説明

加硫接着剤組成物

【課題】ステンレス鋼板にフッ素ゴムを加硫接着させるに際し、ステンレス鋼板のクロメート処理を行わなくとも有効にフッ素ゴムを加硫接着させることのできる加硫接着剤組成物を提供する。
【解決手段】接着剤固形分中の配合割合が(a)フェノール樹脂および/またはエポキシ樹脂40〜80重量%、(b)溶媒分散性シリカおよび/またはハイドロタルサイト類縁化合物5〜40重量%および残部が(c)フッ素ゴムコンパウンドおよび/またはフッ素ゴムである加硫接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、ステンレス鋼板とフッ素ゴムとの加硫接着などに好適に用いられる加硫接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンなどに装着されるガスケットとしては、一般的にステンレス鋼板にゴム層を積層したゴムコーティングステンレス鋼板が用いられている。このようなゴムコーティングステンレス鋼板としては、ステンレス鋼板の片面または両面にクロム化合物−シリカ−有機樹脂系のクロメート皮膜を形成し、このクロメート皮膜上にゴム層を積層したガスケット材料などが従来から用いられており、このようなクロメート処理されたステンレス鋼板上にゴム層を備えたガスケット用素材は、すぐれた耐熱性、耐水性および耐不凍液(LLC)性などを有している。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、近年、環境保全への関心が高まるにつれ、有害物質の使用を避ける動きが強くなってきており、特にクロメート処理液に含まれるCr+6は人体に直接的な悪影響を及ぼすため、Cr+6を含むクロメート処理の不使用が求められてきている。また、クロメート皮膜中のクロムは、不凍液やオイルと接触した場合に抽出される可能性が高い。さらに、Cr+6を含む廃液は水質汚濁防止法により規定されている特別な処理を施す必要があるため、クロメート処理を施したステンレス材料の廃棄物はリサイクルできないといった問題もある。
【0004】
一方、従来のクロメート処理を行わないガスケットでは、未だクロメート処理を施したガスケットと同等の性能が得られていないのが実状である。現在、クロメート処理代替処理を用いたガスケットが種々提案されてはいるものの、これを自動車用エンジンなどの水まわり用途として使用した場合には、長期の使用時には接液部接着界面でブリスターが発生しやすいといった欠点を有している。(特許文献2参照)
【0005】
このような事情により、クロメート処理を施したガスケットと同等あるいはそれ以上の耐熱性あるいは密着性を有し、さらに水、不凍液に対する耐久性を兼ね備え、環境面においても問題のないガスケットが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−227622号公報
【特許文献2】特開2003−105321号公報
【特許文献3】特開2003−028307号公報
【特許文献4】特開2002−264253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ステンレス鋼板にフッ素ゴムを加硫接着させるに際し、ステンレス鋼板のクロメート処理を行わなくとも有効にフッ素ゴムを加硫接着させることのできる加硫接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる本発明の目的は、(a)フェノール樹脂および/またはエポキシ樹脂に(b)溶媒分散性シリカおよび/またはハイドロタルサイト類縁化合物を添加した加硫接着剤組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加硫接着剤組成物は、人体に悪影響を及ぼすクロメート処理を施すことなく、95℃、7日間という条件下での耐水試験、120℃、14日間という条件下の耐LLC試験および200℃、3日間という条件下での耐熱試験において、クロメート処理ステンレス鋼板と同等程度の満足される結果を示すものであるため、ステンレス鋼板とフッ素ゴムを効果的に接合させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
フッ素ゴムの加硫接着に用いられる(a)成分のフェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂あるいはこれらのフェノール樹脂混合物が用いられ、好ましくはレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の混合物が用いられる。実際には、市販品である群栄化学製品レヂトップPSF2803等がノボラック型フェノール樹脂として、また住友ベークライト製品スミライトPR-50232等がレゾール型フェノール樹脂としてそれぞれ用いられる。
【0011】
また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、含ブロモエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の内の少なくとも一種が、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂とフェノールノボラック型エポキシ樹脂の混合物が用いられる。実際には、市販品である油化シェル製品エピコート801等がビスフェノールA型エポキシ樹脂として、また同社製品エピコート152等がフェノールノボラック型エポキシ樹脂としてそれぞれ用いられる。
【0012】
これらのフェノール樹脂成分および/またはエポキシ樹脂成分は、接着剤中の固形分(あるいは樹脂分)を100重量%とした場合、その50〜90重量%、好ましくは65〜85重量%となるように調整されて用いられる。これら両者が併用される場合には、これらの合計量がこのような固形分濃度(50〜90重量%)となるような割合で用いられる。また、(c)成分としてフッ素ゴム(コンパウンド)溶液が用いられた場合には、(a)成分は接着剤固形分中40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%となるような固形分配合割合で用いられる。(a)成分がこれよりも少ないと、接着力の低下を招くので好ましくない。
【0013】
(b)成分の溶媒分散性シリカとしては、加硫接着剤の分散媒体に対応するものを使用すればよく、好ましくは接着剤への分散安定性からオルガノシリカゾルが用いられる。またその一次粒子径としては、40nm以下、好ましくは5〜30nm、さらに好ましくは10〜20nmのものが用いられる。一次粒子径がこれより大きいものを用いると、同じ重量部配合しても効果は減少し、効果を上げるために投入部数を増加すると接着剤が脆化して機能が低下するようになり、結局所望の目的が達成できなくなる。実際には、市販品である日産化学工業製品メタノールシリカゾル、スノーテックスIPA-ST(イソプロピルアルコール分散液)、スノーテックスEG-ST(エチレングリコール分散液)、スノーテックスMEK-ST(メチルエチルケトン分散液)、スノーテックスMIBK-ST(メチルイソブチルケトン分散液)等が用いられる。
【0014】
また、(b)成分のハイドロタルサイト類縁化合物としては、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・mH2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O等が用いられる。実際には、市販品である協和化学工業製品DHT-4A、同社製品DHT-6等が用いられる。
【0015】
これらの(b)成分は、溶媒分散性シリカまたはハイドロタルサイト類縁化合物が接着剤固形分(あるいは樹脂分)中の配合割合が10〜50重量%、好ましくは15〜35重量%となるように添加される。これら両者が併用される場合には、これらの合計量(10〜50重量部)がこのような固形分濃度となるような割合で用いられる。また、(c)成分としてゴム(コンパウンド)溶液が用いられた場合には、(b)成分は接着剤固形分中5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような配合割合で用いられる。(b)成分量がこれよりも少ないと、耐水、耐LLC性が十分に得られず、一方これより多い割合で用いられると、接着剤成分の相対的減少により接着力の低下を招くようになる。
【0016】
以上の必須成分に加えて、接着剤中にはさらに添加剤として(c)成分フッ素ゴムコンパウンド溶液および/またはフッ素ゴム溶液が適宜配合される。配合量は、上記(a)成分および(b)成分の所定の固形分濃度の残部の範囲内、すなわち接着剤固形分中の固形分配合割合が55重量%以下、好ましくは10〜30重量%の割合で配合することができる。ここで、フッ素ゴムコンパウンド溶液の添加によって接着力の向上を、またフッ素ゴム溶液の添加によって接着力ならびに耐熱性の向上を図ることができる。フッ素ゴムコンパウンド溶液としては、フッ素ゴムに各種カーボンブラック、シリカ(この場合のシリカは配合量として算出されない)等の補強剤、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト(不算出)等の受酸剤、ステアリン酸等の滑剤、ジオクチルフタレート等の可塑剤、老化防止剤、イオウまたはイオウ供与性化合物である加硫剤、テトラメチルチウラムジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等の加硫促進剤などを適宜配合したものが、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒溶液として用いられる。フッ素ゴム溶液としては、フッ素ゴムのトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒溶液が用いられる。
【0017】
加硫接着剤組成物は、以上の各成分は配合した後、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系有機溶媒またはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒の約0.5〜10重量%、好ましくは約1〜4重量%、さらに好ましくは2〜3重量%の濃度の分散液として調製され、これを刷毛塗り法、浸漬法、スプレー法、噴霧法、ロールコータ法等任意の手段によって塗布し、室温または温風で乾燥させた後、約100〜250℃で約1〜20分間焼付処理され、金属板上に膜厚約0.1〜15μm、好ましくは約0.5〜6μm、さらに好ましくは約1〜6μm程度の接着剤層が形成される。
【0018】
接着剤層が形成される金属板としては、ステンレス鋼、軟鋼、真鍮、アルミニウム、アルミニウムダイカスト等が用いられ、好ましくはSUS304、430、301、301H等のステンレス鋼板が用いられ、これは接着剤塗布前に、脱脂、アルカリ洗浄等の表面洗浄処理を施した後、クロメート処理以外の代替下処理方法、例えば鋼板上に酸性分と水分酸性シリカ、チタン化合物および水溶性の窒素含有置換基を有するビスフェノールAノボラック重合体からなる皮膜を形成する方法、ステンレス鋼板上にシリカ-アルミナ縮合体のプライマー層を形成する方法、ステンレス鋼板上にチタン化合物とフッ化物を含む有機-無機複合皮膜を形成する方法等やシランカップリング剤等のプライマー処理などが施された上で用いられる。(特許文献2、3、4参照)
【0019】
接着剤層上には、未加硫ゴムコンパウンドを溶剤に分散させたゴム溶液をコーティングする方法または未加硫ゴムコンパウンドを接合する方法で、未加硫のフッ素ゴムコンパウンドが金属の片面または両面に、約5〜120μm程度の片面厚さのゴム層を形成せしめるように接合したものを、約150〜230℃、約0.5〜30分間程度加熱加硫し、必要に応じて加圧しながら加硫することによりゴムの接着が行われる。フッ素ゴムコンパウンドとしては、ガスケット材料に用いる場合には、硬度(デュロメータA)が80以上で、圧縮永久歪(100℃、22時間)が50%以下の加硫物層を形成せしめるものであればよく、配合内容によっては特に制限されない。なお、表面粘着性が高い製品については、ゴム積層金属板のゴム層表面に粘着防止剤を塗布することも行われる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0021】
実施例1
SUS301H鋼板(厚さ0.2mm)の表面をアルカリ脱脂した後、H2TiF6 60g、H2ZrF6 10g、コロイダルシリカ6.4g、アミノメチル置換ポリビニルフェノール50gおよびプロポキシプロパノール50gを含有し、脱イオン水を用いて1リットルとした水溶液を、0.2g/m2の塗布量で室温下で塗布し、100℃、1分間の乾燥を行った。この表面処理されたステンレス鋼板上に、
フェノール樹脂溶液(固形分濃度41.9重量%) 100重量部(固形分60.0重量%)
オルガノシリカゾル(日産化学工業製品MEK-ST; 110 〃 (固形分15.7重量%)
固形分濃度10重量%、一次粒子径10〜20μm)
フッ素ゴムコンパウンド溶液(固形分濃度25重量%) 68 〃 (固形分 残部)
メチルエチルケトン 3220 〃
よりなる加硫接着剤組成物(全固形分濃度2重量%)を塗布し、室温下で乾燥させた後、190℃、5分間の焼付処理を行って接着剤層を形成させた。
【0022】
なお、フェノール樹脂溶液およびフッ素ゴムコンパウンド溶液としては、以下のものが用いられた。
〔フェノール樹脂溶液〕固形分濃度 41.9重量%
ノボラック型フェノール樹脂(レヂトップPSF2803) 50重量部
レゾール型フェノール樹脂49重量%溶液(スミライトPR-50232) 59 〃
ヘキサメチレンテトラミン 8 〃
メチルエチルケトン 90 〃
〔フッ素ゴムコンパウンド溶液〕
フッ素ゴム(バイトンA) 100重量部
SRFカーボンブラック 20 〃
炭酸カルシウム 20 〃
シリカ 20 〃
酸化マグネシウム 10 〃
N,N′-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン 3 〃
メチルエチルケトン 519 〃
以上の各成分の混練物100重量部を、トルエン-メチルエチルケトン重量比(9:1)混合溶剤300重量部中に溶解して、固形分濃度25重量%のフッ素ゴムコンパウンド溶液とした。
【0023】
前記接着剤層形成鋼板上に、上記フッ素ゴムコンパウンド溶液を塗布し、60℃で15分間乾燥させて、片面厚さ20μmの未加硫フッ素ゴム層を鋼板両面に形成させ、180℃、5.88MPa(60kgf/cm2)、10分間の条件下で加圧加硫を行って、ステンレス鋼-フッ素ゴム複合体(フッ素ゴム積層鋼板)を作製した。
【0024】
作製されたフッ素ゴム積層鋼板について、次のような評価方法を実施した。
耐水試験:異種金属間の電位差を考慮した浸せき試験として、ガラス製容器内に入れた95℃の0.1重量%炭酸水素ナトリウム水溶液中にそれぞれ7日間、ゴム金属積層板とアルミニウム板とを逆V字形で頂部が接するようにクリップなどで押さえながら浸せきし、その際頂部付近は液面より上部に位置するようにし、また接触部分のゴム金属積層板はゴム部分を削り取り、ステンレス鋼板部分がアルミニウム板とが直接接触するようにして浸せき試験を行った後、ゴバン目剥離試験(JIS K5600-5-6塗膜の付着性試験方法=クロスカット法=準拠)を実施
LLC試験:ソフトメタルを耐圧容器中で、50重量%ロングライフクーラント水溶液中に120℃、14日間浸漬した後、ゴバン目剥離試験を実施
耐熱試験:ソフトメタルをオーブン中で200℃、3日間暴露した後、ゴバン目剥離試験を実施
【0025】
実施例
実施例において、加硫接着剤組成物として、フッ素ゴムコンパウンド溶液の代わりに、フッ素ゴム溶液が同量用いられた。なお、フッ素ゴム溶液としては、フッ素ゴム(バイトンA)の25重量%メチルエチルケトン溶液が用いられた。
【0026】
実施例
実施例において、加硫接着剤組成物として、フッ素ゴムコンパウンド溶液量が34重量部に変更され、さらに上記フッ素ゴム溶液34重量部が追加されたものが用いられた。
【0027】
実施例
実施例において、加硫接着剤組成物として、オルガノシリカゾルの代わりにハイドロタルサイト粉末(DHT-6)11重量部(固形分15.7重量%)が用いられ、またメチルエチルケトン量が3320重量部に変更されたものが用いられた。
【0028】
実施例
実施例において、加硫接着剤組成物として、オルガノシリカゾル量が85重量部(固形分11.2重量%)に、またメチルエチルケトン量が3540重量部にそれぞれ変更されて用いられ、ハイドロタルサイト粉末(DHT-6)8.5重量部(固形分11.2重量%)がさらに追加されたものが用いられた。なお、フェノール樹脂溶液100重量部は、固形分55.3重量%となる。
【0029】
比較例
実施例において、加硫接着剤組成物として、オルガノシリカゾルが用いられず、メチルエチルケトン量が2780重量部に変更されたものが用いられた。
【0030】
比較例
実施例において、加硫接着剤組成物として、オルガノシリカゾル量が550重量部(固形分48.2重量%)に、またメチルエチルケトン量が4980重量部にそれぞれ変更されたものが用いられた。なお、フェノール樹脂溶液100重量部は、固形分36.8重量%となる。
【0031】
比較例
実施例において、加硫接着剤組成物として、オルガノシリカゾル量が550重量部(固形分32.5重量%)に、またメチルエチルケトン量が7677重量部にそれぞれ変更され、ハイドロタルサイト粉末(DHT-6)55重量部(固形分32.5重量%)がさらに追加されたものが用いられた。なお、フェノール樹脂溶液100重量部は、固形分24.9重量%となる。
【0032】
参考例
実施例において、加硫接着剤組成物として、オルガノシリカゾルが用いられず、メチルエチルケトン量が2780重量部に変更されたものが用いられ、またSUS鋼板として、下地処理としてクロメート処理を行った鋼板が用いられた。
【0033】
以上の実施例1〜5、比較例1〜3および参考例で作製されたフッ素ゴム積層板について、実施例1と同様に耐水試験、耐LLC試験および耐熱試験を行った。得られた結果は、次の表に示される。なお、いずれの加硫接着剤組成物も、全固形分濃度が2重量%であった。

試験項目 実1 実2 実3 実4 実5 比1 比2 比3 参考例1
耐水試験 0 0 0 0 0 4 2 3 0
耐LLC試験 0 0 0 1 0 5 4 3 0
耐熱試験 3 1 0 4 2 5 5 5 0
【0034】
実施例6〜10、比較例4〜6、参考例
実施例1〜5、比較例1〜3、参考例において、フェノール樹脂溶液の代わりに以下のエポキシ樹脂溶液が同量用いられた。
〔エポキシ樹脂溶液〕固形分濃度 41.9重量%
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート801) 50重量部
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート152) 40 〃
2-エチル-4-メチルイミダゾール 10 〃
メチルエチルケトン 100 〃
【0035】
以上の実施例6〜10、比較例4〜6、参考例で作製されたフッ素ゴム積層板について、実施例1と同様に耐水試験、耐LLC試験および耐熱試験を行った。得られた結果は、次の表に示される。なお、いずれの加硫接着剤組成物も、全固形分濃度が2重量%であった。

試験項目 実6 実7 実8 実9 実10 比4 比5 比6 参考例2
耐水試験 0 0 0 0 0 4 3 3 0
耐LLC試験 0 0 0 1 0 4 4 2 0
耐熱試験 2 1 0 3 2 5 5 5 0
【0036】
実施例11〜15比較例7〜9参考例3
実施例1〜5、比較例1〜3、参考例において、フェノール樹脂溶液量が50重量部(固形分30.0重量%)に変更され、上記エポキシ樹脂溶液50重量部(固形分30.0重量%)がさらに用いられた。
【0037】
以上の実施例11〜15比較例7〜9参考例3で作製されたフッ素ゴム積層板について、実施例1と同様に耐水試験、耐LLC試験および耐熱試験を行った。得られた結果は、次の表に示される。なお、いずれの加硫接着剤組成物も、全固形分濃度が2重量%であった。

試験項目 実11 実12 実13 実14 実15 比7 比8 比9 参考例3
耐水試験 0 0 0 0 0 4 3 3 0
耐LLC試験 0 0 0 1 0 4 4 2 0
耐熱試験 1 1 0 2 2 4 4 4 0
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る加硫接着剤組成物は、クロメート処理を施さないステンレス鋼板に適用した場合に、ステンレス鋼板とフッ素ゴムを効果的に接合させることができ、またかかる加硫接着剤組成物を用いて加硫接着されたゴム積層鋼板は、すぐれた耐水性および耐不凍液性を示すものであるため、環境保全やリサイクル性などの社会問題に対する対策案としてきわめて有効であるばかりではなく、こうした耐水性、耐不凍液性が要求される自動車エンジンなどに装着されるガスケットとして有効に用いることができるといった実用上の効果をも兼ね備えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノール樹脂および/またはエポキシ樹脂に(b)溶媒分散性シリカおよび/またはハイドロタルサイト類縁化合物を添加してなる、ステンレス鋼板とフッ素ゴムとの加硫接着に用いられる加硫接着剤組成物。
【請求項2】
接着剤固形分中の配合割合が(a)フェノール樹脂および/またはエポキシ樹脂50〜90重量%および(b)溶媒分散性シリカおよび/またはハイドロタルサイト類縁化合物10〜50重量%である請求項1記載の加硫接着剤組成物。
【請求項3】
さらに(c)フッ素ゴムコンパウンド溶液および/またはフッ素ゴム溶液が添加された請求項1記載の加硫接着剤組成物。
【請求項4】
接着剤固形分中の配合割合が(a)フェノール樹脂および/またはエポキシ樹脂40〜80重量%、(b)溶媒分散性シリカおよび/またはハイドロタルサイト類縁化合物5〜40重量%および残部が(c)フッ素ゴムコンパウンドおよび/またはフッ素ゴムである請求項3記載の加硫接着剤組成物。
【請求項5】
溶媒分散性シリカの一次粒子径が5〜30nmである請求項1または3記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1または3記載の加硫接着剤組成物によって加硫接着されたフッ素ゴム積層ステンレス鋼板。
【請求項7】
請求項6記載のゴム積層ステンレス鋼板からなるガスケット。

【公開番号】特開2011−57986(P2011−57986A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204127(P2010−204127)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2004−248156(P2004−248156)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】