説明

化合物半導体の製造装置および製造方法

【課題】結晶性に優れたII−VI族化合物半導体を製造するための半導体製造装置、および、製造方法を提供する。
【解決手段】原料ガスを基板10に向かって所定の角度で供給する供給口12と、基板10で反射された原料ガスが入射する位置に配置された排気口14とを有するMOCVD装置を提供する。これにより、2以上の原料ガスをそれぞれ基板10に所定角度で入射させて、基板10上で反応させる。基板10上で反射された原料ガスを、直接的に排気口14に取り込んで排気するか、もしくは、基板10上で反射された原料ガスの進行方向を制御し、排気口14まで導いて排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体の結晶膜をエピタキシャル成長させるのに適した製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
光学素子等に使用されるGaAs、GaAlAs、GaAsP、GaAlP、GaAlAsP等のIII−V族化合物半導体の結晶成長方法としては、液相成長(LPE)法、分子線エピタキシャル(MBE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法等が用いられる。特に、MOCVD法は、結晶成長速度が速く、膜成長の制御性およびその再現性にも優れるため、広く用いられている。例えば、特許文献1には、前処理室で所定のガスで基板を処理してから、MOCVD成長室に移動させ、有機III族化合物ガスおよび有機V族化合物ガスを導入し、圧力76torr、基板温度750℃の条件でAlGaAs層およびGaAs層を結晶成長させることが開示されている。
【0003】
一方、III−V族化合物半導体の中でも、GaN、GaAlN、InGaN等の窒化物III−V族化合物半導体を用いた光学素子の特性が注目を集めている。また、その次世代の半導体として、ZnSe、ZnCdSe、ZnO、ZnMgO等のII−VI族化合物半導体が研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3353876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ZnSe、ZnCdSe、ZnO、ZnMgO等のII−VI族化合物半導体は、従来のIII−V族化合物半導体の成長に用いられているMOCVD法で膜形成すると、細かい粒界が積み重なった堆積層や多結晶層になる場合が多い。また、例え単結晶層が形成されたとしてもn型の残留キャリア濃度が高かったり、結晶の幾何学的整列性を反映するX線ω−θ測定におけるロッキングカーブの半値幅が広いなど、良質な結晶をエピタキシャル成長させることが非常に難しい。具体的には、ZnO結晶の場合、良好なp伝導型層を得るには、残留キャリア密度が5×1016(個/cm)以下で、結晶ドメインのチルティング、ツイスティング量が少ない良質な結晶を成長させる必要があるが、従来のMOCVD法では未だ得られていない。特に、酸素空孔に起因するn型の残留キャリア濃度を減らすには、反応性の高い酸素供給材料を使用する必要があるが、従来の粘性流体領域を用いたMOCVD法で反応性の高いVI族ガスを用いると、基板に原料ガスが到達する前に原料ガス(II族ガスとVI族ガス)が反応してしまい、高い反応性を保った状態で原料ガスを基板に供給することが出来なかった。一方、MBE法を用いた場合には、単結晶を成長させることが可能であるが、成長速度が遅いという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、結晶性に優れたII−VI族化合物半導体の製造に好適な半導体製造装置、および、製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、III−V族化合物半導体の成長に用いられている通常のMOCVD法ではII−VI族化合物半導体の良質な結晶をエピタキシャル成長させることができない原因を探究した。その結果、II−VI族化合物半導体の原料ガスであるII族化合物ガスおよびVI族化合物ガスは、III族化合物ガスおよびV族化合物ガスに比較して反応性が高いものが多く、基板に原料ガスが到達する手前の空間で原料ガス同士が反応して反応生成物を形成し、それらの一部が基板上に堆積してエピタキシャル成長を阻害していることがわかった。この問題を解決するには、反応性の高いII−VI族化合物半導体の原料ガスを、基板に到達するまで互いに反応させず、しかも基板上では反応を生じさせるように制御する必要がある。
【0008】
発明者らは、原料ガスが分子流および分子流的な挙動を示す領域の圧力でII−VI族化合物半導体のMOCVDを行うことにより、基板に到達する前に原料ガス同士が反応して反応性生成物を生じる現象を回避できることを見いだした。なお、本発明でいう、原料ガスが分子流および分子流的な挙動を示す領域の圧力とは、ガス供給ノズルから基板までの距離Lを原料ガスの平均自由行程でWで除した値(L/W)が数十以下の圧力領域を意味し、具体的には例えば10−2torr以下程度である。また、分子流領域と完全粘性流体領域との中間圧力領域である10−2torrより大きく10torr以下程度の圧力領域を亜分子流領域と称し、本発明の圧力領域に含む。従来のIII−V族化合物半導体等の成長に用いられているMOCVD法のガス圧は、通常数十torr以上であり、完全な粘性流体領域であるため、原料ガスの流れの進行方向は、液体と同様に流体力学によって決まり、例えば温度分布が存在すると対流を生じ、真空容器の形状や障害物が存在すると淀み等を生じる。このため、2種類の原料ガスが基板に到達するまで互いに接触しないように進行方向を制御することは、きわめて困難である。
【0009】
これに対し、分子流領域の圧力(10−2torr以下)では、原料ガスの分子は、粒子として振る舞うため、平均自由行程を直進し、衝突した場合には弾性散乱により進行方向を変え、また直進する。よって、原料ガスの進行方向の制御が可能である。また、亜分子流領域の圧力(10−2torrより大きく10torr以下)は、分子流の挙動のみならず粘性流の挙動も示しはじめる境界領域で、ノズルから供給されたガスは拡散するものの直進性は維持されており、進行方向を制御することが可能である。本発明では、2種類の原料ガスをガス供給口から基板に向かって吹き出すことにより、原料ガスを基板までほぼ直進させ、基板に衝突させることにより、両者を接触させ、基板上で反応させる。これにより、基板上でエピタキシャル成長を生じさせることができる。
【0010】
基板に衝突した原料ガスのうち反応を生じなかった原料ガスは、基板上で反射される。その進行方向に真空容器壁や障害物が存在すると、それによってさらに反射されて、再び基板方向へ戻り、ガス供給口から供給された原料ガスと基板の手前の空間で反応して反応生成物を生じ、エピタキシャル成長を妨げるおそれがある。そこで、本発明では、基板へ向かって供給した原料ガスの進行方向を、基板に衝突後も制御し、速やかに排気する。
【0011】
このように、本発明では、II−VI族化合物半導体の原料ガスを分子流としての挙動を示す領域のガス圧で基板に向かって供給し、基板に衝突後の原料ガスの進行方向を制御し、基板に戻らせることなく排気するMOCVD法による半導体製造方法を提供する。
【0012】
すなわち、原料ガスが分子流としての挙動を示す領域の圧力に設定された空間に基板を配置し、基板に向けて予め定めた角度で2以上の原料ガスを噴出することにより、2以上の原料ガスをそれぞれ基板に前記角度で入射させて、基板上で反応させる。原料ガスのうち基板上で反射される等により、基板上では反応を生じなかった原料ガスを、直接的に排気口に取り込んで排気するか、もしくは、基板上で反応を生じなかった原料ガスの進行方向を制御し、排気口まで導いて排気するようにする。これにより、2以上の原料ガスとして、II族化合物ガスと反応性の高いVI族化合物ガスとを用いることが可能となるため、基板面上での活性酸素濃度を高くできる。その結果、酸素空孔が減り、n型残留キャリア濃度の低いII−VI族化合物半導体結晶をエピタキシャル成長させることが可能になると期待される。基板が配置される空間の圧力は、10torr以下であることが望ましく、より好ましくは5torr以下であり、さらに好ましくは3torr以下0.01torr以上である。
【0013】
また、従来のMOCVD装置は、粘性流体領域の原料ガスでMOCVDを行うために設計されているため、従来のMOCVD装置でガス圧を分子流領域まで下げたとしても、材料ガスの基板への供給と排気の進行方向の制御をすることができない。そこで、本発明では、分子流領域から亜分子流領域において、2種類の原料ガスの進行方向の制御をする半導体製造装置を提供する。
【0014】
すなわち、本発明の半導体製造装置は、真空容器と、真空容器内に基板を配置するための基板搭載部と、基板に対して2以上の原料ガスを噴出するためのガス供給部と、ガス排出のために真空容器に設けられた排気口とを有する構成とする。ガス供給部は、噴出した原料ガスが予め定めた角度で基板面に入射する位置に配置される。排気口は、基板面で反射された原料ガスが到達する位置に配置される。
【0015】
例えば、排気口は、基板面で反射された原料ガスが直接的に入射する位置、および、基板面で反射された原料ガスが真空容器の壁面で反射されて入射する位置のうちの少なくとも一方に配置することができる。また、排気口は、基板面を挟んでガス供給部と対称な方向に配置することもできる。また、ガス供給部と基板と排気口とを結ぶ経路がV字状の経路となるように配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態の単数枚式のMOCVD装置の構成を示す断面図。
【図2】(a)および(b)は図1のMOCVD装置のガス供給ノズル12の斜視図。
【図3】(a)は図1のMOCVD装置のガス供給ノズル12に原料ガスの衝突回数低減用の不活性ガス噴出スリットを備えた構成を示す斜視図、(b)は図(a)のガス供給ノズル12から放出される原料ガスの層構造を示す説明図。
【図4】第2の実施の形態の多数枚式のMOCVD装置の構成を示す断面図。
【図5】図4のMOCVD装置のサセプター11の上面図。
【図6】図4のMOCVD装置のガス供給ノズル12の上部に誘導板61を配置した構成を示す断面図。
【図7】図1のMOCVD装置のガス供給ノズル12として、原料ガスの衝突回数低減用の分離板を備えた構成を示す斜視図。
【図8】第2の実施の形態の多数枚式のMOCVD装置に付着板81を配置した構成を示す断面図。
【図9】第2の実施の形態の多数枚式のMOCVD装置に吸着ジャケット91を配置した構成を示す断面図。
【図10】第2の実施の形態のMOCVD装置において、ガス供給ノズル12を入射角θ1=45度以上で配置して、直接排気する構成とした装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の半導体製造装置について図1等を参照しながら説明する。図1の半導体製造装置は、分子流としての挙動を示す領域の圧力で有機金属気相成長(MOCVD)を行うための装置である。このMOCVD装置は、図1に示したように、基板10を載置するためのサセプター11と、サセプター11に搭載された基板10に向かって第1及び第2の原料ガスを照射するためのガス供給ノズル12とを有する。これらは、真空容器13内に配置されている。サセプター11の裏面側には、基板10を加熱するためのヒータ17と、サセプター11を回転させるための回転駆動機構18が配置されている。また、真空容器13内の所定の位置に、所定の開口径を有する排気口14が設けられている。排気口14には、所定の形状の導入管15が接続され、真空排気装置16が取り付けられている。真空容器13内の圧力は、ガス供給ノズル12のガス噴出量と、真空排気装置16の排気量とを調整することにより、原料ガスが分子流としての振る舞いを示す圧力範囲(10torr以下10−4torr以上であることが望ましく、より好ましくは5torr以下であり、さらに好ましくは3torr以下0.01torr以上)に設定される。
【0018】
ガス供給ノズル12は、図2(a)に示したように第1及び第2の原料ガスをノズル12の真空容器13の外部からそれぞれ取り込む供給管24、25を有している。ガス供給ノズル12の噴出面21には、第1の原料ガスを噴出する噴出口22の列と、第2の原料ガスを噴出する噴出口23の列とが交互に並べられて配置されている。ノズル12の内部には、供給管24により供給された第1の原料ガスを噴出口22まで導く流路と、供給管25により供給された第2の原料ガスを噴出口23まで導く流路とが設けられている。これにより、第1の原料ガスと第2の原料ガスを互いに接触させることがなく、第1の原料ガスを噴出口22から噴出し、第2の原料ガスを噴出口23から噴出することができる。
【0019】
ガス供給ノズル12の噴出口22、23の向きは、噴出された原料ガスの流れが予め定めた入射角θ1で基板10に入射するように設定されている。すなわち、噴出口22、23が配置されたガス噴出面21は、斜め上方から傾斜して基板10と向き合うように配置され、ガス噴出面21の法線と基板10の主平面とのなす角は角度θ1に設定されている。ガス噴出面21の大きさは、その位置から噴出したガスが直進した場合に、基板1の全面に照射されるように定められている。これにより、2種類の原料ガスは、ガス供給ノズル12の噴出口22,23から、原料ガスが分子流としての振る舞いを示す圧力範囲に設定された真空容器13内にそれぞれ噴出されることにより、原料ガスは直進し、入射角θ1で基板10の全面に入射する。真空容器13のガス導入部の壁面は、原料ガスの流れを妨げることがないように形状が定められている。なお、噴出面における噴出口22,23の列方向は、図2(a)のように入射角θ1を含む面に平行に配置することも可能であるし、図2(b)に示したように、入射角θ1を含む面に垂直に配置することも可能である。
【0020】
真空容器13の排気口14は、基板10によって反射された原料ガスの流れが障害物等に衝突することなく直接入射するように基板10を挟んでガス供給ノズル12と対称な方向に配置されている。すなわち、ガス供給ノズル12と基板10と排気口14とを結ぶ経路は、V字状の経路となっている。排気口14の開口の大きさは、基板1の全体から反射された原料ガスの流れが入射できる大きさに定められている。また、導入管15も、排気口14から入射した原料ガスの流れが、壁面に衝突することなく真空排気装置16まで進むことができるように、基板10に近い部分の壁面15aは、基板10と角度θ2(=θ1)をなすように設定されている。基板10から遠い部分の壁面15bは、基板10から離れるに従って原料ガスの流れの直進性が弱まるため、基板10と角度θ2を成すように設定しなくてもよく、原料ガスを真空排気装置16に導くようにその形状が定められている。これにより、ガス供給ノズル12から噴射された原料ガスの流れは、ほぼ入射角θ1で基板1に入射し、弾性散乱により基板1の表面で出射角θ2(=θ1)の方向へ反射されるが、反射された原料ガスの流れは直接的に排気口14内へ入射し、真空排気装置16まで到達して排気される。
【0021】
また、導入管15の壁面15aの延長上には、基板10を観察する直視できる位置に窓19が設けられている。窓19は、目視によって基板10を観察する用途の他に、この窓19を通して、基板10上の形成されている膜に光を照射し、その反射光を受光して膜厚を測定することが可能である。また、基板10上での原料ガスの反応を促進するために高エネルギーの紫外線を照射したり、基板10上での反応生成物のマイグレーションを向上させるために高エネルギーの赤外線を照射するために、窓19を利用することもできる。
【0022】
また、ガス供給ノズル12の内部には、図示していないが原料ガスの温度を調整するための温度調整装置(例えば、水冷装置)が備えられている。この温度調整装置により、原料ガスは、自己分解温度よりも低い温度であって、原料ガスがノズル12内で液体にならない温度を保つように調節される。例えば、原料ガスとしてII族化合物ガスとVI族化合物ガスを用いた場合には、ガス供給ノズル12の温度は、室温から200℃程度までの温度に設定することが望ましい。
【0023】
ガス供給ノズル12の噴出面21と基板10との距離Lは、原料ガスの平均自由行程(W)で割った値(L/W)が小さいほど良い。即ち、距離(L)が短いか、平均自由行程(W)が長いことが望まれる。しかし双方の関係には基板10上での原料ガス濃度、ガス供給ノズル12の幾何学的また温度的な制約があるため、以下の関係にすることが望ましい。真空容器13内の圧力が、高真空領域から10−2torr以下の圧力領域においては、原料ガスの平均自由行程は比較的長い(例えばOの場合、10−2torrにおいてW≒5mm)ため、ノズル12から基板10までの距離は長くできる。基板面からノズル12が遠くにあれば基板10から受ける熱の影響が少なく、原料ガスがノズル12部分で予期せぬ分解を起こすことを防止することができる。具体的には、距離Lは200mm以下に設定することが望ましく、更に好ましくは150mm以下にすることが望ましい。また、10−2torr以上10torr以下の圧力領域では、平均自由行程が短くなる(例えばOの場合、10torrにおいてW≒5μm)ため、基板10に対してノズルを近づけた方が望ましく、具体的には距離Lを150mm以下に設定することが望ましく、更に好ましくは100mm以下にすることが望ましい。一方、供給ノズル12と基板10の最近接距離は、基板温度が600℃以下では30mm以上が望ましく、さらに好ましくは40mm以上が望ましい。また、基板温度1000℃以下では40mm以上が好ましく、さらに好ましくは50mm以上が望ましい。
【0024】
ガス供給ノズル12と基板10とのなす角θ1(=θ2)の角度によって、基板10に対する原料ガスの供給角と排気角が決定される。スムースな排気を得るにはθ2(=θ1)は大きい方が望ましく、供給ガスと排気ガスの空間中の重なりを小さくするにはθ1は小さい方が望ましい。真空容器内の圧力が低い(高真空)場合は、θ1は大きくでき、圧力が高い場合はθ1は小さい方が望ましい。具体的にはθ1を30°以上70°以下にすることが好ましく、更に好ましくは40°以上60°以下にすることが望ましい。
【0025】
他方、原料ガス流量と排気速度でバランスされる真空容器内の圧量は、10torr以下が好ましく、望ましくは3torr以下であり、さらに好ましくは1torr以下0.01torr以上が望ましい。
【0026】
真空容器13の圧力が0.01torrから10torrの亜分子流領域における原料ガスの平均自由行程が短い領域では、原料ガスの衝突回数(II族化合物ガスとVI族化合物ガスとの衝突回数)を減少させるための手段を採用することも可能である。例えば、原料ガス供給ノズル12から噴出される噴出口22、23の間に仕切板や不活性ガス層を配置し、噴出された2種類のガスの流れを互いに接触しないように保ったまま基板10近くまで進行させたり、原料ガスに低反応性ガスを混入したり、原料ガス自体として低反応性ガスを用いたりすることが可能である。
【0027】
つぎに、図1のMOCVD装置を用いて、II−VI族化合物半導体であるZnO層を基板10上に成長させる方法について説明する。
【0028】
基板10としては、サファイア単結晶、ZnO単結晶等を用いることができる。第1の原料ガスは、II族化合物ガスを用い、第2の原料ガスはVI族化合物ガスを用いる。II族化合物ガスとしては、ジメチルジンク(DMZと記す)、ジエチルジンク(DEZと記す)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mgと記す)のうち少なくとも1つを含むガスを用いることができる。VI族化合物ガスとしては、水蒸気(HO)、酸素(O)、亜硝酸ガス(NO)、笑気ガス(NO)のうち少なくとも1つを含むガスを用いることができる。例えば、II族化合物ガスとしてDMZ、VI族化合物ガスとして酸素または水蒸気を用いることができる。また、II族化合物ガスとしてDEZ、VI族化合物ガスとして酸素または水蒸気を用いることができる。
【0029】
基板10は、真空容器13内のサセプター11に搭載する。その後、真空排気装置16を稼働し、所定の真空度まで真空排気した後、ヒータ17により、基板10を加熱する。基板10の温度は、300℃〜900℃に設定することが望ましく、ZnO層をエピタキシャル成長させる場合、例えば400℃以上に設定することができる。この状態で、II族化合物ガスと、VI族化合物ガスをそれぞれ供給管24、25からガス供給ノズル25内に供給し、それぞれ別々の噴出口22,23から噴出させる。真空容器13内の圧力は、10−4torr〜10torrとなるように、原料ガスの供給量と真空排気装置16の排気量とを制御する。また、ガス供給ノズル12の温度は、2種類の原料ガスの自己分解温度よりも低い温度であって、原料ガスが液体にならない温度が保たれるように温度調整装置によって制御される。
【0030】
このように真空容器13内の圧力を制御することにより、ガス供給ノズル12の噴出口22,23から真空容器13内に放出されたII族化合物ガスおよびVI族化合物ガスは、分子の流れとなってそれぞれ直進する。ガス供給ノズル12の向きは、上述のように基板10の主平面に対して角度θ1をなす斜め上方に配置されているため、2種類の原料ガスは、図1に示したように入射角θ1で基板10の上面に入射する。基板10上に2種類の原料ガスが入射することにより、基板10上で2種類の原料ガスは衝突して化学反応を生じ、ZnOが生成される。例えば、II族化合物ガスとしてDMZ((CHZn)を用い、VI族化合物ガスとして酸素を用いた場合、基板10上で両分子が衝突し、以下の式(1)のように反応し、ZnOが生成される。
(CHZn+1/2O→ZnO・・・・(1)
【0031】
生成されたZnOは、サファイア(Al)基板10の結晶軸(c軸)に沿って配列し、ZnO層を形成する。その後、そのZnO層上に順次ZnOが結合していくことにより、ZnO結晶が成長し、ZnO結晶層をエピタキシャル成長させることができる。
【0032】
一方、基板10上に入射した2種類の原料ガスのうち、式(1)の化学反応を生じなかった原料ガスは、弾性散乱により基板10の表面で反射され、図1のように入射角θ1と等しい出射角θ2で反射される。本実施の形態では、出射角θ2で反射された原料ガスの進行方向に排気口14を配置しているため、基板10で反射された原料ガスをすべて排気口14内に入射させることができる、導入管15を直進した原料ガスは、基板10から十分離れて直進エネルギーが弱まった位置で真空排気装置16の方向へ導かれ、真空排気装置16によって排気される。このため、基板10で反射された原料ガスは再び基板10の方向へ戻ることなく、真空排気装置16によって速やかに排気される。このように反射後の原料ガスの進行方向を制御することにより、非常に反応性の高い2種類の原料ガスを、再び基板10の方向に戻ることがないようにすることができ、基板10の上部空間等の予期せぬ空間で原料ガスが乱流となって反応し、ZnO結晶粒を形成する現象を防ぐことができる。これによりZnO結晶粒の基板10上への堆積を防止し、エピタキシャル成長を継続させることが可能である。
【0033】
なお、本実施の形態のMOCVD装置は、上述のように基板10上もしくは基板10の極近傍で上記式(1)の反応が生じるため、単に分子のマイグレーション(熱運動)のみならず、式(1)の反応エネルギーを利用して、基板10の最表面原子とZnOとの結合、および、ZnO同士の結合を生じさせることができる。よって、予めZnとOを各々基板まで到達させ、基板温度から得るエネルギーによる分子のマイグレーションのみで配列されるMBE法と比較して、得られるZnO結晶層の結晶性が高いというメリットがある。また、MBE法よりも結晶成長速度も大きいというメリットもある。よって、ZnO結晶層を用いる光学素子を本実施の形態のMOCVD装置で製造することにより、高性能の光学素子を効率よく製造することが可能である。
【0034】
また、本実施の形態のMOCVD装置において、ZnとOとの結合準位に等しいエネルギーレベルの紫外線を窓19から基板10へ向けて照射することにより、基板10上でのZnO同士の結合を促進し、結晶性を向上させることが可能である。また、上記式(1)の左辺から右辺に反応を進ませるために必要なエネルギーを紫外線によって窓19から供給することにより、式(1)の反応を促進することも可能である。さらに、窓19から赤外線を照射することにより、基板10上でのZnOのマイグレーション(熱運動)を活発にさせ、結晶性を向上させることも可能である。
【0035】
また、ガス供給ノズル12として、図3(a)に示したような構造のものを用いることができる。図3(a)のガス供給ノズル12は、ガス供給ノズル12から基板10へ到達するまでの間の原料ガス間の衝突を減少させるための構造を備えている。具体的には、図3(a)に示したガス供給ノズル12は、第1および第2の原料ガスを供給するための供給管24,25に加えて、不活性ガスを供給するための供給管27を有している。また、噴出面21には、第1の原料ガスを噴出する噴出口22の列と第2の原料ガスを噴出する噴出口23の列との間に、不活性ガスを噴出するためのスリット状噴出口26が設けられている。供給管27から供給された不活性ガスは、第1及び第2の原料ガスと混じることなく、スリット状噴出口26まで導かれ、噴出される。このように、不活性ガスをスリット状噴出口26から噴出することにより、図3(b)に示したように噴出口22の列から噴出される第1の原料ガス層32と、噴出口23から噴出される第2の原料ガス層33との間に不活性ガス層36が挟まれる。よって、平均自由行程によって決まる確率で衝突が生じても、第1の原料ガスと第2の原料ガスとは不活性ガス層によって分離されているため、第1の原料ガスと第2の原料ガスとが衝突する確率は格段に低下する。したがって、真空容器13内の圧力を亜分子流領域(10−2torr以上10torr以下)の圧力に設定した場合であっても、基板10の手前の空間で原料ガス間の衝突により反応生成物が生じる確率を低減することができ、エピタキシャル成長をより良好に行わせることができる。
【0036】
また、ガス供給ノズル12として、図7に示した構造のものを用いることもできる。図7のガス供給ノズル12は、ガス供給ノズル12から基板10へ到達するまでの間の原料ガス間の衝突を減少させるために、図7に示すように、第1の原料ガスの噴出口22と、第2の原料ガスの噴出口23との間に、石英製の分離板71を配置したものである。分離板71の長さは、ガス供給ノズル12から基板10までの距離Lの1/2程度に設定されている。これにより、基板10に到達するまでの原料ガス間の衝突頻度を約1/2に低減することができ、基板10の手前の空間における反応生成物の発生を低減することができる。
(第2の実施の形態)
【0037】
つぎに、第2の実施の形態の半導体製造装置について図4を用いて説明する。図4の装置は、多数枚式のMOCVD装置である。図4のMOCVD装置において、図1のMOCVD装置と同様の作用をする部品については、同じ符号を付している。
【0038】
図4のMOCVD装置では、図5に示したように6枚の基板10を搭載可能なサセプター11を備えている。サセプター11は、回転駆動機構18により回転駆動力を伝達されることにより、サセプター11全体が回転すると同時に、サセプター11内に配置されたカム機構によって基板10のそれぞれを自転させる構造を有している。
【0039】
サセプター11の中心には、基板10によって反射された原料ガスの流れの方向を上方向きに変更させるためのセンタースペーサー41が配置されている。スペーサー41の形状は、円錐の頂点を水平に切断した円錐台形状であって、その外周面は母線が弧を描く曲面になっている。よって、基板10上で反応を生じなかった原料ガスの流れをセンタースペーサー41の外周面に沿って上昇させることができる。これにより、イレギュラーな方向に進行する原料ガスの流れが存在する場合であっても、中心を挟んで反対側に位置する基板10には到達することがない。なお、真空容器13内の圧力を10−2torr以下に設定する場合には原料ガスは基板10面で入射角と同じ角度で反射するため、進行方向の制御は容易であり、センタースペーサー41を使用しなくても良い。真空容器13内の圧力を10−2torrより大きく10torr以下に設定する場合には、センタースペーサー41を配置し、原料ガスの進行方向を制御することが望ましい。
【0040】
ガス供給ノズル12は、第1の実施の形態の図2(a)、図2(b)、図3または図7に示したガス供給ノズル12と同様の構成であるが、本実施の形態ではこれを円環形状にしており、ガス供給ノズル12は、サセプター11の外周に沿うように配置されている。噴出面21は、基板10に対して原料ガスを入射角θ1=45°で入射させるように向けられている。したがって、本実施の形態のガス噴出ノズル12は、サセプター11の外周全体から一様に第1および第2の原料ガスの流れを基板10に向かって照射する。噴出面21には、図2(a)、図2(b)、図3と同様に、第1原料ガスを噴出する噴出口22の列と第2原料ガスを噴出する噴出口23の列とが交互に配置されている。図3のガス供給ノズル12を用いる場合には、これらの噴出口22,23の間にさらに不活性ガスの噴出口26が配置されている。
【0041】
ガス噴出ノズル12の下部には、原料ガスのガス溜まりが生じないようにするためにスペーサー42が配置されている。スペーサー42の材質は、ステンレス、石英またはセラミックスである。スペーサー42が配置され、ガス溜まりを防止することにより、ガス噴出ノズル12の下部で反応生成物や中間生成物が形成され、基板10上に移動してエピタキシャル成長を妨げるのを防止することができるという効果が得られる。また、原料ガスの種類を変更した場合、ガス溜まりによって原料ガスの交換に遅延が生じるのを防止する効果もある。スペーサー42には原料ガスの流れが接触するため、ガス供給ノズル12と同様の温度に設定することが望ましく、そのためにスペーサー42内に温度調整機構、例えば、水冷機構等を備えることが望ましい。
【0042】
真空容器13は、サセプター11の基板10が配置されている領域の直径(2×r)と同等の直径を有している。図4の多数枚式MOCVD装置は、サセプター11の外周方向の全体から第1及び第2の原料ガスが基板10に向かって照射されるため、基板10で反応を生じなかった原料ガスもサセプター11の外周方向全体に向かって進む。そこで、図4のMOCVD装置では、真空容器13の天井43の高さを高くするとともに、垂直で滑らかな側壁44を有する構成とし、側壁44の最上部の複数箇所(3カ所)に周方向に等角度をあけて3つの排気口14を配置している。これにより、基板10で反応しなかった原料ガスは、側壁44に一部付着しながら反射されて、天井43付近まで到達し、3つの排気口14で排気される。原料ガスは、側壁44で反射されながら排気口14に向かうことにより、直進するエネルギーが弱まるため、排気口14の排気力により進行方向が変わり、排気口14に取り込まれる。よって、原料ガスは、直進するエネルギーの大きいまま天井43に衝突することがないため、天井43で原料ガスが反射されて基板10へ戻る現象を防ぐことができる。このため、天井43の高さは、高い方が望ましく、具体的には、真空容器13の基板10の位置から天井43までの高さHを、H≧3×rを満たすように設計することが望ましい。(ただし、rは、真空容器13の半径である。)また、排気口14の径は、r以上であることが望ましい。
【0043】
3つの排気口14には、それぞれ導入管115a,115bが接続され、真空排気装置16がとりつけられている。導入管115a,115bの向きは、図4の導入管115aのように、原料ガスの流れの方向に平行にすることも可能であるし、導入管115bのように水平方向に向けることも可能である。導入管115a、115bに到達する時点では原料ガスのほとんどは、直進するエネルギーが弱まっているため、水平な導入管115bであっても良好に排気できる。
【0044】
真空容器の天井43には、複数の窓19が配置されている。窓19には、基板10上に光を照射し、その反射光を受光することにより基板10上の膜厚測定を行う膜厚測定装置45や、基板10上における原料ガスの反応の促進やマイグレーションの促進のために紫外光や赤外光を照射する光源を配置することが可能である。
【0045】
第2の実施の形態の多数枚式MOCVD装置を用いてZnO結晶層を基板10上に形成する手順について簡単に説明する。使用する基板10および原料ガスの種類は、第1の実施の形態と同様である。サセプター11上には、6枚の基板10上に搭載し、真空排気し、基板10を所定の温度に加熱し、ガス供給ノズル12から第1および第2の原料ガスを放出する。第1および第2の原料ガスは、サセプター11の外周方向全体から基板10に向かって直進し、基板10に入射角45°で入射する。これにより、第1及び第2の原料ガスは、基板10上で衝突して反応し、ZnOが生成される。ZnOは、基板10上にエピタキシャル成長する。基板10で反応を生じなかった原料ガスは、センタースペーサー41に側面に沿って上昇し、真空容器13の滑らかな側壁44によって反射されながら上方に進み、排気口14に取り込まれて真空排気装置16によって排気される。天井43の高さHは、H≧3×r(ただし、rは真空容器13の半径)に設計されているため、天井43付近に到達した原料ガスは、すでに直進するエネルギーが弱まっており、天井43に衝突しても、反射された原料ガスが再び基板10まで到達することはない。このような構成であるため、多数枚式のMOCVD装置であっても、基板10で反応を生じなかった原料ガスを基板10に戻すことなく排気することができるため、複数の基板10に一度にエピタキシャル成長を生じさせることが可能である。
【0046】
なお、真空容器13内の圧力は、第1の実施の形態と同様に、10−4torr〜10torrであることが望ましく、より好ましくは5torr以下であり、さらに好ましくは0.01torr以上3torr以下である。0.01torr〜10torrに設定する場合には、粘性流体としての振る舞いも現れるため、図6に示したようにガス供給ノズル12の上部に誘導板61を配置することが望ましい。これにより、ガス供給ノズル12から放出された原料ガスが粘性流体の挙動によって上部に向かう対流現象を示した場合であっても、誘導板61によってそれを抑制して、基板10に向かわせることが可能である。
【0047】
また、図8に示すように真空容器13の側壁44の内側に複数の付着板81を配置することも可能である。付着板81はそれぞれ、側壁44の周方向に沿って一周するように配置されている。付着板81の主平面が基板10で反射された原料ガスの流れに対して直交するように向けられている。これにより、基板10上で反応を生じなかった原料ガスを付着板81に衝突させ、付着板81上で反応させて反応生成物を付着させて捕らえることができる。真空排気装置16内に反応生成物の付着を低減する効果が得られる。
【0048】
同様に、図9に示したように真空容器13の側壁44の内側に吸着ジャケット91を取り付けることも可能である。吸着ジャケット91は、配管92,93によって真空容器13の外部から内部に冷却水が供給され、冷却される構造である。これにより、基板10上で反応を生じなかったガスを冷却ジャケットに衝突した際に冷却して付着させ、トラップすることができる。よって、真空排気装置16内に反応生成物の付着を低減する効果が得られる。
【0049】
また、第2の実施の形態の多数枚式のMOCVD装置において、図10の装置のように、ガス供給ノズル12の向きを、基板10へのガス流の入射角θ1が45度以上になるように設定し、排気口14を、基板10による原料ガスの反射角の方向に配置することも可能である。この場合、第1の実施の形態と同様に、基板10で反射された原料ガスを排気口14に直接入射させ、排気することができる。
【0050】
なお、第1および第2の実施の形態において図1、図4、図8〜図10に示したMOCVD装置は、サセプター11よりも上方にガス供給ノズル12および真空排気装置16が配置されている構成であったが、本発明はこの配置に限定されるものではない。MOCVD装置を倒立させ、サセプター11よりも下方にガス供給ノズル12および真空排気装置16を配置した構成にすることももちろん可能である。
【0051】
上述してきたように、本発明の第1および第2の実施の形態のMOCVD装置を用いて、10−4torr〜10torrで原料ガスの流れを制御しながらMOCVD法を行うことにより、II−VI族化合物半導体等のように原料ガスの反応性が高い化合物半導体であってもエピタキシャル成長させることができる。この方法で得られる化合物半導体層はMBE法等で得られる化合物半導体層と比較して結晶性が高く、光学素子等に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0052】
10…基板、11…サセプター、12…ガス供給ノズル、13…真空容器、14…排気口、15…導入管、16…真空排気装置、17…ヒータ、18…回転駆動機構、19…窓、21…噴出面、22…第1の原料ガスの噴出口、23…第2の原料ガスの噴出口、24…第1の原料ガスの供給管、25…第2の原料ガスの供給管、26…不活性ガスのスリット状噴出口、27…不活性ガスの供給管、32…第1の原料ガス層、33…第2の原料ガス層、36…不活性ガス層、41…センタースペーサー、42…スペーサー、43…天井、44…側壁、45…センサー、61…誘導板、71…分離板、81…付着板、91…吸着ジャケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、該真空容器内に基板を配置するための基板搭載部と、前記基板に対して2以上の原料ガスを噴出するためのガス供給部と、前記真空容器内のガスの排出のために前記真空容器に設けられた排気口とを有し、
前記ガス供給部は、前記原料ガスが予め定めた角度で前記基板面に入射する位置に配置され、
前記排気口は、前記基板面で反射された前記原料ガスが到達する位置に配置されていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置において、前記排気口は、前記基板面で反射された前記原料ガスが直接的に入射する位置、および、前記基板面で反射された原料ガスが前記真空容器の壁面で反射されて入射する位置のうちの少なくとも一方に配置されていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項3】
真空容器と、該真空容器内に基板を配置するための基板搭載部と、前記基板に対して2以上の原料ガスを噴出するためのガス供給部と、前記真空容器内のガスを排気するために前記真空容器に設けられた排気口とを有し、
前記ガス供給部は、前記基板面に対して斜め方向に原料ガスを噴出する位置に配置され、
前記排気口は、基板面を挟んで前記ガス供給部と対称な方向に配置されていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項4】
真空容器と、該真空容器内に基板を配置するための基板搭載部と、前記基板に対して2以上の原料ガスを噴出するためのガス供給部と、前記真空容器内のガスを排気するために前記真空容器に設けられた排気口とを有し、
前記ガス供給部と前記排気部は、前記基板搭載部に対して同じ側に配置され、前記ガス供給部と前記基板と前記排気口とを結ぶ経路がV字状の経路となるように配置されていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体製造装置において、ガス供給部は、第1の原料ガスを噴出するための列状に配置された複数の第1噴出口と、第2の原料ガスを噴出するために列状に配置された複数の第2噴出口とを有し、前記列状の第1噴出口と列状の第2噴出口は、交互に並べて配置されていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体製造装置において、前記ガス供給部は、前記第1噴出口から噴出される第1の原料ガス層と、前記第2の噴出口から噴出される第2の原料ガス層とを分離する不活性ガス層を噴出するために、前記第1噴出口と第2噴出口との間に配置された不活性ガス噴出口をさらに有することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体製造装置において、前記排気口を真空排気装置に連結するための導入管とを有し、前記導入管のうち少なくとも前記排気口に近い部分の壁面は、前記基板に向けて予め定めた角度で傾斜していることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体製造装置において、前記排気口の径は、前記真空容器の半径以上であることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項9】
請求項1または4に記載の半導体製造装置において、前記基板搭載部は、複数の前記基板を搭載可能であり、その中心部には、前記基板面で反射されたガスの向きを制御するための突起が設けられていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項10】
原料ガスが分子流としての挙動を示す圧力に設定された空間に基板を配置し、
前記基板に向けて予め定めた角度で2以上の原料ガスを噴出することにより、前記2以上の原料ガスをそれぞれ前記基板に前記角度で入射させて、前記基板上で反応させ、
前記原料ガスのうち前記基板上では反応を生じなかった原料ガスを、直接的に排気口に入射させて排気することを特徴とする化合物半導体の製造方法。
【請求項11】
原料ガスが分子流としての挙動を示す圧力に設定された空間に基板を配置し、
前記基板に向けて予め定めた角度で2以上の原料ガスを噴出することにより、前記原料ガスを前記基板に前記角度で入射させて、前記基板上で反応させ、
前記原料ガスのうち前記基板上では反応を生じなかった原料ガスの進行方向を制御し、排気口まで導いて排気することを特徴とする化合物半導体の製造方法。
【請求項12】
基板に対して予め定めた角度で2以上の原料ガスを供給しながら、前記基板が配置されている空間の圧力を10torr以下に制御することにより、前記2以上の原料ガスをそれぞれ前記基板に所定角度で入射させて、前記基板上で反応させ、
前記原料ガスのうち前記基板上では反応を生じなかったガスを、直接的に排気口に入射させて排気することを特徴とする化合物半導体の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の化合物半導体の製造方法において、前記2以上の原料ガスとして、II族化合物ガスとVI族化合物ガスとを用い、前記基板上にII−VI族化合物半導体をエピタキシャル成長させることを特徴とする化合物半導体の製造方法。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項に記載の化合物半導体の製造方法において、前記圧力は、0.01torr以上3torr以下であることを特徴とする化合物半導体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−290230(P2009−290230A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201180(P2009−201180)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【分割の表示】特願2004−115466(P2004−115466)の分割
【原出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】