説明

化合物半導体装置及びその製造方法

【課題】ゲートリーク電流の発生及び耐圧の低下、又は電流コラプスの発生を抑制することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】キャップ層21に、n−GaN層6と、n−GaN層6上方に形成されたi−AlN層8と、i−AlN層8上方に形成されたn−GaN層10と、が設けられている。更に、n−GaN層6とi−AlN層8との間に形成され、i−AlN層8に近くづくほどAl組成が増加するAlGaN含有層7、又はi−AlN層8とn−GaN層10との間に形成され、i−AlN層8に近くづくほどAl組成が増加するAlGaN含有層9の少なくとも一方が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上方にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。このような化合物半導体装置の一つとして、GaN系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が挙げられる。GaN系HEMTでは、AlGaNとGaNとのヘテロ接合界面に発生する高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が利用されている。
【0003】
GaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。つまり、GaNは高い破壊電界強度を有する。また、GaNは大きい飽和電子速度も有している。このため、GaNは、高電圧動作、且つ高出力が可能な化合物半導体装置の材料として極めて有望である。そして、GaN系HEMTは、高効率スイッチング素子、電気自動車等に用いられる高耐圧電力デバイスとして期待されている。
【0004】
高濃度2次元電子ガスを利用したGaN系HEMTは、多くの場合、ノーマリオン動作する。つまり、ゲート電圧がオフとなっている時に電流が流れる。これは、チャネルに多数の電子が存在するためである。その一方で、高耐圧電力デバイスに用いられるGaN系HEMTには、フェイルセーフの観点からノーマリオフ動作が重要視される。
【0005】
そこで、ノーマリオフ動作が可能なGaN系HEMTについて種々の検討が行われている。図1は、従来のGaN系HEMTを示す図である。
【0006】
図1(a)に示す従来のGaN系HEMTでは、半絶縁性SiC基板201上に、バッファ層202、i−GaN層203、n−AlGaN層204、n−GaN層205、i−AlN層206、及びn−GaN層207が形成されている。n−GaN層205、i−AlN層206、及びn−GaN層207に、2個の開口部が形成され、これら内にソース電極209s及びドレイン電極209dが形成されている。また、n−GaN層205、i−AlN層206、及びn−GaN層207のソース電極209s及びドレイン電極209dの間の領域にも開口部が形成されている。この開口部は、n−AlGaN層204の途中深さまで達している。そして、この開口部内にn−GaN層207上まで延出するAl23膜208が形成され、Al23膜208上にゲート電極209gが形成されている。
【0007】
この従来のGaN系HEMTでは、電子供給層として機能するn−AlGaN層204の内部にまでゲート電極209g用の開口部が入り込んでいるため、ゲート電圧がオフの時には、ゲート電極209g直下に2次元電子ガスが存在しない。従って、ノーマリオフ動作が可能である。また、この従来のGaN系HEMTの伝導帯のバンドラインナップは図1(b)に示すようなものとなり、より高濃度の2次元電子ガスを得ることが可能となり、大電流を流すことが可能である。このように、高耐圧、大電流、ノーマリオフ動作が実現される。
【0008】
しかしながら、この従来のGaN系HEMTでは、ゲートリーク電流が発生したり、耐圧が低下したりすることがある。また、電流コラプスが生じることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/108055号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Physica. status. solidi (c), vol.6, Issue 6, 1365 (2009)
【非特許文献2】IEEJ Trans. EIS, vol.130, No.6, 929 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ゲートリーク電流の発生及び耐圧の低下、又は電流コラプスの発生を抑制することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
化合物半導体装置の一態様には、基板と、前記基板上方に形成された電子走行層と、前記電子走行層上方に形成された電子供給層と、前記電子供給層上方に形成されたキャップ層と、が設けられている。前記キャップ層には、GaNを含む第1の化合物半導体層と、前記第1の化合物半導体層上方に形成され、AlNを含む第2の化合物半導体層と、前記第2の化合物半導体層上方に形成され、GaNを含む第3の化合物半導体層と、が設けられている。更に、前記第1の化合物半導体層と前記第2の化合物半導体層との間に形成され、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第1のAlGaN含有層、又は前記第2の化合物半導体層と前記第3の化合物半導体層との間に形成され、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第2のAlGaN含有層の少なくとも一方が設けられている。
【0013】
化合物半導体装置の製造方法では、基板上方に電子走行層を形成し、前記電子走行層上方に電子供給層を形成し、前記電子供給層上方にキャップ層を形成する。前記キャップ層を形成する際には、GaNを含む第1の化合物半導体層を形成し、前記第1の化合物半導体層上方に、AlNを含む第2の化合物半導体層を形成し、前記第2の化合物半導体層上方に、GaNを含む第3の化合物半導体層を形成する。更に、前記第1の化合物半導体層と前記第2の化合物半導体層との間に、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第1のAlGaN含有層を形成し、及び/又は前記第2の化合物半導体層と前記第3の化合物半導体層との間に、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第2のAlGaN含有層を形成する。
【発明の効果】
【0014】
上記の化合物半導体装置等によれば、第1又は第2のAlGaN含有層の作用により、ゲートリーク電流の発生及び耐圧の低下、又は電流コラプスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のGaN系HEMTを示す図である。
【図2】実施形態に係るGaN系HEMTの構造を示す図である。
【図3A】実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3B】図3Aに引き続き、GaN系HEMTの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3C】図3Bに引き続き、GaN系HEMTの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】高出力増幅器の外観の例を示す図である。
【図6】電源装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、図1に示す従来のGaN系HEMTに関し、ゲートリーク電流が発生したり、耐圧が低下したりする原因について鋭意検討を行った結果、以下の事項を見出した。即ち、図1(b)に示すように、従来のGaN系HEMTでは、i−AlN層206とn−GaN層205との界面近傍において、伝導帯下端のエネルギー値がフェルミレベルに極めて近接しており、正のゲート電圧が印加されてバンドが押し下げられると、この界面近傍に2次元電子ガスが発生する。そして、図1(a)に示すように、Al23膜208に絶縁破壊210が生じ、ゲートリーク電流が発生したり、耐圧が低下したりする。
【0017】
本発明者らは、図1に示す従来のGaN系HEMTに関し、電流コラプスが発生する原因について鋭意検討を行った結果、以下の事項を見出した。即ち、i−AlN層206とn−GaN層207との間の格子整合の観点から歪み緩和による転位及び点欠陥が存在する。特に、これらの厚さがナノメートルオーダーである場合、歪みの影響が顕著となり、n−GaN層207の表面近傍に格子欠陥が存在しやすい。そして、このような欠陥がゲート電極209gとドレイン電極209dとの間の界面準位を増大させ、電流コラプスが発生する。
【0018】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。図2は、実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す図である。
【0019】
本実施形態では、図2(a)に示すように、SiC基板等の基板1上に核形成層2が形成され、核形成層2上に電子走行層3が形成され、電子走行層3上にスペーサ層4が形成され、スペーサ層4上に電子供給層5が形成されている。核形成層2としては、例えばAlN層が形成されている。電子走行層3としては、例えば厚さが1μm〜3μm程度のノンドープのi−GaN層が形成されている。スペーサ層4としては、例えば厚さが5nm程度のノンドープのi−AlGaN層が形成されている。電子供給層5としては、例えば厚さが30nm程度のn型のn−AlGaN層が形成されている。i−AlGaN層及びn−AlGaN層の組成はAlx1Ga1-x1Nで表わされ、x1の値は0.1〜0.5程度(例えば0.2)である。n−AlGaN層には、Siが1×1018cm-3〜1×1020cm-3程度(例えば5×1018cm-3)ドーピングされている。
【0020】
電子供給層5上に、キャップ層21が形成されている。キャップ層21には、電子供給層5上に形成されたn型のn−GaN層6が含まれている。また、キャップ層21には、n型のn−GaN層6上に形成され、Al組成が厚さ方向変化するAlGaN含有層7、AlGaN含有層7上に形成されたノンドープのi−AlN層8、i−AlN層8上に形成され、Al組成が厚さ方向変化するAlGaN含有層9、及びAlGaN含有層9上に形成されたn−GaN層10が含まれている。n−GaN層6及びn−GaN層10の厚さは、例えば1nm〜5nm程度(例えば2nm)であり、AlGaN含有層7及びAlGaN含有層9の厚さは、例えば1nm〜5nm程度(例えば1nm)であり、i−AlN層8の厚さは、例えば1nm〜5nm程度(例えば1nm)である。
【0021】
キャップ層21には、ゲート電極用の開口部11gが形成されている。また、開口部11gは、電子供給層5にも入り込んでいる。つまり、開口部11gは電子供給層5の途中深さまで達している。キャップ層21には、開口部11gを間に挟むようにしてソース電極用の開口部11s、及びドレイン電極用の開口部11dが形成されている。そして、開口部11s内にソース電極12sが形成され、開口部11d内にドレイン電極12dが形成されている。開口部11g内には、n−GaN層10上まで延出する絶縁膜13が形成され、絶縁膜13上に、開口部11gを埋め込むようにしてゲート電極12gが形成されている。ゲート電極12gには、例えば、厚さが30nm程度のNi膜とその上に形成された厚さが400nm程度のAu膜とが含まれている。ソース電極12s及びドレイン電極12dには、例えば、厚さが20nm程度のTa膜とその上に形成された厚さが200nm程度のAl膜とが含まれている。ソース電極12s及びドレイン電極12dは電子供給層5にオーミック接触している。絶縁膜13の厚さは、例えば2nm〜200nm程度(例えば10nm)であり、絶縁膜13の材料は、例えば、Si、Al、Hf、Zr、Ti、Ta、又はWの酸化物、窒化物又は酸窒化物であり、特にアルミナが好ましい。
【0022】
更に、ゲート電極12g、ソース電極12s、及びドレイン電極12dを覆うパッシベーション膜14が形成されている。パッシベーション膜14としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜13及びパッシベーション膜14には、外部端子等の接続のための開口部が形成されている。
【0023】
なお、基板1の表面側から見たレイアウトは、例えば図2(b)のようになる。つまり、ゲート電極12g、ソース電極12s及びドレイン電極12dの平面形状が櫛歯状となっており、ソース電極12s及びドレイン電極12dが交互に配置されている。つまり、複数のゲート電極12gがゲート配線25gにより共通接続され、複数のソース電極12sがソース配線25sにより共通接続され、複数のドレイン電極12dがドレイン配線25dにより共通接続されている。そして、これらの間にゲート電極12gが配置されている。このようなマルチフィンガーゲート構造を採用することにより、出力を向上させることができる。なお、図2(a)に示す断面図は、図2(b)中のI−I線に沿った断面を示している。また、活性領域30には、核形成層2、電子走行層3、スペーサ層4、及び電子供給層5等が含まれており、活性領域30の周囲はイオン注入又はメサエッチング等により不活性領域とされている。
【0024】
このように構成された本実施形態では、n−GaN層6とi−AlN層8との間に位置するAlGaN含有層7により、n−GaN層6とi−AlN層8との間の格子不整合に起因するピエゾ効果が緩和される。この結果、図1に示す従来のGaN系HEMTと比較して、n−GaN層6とi−AlN層8との間における伝導帯下端のエネルギー値とフェルミレベルとの差が大きくなる。従って、正のゲート電圧が印加されてバンドが押し下げられても、2次元電子ガスの発生が抑制され、ゲートリーク電流の発生及び耐圧の低下が抑制される。
【0025】
また、i−AlN層8とn−GaN層10との間に位置するAlGaN含有層9により、i−AlN層8とn−GaN層10との間の格子不整合に起因する弾性歪が緩和される。この結果、転位及び点欠陥等の格子欠陥が発生しにくい。従って、図1に示す従来のGaN系HEMTと比較して、ゲート電極12gとドレイン電極12dとの間における、n−GaN層10と絶縁膜13との間の界面準位が低く、電流コラプスの発生が抑制される。
【0026】
次に、上述の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法について説明する。図3A乃至図3Cは、実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0027】
先ず、図3A(a)に示すように、基板1上に核形成層2、電子走行層3、スペーサ層4、電子供給層5、n−GaN層6、AlGaN含有層7、i−AlN層8、AlGaN含有層9、及びn−GaN層10を形成する。核形成層2、電子走行層3、スペーサ層4、電子供給層5、n−GaN層6、AlGaN含有層7、i−AlN層8、AlGaN含有層9、及びn−GaN層10の形成は、例えば有機金属気相成長(MOVPE)法等の結晶成長法により行う。この場合、原料ガスを選択することにより、これらの層を連続して形成することができる。アルミニウム(Al)の原料、ガリウム(Ga)の原料としては、例えば、夫々トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)を使用することができる。また、窒素(N)の原料として、例えばアンモニア(NH3)を使用することができる。また、n−GaN層6及びn−GaN層10等に不純物として含まれるシリコン(Si)の原料としては、例えばシラン(SiH4)を使用することができる。
【0028】
AlGaN含有層7の形成の際には、TMGの流量を徐々に低下させつつ、TMAの流量を徐々に増加させて、n−GaN層6との界面からi−AlN層8との界面に向けてAlGaN含有層7のAl組成を増加させる。例えば、n−GaN層6との界面では、AlGaN含有層7のAl組成を0とし、i−AlN層8との界面では、AlGaN含有層7のAl組成を1とし、これらの間では連続的にAl組成を変化させる。AlGaN含有層9の形成の際には、TMGの流量を徐々に増加させつつ、TMAの流量を徐々に低下させて、i−AlN層8との界面からn−GaN層10との界面に向けてAlGaN含有層9のAl組成を減少させる。例えば、i−AlN層8との界面では、AlGaN含有層9のAl組成を1とし、n−GaN層10との界面では、AlGaN含有層9のAl組成を0とし、これらの間ではAl組成を連続的に変化させる。
【0029】
n−GaN層10の形成後には、活性領域30の周囲の不活性領域を形成する。不活性領域の形成では、例えば、フォトリソグラフィによる開口部を備えたレジストパターンを形成し、その後に、塩素系ガスを用いたメサエッチングを行って溝を形成するか、又はAr等のイオン注入を行う。
【0030】
次いで、ソース電極12s及びドレイン電極12dを形成する予定の領域を開口するレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとして用いて、n−GaN層10、AlGaN含有層9、i−AlN層8、AlGaN含有層7、及びn−GaN層6のエッチングを行うことにより、図3A(b)に示すように、n−GaN層10、AlGaN含有層9、i−AlN層8、AlGaN含有層7、及びn−GaN層6に、ソース電極用の開口部11s及びドレイン電極用の開口部11dを形成する。このエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。なお、開口部11s及び11dの深さに関し、n−GaN層6の一部を残してもよく、また、電子供給層5の一部を除去してもよい。つまり、開口部11s及び11dの深さがn−GaN層10、AlGaN含有層9、i−AlN層8、AlGaN含有層7、及びn−GaN層6の総厚と一致している必要はない。
【0031】
続いて、図3A(c)に示すように、開口部11s及び11d内に、夫々ソース電極12s及びドレイン電極12dをリフトオフ法により形成する。ソース電極12s及びドレイン電極12dの形成では、開口部11s及び11dを形成する際に用いたレジストパターンを除去した後、ソース電極12s及びドレイン電極12dを形成する領域を開口する新たなレジストパターンを形成し、Ta及びAlの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したTa及びAlをレジストパターンごと除去する。Ta膜、Al膜の厚さは、例えば、夫々20nm程度、200nm程度とする。そして、窒素雰囲気中で400℃〜1000℃(例えば550℃)で熱処理を行い、オーミック接触を確立する。
【0032】
ソース電極12s及びドレイン電極12dの形成後、ゲート電極用の開口部11gを形成する予定の領域を開口するレジストパターンを形成する。次いで、レジストパターンを用いたエッチングを行うことにより、図3B(d)に示すように、n−GaN層10、AlGaN含有層9、i−AlN層8、AlGaN含有層7、及びn−GaN層6に開口部11gを形成する。このとき、電子供給層5の一部もエッチングし、開口部11gを電子供給層5に入り込ませる。
【0033】
その後、図3B(e)に示すように、全面に絶縁膜13を形成する。絶縁膜13は、例えば、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)法、プラズマ化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)法、スパッタリング法等により形成することが好ましい。
【0034】
続いて、図3B(f)に示すように、開口部11gを埋め込むようにして、ゲート電極12gを絶縁膜13上にリフトオフ法により形成する。ゲート電極12gの形成では、ゲート電極12gを形成する領域を開口するレジストパターンを形成し、Ni及びAuの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したNi及びAuをレジストパターンごと除去する。Ni膜、Au膜の厚さは、例えば、夫々30nm程度、400nm程度とする。
【0035】
次いで、図3C(g)に示すように、全面に、ゲート電極12g、ソース電極12s、及びドレイン電極12dを覆うようにしてパッシベーション膜14を形成する。パッシベーション膜14としては、例えばプラズマCVD法によりシリコン窒化膜を形成する。
【0036】
その後、複数のゲート電極12gを共通接続するゲート配線25g、複数のソース電極12sを共通接続するソース配線25s、及び複数のドレイン電極12dを共通接続するドレイン配線25d等を形成する(図2(b)参照)。このようにして、図2に示す構造のGaN系HEMTを得ることができる。
【0037】
なお、抵抗体及びキャパシタ等をも基板1上に実装してモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)としてもよい。
【0038】
また、キャップ層21に、AlGaN含有層7及びAlGaN含有層9の双方が含まれている必要はない。図4(a)に示すように、AlGaN含有層9が含まれていない場合であっても、AlGaN含有層7が含まれていれば、少なくとも、ゲートリーク電流の発生及び耐圧の低下の抑制という効果が得られる。また、図4(b)に示すように、AlGaN含有層7が含まれていない場合であっても、AlGaN含有層9が含まれていれば、少なくとも、電流コラプスの抑制という効果が得られる。
【0039】
本実施形態に係るGaN系HEMTは、例えば高出力増幅器として用いることができる。図5に、高出力増幅器の外観の例を示す。この例では、ソース電極に接続されたソース端子81sがパッケージの表面に設けられている。また、ゲート電極に接続されたゲート端子81g、及びドレイン電極に接続されたドレイン端子81dがパッケージの側面から延出している。
【0040】
また、本実施形態に係るGaN系HEMTは、例えば電源装置に用いることもできる。図6(a)は、PFC(power factor correction)回路を示す図であり、図6(b)は、図6(a)に示すPFC回路を含むサーバ電源(電源装置)を示す図である。
【0041】
図6(a)に示すように、PFC回路90には、交流電源(AC)が接続されるダイオードブリッジ91に接続されたコンデンサ92が設けられている。コンデンサ92の一端子にはチョークコイル93の一端子が接続され、チョークコイル93の他端子には、スイッチ素子94の一端子及びダイオード96のアノードが接続されている。スイッチ素子94は上記の実施形態におけるHEMTに相当し、当該一端子はHEMTのドレイン電極に相当する。また、スイッチ素子94の他端子はHEMTのソース電極に相当する。ダイオード96のカソードにはコンデンサ95の一端子が接続されている。コンデンサ92の他端子、スイッチ素子94の当該他端子、及びコンデンサ95の他端子が接地される。そして、コンデンサ95の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0042】
そして、図6(b)に示すように、PFC回路90は、サーバ電源100等に組み込まれて用いられる。
【0043】
このようなサーバ電源100と同様の、より高速動作が可能な電源装置を構築することも可能である。また、スイッチ素子94と同様のスイッチ素子は、スイッチ電源又は電子機器に用いることができる。更に、これらの半導体装置を、サーバの電源回路等のフルブリッジ電源回路用の部品として用いることも可能である。
【0044】
いずれの実施形態においても、基板として、炭化シリコン(SiC)基板、サファイア基板、シリコン基板、GaN基板又はGaAs基板等を用いてもよい。基板が、導電性、半絶縁性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0045】
また、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極及びドレイン電極の形成後の熱処理を省略してもよい。また、ゲート電極に対して熱処理を行ってもよい。
【0046】
また、各層の厚さ及び材料等も上述の実施形態のものに限定されない。
【0047】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0048】
(付記1)
基板と、
前記基板上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層上方に形成された電子供給層と、
前記電子供給層上方に形成されたキャップ層と、
を有し、
前記キャップ層は、
GaNを含む第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上方に形成され、AlNを含む第2の化合物半導体層と、
前記第2の化合物半導体層上方に形成され、GaNを含む第3の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層と前記第2の化合物半導体層との間に形成され、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第1のAlGaN含有層、又は前記第2の化合物半導体層と前記第3の化合物半導体層との間に形成され、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第2のAlGaN含有層の少なくとも一方と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【0049】
(付記2)
前記第1のAlGaN含有層及び前記第2のAlGaN含有層の双方を有することを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0050】
(付記3)
前記第1のAlGaN含有層のAl組成は、下面から上面にかけて0から1に変化していることを特徴とする付記1又は2に記載の化合物半導体装置。
【0051】
(付記4)
前記第2のAlGaN含有層のAl組成は、下面から上面にかけて1から0に変化していることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0052】
(付記5)
前記第1のAlGaN含有層は、前記第1の化合物半導体層及び前記第2の化合物半導体層と接していることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0053】
(付記6)
前記第2のAlGaN含有層は、前記第2の化合物半導体層及び前記第3の化合物半導体層と接していることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0054】
(付記7)
前記キャップ層に形成され、前記電子供給層まで入り込む開口部と、
前記開口部内に形成された絶縁膜と、
前記開口部内で前記絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0055】
(付記8)
前記絶縁膜は、前記キャップ層上方まで延出していることを特徴とする付記7に記載の化合物半導体装置。
【0056】
(付記9)
付記1乃至8のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0057】
(付記10)
付記1乃至8のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【0058】
(付記11)
基板上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上方に電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層上方にキャップ層を形成する工程と、
を有し、
前記キャップ層を形成する工程は、
GaNを含む第1の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第1の化合物半導体層上方に、AlNを含む第2の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第2の化合物半導体層上方に、GaNを含む第3の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第1の化合物半導体層と前記第2の化合物半導体層との間に、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第1のAlGaN含有層を形成する工程、又は前記第2の化合物半導体層と前記第3の化合物半導体層との間に、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第2のAlGaN含有層を形成する工程の少なくとも一方と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0059】
(付記12)
前記キャップ層を形成する工程は、前記第1のAlGaN含有層を形成する工程及び前記第2のAlGaN含有層を形成する工程の双方を有することを特徴とする付記11に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0060】
(付記13)
前記第1のAlGaN含有層のAl組成を、下面から上面にかけて0から1に変化させることを特徴とする付記11又は12に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0061】
(付記14)
前記第2のAlGaN含有層のAl組成を、下面から上面にかけて1から0に変化させることを特徴とする付記11乃至13のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0062】
(付記15)
前記第1のAlGaN含有層は、前記第1の化合物半導体層及び前記第2の化合物半導体層と接していることを特徴とする付記11乃至14のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0063】
(付記16)
前記第2のAlGaN含有層は、前記第2の化合物半導体層及び前記第3の化合物半導体層と接していることを特徴とする付記11乃至15のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0064】
(付記17)
前記電子供給層まで入り込む開口部を前記キャップ層に形成する工程と、
前記開口部内に絶縁膜を形成する工程と、
前記開口部内で前記絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする付記11乃至16のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0065】
(付記18)
前記絶縁膜は、前記キャップ層上方まで延出していることを特徴とする付記17に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0066】
1:基板
2:バッファ層
3:電子走行層
4:スペーサ層
5:電子供給層
6:n−GaN層
7:AlGaN含有層
8:i−AlN層
9:AlGaN含有層
10:n−GaN層
12g:ゲート電極
12s:ソース電極
12d:ドレイン電極
13:絶縁膜
21:キャップ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層上方に形成された電子供給層と、
前記電子供給層上方に形成されたキャップ層と、
を有し、
前記キャップ層は、
GaNを含む第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上方に形成され、AlNを含む第2の化合物半導体層と、
前記第2の化合物半導体層上方に形成され、GaNを含む第3の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層と前記第2の化合物半導体層との間に形成され、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第1のAlGaN含有層、又は前記第2の化合物半導体層と前記第3の化合物半導体層との間に形成され、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第2のAlGaN含有層の少なくとも一方と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記第1のAlGaN含有層及び前記第2のAlGaN含有層の双方を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記第1のAlGaN含有層のAl組成は、下面から上面にかけて0から1に変化していることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記第2のAlGaN含有層のAl組成は、下面から上面にかけて1から0に変化していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記第1のAlGaN含有層は、前記第1の化合物半導体層及び前記第2の化合物半導体層と接していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記第2のAlGaN含有層は、前記第2の化合物半導体層及び前記第3の化合物半導体層と接していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記キャップ層に形成され、前記電子供給層まで入り込む開口部と、
前記開口部内に形成された絶縁膜と、
前記開口部内で前記絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【請求項10】
基板上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上方に電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層上方にキャップ層を形成する工程と、
を有し、
前記キャップ層を形成する工程は、
GaNを含む第1の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第1の化合物半導体層上方に、AlNを含む第2の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第2の化合物半導体層上方に、GaNを含む第3の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第1の化合物半導体層と前記第2の化合物半導体層との間に、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第1のAlGaN含有層を形成する工程、又は前記第2の化合物半導体層と前記第3の化合物半導体層との間に、前記第2の化合物半導体層に近くづくほどAl組成が増加する第2のAlGaN含有層を形成する工程の少なくとも一方と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119582(P2012−119582A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269673(P2010−269673)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】