加熱温度制御装置
【課題】
温度センサのみに頼ることなく加熱用器具の温度を得られるようにして温度検出能力を高めた加熱温度制御装置を提供する。
【解決手段】
整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用調理容器300はキュリー温度を超えて温度上昇すると比透磁率が変化し、この比透磁率の変化に起因して、加熱温度制御装置100では入力電力値および出力電流値も変化する。そこで、これら変化する入力電力値または出力電流値を補正して温度検出値が得られるようにする。これにより、温度センサ以外からも温度検出値が得られるようになり、加熱温度制御装置100の温度検出能力を高めることができる。
温度センサのみに頼ることなく加熱用器具の温度を得られるようにして温度検出能力を高めた加熱温度制御装置を提供する。
【解決手段】
整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用調理容器300はキュリー温度を超えて温度上昇すると比透磁率が変化し、この比透磁率の変化に起因して、加熱温度制御装置100では入力電力値および出力電流値も変化する。そこで、これら変化する入力電力値または出力電流値を補正して温度検出値が得られるようにする。これにより、温度センサ以外からも温度検出値が得られるようになり、加熱温度制御装置100の温度検出能力を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電磁誘導加熱を加熱原理とする加熱温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電磁誘導加熱を加熱原理とし、加熱用器具を所定温度に加熱する加熱温度制御装置が普及の途にある。このような加熱温度制御装置の身近な例として電磁調理器が挙げられる。この電磁調理器に用いられる加熱用器具は、鍋、フライパン、やかん、プレート(以下、本明細書中、これらを総称して加熱用調理容器という。)などであり、これらは、一般的に鉄、鉄ほうろう、ステンレスというような電気抵抗値が大きい材料により作られている。
【0003】
このような加熱用調理容器を電磁調理器に載置した後、電磁調理器の高周波電磁誘導を行う加熱コイル(以下、単に加熱コイルという)から高周波磁界を発生させると、加熱用調理容器に磁束が鎖交し、加熱用調理容器には渦電流が発生する。そして、この渦電流と電気抵抗とによって発生するジュール損により、加熱用調理容器は自己発熱し、加熱用調理容器内の食材・水など(以下、これらを一括して被加熱物という。)を加熱する。
【0004】
次に高周波誘導加熱原理について説明する。電磁調理器の加熱コイルから発生した磁束は、加熱用調理容器のコイル対向面である底部に鎖交する。そして加熱用調理容器の内部では渦電流が発生し、加熱用調理容器の固有抵抗と渦電流とによりジュール損を発生させる。発熱量は次に示す数式1による。
【0005】
[数1]
Pe=K{√(ρ・μ・f)}・(N・I)2
【0006】
なお、数式1における各記号は次の諸量を示している。
Pe:加熱用調理容器の発熱量
K:係数
ρ:加熱用調理容器の固有抵抗
μ:加熱用調理容器の比透磁率
f:加熱コイルの発信周波数
N:加熱コイルの巻数
I:加熱コイルへの出力電流
【0007】
さて、上記の数1に着目すると、加熱用調理容器の固有抵抗ρ・加熱用調理容器の比透磁率μ・加熱コイルの発信周波数f・加熱コイルの巻数N・加熱コイルへの出力電流Iの何れかを変更すれば、加熱用調理容器の発熱量を変更することができる。このような原理による温度制御では、(1)加熱用調理容器による温度制御、および、(2)電磁調理器による温度制御が可能である。以下、(1),(2)について説明する。
【0008】
(1)加熱用調理容器による温度制御
例えば、整磁合金を利用して加熱用調理容器の比透磁率μを変更させて、加熱用調理容器による温度制御が可能である。整磁合金材は、常温からある温度(任意に調整できる)まで一定の磁束密度を持っているが、それ以上の温度の上昇とともに磁束密度が直線的に減少する磁気変態点を持った合金で昔から磁気回路の温度補償用として積算電力計、電圧計、電流計、スピードメーター等に使われている。上記(1)のような発信周波数fまたは加熱コイルへの出力電流Iによる温度制御に以外にも、電磁調理器が関与しない加熱用調理容器の比透磁率μに着目し、加熱力を与えている途中で加熱用調理容器の比透磁率μをいわば自動的に変更するようにした。
このような温度制御についての従来技術は、例えば、特許文献1,2にも開示されている。
【0009】
(2)電磁調理器による温度制御
加熱用調理容器の温度変化に伴って変化する加熱コイルの電流を検出し、その検出結果に応じインバータ等の高周波電源装置を制御して加熱コイルに流す電流の発信周波数fまたは電流値Iを制御することにより、加熱用調理容器を所望の温度にきめ細かく制御するような加熱温度制御装置とする。
このような温度制御についての従来技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0010】
ここに特許文献1の従来技術について概略説明する。図19は加熱用調理容器の説明図であり、図19(a)はA−A断面図、図19(b)は底面図である。図19(a),(b)に示す加熱用調理容器300は、容器母材301及び加熱板302を備えている。被加熱物が収容される容器母材301は、底部301aと、この底部301aの外周部に沿って立設された胴部301bとにより構成される。また、胴部301bの外周面には対向する2箇所の位置に取手301cを備えている。この容器母材301は、アルミニウム、アルミニウム合金や銅等の非磁性金属(比透磁率=1)によって構成される。
【0011】
また、容器母材301の底部301a内側に取り付けられる加熱板302は、略円板状に形成されている。この加熱板302は、鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・クロム(Cr)・コバルト(Co)等を混合した整磁合金である。
この加熱板302の整磁合金は、これら純金属の種類や混合比率、製造方法(加熱温度や、加圧しながら加熱するといった工程の内容も含む)、形状等を変えることで温度依存性磁気変態特性(温度変化に対する比透磁率の特性)を変えることができる。
【0012】
例えば、図示しないが、加熱板302の中央に貫通孔を設けて、加熱板自身の急速加熱を回避する構成や、加熱板302に多数の変形吸収溝を設けて加熱板302と容器母材301との熱膨張率の相違に起因する熱変形を吸収する構成が採用されるが、この際、これら貫通孔を設けることにより、温度依存性磁気変態特性も変化させることもできる。通常は図20(a)で示すような目標温度(キュリー温度)で下降する急峻な温度依存性磁気変態特性が、上記したような形態を採用すると、図20(b)で示すような滑らかで略直線的な特性となる。このような温度依存性磁気変態特性を滑らかな直線にする他の技術は引用文献2でも開示されている。
【0013】
次に、加熱温度制御装置について概略説明する。図21は従来技術の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。図において、401は電磁調理器の入力電流を検出する入力側変流器、402は三相用の整流回路、403は平滑コンデンサである。入力側変流器401による電流検出信号と平滑コンデンサ403の直流電圧検出信号とは乗算器406に入力され、その積はオペアンプ407の一方の入力端子に加えられている。
【0014】
412,413は直列接続されたスイッチング素子であるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のトランジスタであり、これらの直列回路の両端は前記整流回路402の両端に接続されていると共に、共振用コンデンサ404,405の直列回路の両端に接続されている。上記トランジスタ412,413同士の接続点と、コンデンサ404,405同士の接続点との間には、電磁調理器の高周波磁界を発生させる加熱コイル414が接続されている。加熱コイル414の上には図19で図示した加熱用調理容器300が載置されている。
【0015】
加熱コイル414を流れる電流は出力側変流器410により検出され、その電流検出信号はオペアンプ407の他方の入力端子に加えられている。オペアンプ407の出力信号はコンパレータ409の一方の入力端子に加えられており、その他方の入力端子には、加熱用調理容器300の温度を設定する温度設定器408からの設定温度信号が加えられている。コンパレータ409の出力信号は制御回路411に入力され、制御回路411によって生成される駆動パルスがトランジスタ412,413の制御電極(ゲート)に加えられている。上記構成において、トランジスタ412,413及びその制御回路411は高周波電源装置としてのインバータを構成している。
【0016】
次いで、動作を説明する。図21の回路構成において、トランジスタ412,413からなるインバータを制御回路411からの駆動パルスにより高周波駆動することで、コンデンサ404,405及び加熱コイル414からなる直列共振回路が共振し、加熱コイル414に高周波電流I0が流れると共に、この電流による鎖交磁束により加熱用調理容器300の加熱板302に渦電流が流れてジュール損により加熱用調理容器300が加熱される。
【0017】
そして、加熱板302の温度が図22のt1,t2,t3のごとく変化していく場合には、各温度に対応する加熱コイル414の電流(I0)としてi1,i2,i3が出力側変流器410により検出される。加熱板302の温度上昇に伴って入力電力が減少し、出力電流I0が増加するので、出力電流I0と入力電力との比が大きいほど加熱板302の温度が高いことになり、オペアンプ407の出力信号は加熱板302の温度に相当する信号となる。このオペアンプ407の出力信号と温度設定器408の設定温度とをコンパレータ409により比較してその比較結果によりトランジスタ412,413をオン、オフ制御すれば、温度センサを用いることなく加熱板302すなわち加熱用調理容器300の温度を広範囲かつ任意の値に制御することができる。
【0018】
そして、このような加熱用調理容器300が所定の温度を超えた場合、加熱コイル414から見た加熱用調理容器300の全体の比透磁率(μ)が一斉に1にできれば、うず電流を全体に浸透させて以後の発熱が減る(図22のt4の時)ことで加熱用調理容器300を所定の温度に維持することが可能となる。そこで、上記のように加熱用調理容器300の容器母材301を、アルミニウムや銅等のような熱伝達率が大きく比透磁率(μ)が1(非磁性)の材料を使用している。これにより所定の温度以上では容器母材301および加熱板302ともども比透磁率(μ)が1となり、温度上昇の上限を設けることができる。
【0019】
また、加熱板302のインダクタンスLと比透磁率μとの間には、数式2に示す関係がある。
【0020】
[数2]
L=k(μ・A/l)・N2
【0021】
ここで上式の各記号は下記の諸量となる。
L:加熱温度制御装置の出力端子側からみた加熱コイルのインダクタンス
k:長岡係数その他の係数
μ:加熱用調理容器の比透磁率
A:加熱用調理容器の磁路面積
l:加熱用調理容器の磁路長さ
N:加熱コイルの巻き数
【0022】
この数2からも明らかなように、加熱用調理容器の比透磁率の変化によりインダクタンスも変化するため、例えば、図20(a)で示す通常の急峻な温度依存性磁気変態特性では温度上昇時に比透磁率の急激な変化によるインダクタンス変化に起因して出力電流がオーバーシュートを伴うものである。しかしながら、図20(b)で示すような滑らかで略直線状の温度依存性磁気変態特性を有するため、温度上昇時に比透磁率の変化は大きくなく、インダクタンス変化も少なくして出力電流のオーバーシュートを回避できる。これら特性を考慮した上で加熱用調理容器300の温度依存性磁気変態特性が設計される。
【0023】
なお、出力側変流器410やオペアンプ407,コンパレータ409等は、電磁調理器の一般的な制御機能である鍋なし検出(あるいは空検出、小物検出)機能を果たすための構成要素であり、この実施形態では設定手段または感度調節手段として温度設定器408を付加するだけで、広範囲な温度制御が可能な加熱温度制御装置を実現することができる。
従来技術の加熱用調理容器300,加熱温度制御装置400はこのようなものである。
【0024】
【特許文献1】特開2001−155846号公報(段落番号0018〜0036、図1〜図5)
【特許文献2】特開2003−332033号公報(段落番号0011〜0017、図1〜図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
先に示した加熱温度制御装置400は、加熱用調理容器300や加熱温度制御装置400の性能によって、得られる加熱性能も異なるという問題があった。
例えば、加熱用調理容器300も使用目的に応じていろいろな種類の温度依存性磁気変態特性を用いる場合がありうる。
しかしながら、加熱用調理容器300の温度依存性磁気変態特性が変化したような場合、全体的な温度制御が変化して、加熱温度制御装置400が狙い通りの温度制御をできないおそれがある。
【0026】
また、加熱温度制御装置400が温度センサにより加熱用調理容器300の温度を検出して加熱用調理容器300の温度の自動制御を行うような場合、温度センサも経年変化により特性が変化する場合があり、長期間使用するには何らかの対策が必要であった。
【0027】
本発明は、これらのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、温度センサのみに頼ることなく加熱用器具の温度を得られるようにし、加熱用器具が目標温度となるように温度制御を行う加熱温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明の加熱温度制御装置は、
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
記憶部および電力検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を読み出す手段と、
入力電力値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項2に係る発明の加熱温度制御装置は、
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項3に係る発明の加熱温度制御装置は、
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値および出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部、電力検出部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を、および/または、電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値および出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項4に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、加熱用器具に対して温度測定を行って温度検出値を出力する温度センサを有し、
前記運転制御部は、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部に登録する手段を備えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項5に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、温度設定値が入力される温度設定部を有し、
前記運転制御部は、
温度設定部からの温度設定値を読み出す手段と、
温度検出値と温度設定値とを比較し、温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項6に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項5に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
温度検出値が温度設定値を上回った後は一定期間にわたり加熱開始と加熱終了を繰り返すオン・オフ制御により加熱用器具の温度を温度設定値に維持させる手段と、
を備えることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の請求項7に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項6に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
オフ制御終了直前に温度検出値を読み出す手段と、
温度検出値が温度設定値を下回る場合に温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
このような本発明によれば、温度センサのみに頼ることなく加熱用器具の温度を割り出せるようにし、加熱用器具が目標温度となるように温度制御を行う加熱温度制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
続いて、本発明を実施するための最良の形態に係る加熱温度制御装置について、図を参照しつつ以下に説明する。まず、加熱温度制御装置の制御原理から説明する。図1は、加熱温度制御装置における各種入出力特性の説明図である。
先に図21を用いて説明した加熱温度制御装置400を用いて加熱用調理容器300を加熱する場合、加熱時間を横軸に、また、加熱用調理容器300の温度検出値、加熱用調理容器300の比透磁率μ、加熱温度制御装置400への入力電力値、加熱温度制御装置400からの出力電流値をそれぞれ縦軸にとると図1に示したような特性となる。この特性ではキュリー温度(比透磁率μが変化開始する温度)になる時間から比透磁率μが1になるまでの加熱時間中では、比透磁率μの変化に起因して入力電力値、出力電流値も変化する。このとき入力電力値のみ、出力電流値のみ、または、入力電力値および出力電流値を検出すれば、それに対応する温度検出値が判別できる。この特徴を利用して温度制御を図るものであり、通常は温度センサがなくても温度制御を行うことができるようになる。
【0037】
続いて、本形態の加熱温度制御装置の構成及び動作について図を参照しつつ説明する。図2は本形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
図2で示す加熱温度制御装置100は、交流電源入力部11、入力側変流器12、整流回路13、平滑コンデンサ14、乗算器15、トランジスタ16,17、加熱コイル18、コンデンサ19a,19b、温度センサ20、加熱出力調整回路21、記憶部22、温度設定部23、運転制御部24を備えている。電源200はこの加熱温度制御装置100へ単相または三相の電力を供給する。加熱用調理容器300は、本発明の加熱用器具の一具体例であり、より詳細には図19で示すような加熱用調理容器である。この加熱用調理容器300は、周知のように加熱コイル18から発生する高周波磁束により加熱される。
【0038】
交流電源入力部11から供給された単相または三相の交流電力は、整流回路13及び平滑コンデンサ14により整流、平滑される。
入力側変流器12は、加熱温度制御装置100への入力電流を検出し、電流検出信号を出力する。
【0039】
乗算器15は、入力側変流器12による電流検出信号と平滑コンデンサ14の直流電圧検出信号とを乗算し、入力電力信号を出力する。これら入力側変流器12、平滑コンデンサ14および乗算器15は本発明の電力検出部の具体例となる。
トランジスタ16,17は、直列接続されたスイッチング素子であるIGBT等であり、これらの直列回路の両端は整流回路13の両端に接続されている。
加熱コイル18は、一方がトランジスタ16のエミッタとトランジスタ17のコレクタとに接続され,他方が共振コンデンサ19a,19bをそれぞれ介してトランジスタ16のコレクタとトランジスタ17のエミッタとに接続される。
【0040】
温度センサ20は、加熱用調理容器300の温度を検出して、温度検出信号を出力する。この温度センサ20は、最初の初期化運転時のみ使用され、通常加熱運転時は取り外されて使用される。
加熱出力調整回路21は、トランジスタ16,17を、交互にオン・オフさせて加熱コイル18に高周波交流電流を流すように運転制御を行う。
【0041】
記憶部22は、データを読み書きできるようになされている。
温度設定部23は、操作者が所望の温度となるように操作して温度設定が可能となっている。なお、電磁調理器の場合は、とろ火・弱火・中火・強火というような温度以外の概念で表すようにしても良い。この場合、対応する温度により温度設定がなされる。本形態で以下に説明する温度とは、これらの概念を含めるものである。
運転制御部24は、記憶部22、温度設定部23および電力検出部の乗算器15と接続される。この運転制御部24は後述するような各種制御を行う。
【0042】
続いて温度検出原理について図を参照しつつ説明する。図3は温度検出原理の説明図である。加熱用調理容器300の温度検出値が上昇すると、入力電力値も変化する。この場合、ある入力電力値に対してある温度検出値が一意に対応する。そこで、入力電力値を検出することで対応する加熱用調理容器300の温度である温度検出値を割り出す。
これを直感的に理解しやすく表現すれば、図3で示すように入力電力逆数値に一体一で対応する補正値を登録しておき、検出した入力電力逆数値に応じて補正値を読み出して温度検出値を割り出すものということができる。入力電力値では補正に引算が必要になるが、この入力電力逆数値を採用することで全て足し算による補正とすることができる。
【0043】
続いて、運転制御部24による運転制御について図を参照しつつ説明する。まず、初期登録を行う。図4は初期登録のフローチャートである。
まず、加熱用調理容器300を載置し、さらに温度センサ20を周辺に配置する。この状態で加熱開始し、初期登録を開始する。まず、運転制御部24は、加熱用調理容器300を上限温度まで加熱し続け、その間中で入力電力値と温度検出値とを入力して蓄積する(図4のステップS1)。これはある時間において同時に検出した入力電力値と温度検出値とがそれぞれ関連付けられた状態で蓄積される。そして、所定時間毎に多数蓄積されていく。そして加熱終了後にこれら入力電力値と温度検出値とを関連付けて記憶部22に登録する(図4のステップS2)。これにより初期登録が完了する。
【0044】
続いて、所定温度への制御について説明する。図5は温度制御のフローチャートである。予め初期登録が完了している加熱用調理容器300を載置する。この場合温度センサ20は使用されないため周辺に配置する必要はなく、例えば収容箇所内に収容したりする。
次に操作者は、温度設定部23を操作して所望の温度を設定する。温度設定部23での操作により、運転制御部24は温度設定値を算出し、図示しない内部メモリなどに記憶させる。なお、温度設定値は温度設定可能範囲内にあるように設定される。この設定可能範囲は比透磁率μが変化して入力電力値が変化する範囲である。この状態で加熱開始し、設定された所定温度を維持するように加熱する。
【0045】
運転制御部24は温度設定値を読み出す(図5のステップS11)。続いて運転制御部24は、運転指令信号を加熱出力調整回路21へ出力する(図5のステップS12)。加熱出力調整回路21は、次の停止指令信号が入力されるまではトランジスタ16,17のベース(IGBTならゲート)に交互に運転信号を入力して、加熱コイル18に高周波信号を入力して加熱する。
【0046】
乗算器15からの入力電力信号をA/D変換して入力電力値を読み出す(図5のステップS13)。この入力電力値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図5のステップS14)。
温度設定値と温度検出値を比較し(図5のステップS15)、温度設定値>温度検出値を満たすならば(図5のステップS15でYES)、まだ温度が上昇途中であるため、ステップS13の先頭に戻り、以下同様にステップS13〜S15を繰り返す。この繰り返しが続く間は加熱用調理容器300の温度が上昇していき、キュリー温度までは上昇が続く。なお、キュリー温度までは比透磁率の変化がなく、入力電力値にも変化はない。
【0047】
加熱が進みキュリー温度付近にくると比透磁率が減少開始して入力電力値も変化し始め、温度検出値も大きくなってくる。このような状況下ステップS13〜S15が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図5のステップS15でNO)、ステップS16に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0048】
続いて、設定した温度を維持する制御について説明する。図6は温度維持を説明する説明図である。温度維持のため、運転制御部24は所定期間毎に強制的に運転指令信号と停止指令信号とを交互に出力する。この場合、先に説明した入力電力逆数値を見ると、図6で示すように、入力電力逆数値もパルス状になる。この際、パルスがある期間では温度検出値も上昇し、パルスがない期間では温度検出値も下降する。このようなオン・オフ制御により温度を一定に維持する。なお、温度検出値が温度設定値に到達しない、つまり、パルス状の入力電力逆数値が温度設定該当逆数値に到達しない場合には加熱を維持する制御を行う。
【0049】
このような温度維持の制御について説明する。図7は温度維持制御のフローチャートである。このフローはタイマにより所定期間毎に開始される処理である。まず、運転指令信号を出力する(図7のステップS21)。そして所定期間経過運転を行わせる(図7のステップS22)。所定期間経過後に入力電力値を読み出し(図7のステップS23)、この入力電力値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出して(図7のステップS24)、 温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図7のステップS25でNO)、ステップS26に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する(図7のステップS26)。これにより加熱が終了することとなる。以下、所定期間毎に同様の処理を行ってオン・オフ制御を行うこととなる。
【0050】
なお、温度設定値>温度検出値である、つまり温度設定値を超えなかった場合には(図7のステップS25でYES)、停止指令を発することなく運転を続け、ステップS23〜S25にて監視を続け、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図7のステップS25でNO)、運転制御部24は停止指令信号を出力する(図7のステップS26)。これにより加熱が終了することとなる。この場合、長期間となっても加熱を継続して行うことで、温度を維持する。
【0051】
図8は、このような温度制御を行った場合の温度の挙動を説明する説明図である。まず、連続運転で直線的に温度上昇していき、設定温度に到達してからは設定温度で温度上昇、温度下降を繰り返しながら、設定温度を維持する。なお、このオン・オフ制御は図をわかりやすくするため大幅な温度上昇・温度下降を繰り返しているが、実際は殆ど設定温度と同じ温度を維持する。
【0052】
続いて、本発明の他の形態について図を参照しつつ説明する。図9は、他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。図9で示す加熱温度制御装置100’は、交流電源入力部11、整流回路13、平滑コンデンサ14、トランジスタ16,17、加熱コイル18、コンデンサ19a,19b、温度センサ20、加熱出力調整回路21、記憶部22、温度設定部23、運転制御部24、出力側変流器25を備えている。加熱用調理容器300は、前記同様に図19で示すような加熱用調理容器である。
この形態では先に図2を用いて説明した加熱温度制御装置100と比較すると、入力側変流器12および乗算器15を取り去って代わりに出力側変流器25を取付けた以外は先の形態と同じである。共通する構成の説明は同じ符号を付すとともに先の説明と同じとして省略する。出力側変流器25は、本発明の電流検出部の具体例であり、加熱コイル18へ入力される電流に応じて出力電流信号を出力する。
運転制御部24は、記憶部22、温度設定部23および出力側変流器25と接続される。この運転制御部24は後述するような各種制御を行う。
【0053】
続いて温度検出原理について図を参照しつつ説明する。図10は温度検出原理の説明図である。加熱用調理容器300の温度検出値が上昇すると、出力電流値も変化する。この場合、ある出力電流値に対してある温度検出値が一意に対応する。そこで、出力電流値を検出することで対応する加熱用調理容器300の温度である温度検出値を割り出す。
これを直感的に理解しやすく表現すれば、図10で示すように出力電流値に一体一で対応する補正値を登録しておき、検出した出力電流値に応じて補正値を読み出して温度検出値を割り出すものということができる。
【0054】
続いて、運転制御部24による運転制御について図を参照しつつ説明する。まず、初期登録を行う。図11は初期登録のフローチャートである。
まず、加熱用調理容器300を載置し、さらに温度センサ20を周辺に配置する。この状態で加熱開始し、初期登録を開始する。まず、運転制御部24は、加熱用調理容器300を上限温度まで加熱し続け、その間中で出力電流値と温度検出値とを入力して蓄積する(図11のステップS31)。同時に検出した出力電流値と温度検出値とがそれぞれ関連付けられた状態で蓄積される。所定時間毎に多数蓄積されていく。そして加熱終了後にこれら出力電流値と温度検出値とを関連付けて記憶部22に登録する(図11のステップS32)。出力電流値が判別できれば温度検出値を読み出すことができる。これにより初期登録が完了する。
【0055】
続いて、所定温度への制御について説明する。図12は温度制御のフローチャートである。予め初期登録が完了している加熱用調理容器300を載置する。この場合温度センサ20は使用されないため周辺に配置する必要はなく、例えば、収容箇所内に収容したりする。
次に操作者は、温度設定部23を操作して所望の温度を設定する。温度設定部23での操作により、運転制御部24は温度設定値を算出し、図示しない内部メモリなどに記憶させる。この状態で加熱開始し、設定された所定温度を維持するように加熱する。なお、温度設定値は温度設定可能範囲内にあるように設定される。この設定可能範囲は比透磁率μが変化して出力電流値が変化する範囲である。
【0056】
運転制御部24は温度設定値を読み出す(図12のステップS41)。続いて運転制御部24は、運転指令信号を加熱出力調整回路21へ出力する(図12のステップS42)。加熱出力調整回路21は、次の停止指令信号が入力されるまではトランジスタ16,17のベース(IGBTならゲート)に交互に運転信号を入力して、加熱コイル18に高周波信号を入力して加熱する。
【0057】
出力側変流器25からの出力電流信号をA/D変換して出力電流値を読み出す(図12のステップS43)。この出力電流値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図12のステップS44)。
温度設定値と温度検出値を比較し(図12のステップS45)、温度設定値>温度検出値を満たすならば(図12のステップS45でYES)、まだ温度が上昇途中であるため、ステップS43の先頭に戻り、以下同様にステップS43〜S45を繰り返す。この繰り返しが続く間は加熱用調理容器300の温度が上昇していき、キュリー温度までは上昇が続く。なお、キュリー温度までは比透磁率の変化がなく、出力電流値にも変化はない。
【0058】
加熱が進みキュリー温度付近にくると比透磁率μが減少開始して出力電流値も変化し始め、温度検出値も大きくなってくる。このような状況下ステップS43〜S45が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図12のステップS45でNO)、ステップS46に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0059】
続いて、設定した温度を維持する制御について説明する。図13は温度維持を説明する説明図である。温度維持のため、所定期間毎に強制的に運転指令信号を入力する。この場合、図13で示すように、出力電流値もパルス状になる。この際、パルスがある期間では温度検出値も上昇し、パルスがない期間では温度検出値も下降する。このようなオン・オフ制御により温度を一定に維持する。なお、温度検出値が温度設定値に到達しない、つまり、パルス状の出力電流値が温度設定該当電流値に到達しない場合には加熱を維持する制御を行う。
【0060】
このような温度維持の制御について説明する。図14は温度維持制御のフローチャートである。このフローはタイマにより所定期間毎に開始される処理である。まず、運転指令信号を出力する(図14のステップS51)。そして所定期間経過運転を行わせる(図14のステップS52)。所定期間経過後に出力電流値を読み出し(図14のステップS53)、この出力電流値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出して(図14のステップS54)、 温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図14のステップS55でNO)、ステップS56に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する(図14のステップS56)。これにより加熱が終了することとなる。以下、所定期間毎に同様の処理を行ってオン・オフ制御を行うこととなる。
【0061】
なお、温度設定値>温度検出値である、つまり温度設定値を超えなかった場合には(図14のステップS55でYES)、停止指令を発することなく運転を続け、ステップS53〜S55にて監視を続け、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図14のステップS55でNO)、運転制御部24は停止指令信号を出力する(図14のステップS56)。これにより加熱が終了することとなる。この場合、長期間となっても加熱を継続して行うことで、温度を維持する。
このような加熱温度制御装置100’によれば、先に図8で示したような温度の挙動を取ることとなる。
【0062】
続いて、本発明の他の形態について図を参照しつつ説明する。図15は、他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
図15で示す加熱温度制御装置100”は、交流電源入力部11、入力側変流器12、整流回路13、平滑コンデンサ14、トランジスタ16,17、加熱コイル18、コンデンサ19a,19b、温度センサ20、加熱出力調整回路21、記憶部22、温度設定部23、運転制御部24、出力側変流器25を備えている。加熱用調理容器300は、前記同様に図19で示すような加熱用調理容器である。
【0063】
この形態では先に図2,図9を用いて説明した加熱温度制御装置100,100’と比較すると、入力側変流器12、平滑コンデンサ14および乗算器15からなる電力検出部、および、出力側変流器25からなる電流検出部を共に備えるものであり、同じ符号を付すとともに共通する構成の説明は省略する。
運転制御部24は、記憶部22、温度設定部23、乗算器14および出力側変流器25と接続される。この運転制御部24は後述するような各種制御を行う。
【0064】
温度検出原理は、加熱用調理容器300の温度検出値が上昇すると、入力電力値および出力電流値も変化する。この場合、ある入力電力値および出力電流値に対してある温度検出値が一意に対応する。そこで、入力電力値および出力電流値を検出することで対応する加熱用調理容器300の温度である温度検出値を割り出す。
なお、本形態では、特に低温部分は出力電流検出により、また、高温部は入力電力検出によることとして、わずかの温度特性変化もとらえることができるようにし、温度制御の温度範囲を広くするものである。従って、所定の検出切り換え温度に該当する出力電流値に到達した場合に出力電流検出から入力電力検出へ切り換えるものである。なお、設定温度が検出切り換え温度よりも低い場合には検出が切り替わらないこともある。
【0065】
続いて、運転制御部24による運転制御について図を参照しつつ説明する。まず、初期登録を行う。図16は初期登録のフローチャートである。
まず、加熱用調理容器300を載置し、さらに温度センサ20を周辺に配置する。この状態で加熱開始し、初期登録を開始する。まず、運転制御部24は、加熱用調理容器300を上限温度まで加熱し続け、その間中で入力電力値、出力電流値および温度検出値を入力して蓄積する(図16のステップS61)。同時に検出した入力電力値、出力電流値および温度検出値が関連付けられた状態で蓄積される。所定時間毎に多数蓄積されていく。そして加熱終了後にこれら入力電力値、出力電流値および温度検出値を関連付けて記憶部22に登録する(図16のステップS62)。入力電力値または出力電流値が判別できれば温度検出値を読み出すことができる。これにより初期登録が完了する。
【0066】
続いて、所定温度への制御について説明する。図17は温度制御のフローチャートである。予め初期登録が完了している加熱用調理容器300を載置する。この場合温度センサ20は使用されないため周辺に配置する必要はなく、例えば、収容箇所内に収容したりする。
次に操作者は、温度設定部23を操作して所望の温度を設定する。温度設定部23での操作により、運転制御部24は温度設定値を算出し、図示しない内部メモリなどに記憶させる。この状態で加熱開始し、設定された所定温度を維持するように加熱する。なお、温度設定値は温度設定可能範囲内にあるように設定される。この設定可能範囲は比透磁率μが変化して入力電力値または出力電力値が変化する範囲である。
【0067】
運転制御部24は温度設定値を読み出す(図17のステップS71)。続いて運転制御部24は、運転指令信号を加熱出力調整回路21へ出力する(図17のステップS72)。加熱出力調整回路21は、次の停止指令信号が入力されるまではトランジスタ16,17のベース(IGBTならゲート)に交互に運転信号を入力して、加熱コイル18に高周波信号を入力して加熱する。
【0068】
最初は出力側変流器25からの出力電流信号をそれぞれA/D変換して出力電流値を読み出す(図17のステップS73)。この出力電流値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図17のステップS74)。
温度設定値と温度検出値を比較し(図17のステップS75)、温度設定値>温度検出値を満たすならば(図17のステップS75でYES)、まだ温度が上昇途中であるため、ステップS73の先頭に戻り、以下同様にステップS73〜S75を繰り返す。この繰り返しが続く間は加熱用調理容器300の温度が上昇していき、キュリー温度までは上昇が続く。なお、キュリー温度までは比透磁率の変化がなく、入力電力値および出力電流値にも変化はない。
【0069】
加熱が進みキュリー温度付近にくると比透磁率が減少開始して出力電流値も変化し始め、温度検出値も大きくなってくる。このような状況下、ステップS73〜S75が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図17のステップS75でNO)、ステップS76に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0070】
なお、温度設定値によっては、ステップS73〜S75が繰り返されている途中で出力電流検出から入力電力検出に切り替わる。この場合、途中から乗算器14からの入力電力信号をそれぞれA/D変換して入力電力値を読み出す(図17のステップS73)。この入力電力値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図17のステップS74)。このような状況下ステップS73〜S75が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図17のステップS75でNO)、ステップS76に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0071】
次の温度維持の制御について説明する。図18は温度維持制御のフローチャートである。このフローはタイマにより所定期間毎に開始される処理である。まず、運転指令信号を出力する(図18のステップS81)。そして所定期間経過運転を行わせる(図18のステップS82)。所定期間経過後に出力電流値(または入力電力値)を読み出し(図18のステップS83)、この出力電流値(または入力電力値)に対応する温度検出値を記憶部22から読み出して(図18のステップS84)、 温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図18のステップS85でNO)、ステップS86に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する(図18のステップS86)。これにより加熱が終了することとなる。以下、所定期間毎に同様の処理を行ってオン・オフ制御を行うこととなる。
【0072】
なお、温度設定値>温度検出値である、つまり温度設定値を超えなかった場合には(図18のステップS85でYES)、停止指令を発することなく運転を続け、ステップS83〜S85にて監視を続け、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図18のステップS85でNO)、運転制御部24は停止指令信号を出力する(図18のステップS86)。これにより加熱が終了することとなる。この場合、長期間となっても加熱を継続して行うことで、温度を維持する。
このような加熱温度制御装置100”によれば、先に図8で示したような温度の挙動を取ることとなる。
【0073】
以上述べた本発明によれば、目的とする温度設定値とする具体的な制御方法が確立したことでセンサレスに高精度な温度調整が可能になった。これにより、温度確定調整作業が極めて簡易化される。
また本制御方式によれば整磁合金体の温度依存性磁気変態特性曲線が本来の鋭敏さを持っていても低温部分は出力電流検出により高温部は入力電力検出によることでわずかの温度特性変化もとらえることができるため一般的な整磁合金応用被加熱体であっても温度制御の範囲は非常に広くとれるようになった。
更に合金の比透磁率(μ)の変化が緩やかになれば温度制御の範囲は更に広がり電磁誘導加熱器の出力電流もゆっくり変化するため電流の制御が容易になることで破損からの保護が簡単にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】加熱温度制御装置における各種入出力特性の説明図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図3】温度検出原理の説明図である。
【図4】初期登録のフローチャートである。
【図5】温度制御のフローチャートである。
【図6】温度維持を説明する説明図である。
【図7】温度維持制御のフローチャートである。
【図8】温度制御を行った場合の温度の挙動を説明する説明図である。
【図9】他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図10】温度検出原理の説明図である。
【図11】初期登録のフローチャートである。
【図12】温度制御のフローチャートである。
【図13】温度維持を説明する説明図である。
【図14】温度維持制御のフローチャートである。
【図15】他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図16】初期登録のフローチャートである。
【図17】温度制御のフローチャートである。
【図18】温度維持制御のフローチャートである。
【図19】加熱用調理容器の説明図であり、図19(a)はA−A断面図、図19(b)は底面図である。
【図20】整磁合金の温度依存性磁気変態特性図であり、図20(a)は急峻な温度依存性磁気変態特性図、図20(b)はなめらかな温度依存性磁気変態特性図である。
【図21】従来技術の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図22】温度に対する温度依存性磁気変態特性および電流特性を表す図である。
【符号の説明】
【0075】
100:加熱温度制御装置
11:交流電源入力部
12:入力側変流器
13:整流回路
14:平滑コンデンサ
15:乗算器
16,17:トランジスタ
18:加熱コイル
19a,19b:コンデンサ
20:温度センサ
21:加熱出力調整回路
22:記憶部
23:温度設定部
24:運転制御部
25:出力側変流器
300:加熱用調理容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電磁誘導加熱を加熱原理とする加熱温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電磁誘導加熱を加熱原理とし、加熱用器具を所定温度に加熱する加熱温度制御装置が普及の途にある。このような加熱温度制御装置の身近な例として電磁調理器が挙げられる。この電磁調理器に用いられる加熱用器具は、鍋、フライパン、やかん、プレート(以下、本明細書中、これらを総称して加熱用調理容器という。)などであり、これらは、一般的に鉄、鉄ほうろう、ステンレスというような電気抵抗値が大きい材料により作られている。
【0003】
このような加熱用調理容器を電磁調理器に載置した後、電磁調理器の高周波電磁誘導を行う加熱コイル(以下、単に加熱コイルという)から高周波磁界を発生させると、加熱用調理容器に磁束が鎖交し、加熱用調理容器には渦電流が発生する。そして、この渦電流と電気抵抗とによって発生するジュール損により、加熱用調理容器は自己発熱し、加熱用調理容器内の食材・水など(以下、これらを一括して被加熱物という。)を加熱する。
【0004】
次に高周波誘導加熱原理について説明する。電磁調理器の加熱コイルから発生した磁束は、加熱用調理容器のコイル対向面である底部に鎖交する。そして加熱用調理容器の内部では渦電流が発生し、加熱用調理容器の固有抵抗と渦電流とによりジュール損を発生させる。発熱量は次に示す数式1による。
【0005】
[数1]
Pe=K{√(ρ・μ・f)}・(N・I)2
【0006】
なお、数式1における各記号は次の諸量を示している。
Pe:加熱用調理容器の発熱量
K:係数
ρ:加熱用調理容器の固有抵抗
μ:加熱用調理容器の比透磁率
f:加熱コイルの発信周波数
N:加熱コイルの巻数
I:加熱コイルへの出力電流
【0007】
さて、上記の数1に着目すると、加熱用調理容器の固有抵抗ρ・加熱用調理容器の比透磁率μ・加熱コイルの発信周波数f・加熱コイルの巻数N・加熱コイルへの出力電流Iの何れかを変更すれば、加熱用調理容器の発熱量を変更することができる。このような原理による温度制御では、(1)加熱用調理容器による温度制御、および、(2)電磁調理器による温度制御が可能である。以下、(1),(2)について説明する。
【0008】
(1)加熱用調理容器による温度制御
例えば、整磁合金を利用して加熱用調理容器の比透磁率μを変更させて、加熱用調理容器による温度制御が可能である。整磁合金材は、常温からある温度(任意に調整できる)まで一定の磁束密度を持っているが、それ以上の温度の上昇とともに磁束密度が直線的に減少する磁気変態点を持った合金で昔から磁気回路の温度補償用として積算電力計、電圧計、電流計、スピードメーター等に使われている。上記(1)のような発信周波数fまたは加熱コイルへの出力電流Iによる温度制御に以外にも、電磁調理器が関与しない加熱用調理容器の比透磁率μに着目し、加熱力を与えている途中で加熱用調理容器の比透磁率μをいわば自動的に変更するようにした。
このような温度制御についての従来技術は、例えば、特許文献1,2にも開示されている。
【0009】
(2)電磁調理器による温度制御
加熱用調理容器の温度変化に伴って変化する加熱コイルの電流を検出し、その検出結果に応じインバータ等の高周波電源装置を制御して加熱コイルに流す電流の発信周波数fまたは電流値Iを制御することにより、加熱用調理容器を所望の温度にきめ細かく制御するような加熱温度制御装置とする。
このような温度制御についての従来技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0010】
ここに特許文献1の従来技術について概略説明する。図19は加熱用調理容器の説明図であり、図19(a)はA−A断面図、図19(b)は底面図である。図19(a),(b)に示す加熱用調理容器300は、容器母材301及び加熱板302を備えている。被加熱物が収容される容器母材301は、底部301aと、この底部301aの外周部に沿って立設された胴部301bとにより構成される。また、胴部301bの外周面には対向する2箇所の位置に取手301cを備えている。この容器母材301は、アルミニウム、アルミニウム合金や銅等の非磁性金属(比透磁率=1)によって構成される。
【0011】
また、容器母材301の底部301a内側に取り付けられる加熱板302は、略円板状に形成されている。この加熱板302は、鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・クロム(Cr)・コバルト(Co)等を混合した整磁合金である。
この加熱板302の整磁合金は、これら純金属の種類や混合比率、製造方法(加熱温度や、加圧しながら加熱するといった工程の内容も含む)、形状等を変えることで温度依存性磁気変態特性(温度変化に対する比透磁率の特性)を変えることができる。
【0012】
例えば、図示しないが、加熱板302の中央に貫通孔を設けて、加熱板自身の急速加熱を回避する構成や、加熱板302に多数の変形吸収溝を設けて加熱板302と容器母材301との熱膨張率の相違に起因する熱変形を吸収する構成が採用されるが、この際、これら貫通孔を設けることにより、温度依存性磁気変態特性も変化させることもできる。通常は図20(a)で示すような目標温度(キュリー温度)で下降する急峻な温度依存性磁気変態特性が、上記したような形態を採用すると、図20(b)で示すような滑らかで略直線的な特性となる。このような温度依存性磁気変態特性を滑らかな直線にする他の技術は引用文献2でも開示されている。
【0013】
次に、加熱温度制御装置について概略説明する。図21は従来技術の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。図において、401は電磁調理器の入力電流を検出する入力側変流器、402は三相用の整流回路、403は平滑コンデンサである。入力側変流器401による電流検出信号と平滑コンデンサ403の直流電圧検出信号とは乗算器406に入力され、その積はオペアンプ407の一方の入力端子に加えられている。
【0014】
412,413は直列接続されたスイッチング素子であるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のトランジスタであり、これらの直列回路の両端は前記整流回路402の両端に接続されていると共に、共振用コンデンサ404,405の直列回路の両端に接続されている。上記トランジスタ412,413同士の接続点と、コンデンサ404,405同士の接続点との間には、電磁調理器の高周波磁界を発生させる加熱コイル414が接続されている。加熱コイル414の上には図19で図示した加熱用調理容器300が載置されている。
【0015】
加熱コイル414を流れる電流は出力側変流器410により検出され、その電流検出信号はオペアンプ407の他方の入力端子に加えられている。オペアンプ407の出力信号はコンパレータ409の一方の入力端子に加えられており、その他方の入力端子には、加熱用調理容器300の温度を設定する温度設定器408からの設定温度信号が加えられている。コンパレータ409の出力信号は制御回路411に入力され、制御回路411によって生成される駆動パルスがトランジスタ412,413の制御電極(ゲート)に加えられている。上記構成において、トランジスタ412,413及びその制御回路411は高周波電源装置としてのインバータを構成している。
【0016】
次いで、動作を説明する。図21の回路構成において、トランジスタ412,413からなるインバータを制御回路411からの駆動パルスにより高周波駆動することで、コンデンサ404,405及び加熱コイル414からなる直列共振回路が共振し、加熱コイル414に高周波電流I0が流れると共に、この電流による鎖交磁束により加熱用調理容器300の加熱板302に渦電流が流れてジュール損により加熱用調理容器300が加熱される。
【0017】
そして、加熱板302の温度が図22のt1,t2,t3のごとく変化していく場合には、各温度に対応する加熱コイル414の電流(I0)としてi1,i2,i3が出力側変流器410により検出される。加熱板302の温度上昇に伴って入力電力が減少し、出力電流I0が増加するので、出力電流I0と入力電力との比が大きいほど加熱板302の温度が高いことになり、オペアンプ407の出力信号は加熱板302の温度に相当する信号となる。このオペアンプ407の出力信号と温度設定器408の設定温度とをコンパレータ409により比較してその比較結果によりトランジスタ412,413をオン、オフ制御すれば、温度センサを用いることなく加熱板302すなわち加熱用調理容器300の温度を広範囲かつ任意の値に制御することができる。
【0018】
そして、このような加熱用調理容器300が所定の温度を超えた場合、加熱コイル414から見た加熱用調理容器300の全体の比透磁率(μ)が一斉に1にできれば、うず電流を全体に浸透させて以後の発熱が減る(図22のt4の時)ことで加熱用調理容器300を所定の温度に維持することが可能となる。そこで、上記のように加熱用調理容器300の容器母材301を、アルミニウムや銅等のような熱伝達率が大きく比透磁率(μ)が1(非磁性)の材料を使用している。これにより所定の温度以上では容器母材301および加熱板302ともども比透磁率(μ)が1となり、温度上昇の上限を設けることができる。
【0019】
また、加熱板302のインダクタンスLと比透磁率μとの間には、数式2に示す関係がある。
【0020】
[数2]
L=k(μ・A/l)・N2
【0021】
ここで上式の各記号は下記の諸量となる。
L:加熱温度制御装置の出力端子側からみた加熱コイルのインダクタンス
k:長岡係数その他の係数
μ:加熱用調理容器の比透磁率
A:加熱用調理容器の磁路面積
l:加熱用調理容器の磁路長さ
N:加熱コイルの巻き数
【0022】
この数2からも明らかなように、加熱用調理容器の比透磁率の変化によりインダクタンスも変化するため、例えば、図20(a)で示す通常の急峻な温度依存性磁気変態特性では温度上昇時に比透磁率の急激な変化によるインダクタンス変化に起因して出力電流がオーバーシュートを伴うものである。しかしながら、図20(b)で示すような滑らかで略直線状の温度依存性磁気変態特性を有するため、温度上昇時に比透磁率の変化は大きくなく、インダクタンス変化も少なくして出力電流のオーバーシュートを回避できる。これら特性を考慮した上で加熱用調理容器300の温度依存性磁気変態特性が設計される。
【0023】
なお、出力側変流器410やオペアンプ407,コンパレータ409等は、電磁調理器の一般的な制御機能である鍋なし検出(あるいは空検出、小物検出)機能を果たすための構成要素であり、この実施形態では設定手段または感度調節手段として温度設定器408を付加するだけで、広範囲な温度制御が可能な加熱温度制御装置を実現することができる。
従来技術の加熱用調理容器300,加熱温度制御装置400はこのようなものである。
【0024】
【特許文献1】特開2001−155846号公報(段落番号0018〜0036、図1〜図5)
【特許文献2】特開2003−332033号公報(段落番号0011〜0017、図1〜図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
先に示した加熱温度制御装置400は、加熱用調理容器300や加熱温度制御装置400の性能によって、得られる加熱性能も異なるという問題があった。
例えば、加熱用調理容器300も使用目的に応じていろいろな種類の温度依存性磁気変態特性を用いる場合がありうる。
しかしながら、加熱用調理容器300の温度依存性磁気変態特性が変化したような場合、全体的な温度制御が変化して、加熱温度制御装置400が狙い通りの温度制御をできないおそれがある。
【0026】
また、加熱温度制御装置400が温度センサにより加熱用調理容器300の温度を検出して加熱用調理容器300の温度の自動制御を行うような場合、温度センサも経年変化により特性が変化する場合があり、長期間使用するには何らかの対策が必要であった。
【0027】
本発明は、これらのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、温度センサのみに頼ることなく加熱用器具の温度を得られるようにし、加熱用器具が目標温度となるように温度制御を行う加熱温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明の加熱温度制御装置は、
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
記憶部および電力検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を読み出す手段と、
入力電力値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項2に係る発明の加熱温度制御装置は、
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項3に係る発明の加熱温度制御装置は、
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値および出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部、電力検出部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を、および/または、電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値および出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項4に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、加熱用器具に対して温度測定を行って温度検出値を出力する温度センサを有し、
前記運転制御部は、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部に登録する手段を備えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項5に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、温度設定値が入力される温度設定部を有し、
前記運転制御部は、
温度設定部からの温度設定値を読み出す手段と、
温度検出値と温度設定値とを比較し、温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項6に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項5に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
温度検出値が温度設定値を上回った後は一定期間にわたり加熱開始と加熱終了を繰り返すオン・オフ制御により加熱用器具の温度を温度設定値に維持させる手段と、
を備えることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の請求項7に係る発明の加熱温度制御装置は、
請求項6に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
オフ制御終了直前に温度検出値を読み出す手段と、
温度検出値が温度設定値を下回る場合に温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
このような本発明によれば、温度センサのみに頼ることなく加熱用器具の温度を割り出せるようにし、加熱用器具が目標温度となるように温度制御を行う加熱温度制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
続いて、本発明を実施するための最良の形態に係る加熱温度制御装置について、図を参照しつつ以下に説明する。まず、加熱温度制御装置の制御原理から説明する。図1は、加熱温度制御装置における各種入出力特性の説明図である。
先に図21を用いて説明した加熱温度制御装置400を用いて加熱用調理容器300を加熱する場合、加熱時間を横軸に、また、加熱用調理容器300の温度検出値、加熱用調理容器300の比透磁率μ、加熱温度制御装置400への入力電力値、加熱温度制御装置400からの出力電流値をそれぞれ縦軸にとると図1に示したような特性となる。この特性ではキュリー温度(比透磁率μが変化開始する温度)になる時間から比透磁率μが1になるまでの加熱時間中では、比透磁率μの変化に起因して入力電力値、出力電流値も変化する。このとき入力電力値のみ、出力電流値のみ、または、入力電力値および出力電流値を検出すれば、それに対応する温度検出値が判別できる。この特徴を利用して温度制御を図るものであり、通常は温度センサがなくても温度制御を行うことができるようになる。
【0037】
続いて、本形態の加熱温度制御装置の構成及び動作について図を参照しつつ説明する。図2は本形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
図2で示す加熱温度制御装置100は、交流電源入力部11、入力側変流器12、整流回路13、平滑コンデンサ14、乗算器15、トランジスタ16,17、加熱コイル18、コンデンサ19a,19b、温度センサ20、加熱出力調整回路21、記憶部22、温度設定部23、運転制御部24を備えている。電源200はこの加熱温度制御装置100へ単相または三相の電力を供給する。加熱用調理容器300は、本発明の加熱用器具の一具体例であり、より詳細には図19で示すような加熱用調理容器である。この加熱用調理容器300は、周知のように加熱コイル18から発生する高周波磁束により加熱される。
【0038】
交流電源入力部11から供給された単相または三相の交流電力は、整流回路13及び平滑コンデンサ14により整流、平滑される。
入力側変流器12は、加熱温度制御装置100への入力電流を検出し、電流検出信号を出力する。
【0039】
乗算器15は、入力側変流器12による電流検出信号と平滑コンデンサ14の直流電圧検出信号とを乗算し、入力電力信号を出力する。これら入力側変流器12、平滑コンデンサ14および乗算器15は本発明の電力検出部の具体例となる。
トランジスタ16,17は、直列接続されたスイッチング素子であるIGBT等であり、これらの直列回路の両端は整流回路13の両端に接続されている。
加熱コイル18は、一方がトランジスタ16のエミッタとトランジスタ17のコレクタとに接続され,他方が共振コンデンサ19a,19bをそれぞれ介してトランジスタ16のコレクタとトランジスタ17のエミッタとに接続される。
【0040】
温度センサ20は、加熱用調理容器300の温度を検出して、温度検出信号を出力する。この温度センサ20は、最初の初期化運転時のみ使用され、通常加熱運転時は取り外されて使用される。
加熱出力調整回路21は、トランジスタ16,17を、交互にオン・オフさせて加熱コイル18に高周波交流電流を流すように運転制御を行う。
【0041】
記憶部22は、データを読み書きできるようになされている。
温度設定部23は、操作者が所望の温度となるように操作して温度設定が可能となっている。なお、電磁調理器の場合は、とろ火・弱火・中火・強火というような温度以外の概念で表すようにしても良い。この場合、対応する温度により温度設定がなされる。本形態で以下に説明する温度とは、これらの概念を含めるものである。
運転制御部24は、記憶部22、温度設定部23および電力検出部の乗算器15と接続される。この運転制御部24は後述するような各種制御を行う。
【0042】
続いて温度検出原理について図を参照しつつ説明する。図3は温度検出原理の説明図である。加熱用調理容器300の温度検出値が上昇すると、入力電力値も変化する。この場合、ある入力電力値に対してある温度検出値が一意に対応する。そこで、入力電力値を検出することで対応する加熱用調理容器300の温度である温度検出値を割り出す。
これを直感的に理解しやすく表現すれば、図3で示すように入力電力逆数値に一体一で対応する補正値を登録しておき、検出した入力電力逆数値に応じて補正値を読み出して温度検出値を割り出すものということができる。入力電力値では補正に引算が必要になるが、この入力電力逆数値を採用することで全て足し算による補正とすることができる。
【0043】
続いて、運転制御部24による運転制御について図を参照しつつ説明する。まず、初期登録を行う。図4は初期登録のフローチャートである。
まず、加熱用調理容器300を載置し、さらに温度センサ20を周辺に配置する。この状態で加熱開始し、初期登録を開始する。まず、運転制御部24は、加熱用調理容器300を上限温度まで加熱し続け、その間中で入力電力値と温度検出値とを入力して蓄積する(図4のステップS1)。これはある時間において同時に検出した入力電力値と温度検出値とがそれぞれ関連付けられた状態で蓄積される。そして、所定時間毎に多数蓄積されていく。そして加熱終了後にこれら入力電力値と温度検出値とを関連付けて記憶部22に登録する(図4のステップS2)。これにより初期登録が完了する。
【0044】
続いて、所定温度への制御について説明する。図5は温度制御のフローチャートである。予め初期登録が完了している加熱用調理容器300を載置する。この場合温度センサ20は使用されないため周辺に配置する必要はなく、例えば収容箇所内に収容したりする。
次に操作者は、温度設定部23を操作して所望の温度を設定する。温度設定部23での操作により、運転制御部24は温度設定値を算出し、図示しない内部メモリなどに記憶させる。なお、温度設定値は温度設定可能範囲内にあるように設定される。この設定可能範囲は比透磁率μが変化して入力電力値が変化する範囲である。この状態で加熱開始し、設定された所定温度を維持するように加熱する。
【0045】
運転制御部24は温度設定値を読み出す(図5のステップS11)。続いて運転制御部24は、運転指令信号を加熱出力調整回路21へ出力する(図5のステップS12)。加熱出力調整回路21は、次の停止指令信号が入力されるまではトランジスタ16,17のベース(IGBTならゲート)に交互に運転信号を入力して、加熱コイル18に高周波信号を入力して加熱する。
【0046】
乗算器15からの入力電力信号をA/D変換して入力電力値を読み出す(図5のステップS13)。この入力電力値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図5のステップS14)。
温度設定値と温度検出値を比較し(図5のステップS15)、温度設定値>温度検出値を満たすならば(図5のステップS15でYES)、まだ温度が上昇途中であるため、ステップS13の先頭に戻り、以下同様にステップS13〜S15を繰り返す。この繰り返しが続く間は加熱用調理容器300の温度が上昇していき、キュリー温度までは上昇が続く。なお、キュリー温度までは比透磁率の変化がなく、入力電力値にも変化はない。
【0047】
加熱が進みキュリー温度付近にくると比透磁率が減少開始して入力電力値も変化し始め、温度検出値も大きくなってくる。このような状況下ステップS13〜S15が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図5のステップS15でNO)、ステップS16に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0048】
続いて、設定した温度を維持する制御について説明する。図6は温度維持を説明する説明図である。温度維持のため、運転制御部24は所定期間毎に強制的に運転指令信号と停止指令信号とを交互に出力する。この場合、先に説明した入力電力逆数値を見ると、図6で示すように、入力電力逆数値もパルス状になる。この際、パルスがある期間では温度検出値も上昇し、パルスがない期間では温度検出値も下降する。このようなオン・オフ制御により温度を一定に維持する。なお、温度検出値が温度設定値に到達しない、つまり、パルス状の入力電力逆数値が温度設定該当逆数値に到達しない場合には加熱を維持する制御を行う。
【0049】
このような温度維持の制御について説明する。図7は温度維持制御のフローチャートである。このフローはタイマにより所定期間毎に開始される処理である。まず、運転指令信号を出力する(図7のステップS21)。そして所定期間経過運転を行わせる(図7のステップS22)。所定期間経過後に入力電力値を読み出し(図7のステップS23)、この入力電力値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出して(図7のステップS24)、 温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図7のステップS25でNO)、ステップS26に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する(図7のステップS26)。これにより加熱が終了することとなる。以下、所定期間毎に同様の処理を行ってオン・オフ制御を行うこととなる。
【0050】
なお、温度設定値>温度検出値である、つまり温度設定値を超えなかった場合には(図7のステップS25でYES)、停止指令を発することなく運転を続け、ステップS23〜S25にて監視を続け、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図7のステップS25でNO)、運転制御部24は停止指令信号を出力する(図7のステップS26)。これにより加熱が終了することとなる。この場合、長期間となっても加熱を継続して行うことで、温度を維持する。
【0051】
図8は、このような温度制御を行った場合の温度の挙動を説明する説明図である。まず、連続運転で直線的に温度上昇していき、設定温度に到達してからは設定温度で温度上昇、温度下降を繰り返しながら、設定温度を維持する。なお、このオン・オフ制御は図をわかりやすくするため大幅な温度上昇・温度下降を繰り返しているが、実際は殆ど設定温度と同じ温度を維持する。
【0052】
続いて、本発明の他の形態について図を参照しつつ説明する。図9は、他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。図9で示す加熱温度制御装置100’は、交流電源入力部11、整流回路13、平滑コンデンサ14、トランジスタ16,17、加熱コイル18、コンデンサ19a,19b、温度センサ20、加熱出力調整回路21、記憶部22、温度設定部23、運転制御部24、出力側変流器25を備えている。加熱用調理容器300は、前記同様に図19で示すような加熱用調理容器である。
この形態では先に図2を用いて説明した加熱温度制御装置100と比較すると、入力側変流器12および乗算器15を取り去って代わりに出力側変流器25を取付けた以外は先の形態と同じである。共通する構成の説明は同じ符号を付すとともに先の説明と同じとして省略する。出力側変流器25は、本発明の電流検出部の具体例であり、加熱コイル18へ入力される電流に応じて出力電流信号を出力する。
運転制御部24は、記憶部22、温度設定部23および出力側変流器25と接続される。この運転制御部24は後述するような各種制御を行う。
【0053】
続いて温度検出原理について図を参照しつつ説明する。図10は温度検出原理の説明図である。加熱用調理容器300の温度検出値が上昇すると、出力電流値も変化する。この場合、ある出力電流値に対してある温度検出値が一意に対応する。そこで、出力電流値を検出することで対応する加熱用調理容器300の温度である温度検出値を割り出す。
これを直感的に理解しやすく表現すれば、図10で示すように出力電流値に一体一で対応する補正値を登録しておき、検出した出力電流値に応じて補正値を読み出して温度検出値を割り出すものということができる。
【0054】
続いて、運転制御部24による運転制御について図を参照しつつ説明する。まず、初期登録を行う。図11は初期登録のフローチャートである。
まず、加熱用調理容器300を載置し、さらに温度センサ20を周辺に配置する。この状態で加熱開始し、初期登録を開始する。まず、運転制御部24は、加熱用調理容器300を上限温度まで加熱し続け、その間中で出力電流値と温度検出値とを入力して蓄積する(図11のステップS31)。同時に検出した出力電流値と温度検出値とがそれぞれ関連付けられた状態で蓄積される。所定時間毎に多数蓄積されていく。そして加熱終了後にこれら出力電流値と温度検出値とを関連付けて記憶部22に登録する(図11のステップS32)。出力電流値が判別できれば温度検出値を読み出すことができる。これにより初期登録が完了する。
【0055】
続いて、所定温度への制御について説明する。図12は温度制御のフローチャートである。予め初期登録が完了している加熱用調理容器300を載置する。この場合温度センサ20は使用されないため周辺に配置する必要はなく、例えば、収容箇所内に収容したりする。
次に操作者は、温度設定部23を操作して所望の温度を設定する。温度設定部23での操作により、運転制御部24は温度設定値を算出し、図示しない内部メモリなどに記憶させる。この状態で加熱開始し、設定された所定温度を維持するように加熱する。なお、温度設定値は温度設定可能範囲内にあるように設定される。この設定可能範囲は比透磁率μが変化して出力電流値が変化する範囲である。
【0056】
運転制御部24は温度設定値を読み出す(図12のステップS41)。続いて運転制御部24は、運転指令信号を加熱出力調整回路21へ出力する(図12のステップS42)。加熱出力調整回路21は、次の停止指令信号が入力されるまではトランジスタ16,17のベース(IGBTならゲート)に交互に運転信号を入力して、加熱コイル18に高周波信号を入力して加熱する。
【0057】
出力側変流器25からの出力電流信号をA/D変換して出力電流値を読み出す(図12のステップS43)。この出力電流値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図12のステップS44)。
温度設定値と温度検出値を比較し(図12のステップS45)、温度設定値>温度検出値を満たすならば(図12のステップS45でYES)、まだ温度が上昇途中であるため、ステップS43の先頭に戻り、以下同様にステップS43〜S45を繰り返す。この繰り返しが続く間は加熱用調理容器300の温度が上昇していき、キュリー温度までは上昇が続く。なお、キュリー温度までは比透磁率の変化がなく、出力電流値にも変化はない。
【0058】
加熱が進みキュリー温度付近にくると比透磁率μが減少開始して出力電流値も変化し始め、温度検出値も大きくなってくる。このような状況下ステップS43〜S45が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図12のステップS45でNO)、ステップS46に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0059】
続いて、設定した温度を維持する制御について説明する。図13は温度維持を説明する説明図である。温度維持のため、所定期間毎に強制的に運転指令信号を入力する。この場合、図13で示すように、出力電流値もパルス状になる。この際、パルスがある期間では温度検出値も上昇し、パルスがない期間では温度検出値も下降する。このようなオン・オフ制御により温度を一定に維持する。なお、温度検出値が温度設定値に到達しない、つまり、パルス状の出力電流値が温度設定該当電流値に到達しない場合には加熱を維持する制御を行う。
【0060】
このような温度維持の制御について説明する。図14は温度維持制御のフローチャートである。このフローはタイマにより所定期間毎に開始される処理である。まず、運転指令信号を出力する(図14のステップS51)。そして所定期間経過運転を行わせる(図14のステップS52)。所定期間経過後に出力電流値を読み出し(図14のステップS53)、この出力電流値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出して(図14のステップS54)、 温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図14のステップS55でNO)、ステップS56に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する(図14のステップS56)。これにより加熱が終了することとなる。以下、所定期間毎に同様の処理を行ってオン・オフ制御を行うこととなる。
【0061】
なお、温度設定値>温度検出値である、つまり温度設定値を超えなかった場合には(図14のステップS55でYES)、停止指令を発することなく運転を続け、ステップS53〜S55にて監視を続け、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図14のステップS55でNO)、運転制御部24は停止指令信号を出力する(図14のステップS56)。これにより加熱が終了することとなる。この場合、長期間となっても加熱を継続して行うことで、温度を維持する。
このような加熱温度制御装置100’によれば、先に図8で示したような温度の挙動を取ることとなる。
【0062】
続いて、本発明の他の形態について図を参照しつつ説明する。図15は、他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
図15で示す加熱温度制御装置100”は、交流電源入力部11、入力側変流器12、整流回路13、平滑コンデンサ14、トランジスタ16,17、加熱コイル18、コンデンサ19a,19b、温度センサ20、加熱出力調整回路21、記憶部22、温度設定部23、運転制御部24、出力側変流器25を備えている。加熱用調理容器300は、前記同様に図19で示すような加熱用調理容器である。
【0063】
この形態では先に図2,図9を用いて説明した加熱温度制御装置100,100’と比較すると、入力側変流器12、平滑コンデンサ14および乗算器15からなる電力検出部、および、出力側変流器25からなる電流検出部を共に備えるものであり、同じ符号を付すとともに共通する構成の説明は省略する。
運転制御部24は、記憶部22、温度設定部23、乗算器14および出力側変流器25と接続される。この運転制御部24は後述するような各種制御を行う。
【0064】
温度検出原理は、加熱用調理容器300の温度検出値が上昇すると、入力電力値および出力電流値も変化する。この場合、ある入力電力値および出力電流値に対してある温度検出値が一意に対応する。そこで、入力電力値および出力電流値を検出することで対応する加熱用調理容器300の温度である温度検出値を割り出す。
なお、本形態では、特に低温部分は出力電流検出により、また、高温部は入力電力検出によることとして、わずかの温度特性変化もとらえることができるようにし、温度制御の温度範囲を広くするものである。従って、所定の検出切り換え温度に該当する出力電流値に到達した場合に出力電流検出から入力電力検出へ切り換えるものである。なお、設定温度が検出切り換え温度よりも低い場合には検出が切り替わらないこともある。
【0065】
続いて、運転制御部24による運転制御について図を参照しつつ説明する。まず、初期登録を行う。図16は初期登録のフローチャートである。
まず、加熱用調理容器300を載置し、さらに温度センサ20を周辺に配置する。この状態で加熱開始し、初期登録を開始する。まず、運転制御部24は、加熱用調理容器300を上限温度まで加熱し続け、その間中で入力電力値、出力電流値および温度検出値を入力して蓄積する(図16のステップS61)。同時に検出した入力電力値、出力電流値および温度検出値が関連付けられた状態で蓄積される。所定時間毎に多数蓄積されていく。そして加熱終了後にこれら入力電力値、出力電流値および温度検出値を関連付けて記憶部22に登録する(図16のステップS62)。入力電力値または出力電流値が判別できれば温度検出値を読み出すことができる。これにより初期登録が完了する。
【0066】
続いて、所定温度への制御について説明する。図17は温度制御のフローチャートである。予め初期登録が完了している加熱用調理容器300を載置する。この場合温度センサ20は使用されないため周辺に配置する必要はなく、例えば、収容箇所内に収容したりする。
次に操作者は、温度設定部23を操作して所望の温度を設定する。温度設定部23での操作により、運転制御部24は温度設定値を算出し、図示しない内部メモリなどに記憶させる。この状態で加熱開始し、設定された所定温度を維持するように加熱する。なお、温度設定値は温度設定可能範囲内にあるように設定される。この設定可能範囲は比透磁率μが変化して入力電力値または出力電力値が変化する範囲である。
【0067】
運転制御部24は温度設定値を読み出す(図17のステップS71)。続いて運転制御部24は、運転指令信号を加熱出力調整回路21へ出力する(図17のステップS72)。加熱出力調整回路21は、次の停止指令信号が入力されるまではトランジスタ16,17のベース(IGBTならゲート)に交互に運転信号を入力して、加熱コイル18に高周波信号を入力して加熱する。
【0068】
最初は出力側変流器25からの出力電流信号をそれぞれA/D変換して出力電流値を読み出す(図17のステップS73)。この出力電流値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図17のステップS74)。
温度設定値と温度検出値を比較し(図17のステップS75)、温度設定値>温度検出値を満たすならば(図17のステップS75でYES)、まだ温度が上昇途中であるため、ステップS73の先頭に戻り、以下同様にステップS73〜S75を繰り返す。この繰り返しが続く間は加熱用調理容器300の温度が上昇していき、キュリー温度までは上昇が続く。なお、キュリー温度までは比透磁率の変化がなく、入力電力値および出力電流値にも変化はない。
【0069】
加熱が進みキュリー温度付近にくると比透磁率が減少開始して出力電流値も変化し始め、温度検出値も大きくなってくる。このような状況下、ステップS73〜S75が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図17のステップS75でNO)、ステップS76に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0070】
なお、温度設定値によっては、ステップS73〜S75が繰り返されている途中で出力電流検出から入力電力検出に切り替わる。この場合、途中から乗算器14からの入力電力信号をそれぞれA/D変換して入力電力値を読み出す(図17のステップS73)。この入力電力値に対応する温度検出値を記憶部22から読み出す(図17のステップS74)。このような状況下ステップS73〜S75が繰り返され、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えたならば(図17のステップS75でNO)、ステップS76に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する。これにより連続加熱が終了することとなる。
【0071】
次の温度維持の制御について説明する。図18は温度維持制御のフローチャートである。このフローはタイマにより所定期間毎に開始される処理である。まず、運転指令信号を出力する(図18のステップS81)。そして所定期間経過運転を行わせる(図18のステップS82)。所定期間経過後に出力電流値(または入力電力値)を読み出し(図18のステップS83)、この出力電流値(または入力電力値)に対応する温度検出値を記憶部22から読み出して(図18のステップS84)、 温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図18のステップS85でNO)、ステップS86に進む。運転制御部24は停止指令信号を出力する(図18のステップS86)。これにより加熱が終了することとなる。以下、所定期間毎に同様の処理を行ってオン・オフ制御を行うこととなる。
【0072】
なお、温度設定値>温度検出値である、つまり温度設定値を超えなかった場合には(図18のステップS85でYES)、停止指令を発することなく運転を続け、ステップS83〜S85にて監視を続け、温度設定値>温度検出値を満たさない、つまり温度設定値を超えているならば(図18のステップS85でNO)、運転制御部24は停止指令信号を出力する(図18のステップS86)。これにより加熱が終了することとなる。この場合、長期間となっても加熱を継続して行うことで、温度を維持する。
このような加熱温度制御装置100”によれば、先に図8で示したような温度の挙動を取ることとなる。
【0073】
以上述べた本発明によれば、目的とする温度設定値とする具体的な制御方法が確立したことでセンサレスに高精度な温度調整が可能になった。これにより、温度確定調整作業が極めて簡易化される。
また本制御方式によれば整磁合金体の温度依存性磁気変態特性曲線が本来の鋭敏さを持っていても低温部分は出力電流検出により高温部は入力電力検出によることでわずかの温度特性変化もとらえることができるため一般的な整磁合金応用被加熱体であっても温度制御の範囲は非常に広くとれるようになった。
更に合金の比透磁率(μ)の変化が緩やかになれば温度制御の範囲は更に広がり電磁誘導加熱器の出力電流もゆっくり変化するため電流の制御が容易になることで破損からの保護が簡単にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】加熱温度制御装置における各種入出力特性の説明図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図3】温度検出原理の説明図である。
【図4】初期登録のフローチャートである。
【図5】温度制御のフローチャートである。
【図6】温度維持を説明する説明図である。
【図7】温度維持制御のフローチャートである。
【図8】温度制御を行った場合の温度の挙動を説明する説明図である。
【図9】他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図10】温度検出原理の説明図である。
【図11】初期登録のフローチャートである。
【図12】温度制御のフローチャートである。
【図13】温度維持を説明する説明図である。
【図14】温度維持制御のフローチャートである。
【図15】他の形態の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図16】初期登録のフローチャートである。
【図17】温度制御のフローチャートである。
【図18】温度維持制御のフローチャートである。
【図19】加熱用調理容器の説明図であり、図19(a)はA−A断面図、図19(b)は底面図である。
【図20】整磁合金の温度依存性磁気変態特性図であり、図20(a)は急峻な温度依存性磁気変態特性図、図20(b)はなめらかな温度依存性磁気変態特性図である。
【図21】従来技術の加熱温度制御装置の主要部を示す回路構成図である。
【図22】温度に対する温度依存性磁気変態特性および電流特性を表す図である。
【符号の説明】
【0075】
100:加熱温度制御装置
11:交流電源入力部
12:入力側変流器
13:整流回路
14:平滑コンデンサ
15:乗算器
16,17:トランジスタ
18:加熱コイル
19a,19b:コンデンサ
20:温度センサ
21:加熱出力調整回路
22:記憶部
23:温度設定部
24:運転制御部
25:出力側変流器
300:加熱用調理容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
記憶部および電力検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を読み出す手段と、
入力電力値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項2】
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項3】
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値および出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部、電力検出部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を、および/または、電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値および出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、加熱用器具に対して温度測定を行って温度検出値を出力する温度センサを有し、
前記運転制御部は、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部に登録する手段を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、温度設定値が入力される温度設定部を有し、
前記運転制御部は、
温度設定部からの温度設定値を読み出す手段と、
温度検出値と温度設定値とを比較し、温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
温度検出値が温度設定値を上回った後は一定期間にわたり加熱開始と加熱終了を繰り返すオン・オフ制御により加熱用器具の温度を温度設定値に維持させる手段と、
を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
オフ制御終了直前に温度検出値を読み出す手段と、
温度検出値が温度設定値を下回る場合に温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項1】
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
記憶部および電力検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を読み出す手段と、
入力電力値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項2】
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項3】
比透磁率が温度に対して変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金からなる加熱板を備えた加熱用器具を加熱コイルにより高周波誘導加熱を行う加熱温度制御装置であって、
入力電力値および出力電流値と関連づけられて温度検出値が登録されている記憶部と、
入力電力信号を出力する電力検出部と、
出力電流信号を出力する電流検出部と、
記憶部、電力検出部および電流検出部と接続される運転制御部と、
を有し、運転制御部は、
電力検出部の入力電力信号から入力電力値を、および/または、電流検出部の出力電流信号から出力電流値を読み出す手段と、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部から読み出す手段と、
を備え、入力電力値および出力電流値を補正して温度検出値を得ることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、加熱用器具に対して温度測定を行って温度検出値を出力する温度センサを有し、
前記運転制御部は、
入力電力値および/または出力電流値に対応する温度検出値を記憶部に登録する手段を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載した加熱温度制御装置において、
前記運転制御部に接続され、温度設定値が入力される温度設定部を有し、
前記運転制御部は、
温度設定部からの温度設定値を読み出す手段と、
温度検出値と温度設定値とを比較し、温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
温度検出値が温度設定値を上回った後は一定期間にわたり加熱開始と加熱終了を繰り返すオン・オフ制御により加熱用器具の温度を温度設定値に維持させる手段と、
を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱温度制御装置において、
前記運転制御部は、
オフ制御終了直前に温度検出値を読み出す手段と、
温度検出値が温度設定値を下回る場合に温度検出値が温度設定値を上回るまで加熱する手段と、
を備えることを特徴とする加熱温度制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−134676(P2006−134676A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321480(P2004−321480)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
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