他の直列共振器の軸比に対して大きくすることで、共振器のスプリアスと損失の共振器形状に対するトレードオフを考慮した適切な設計が可能になる。
【0072】
(第4の実施形態)
図24は、上記第1〜3の実施形態における分波器を用いたRFモジュールの一例である。図24に示す例では、分波器は、フィルタバンクモジュール(デュプレクサバンクモジュール)の一部として用いられている。図24に示すRFモジュールは、スイッチモジュール6、デュプレクサバンクモジュール7およびアンプモジュール8を含む。デュプレクサバンクモジュール7は、周波数帯域の異なる複数のデュプレクサD1、D2、D3、・・・を備える。スイッチモジュール6は、アンテナで送受信した信号を扱うデュプレクサを切り替える。すなわち、スイッチモジュール6は、デュプレクサD1、D2、D3、・・・のうちいずれのデュプレクサを使うかを選択する。アンプモジュール8は、デュプレクサD1、D2、D3、・・・から出力される信号またはデュプレクサD1、D2、D3、・・・に入力する信号を増幅する。
【0073】
デュプレクサD1、D2、D3、・・・は、それぞれ送信フィルタF1と受信フィルタ2を備える。デュプレクサD1、D2、D3、・・・にはそれぞれ、上記第1〜3の実施形態で示した分波器が用いられる。このように、フィルタ損失を抑え、優れた分波特性を持つ分波器を用いてRFモジュールを構成することにより、優れた特性を持つRFモジュールが得られる。
【0074】
なお、分波器を用いたモジュールは、図24に示す例に限られない。例えば、分波器を増幅器モジュール(Amp. Module)やスイッチモジュール(SW. Module)と組み合わせてモジュール化する場合も想定しうる。さらに、分波器を含む通信機器も本発明の実施形態に含まれる。
【0075】
図25は、通信機器の構成例を示す図である。図25に示す通信機器50においては、モジュール基板51上に、通信モジュール60、RFIC53およびベースバンドIC54が設けられている。通信モジュール60には、上記実施形態で示した分波器を用いることができる。例えば、通信モジュール60は、図24に示したRFモジュールを含んでもよい。
【0076】
通信モジュール60の送信端子TxはRFIC53に接続され、受信端子RxもRFIC53に接続されている。RFIC53はベースバンドIC54に接続されている。RFIC53は、半導体チップおよびその他の部品により形成することができる。RFIC53には、受信端子から入力された受信信号を処理するための受信回路および、送信信号を処理するための送信回路を含む回路が集積されている。
【0077】
また、ベースバンドIC54も半導体チップおよびその他の部品により実現することができる。ベースバンドIC54には、RFIC53に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC53に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0078】
図示しないが、ベースバンドIC54には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC54で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器50のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器50が備える入力機器もベースバンドIC54に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC54が送信信号に変換することができる構成になっている。なお、通信機器50の構成は、図25に示す例に限られない。
【0079】
(第5の実施形態)
本実施形態では、上記第1〜4で説明した分波器の実装例を説明する。ここでは、一例として、図26に示す回路構成の分波器を実装する場合について説明する。図26に示す分波器では、アンテナ端子Antに送信フィルタF1と受信フィルタF2が接続されている。送信フィルタF1は、直列共振器S1〜S4と並列共振器P1〜P2により構成されるラダー型フィルタである。受信フィルタF2は、ラダー型フィルタLF1、集中定数型のバランB1およびラティス型フィルタLF2を備える。ラダー型フィルタLF1は、直列共振器S5〜S7と並列共振器P3〜P5で構成される。
【0080】
ラダー型フィルタLF1はアンテナ端子Antからの信号を、シングル端子を介して入力し、バランB1へシングル出力する。バランB1は、ラダー型フィルタLF1からのシングル信号を、バランス信号に変換する。ラティス型フィルタLF2は、バランス信号を入力し、バランス信号を出力するバランス入出力型フィルタである。なお、ラダー型フィルタLF1の初段の直列共振器S5には、インダクタンスL1が並列接続されている。直列共振器S5とインダクタンスL1とで整合回路を形成している。直列共振器S5は、上記第1、2の実施形態と同様、複数の共振器に分轄されるか、あるいは第3の実施形態のように、他の直列共振器とは異なる形状であってもよい。本実施形態では、説明を簡単にするため、共振器の分轄や形状の変化は図示しない。
【0081】
図27(a)は、図26に示す送信フィルタF1をチップ化する場合の構成の一例を示す図である。図27(a)に示す例では、圧電基板上のIDTと反射器により、直列共振器S1〜S4と並列共振器P1、P2が形成され、さらに、アンテナ端子Antへ接続されるバンプ、送信端子Txへ接続されるバンプおよび、グランド(GND)端子が形成される。これらの共振器S1〜S4、P1、P2、バンプおよびグランド端子の間は圧電基板上の配線パターンにより接続される。
【0082】
図27(b)は、図26に示す受信フィルタF2をチップ化する場合の構成の一例を示す図である。図27(b)に示す例でも、同様に、圧電基板上のIDTと反射器により、共振器S5〜S10、P3〜P8が形成され、さらに、アンテナ端子Antへ接続されるバンプ、整合回路用のインダクタL1を接続するバンプ、バランB1のインダクタL2、L3を接続するバンプ、受信端子Rx1、Rx2へ接続されるバンプおよび、グランド端子が形成される。図27(b)に示す例は、整合回路用のインダクタL1およびバラン2用のインダクタL2、L3は、チップの外部に設けられる構成である。
【0083】
図28は、図27(a)の送信フィルタチップと図27(b)の受信フィルタチップとをパッケージ化したデュプレクサパッケージの構成例を示す図である。図28に示す例では、キャビティ29を有するセラミックパッケージ36に、送信フィルタチップ33、および受信フィルタチップ34がフリップチップ実装される。送信フィルタチップ33は送信フィルタF1を形成するチップ(図27(a))であり、受信フィルタチップ34は受信フィルタF2を形成するチップ(図27(b))である。これらの各チップとセラミックパッケージ36とは、例えば、Auバンプにより導通される。これらのチップが実装されたセラミックパッケージ36の上部には、メタルリッド27がキャップとして設けられる。これにより、キャビティ29は気密封止される。なお、パッケージの構成は、図28に示す例に限られない。例えば、バランB1を構成するIPDチップを別途作成してキャビティ29内に実装してもよい。
【0084】
図29は、図28に示すデュプレクサパッケージ37およびインダクタを基板に実装した場合の構成例を示す図である。図29に示す例では、プリント基板38上に、デュプレクサパッケージ37が実装される。また、プリント基板38上には、インダクタL1、L2、L3のチップ部品も実装される。プリント基板38上の配線パターンにより、インダクタL1、L2、L3とデュプレクサパッケージ37のバンプとが接続される。また、デュプレクサパッケージ37の送信端子Tx、受信端子Rx1、Rx2、グランド端子もプリント基板38上の配線パターンにより外部へ引き出される。
【0085】
なお、分波器の実装形態は、上記例に限られない。例えば、インダクタL1、L2、L3をまとめて部品化することもできる。図30は、インダクタL1、L2、L3を石英基板上に形成した部品の構成例を示す図である。図30に示す例では、石英基板41上に、スパイラルコイルが3つ形成され、各スパイラルコイルの端子はパッドになっている。
【0086】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0087】
(付記1)
共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、直列に接続された複数の共振器に分轄されている、分波器。
【0088】
(付記2)
前記分轄された複数の共振器は、互いに形状が異なる、付記1に記載の分波器。
【0089】
(付記3)
前記分轄された複数の共振器の静電容量が等しいことを特徴とする、付記1または2に記載の分波器。
【0090】
(付記4)
前記分轄された複数の共振器は、圧電基板の上に設けられたIDTとその両側に配置される反射器とをそれぞれ有する弾性表面波共振器であり、
前記分轄された複数の弾性表面波共振器の開口長は互いに異なっている、付記1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【0091】
(付記5)
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記分轄された複数の圧電薄膜共振器それぞれにおける上部電極と下部電極が圧電膜を挟んで対向する領域の形状は、互いに異なっている、付記1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【0092】
(付記6)
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記圧電薄膜共振器それぞれの共振周波数は互いに異なっている、付記1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【0093】
(付記7)
通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記直列共振器は、圧電膜を挟んで上部電極および下部電極が対向する共振領域をそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器の共振領域の電極平面方向における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)が、その他の直列共振器の共振領域における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)より小さい、分波器。
【0094】
(付記8)
前記直列共振器を有するフィルタは、ラダー型フィルタまたはラティス型フィルタであって、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、前記ラダー型フィルタまたは前記ラティス型フィルタの最前段の共振器である、付記1〜7のいずれか1項に記載の、分波器。
【0095】
(付記9)
付記1〜8のいずれか1項に記載の分波器を含む、通信モジュール。
【0096】
(付記10)
付記1〜8のいずれか1項に記載の分波器を含む、通信機器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、通信機器等の電気回路に用いられる分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線機器の急速な普及により、分波器への需要は急速に拡大している。例えば、小型で高い急峻性を有する弾性波素子を用いた分波器への需要は旺盛である。
【0003】
近年、ラダー型フィルタとして、図1に示すような回路構成が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。図1の構成では、直列共振器S1に、並列にインダクタンスLPが接続されている。これにより、フィルタ通過帯域より低周波の領域に減衰極を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-332885号公報
【特許文献2】特開2003-69382号公報
【特許文献3】特開2004-135322号公報
【特許文献4】特開2004-242281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記の図1に示すフィルタ(以下、自フィルタと称する)と、通過帯域の異なる他のフィルタ(以下、相手フィルタと称する)とを組み合わせて分波器を構成することができる。この分波器を構成する際に、自フィルタの減衰極が現れる帯域が相手フィルタの通過帯域に合うように調整すると、優れた分波特性を得ることが可能になる。
【0006】
しかしながら、自フィルタの減衰極は、インダクタが並列接続された共振器により生じるので、この減衰極を相手フィルタの通過帯域に配置すると、インダクタンスが並列接続された共振器のスプリアスも、相手フィルタの通過帯域に配置される。これにより、相手フィルタの通過帯域の損失が大きくなるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、フィルタの損失を抑えた分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の分波器は、共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタを備える。前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されている。前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、直列に接続された複数の共振器に分轄されている。
【発明の効果】
【0009】
本願開示によれば、フィルタの損失を抑えた分波器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のラダー型フィルタの構成を示す図
【図2】ラダー型フィルタを説明するための図
【図3】ラダー型フィルタを説明するための図
【図4】ラダー型フィルタを説明するための図
【図5】SAW共振器の構造例を示す図
【図6】境界波共振器の構成例を示す図
【図7】Lamb波共振器の構成例を示す図
【図8】FBARの構成例を示す図
【図9】FBARにおける励振部から振動エネルギーの散逸を防ぐための構成例
【図10】第1の実施形態にかかる分波器の構成例を示す回路図
【図11】フィルタF1、F2の通過特性の一例を示すグラフ
【図12】ラダー型フィルタの直列共振器にインダクタンスを並列接続した場合のフィルタ特性について説明するための図
【図13】リップルが生成される例を示す図
【図14】第2の実施形態における分波器の回路構成例を示す図
【図15】直列共振器S1として、弾性波共振器を用いた場合の構成例を示す図
【図16】図14に示す回路構成の分波器において、得られる特性を示すグラフ
【図17】送信フィルタF2から見た受信フィルタF2の反射係数Γを示すグラフ
【図18】図14に示した直列共振器S1〜S7が、FBARである場合の、共振器S11〜S13の構成例を示す図
【図19】第3の実施形態にかかる分波器の構成例を示す回路図
【図20】FBARの製作工程の一例を示す図
【図21】楕円形状を有するFBARに対し、軸比を様々に変化させたときの応答を計測した結果を示すグラフ
【図22】楕円形状を有するFBARに対し、軸比を様々に変化させたときの共振点におけるQ値を測定した結果を示すグラフ
【図23】図19に示すフィルタF2の構成の一例を示す平面図である
【図24】上記第1〜3の実施形態における分波器を用いたRFモジュールの一例
【図25】通信機器の構成例を示す図
【図26】第5の実施形態における分波器の回路構成図
【図27】図26に示す送信フィルタF1および受信フィルタをチップ化する場合の構成の一例を示す図
【図28】デュプレクサパッケージの構成例を示す図
【図29】デュプレクサパッケージ37およびインダクタを基板に実装した場合の構成例を示す図
【図30】インダクタL1、L2、L3を石英基板上に形成した部品の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
まず、本実施形態において用いることができる共振器,フィルタおよび分波器の例を説明する。分波器は、送信用フィルタと受信用フィルタとを備える。これらのフィルタを、弾性波素子を用いて実現する手法として、例えば、ラダー型フィルタが広く受け入れられている。ラダー型フィルタは共振周波数の異なる二つの共振器を梯子状に結線して構成される高周波フィルタである。ここで、図2〜3を用いて、ラダー型フィルタについて説明する。
【0013】
図2(a)は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列に接続される直列共振器S、図2(b)は、入力端子Tinと出力端子Toutとを繋ぐ線路に対して並列に接続される並列共振器Pを示す。直列共振器Sは、frsなる共振周波数とfasなる反共振周波数を有する。並列共振器Pは、frpなる共振周波数とfapなる反共振周波数を有する。図2(c)は、直列共振器Sおよび並列共振器Pの周波数特性を示すグラフである。図2(c)に示す例では、fapとfrsがほぼ同じ値となっている。
【0014】
図3(a)は、直列共振器Sを直列腕に、並列共振器Pを並列腕に配した1段のフィルタ(一対の梯子型回路)の回路構成を示す図である。fapとfrsがほぼ同じ値であるとき、図3(a)のように、直列共振器Sと、並列共振器Pを配することで図3(b)に示すようなフィルタ特性が実現される。
【0015】
ラダー型フィルタは、図3(a)に示した一対の梯子型回路を多段に接続して構成される。図4(a)は、ラダー型フィルタの構成例を示す回路図である。図4(a)に示す例では、各段間での反射を防ぐため、隣り合う梯子型回路は互いにミラー反転させた形で接続される。図4(a)において、直列腕の共振器の静電容量はCs、並列腕の共振器の静電容量はCpである。
【0016】
図4(a)に示すようなフィルタの多段接続においては、直列腕において同種の共振器が直列接続されている箇所と、並列腕において同種の共振器が並列接続されている箇所が存在する。直列腕および並列腕において、隣り合う同種の共振器はまとめて1つの共振器で構成することができる。例えば、図4(b)に示すように、隣り合う同種の共振器は一つの共振器として、容量的に合成されてもよい。すなわち、直列腕において隣り合う2つの共振器(それぞれの静電容量=Cs)は、静電容量Cs/2の1つの共振器で構成することできる。並列腕において隣り合う2つの共振器(それぞれの静電容量=Cp)は、静電容量2Cpの1つの共振器で構成することができる。
【0017】
ラダーフィルタを構成する弾性波素子として、弾性表面波 (Surface Acoustic Wave: SAW)共振器や圧電薄膜共振器(例えば、FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などが広く用いられている。
【0018】
図5(a)は、SAW共振器の構造例を示す平面図であり、図5(b)は、断面図である。SAW共振器は圧電基板10上に励振電極となるIDT(InterDigitated Transducer)2と、その両端に配置されるグレーティング反射器3を備える。IDTには、入力端子inと出力端子outが、配線パターンにより接続される。IDTは、櫛形電極とも呼ばれ、例えば、等間隔で平行に並ぶ複数の電極指と、これら電極指を接続するバスバーを有する。電極指の並ぶ方向が弾性波の伝播方向になる。
【0019】
SAW共振器の変種として、例えば、境界波共振器やLamb波共振器などが存在する。図6(a)は、境界波共振器の構成例を示す平面図であり、図6(b)は、その断面図である。図6に示す例では、境界波共振器は、圧電基板10上に、IDT2および反射器3を覆うようにに誘電体膜が設けられる。図7(a)は、Lamb波共振器の構成例を示す平面図であり、図7(b)は、その断面図である。図7に示す例では、基板11上に設けられた圧電体膜16の上に、IDT2および反射器3が設けられる。IDT2および反射器3が設けられる部分(励起領域)の下には、圧電体膜16と基板11との間に空隙9が形成されている。境界波共振器およびLamb波共振器は、本願では、これらのSAW共振器、境界波共振器およびLamb波共振器のようにIDTを有する共振器を総称として、弾性表面波共振器と呼ぶことにする。
【0020】
図8(a)は、FBARの構成例を示す平面図であり、図8(b)は、その断面図である。図8に示す例では、FBARは、基板10の上に設けられた圧電膜17と、圧電膜17を挟む上部電極19および下部電極18を備える。上部電極19と下部電極18が圧電膜17を挟んで対向する領域が励振部(共振領域)となる。励振部直下は基板への振動エネルギーの散逸を防ぐため空隙9aとなっている。
【0021】
FBARにおける空隙には、図8(b)に示すような励振部下部の基板を貫通するタイプの空隙(バイアホール(via hole))の他、励振部と基板との間に形成されるタイプの空隙(キャビティ)が含まれる。
【0022】
キャビティの形成方法としては、例えば、図9(a)に示すように基板表面を加工して空隙9bを形成する方式や、図9(b)に示すように基板上にドーム上の空隙9cを形成するエアブリッジ方式等がある。
【0023】
また、例えば、図9(c)に示すように、励振部から振動エネルギーの散逸を防ぐために、空隙の代わりに、高インピーダンス層と低インピーダンス層を交互に積層した音響多層膜を励振部の下部に設けてもよい。この構成は、SMR(Solidly Mounted Resonator)と呼ばれる。本願では、圧電薄膜共振器には、FBARおよびSMRいずれも含まれるものとする。
【0024】
(第1の実施形態)
図10は、第1の実施形態にかかる分波器(デュプレクサ)の構成例を示す回路図である。図10に示す分波器は、共通端子Pcomに接続される、通過帯域の異なる2つのフィルタF1、F2を備える。フィルタF2は、フィルタF2の共通端子PcomとフィルタF2の入出力端子P2とを繋ぐ線路上に直列に接続された複数の直列共振器S1〜Snと、この線路に並列に接続された並列共振器P1〜Pmを含む。直列共振器S1〜Snの少なくとも1つ(ここでは、一例としてS1およびS4)には、インダクタンスが並列接続されている。直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄されている。
【0025】
このように、直列共振器S1〜Snの少なくとも1つにインダクタを並列接続することで、フィルタF2の通過帯域外に減衰極を生成することができる。ここで、フィルタF1(相手フィルタ)の通過帯域に減衰極が含まれるように調整することで、優れた分波特性を得ることができる。そのため、フィルタ損失を抑えた分波器が得られる。図11は、減衰極Gが相手フィルタの通過帯域に含まれる場合のフィルタF1、F2の通過特性の一例を示すグラフである。
【0026】
本実施形態においては、インダクタが並列接続された直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄(直列分轄)されているので、共振器S1におけるスプリアスのフィルタF1の通過特性への影響が抑制される。このように共振器を直列分轄することによって、個々の共振器の容量、すなわち、面積を大きくすることができる。一般的に、共振器で生成されるスプリアスは、共振器内を伝搬する波動と、共振器端面の相互作用によって生成される。そのため、共振器の直列分轄により共振器のサイズを大きくすることによって、波動が面方向に共振器端面の影響を受けずに伝搬できる距離を十分に確保でき、スプリアスを抑制することができる。
【0027】
分轄された複数の共振器S11〜S13は、それぞれの形状が互いに異なることが好ましい。これにより、スプリアスが発生する帯域が分散されるため、スプリアスがフィルタの通過特性に与える影響をさらに抑制することができる。
【0028】
また、分轄された共振器S11〜S13の静電容量は等しいことが好ましい。これにより、分轄された共振器S11〜S13それぞれに供給される電気エネルギーは略一定になるので、非線形応答を抑制することができる。
【0029】
共振器S11〜S13が、圧電基板の上に設けられたIDTとその両側に配置される反射器とをそれぞれ有する弾性波共振器である場合、共振器S11〜S13それぞれの開口長を異ならせることができる。これにより、共振器S11〜S13においてスプリアスが発生する周波数帯域を分散させることができる。さらに、共振器S11〜S13の電気エネルギーを等しくする観点からは、各共振器S11〜S13の対数と開口長の積は一定であることが望ましい。
【0030】
共振器S11〜S13が、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器である場合、共振器S11〜S13それぞれにおける共振領域を互いに異なる形状とすることができる。ここで共振領域は、上部電極と下部電極が圧電膜を挟んで対向している領域である。これにより、共振器S11〜S13においてスプリアスが発生する周波数帯域を分散させることができる。
【0031】
あるいは、分轄された共振器S11〜S13の共振周波数がそれぞれ異なる態様であってもよい。これにより、共振器S11〜S13においてスプリアスが発生する周波数帯域を分散させ、フィルタF1へのスプリアスの影響を抑制することができる。例えば、FABARの膜圧を変えるか、あるいは、共振領域の面積を変えることにより、共振周波数を変化させることができる。
【0032】
なお、図10に示すフィルタF2は、ラダー型フィルタの例であるが、ラティス型フィルタであっても上記と同様の効果を奏する。また、インダクタンスが並列接続される直列共振器は、図10に示す構成例のように、ラダー型フィルタまたはラティス型フィルタにおいて最も端にある直列共振器とすることが、フィルタ特性の観点からは好ましい。ただし、インダクタンスが並列接続される直列共振器は、必ずしもに端部の共振器に限定されない。
【0033】
[効果の説明]
次に、本実施形態にかかる分波器の効果について説明する。図12は、ラダー型フィルタの直列共振器にインダクタンスを並列接続した場合のフィルタ特性について説明するための図である。図12の一番上のグラフは、その左に示すラダー型フィルタのフィルタ特性を示す。上から2番目のグラフは、上記ラダー型フィルタの並列共振器のアドミッタンス特性を示す。上から3番目のグラフは、上記ラダー型フィルタの直列共振器のアドミッタンス特性を示す。上から4番目のグラフは、上記ラダー型フィルタにおいて、インダクタンスが並列接続された直列共振器のアドミッタンス特性を示す。
【0034】
図12に示す例では、並列共振器の共振点はf2、反共振点はf3であり、直列共振器の、共振点はf4、反共振点はf5である。直列共振器にインダクタンスが並列接続された場合、共振器の静電容量と並列接続されたインダクタンスの反共振によって、f1に反共振点が生成される。この反共振点が、フィルタにおける減衰極を生成する。ここで、直列共振器自身の反共振点f5は並列接続されたインダクタンスとの相互作用により、高周波帯f6にシフトする。また、直列共振器自身の共振点f4はインダクタンスの付加によって変動しない。
【0035】
なお、図12に示す例では、インダクタンスが並列接続される直列共振器の共振点f4を、並列共振器の反共振点f3と同じとせず、f4とf3を近傍に配置することによって、通過帯域の広帯域化ができる。
【0036】
図12に示すラダー型フィルタを分波器のフィルタの1つに採用した場合、生成される減衰極が、相手フィルタの通過帯域に配置されることによって、分波特性の向上を図ることができる。
【0037】
例えば、相手フィルタの通過帯域に配置される該減衰極は、相手フィルタ通過帯域の中心周波数に配置することが望ましい。しかし、例えば、WCDMA Band2(送信帯:1850 MHz〜1910 MHz、受信帯:1930 MHz〜1990 MHz)や、Band3(送信帯:1710 MHz〜1785 MHz、受信帯:1805 MHz〜1880 MHz)のように送信フィルタの通過帯域と受信フィルタの通過帯域とが近接する仕様の場合、自フィルタ通過帯域の低周波端の急峻性と両立させるため、該減衰極は相手フィルタの通過帯域の中心周波数よりも、高周波端よりに配置されることが望ましい。
【0038】
ここで、インダクタンスが並列接続される共振器がスプリアスを有していた場合、フィルタ特性にもスプリアスが生成されることとなる。しかし、スプリアスの生成される周波数がフィルタの通過帯域と非通過帯域とで、その影響は大きく異なる。なぜなら、通過帯域では、電気信号は主に機械振動として弾性波素子である共振器内を伝搬するため、弾性波素子内の不要振動に起因するスプリアスの影響を強く受ける。一方、非通過帯域では、電気信号は信号配線間の電磁・静電結合によって主に伝搬されるため、弾性波素子内の不要振動の影響を受ける度合いは少なくなる。
【0039】
弾性波素子では、共振点以下の領域でスプリアスが発生するが、例えば、直列共振器の共振点を並列共振器の反共振点近傍に配置する等により、問題となるスプリアスをフィルタの非通過帯域に配置し、フィルタ特性への影響を抑制することが考えられる。
【0040】
しかし、分波器において、該減衰極を相手帯域に配置する場合は、インダクタンスが並列接続される直列共振器のスプリアスが相手フィルタの通過帯域に配置される。この場合、相手フィルタの通過特性にリップルが生成される。したがって、共振器の共振点および反共振点の調整によって、リップルを抑制することは困難である。以下にその具体例を説明する。
【0041】
図13は、インダクタンスが並列接続された直列共振器のスプリアスに起因する相手フィルタの通過帯域におけるリップル生成の例を示す図である。図13に最上のグラフは、インダクタンスが並列接続された直列共振器のアドミッタンス特性の一例を示すグラフである。この例では、共振点と反共振点の間にスプリアスが発生している。上から2番目のグラフは、自フィルタの減衰量の周波数特性(実線)と、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数の周波数特性(点線)とを示す。反射係数においても、スプリアスに対応する位置にリップが発生している。上から3番目のグラフは、相手フィルタの減衰量の周波数特性(実線)と、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数の周波数特性(点線)とを示す。この例では、相手フィルタの通過帯域においてリップルが発生している。
【0042】
このように、インダクタンスが接続される共振器がスプリアスを有していた場合、図13に示すように、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数の全反射条件が局所的に擾乱され、リップルが生成される。このリップルの影響によって、相手フィルタの通過帯域にもリップルが生成される。
【0043】
相手帯域の通過帯域において、相手フィルタの損失を低く抑えるためには、相手フィルタ自身の損失の低減とともに、相手フィルタからみた自フィルタの反射係数が全反射(0 dB)の状態であることが望ましい。しかし、例えば、WCDMA Band2や、Band 3のように送信フィルタと受信フィルタの通過帯域が近接する仕様では、インダクタンスが並列接続される共振器のスプリアスは相手フィルタの通過帯域に配置されることとなり、共振点や反共振点などの周波数配置の調整によって、リップルを抑制することは困難である。
【0044】
一方、本実施形態の分波器では、上記したように、インダクタが並列接続された直列共振器S1は、直列に接続された複数の共振器S11〜S13に分轄されているので、共振器S1におけるスプリアスのフィルタF1の通過特性への影響が抑制される。そのため、自フィルタの減衰極を相手フィルタの通過帯域に配置する場合でも、相手フィルタの通過帯域におけるリップルを抑制することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態における分波器の回路構成例を示す図である。図14の回路は、例えば、WCDMA Band2用分波器に用いることができる。図14に示す例では、アンテナに接続される共通端子Ant(port1)に送信フィルタF1と、受信フィルタF2が接続されている。受信フィルタF2は、バラン回路B1に接続される。バラン回路B1は、平衡不平衡変換器であり、受信フィルタF2のシングル出力を、バランス出力に変換する。なお、本実施形態では、インダクタンスが並列接続された共振器S1を有する受信フィルタF2が自フィルタ、送信フィルタF1が相手フィルタとなる。
【0046】
受信フィルタF2は、直列腕の直列共振器S1〜S4および並列腕の並列共振器P1〜P4により、7段構成のラダー型フィルタを形成している。初段の直列共振器S1には、インダクタンスL1が並列接続されている。直列共振器S1には、上記第1の実施形態と同様、複数の直列に接続された共振器に分轄されている。
【0047】
直列共振器S1〜S7を構成する弾性波素子には、例えば、弾性表面波共振器を用いることができる。図15は、直列共振器S1として、弾性表面波共振器を用いた場合の構成例を示す図である。図15(a)は、分轄された共振器はいずれも同じ形状である場合の構成例である。共振器S11〜S13は、いずれもIDT2a〜2cとその両側の反射器3a〜3cを備える。共振器S11〜S13のIDT2a〜2cは、電極4によって直列に接続されている。共振器S11〜S13のIDT2a〜2cの開口長および電極指の対数は同じである。
【0048】
図15(b)は、分轄された共振器それぞれの形状が異なる場合の構成例である。図15(b)の共振器S11〜S13は、共振器S11〜S13のIDT2a〜2cの開口長および電極指の対数は異なっている。図15(b)では、IDT2a〜2cの開口長をそれぞれk1〜k3で示し、IDT2a〜2cの電極指の対数をt1〜t3で示している。
【0049】
受信フィルタF2のインダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1が有するスプリアスは、送信フィルタF1の通過特性におけるリップルとなって現れる。そこで、図15(a)および図15(b)に示すようにインダクタンスL1が並列接続された共振器S1を分轄して直列に接続された共振器S11〜S13とすることで、このスプリアスを抑制することができる。また、図15(b)に示すように、共振器S1を分轄し、且つ、分轄された共振器それぞれの電極指の対数と開口長を異ならせることで、さらに、このスプリアスを抑制することができる。
【0050】
ここで、受信フィルタF2のインダクタンスL1が並列接続された共振器S1が初段にある場合は、特に、非線形応答を抑制するために、分轄された共振器S11〜S13それぞれに供給される電気エネルギーは一定であることが望ましい。そのため、各共振器S11〜S13の静電容量は同一であることが望ましい。具体的には、各共振器S11〜S13の対数と開口長の積が同じである態様とすることができる。すなわち、k1×t1=k2×t2=k3t3となるように、各共振器S11〜S13の対数と開口長を調整することができる。
【0051】
[効果の説明]
図16は、図14に示す回路構成の分波器において、得られる特性を示すグラフである。図16(a)に示すグラフは、送信フィルタF1の通過特性S12と、送信フィルタF1からみた受信フィルタF2の反射係数Γの一例を示している。図16(b)は、図16(a)における送信フィルタ通過帯域の端部を拡大したものである。図16のグラフに示すS12やΓは、例えば、有限要素法による電磁界シミュレーションを用いて計算することができる。
【0052】
図16より、送信フィルタF1の通過特性S12において、通過帯域端部に、リップルR1が生成されていることが確認される。このリップルR1が生成される周波数は、受信フィルタF2の反射係数におけるリップルの生成周波数とほぼ一致している。
【0053】
図17(a)は、図15(b)に示すように各共振器S11〜S13の形状が異なる場合(D)と、図15(a)に示すように各共振器S11〜S13の形状が同じ場合(W)の、送信フィルタF2から見た受信フィルタF2の反射係数Γを示すグラフである。図17(b)は、各共振器S11〜S13の形状が異なる場合と同じ場合の送信フィルタF1の通過特性S12を示すグラフである。ここでは、図17(a)および図17(b)のグラフは、各共振器の対数、開口長が、下記表1に示す値である場合の解析結果である。
【0054】
【表1】
図17(a)および図17(b)のグラフより、受信フィルタF2の分轄された共振器S11〜S13の開口長および対数を異ならせることによって、受信フィルタF2の反射係数が改善され、送信フィルタF1の通過帯域におけるリップルが軽減されることを確認することができる。
【0055】
[FBARの場合の構成例]
図18は、図14に示した直列共振器S1〜S7が、FBARである場合の、共振器S11〜S13の構成例を示す図である。図18(a)〜(c)は、FBARを上から見た図である。上部電極および下部電極が圧電膜を挟んで対向する領域(共振領域)はハッチングで示している。図18(a)〜(c)に示す例では、分轄された共振器S11〜S13は、いずれも共振領域の形状が異なっている。図18(a)に示す例では、共振器S11〜S13の共振領域はいずれも四角形である。共振器S11〜S13の共振領域の面積(S1、S2、S3)は、すべて同じである(S1=S2=S3)。これにより、各共振器S11〜S13の静電容量が同じになる。
【0056】
図18(b)に示す例では、共振器S11〜S13の共振領域は、楕円である。共振器S11〜S13の共振領域において、長軸aと短軸bとの比が互いに異なっている。これにより、スプリアスが発生する周波数が共振器S11〜S13ごとに異なる。そのため、共振器S11〜S13のスプリアスが分散され、スプリアスが送信フィルタF1の通過特性に与える影響が小さくなる。
【0057】
ここで、共振器S11〜S13において、共振領域の楕円の長軸と短軸との積が同じになるように形成することにより、各共振器S11〜S13の静電容量を同じにすることができる。すなわち、a1×b1=a2×b2=a3×b3となるように、共振器S11〜S13のそれぞれにおける共振領域の楕円の長軸a1、a2、a3および短軸b1、b2、b3が決定されることが好ましい。
【0058】
図18(c)に示す例では、共振器S11〜S13の共振領域は長方形である。長方形の長辺aと短辺bとの比は、共振器S11〜S13ごとに異なっている。これにより、共振器S11〜S13のスプリアスが分散され、スプリアスが送信フィルタF1の通過特性に与える影響が抑制される。さらに、長辺aと短辺bとの積は同じである(a1×b1=a2×b2=a3×b3)。このように、共振器S11〜S13それぞれにおける共振領域の長方形の長軸a1、a2、a3および短軸b1、b2、b3が決定されることにより、各共振器S11〜S13の静電容量を同じにすることができる。
【0059】
図18に例示したように、フィルタに用いる共振器がFBARである場合も、FBARの形状によってスプリアスを調整することが可能である。また、FBARにおいても、分轄される共振器の静電容量が同じであることが望ましく、上部電極と下部電極が対向する領域の面積が等しいことが望ましい。
【0060】
(第3の実施形態)
図19は、第3の実施形態にかかる分波器の構成例を示す回路図である。図19に示す分波器は、共通端子Pcomに接続された通過帯域の異なる2つのフィルタF1、F2を備える。フィルタF2は、フィルタF2の共通端子PcomとフィルタF2の入出力端子P2とを繋ぐ線路上に直列に接続された複数の直列共振器S1〜S4と、この線路に並列に接続された並列共振器P1〜P4を含む。直列共振器S1〜S4の少なくとも1つ(ここでは、一例としてS1およびS4)には、インダクタンスL1、L2が並列接続されている。直列共振器S1〜S4は、圧電膜を挟んで上部電極および下部電極が対向する共振領域をそれぞれ有する圧電薄膜共振器(例えば、FBAR)である。インダクタンスL1が並列接続された直列共振器S1の共振領域の電極平面方向における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)は、その他の直列共振器S2〜S4の共振領域における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)より小さい。
【0061】
ここで、図20(a)〜図20(c)を用い、FBARの製作工程の一例を説明する。図20(a)を参照に、例えば主にSiで構成される基板10に、下部電極18としてRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング法を用いて形成する。その後、露光技術およびエッチング技術を用い、下部電極18を所定の形状にする。
【0062】
図20(b)を参照に、基板10上および下部電極18上に、圧電膜17としてAlN膜を、約0.3Paの圧力下のAr/N2混合ガス雰囲気中でスパッタリング法を用い形成する。圧電膜17上に、上部電極19としてRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング法を用い形成する。
【0063】
図20(c)を参照に、Deep−RIE(反応性ドライエッチング)法を用い、基板10裏面からエッチングすることにより、圧電膜17を挟み下部電極18と上部電極19とが対向する領域(共振領域)の下の基板10に空隙9aを形成する。以上の工程により、FBARが形成される。
【0064】
次に、FBARの共振領域の形状とスプリアスとの関係および、共振領域の形状と損失の関係について説明する。図21は楕円形状の共振領域を有するFBARに対し、共振領域の軸比を様々に変化させたときの、その応答を計測した結果である。ここで、共振領域を形成する楕円における長軸をa、短軸をbとし、軸比をa/bとする。測定は2端子共振器に対してS11(反射係数)を計測したものであり、図中の点線はFBARの共振点を示している。図21に示す計測結果は、膜構成がRu上部電極250nm、AlN圧電薄膜1200nm、Ru下部電極250nmであり、容量が0.75pFであるFBARの計測結果である。図21(a)は軸比が10:5の場合、図21(b)は軸比が8:5の場合、図21(c)は軸比が6:5の場合の計測結果をそれぞれ示している。軸比が小さいほど、共振点以下のスプリアスが小さいことがわかる。
【0065】
FBARにおいて、スプリアスは主として電極平面を伝搬するLamb波によって生成される。スプリアスは伝搬距離が短いほど減衰が少なく、その大きさは顕著になる。従って、楕円共振器の場合、最も伝搬距離の短い短軸の長さがスプリアスの大小に大きく影響する。同じ電極面積で比較した場合、軸比が小さいほど短軸は長く、スプリアスは抑制されて評価される。
【0066】
図22は楕円形状を有するFBARに対し、軸比を様々に変化させたときの共振点におけるQ値を測定した結果である。図22の結果より、軸比が大きいほど共振点におけるQが大きいことが確認される。直列共振器と並列共振器とで構成されるラダー型フィルタにおいて、直列共振器は共振Qが高いことが重要であり、FBARを用いた場合、直列共振器の軸比は大きいことが望まれる。
【0067】
ここで、インダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1は、共振点を並列共振器の反共振点近傍に配置することで、必ずしも、共振点のQ値が高い必要性を持たない。むしろ、分波器を想定した場合は、反射係数に悪影響を与えるスプリアスが十分に抑制されていることの方が望まれる。このように、直列共振器S1の共振領域の好ましい形状については、スプリアスと損失の間にトレードオフの関係があると言える。したがって、インダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1の軸比は、他の直列共振器の軸比に対して、小さくなるよう共振領域を構成することが好ましい。
【0068】
このように、インダクタンスL1が並列接続される直列共振器S1に関しては、周波数の関係上、損失よりもスプリアスを重視すべきという観点から軸比を調整することができる。その結果、スプリアスの低減とQ値の双方を考慮した適切な設計が可能になる。なお、本実施形態は、楕円形状のFBARに関して述べたが、長方形やその他多角形に関しても、同様に構成し上記効果を得ることが可能である。
【0069】
図23は、図19に示すフィルタF2の構成の一例を示す平面図である。直列共振器S1〜S4および並列共振器P1〜P3は、上部電極4および下部電極2が圧電膜3を挟んで対向する共振領域に形成される。図23では、下部電極2の位置を点線で示している。これらの7つの共振器は、例えば、基板と共振器間にドーム状のキャビティ(図示せず)を有する。また、並列腕の並列共振器P1〜P3については、上部電極の300nmのルテニウム(Ru)膜上に110のチタン(Ti)が設けられていてもよい。
【0070】
図23に示す例では、初段の直列共振器S1の下部電極2は、圧電膜3上部のパッド5aに導通しており、直列共振器S1の上部電極4とS2の上部電極4との間の配線パターンはパッド5bに導通している。パッド5aとパッド5bとの間にはインダクタンスL1が接続される。
【0071】
インダクタンスL1が並列接続された直列共振器S1の共振領域における長軸a1と短軸b1の比(a1/b1)は、その他の直列共振器S2〜S4の共振領域における長軸a2と短軸b2の比(a2/b2)より小さくなっている。このように、インダクタンスが並列接続される直列共振器の軸比を、他の直列共振器の軸比に対して大きくすることで、共振器のスプリアスと損失の共振器形状に対するトレードオフを考慮した適切な設計が可能になる。
【0072】
(第4の実施形態)
図24は、上記第1〜3の実施形態における分波器を用いたRFモジュールの一例である。図24に示す例では、分波器は、フィルタバンクモジュール(デュプレクサバンクモジュール)の一部として用いられている。図24に示すRFモジュールは、スイッチモジュール6、デュプレクサバンクモジュール7およびアンプモジュール8を含む。デュプレクサバンクモジュール7は、周波数帯域の異なる複数のデュプレクサD1、D2、D3、・・・を備える。スイッチモジュール6は、アンテナで送受信した信号を扱うデュプレクサを切り替える。すなわち、スイッチモジュール6は、デュプレクサD1、D2、D3、・・・のうちいずれのデュプレクサを使うかを選択する。アンプモジュール8は、デュプレクサD1、D2、D3、・・・から出力される信号またはデュプレクサD1、D2、D3、・・・に入力する信号を増幅する。
【0073】
デュプレクサD1、D2、D3、・・・は、それぞれ送信フィルタF1と受信フィルタ2を備える。デュプレクサD1、D2、D3、・・・にはそれぞれ、上記第1〜3の実施形態で示した分波器が用いられる。このように、フィルタ損失を抑え、優れた分波特性を持つ分波器を用いてRFモジュールを構成することにより、優れた特性を持つRFモジュールが得られる。
【0074】
なお、分波器を用いたモジュールは、図24に示す例に限られない。例えば、分波器を増幅器モジュール(Amp. Module)やスイッチモジュール(SW. Module)と組み合わせてモジュール化する場合も想定しうる。さらに、分波器を含む通信機器も本発明の実施形態に含まれる。
【0075】
図25は、通信機器の構成例を示す図である。図25に示す通信機器50においては、モジュール基板51上に、通信モジュール60、RFIC53およびベースバンドIC54が設けられている。通信モジュール60には、上記実施形態で示した分波器を用いることができる。例えば、通信モジュール60は、図24に示したRFモジュールを含んでもよい。
【0076】
通信モジュール60の送信端子TxはRFIC53に接続され、受信端子RxもRFIC53に接続されている。RFIC53はベースバンドIC54に接続されている。RFIC53は、半導体チップおよびその他の部品により形成することができる。RFIC53には、受信端子から入力された受信信号を処理するための受信回路および、送信信号を処理するための送信回路を含む回路が集積されている。
【0077】
また、ベースバンドIC54も半導体チップおよびその他の部品により実現することができる。ベースバンドIC54には、RFIC53に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC53に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0078】
図示しないが、ベースバンドIC54には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC54で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器50のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器50が備える入力機器もベースバンドIC54に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC54が送信信号に変換することができる構成になっている。なお、通信機器50の構成は、図25に示す例に限られない。
【0079】
(第5の実施形態)
本実施形態では、上記第1〜4で説明した分波器の実装例を説明する。ここでは、一例として、図26に示す回路構成の分波器を実装する場合について説明する。図26に示す分波器では、アンテナ端子Antに送信フィルタF1と受信フィルタF2が接続されている。送信フィルタF1は、直列共振器S1〜S4と並列共振器P1〜P2により構成されるラダー型フィルタである。受信フィルタF2は、ラダー型フィルタLF1、集中定数型のバランB1およびラティス型フィルタLF2を備える。ラダー型フィルタLF1は、直列共振器S5〜S7と並列共振器P3〜P5で構成される。
【0080】
ラダー型フィルタLF1はアンテナ端子Antからの信号を、シングル端子を介して入力し、バランB1へシングル出力する。バランB1は、ラダー型フィルタLF1からのシングル信号を、バランス信号に変換する。ラティス型フィルタLF2は、バランス信号を入力し、バランス信号を出力するバランス入出力型フィルタである。なお、ラダー型フィルタLF1の初段の直列共振器S5には、インダクタンスL1が並列接続されている。直列共振器S5とインダクタンスL1とで整合回路を形成している。直列共振器S5は、上記第1、2の実施形態と同様、複数の共振器に分轄されるか、あるいは第3の実施形態のように、他の直列共振器とは異なる形状であってもよい。本実施形態では、説明を簡単にするため、共振器の分轄や形状の変化は図示しない。
【0081】
図27(a)は、図26に示す送信フィルタF1をチップ化する場合の構成の一例を示す図である。図27(a)に示す例では、圧電基板上のIDTと反射器により、直列共振器S1〜S4と並列共振器P1、P2が形成され、さらに、アンテナ端子Antへ接続されるバンプ、送信端子Txへ接続されるバンプおよび、グランド(GND)端子が形成される。これらの共振器S1〜S4、P1、P2、バンプおよびグランド端子の間は圧電基板上の配線パターンにより接続される。
【0082】
図27(b)は、図26に示す受信フィルタF2をチップ化する場合の構成の一例を示す図である。図27(b)に示す例でも、同様に、圧電基板上のIDTと反射器により、共振器S5〜S10、P3〜P8が形成され、さらに、アンテナ端子Antへ接続されるバンプ、整合回路用のインダクタL1を接続するバンプ、バランB1のインダクタL2、L3を接続するバンプ、受信端子Rx1、Rx2へ接続されるバンプおよび、グランド端子が形成される。図27(b)に示す例は、整合回路用のインダクタL1およびバラン2用のインダクタL2、L3は、チップの外部に設けられる構成である。
【0083】
図28は、図27(a)の送信フィルタチップと図27(b)の受信フィルタチップとをパッケージ化したデュプレクサパッケージの構成例を示す図である。図28に示す例では、キャビティ29を有するセラミックパッケージ36に、送信フィルタチップ33、および受信フィルタチップ34がフリップチップ実装される。送信フィルタチップ33は送信フィルタF1を形成するチップ(図27(a))であり、受信フィルタチップ34は受信フィルタF2を形成するチップ(図27(b))である。これらの各チップとセラミックパッケージ36とは、例えば、Auバンプにより導通される。これらのチップが実装されたセラミックパッケージ36の上部には、メタルリッド27がキャップとして設けられる。これにより、キャビティ29は気密封止される。なお、パッケージの構成は、図28に示す例に限られない。例えば、バランB1を構成するIPDチップを別途作成してキャビティ29内に実装してもよい。
【0084】
図29は、図28に示すデュプレクサパッケージ37およびインダクタを基板に実装した場合の構成例を示す図である。図29に示す例では、プリント基板38上に、デュプレクサパッケージ37が実装される。また、プリント基板38上には、インダクタL1、L2、L3のチップ部品も実装される。プリント基板38上の配線パターンにより、インダクタL1、L2、L3とデュプレクサパッケージ37のバンプとが接続される。また、デュプレクサパッケージ37の送信端子Tx、受信端子Rx1、Rx2、グランド端子もプリント基板38上の配線パターンにより外部へ引き出される。
【0085】
なお、分波器の実装形態は、上記例に限られない。例えば、インダクタL1、L2、L3をまとめて部品化することもできる。図30は、インダクタL1、L2、L3を石英基板上に形成した部品の構成例を示す図である。図30に示す例では、石英基板41上に、スパイラルコイルが3つ形成され、各スパイラルコイルの端子はパッドになっている。
【0086】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0087】
(付記1)
共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、直列に接続された複数の共振器に分轄されている、分波器。
【0088】
(付記2)
前記分轄された複数の共振器は、互いに形状が異なる、付記1に記載の分波器。
【0089】
(付記3)
前記分轄された複数の共振器の静電容量が等しいことを特徴とする、付記1または2に記載の分波器。
【0090】
(付記4)
前記分轄された複数の共振器は、圧電基板の上に設けられたIDTとその両側に配置される反射器とをそれぞれ有する弾性表面波共振器であり、
前記分轄された複数の弾性表面波共振器の開口長は互いに異なっている、付記1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【0091】
(付記5)
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記分轄された複数の圧電薄膜共振器それぞれにおける上部電極と下部電極が圧電膜を挟んで対向する領域の形状は、互いに異なっている、付記1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【0092】
(付記6)
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記圧電薄膜共振器それぞれの共振周波数は互いに異なっている、付記1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【0093】
(付記7)
通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記直列共振器は、圧電膜を挟んで上部電極および下部電極が対向する共振領域をそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器の共振領域の電極平面方向における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)が、その他の直列共振器の共振領域における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)より小さい、分波器。
【0094】
(付記8)
前記直列共振器を有するフィルタは、ラダー型フィルタまたはラティス型フィルタであって、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、前記ラダー型フィルタまたは前記ラティス型フィルタの最前段の共振器である、付記1〜7のいずれか1項に記載の、分波器。
【0095】
(付記9)
付記1〜8のいずれか1項に記載の分波器を含む、通信モジュール。
【0096】
(付記10)
付記1〜8のいずれか1項に記載の分波器を含む、通信機器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、直列に接続された複数の共振器に分轄されている、分波器。
【請求項2】
前記分轄された複数の共振器は、互いに形状が異なる、請求項1に記載の分波器。
【請求項3】
前記分轄された複数の共振器の静電容量が等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の分波器。
【請求項4】
前記分轄された複数の共振器は、圧電基板の上に設けられたIDTとその両側に配置される反射器とをそれぞれ有する弾性表面波共振器であり、
前記分轄された複数の弾性表面波共振器の開口長は互いに異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項5】
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記分轄された複数の圧電薄膜共振器それぞれにおける上部電極と下部電極が圧電膜を挟んで対向する領域の形状は、互いに異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項6】
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記圧電薄膜共振器それぞれの共振周波数は互いに異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項7】
通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記直列共振器は、圧電膜を挟んで上部電極および下部電極が対向する共振領域をそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器の共振領域の電極平面方向における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)が、その他の直列共振器の共振領域における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)より小さい、分波器。
【請求項8】
前記直列共振器を有するフィルタは、ラダー型フィルタまたはラティス型フィルタであって、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、前記ラダー型フィルタまたは前記ラティス型フィルタの最前段の共振器である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、分波器。
【請求項1】
共通端子に接続される、通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、直列に接続された複数の共振器に分轄されている、分波器。
【請求項2】
前記分轄された複数の共振器は、互いに形状が異なる、請求項1に記載の分波器。
【請求項3】
前記分轄された複数の共振器の静電容量が等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の分波器。
【請求項4】
前記分轄された複数の共振器は、圧電基板の上に設けられたIDTとその両側に配置される反射器とをそれぞれ有する弾性表面波共振器であり、
前記分轄された複数の弾性表面波共振器の開口長は互いに異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項5】
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記分轄された複数の圧電薄膜共振器それぞれにおける上部電極と下部電極が圧電膜を挟んで対向する領域の形状は、互いに異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項6】
前記分轄された複数の共振器は、圧電膜と、圧電膜を挟んで対向する上部電極および下部電極とをそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記圧電薄膜共振器それぞれの共振周波数は互いに異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項7】
通過帯域の異なる2以上のフィルタを備え、
前記2以上のフィルタの少なくとも1つは、フィルタの入力端子および出力端子を繋ぐ線路に直列に接続された複数の直列共振器と、前記線路に並列に接続された並列共振器を含み、
前記直列共振器の少なくとも1つには、インダクタンスが並列接続されており、
前記直列共振器は、圧電膜を挟んで上部電極および下部電極が対向する共振領域をそれぞれ有する圧電薄膜共振器であり、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器の共振領域の電極平面方向における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)が、その他の直列共振器の共振領域における最も長い幅Aと最も短い幅Bとの比(A/B)より小さい、分波器。
【請求項8】
前記直列共振器を有するフィルタは、ラダー型フィルタまたはラティス型フィルタであって、
前記インダクタンスが並列接続された直列共振器は、前記ラダー型フィルタまたは前記ラティス型フィルタの最前段の共振器である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、分波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−40817(P2011−40817A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183568(P2009−183568)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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