説明

半導体ウエーハ

【課題】個々に分割された半導体チップにテスト用の金属パターンが残存しても、デバイスの構成を検出することができない半導体ウエーハを提供する。
【解決手段】半導体基板3の表面に格子状に形成されたストリート4によって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイス5が形成され、ストリート4にテスト用の金属パターン6が配設されている半導体ウエーハ2であって、テスト用の金属パターン6はストリート4の中心より一方側に配設されているとともに、ストリート4の中心を跨いで配設された導線7によってストリート4の他方側に形成されたデバイス5に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面に格子状に形成されたストリートによって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイスが形成され、ストリートにテスト用の金属パターンが配設されている半導体ウエーハに関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスが形成されている半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによってデバイス毎に分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハの多くは、ストリート上にデバイスの機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属パターンが複数個配設されている。このようにテスト用の金属パターンが配設された半導体ウエーハは、個々の半導体チップに分割する前に、テスト用の金属パターンを用いてデバイスの機能をチェックする。そして、半導体ウエーハを分割する際には、テスト用の金属パターンも同時に切断して除去している。即ち、テスト用の金属パターンが残っていると、この金属パターンを用いてデバイスの構成を検出することが可能であるため、企業秘密を守る観点からテスト用の金属パターンは除去される。
【0004】
一方、近年半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成された分割予定ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平10−305421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、ストリート上にテスト用の金属パターンが配設された半導体ウエーハのストリートに沿ってレーザー光線を照射してレーザー加工溝を形成する際に、テスト用の金属パターンがレーザー光線の妨げとなり、均一な深さのレーザー加工溝を形成することができないという問題がある。一方、テスト用の金属パターンを避けてストリートに沿ってレーザー光線を照射すると、半導体ウエーハにはストリートに沿って均一な深さのレーザー加工溝を形成することができるが、分割されたチップにはテスト用の金属パターンが残存するため、この金属パターンを用いてデバイスの構成を検出することが可能となり、企業秘密が漏洩するという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、個々に分割された半導体チップにテスト用の金属パターンが残存しても、デバイスの構成を検出することができない半導体ウエーハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、半導体基板の表面に格子状に形成されたストリートによって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイスが形成され、該ストリートにテスト用の金属パターンが配設されている半導体ウエーハにおいて、
該テスト用の金属パターンは、該ストリートの中心より一方側に配設されているとともに、ストリートの中心を跨いで配設された導線によって該ストリートの他方側に形成されたデバイスに接続されている、
ことを特徴とする半導体ウエーハが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明による半導体ウエーハは、ストリートに配設されたテスト用の金属パターンがストリートの中心より一方側に配設されているとともに、ストリートの中心を跨いで配設された導線によってストリートの他方側に形成されたデバイスに接続されているので、ストリートの中心に沿ってレーザー光線を照射しても、レーザー光線がテスト用の金属パターンによって妨げられないため、ストリートの中心に沿って均一なレーザー加工を施すことができる。そして、レーザー加工されたストリートの中心に沿って分割することにより、テスト用の金属パターンとデバイスとを接続する導線が切断されるので、個々に分割されたチップにテスト用の金属パターンが残存しても、この残存したテスト用の金属パターンを用いてデバイスの構成を検出することはできない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に従って構成された半導体ウエーハの好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0010】
図1には本発明に従って構成された半導体ウエーハの斜視図が示されており、図2には図1に示す半導体ウエーハの要部拡大平面図が示されており、図3には図1に示す半導体ウエーハの要部拡大断面図が示されている。
図1乃至図3に示す半導体ウエーハ2は、シリコン等からなる半導体基板3の表面に格子状に形成されたストリート4によって複数の領域が形成され、この複数領域にそれぞれデバイス5が形成されている。この半導体ウエーハ2は、図2に示すようにストリート4にテスト用の金属パターン6が複数個配設されている。このテスト用の金属パターン6は、ストリート4の中心41より一方側に配設されている。そして、テスト用の金属パターン6は、図3に示すようにストリート4の中心41を跨いで配設され導線7によってストリート4の他方側に形成されたデバイス5に接続されている。
【0011】
図示の実施形態における半導体ウエーハ2は以上のように構成されており、以下ストリート4に沿って分割する方法について、図4乃至図8を参照して説明する。
図4乃至図8に示す分割方法においては、先ず図4に示すように上記半導体ウエーハ2を環状のフレーム10に装着された保護テープ11の表面にデバイス5が形成されている表面を上側にして裏面を貼着する。
【0012】
次に、半導体ウエーハ2に形成されたストリート4に沿ってレーザー加工溝を形成するレーザー加工を施す。このレーザー加工は、図5に示すレーザー加工装置8を用いて実施する。図5に示すレーザー加工装置8は、被加工物を保持するチャックテーブル81と、該チャックテーブル81上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段82を具備している。チャックテーブル81は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り機構によって図8において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り機構によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0013】
上記レーザー光線照射手段82は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング821の先端に装着された集光器822からパルスレーザー光線を照射する。また、図示のレーザー加工装置8は、図8に示すように上記レーザー光線照射手段82を構成するケーシング821の先端部に装着された撮像手段83を備えている。この撮像手段83は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0014】
上述したレーザー加工装置8を用いて半導体ウエーハ2に形成されたストリート4の中心41に沿ってレーザー加工溝を形成するレーザー加工について説明する。
先ず図5に示すレーザー加工装置8のチャックテーブル81上に上述した環状のフレーム10の保護テープ11を介して支持された半導体ウエーハ2を載置し、チャックテーブル81上に半導体ウエーハ2を吸着保持する。このとき、半導体ウエーハ2はデバイス5が形成されている表面を上側にして保持される。なお、図5においては、半導体ウエーハ2が貼着されている保護テープ11が装着された環状のフレーム10を省いて示しているが、環状のフレーム10はチャックテーブル81に配設された図示しないフレーム保持クランプによって固定される。
【0015】
上述したように半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル81は、図示しない加工送り機構によって撮像手段83の直下に位置付けられる。チャックテーブル81が撮像手段83の直下に位置付けられると、撮像手段83および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段83および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されているストリート4と、ストリート4に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段82の集光器822との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びるストリート4に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0016】
以上のようにしてチャックテーブル81上に保持された半導体ウエーハ2に形成されているストリート4を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図6の(a)で示すようにチャックテーブル81をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段82の集光器822が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート4の一端(図6の(a)において左端)を集光器822の直下に位置付ける。このとき、半導体ウエーハ2は、図6の(b)で示すようにストリート4の中心41が集光器822の直下に位置するように位置付けられる。そして、集光器822から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ2表面(上面)付近に合わせる。次に、レーザー光線照射手段82の集光器822からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル81即ち半導体ウエーハ2を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、ストリート4の他端(図6の(b)において右端)が集光器822の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル81即ち半導体ウエーハ2の移動を停止する。この結果、図7に示すように半導体ウエーハ2には、ストリート4の中心41に沿って所定深さのレーザー加工溝21が形成される。このとき、ストリート4の中心41部にはテスト用の金属パターン6が配設されていないので、パルスレーザー光線がテスト用の金属パターン6によって妨げられないため、レーザー加工溝21は均一の深さに形成される。このようにストリート4の中心41に沿ってレーザー加工溝21が形成されると、図7に示すようにストリート4に配設されたテスト用の金属パターン6とストリート4の中心41を通ってストリート4の他方側に形成されたデバイス5とを接続する導線7が切断される。
【0017】
なお、上記レーザー加工は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :30kHz
出力 :3.5W
集光スポット径 :φ9.2μm
加工送り速度 :600mm/秒
【0018】
上述したレーザー加工を半導体ウエーハ2に所定方向に形成された全てのストリート4に沿って実施したならば、チャックテーブル81従って半導体ウエーハ2を90度回動する。そして、半導体ウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成された全てのストリート4に沿って上述したレーザー加工を実施する。この結果、半導体ウエーハ2には、全てのストリート4の中心41に沿って所定深さのレーザー加工溝21が形成される。
【0019】
以上のようにして、全てのストリート4に沿ってレーザー加工されレーザー加工溝21が形成された半導体ウエーハ2は、次工程である分割工程に搬送され、メカニカルブレーキング法によりレーザー加工溝21に沿って分割される。この結果、半導体ウエーハ2は、図8に示すように個々の半導体チップ20に分割される。このようにして製造された半導体チップ20には、テスト用の金属パターン6が残存しているが、上述したようにテスト用の金属パターン6とデバイス5とを接続する導線7が切断されているので、テスト用の金属パターン6を用いてデバイス5の構成を検出することはできない。
【0020】
以上、本発明による半導体ウエーハを個々の半導体チップに分割する方法としてストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する例を示したが、本発明による半導体ウエーハは他の分割方法によって分割しても同様の作用効果が得られる。例えば、半導体ウエーハに対して透過性を有する波長が例えば1064nmのレーザー光線を半導体ウエーハの裏面からストリートに沿って照射し、内部に変質層を形成することにより、半導体ウエーハを変質層が形成されたストリートに沿って個々の半導体チップに分割してもよい。また、本発明による半導体ウエーハは、ストリートの中心部を切削ブレードによって直接切削しても、切削ブレードを損傷させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従って構成された半導体ウエーハの斜視図。
【図2】図1に示す半導体ウエーハの要部拡大平面図。
【図3】図1に示す半導体ウエーハの要部拡大断面図。
【図4】図1に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
【図5】図1に示す半導体ウエーハにレーザー加工を施すレーザー加工装置の要部を示す斜視図。
【図6】図6に示すレーザー加工装置によって図1に示す半導体ウエーハにレーザー加工を施す加工工程の説明図。
【図7】図1に示す半導体ウエーハのストリートに沿ってレーザー加工溝が形成された状態を示す要部拡大断面図。
【図8】図1に示す半導体ウエーハがストリートに沿って分割された半導体チップの斜視図。
【符号の説明】
【0022】
2:半導体ウエーハ
3:半導体基板
4:ストリート
5:デバイス
6:テスト用の金属パターン
7:導線
20:半導体チップ
21:レーザー加工溝
8:レーザー加工装置
81:チャックテーブル
82:レーザー光線照射手段
822:集光器
83:撮像手段
10:環状のフレーム
11:保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に格子状に形成されたストリートによって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイスが形成され、該ストリートにテスト用の金属パターンが配設されている半導体ウエーハにおいて、
該テスト用の金属パターンは、該ストリートの中心より一方側に配設されているとともに、ストリートの中心を跨いで配設された導線によって該ストリートの他方側に形成されたデバイスに接続されている、
ことを特徴とする半導体ウエーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−318966(P2006−318966A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137277(P2005−137277)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】