説明

加熱装置および気相成長装置

【課題】チャンバ内の雰囲気を安定化することができる加熱装置および気相成長装置を提供する。
【解決手段】処理対象物の保持面RPを有し、サセプタガイド21に回転可能に保持されるサセプタ3が、該サセプタ3を取り囲む、チャンバ5の穴部HLに設けられる。内周面を有する第1のリング部31が、穴部HLを取り囲むようにチャンバ5に取り付けられ、外周面を有する第2のリング部32が、サセプタガイド21に取り付けられる。第1のリング部31の前記内周面と第2のリング部32の前記外周面とが互いに対向することによって、幅を有する隙間が形成され、該隙間は、幅よりも大きい長さに渡って、サセプタ3の保持面RPと交差する方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および気相成長装置に関し、より特定的には、処理対象物を保持するサセプタを含む加熱装置および気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を保持するためのサセプタを有する加熱装置を含む半導体製造装置が広く用いられている。このような半導体製造装置として、たとえば、成長室と予備室とを有する気相成長装置がある。成長室は、基板上への気相成長が行われるチャンバであり、そのためのガスが流される。予備室は一般に、基板が載置されるサセプタ、サセプタの回転機構、およびヒータが設けられており、パージガスが流される。たとえば特開2010−199382号公報によれば、半導体製造装置は、開口部を有する反応管と、この開口部の内部に設置されたサセプタと、サセプタを加熱するヒータと、サセプタの外周部に設置されサセプタとともに回転可能なフレームと、フレームを支持するサセプタ支持部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−199382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記半導体製造装置においては、サセプタの加熱に伴って高温となるサセプタ支持部(サセプタガイド)と、より低温である反応管(成長室としてのチャンバ)との間で、熱膨張の程度に差異が生じる。よって、サセプタガイドとチャンバとが互いに拘束されていると、熱応力が発生することによって装置に歪が生じ得る。両者が互いに拘束されないようにするためには、サセプタガイドとチャンバとの間に隙間を設ければよい。
【0005】
しかしながらこの隙間は、成長室の外部から内部へのガスの流入、および成長室の内部から外部へのガスの流出の少なくともいずれかを発生させ得る。その場合、成長室内の雰囲気が乱されることがある。具体的には、成長室内の圧力が乱されたり、あるいは成長室内の雰囲気に不純物ガスが混入したりすることがある。この不純物ガスは、たとえば、予備室に流されるパージガス、あるいは予備室中に残留している水分などに起因するガスである。
【0006】
上述した雰囲気の乱れは、上記半導体製造装置が気相成長によるエピタキシャル成膜に用いられる場合に特に問題となり得る。具体的には、得られる薄膜の面内分布が悪化したり、あるいは不純物の濃度が増大したりし得る。特に水分に起因した不純物ガスが成長室に流入した場合、酸素原子が取り込まれることで薄膜の物性に悪影響を与え得る。また薄膜の原料となる原料ガスがアンモニアなどのように腐食性の場合、原料ガスの予備室への流出によって、予備室内に設けられた機構が腐食してしまうことがある。
【0007】
このように従来の技術では、サセプタガイドとチャンバとの間の隙間を介して、チャンバの外部から内部へのガスの流入、およびチャンバの内部から外部へのガスの流出の少なくともいずれかが生じやすかった。その結果、チャンバ内の雰囲気が乱されることがあった。本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、チャンバ内の雰囲気を安定化することができる加熱装置および気相成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱装置は、サセプタと、チャンバと、ヒータと、サセプタガイドと、第1および第2のリング部とを有する。サセプタは、処理対象物を保持する保持面を有する。チャンバには、間隔を空けてサセプタを取り囲む穴部が設けられている。ヒータはサセプタを加熱するものである。サセプタガイドは、チャンバの外部に配置されており、サセプタを回転可能に保持している。第1のリング部は、穴部を取り囲むようにチャンバに取り付けられており、内周面を有する。第2のリング部は、サセプタガイドに取り付けられており、外周面を有する。第1のリング部の内周面と第2のリング部の外周面とが互いに対向することによって、幅を有する隙間が形成されている。隙間は、幅よりも大きい長さに渡って、サセプタの保持面と交差する方向に延びている。
【0009】
本発明によれば、サセプタガイドとチャンバとの間が拘束されないようにするための隙間が第1および第2のリング部の間に設けられる。これによりサセプタガイドとチャンバとの熱膨張の差異に起因して装置が歪むことを防止することができる。またこの隙間は、その幅よりも大きい長さに渡って延びていることにより、その流路が長くなることで、低いコンダクタンスを有する。これにより隙間を介した、チャンバの外部から内部へのガスの流入、およびチャンバの内部から外部へのガスの流出を抑制することができる。よってチャンバ内の雰囲気を安定化することができる。
【0010】
またこの隙間は、サセプタの保持面と交差する方向に延びている。これにより、隙間が保持面に平行な方向に延びる場合に比して、平面視においてより小さい領域内に、十分な長さを有する隙間を配置することができる。よって加熱装置の設置面積を小さくすることができる。
【0011】
好ましくは、サセプタの保持面と交差する上記方向は保持面に対して垂直である。これにより、上記方向が保持面に対して斜めである場合に比して、十分な長さを有する隙間を平面視においてさらに小さい領域内に配置することができる。よって加熱装置の設置面積をさらに小さくすることができる。
【0012】
好ましくは、第1のリング部の熱伝導率は第2のリング部の熱伝導率よりも大きく、第2のリング部の熱膨張係数は第1のリング部の熱膨張係数よりも小さい。
【0013】
第1のリング部の熱伝導率が大きいことによって第1のリング部から外部への熱の流出が促進される。よって第1のリング部の温度が抑えられるので、第1のリング部の熱膨張を抑えることができる。
【0014】
またこのように温度が抑えられた第1のリング部は、その近傍に隙間を介して配置された、より高い温度を有する第2のリング部から放射される熱を効率的に吸収することができる。これにより第2のリング部の温度上昇を抑えることができる。さらに第2のリング部の熱膨張係数が小さいことから、第2のリング部の温度の上昇分と熱膨張係数との積に対応して生じる第2のリング部の熱膨張を抑制することができる。
【0015】
このように第1および第2のリング部の両方の熱膨張を抑えることができるので、第1および第2のリング部によって規定される隙間の幅の変動を抑えることができる。これにより、隙間の幅が過度に大きくなることで隙間を介したガスの大きな流出入が生じることを防止することができる。また第1および第2のリング部の間の幅がゼロとなること、すなわち隙間が塞がることを防止することができるので、隙間による熱応力の緩和効果を維持することができる。
【0016】
好ましくは加熱装置はさらに、サセプタガイドを変位させる駆動部を有する。これによりサセプタガイドに支持されたサセプタを変位させることができるので、サセプタに保持された処理対象物を加熱装置内において搬送することができる。
【0017】
より好ましくは第2のリング部は、サセプタガイドに着脱自在に取り付けられており、かつサセプタガイドが変位された際にサセプタガイドから外れて第1のリング部に支持されるように構成されている。このように第2のリング部とサセプタガイドとが別個に形成されていることで、互いの相対位置が変化し得ることから、両者の熱膨張の差異に起因した応力の発生を避けることができる。これにより第2のリング部およびサセプタガイドの歪を抑えることができる。
【0018】
さらに好ましくは、第2のリング部は、第1のリング部に支持されることによって第1のリング部に対して位置合わせされるように構成されている。これにより、サセプタガイドの変位に伴って第1および第2のリング部が相対運動する場合においても、第1および第2のリング部の間に形成される隙間の幅の変動を抑えることができる。
【0019】
好ましくは隙間の幅は0.1mm以上0.5mm以下である。隙間の幅が0.1mm以上あることによって、熱膨張の影響によって隙間が塞がってしまうことをより確実に防止することができる。また幅が0.5mm以下であることによって、チャンバ内外でのガスの流出入をより確実に抑制することができる。
【0020】
好ましくは隙間の長さは20mm以上である。隙間の長さが20mm以上であることによって、チャンバ内外でのガスの流出入をより確実に抑制することができる。
【0021】
本発明の気相成長装置は、上述した加熱装置と、ガス導入部とを有する。ガス導入部は、原料ガスをチャンバ内に導入するものである。これにより、安定した雰囲気下で成膜を行うことができる気相成長装置が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上述したように、チャンバ内の雰囲気を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における気相成長装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図1の装置が有するサセプタが変位された状態を図2と同様の視野で示す一部拡大図である。
【図4】図1の装置を用いた気相成長工程を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における気相成長装置の構成を概略的に示す一部断面図である。
【図6】成長室と予備室との差圧と、隙間からのガス流出量との関係の例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本実施の形態の気相成長装置100(加熱装置)は、サセプタ3と、成長室5(チャンバ)と、ヒータ7と、ガス導入部9と、ガス排出部11と、回転軸17と、ジョイント19と、モータ20と、サセプタガイド21と、架台22と、リング部31(第1のリング部)と、リング部32(第2のリング部)と、予備室35と、駆動部40とを有する。
【0025】
成長室5には、間隔を空けてサセプタ3を取り囲む穴部HLが設けられている。また成長室5にはガス導入部9およびガス排出部11が接続されている。ガス導入部9は、所望の流量の原料ガスを成長室5に導入する部分である。ガス排出部11は、成長室5から使用済みのガスを排出する部分である。予備室35は、成長室5に隣接して(図1においては成長室5の下側に隣接して)設けられている。
【0026】
サセプタ3は、基板などの処理対象物を保持する保持面RPを有する。この保持は、たとえば、処理対象物が保持面RP上に載置されることによって行われる。本実施の形態においては、平面視において円形形状を有するサセプタ3の外周部に、平面視において環状形状を有するサセプタホルダ23が固定されている。また処理対称物の温度を制御する目的でサセプタ3を加熱するために、ヒータ7が設けられている。またサセプタ3は回転力(矢印AR)を受けるように配置されている。この目的でサセプタ3はたとえば、回転軸17およびジョイント19を介してモータ20につながれている。
【0027】
サセプタガイド21は、予備室35内、すなわち成長室5の外部に配置されている。本実施の形態においては、サセプタホルダ23が固定されたサセプタ3の外周部を、平面視において環状形状を有するサセプタガイド21が回転可能に保持している。すなわちサセプタガイド21はサセプタ3を回転可能に保持している。具体的には、サセプタガイド21およびサセプタホルダ23がベアリングを構成している。サセプタガイド21に対してサセプタホルダ23がより抵抗なく回転できるようにするために、両者の間に転動体29が設けられてもよい。
【0028】
サセプタガイド21は、高温に加熱されるサセプタ3に取り付けられていることから、高温下での使用に適した材料から作られている。このような材料としては、たとえばBN(窒化ホウ素)がある。
【0029】
リング部31は、穴部HLを取り囲むように成長室5に取り付けられており、内周面S1(図2)を成す環状形状を有する。リング部32は、サセプタガイド21に取り付けられており、外周面S2(図2)を成す環状形状を有する。リング部31の内周面と第2のリング部の外周面とが互いに対向することによって、幅DW(図2)を有する隙間GPが形成されている。隙間GPは、幅DWよりも大きい長さDL(図2)に渡って、サセプタ3の保持面RPと交差する方向(図中、縦方向)に延びている。
【0030】
なお図1および図2においては隙間GP全体が均一の幅を有するが、隙間の幅は必ずしも均一である必要はない。隙間の幅が均一でない場合、隙間の幅は平均値として算出されればよい。好ましくは隙間GPの幅DWは0.1mm以上0.5mm以下である。また好ましくは隙間GPの長さDLは20mm以上である。より好ましくは、この幅DWの好適な条件と、長さDLの好適な条件とが同時に満たされる。
【0031】
好ましくは、リング部31の熱伝導率はリング部32の熱伝導率よりも大きく、リング部32の熱膨張係数はリング部31の熱膨張係数よりも小さい。たとえば、リング部31はNi(ニッケル)から作られており、リング部32は石英から作られている。なおリング部31は、Mo(モリブデン)、SiC(炭化珪素)、またはC(カーボン)から作られていてもよい。またリング部31は、インコネル(商標)から作られていてもよい。
【0032】
好ましくはリング部31は、内側(図2における左側)に突出した突出部PLを有する。突出部PLは、リング部32から離れて配置されており、また長さDLの方向に沿って成長室5との間にリング部32を挟むように配置されている。
【0033】
好ましくは、リング部32はフック状の形状を有しており、サセプタガイド21の肩部(図2における右上角部)に引っ掛けられることによってリング部31に取り付けられている。これによりリング部32は熱膨張収縮時にサセプタガイド21上を摺動することができる。また好ましくはリング部32とサセプタガイド21との間には保持面RPに平行な方向に幅DX(図2)のクリアランスが設けられている。
【0034】
好ましくはリング部32は、冷却されやすいように構成されており、たとえば水冷されていてもよい。
【0035】
ガス導入部9は、原料ガスを成長室5内に導入するものである。ガス導入部9は、導入されるガスの流量を制御するためのマスフローを有してもよい。
【0036】
ガス排出部11は、使用済みのガスを成長室5から排出するものである。ガス排出部11は、排出されるガスの流量を調整するためのバルブを有してもよい。
【0037】
駆動部40は、保持面RPに交差する方向(矢印AL)に駆動される部分を有し、この部分が駆動されることによってサセプタガイド21が変位されるように構成されている。たとえば、駆動部40は可動シリンダ41を有する。可動シリンダ41は、架台22を介してサセプタガイド21を変位させるものである。
【0038】
次に気相成長装置100の使用方法について説明する。
図1および図2を参照して、矢印ALに示すように駆動部40が駆動される。
【0039】
図3を参照して、上記駆動によってサセプタ3が、成長室5の穴部HLに囲まれた位置(図2)から、処理対象物の搬入に適した位置へと変位する。この変位の途中でリング部32はリング部31の突出部PL上に載置され、その結果、リング部32はサセプタガイド21から取り外される。
【0040】
さらに図4を参照して、サセプタ3上に処理対象物としての基板SBが載置された後に、駆動部40が逆方向に駆動される。これにより、基板SBが載置されたサセプタ3が、成長室5の穴部HLに囲まれた位置へ変位する。またこの変位の途中でリング部32が再びサセプタガイド21に取り付けられる。
【0041】
次にモータ20によってサセプタ3が回転される。またヒータ7を用いて基板SBの温度が制御される。
【0042】
次にガス導入部9から原料ガスが成長室5に導入され、また成長室5中の不要なガスはガス排出部11から排出される。これにより原料ガスを原料として基板SB上に薄膜FMが成膜される。成膜中、予備室35内にはパージガスが流されてもよい。隙間GPを介したガスの流出入を抑制するためには、成長室5と予備室35との差圧を小さくすることが好ましい。この差圧は好ましくは2Pa以下とされる。薄膜FMとしてGaN薄膜が形成される場合、原料ガスは、たとえば、アンモニア、窒素、水素、および有機金属を含む混合ガスである。またパージガスとしては、たとえば、窒素、または水素が混合された窒素を用いることができる。
【0043】
薄膜FMの形成後、ガス導入部9は原料ガスの導入を停止する。次に駆動部40によってサセプタ3が再び変位される。次に気相成長装置100から基板SBが搬出される。これにより、薄膜FMが形成された基板SBが得られる。
【0044】
本実施の形態によれば、サセプタガイド21と成長室5との間が拘束されないようにするための隙間GPがリング部31および32の間に設けられる。これによりサセプタガイド21と成長室5との熱膨張の差異に起因して装置100が歪むことを防止することができる。またこの隙間GPは、その幅DWよりも大きい長さDLに渡って延びていることにより長い流路を有するので、低いコンダクタンスを有する。これにより隙間GPを介した、成長室5の外部から内部へのガスの流入、および成長室5の内部から外部へのガスの流出を抑制することができる。よって成長室5内の雰囲気を安定化することができる。これにより、より精度よく制御された雰囲気下で成膜を行うことができる。
【0045】
また隙間GPは、保持面RPと交差する方向に延びている。これにより、隙間GPが保持面RPに平行な方向に延びる場合に比して、平面視においてより小さい領域内に、十分な長さDLを有する隙間GPを配置することができる。よって装置100の設置面積を小さくすることができる。
【0046】
好ましくは、サセプタ3の保持面RPと交差する上記方向は保持面RPに対して垂直である。これにより、上記方向が保持面RPに対して斜めである場合に比して、十分な長さDLを有する隙間GPを平面視においてさらに小さい領域内に配置することができる。よって装置100の設置面積をさらに小さくすることができる。
【0047】
また上記のように隙間GPを平面視において小さい領域に設けることができるので、既存の装置を改造することで隙間GPを設けることが容易である。仮に隙間GPを設けるのに必要な領域が大きいとすると、装置の基本的な寸法を大きくする必要が生じるので、大幅な改造を必要とし得る。
【0048】
好ましくは、リング部31の熱伝導率はリング部32の熱伝導率よりも大きく、リング部32の熱膨張係数はリング部31の熱膨張係数よりも小さい。
【0049】
リング部31の熱伝導率が大きいことによってリング部31から外部への熱の流出が促進される。よってリング部31の温度が抑えられるので、リング部31の熱膨張を抑えることができる。
【0050】
またこのように温度が抑えられたリング部31は、その近傍に隙間GPを介して配置された、より高い温度を有するリング部32から放射される熱を効率的に吸収することができる。これによりリング部32の温度上昇を抑えることができる。さらにリング部32の熱膨張係数が小さいことから、リング部32の温度の上昇分と熱膨張係数との積に対応して生じるリング部32の熱膨張を抑制することができる。
【0051】
このようにリング部31および32の両方の熱膨張を抑えることができるので、リング部31および32によって規定される隙間GPの幅DWの変動を抑えることができる。これにより、隙間GPの幅DWが過度に大きくなることで隙間GPを介したガスの大きな流出入が生じることを防止することができる。またリング部31および32の間の幅DWがゼロとなること、すなわち隙間GPが塞がることを防止することができるので、隙間GPによる熱応力の緩和効果を維持することができる。
【0052】
好ましくは装置100はさらに、サセプタガイド21を変位させる駆動部40を有する。これによりサセプタガイド21に支持されたサセプタ3を変位させることができるので、サセプタ3に保持された基板SBを装置100内において搬送することができる。
【0053】
より好ましくはリング部32は、サセプタガイド21に着脱自在に取り付けられており、かつサセプタガイド21が変位された際にサセプタガイド21から外れてリング部31に支持されるように構成されている。このようにリング部32とサセプタガイド21とが別個に形成されていることで、互いの相対位置が変化し得ることから、両者の熱膨張の差異に起因した応力の発生を避けることができる。これによりリング部32およびサセプタガイド21の歪を抑えることができる。
【0054】
好ましくは隙間GPの幅DWは0.1mm以上0.5mm以下である。隙間GPの幅DWが0.1mm以上あることによって、熱膨張の影響によって隙間GPが塞がってしまうことをより確実に防止することができる。また幅DWが0.5mm以下であることによって、成長室5内外でのガスの流出入をより確実に抑制することができる。好ましくは隙間GPの長さDLは20mm以上である。隙間GPの長さDLが20mm以上であることによって、成長室5内外でのガスの流出入をより確実に抑制することができる。より好ましくは、幅DWが0.1mm以上0.5mm以下とされ、かつ長さDLが20mm以上とされる。これにより成長室5内外でのガスの流出入をより確実に抑制することができる。
【0055】
好ましくは、リング部32とサセプタガイド21との間には保持面RPに平行な方向に幅DX(図2)のクリアランスが設けられている。これにより、サセプタガイド21が外周方向(図2の右方向)に熱膨張してリング部32に押し付けられることによる歪の発生を防止することができる。
【0056】
(実施の形態2)
主に図5を参照して、本実施の形態の気相成長装置は、リング部31および32(図2)のそれぞれの代わりに、突出部PTを有するリング部31V(第1のリング部)と、リング部32V(第2のリング部)とを有する。突出部PTの、リング部32Vが載置される面は、内側(図5の左側)ほど高さが低くなるように傾斜するテーパを有する。またこのテーパに組み合わさるようなテーパが、リング部32Vの、リング部31Vに載置される面に設けられている。
【0057】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0058】
本実施の形態によれば、リング部32Vは、リング部31Vに支持されると自重により、図中矢印AAに示すように、リング部31Vに対して位置合わせされる。具体的にはリング部31Vおよび32Vの各々の中心軸が合わされる。すなわちリング部31Vおよび32Vが互いにセンタリングされる。これにより、サセプタガイド21の変位に伴ってリング部31Vおよび32Vが相対運動する場合においても、リング部31Vおよび32Vの間に形成される隙間GPの幅DWの変動を抑えることができる。
【実施例】
【0059】
図6を参照して、幅DW=0.5mmの隙間GP(図2)の長さDLを、20mmとした場合(プロットG1)と、40mmとした場合(プロットG2)とについて、成長室5と予備室35との間の差圧と、隙間GPからのガス流出量との関係を検討した。グラフの縦軸においてプラスのガス流出量は成長室5から予備室35へのガスの流出に対応し、マイナスのガス流出量は予備室35から成長室5へのガスの流入に対応している。本検討の結果、幅DW=0.5mmの場合、流出量の絶対値は長さDLに反比例することがわかった。すなわち長さDLを長くすることで流出量の絶対値を小さくすることができることがわかった。なお幅DWが過度に大きい場合は、長さDLを増加させても流出量の絶対値はあまり低下しないと考えられる。
【0060】
次に本発明の実施例として、幅DW=0.5mmおよび長さDL=20mmを有する隙間GPを用いて、GaNの薄膜FMをエピタキシャル成長させた。エピタキシャル成長の際(図4)、成長室5の圧力と予備室35の圧力との差圧が2Pa以下となるように圧力制御がなされた。得られた薄膜FMは、3%の面内均一性と、1.5×1017cm-3の酸素濃度とを有していた。次に比較例として、リング部32なしでの薄膜の形成を行った。得られた薄膜は、14%の面内均一性と、2.0×1018cm-3の酸素濃度とを有していた。この結果から、実施例によれば、面内均一性が高く、かつ酸素濃度(不純物濃度)の低い薄膜が得られることがわかった。
【0061】
なお今回開示された実施の形態においては成長室を有する気相成長装置が使用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、チャンバを有する加熱装置を含む装置であれば用いることができる。また第2のリングは必ずしもサセプタガイドから取り外し可能である必要はない。またサセプタガイドは必ずしも変位可能に構成されている必要はない。
【0062】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
3 サセプタ、5 成長室(チャンバ)、7 ヒータ、9 ガス導入部、11 ガス排出部、17 回転軸、19 ジョイント、20 モータ、21 サセプタガイド、22 架台、23 サセプタホルダ、29 転動体、31,31V リング部(第1のリング部)、32,32V リング部、35 予備室、40 駆動部、41 可動シリンダ、100 気相成長装置(加熱装置)、FM 薄膜、GP 隙間、HL 穴部、PL,PT 突出部、RP 保持面、S1 内周面、S2 外周面、SB 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を保持する保持面を有するサセプタと、
間隔を空けて前記サセプタを取り囲む穴部が設けられたチャンバと、
前記サセプタを加熱するヒータと、
前記チャンバの外部に配置され、前記サセプタを回転可能に保持するサセプタガイドと、
前記穴部を取り囲むように前記チャンバに取り付けられ、内周面を有する第1のリング部と、
前記サセプタガイドに取り付けられ、外周面を有する第2のリング部とを備え、
前記第1のリング部の前記内周面と前記第2のリング部の前記外周面とが互いに対向することによって、幅を有する隙間が形成されており、前記隙間は、前記幅よりも大きい長さに渡って、前記サセプタの前記保持面と交差する方向に延びている、加熱装置。
【請求項2】
前記サセプタの前記保持面と交差する前記方向は前記保持面に対して垂直である、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1のリング部の熱伝導率は前記第2のリング部の熱伝導率よりも大きく、前記第2のリング部の熱膨張係数は前記第1のリング部の熱膨張係数よりも小さい、請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記サセプタガイドを変位させる駆動部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第2のリング部は、前記サセプタガイドに着脱自在に取り付けられており、かつ前記サセプタガイドが変位された際に前記サセプタガイドから外れて前記第1のリング部に支持されるように構成されている、請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第2のリング部は、前記第1のリング部に支持されることによって前記第1のリング部に対して位置合わせされるように構成されている、請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記隙間の前記幅は0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記隙間の前記長さは20mm以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の加熱装置と、
原料ガスを前記チャンバ内に導入するガス導入部とを備える、気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−99756(P2012−99756A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248384(P2010−248384)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】