説明

到来方向推定方法および位置推定方法

【課題】サイトごとのブランチの設置およびこれらのブランチからの情報収集を不要とする到来方向推定方法を提供する。
【解決手段】信号を受信するブランチを配置が予め決定されている複数の仮想的なサイトに移動させ、各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求め、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトの配置と送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施し、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、送信端の方位を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトに到来した波動信号に所定の信号処理を施すことによって、その送信端の方向または位置を推定する到来方向推定方法および位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のブランチ(電波、音波、光などの波動信号を受信する受信素子)に到来する電磁波や音波の到来方向の推定に適用可能な処理のアルゴリズムについては、多様なものがあり、もちろん、従来もさまざまな提案が行われている。
また、このようなアルゴリズムに基づいて上記の到来方向を推定する装置は、後述する非特許文献1に掲載され、例えば、図25に示す空中線系として構成される。
【0003】
ここに、図25に示す空中線系は、複数Mのサイト101〜10Mにそれぞれ配置されたアレーアンテナ111〜11M(複数Nのアンテナ素子1211〜121N、…、12M1〜12MNの列として構成され、これらのアンテナ素子1211〜121N、…、12M1〜12MNは、共通の間隔dで直線状に配置される。)と、サイト101〜10Mにおいて、アンテナ素子1211〜121N、…、12M1〜12MNの給電点にそれぞれ接続された信号処理回路131〜13Mから構成される。
【0004】
以下、アレーアンテナ111〜11Mおよび信号処理回路131〜13Mに共通の事項にかかわる記述では、添え番号「1」から「M」の何れにも該当し得ることを意味する添え文字「c」を該当する符号に付与して説明する。なお、図25においては、サイト10cの詳細構成のみを示し、他のサイトについての図示は省略した。
このような構成の空中線系では、例えば、図25に示すように、アレーアンテナ11cに方位角θの方向から到来し、かつ到来方向の推定の対象となる到来波は、その到来波の振幅aと、この方位角θおよび上述した間隔dとに応じて定まる位相差φと、上記のアンテナ素子12c1〜12cNの数N(≧2)とを用いて、下式(1) で示されるベクトルrとして表記される。
【0005】
r=[a a・ejφ … a・ej(N-1)φ]T ・・・(1)
信号処理回路13cは、例えば、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)アルゴリズムに基づいて下記の(a)〜(c)の手順からなる処理を行うことによって、上記の到来方向を推定する。
(a)この到来方向がとり得る範囲(ここでは、簡単のため、マイナス90度ないしプラス90度の何れかに等しい方位角θで表されると仮定する。)を規定の精度(例えば、1度毎)でスキャンする。
(b)そのスキャンの下で適宜仮定される方位角θの方向からアンテナ素子12−1 〜12−N に到来するべき到来波の方向ベクトル(これらの到来波を示すモードベクトルの全ての成分の振幅成分が「1」に正規化されることによって得られる。)a(θ)と、アレーアンテナ11に到来している到来波の数Lと、このアレーアンテナ11のアンテナ素子の数K(=N)とに併せて、上述したベクトルrに含まれる熱雑音の成分の固有値EN(≡[eL+1,…,eK])に対して下式(2)で示されるMUSICスペクトラムPMU(θ)を一括して求める。
【0006】
【数1】

(c)このようにして求められたMUSICスペクトラムPMU(θ)が最大となる方位角θで示される方位を到来方向として推定する。
また、任意の信号処理回路13cは、この信号処理回路13cによって上述したようにして求められた方位角θcと、上述した信号処理回路131〜13Mのうち自身以外から選択した信号処理回路13dによって求められた方位角θdと、これらの2つの信号処理回路13c、13dがそれぞれ配置されたサイト10c、10dの位置(ここでは、既知の情報として予め与えられると仮定する。)とに基づいて、到来方向の推定対象となった到来波に対応する送信端の位置を幾何学的求める。
【0007】
なお、例えば、単一のサイト10cに備えられたアレーアンテナ11cに備えられたアンテナ素子12c1〜12cNを区分することで構成される複数のサブアレーアンテナ毎に既述の方位角を求め、これらの方位角と、個々のサブアレーアンテナに対応する仮想的な複数のサイトの位置とに基づいて、このような送信端の位置を同様の幾何学的な手法によって求めることもできる。
【特許文献1】特開2000−199784公報
【非特許文献1】「アレーアンテナによる適応信号処理」、第173ページないし第268ページ、科学技術出版社
【非特許文献2】http://www.mobile.ss.titech.ac.jp/mobile/seminar/ohp-011015_hungchin.pdf
【非特許文献3】http://www.cybernet.co.jp/matlab/support/3vent/conf97/tsuji.pdf
【非特許文献4】http://maxwell.elcom.nitech.ac.jp/~kikuma/source.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来例では、複数のサイト101〜10Mにそれぞれ配置されたアレーアンテナ111〜11Mの全てを適用することによって既述の到来角θや送信端の位置を求めるためには、これらのアレーアンテナ111〜11Mにそれぞれ備えられたアンテナ素子1211〜121N、…、12M1〜12MNに到来した全ての到来波を同時にサンプリングしなければならない。
【0009】
しかし、このようなサンプリングは、技術的に可能ではあっても、実際には、コストや各サイトの配置にかかわる条件などの制約に阻まれ、困難である場合が多かった。また、このようなサンプリングは、アンテナ素子1211〜121N、…、12M1〜12MNに到来した到来波が、これらの到来波の位相の検出が容易に達成される低い帯域に周波数変換される場合であっても、これらの周波数変換に適用される局発信号の全ての位相が同じでなければ達成されなかった。
【0010】
このようなサンプリングにかかわる課題を解決するための技術として、本出願人は、特願2004−019674号「到来方向及び位置の推定方法」(未公開)を既に出願している。
この特願2004−019674号の技法では、複数のサイトそれぞれに配置されたブランチによって、共通の送信端からそれぞれのサイトに到来した波動信号を個別に取得し、これらのブランチの配置と送信端について想定される位置(各ブランチから見た方位あるいは客観的な座標)とに対して定まる誤差を是正する処理を施している。これにより、ハードウェアの構成を複雑化することなく、複数箇所に分散して設置されたブランチの全てを活用して、これらのブランチに到来した波動信号の送信端の方位および位置を求めることができる。
【0011】
しかしながら、この技法では、複数のサイトに個別にブランチを配置しているので、当然ながら、サイトの数と同数のブランチがハードウェアとして必要である上、各サイトで取得した波動信号情報を収集するための通信手段を設ける必要があった。このため、到来方向の推定または送信端の位置推定を行うために必要な装置にかかわるコストが高くなってしまう。
【0012】
ところで、携帯電話やPHSなどの移動端末の普及に伴って、地下街などにおいても移動端末を利用可能とするシステムが通信事業者などによって整えられてきている一方で、個々の商店や雑居ビルなどによって、店内やビルなどの屋内にいる顧客の移動端末の電波を正規の基地局へと中継する違法な基地局が設置される例が後を絶たない。
このような違法基地局から発信される電波は、移動通信システムの加入者端末と正規の基地局との間の通信を阻害する場合があるため、違法基地局の位置を突き止めるための技術が要望されている。
【0013】
しかしながら、違法基地局が設置されていることが疑われる地域は日々変化しあるいは増大しているため、違法基地局を探索する分野では、探索範囲が限定されない探索技術が必要とされている。また、このような探索技術が、遭難者や漂流物を探索する分野においても、特に、山岳や海洋で遭難した人を救助するような場合に有効であることは明らかである。
【0014】
本発明は、サイトごとのブランチの設置およびこれらのブランチからの情報収集を不要とする到来方向及び送信端位置の推定方法を提供すること、また、到来方向および送信端の位置に関する制限なしに推定可能な到来方向推定方法および位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかわる第1の到来方向推定方法は、移動ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第1の到来方向推定方法の原理は、以下の通りである。
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを位置およびその位置における向きによって示される配置が予め決定されている複数の仮想的なサイトに移動させる。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されていた配置と送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、送信端の方位を推定する。
【0016】
このように構成された第1の到来方向推定方法の動作は、下記の通りである。
例えば、共通の送信端から到来する波動信号の到来方向が同一となるような範囲に仮想的なサイトを配置しておき、これらの仮想的なサイトに単一のブランチを移動させることにより、複数の仮想的なサイトの配置において、そのサイトに到来する波動信号の観測を行い、観測結果に基づいて、これらの複数の仮想的なサイトに共通して波動信号を到来させる送信端から到来した波動信号の集合を示すベクトルを生成する。
【0017】
ここで、上述した各仮想的なサイトの配置は既知であり、またこれらの仮想的なサイトに共通の送信端から到来する波動信号の到来方向は同一であるとみなせるので、想定し得る送信端の方位それぞれについて、各仮想的なサイトの配置に対応して上述した波動信号の集合を示すベクトルおよびモードベクトルを補正するための補正行列を、推定対象の波動信号の観測に先立って求めておくことができる。
【0018】
したがって、上述したようにして波動信号の集合を示すベクトルが求められた後に、上述した特願2004−019674号の技法を適用し、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差を波動信号の集合を示すベクトルおよびモードベクトルについて是正し、得られた補正ベクトルおよび補正モードベクトルを送信端の方位の推定処理に供する。
【0019】
このようにして、既知の複数の配置に移動させた単一のブランチを、あたかも各仮想的なサイトに個別に設置されたブランチであるかのように扱うことにより、単一のブランチを用いて、波動信号の送信端の方位を推定することができる。もちろん、このときの観測結果は、単一のブランチから得られるので、波動信号の集合を示すベクトルに含まれる情報要素を収集するために通信手段を備える必要はない。
【0020】
本発明にかかわる第2の到来方向推定方法は、移動ステップと、位置計測ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第2の到来方向推定方法の原理は、以下の通りである。
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置を任意に変更可能な複数の仮想的なサイトに移動させる。位置計測ステップは、各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、ブランチの位置を計測する。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されていた向きと計測された位置とによって示される配置と送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、送信端の方位を推定する。
【0021】
このように構成された第2の到来方向推定方法の動作は、下記の通りである。
例えば、向きを固定した状態で単一のブランチを任意の複数の位置に移動させ、各位置で到来する波動信号を観測するとともに、GPSなどを利用してブランチの位置を計測することで、自由に位置を決定した複数の仮想的なサイトに到来した波動信号の集合を示すベクトルと各仮想的なサイトの位置を示す情報が得られる。
【0022】
このようにして得られた位置情報とブランチが固定された向きとによって示される各仮想的なサイトの配置に対応して、想定し得る送信端の方位について、特願2004−019674号の技法を適用した誤差是正処理に供され、得られた補正結果に基づいて、送信端の方位の推定処理が行われる。
このように、任意に位置が決定可能な仮想的なサイトに単一のブランチを移動させることにより、例えば、送信端が存在することが想定される範囲や送信端から放射される波動信号の強度に応じて、適切な範囲に仮想的なサイトを設置することが可能となる。つまり、到来波の観測対象の地域を自由に変更することができるので、テンポラリな運用が可能である。
【0023】
また、複数の仮想的なサイトごとに予めブランチの向きを決定しておき、ブランチを移動させる際に、各仮想的なサイトに対応する向きにブランチを向けることもできる。
本発明にかかわる第3の到来方向推定方法は、移動ステップと、向き計測ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第3の到来方向推定方法の原理は、以下の通りである。
【0024】
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、予め位置が決定された複数の仮想的なサイトに任意の向きで移動させる。向き計測ステップは、各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、ブランチの向きを計測する。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されていた位置と計測された向きとによって示される配置と送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、送信端の方位を推定する。
【0025】
このように構成された第3の到来方向推定方法の動作は、下記の通りである。
例えば、移動体に単一のブランチを固定した場合には、予め決定されている各仮想的なサイトの位置における地形などの影響により、各仮想的なサイトにこの移動体を移動させることによって単一のブランチを移動させた際に、このブランチの向きが任意に変化する場合がある。このとき、各位置で到来する波動信号を観測するとともに、このブランチの向きを計測することで、予め位置が決定された複数の仮想的なサイトに自由に決定した向きで設置したブランチに到来した波動信号の集合を示すベクトルと各仮想的なサイトにおけるブランチの向きを示す情報が得られる。
【0026】
このようにして得られたブランチの向きを示す情報と各仮想的なサイトについて予め決定されている位置とによって示される各仮想的なサイトの配置に対応して、想定し得る送信端の方位について、特願2004−019674号の技法を適用した誤差是正処理に供され、得られた補正結果に基づいて、各仮想的なサイトの位置およびその位置におけるブランチの向きが既知である場合と同様に、送信端の方位に関する推定処理を行うことができる。
【0027】
本発明にかかわる第4の到来方向推定方法は、移動ステップと、計測ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第4の到来方向推定方法の原理は、以下の通りである。
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置およびその位置におけるブランチの向きを任意に決定可能な複数の仮想的なサイトに移動させる。計測ステップは、各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、ブランチの位置および向きを計測する。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて計測された位置および向きによって示される配置と送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、送信端の方位を推定する。
【0028】
このように構成された第4の到来方向推定方法の動作は、下記の通りである。
単一のブランチを任意の位置に任意の向きで移動させ、各位置で到来する波動信号を観測するとともに、このブランチの位置および向きを計測することで、完全に自由な配置で設置された複数の仮想的なサイトに到来した波動信号の集合を示すベクトルとこれらの仮想的なサイトの配置を示す情報が得られる。
【0029】
このようにして得られた各仮想的なサイトの配置に対応して、想定し得る送信端の方位について、特願2004−019674号の技法を適用した誤差是正処理に供され、得られた補正結果に基づいて、送信端の方位の推定処理が行われる。
このように、位置もその位置におけるブランチの向きも未知である複数の仮想的なサイトにおける観測結果から送信端の位置を推定可能としたことにより、例えば、到来方向推定の対象となる送信端の存在が想定される範囲の大きさや必要とされる分解能などを考慮して、複数の仮想的なサイトの位置を適切に決定することが可能となるので、精度の高い推定結果を得ることが期待できる。
【0030】
本発明にかかわる第1の位置推定方法は、移動ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第1の位置推定方法の原理は、以下の通りである。
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを位置およびその位置における向きによって示される配置が予め決定されている複数の仮想的なサイトに移動させる。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されている配置と送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、送信端の位置を推定する。
【0031】
このように構成された第1の位置推定方法の動作は、下記の通りである。
単一のブランチを移動させることにより、複数の仮想的なサイトの配置において、そのサイトに到来する波動信号の観測を行い、観測結果に基づいて、これらの複数の仮想的なサイトに共通して波動信号を到来させる送信端から到来した波動信号の集合を示すベクトルを生成する。
【0032】
ここで、上述した各仮想的なサイトの配置は既知であるので、想定し得る送信端の位置それぞれについて、各仮想的なサイトの配置に対応して上述した波動信号の集合を示すベクトルおよびモードベクトルを補正するための補正行列を、推定対象の波動信号の観測に先立って求めておくことができる。
したがって、上述したようにして波動信号の集合を示すベクトルが求められた後に、上述した特願2004−019674号の技法を適用し、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差を波動信号の集合を示すベクトルおよびモードベクトルについて是正し、得られた補正ベクトルおよび補正モードベクトルを送信端の位置の推定処理に供する。
【0033】
このようにして、既知の複数の配置に移動させた単一のブランチを、あたかも各仮想的なサイトに個別に設置されたブランチであるかのように扱うことにより、単一のブランチを用いて、波動信号の送信端の位置を推定することができる。もちろん、このときの観測結果は、単一のブランチから得られるので、波動信号の集合を示すベクトルに含まれる情報要素を収集するために通信手段を備える必要はない。
【0034】
本発明にかかわる第2の位置推定方法は、移動ステップと、位置計測ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第2の位置推定方法の原理は、以下の通りである。
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置を任意に変更可能な複数の仮想的なサイトに移動させる。計測ステップは、各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、ブランチの位置を計測する。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて計測された位置および仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されている向きによって示される配置と送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、送信端の位置を推定する。
【0035】
このように構成された第2の位置推定方法の動作は、下記の通りである。
例えば、向きを固定した状態で単一のブランチを任意の複数の位置に移動させ、各位置で到来する波動信号を観測するとともに、GPSなどを利用してブランチの位置を計測することで、自由に位置を決定した複数の仮想的なサイトに到来した波動信号の集合を示すベクトルと各仮想的なサイトの位置を示す情報が得られる。
【0036】
このようにして得られた位置情報とブランチが固定された向きとによって示される各仮想的なサイトの配置に対応して、想定し得る送信端の位置について、特願2004−019674号の技法を適用した誤差是正処理に供され、得られた補正結果に基づいて、送信端の位置の推定処理が行われる。
このように、任意に位置が決定可能な仮想的なサイトに単一のブランチを移動させることにより、例えば、送信端が存在することが想定される範囲を取り囲むように仮想的なサイトを設置することが可能となる。これにより、波動信号の観測対象となる範囲を任意に決定可能となることで得られる運用上のメリットを享受するとともに、送信端の位置推定に関する分解能の向上をも図ることができる。
【0037】
また、複数の仮想的なサイトごとに予めブランチの向きを決定しておき、ブランチを移動させる際に、各仮想的なサイトに対応する向きにブランチを向けることもできる。
本発明にかかわる第3の位置推定方法は、移動ステップと、向き計測ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
本発明にかかわる第3の位置推定方法の原理は、以下の通りである。
【0038】
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、予め位置が決定された複数の仮想的なサイトに任意の向きで移動させる。向き計測ステップは、各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、ブランチの向きを計測する。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されている位置および仮想的なサイトそれぞれについて計測された向きによって示される配置と送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、送信端の位置を推定する。
【0039】
このように構成された第3の位置推定方法の動作は、下記の通りである。
例えば、移動体に単一のブランチを固定した場合には、予め決定されている各仮想的なサイトの位置における地形などの影響により、各仮想的なサイトにこの移動体を移動させることによって単一のブランチを移動させた際に、このブランチの向きが任意に変化する場合がある。このとき、各位置で到来する波動信号を観測するとともに、このブランチの向きを計測することで、予め位置が決定された複数の仮想的なサイトに自由に決定した向きで設置したブランチに到来した波動信号の集合を示すベクトルと各仮想的なサイトにおけるブランチの向きを示す情報が得られる。
【0040】
このようにして得られたブランチの向きを示す情報と各仮想的なサイトについて予め決定されている位置とによって示される各仮想的なサイトの配置に対応して、想定し得る送信端の位置について、特願2004−019674号の技法を適用した誤差是正処理に供され、得られた補正結果に基づいて、各仮想的なサイトの位置およびその位置におけるブランチの向きが既知である場合と同様に、送信端の位置に関する推定処理を行うことができる。

本発明にかかわる第4の位置推定方法は、移動ステップと、計測ステップと、ベクトル生成ステップと、ベクトル補正ステップと、推定ステップとから構成される。
【0041】
本発明にかかわる第4の位置推定方法の原理は、以下の通りである。
移動ステップは、音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置およびその位置におけるブランチの向きを任意に決定可能な複数の仮想的なサイトに移動させる。計測ステップは、各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、ブランチの位置および向きを計測する。ベクトル生成ステップは、ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求める。ベクトル補正ステップは、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、仮想的なサイトそれぞれについてそれぞれ計測された位置および向きによって示される配置と送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、波動信号の集合を示すベクトルおよび送信端から仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施す。推定ステップは、誤差が波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと誤差がモードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、送信端の位置を推定する。
【0042】
このように構成された第4の位置推定方法の動作は、下記の通りである。
単一のブランチを任意の位置に任意の向きで移動させ、各位置で到来する波動信号を観測するとともに、このブランチの位置および向きを計測することで、完全に自由な配置で設置された複数の仮想的なサイトに到来した波動信号の集合を示すベクトルとこれらの仮想的なサイトの配置を示す情報が得られる。
【0043】
このようにして得られた各仮想的なサイトの配置に対応して、想定し得る送信端の位置について、特願2004−019674号の技法を適用した誤差是正処理に供され、得られた補正結果に基づいて、送信端の位置の推定処理が行われる。
このように、位置もその位置におけるブランチの向きも未知である複数の仮想的なサイトにおける観測結果から送信端の位置を推定可能としたことにより、例えば、位置推定の対象となる送信端の存在が想定される範囲の大きさや必要とされる分解能などを考慮して、複数の仮想的なサイトの位置を適切に決定することが可能となるので、精度の高い推定結果を得ることが期待できる。
【発明の効果】
【0044】
本発明にかかわる第1の到来方向推定方法および第1の位置推定方法によれば、単一のブランチを複数の仮想的なサイトに移動させる過程で得られた観測結果に基づいて、これらの仮想的なサイトに共通に到来した波動信号の送信端の方位または位置を推定することができる。これにより、到来方向または位置の推定に必要な複数のサイトに個別にブランチを備える必要性およびこれらのブランチから観測結果を収集する必要性を無くし、波動信号の到来方向または送信端の位置を推定するために必要な固定的なハードウェア量を格段に削減することができる。
【0045】
また、単一のブランチを位置についての制限なしに移動させ、複数の仮想的なサイトの配置に高い自由度を与えることにより、方位あるいは位置の推定対象となる送信端の位置として想定される範囲に応じて、自由に設定可能な範囲から放射される波動信号を観測対象とすることができる。このような特徴は、例えば、違法基地局の捜索や遭難者の探索など、送信端の位置が任意の位置であり得るような分野において、極めて有用である。
【0046】
特に、送信端の位置を推定する位置推定方法においては、上述したようにして、自由に設定可能な範囲から放射される波動信号を観測対象とすることにより、位置推定に関する分解能の向上を図ることもできる。
一方、単一のブランチを向きの制限なしに移動させ、複数の仮想的なサイトの配置に高い自由度を与えることにより、例えば、方位あるいは位置の推定対象となる送信端の位置として想定される範囲に応じて、複数の仮想的なサイトにおけるブランチの向きをブランチの指向性などを考慮して適切に調整し、送信端の方位あるいは位置を高い精度で推定することが可能である。
【0047】
もちろん、ブランチの位置および向きを任意に設定可能とすることにより、これらに自由度を持たせたことによって得られるメリットの双方を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明にかかわる到来方向推定方法の第1の実施形態を示す。
図1に示した到来方向推定システムは、例えば、図25に示したアンテナ素子12に相当する単一のブランチ200および信号処理回路13を予め敷設された直線状の軌道上を移動する移動体201にブランチ200の向きを固定して搭載し、この軌道上のM個の地点P1〜PMに予め位置が決定されたM個の仮想的なサイト101〜10Mに移動させ、この移動過程において得られたブランチ200による観測結果を信号処理回路13による到来方向推定処理に供する構成である。
【0049】
ここで、M個の地点P1〜PMの位置は、到来方向の推定対象である到来波が同一の方向からのものとして観測される範囲、すなわち、推定対象の到来波に対応する送信端の位置として想定される範囲までの距離と、この到来方向推定システムに期待される到来方向に関する分解能によって決まる範囲において、予め決定されている。
図2に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
【0050】
図2に示した信号処理回路13において、サンプリング処理部202は、移動体201が各仮想的なサイトの位置に到達するごとに、ブランチ200の出力をサンプリングすることにより、波動信号の集合を示すベクトルrを取得する。配置情報保持部211は、上述したN個の仮想的なサイト101〜10Mそれぞれに対応して、位置を示す座標値とブランチ200の向きを示す向き情報とからなる配置情報を格納している。また、図2に示した位相補正値算出部212は、上述した各仮想的なサイト101〜10Mに対応して配置情報保持部211に保持された配置情報に基づいて、波動信号の到来方向として想定し得る範囲に含まれる様々な方位角θについて、各方位角θから到来した波動信号について各仮想的なサイト101〜10Mにおいて見込まれる位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mを予め算出し、位相補正レジスタ213に格納する。
【0051】
この位相補正値算出部212は、例えば、波動信号に関する観測に先立って、方位角θの範囲−90度から+90度について1度刻みで上述した位相補正値を算出し、また、位相補正レジスタ213は、上述した範囲の方位角θごとに、各仮想的なサイト101〜10Mに対応してそれぞれ算出されたM個の位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mを保持する。
図2に示した到来方向推定処理部214は、この位相補正レジスタ213に保持された位相補正値を用いて、特願2004−019674号の技法により、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差を、上述したサンプリング処理部202によって得られたベクトルおよびモードベクトルについて是正し、得られた補正ベクトルと補正モードベクトルとの相関が最大となる方位として、波動信号の到来方向を推定する処理を行う。
【0052】
次に、上述したように構成された到来方向推定システムの動作を説明する。
図3に、到来方向推定動作を表す流れ図を示す。
図2に示したサンプリング処理部202は、図3に示したステップ301〜ステップ303を繰り返し、図1に示したM個の地点P1〜PMのそれぞれにブランチ200が移動するごとに、このブランチ200に到来した波動信号の振幅および位相をサンプリングし、全ての仮想的なサイト101〜10Mに関するサンプリングが完了したときに、ステップ303の肯定判定としてステップ304に進み、波動信号の集合を示すベクトルを生成する。
【0053】
次に、図2に示した到来方向推定処理部214は、波動信号の到来方向として想定し得る範囲に含まれる各方位角θについて、順次に、図3に示すステップ305〜ステップ309の処理を行う。つまり、方位角θ(−90≦θ≦90)に対応して位相補正レジスタ213に格納された位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mを読み出し(ステップ305)、これらの値を用いて、到来波の位相に付帯する誤差を是正する処理を行い(ステップ306)、次いで、補正されたベクトルを用いてMUSICスペクトラムを算出する処理を行う(ステップ307)。その後、ステップ308において、全ての方位角について、ステップ305〜ステップ307の処理を完了したか否かを判定し、否定判定の場合は、ステップ309において方位角θを更新した後に、ステップ305にもどり、新たな方位角θについての処理を行う。
【0054】
一方、上述したようにして、全ての方位角に関する処理が完了したときに(ステップ308の肯定判定)、到来方向推定処理部214は、ステップ307において各方位角θに対応して算出したMUSICスペクトラムの値に基づいて、M個の仮想的なサイト101〜10Mに共通に到来した到来波に関する到来方向を推定し(ステップ310)、処理を終了する。
【0055】
このようにして、単一のブランチ200を予め位置が決定されているM個の仮想的なサイト101〜10Mに移動させ、この移動過程において得られたブランチ200による観測結果から、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通に到来する到来波に関する到来方向を推定することができる。
なお、単一のブランチ200を各仮想的なサイトに移動させる手段を、例えば、車両やヘリコプターなどのように自由に移動可能な移動体を、位置が既知であるランドマークを目印として移動させることで実現してもよい。また、ブランチ200をジンバル機構(図示せず)を介して移動体201に搭載し、M個の仮想的なサイトごとに図2に示した配置情報保持部211に保持されたブランチ200の向きを示す向き情報に応じて、各仮想的なサイト101〜10Mにおいてブランチ200の方位を設定する構成とすることもできる。
(第2の実施形態)
図4に、本発明にかかわる到来方向推定方法の第2の実施形態を示す。
【0056】
なお、図4に示す構成要素のうち、図1に示した各部と同等のものについては、図1に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図4に示した到来方向推定システムは、例えば、任意の場所に移動可能な移動体201に、単一のブランチ200、位置測定装置203および信号処理回路13をブランチ200の向きを固定して搭載して構成される。
【0057】
また、図4において、移動体201を共通の送信端からの到来波が同一の方向から到来する範囲において任意に決定されるM個の位置に移動させ、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測が実現される。
また、上述したブランチ200による観測と並行して、位置測定装置203により、観測を行った位置を示す位置情報が取得され、この位置情報が観測結果とともに信号処理回路13の処理に供される。
【0058】
図5に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
なお、図5に示す構成要素のうち、図2に示した各部と同等のものについては、図2に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図5に示した位置測定装置203は、上述したブランチ200によって、各仮想的なサイト101〜10Mに対応する観測が行われるごとに、ブランチ200が観測を行った地点の位置、すなわち、各仮想的なサイト101〜10Mの位置を測定し、この位置を示す位置情報を仮想的なサイト101〜10Mそれぞれを識別するための識別情報とともに信号処理回路13に備えられた配置情報保持部211に渡す。
【0059】
また、図5に示した配置情報保持部211は、位置測定装置203から受け取った位置情報を、識別情報で示される仮想的なサイトに対応して格納し、位相補正値算出部212の処理に供する。
図6に、到来方向推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図6に示すステップのうち、図3に示した各ステップと同等のものについては、図3に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
【0060】
図5に示したサンプリング処理部202によって各仮想的なサイト101〜10Mにおける到来波のサンプリング処理が実行される過程において、位置測定装置203は、各仮想的なサイト101〜10Mの位置を測定する(図6に示したステップ311)。これにより、ステップ303において、全ての仮想的なサイト101〜10Mに関する観測が完了したと判定されたときには、配置情報保持部211に全ての仮想的なサイト101〜10Mの位置およびその位置におけるブランチの向きを示す配置情報が収集されている。
【0061】
また、図5に示した位相補正値算出部212は、到来波の位相に付帯する誤差を是正する処理(ステップ306)に先立って、上述したようにして配置情報保持部211に収集された配置情報に基づいて、方位角θに対応するψ(θ)1〜ψ(θ)Mを算出し(ステップ312)、ステップ306の処理に供する。
このようにして、任意に位置が設定される各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波の位相に付帯する誤差を是正し、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通して到来する到来波について到来方向を推定することができる。これにより、仮想的なサイトを設置する地点に関する制約を受けることなく、観測対象の波動信号が確実に観測できる範囲に複数の仮想的なサイトからなる観測網を展開し、これらの仮想的なサイトに共通に到達する到来波の送信端を確実に特定するに足る精度の観測結果を得ることができる。
【0062】
なお、ブランチ200をジンバル機構(図示せず)を介して移動体201に搭載し、M個の仮想的なサイトごとに図2に示した配置情報保持部211に保持されたブランチ200の向きを示す向き情報に応じて、各仮想的なサイト101〜10Mにおいてブランチ200の方位を設定する構成とすることもできる。
(第3の実施形態)
図7に、本発明にかかわる到来方向推定方法の第3の実施形態を示す。
【0063】
なお、図7に示す構成要素のうち、図1に示した各部と同等のものについては、図1に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図7に示した到来方向推定システムは、例えば、任意の場所に移動可能な移動体201の上面などに単一のブランチ200を固定して搭載するとともに、この移動体201の傾きなどに伴って変化するブランチ200の向きを測定する向き測定装置205を備えて構成される。
【0064】
また、図7において、共通の送信端からの到来波が同一の方向から到来する範囲において予め決定されたM個の地点P1〜PMに移動体201を移動させるとともに、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測が実現される。
また、上述したブランチ200による観測と並行して、向き測定装置205により、観測地点P1〜PMにおけるブランチ200の向きを示す向き情報が取得され、この向き情報が観測結果とともに信号処理回路13の処理に供される。
【0065】
図8に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
なお、図8に示す構成要素のうち、図2に示した各部と同等のものについては、図2に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図8に示した向き測定装置205は、上述したブランチ200によって、各仮想的なサイト101〜10Mに対応する観測が行われるごとに、ブランチ200が観測を行った地点におけるブランチ200の向きを測定し、この向きを示す向き情報を仮想的なサイト101〜10Mそれぞれを識別するための識別情報とともに信号処理回路13に備えられた配置情報保持部211に渡す。
【0066】
また、図8に示した配置情報保持部211は、向き測定装置205から受け取った向き情報を、識別情報で示される仮想的なサイトに対応して格納し、位相補正値算出部212の処理に供する。
図9に、到来方向推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図9に示すステップのうち、図3および図6に示した各ステップと同等のものについては、図3および図6に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
【0067】
図8に示したサンプリング処理部202によって各仮想的なサイト101〜10Mにおける到来波のサンプリング処理が実行される過程において、向き測定装置205は、各仮想的なサイト101〜10Mにおけるブランチ200の向きをそれぞれ測定する(図9に示したステップ313)。これにより、ステップ303において、全ての仮想的なサイト101〜10Mに関する観測が完了したと判定されたときには、配置情報保持部211に全ての仮想的なサイト101〜10Mの位置およびこれらの位置におけるブランチの向きを示す配置情報が収集されている。
【0068】
このようにして収集された配置情報に基づいて、図8に示した位相補正値算出部212により、上述した第2の実施形態において説明したようにして、各方位角θに対応する位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mが算出され(ステップ312)、位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mがステップ306の処理に供される。
このようにして、各観測地点においてブランチ200の向きが任意に設定される各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波の位相に付帯する誤差を是正し、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通して到来する到来波について到来方向を推定することができる。
【0069】
これにより、車両などの移動体の上面に固定したブランチ200の向きが、各仮想的なサイトの位置における地形の影響などによって変化する場合においても、向き測定装置205によって得られる向き情報を利用して得られた配置情報を位相補正値の算出処理に利用することにより、各仮想的なサイトにおける向きにかかわらず、第1の実施形態において説明したM個の位置および向きが固定された仮想的なサイトを用いた観測に基づく到来方向推定結果と同等の推定結果を得ることができる。
【0070】
同様に、ヘリコプターの機首などに搭載したブランチ200によって波動信号の観測を行う場合などには、ヘリコプターの方位計などを向き測定装置205として利用し、これによって得られる向き情報を利用して得られた配置情報を位相補正値の算出処理に利用することにより、第1の実施形態において説明したM個の位置および向きが固定された仮想的なサイトを用いた観測に基づく到来方向推定結果と同等の推定結果を得ることができる。
【0071】
また、観測対象の波動信号についておおよその到来方向が分かっている場合などには、ブランチ200をジンバル機構(図示せず)などを介して移動体201に搭載し、おおよその到来方向にブランチ200が向くようにジンバル機構を調整した上で、波動信号に関する観測を行うこともできる。これにより、ブランチ200の指向特性にかかわらず、各仮想的なサイトにおけるサンプリング結果に基づいて、到来波の特徴を忠実に再現する波動信号の集合を示すベクトルを生成し、この波動信号の到来方向に関する推定処理に供することができる。
(第4の実施形態)
もちろん、仮想的なサイトの位置に自由度を与えるとともに各仮想的なサイトにおけるブランチの向きにも自由度を与えることも可能である。
【0072】
図10に、本発明にかかわる到来方向推定方法の第4の実施形態を示す。
なお、図10に示す構成要素のうち、図1、図4および図7に示した各部と同等のものについては、図1、図4および図7に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図10に示した到来方向推定システムは、例えば、任意の場所に移動可能な移動体201の上面などに単一のブランチ200を固定して搭載するとともに、この移動体201の位置を測定する位置測定装置203と、この移動体201の傾きなどに伴って変化するブランチ200の向きを測定する向き測定装置205を備えて構成される。
【0073】
また、図10において、移動体201を共通の送信端からの到来波が同一の方向から到来する範囲において任意に決定されるM個の位置に移動させ、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測が実現される。
また、上述したブランチ200による観測と並行して、位置測定装置203および向き測定装置205により、それぞれ到来波の観測が実行された観測地点P1〜PMの位置およびこれらの観測地点P1〜PMにおけるブランチ200の向きを示す向き情報が取得され、この位置情報および向き情報が観測結果とともに信号処理回路13の処理に供される。
【0074】
図11に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
なお、図11に示す構成要素のうち、図2、図5および図8に示した各部と同等のものについては、図2、図5および図8に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図11に示した配置情報保持部211には、位置測定装置204によって得られた位置情報と向き測定装置205によって得られた向き情報との双方が、ブランチ200による観測結果について行われるサンプリング処理部202によるサンプリングと並行して、仮想的なサイト101〜10Mそれぞれを識別するための識別情報とともに入力される。
【0075】
また、このようにして得られ位置情報および向き情報は、配置情報保持部211において、仮想的なサイトに対応して格納され、位相補正値算出部212の処理に供される。
図12に、到来方向推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図12に示すステップのうち、図3および図6に示した各ステップと同等のものについては、図3および図6に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
【0076】
図11に示したサンプリング処理部202によって各仮想的なサイト101〜10Mにおける到来波のサンプリング処理が実行される過程において、位置測定装置203および向き測定装置205により、各仮想的なサイト101〜10Mの位置およびこれらの仮想的なサイト101〜10Mにおけるブランチ200の向きがそれぞれ測定される(図12に示したステップ314)。これにより、ステップ303において、全ての仮想的なサイト101〜10Mに関する観測が完了したと判定されたときには、配置情報保持部211に全ての仮想的なサイト101〜10Mの位置およびこれらの位置におけるブランチの向きを示す配置情報が収集されている。
【0077】
このようにして収集された配置情報に基づいて、図8に示した位相補正値算出部212により、上述した第2の実施形態において説明したようにして、各方位角θに対応する位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mが算出され(ステップ312)、位相補正値ψ(θ)1〜ψ(θ)Mがステップ306の処理に供される。
このようにして、任意に決定される観測地点においてブランチ200の向きが任意に設定される各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波の位相に付帯する誤差を是正し、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通して到来する到来波について到来方向を推定することができる。
【0078】
このように、各仮想的なサイト101〜10Mの位置およびそこでのブランチ200の向きに完全な自由度を与えたことにより、例えば、観測対象の波動信号が確実に観測できる範囲における地形などの制約にかかわらず、複数の仮想的なサイトからなる観測網を展開することができる。
なお、上述した第2乃至第4の実施形態において、位置あるいはブランチ200の向きを測定する手順は、ブランチ200の出力信号に基づくサンプリングをサンプリング処理部202が行うのに先立って行われてもよいし、また、当然ながら、このサンプリング処理と並行して実行されてもよい。
【0079】
また、全ての仮想的なサイトに関する配置情報がそろった段階において、第1の実施形態において説明したのと同様に、全ての方位角(例えば、−90度≦θ≦90度)に対応する位相補正値をまとめて算出して位相補正レジスタ213に格納しておき、各方位角θに対応する位相補正値をこの位相補正レジスタ213から読み出して、該当する到来波の位相に関する誤差を是正する処理に供することもできる。
(第5の実施形態)
図13に、本発明にかかわる位置推定方法の第1の実施形態を示す。
【0080】
なお、図13に示す構成要素のうち、図1に示した各部と同等のものについては、図1に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図13に示した位置推定システムは、例えば、任意の場所に移動可能な移動体201に、単一のブランチ200の向きを鉛直方向に固定して搭載し、この移動体201を予め決定されたM個の地点P1〜PMに移動体201を移動させ、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測を行い、観測結果を信号処理回路13の処理に供する構成である。なお、図13は、上述した位置推定システムの構成要素が仮想的なサイト101に存在する状態を示しており、他の仮想的なサイトに存在する状態についての図示は省略した。
【0081】
また、図13において、仮想的なサイト101、102〜10Mの位置P1、P2〜PMは、予め決定された観測対象の領域(図13において鎖線で囲んで示した)を取り囲むような位置に予め決定されており、また、これらの仮想的なサイトにおいてブランチ200を向けるべき方向もまた予め決定されている。
図14に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
【0082】
なお、図14に示す構成要素のうち、図2に示した各部と同等のものについては、図2に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
上述した仮想的なサイト101〜10Mの配置に関する配置情報は、あらかじめ、図14に示す信号処理回路13に備えられた配置情報保持部211に各仮想的なサイト101〜10Mに対応して格納されている。
【0083】
また、図14に示す信号処理回路13において、位相補正値算出部221は、上述した各仮想的なサイト101〜10Mに対応して配置情報保持部211に保持された配置情報に基づいて、上述した観測対象の領域に含まれる各地点の座標(x、y)について、この地点に存在する送信端から到来した波動信号について各仮想的なサイト101〜10Mにおいて見込まれる位相補正値ψ(x、y)1〜ψ(x、y)Mを算出する。また、これらの位相補正値ψ(x、y)1〜ψ(x、y)Mは、各仮想的なサイトに関する観測に先立って、位相補正レジスタ213に格納され、位置推定処理部222の処理に供される。
【0084】
この位置推定処理部222は、上述した位相補正レジスタ213に保持された位相補正値を用いて、特願2004−019674号の技法により、共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差を、上述したサンプリング処理部202によって得られたベクトルおよびモードベクトルについて是正し、得られた補正ベクトルと補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、波動信号の送信端の位置を推定する処理を行う。
【0085】
次に、上述したように構成された位置推定システムの動作を説明する。
図15に、位置推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図15に示すステップのうち、図3に示した各ステップと同等のものについては、図3に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図15に示した流れ図では、図3に示したステップ305に代えて、位置推定処理部222により上述した観測対象の領域に含まれる各位置の座標(x、y)に対応して位相補正レジスタ213に格納された各仮想的なサイト101〜10Mに対応する位相補正値ψ(x、y)1〜ψ(x、y)Mを読み出し(ステップ321)、これらの位相補正値を適用して、到来波の位相に付帯する誤差を是正する処理を行い(ステップ306)、誤差が是正された波動信号の集合を示すベクトルおよびモードベクトルとに基づいてMUSICスペクトラムを算出する処理を行う(ステップ307)。
【0086】
その後、ステップ322において、上述した観測対象の領域に含まれる全ての地点についてMUSICスペクトラムの算出処理が完了したか否かを判定し、否定判定の場合には、ステップ323に進んで処理対象となる座標(x、y)を更新してから、ステップ321に戻り、新たな座標で示される地点に関する処理を行う。
このようにして、観測対象の領域に含まれる全ての地点についてMUSICスペクトラムの算出処理が完了したときに(ステップ322の肯定判定)、位置推定処理部222は、得られたMUSICスペクトラムの値に基づき、送信端の位置を推定し(ステップ324)、処理を終了する。
【0087】
このように、単一のブランチ200を予め位置が決定されているM個の仮想的なサイト101〜10Mに移動させ、この移動過程において得られたブランチ200による観測結果を得ることにより、上述した観測対象領域の中に位置を推定すべき対象となる送信端が存在すれば、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通に到来する到来波の送信端の位置を推定することができる。
(第6の実施形態)
次に、位置を推定すべき対象となる送信端が存在し得る範囲に応じて、観測対象領域を任意に決定する方法について説明する。
【0088】
図16に、本発明にかかわる位置推定方法の第2の実施形態を示す。
なお、図16に示す構成要素のうち、図4および図13に示した各部と同等のものについては、図4および図13に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図16に示した位置推定システムは、例えば、任意の場所に移動可能な移動体201に、単一のブランチ200、位置測定装置203および信号処理回路13をブランチ200の向きを鉛直方向に固定した状態で搭載して構成される。
【0089】
また、図16においては、例えば、位置を推定する対象となる送信端が存在することが想定される地域において、移動体201をこの移動体201の操縦者が任意のルートを経由して移動させ、このルート上に存在する任意のM個の位置において、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測が実現される。
【0090】
例えば、違法基地局を探索する作業においては、移動通信端末への電波障害の発生状況などに基づいて、違法基地局が存在することが想定される地域を大まかに特定できる場合がある。
このようにして特定された地域の周辺を取り囲むように移動体201の移動ルートを設定し、このルートに従って移動する過程において、適切な間隔でブランチ200による到来波に関する観測を行い、また、この観測と並行して、位置測定装置203により、観測を行った位置を示す位置情報を取得し、この位置情報を観測結果とともに信号処理回路13の処理に供する。
【0091】
図17に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
なお、図17に示す構成要素のうち、図2および図14に示した各部と同等のものについては、図2および図14に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図17に示した位置測定装置203は、上述した第2の実施形態(到来方向推定方法の第2の実施形態)と同様に、上述したブランチ200によって、各仮想的なサイト101〜10Mに対応する観測が行われるごとに、各仮想的なサイト101〜10Mの位置を測定し、この位置を示す位置情報を信号処理回路13に備えられた配置情報保持部211に渡す。
【0092】
また、図17に示した配置情報保持部211は、位置測定装置203から受け取った位置情報を、識別情報で示される仮想的なサイトに対応して格納し、位相補正値算出部221および観測領域決定部223の処理に供する。
図17に示した観測領域決定部223は、上述したようにして得られた位置情報に基づいて、これらの位置情報で示されるM個の仮想的なサイトに共通して到来する到来波にかかわる送信端が存在し得る領域を観測対象領域として特定する。また、位相補正値算出部221は、この観測対象領域に含まれる各地点についての位相補正値を算出し、位相補正レジスタ213に格納する。
【0093】
次に、このように構成された位置推定システムによる位置推定動作について説明する。
図18に、位置推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図18に示すステップのうち、図15に示した各ステップと同等のものについては、図15に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図17に示したサンプリング処理部202によって各仮想的なサイト101〜10Mにおける到来波のサンプリング処理が実行される過程において、位置測定装置203は、各仮想的なサイト101〜10Mの位置を測定する(図18に示したステップ311)。これにより、ステップ303において、全ての仮想的なサイト101〜10Mに関する観測が完了したと判定されたときには、配置情報保持部211に全ての仮想的なサイト101〜10Mの位置およびその位置におけるブランチの向きを示す配置情報が収集されている。
【0094】
このとき、観測領域決定部223は、配置情報保持部211に保持された各サイトの位置情報に基づいて、位相補正値を算出すべき観測対象領域を特定し(ステップ325)、この観測対象領域を位相補正値算出部221の処理に供する。
これに応じて、図15に示した位相補正値算出部221は、図18に示したステップ321において、配置情報保持部211に収集された配置情報に基づいて、上述したようにして決定された観測対象領域から順次に選択される地点の座標(x、y)に対応して、この座標で示される位置に送信端が存在した場合についての位相補正値ψ(x、y)1〜ψ(x、y)Mを算出し、ステップ306の処理に供する。
【0095】
このようにして、任意に位置が設定される各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波の位相に付帯する誤差を是正し、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通して到来する到来波の送信端の位置を推定することができる。これにより、仮想的なサイトを設置する地点に関する制約を受けることなく、観測対象の波動信号が確実に観測できる範囲に複数の仮想的なサイトからなる観測網を展開し、これらの仮想的なサイトに共通に到達する到来波の送信端の位置を確実に特定するに足る精度の観測結果を得ることができる。
【0096】
なお、第5および第6の実施形態において、ブランチ200をジンバル機構(図示せず)を介して移動体201に搭載し、M個の仮想的なサイトごとに配置情報保持部211に予め保持されたブランチ200の向きを示す向き情報に応じて、各仮想的なサイト101〜10Mにおいてブランチ200の方位を設定する構成とすることもできる。
(第7の実施形態)
図19に、本発明にかかわる位置推定方法の第3の実施形態を示す。
【0097】
なお、図19に示す構成要素のうち、図7および図13に示した各部と同等のものについては、図7および図13に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図19に示した位置推定システムは、図7に示した到来方向推定システムと同様に、例えば、任意の場所に移動可能な移動体201の上面などに単一のブランチ200を固定して搭載するとともに、この移動体201の傾きなどに伴って変化するブランチ200の向きを測定する向き測定装置205を備えて構成される。
【0098】
また、図19において、予め決定されたM個の地点P1〜PMに移動体201を移動させるとともに、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測が実現される。
また、上述したブランチ200による観測と並行して、向き測定装置205により、観測地点P1〜PMにおけるブランチ200の向きを示す向き情報が取得され、この向き情報が観測結果とともに信号処理回路13の処理に供される。
【0099】
図20に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
なお、図20に示す構成要素のうち、図8および図14に示した各部と同等のものについては、図8および図14に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
上述した第3の実施形態(到来方向推定方法の第3の実施形態)において説明したように、各仮想的なサイト101〜10Mに対応する観測が行われる過程において、向き測定装置205によって測定されたブランチ200の向きを示す情報は、仮想的なサイト101〜10Mそれぞれを識別するための識別情報とともに信号処理回路13に備えられた配置情報保持部211に渡され、位相補正値算出部221の処理に供される。
【0100】
図21に、位置推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図21に示すステップのうち、図9および図15に示した各ステップと同等のものについては、図9および図15に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
上述した第3の実施形態(到来方向推定方法の第3の実施形態)において説明したようにして、各仮想的なサイト101〜10Mに到来する波動信号に関する観測と並行して、向き測定装置205によるブランチ200の向きに関する測定が行われるので、ステップ303において、全ての仮想的なサイト101〜10Mに関する観測が完了したと判定されたときには、配置情報保持部211に全ての仮想的なサイト101〜10Mの位置およびこれらの位置におけるブランチの向きを示す配置情報の収集が完了している。
【0101】
このようにして収集された配置情報に基づいて、図20に示した位相補正値算出部221により、配置情報保持部211に収集された配置情報に基づいて、各仮想的なサイトの位置に応じて予め決定された観測対象領域(図19において破線で囲んで示した)から順次に選択される地点の座標(x、y)に対応して、この座標で示される位置に送信端が存在した場合についての位相補正値ψ(x、y)1〜ψ(x、y)Mを算出し(図21に示したステップ321)、ステップ306の処理に供する。
【0102】
このようにして、各観測地点においてブランチ200の向きが任意に設定される各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波の位相に付帯する誤差を是正し、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通して到来波を到来せしめる送信端の位置を推定することができる。
これにより、車両などの移動体の上面に固定したブランチ200の向きが、各仮想的なサイトの位置における地形の影響などによって変化する場合においても、向き測定装置205によって得られる向き情報を利用して得られた配置情報を位相補正値の算出処理に利用することにより、各仮想的なサイトにおける向きにかかわらず、第5の実施形態(位置推定方法の第1の実施形態)において説明したM個の位置および向きが固定された仮想的なサイトを用いた観測に基づく位置推定結果と同等の推定結果を得ることができる。
【0103】
同様に、ヘリコプターの機首などに搭載したブランチ200によって波動信号の観測を行う場合などには、ヘリコプターの方位計などを向き測定装置205として利用し、これによって得られる向き情報を利用して得られた配置情報を位相補正値の算出処理に利用することにより、第1の実施形態において説明したM個の位置および向きが固定された仮想的なサイトを用いた観測に基づく位置推定結果と同等の推定結果を得ることができる。
【0104】
なお、各仮想的なサイトの配置は、図19に示した観測対象領域に含まれる任意の座標を各仮想的なサイトから見たときに、それぞれの仮想的なサイトとその座標とを結ぶ直線が互いに十分に大きな角度で交わるように決定すればよい。
(第8の実施形態)
もちろん、仮想的なサイトの位置とともに各仮想的なサイトにおけるブランチの向きが未知である場合にも位置推定を実現することができる。
【0105】
図22に、本発明にかかわる位置推定方法の第4の実施形態を示す。
なお、図22に示す構成要素のうち、図10および図13に示した各部と同等のものについては、図10および図13に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図22に示した位置推定システムは、例えば、図10に示した到来方向推定システムと同様に、任意の場所に移動可能な移動体201の上面などに単一のブランチ200を固定して搭載するとともに、この移動体201の位置を測定する位置測定装置203と、この移動体201の傾きなどに伴って変化するブランチ200の向きを測定する向き測定装置205を備え、これらの測定結果を信号処理回路13の処理に供する構成を備えている。
【0106】
また、図22においては、上述した第6の実施形態(位置推定方法の第2の実施形態)において説明したようにして、移動体201を任意に決定されるM個の位置に移動させ、また、上述した第7の実施形態(位置推定方法の第3の実施形態)において説明したようにして、ブランチ200の向きを適切な向きに調整した状態で、ブランチ200による観測をそれぞれ行うことにより、M個の仮想的なサイト101〜10Mにおける観測が実現される。
【0107】
図23に、信号処理回路13の詳細構成を示す。
なお、図23に示す構成要素のうち、図11および図14に示した各部と同等のものについては、図11および図14に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
図23に示した配置情報保持部211には、上述した第4の実施形態(到来方向推定方法の第4の実施形態)において説明したようにして、ブランチ200による観測結果についてのサンプリングと並行して、位置情報と向き情報との双方が仮想的なサイト101〜10Mそれぞれの識別情報ととも入力され、配置情報保持部211に格納される。
【0108】
図24に、到来方向推定動作を表す流れ図を示す。
なお、図24に示すステップのうち、図12、図15、図18および図21に示した各ステップと同等のものについては、図12、図15、図18および図21に示した符号を付して示し、その説明を省略する。
上述した第4の実施形態(到来方向推定方法の第4の実施形態)において説明したようにして、各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波に関するサンプリング処理とともに、位置測定装置203および向き測定装置205による位置および向きに関する測定が行われ、これらの測定結果が配置情報保持部211に収集される。
【0109】
このようにして収集された配置情報に基づいて、上述した第6の実施形態(位置推定方法の第2の実施形態)において説明したようにして、任意に決定された各仮想的なサイト101〜10Mの位置に対応して観測対象領域が決定される(ステップ325)。そして、ステップ321において、このようにして決定された観測対象領域(図19において破線で囲んで示した)から順次に選択される地点の座標(x、y)に対応して、位相補正値算出部221により、この座標で示される位置に送信端が存在した場合についての位相補正値ψ(x、y)1〜ψ(x、y)Mが算出され(図21に示したステップ321)、ステップ306の処理に供される。
【0110】
このようにして、任意に決定される観測地点においてブランチ200の向きが任意に設定される各仮想的なサイト101〜10Mについて、到来波の位相に付帯する誤差を是正し、これらの仮想的なサイト101〜10Mに共通して到来波を到来せしめる送信端の位置を推定することができる。
このように、各仮想的なサイト101〜10Mの位置およびそこでのブランチ200の向きに完全な自由度を与えたことにより、例えば、観測対象の波動信号が確実に観測できる範囲における地形などの制約にかかわらず、複数の仮想的なサイトからなる観測網を展開することができる。
【0111】
なお、上述した第6乃至第8の実施形態(位置推定方法の第2の実施形態乃至第4の実施形態)において、位置あるいはブランチ200の向きを測定する手順は、ブランチ200の出力信号に基づくサンプリングをサンプリング処理部202が行うのに先立って行われてもよいし、また、当然ながら、このサンプリング処理と並行して実行されてもよい。
また、全ての仮想的なサイトに関する配置情報がそろった段階において、第5の実施形態(位置推定方法の第1の実施形態)において説明したのと同様に、観測対象領域に含まれる全ての座標に対応する位相補正値をまとめて算出して、位相補正レジスタ213に各座標値に対応して格納しておき、各座標値に対応する位相補正値をこの位相補正レジスタ213から読み出して、該当する到来波の位相に関する誤差を是正する処理に供することもできる。
【0112】
また、上述した各実施形態において到来方向を推定するために用いるアルゴリズムとして、上述したMUSICアルゴリズムに代えて、例えば、BeamformerアルゴリズムやCaponアルゴリズム、LPアルゴリズム、Min−Normアルゴリズムなど、波動信号の集合を示すベクトルとモードベクトルとの相互相関の値が最大である方位角θあるいは座標を特定可能なアルゴリズムを適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上に説明したように、本発明にかかわる到来方向推定方法あるいは位置推定方法によれば、単一のブランチを移動させることにより複数の仮想的なサイトからなる観測網を形成し、これらの仮想的なサイトによる観測結果に基づいて、これらの仮想的なサイトに共通して到来する到来波の到来方向あるいはこれらの仮想的なサイトに共通して到来波を到来せしめる送信端の位置を推定することができる。
【0114】
例えば、深宇宙からの電波信号について到来方向を推定する分野では、地球上の対向する表面全域、ひいては、地球を周回する衛星軌道上の各点において、この電波源を見込む方向が同一であることが期待できる。その一方、このような極めて微弱な電波信号を観測可能なハードウェアは一般に高価であるので、このような分野において、単一のブランチの移動によって、複数のサイトによる観測を実現するメリットは極めて大きい。
【0115】
したがって、本発明にかかわる到来方向推定方法は、このような天文関連の技術分野において、非常に高い有用性を発揮すると期待できる。
また、一方、本発明にかかわる位置推定方法では、例えば、違法基地局が設置されていることが疑われる地域や遭難者あるいは漂流物の存在が期待できる地域に応じて、適宜に、探索範囲を設定し、所望の観測位置において観測を実行するという、極めてテンポラリな運用を実現することができる。これにより、建造物が密集している地域においても、違法基地局などの違法電波源が設置されている建物までをも確実に特定することが可能となるので、違法基地局の発見および撤去を確実に進めることが可能となるので、移動通信サービスを維持するための保守作業分野において極めて有用である。
【0116】
もちろん、上述した本発明にかかわる位置推定方法の特徴は、遭難者の救助や漂流物の回収などを迅速に実現する上でも非常に有効である。
また、工場やショッピングモールや遊園地などの施設において、本発明にかかわる位置推定方法を適用すれば、複数の仮想的なサイトを予め決定された適切な場所に配置することにより、屋内に存在する人や物の位置を特定することができ、例えば、工場内での人員の管理やショッピングモール内での入場者の動向の把握などに貢献することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明にかかわる到来方向推定方法の第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図3】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図4】本発明にかかわる到来方向推定方法の第2の実施形態を示す図である。
【図5】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図6】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図7】本発明にかかわる到来方向推定方法の第3の実施形態を示す図である。
【図8】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図9】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図10】本発明にかかわる到来方向推定方法の第4の実施形態を示す図である。
【図11】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図12】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図13】本発明にかかわる位置推定方法の第1の実施形態を示す図である。
【図14】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図15】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図16】本発明にかかわる位置推定方法の第2の実施形態を示す図である。
【図17】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図18】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図19】本発明にかかわる位置推定方法の第3の実施形態を示す図である。
【図20】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図21】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図22】本発明にかかわる位置推定方法の第4の実施形態を示す図である。
【図23】本発明にかかわる信号処理回路の詳細構成を示す図である。
【図24】到来方向推定動作を表す流れ図である。
【図25】空中線系の説明図である。
【符号の説明】
【0118】
10 サイト
11 アレーアンテナ
12 アンテナ素子
13 信号処理回路
200 ブランチ
201 移動体
202 サンプリング処理部
203 位置測定装置
205 向き測定装置
211 配置情報保持部
212 位相補正値算出部
213 位相補正レジスタ
214 到来方向推定処理部
221 位相補正値算出部
222 位置推定処理部
223 観測領域決定部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを位置およびその位置における向きによって示される配置が予め決定されている複数の仮想的なサイトに移動させる移動ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されていた配置と前記送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、前記送信端の方位を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする到来方向推定方法。
【請求項2】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置を任意に変更可能な複数の仮想的なサイトに移動させる移動ステップと、
前記各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、前記ブランチの位置を計測する位置計測ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されていた向きと計測された位置とによって示される配置と前記送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、前記送信端の方位を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする到来方向推定方法。
【請求項3】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、予め位置が決定された複数の仮想的なサイトに任意の向きで移動させる移動ステップと、
前記各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、前記ブランチの向きを計測する向き計測ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されていた位置と計測された向きとによって示される配置と前記送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、前記送信端の方位を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする到来方向推定方法。
【請求項4】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置およびその位置におけるブランチの向きを任意に決定可能な複数の仮想的なサイトに移動させる移動ステップと、
前記各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、前記ブランチの位置および向きを計測する計測ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて計測された位置および向きによって示される配置と前記送信端が位置し得る個々の方向とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる方向として、前記送信端の方位を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする到来方向推定方法。
【請求項5】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを位置およびその位置における向きによって示される配置が予め決定されている複数の仮想的なサイトに移動させる移動ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されている配置と前記送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、前記送信端の位置を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする位置推定方法。
【請求項6】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置を任意に変更可能な複数の仮想的なサイトに移動させる移動ステップと、
前記各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、前記ブランチの位置を計測する計測ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて計測された位置および前記仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されている向きによって示される配置と前記送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、前記送信端の位置を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする位置推定方法。
【請求項7】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、予め位置が決定された複数の仮想的なサイトに任意の向きで移動させる移動ステップと、
前記各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、前記ブランチの向きを計測する向き計測ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについて予め決定されている位置および前記仮想的なサイトそれぞれについて計測された向きによって示される配置と前記送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、前記送信端の位置を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする位置推定方法。
【請求項8】
音波および電磁波を含む波動信号を受信するブランチを、位置およびその位置におけるブランチの向きを任意に決定可能な複数の仮想的なサイトに移動させる移動ステップと、
前記各仮想的なサイトにブランチが移動したときに、前記ブランチの位置および向きを計測する計測ステップと、
前記ブランチが各仮想的なサイトに対応する位置に存在したときに共通の送信端からこのブランチに到来した波動信号にかかわる情報要素からなる集合を示すベクトルを求めるベクトル生成ステップと、
前記共通の送信端から到来した波動信号の位相に付帯する誤差であって、前記仮想的なサイトそれぞれについてそれぞれ計測された位置および向きによって示される配置と前記送信端が位置し得る個々の位置とに対して定まる誤差を、前記波動信号の集合を示すベクトルおよび前記送信端から前記仮想的なサイトに到来すべき波動信号の集合を示すモードベクトルについて是正する処理を施すベクトル補正ステップと、
前記誤差が前記波動信号の集合を示すベクトルについて是正された補正ベクトルと前記誤差が前記モードベクトルについて是正された補正モードベクトルとの相関が最大となる位置として、前記送信端の位置を推定する推定ステップと
を備えたことを特徴とする位置推定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−170865(P2006−170865A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365080(P2004−365080)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】