半導体チップの製造方法および半導体ウエハの分割方法
【課題】フェイスダウン(FD)実装に用いられる半導体チップを、より容易に製造できる半導体チップの製造方法を提供する。
【解決手段】半導体素子の一例である発光素子20は、基板10上に発光素子20を形成する半導体素子形成工程と、発光素子20の第1電極170上に第1突出電極210および第2電極180上に第2突出電極220を形成する突出電極形成工程と、基板10の分割予定面内に脆弱領域321を形成する脆弱領域形成工程(図7(a))と、基板10上に発光素子20が形成されたウエハ30を、脆弱領域321を起点として、発光チップ1に分割する分割工程(図7(b)および(c))とを含んで製造される。
【解決手段】半導体素子の一例である発光素子20は、基板10上に発光素子20を形成する半導体素子形成工程と、発光素子20の第1電極170上に第1突出電極210および第2電極180上に第2突出電極220を形成する突出電極形成工程と、基板10の分割予定面内に脆弱領域321を形成する脆弱領域形成工程(図7(a))と、基板10上に発光素子20が形成されたウエハ30を、脆弱領域321を起点として、発光チップ1に分割する分割工程(図7(b)および(c))とを含んで製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの製造方法および半導体ウエハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や集積回路(LSI)などの半導体素子は、基板上に複数の半導体素子を一括して形成された半導体ウエハを、それぞれが半導体素子を含むよう分割(切断)された半導体チップに加工されて用いられる。
半導体ウエハを半導体チップに分割する方法として、レーザ光を対物レンズ光学系で集光して基板の内部に照射し、基板の内部に照射前に比べて強度が低い脆弱領域を形成するステルスダイシング法がある。この方法では、基板内に形成された脆弱領域を起点として、半導体ウエハを半導体チップに分割(切断)する。
また、これらの半導体チップは、パッケージや配線基板などの上に、半導体素子が設けられた側をパッケージなどの側と反対向きに実装(フェイスアップ(FU)実装と呼ばれる。)されたり、半導体素子側がパッケージなどに対向するように実装(フェイスダウン(FD)実装またはフリップチップ(FC)実装と呼ばれる。)されたりして用いられる。
【0003】
特許文献1には、回路面に突起電極を有する半導体ウエハに対し、突起電極を埋め込むように回路面に絶縁性樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、絶縁性樹脂層の表面に支持テープを貼り付けて固定する支持テープ固定工程と、支持テープに固定された状態で、半導体ウエハにおける回路面の反対面側からレーザ光を照射し、ダイシングパターンに沿って半導体ウエハの内部に脆弱層を形成する脆弱層形成工程と、支持テープを面内方向に伸張させることにより、絶縁性樹脂層を含めて半導体ウエハをダイシングパターンに沿って分割し、複数の半導体チップに個片化するダイシング工程と、を備えた半導体ウエハのダイシング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステルスダイシング法によって、基板の内部に脆弱領域を形成しても、脆弱領域が基板の内部に設けられているため、半導体ウエハは、必ずしも基板内部に形成された脆弱領域を起点として、容易且つ確実にチップに分断されるとは限らなかった。容易に分割できない場合、大きな荷重をかけて無理に分割するため、半導体チップのpnジャンクション部(チップが半導体発光素子チップであるときは、n型半導体層、発光層およびp型半導体層の領域を言う。)を損傷することで、リーク電流が発生する不良チップを多く作り出してしまうことがある。
このため、形成される脆弱領域に対応する半導体ウエハの一方の表面に、レーザ光の照射やドライエッチング、ウェットエッチングなどにより、断面形状がU字状またはV字状の溝(トレンチまたはグルーブ)を設けることが行われる。この場合、半導体ウエハは、半導体ウエハ表面の溝が分割の起点となって、より容易にチップに分割される。また、半導体ウエハ表面にレーザ光を照射して溝を設ける場合には、溝の部分の半導体ウエハ構成材料が飛散し、半導体素子の表面を汚染してしまうことがあった。
また、このような背景から、少ない荷重で容易に分割するためには溝を深く、幅を広くする必要がある。しかし、溝を深くすることはプロセス時間の増大によりコストがかかることに加え、溝の部分の半導体ウエハ構成材料が飛散し、半導体素子の表面を汚染してしまうことがあった。また、溝の幅を広くすることは1枚のウエハからのチップの収得数を減らしてしまう。
したがって、表面汚染がなく、低コストで半導体チップを分割するためには分割溝を浅く、幅が狭いままで容易に半導体チップに分割できる方法が必要であった。
【0006】
本発明の目的は、フェイスダウン(FD)実装に用いられる半導体チップを、より容易に製造できる半導体チップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が適用される半導体チップの製造方法は、基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、半導体素子に設けられた電極に接続され、半導体素子の基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って半導体ウエハの基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、半導体ウエハの突出電極が形成された側と反対側から、分割予定線に沿って半導体ウエハの基板にブレードを押圧して、半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程とを含む。
このような半導体チップの製造方法の脆弱領域形成工程において形成される脆弱な領域は、基板の内部に集光されたレーザ光によって形成されることを特徴とすることができる。また、脆弱領域形成工程において形成される脆弱な領域は、基板の分割予定線に沿った基板内に、基板の一方の表面から複数の距離に対して形成されることを特徴とすることができる。
さらに、半導体チップの製造方法の突出電極形成工程において形成される突出電極は、金(Au)または金(Au)を含む合金により構成されることを特徴とすることができる。
さらにまた、基板がサファイアで構成されていることを特徴とすることができる。
このような半導体チップの製造方法によって製造される半導体チップの半導体素子は、発光素子または受光素子であることを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される半導体ウエハの分割方法は、基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、半導体素子に設けられた電極に接続され、半導体素子の基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って半導体ウエハの基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、半導体ウエハの突出電極が形成された側と反対側から、分割予定線に沿って半導体ウエハの基板にブレードを押圧して、半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、フェイスダウン(FD)実装に用いられる半導体チップをより容易に製造できる。また、本発明は、半導体層への損傷の小さい半導体ウエハの分割方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される発光チップの断面模式図の一例を示す図である。
【図2】発光チップを図1の矢印IIの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。
【図3】発光チップを構成する積層半導体層の断面模式図の一例を示す図である。
【図4】発光チップを製造する方法を説明するフローチャートの一例である。
【図5】半導体素子形成工程および突出電極形成工程を説明する図である。
【図6】第1突出電極および第2突出電極が形成された側から見たウエハの平面図である。
【図7】脆弱領域形成工程および分割工程を説明する図である。
【図8】図1に示す発光チップを配線基板に実装した発光装置の構成の一例を示す図である。
【図9】本実施の形態が適用される発光チップの断面模式図の一例を示す図である。
【図10】発光チップを図9の矢印Xの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。
【図11】実施例および比較例における突出電極の高さ、発光チップの形状、LED特性およびIR不良率(%)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、ウエハ、チップなどを模式的に表しており、縮尺は正確ではない。
なお、本明細書では、基板上に複数の半導体素子を備えるものを半導体ウエハ(単にウエハと記載することがある。)と呼び、それぞれが半導体素子を備えるようにウエハを分割したものを半導体チップ(単にチップと記載することがある。)と呼ぶ。半導体チップの半導体素子が発光素子の場合、明細書中では発光チップと記載することがある。また、半導体チップの半導体素子が受光素子の場合、明細書中では受光チップと記載することがある。
半導体素子には、発光素子、受光素子、集積回路、機構系を電気・電子回路とともに組み込んだMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などが含まれる。ここでは、半導体素子の一例として発光素子で説明する。すなわち、半導体チップは発光チップとして説明する。
【0011】
〔発光チップ1〕
図1は本実施の形態が適用される発光チップ1の断面模式図の一例を示す図である。図2は、発光チップ1を図1の矢印IIの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。なお、図1の発光チップ1の断面模式図は、図2のI−I線での断面図である。
【0012】
まず、発光チップ1の断面構造を説明する。
図1に示すように、発光チップ1は、基板10と、基板10の表面10a上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備えている。また、発光チップ1は、下地層130上に積層されるn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層されるp型半導体層160とを備えている。なお、以下の説明においては、必要に応じて、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160を、まとめて積層半導体層100と呼ぶ。また、中間層120および下地層130とを含めて、積層半導体層100と呼ぶことがある。
【0013】
そして、発光チップ1は、p型半導体層160の上面160c(p型半導体層160の基板10と反対側の面)に形成される第1電極170と、積層されたp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140cに形成される第2電極180とを備えている。
【0014】
さらに、発光チップ1は、第1電極170および第2電極180と、p型半導体層160の上面160cの第1電極170が設けられていない領域と、半導体層露出面140cの第2電極180が設けられていない領域と、半導体層露出面140cを設けたことにより露出した積層半導体層100の側面とを覆うように積層された保護層190を備えている。ただし、保護層190は、第1電極170の上面170c(第1電極170の基板10と反対側の面)において、後述する第1突出電極210が形成される領域、および第2電極180の上面180c(第2電極180の基板10と反対側の面)において、後述する第2突出電極220が設けられる領域を除いて、第1電極170および第2電極180を覆うように積層されている。
【0015】
さらにまた、発光チップ1は、第1電極170の上面170c上に設けられた第1突出電極210および第2電極180の上面180c上に設けられた第2突出電極220を備えている。
【0016】
発光チップ1は、第1突出電極210を正極、第2突出電極220を負極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
ここで、発光素子20は、中間層120、下地層130、積層半導体層100、第1電極170、第2電極180を含んで構成されるとする。すなわち、発光チップ1は、基板10と発光素子20と第1突出電極210および第2突出電極220とを含んで構成されている。
【0017】
次に、発光チップ1の平面形状を説明する。
図2に示すように、発光チップ1の平面形状は、例えば350μm×350μmの正方形である。なお、発光チップ1の平面形状は、正方形に限らず、長方形など、他の形状であってもよい。
【0018】
半導体層露出面140cは、図2に示すように、発光チップ1の周縁を巡るように形成されている。なお、半導体層露出面140cは、図1において矢印II方向から発光チップ1を見たとき、正方形の4隅のうち1隅において、周縁から内側に向かって広がって設けられている。そして、第2電極180は、この広がって設けられた半導体層露出面140c上に設けられている。
一方、第1電極170は、p型半導体層160の上面160c上に設けられている。図1に示したように、発光チップ1は、発光層150から発光するため、第1電極170は面積が広いほど光量が大きい。よって、第1電極170は、発光チップ1の表面(平面形状)を大きく占めるように構成されている。
なお、第1電極170および第2電極180の形状および配置は、図2に示したものに限らず、他の形状および配置であってもよい。
【0019】
さらに、第1電極170上には、第1突出電極210と、第2電極180上には第2突出電極220とが設けられている。なお、図2では、第1突出電極210の断面形状は、第1電極170の外周部の輪郭を略縮小した円弧状の部分を有する形状であり、第2突出電極220は円形であるとしているが、断面形状が楕円形、正方形、長方形または他の形状であってもよい。
【0020】
では次に、発光チップ1の各構成要素について、より詳細に説明する。
<基板10>
基板10としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。ただし、本実施の形態の発光チップ1は、後述するように、基板10の裏面10b側から光を取り出すようにフェイスダウン(FD)実装されることから、発光層150から出射される光に対する透光性を有していることが好ましい。したがって、例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン等からなる基板10を用いることができる。
また、上記材料の中でも、特に、C面を主面とするサファイアを基板10として用いることが好ましい。サファイアを基板10として用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
さらに、基板10の裏面10bは、基板10の反りを抑制するために、面を荒らす処理を施しておくことが好ましい。
【0021】
<中間層120>
基板10の表面10a上に積層される中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板10と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0022】
中間層120は、基板10と下地層130との格子定数の違いを緩和し、特にC面を主面とするサファイアで基板10を構成した場合には、基板10の(0001)面(C面)上にc軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120上に単結晶の下地層130を積層すると、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。なお、本発明においては、中間層120の形成を行うことが好ましいが、必ずしも行わなくても良い。
【0023】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものであってもよく、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板10上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性および結晶性を有する結晶膜となる。
【0024】
さらに、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、成膜条件をコントロールすることにより、六角柱を基本とした集合組織からなる柱状結晶(多結晶)とすることも可能である。なお、ここでの集合組織からなる柱状結晶とは、隣接する結晶粒との間に結晶粒界を形成して隔てられており、それ自体は縦断面形状として柱状になっている結晶のことをいう。
【0025】
<下地層130>
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1−xN層が得られやすい。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドープしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0026】
<積層半導体層100>
積層半導体層100は、III族窒化物半導体からなる層であって、図1に示すように、下地層130上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。
ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1の導電型にて電気伝導を行うものであり、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2の導電型にて電気伝導を行うものである。
【0027】
図3は、発光チップ1を構成する積層半導体層100の断面模式図の一例を示す図である。図1におけるn型半導体層140はnコンタクト層140aとnクラッド層140bとを備えている。発光層150は、障壁層150aと井戸層150bとが交互に積層されてなる多重量子井戸構造で構成されている。そして、p型半導体層160は、pクラッド層160aとpコンタクト層160bとを備えている。
なお、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する積層半導体層100を形成できる。
以下、積層半導体層100を構成する層について説明する。
【0028】
(n型半導体層140)
n型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとを備えている。
nコンタクト層140aは、第2電極180を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
【0029】
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第2電極180との良好なオーミックコンタクトを維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
【0030】
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5〜5μmとされることが好ましく、1〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0031】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めとを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップエネルギよりも大きくすることが望ましい。なお、本明細書中では、各元素の組成比を省略してAlGaN、GaInNと記述する場合がある。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜500nmであり、より好ましくは5〜100nmである。nクラッド層140bのn型不純物濃度は1×1017〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。不純物濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0032】
なお、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、10nm以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに10nm以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。
また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0033】
(発光層150)
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することが可能である。本実施の形態では、図3に示すように、発光層150を、障壁層150aと井戸層150bとが交互に積層されてなる多重量子井戸構造で構成している。そして、発光層150は、nクラッド層140bと接する側およびpクラッド層160aと接する側は、それぞれ障壁層150aとなっている。
【0034】
ここで、井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
なお、本実施の形態では、発光層150が、青色光(発光波長λ=400〜465nm程度)を出力するようになっている。
【0035】
(p型半導体層160)
図3に示すように、p型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bを備える。ただし、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
【0036】
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
【0037】
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層160aにおけるp型不純物の濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、上述したnクラッド層140bと同様に超格子構造としてもよく、この場合には、組成比が異なるAlGaNと他のAlGaNとの交互構造または組成が異なるAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0038】
pコンタクト層160bは、第1電極170を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1−xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第1電極170との良好なオーミックコンタクトの維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物を1×1018〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミックコンタクトの維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0039】
<第1電極170>
次に、第1電極170の構成について、図1を参照して説明する。
第1電極170は、好ましくは、p型半導体層160の上面160c上に積層される第1導電層171と、第1導電層171上に積層される金属反射層172と、金属反射層172上に積層される第1ボンディング層174と、第1ボンディング層174上に後述する第1突出電極210が設けられる部分を除いて、第1ボンディング層174上に積層される第1密着層175とを備えている。
なお、金属反射層172と第1ボンディング層174との間に第1拡散防止層173が設けられてもよい。図1では、第1拡散防止層173が設けられた場合を示している。
以下、第1電極170を構成する各層について説明する。
【0040】
(第1導電層171)
p型半導体層160の上面160c上に第1導電層171が積層されているのが好ましい。図1および図2に示すように、第1導電層171は、p型半導体層160の上面160cの周縁部を除いて、p型半導体層160の上面160cのほぼ全面を覆うように設けられている。なお、図2では、第1電極170と記載した範囲に第1導電層171が形成されている。
第1導電層171の中央部は、一定の膜厚を有している。そして、第1導電層171の中央部のp型半導体層160と接する面と反対の面(表面)は、平坦であって、p型半導体層160の上面160cに対しほぼ平行である。一方、第1導電層171の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなるように、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜している。ただし、第1導電層171は、上記の形状に限定されるわけでなく、格子状や樹形状であってもよい。また、第1導電層171の断面の形状(断面形状)は、矩形状であってもよい。
【0041】
第1導電層171は、p型半導体層160とオーミックコンタクトがとれ、しかもp型半導体層160との接触抵抗が小さいものが好ましい。また、この発光チップ1では、発光層150から出射し、第1電極170側に向かう光を、金属反射層172で反射させて、基板10の裏面10bから取り出すことから、第1導電層171は透光性に優れたものを用いることが好ましい。さらにまた、p型半導体層160の全面に渡って電流を均一に拡散させるため、第1導電層171は優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布の少ないことが好ましい。
本実施の形態では、第1導電層171の中央部の厚さは、例えば5nmに設定されている。なお、第1導電層171の厚さは、2〜500nmの範囲より選択することができる。ここで、第1導電層171の厚さが2nmよりも薄いと、p型半導体層160とオーミックコンタクトが取れにくい場合があり、また、第1導電層171の厚さが500nmよりも厚いと、発光層150から出射し、第1電極170側に向かう光および金属反射層172で反射して基板10側に向かう光の透光性の点で好ましくない場合がある。
【0042】
第1導電層171の一例として、透明導電層が挙げられる。例えば、本実施の形態では、第1導電層171として、酸化物の導電性材料であって、発光層150から出射される光の波長に対して透光性のよいものが用いられる。特に、Inを含む酸化物の一部は、他の透明導電性材料と比較して、透光性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えばITO(酸化インジウム錫(In2O3−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In2O3−Ga2O3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In2O3−CeO2))等が挙げられる。これらに、例えばフッ素などのドーパントが添加されていてもかまわない。また、例えばInを含まない酸化物、例えばキャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いてもよい。
これらの材料を、後述する成膜手段で設けることによって、第1導電層171を形成できる。また、第1導電層171を形成した後に、第1導電層171の透明化と低抵抗化とを目的とした熱処理を施す場合もある。
【0043】
本実施の形態において、第1導電層171には、結晶化された構造のものを使用してよく、特に六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn2O3結晶を含む透光性材料(例えば、ITOやIZO等)を好ましく使用することができる。
例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを第1導電層171として使用する場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、その後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させることで、アモルファスのIZO膜よりも透光性に優れた電極に加工することができる。
【0044】
また、第1導電層171に用いるIZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。
例えば、IZO膜中のZnO濃度は1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%の範囲であることが更に好ましく、10質量%であると特に好ましい。
【0045】
第1導電層171に用いるIZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。なお、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn2O3結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
また、IZO膜の熱処理温度は、500〜1000℃が好ましい。500℃未満の温度で熱処理を行なった場合、IZO膜を十分に結晶化できない恐れが生じ、IZO膜の透光性が十分に高いものとならない場合がある。1000℃を超える温度で熱処理を行なった場合には、IZO膜は結晶化されているが、IZO膜の透光性が十分に高いものとならない場合がある。また、1000℃を超える温度で熱処理を行なった場合、IZO膜の下にある積層半導体層100を劣化させる恐れもある。
【0046】
特に、前述のように、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、p型半導体層160との密着性が良いため、本実施の形態において有効である。また、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、抵抗値が低下することから、発光チップ1における発光素子20の順方向電圧Vfを低減できる点でも好ましい。
【0047】
(金属反射層172)
図1に示すように、第1導電層171上には金属反射層172が積層されている。
金属反射層172は、平面視したときに第1導電層171の全面を覆うように形成されている。そして、金属反射層172の中央部は、一定の膜厚を有している。そして、金属反射層172の中央部の第1導電層171と接する面と反対の面は、ほぼ平坦である。一方、金属反射層172の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなるように、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜して設けられている。
【0048】
金属反射層172は、例えばAg(銀)で構成されている。金属反射層172としてAgを用いるのは、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の光に対して、高反射性を有しているためである。また、後述するように、金属反射層172は、第1導電層171を介してp型半導体層160に給電を行う機能も有している。よって、金属反射層172には、抵抗値が低く、且つ、第1導電層171との接触抵抗が低いことが必要である。
本実施の形態における金属反射層172の厚さは、例えば150nmに設定されている。金属反射層172の厚さは、50nm以上の範囲より好ましく選択することができる。ここで、金属反射層172の厚さが50nmよりも薄いと、発光層150から出射した光の反射性が低下する点で好ましくない場合がある。
なお、本実施の形態では、金属反射層172としてAg単体を用いているが、Agを含む合金を用いてもかまわない。また、Al(アルミ)やAl合金、Rh、Pt、Irなど反射率の高い白金族やその合金を用いてもよい。
【0049】
(第1拡散防止層173)
図1に示すように、金属反射層172上には第1拡散防止層173が積層されていることが好ましい。第1拡散防止層173は、接触状態にある金属反射層172を構成する金属(本実施の形態ではAg)が、第1ボンディング層174中に拡散するのを抑制するために設けられている。
第1拡散防止層173は、平面視したときに、金属反射層172の全面を覆うように設けられている。そして、第1拡散防止層173の中央部は、一定の膜厚を有している。第1拡散防止層173の中央部の金属反射層172と接する面と反対の面は、ほぼ平坦になっている。一方、第1拡散防止層173の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることで、第1拡散防止層173の端部の表面は、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜している。また、第1拡散防止層173は、p型半導体層160と直接接触しないように構成されている。
【0050】
第1拡散防止層173は、金属反射層172とオーミックコンタクトがとれ、しかも、金属反射層172との接触抵抗が小さいことが好ましい。ただし、後述するように、第1拡散防止層173は発光層150から出射する光を透光させる機能を要しないので、第1導電層171とは異なり、透光性を有する必要がない。
また、第1拡散防止層173は、金属反射層172および第1導電層171を介してp型半導体層160に給電する機能を有していることから、優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布が少ないことが好ましい。
【0051】
本実施の形態では、第1拡散防止層173の厚さは、例えば50nmに設定されている。第1拡散防止層173の厚さが50nm以上であれば、金属反射層172を構成するAgの拡散が抑制されやすい点で好ましい。これに対し、第1拡散防止層173の厚さが50nmよりも薄いと、第1拡散防止層173上に形成する第1ボンディング層174へのAgの拡散の防止の点で好ましくない。また、第1拡散防止層173の厚さが5μmよりも厚いと、コストアップの点で好ましくない。
【0052】
本実施の形態では、第1拡散防止層173として、Ta(タンタル)が用いられている。
【0053】
また、第1拡散防止層173としては、Ta(タンタル)の他、IZO、ITO、IGO、ICO等を用いることができる。また、例えばキャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いてもよい。さらに、Ni(ニッケル)やTi(チタン)などの金属材料を用いても差し支えない。
【0054】
(第1ボンディング層174)
図1に示すように、第1拡散防止層173上には第1ボンディング層174が積層されている。第1ボンディング層174は、平面視したときに、第1拡散防止層173の全面を覆うように設けられている。そして、第1ボンディング層174の中央部は、一定の膜厚を有している。第1ボンディング層174の中央部の第1拡散防止層173と接する面と反対側の面(第1電極170の上面170c)は、ほぼ平坦になっている。一方、第1ボンディング層174の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることで、第1ボンディング層174の端部の表面は、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜している。
【0055】
第1ボンディング層174は、少なくとも1層以上の層を備えている。この場合、第1拡散防止層173から最も離れて設けられた層(最表層)には、一般にAu(金)が用いられる。本実施の形態では、第1ボンディング層174としてAu(金)の単層膜を用いているが、例えば第1拡散防止層173に接して設けられる第1層としてのNi(ニッケル)層と、このNi層上に設けられる第2層としてのPt(白金)層と、さらに第2層のPt層上に設けられる第3層(最表層)としてのAu(金)層とを有する構造を採用してもよい。
本実施の形態では、第1ボンディング層174の全体の厚さが、例えば300nmに設定されている。第1ボンディング層174の全体の厚さは、後述する第1突出電極210が設けられ得る厚さがあれば、厚さに制限なく使用することができる。第1ボンディング層174の全体の厚さは、好ましくは50〜8000nmである。
【0056】
なお、第1ボンディング層174を複数の金属層で構成する場合において、第1拡散防止層173と接する第1層を構成する材料としては、上述したNi(ニッケル)の他、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、NiTi(ニッケルチタン)合金、およびこれらの窒化物を使用することができる。
【0057】
(第1密着層175)
図1に示すように、第1ボンディング層174上には、第1密着層175が積層されているのが好ましい。第1密着層175は、Au(金)で構成された第1ボンディング層174と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。
第1密着層175は、平面視したときに、第1ボンディング層174上の第1突出電極210が設けられる部分を除いて、第1ボンディング層174の表面を覆うように設けられている。なお、第1密着層175は、端部がp型半導体層160の上面160cと接するように設けられている。
【0058】
本実施の形態において、第1密着層175は、Ta(タンタル)で構成されている。ただし、第1密着層175の材料として、Ta(タンタル)以外に、例えばTi(チタン)やNi(ニッケル)、W(タングステン)を用いることも可能である。そして、本実施の形態では、第1密着層175の厚さは、例えば10nmに設定されている。第1密着層175の厚さは、5〜400nmとすることが好ましく、5〜300nmとすることがより好ましく、7〜100nmとすることがさらに好ましい。第1密着層175の厚みが5nm未満では、第1ボンディング層174と保護層190との密着性が低下するので好ましくない。
【0059】
<第2電極180>
続いて、第2電極180の構成について、図1を参照して説明する。
第2電極180は、好ましくは、n型半導体層140の半導体層露出面140c上に積層される第2導電層181と、第2導電層181上に積層される第2ボンディング層183と、第2ボンディング層183上に後述する第2突出電極220が設けられる部分を除いて、第2ボンディング層183上に積層される第2密着層184とを備えている。
なお、第2導電層181と第2ボンディング層183との間に第2拡散防止層182を設けてもよい。図1には、好ましい例として第2拡散防止層182を設けた場合を示している。
【0060】
(第2導電層181)
図1に示すように、n型半導体層140の上には第2導電層181が積層されているのがよい。
第2導電層181は、平面視したときの形状(平面形状)が円形状になっている(図2において、第2電極180の範囲に形成されている。)。そして、第2導電層181の中央部は、一定の膜厚を有している。第2導電層181の中央部の半導体層露出面140cと接する面と反対の面(表面)は、半導体層露出面140cに対しほぼ平坦である。一方、第2導電層181の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜している。
ただし、第2導電層181の平面形状は、上記の形状に限定されるわけでなく、格子状や樹形状であってもよい。また、第2導電層181の断面形状は、矩形状であってもよい。
【0061】
第2導電層181は、n型半導体層140とオーミックコンタクトがとれ、しかもn型半導体層140との接触抵抗が小さいものが好ましい。
本実施の形態では、第2導電層181として、Al(アルミニウム)を用いている。第2導電層181を構成するAl(アルミニウム)は、第1電極170の金属反射層172を構成するAg(銀)と同様、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の光に対して、高反射性を有しており、金属反射層として機能するようになっている。
本実施の形態における第2導電層181の厚さは、例えば150nmに設定されている。第2導電層181の厚さは、50〜1000nmの範囲より選択することができる。ここで、第2導電層181の厚さが50nmよりも薄いと、光が透過してしまうことによって光の取り出し効率が低下する。一方、第2導電層181の厚さが1000nmよりも厚いと、成膜時間が長くなって、第2導電層181を形成するために用いられるレジストが、加熱により硬化し、レジスト残渣が生じやすくなるなど、信頼性の面で好ましくない場合がある。
【0062】
また、第2導電層181を金属反射層172と同様にAg(銀)としてもよい。このとき、第2導電層181と金属反射層172との厚さを同じとすれば、後述するように、第2導電層181と金属反射層172とを同時に形成することができる。
【0063】
(第2拡散防止層182)
図1に示すように、第2導電層181に接して第2拡散防止層182が積層されていることが好ましい。この第2拡散防止層182は、第2導電層181を構成する金属(本実施の形態ではAl)が、第2ボンディング層183中に拡散することを抑制するために設けられている。
第2拡散防止層182は、平面視したときに、第2導電層181の全面を覆うように設けられている。そして、第2拡散防止層182の中央部は、一定の膜厚を有している。第2拡散防止層182の中央部の第2導電層181と接する面と反対側の面(表面)は、ほぼ平坦になっている。一方、第2拡散防止層182の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることで、第2拡散防止層182の端部の表面は、n型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜している。また、第2拡散防止層182は、n型半導体層140と直接接触しないように構成されている。
【0064】
第2拡散防止層182は、第2導電層181とオーミックコンタクトがとれ、しかも、第2導電層181との接触抵抗が小さいことが好ましい。また、第2拡散防止層182は、第2導電層181を介してn型半導体層140に給電する機能を有していることから、優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布が少ないことが好ましい。
【0065】
本実施の形態では、第2拡散防止層182として、Pt(白金)が用いられている。
なお、第2拡散防止層182としては、Ptの他に、Rh(ロジウム)、W(タングステン)などを用いてもかまわない。
そして、本実施の形態における第2拡散防止層182の厚さは、例えば50nmに設定されている。第2拡散防止層182の厚さが50nm以上であれば、第2導電層181を構成するAlの第2ボンディング層183への拡散が抑制されやすくなる点で好ましい。これに対し、第2拡散防止層182の厚さが50nmよりも薄いと、第2ボンディング層183への第2導電層181を構成するAlの拡散の防止の点で好ましくない。また、第2拡散防止層182の厚さが5000nmよりも厚いと、材料のコストアップの点で好ましくない。
【0066】
なお、第2導電層181をAgとした場合には、第2拡散防止層182をIZOとしてもよい。このとき、第2拡散防止層182と第1拡散防止層173との厚さを同じとすれば、後述するように、第2拡散防止層182と第1拡散防止層173とを同時に形成することができる。
【0067】
(第2ボンディング層183)
図1に示すように、第2拡散防止層182上に第2ボンディング層183が積層されている。
第2ボンディング層183は、第2拡散防止層182の全面を覆うように設けられている。そして、第2ボンディング層183の中央部は、一定の膜厚を有している。第2ボンディング層183の中央部の第2拡散防止層182と接する面と反対側の面(第2電極180の上面180c)は、ほぼ平坦になっている。一方、第1ボンディング層174の端部は、端に近づくにつれて膜厚が漸次薄くなることで、第1ボンディング層174の端部の表面は、n型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜している。
【0068】
第2ボンディング層183は、前述した第1電極170の第1ボンディング層174と同様に、少なくとも1層以上の金属層を備えている。この場合、第2拡散防止層182から最も離れて設けられた層(最表層)には、一般にAu(金)が用いられる。本実施の形態では、第2ボンディング層183として、第1ボンディング層174と同様に、Auの単層膜を用いているが、第1拡散防止層173で説明したように、第2ボンディング層183を複数の金属層からなる積層構造とすることもできる。
本実施の形態では、第2ボンディング層183の全体の厚さが、例えば300nmに設定されている。第2ボンディング層183の全体の厚さは、後述する第2突出電極220を設けられ得る厚さがあれば、厚さに制限なく使用することができる。第2ボンディング層183の全体の厚さは、好ましくは50〜8000nmである。
【0069】
なお、第2ボンディング層183と第1ボンディング層174とを同じ構成、同じ膜厚とすれば、後述するように、第2ボンディング層183と第1ボンディング層174とを同時に形成することができる。
【0070】
(第2密着層184)
図1に示すように、第2ボンディング層183の上には、第2密着層184が積層されているのが好ましい。第2密着層184は、前述の第1電極170の第1密着層175と同様に、Auで構成された第2ボンディング層183と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。
第2密着層184は、平面視したときに、第2ボンディング層183上の第2突出電極220が設けられる部分を除いて、第2ボンディング層183の表面を覆うように設けられている。なお、第2密着層184は、端部がn型半導体層140の半導体層露出面140cと接するように設けられている。
【0071】
本実施の形態において、第2密着層184は、第1密着層175と同様にTa(タンタル)で構成されている。ただし、第2密着層184の材料として、Ta(タンタル)以外に、例えばTi(チタン)やNi(ニッケル)、W(タングステン)を用いることも可能である。そして、本実施の形態では、第2密着層184の厚さは、例えば10nmに設定されている。第2密着層184の厚さは、5〜400nmとすることが好ましく、5〜300nmとすることがより好ましく、7〜100nmとすることがさらに好ましい。第2密着層184の厚みが5nm未満では、第2ボンディング層183と保護層190との密着性が低下するので好ましくない。
【0072】
<保護層190>
図1に示すように、保護層190は、p型半導体層160の上面160cの第1電極170が設けられていない領域と、半導体層露出面140cの第2電極180が設けられていない領域と、半導体層露出面140cを設けたことにより露出した積層半導体層100の側面とを覆うように積層されている。ただし、保護層190は、第1電極170の上面170cにおいて、後述する第1突出電極210が形成される領域、および第2電極180の上面180cにおいて、後述する第2突出電極220が設けられる領域を除いて、第1電極170および第2電極180を覆うように積層されている。
保護層190は、外部から水等が、積層半導体層100、第1電極170および第2電極180に浸入するのを抑制する機能を備えている。なお、本実施の形態では、保護層190は、SiO2(2酸化珪素)で構成されている。
【0073】
<第1突出電極210>
第1突出電極210は、第1電極170上に設けられている。
本実施の形態では、第1突出電極210の平面形状は、図2に示すように第1電極170の外周部の輪郭を略縮小した円弧状の部分を有する形状である。第1突出電極210の上から見たときの面積は、例えば第1電極170の外周部の輪郭で囲われた面積の30%である。なお、第1突出電極210の平面形状は、円形や長方形でもよい。
そして、図1に示すように、第1突出電極210は、第1ボンディング層174上に積層された第1基部211と、第1基部211上に積層された第1接続部212とを備えている。
本実施の形態では、第1基部211は、第1ボンディング層174と同じAu(金)で構成されている。そして、第1接続部212はAuSn(金錫)合金で構成されている。
第1接続部212のAuSn合金を設ける理由は、AuSn合金の融点が300℃以下であって、発光チップ1が搭載される配線基板500の表面に設けられた正電極511(後述する図8参照)と容易に熱圧着させるためである。なお、第1突出電極210に第1接続部212を設けず、AuSn合金の層を配線基板500の正電極511(後述する図8参照)上に設けてもよい。
本実施の形態では、第1突出電極210の全体の厚さT1は、例えば15μmである。第1接続部212の厚さは1〜3μmである。
【0074】
<第2突出電極220>
第2突出電極220は、第2電極180上に設けられている。
本実施の形態では、第2突出電極220の平面形状は円形である(図2参照)。第2突出電極220の径も、例えば100μmである。なお、第2突出電極220の平面形状は、円形でなくともよい。
そして、第2突出電極220は、第2ボンディング層183上に積層された第2基部221と、第2基部221上に積層された第2接続部222とを備えている。
本実施の形態では、第2突出電極220は、第1突出電極210と同じ構成としている。すなわち、第2基部221は、第2ボンディング層183と同じAu(金)で構成されている。そして、第2接続部222はAuSn(金錫)合金で構成されている。
第2接続部222のAuSn合金を設ける理由は、第1接続部212の場合と同様である。なお、第2突出電極220に第2接続部222を設けず、AuSn合金の層を配線基板500の負電極512(後述する図8参照)上に設けてもよい。
本実施の形態では、第2突出電極220の全体の厚さT2は、第1突出電極210と同じく、例えば15μmである。第2接続部222の厚さは1〜3μmである。
【0075】
以上説明したように、第1突出電極210と第2突出電極220とは同じ構成であるので、後述する発光チップ1の製造工程において、同時に形成できる。また、同時に形成した場合、第1突出電極210の全体の厚さT1と第2突出電極220の全体の厚さT2とは同じになる(T1=T2)。
【0076】
本実施の形態では、第2突出電極220の全体としての厚さT2(本実施の形態では15μm)は、半導体層露出面140cを設けるためにエッチングにより積層半導体層100が除去された深さD(本実施の形態では0.6〜0.7μm)より、大きく設定されている(T2>D)。
そして、第1電極170の金属反射層172(150nm)と第2電極180の第2導電層181(150nm)と、第1電極170の第1拡散防止層173(50nm)と第2電極180の第2拡散防止層182(50nm)と、第1電極170の第1ボンディング層174(300nm)と第2電極180の第2ボンディング層183(300nm)とを、それぞれ同じ厚さにしている。また、第1電極170の第1導電層171の厚さは5nmと、他の層に比べて薄い。よって、p型半導体層160の上面160cから第1ボンディング層174の上面170cまでの第1電極170の厚さ(505nm)と、半導体層露出面140cから第2ボンディング層183の上面180cまでの第2電極180の厚さ(500nm)とは、ほとんど差がない。
よって、第2突出電極220の表面220c(第2接続部222の第2基部221と接した面とは反対の面)は、保護層190の基板10からの距離が最も大きい部分である第1電極170の第2密着層184上の表面190cより突き出ている。
【0077】
本実施の形態では、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210c(第1接続部212の第1基部211と接した面とは反対の面)の基板10との距離の差は、半導体層露出面140cを設けるためにエッチングにより積層半導体層100が除去された深さDとほぼ同じとなる。すなわち、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210cは、基板10の裏面10bからの距離が、互いに異なっている。
【0078】
なお、例えば第2電極180を構成する第2導電層181の厚さを100nm、第2拡散防止層182の厚さを100nm、第2ボンディング層183の厚さを1μmとすると、半導体層露出面140cから第2ボンディング層183の上面180cまでの第2電極180の厚さが1.2μmとなる。この厚さは、半導体層露出面140cを設けるためにエッチングにより積層半導体層100が除去された深さD(本実施の形態では0.6〜0.7μm)と、p型半導体層160の上面160cから第1ボンディング層174の上面170cまでの第1電極170の厚さ(505nm)とを加えた値となる。この場合、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210c(第1接続部212の第1基部211と接した面とは反対の面)の基板10との距離の差を小さく設定できる。
【0079】
[発光チップ1の製造方法]
次に、図1に示す発光チップ1を製造する方法(製造方法)の一例について説明する。
ウエハ30は、基板10上に複数の発光素子20が一括して設けられた状態であって、個別の発光チップ1に分割される前の状態である。ここでは、ウエハ30を製造する途中の工程においても、ウエハ30と呼ぶ。
【0080】
図4は、発光チップ1を製造する方法を説明するフローチャートの一例である。図4(a)に示すように、発光チップ1の製造方法は、基板10上に第1電極170および第2電極180を設けた発光素子20を形成する半導体素子形成工程(ステップ101)と、発光素子20の第1電極170上に第1突出電極210および第2電極180上に第2突出電極220を形成する突出電極形成工程(ステップ102)と、ステップ102の後に基板10の分割予定線H1〜H5、V1〜V5(後述する図6参照)に沿って、基板10内に脆弱領域321を形成する脆弱領域形成工程(ステップ103)と、基板10上に発光素子20が形成されたウエハ30を、脆弱領域321を起点として、発光チップ1に分割する分割工程(ステップ104)とを含む。
そして、半導体素子形成工程(ステップ101)は、図4(b)に示すように、基板10上に中間層120、下地層130、発光層150、p型半導体層160を含む積層半導体層100を形成する半導体層積層工程(ステップ201)と、積層半導体層100の一部を切り欠き除去して半導体層露出面140cを形成する半導体層露出面形成工程(ステップ202)と、積層半導体層100の上面160c上に第1電極170を形成する第1電極形成工程(ステップ203)と、半導体層露出面140c上に第2電極180を形成する第2電極形成工程(ステップ204)と、保護層190を形成する保護層形成工程(ステップ205)とを含む。
【0081】
本実施の形態が適用される発光チップ1の製造方法では、必要に応じて、第1電極形成工程(ステップ203)および第2電極形成工程(ステップ204)の後、ウエハに熱処理(アニール処理)を施すアニール工程をさらに有している場合がある。
【0082】
以下、各工程について、順番に説明する。
図5は、半導体素子形成工程(図4(a)のステップ101)および突出電極形成工程(図4(a)のステップ102)を説明する図である。図5は、ウエハ30の直径(後述する図6に示すウエハ30のV−V線)での断面図を示している。なお、図5では、例としてウエハ30の直径(V−V線)上に、4個の発光チップ1が並ぶとする。
【0083】
(半導体層積層工程)
図5(a)に示す半導体層積層工程(図4(b)のステップ201)を説明する。
先ず、基板10の表面10a上に、スパッタ法によって、中間層120を積層する。
スパッタ法によって、単結晶構造を有する中間層120を形成する場合、チャンバ内の窒素ガスと不活性ガスとの流量比を、窒素ガスが50〜100%、望ましくは75%となるようにすることが望ましい。
また、スパッタ法によって、柱状結晶(多結晶)を有する中間層120を形成する場合、チャンバ内の窒素ガスと不活性ガスとの流量比を、窒素ガスが1〜50%、望ましくは25%となるようにすることが望ましい。なお、中間層120は、上述したスパッタ法だけでなく、MOCVD法で形成することもできる。
【0084】
中間層120を形成した後、中間層120上に、単結晶の下地層130を形成する。下地層130は、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
下地層130の形成後、下地層130上にnコンタクト層140aおよびnクラッド層140bを積層してn型半導体層140を形成する。nコンタクト層140aおよびnクラッド層140bは、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0085】
発光層150の形成は、スパッタ法、MOCVD法のいずれの方法でもよいが、特にMOCVD法が好ましい。具体的には、障壁層150aと井戸層150bとを交互に繰り返して積層し、且つ、n型半導体層140側およびp型半導体層160側に障壁層150aが配される順で積層すればよい。
【0086】
p型半導体層160の形成は、スパッタ法、MOCVD法のいずれの方法でもよい。具体的には、発光層150上にpクラッド層160aと、pコンタクト層160bとを順次積層すればよい。
【0087】
(半導体層露出面形成工程)
次に、図5(b)に示す半導体層露出面形成工程(図4(b)のステップ202)を説明する。
基板10の表面10a上に、中間層120、下地層130、積層半導体層100が形成されたウエハ30の、p型半導体層160の上面160c上に、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法により、半導体層露出面140cを形成する部分が開口部となったレジスト膜(不図示)を形成し、それに引き続くエッチング等による手法によって、積層半導体層100の一部を除去して、nコンタクト層140aの一部を露出させ、半導体層露出面140cを形成する。こののち、レジスト膜を除去する。
【0088】
(第1電極形成工程)
図5(c)に示す第1電極形成工程(図4(b)のステップ203)を説明する。
従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法によって、p型半導体層160の上面160c上の第1電極170が形成される部分が開口部となったレジスト膜251を形成する。
なお、レジスト膜251の開口部では、レジスト膜251の側壁が庇(オーバハング)状(矢印Aで示す状態)になっていることが好ましい。
この後、ウエハ30上に第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を、従来公知のスパッタ法または真空蒸着法等の成膜の手法により連続して堆積する。
この後、ウエハ30をレジスト剥離液(レジストリムーバ)に浸漬するなどにより、レジスト膜251とともに、レジスト膜251上に堆積した第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を除去する(リフトオフ法)。これにより、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174が形成される。
【0089】
なお、レジスト膜251の開口部のオーバハング状(矢印A)の部分のp型半導体層160の上面160cには、シャドウ効果により、各層を構成する材料が付着しにくい。このため、各層の端部では、端に近づくにつれ、膜厚が薄くなる。このようにして、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174のそれぞれの端部は、端に近づくにつれて、膜厚を薄くすることができる。
また、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を順次連続して堆積するため、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の端の位置が同じとなる。
【0090】
なお、第1導電層171に熱処理を施すときは、第1導電層171の形成と、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の形成とを分けて行えばよい。
すなわち、第1導電層171を堆積後、レジスト膜を除去して、熱処理を施す。再度、レジスト膜を設け、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を順次連続して堆積すればよい。このとき、金属反射層172の端部が、p型半導体層160に接触しないよう、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174を形成するためのレジスト膜の開口部が、第1導電層171上に設けられるようにすればよい。
【0091】
(第2電極形成工程)
図5(d)に示す第2電極形成工程(図4(b)のステップ204)を説明する。
第1電極170の形成のための第1電極形成工程と同様に、第2電極180を形成する。すなわち、開口部の側壁がオーバハング状になったレジスト膜252を形成し、その後、第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183の材料の膜を、従来公知のスパッタ法または真空蒸着法等の成膜の手法により連続して堆積する。
この後、ウエハ30をレジスト剥離液に浸漬するなどにより、レジスト膜252とともに、レジスト膜252上に堆積した第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183の材料の膜を除去する(リフトオフ法)。これにより、第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183が形成される。
なお、第1電極形成工程において、第1導電層171の形成と、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の形成とを分けて行えば、第2電極180の第2導電層181と第1電極170の金属反射層172とを同時に形成し、第2電極180の第2拡散防止層182と第1電極170の第1拡散防止層173とを同時に形成し、さらに、第2電極180の第2ボンディング層183と第1電極170の第1ボンディング層174とを同時に形成できる。
【0092】
図示しないが、この後、第1電極170における第1密着層175および第2電極180における第2密着層184を同時に形成する。第1密着層175および第2密着層184の形成は、第1密着層175および第2密着層184を構成する材料の膜を、ウエハ30の全面に堆積した後、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法によるレジスト膜の形成と、それに引き続く従来公知のエッチングなどの手法によって行ってもよい。また、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法によるレジスト膜の形成と、それに引き続く第1密着層175および第2密着層184を構成する材料の膜の堆積と、レジスト膜の除去とともに、レジスト膜上の第1密着層175および第2密着層184を構成する材料をリフトオフする手法によって行ってもよい。
【0093】
(保護層形成工程)
図5において図示しないが、保護層形成工程(図4(b)のステップ205)を説明する。
ウエハ30上に、SiO2からなる保護層190を構成する膜を形成した後、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法により、保護層190を構成する膜上にレジスト膜253を形成する(図5(e)参照)。レジスト膜253には、第1電極170上の第1突出電極210が形成される領域および第2電極180上の第2突出電極220が形成される領域に開口部が設けられている。
そして、従来公知のエッチングなどの手法によって、第1突出電極210および第2突出電極220が形成される領域の保護層190、第1密着層175、第2密着層184をエッチング除去し、次いでレジスト膜253を除去する。
【0094】
(突出電極形成工程)
図5(e)に示す第1突出電極210および第2突出電極220を形成する突出電極形成工程(図4(a)のステップ102)を説明する。
ウエハ30の全面に図示しないTiまたはTiとWとからなるTiW合金層とAu層からなるアンダーバンプメタル層(略してUBM膜と称する。)を形成し、その後レジスト膜253を再度形成する。レジスト膜253には上記と同様に、第1電極170上の第1突出電極210が形成される領域および第2電極180上の第2突出電極220が形成される領域に開口部が設けられている。
次に、公知の電解メッキ法によって、第1突出電極210の第1基部211および第2突出電極220の第2基部221を構成する材料(本実施の形態ではAu(金))を形成する。
次に、第1突出電極210の第1接続部212および第2突出電極220の第2接続部222を構成する材料(本実施の形態ではAuSn(金錫)合金)を、従来公知のスパッタ法、真空蒸着法などの成膜の手法により堆積する。
次いで、レジスト膜253を除去し、引き続き、レジスト膜253の除去により露出したUBM膜をエッチングで除去する。エッチング液としては、例えば、Auに対してはKIとI2の混合液を、TiまたはTiW合金に対しては硫酸加水溶液を用いることができる。
以上のようにして、発光チップ1に分割される前のウエハ30が製造される。
【0095】
このようにして得られたウエハ30を、例えば窒素などの還元雰囲気下において、150〜300℃、より好ましくは200〜250℃で熱処理してもよい。
この熱処理は、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174、第1密着層175、保護層190、第1基部211、第1接続部212間および第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183、第2密着層184、保護層190、第2基部221、第2接続部222間の密着性の向上および電気的な接触抵抗の低減を図るためである。なお、熱処理は必ずしも行う必要はないが、密着性の向上および電気的な接触抵抗の低減を図るためには行う方が好ましい。
【0096】
次に、半導体チップ分割のための、脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103)および分割工程(図4(a)のステップ104)について説明する。
図6は、第1突出電極210および第2突出電極220が形成された側から見たウエハ30の平面図である。
ウエハ30には、図6において、X方向ピッチpxおよびY方向ピッチpyで、複数の発光チップ1が並んで形成されている。なお、図6では、例としてウエハ30のX方向の直径に沿って、4個の発光チップ1が、ウエハ30のY方向の直径に沿って、4個の発光チップ1が並んでいるとしている。なお、図5に示したウエハ製造工程は、V−V線での断面図である。
そして、ウエハ30は、分割予定線H1〜H5および分割予定線V1〜V5で、発光チップ1に分割されるとする。図6では、分割予定線H1〜H5および分割予定線V1〜V5は線として示しているが、ウエハ30の表面からウエハ30の裏面(基板10の裏面10b)に延びた垂直な面(分割予定面)で切断されることになる。よって、以下では、分割予定線(H1〜H5およびV1〜V5)を分割予定面(H1〜H5およびV1〜V5)とも呼ぶ。
なお、図6では、ウエハ30の発光チップ1の個数を、4×4としているが、ウエハ30の発光チップ1の個数は、ウエハ30の直径と、発光チップ1のpxおよびpyによって決まる。
【0097】
図7は、脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103)および分割工程(図4(a)のステップ104)を説明する図である。
脆弱領域形成工程では、ウエハ30の基板10内部に脆弱領域321を形成する。そして、分割工程では、脆弱領域321を起点として、ウエハ30を発光チップ1に分割する。
(脆弱領域形成工程)
図7(a)に示す脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103)を説明する。
ウエハ30の第1突出電極210および第2突出電極220の形成された側を、ダイシングテープ315の一方の面であって、接着剤が塗布された面に貼り付ける。
ウエハ30の第1突出電極210の表面210cと第2突出電極220の表面220cとは、基板10の表面10aからの距離が異なっている。しかし、前述したように、本実施の形態における距離の差は0.6〜0.7μmである。また、ダイシングテープ315は、柔軟性のあるプラスチックフィルムであって、接着剤が塗布されている。よって、ウエハ30の第1突出電極210の表面210cおよび第2突出電極220の表面220cは、基板10の表面10aからの距離の差に関わらず、ダイシングテープ315に接着して固定される。
【0098】
次いで、ダイシングテープ315の接着剤が塗布された面に、金属製のウエハリング316を貼り付けて固定する。ウエハリング316は、ダイシングの際のウエハ30の固定治具として働く。
そして、ウエハリング316およびウエハ30を固定したまま、ダイシングテープ315のウエハリング316およびウエハ30が固定された面と反対側の面を、ダイシング装置のステージ317に載置する。
なお、ウエハ30をダイシングテープ315に貼り付ける前に、基板10の厚さを、研磨(研削)により薄くしてもよい。
【0099】
次に、図7(a)に示すように、基板10の裏面10bから、分割予定線H1〜H5およびV1〜V5に沿って、基板10の内部に焦点を合わせたレーザ光345を照射する。図7(a)では、基板10の分割予定線H2に沿って、基板10の内部に脆弱領域321を形成するところを示している。
具体的には、レーザ光345を固定し、レーザ光345が分割予定線H1〜H5、V1〜V5に沿って移動するように、ダイシング装置のステージ317を予め定められた速度で移動させる。
レーザ光345には、YAGレーザ光を用いることができる。レーザ光345にパルスレーザを用いると、分割予定線H1〜H5、V1〜V5に沿って、基板10の内部に点状に脆弱領域321が形成される。このとき、X方向の分割予定線H1に沿って、脆弱領域321を形成した後、ステージ317を移動して、分割予定線H2に沿って、脆弱領域321を形成する。同様に、分割予定線H3、H4、H5に沿って、脆弱領域321を形成する。この後、Y方向の分割予定線V1〜V5に沿って脆弱領域321を形成する。
【0100】
なお、脆弱領域321は、基板10の裏面10bから異なる距離に設けられてもよい。この場合、先に基板10の裏面10bから大きい距離に脆弱領域321を設けることが好ましい。もし、基板10の裏面10bから小さい距離に脆弱領域321を設けた後、基板10の裏面10bから大きい距離に脆弱領域321を設けると、基板10の裏面10bからの小さい距離に設けられた脆弱領域321により、レーザ光345が擾乱を受けて、レーザ光345の集光が妨げられ、基板10の裏面10bから大きい距離に脆弱領域321を形成することが難しくなってしまう。
【0101】
(分割工程)
図7(b)および(c)に示す分割工程(図4(a)のステップ104)を説明する。
図7(b)に示すように、脆弱領域321が形成されたウエハ30を、ダイシングテープ315およびウエハリング316を設けた状態で、ウエハリング316およびウエハ30が固定された面と反対側の面を、切断装置のステージ318に設定する。
ブレーキング装置のステージ318は、リング状のリングステージ318cと、リングステージ318cの中央に設けられ、直線状の間隙(隙間)を隔てて配置された2つのサブステージ318aと318bとから構成されている。よって、間隙に、分割予定線H1〜H5、V1〜V5のいずれかが対応するようにウエハ30を配置する。図7(b)では、分割予定線H3が2つのサブステージ318aと318bとの間の間隙に一致するように配置されている。
そして、図7(c)に示すように、基板10の裏面10bに、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)に沿って、ブレード320を押圧する。
このとき、第1突出電極210の表面210cおよび第2突出電極220の表面220cのいずれもが、基板10側から見て、保護層190の表面190cより突き出ている(図1参照)。そして、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)は、図6に示したように、突出電極(第1突出電極210および第2突出電極220)の間に設けられている。よって、ブレード320が基板10の裏面10bに対して押圧されると、ウエハ30は、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)を挟んで隣接する第1突出電極210の表面210cと第2突出電極220の表面220cの表面とを支点にして、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)の部分が沈み込む。このとき、沈み込み量が大きいと、ウエハ30に切断する力(モーメント)が大きく働き、ウエハ30が切断されやすくなる。
本実施の形態では、突出電極(第1突出電極210および第2突出電極220)を設けて沈み込み量を大きくしているので、ウエハ30の発光チップ1への分割を容易にしている。
よって、本実施の形態では、ウエハ30の表面溝を設けることを要しないので、溝を形成するための工程において、ウエハ30の表面、すなわち半導体素子の表面が溝を構成する材料の飛散により汚染されることがない。
【0102】
[発光チップ1の使用方法]
次に、図1に示す発光チップ1の使用方法について説明する。
図8は、図1に示す発光チップ1を配線基板500に実装した発光装置3の構成の一例を示す図である。
配線基板500は、表面500a上に端子としての正電極511および負電極512を備えている。配線基板500の正電極511と負電極512は、図1に示す発光チップ1の第1突出電極210および第2突出電極220と対向させたとき、正電極511と第1突出電極210とが接続され、負電極512と第2突出電極220とが接続されることができるような位置に設けられている。
さらに、配線基板500の表面500aまたは表面500aおよび裏面500bには、図示しないが正電極511および負電極512に電流を供給するための複数の配線が設けられている。
なお、配線基板500は、配線基板500の内部に、ビア・ホールを介して正電極511および負電極512に接続される配線を備えた層(配線層)を1層または複数層備えた多層配線基板であってもよい。
【0103】
そして、配線基板500の正電極511および負電極512に対して、発光チップ1の第1突出電極210および第2突出電極220をそれぞれ接触させ、発光チップ1の第1接続部212および第2接続部222が溶融しうる温度に加熱した状態で、発光チップ1を配線基板500に押圧する。これにより、正電極511と第1突出電極210とが電気的に接続され、負電極512と第2突出電極220とが電気的に接続される。
上述の発光チップ1を配線基板500に実装する方法は、フェイスダウン(FD)実装と呼ばれるものである。
【0104】
図8では、発光チップ1は、基板10の裏面10bが配線基板500の表面500aに対して、傾いて実装されている。これは、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210cの基板10の裏面10bからの距離が、互いに異なっているためである。しかし、図8では配線基板500に対して、発光チップ1が大きく傾いて示しているが、前述したように距離の差は0.6〜0.7μmであって、発光チップ1の一辺の長さである350μmに比べきわめて小さく、配線基板500に対する発光チップ1の傾きは小さい。
前述したように、第2電極180を構成する第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183のそれぞれの厚さを調整することにより、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210cの、基板10の裏面10bからの距離の差を抑制することができる。
【0105】
発光チップ1を配線基板500にフェイスダウン(FD)実装した発光装置3の動作について説明する。
配線基板500に設けられた配線を介して、正電極511と負電極512との間に電位を印加して、正電極511から負電極512に向かう電流を流すと、第1突出電極210および第2突出電極220を介して、発光チップ1の積層半導体層100に電流が流れ、発光層150から青色光が出射する。なお、第1電極170では、第1ボンディング層174、第1拡散防止層173、金属反射層172および第1導電層171を介して、均一化された電流がp型半導体層160に供給される。
【0106】
発光層150から出射される光のうち基板10側に向かう光は、n型半導体層140、下地層130、中間層120および基板10を透過し、図8に示す矢印方向すなわち発光チップ1の外部に出射する。
【0107】
一方、発光層150から出射される光のうち第1電極170側に向かう光は、p型半導体層160および第1導電層171を介して金属反射層172に到達し、金属反射層172で反射される。そして、金属反射層172で反射した光は、第1導電層171、p型半導体層160、発光層150、n型半導体層140、下地層130、中間層120および基板10を透過し、図8に示す矢印方向すなわち発光チップ1の外部に出射する。
【0108】
〔発光チップ2〕
次に発光チップ2について簡単に説明する。
図9は本実施の形態が適用される発光チップ2の断面模式図の一例を示す図である。図10は、発光チップ2を図9の矢印Xの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。なお、図9の発光チップ2の断面模式図は、図10のIX−IX線での断面図である。
本実施形態のチップサイズは1辺350μmの正方形型である。第1導電層171の上にφ60μm〜110μmの金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174、第1密着層175が順次成膜されていること以外の構造と製造方法および使用方法は発光チップ1と同じである。
【実施例】
【0109】
以下、本発明は発光層150を有する半導体素子(発光素子20)に関する実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみに限定されるものではない。
(実施例1)
以下に示すようにして、窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光層150を有するIII族窒化物半導体発光素子20(素子の形状は図1および図2に示す発光チップ1と同一)を作製した。
【0110】
図1に示すようにC面サファイア単結晶の基板10に、AlNからなる中間層120を介してアンドープGaNからなる厚さ4μmの下地層130を形成した。そして、下地層130上にSiドープ(濃度1×1019/cm3)GaNからなる厚さ3μmのnコンタクト層140a、Siドープ(濃度1×1018/cm3)In0.1Ga0.9Nからなる厚さ13nmのnクラッド層140b(nコンタクト層140aおよびnクラッド層140bからn型半導体層140が構成される。)、GaNからなる厚さ16nmの障壁層150aとIn0.2Ga0.8Nからなる厚さ2.5nmの井戸層150bを交互に6回積層させた後、最後に障壁層150aを設けた多重量子井戸構造の発光層150、Mgドープ(濃度1×1020/cm3)Al0.07Ga0.93Nからなる厚さ3nmのpクラッド層160aおよびMgドープ(濃度8×1019/cm3)GaNからなる厚さ0.18μmのpコンタクト層160b(pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bによりp型半導体層160が構成される。)を順次積層してなる厚み9μmのIII族窒化物半導体からなる積層半導体層100を形成した。
【0111】
次に、積層半導体層100のpコンタクト層160b上の所定の位置に公知のフォトリソグラフィ技術およびリフトオフ技術を用いて、IZOからなる第1導電層171(透光性正極)を形成した。次に、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、第1導電層171(透光性正極)上に金属反射層(Ag)172、第1拡散防止層(Ta)173、第1ボンディング層(Pt/Au)174、第1密着層(Ta)175を順次形成して、第1導電層171(透光性正極)上にAg/Ta/Pt/Au/Ta構造を有する第1電極170を形成した。
【0112】
次に、第1電極170まで形成された積層半導体層100を、公知のフォトリソグラフィ技術および反応性エッチング技術を用いて、nコンタクト層140aを半円状に露出させ、半導体層露出面140cを形成した。さらに、半導体層露出面140c上に第2導電層(Al)181、第2拡散防止層(Ta)182、第2ボンディング層(Pt/Au)183、第2密着層(Ta)184を順次形成して、半導体層露出面140c上にAl/Ta/Pt/Au/Ta構造の第2電極180を公知の方法で形成した。
次にSiO2からなる保護層190を成膜し、公知のフォトリソグラフィ技術および反応性エッチング技術を用いて第1電極170の第1ボンディング層174および第2電極180の第2ボンディング層183のAu面を露出させた。
次に、TiW/Auの積層膜を公知のスパッタ法でウエハ30全面に成膜した後、第1ボンディング層174および第2ボンディング層183の露出部を開口させたレジスト膜を形成した。公知の電解メッキ法により第1ボンディング層174および第2ボンディング層183の露出部にAuを13μm成長させ、その後、蒸着法によりAuSnを2μ成膜した。公知のリフトオフ法によりレジスト膜およびAuSnを除去し、エッチング法によりAu、TiWを除去して、第1突出電極210および第2突出電極220を形成した。
【0113】
次に、基板10の裏面10bをラッピングおよびポリッシングすることで、中間層120、下地層130、積層半導体層100を加えた半導体層の厚みと基板10の厚みとを合わせた総厚が150μmとなるようにサファイア単結晶の基板10を薄板化した。
【0114】
次に、レーザ光の照射により脆弱領域を形成する脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103および図7(a)参照)を実施した。先ず、ウエハ30の第1突出電極210および第2突出電極220が設けられた側にダイシングテープ315を貼り付け、ダイシング装置のステージ317に載置した。次に、発光チップ1の平面サイズを350μm×350μmの正方形状とする分割予定線(図6のH1〜H5、V1〜V5に相当)に沿って、基板10の裏面10bから異なる距離の2箇所にレーザ光を照射して、二段の脆弱領域321を形成した。
【0115】
次に、ウエハ30の第1突出電極210および第2突出電極220が設けられた側にダイシングテープ315を貼り付けたまま、ブレード320を基板10の裏面10b側から押し込み、効果的にクラックを生じさせて分割することで、III族窒化物半導体からなる発光素子20を含む発光チップ1とした。
最後に、AlN基板を用いた配線基板500上に発光チップ1を裏返して設置し、配線基板500上の正電極511と発光チップ1の第1突出電極210とが、配線基板500上の負電極512と発光チップ1の第2突出電極220とが対応するように、発光チップ1と配線基板500とを位置合わせし、その後、300℃に加熱しつつ、発光チップ1を配線基板500に押圧(圧着)し、配線基板500上の正電極511と発光チップ1の第1突出電極210と、配線基板500上の負電極512と発光チップ1の第2突出電極220とをそれぞれ電気的に接続し、発光装置3(図8参照)とした。
発光チップ1を搭載した配線基板500(発光装置3)をTO18に載せてワイヤーで接続した。
実施例1において得られた発光チップ1のLED特性は、順方向電圧Vfが3.11V(順方向電流Ifが20mA)のとき、発光波長が452nmであり、発光出力Poが24.5mWであった。
【0116】
次に、複数の発光チップ1について、逆方向電圧Vrとして5Vを印加し、逆方向電流Irが2μA以上のものを不良(NG)とする評価を行った結果、不良(NG)の発生率(IR不良率)が0.5%であった。
【0117】
(実施例2〜4、比較例1,2)
実施例2は図9、図10に示すような構成とし、第1導電層171の上に直径100μmの金属反射層172、その上に第1拡散防止層173、その上に第1ボンディング層174が順次成膜されていること以外は実施例1と同様に、発光素子20を製造した。
また、実施例3、4は、実施例1に記載の第1突出電極210の高さT1(=第2突出電極220の高さT2)を図11に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様に発光素子20(チップの形状は図1および図2に示す発光チップ1)を製造した。
一方、比較例1では、第1突出電極210および第2突出電極220を形成しないこと以外、実施例1と同様に発光素子20を製造した。
さらに、比較例2では、第1突出電極210および第2突出電極220を形成しないこと以外は、実施例2と同様に発光素子20を製造した。
図11には、実施例1の特徴(第1突出電極210の高さT1および第2突出電極220の高さT2、発光チップの形状)、LED特性(順方向電圧Vf(V)、発光波長λ(nm)、発光出力Po(mW))およびIR不良率(%)と共に、実施例2〜4および比較例1、2の特徴、LED特性およびIR不良率(%)を示している。なお、図11では、第1突出電極210の高さT1および第2突出電極220の高さT2を突出電極の高さT1=T2として示している。
【0118】
図11から分かるように、実施例1〜4では、IR不良率(不良発生率)は2%以内で良好であった。一方、比較例1および比較例2では、IR不良率は5%以上と実施例1〜4と比べ格段に高い値を示した。この結果、比較例1および比較例2の場合は、チップ内のpnジャンクション部(n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の領域)に何らかの損傷が生じた可能性が高く、リーク電流が大きい不良チップの数を示すIR不良率が高い原因と考えられる。
以上の実施結果からわかるように、実施例1〜4では、同じ高さ(T1=T2)を有する第1突出電極210や第2突出電極220が発光チップ1(または発光チップ2)内に存在し、これらの突出電極の表面がウエハ30の分割時の力の支点となって、ウエハ30の分割を容易にしているとの結果となった。
さらに厳密には、第1突出電極210や第2突出電極220の高さがそれぞれ同じ高さ(T1=T2)で形成されたとしても、基板10の裏面10bからの高さが相違するために、この2つの支点までの押力のモーメントの相違により、ウエハ30の分割が容易となるためとも考えられる(図8参照)。
このように、本発明によれば、半導体ウエハの基板にブレード320を押圧して半導体ウエハを複数のチップに分割する前に、突出電極を半導体ウエハ上に形成することで格段に効率よくチップを分割(分離)することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、pnジャンクション部を有する半導体素子(またはチップ)の製造方法において、pnジャンクション部を損傷しないでIR不良率(不良発生率)の低い半導体素子の製造方法を提供することができる。特に、半導体ウエハをチップ形状に分割する前に、チップ上に突起電極を形成することで、半導体ウエハ当たりの分割収率を高める半導体チップの製造方法を効率的に提供することができる。そのため、半導体発光素子や受光素子以外の他の半導体素子構造を有するチップの製造方法にも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1、2…発光チップ、3…発光装置、10…基板、100…積層半導体層、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、150…発光層、160…p型半導体層、170…第1電極、180…第2電極、210…第1突出電極、220…第2突出電極、315…ダイシングテープ、316…ウエハリング、317、318…ステージ、320…ブレード、321…脆弱領域、345…レーザ光、500…配線基板、511…正電極、512…負電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの製造方法および半導体ウエハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や集積回路(LSI)などの半導体素子は、基板上に複数の半導体素子を一括して形成された半導体ウエハを、それぞれが半導体素子を含むよう分割(切断)された半導体チップに加工されて用いられる。
半導体ウエハを半導体チップに分割する方法として、レーザ光を対物レンズ光学系で集光して基板の内部に照射し、基板の内部に照射前に比べて強度が低い脆弱領域を形成するステルスダイシング法がある。この方法では、基板内に形成された脆弱領域を起点として、半導体ウエハを半導体チップに分割(切断)する。
また、これらの半導体チップは、パッケージや配線基板などの上に、半導体素子が設けられた側をパッケージなどの側と反対向きに実装(フェイスアップ(FU)実装と呼ばれる。)されたり、半導体素子側がパッケージなどに対向するように実装(フェイスダウン(FD)実装またはフリップチップ(FC)実装と呼ばれる。)されたりして用いられる。
【0003】
特許文献1には、回路面に突起電極を有する半導体ウエハに対し、突起電極を埋め込むように回路面に絶縁性樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、絶縁性樹脂層の表面に支持テープを貼り付けて固定する支持テープ固定工程と、支持テープに固定された状態で、半導体ウエハにおける回路面の反対面側からレーザ光を照射し、ダイシングパターンに沿って半導体ウエハの内部に脆弱層を形成する脆弱層形成工程と、支持テープを面内方向に伸張させることにより、絶縁性樹脂層を含めて半導体ウエハをダイシングパターンに沿って分割し、複数の半導体チップに個片化するダイシング工程と、を備えた半導体ウエハのダイシング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステルスダイシング法によって、基板の内部に脆弱領域を形成しても、脆弱領域が基板の内部に設けられているため、半導体ウエハは、必ずしも基板内部に形成された脆弱領域を起点として、容易且つ確実にチップに分断されるとは限らなかった。容易に分割できない場合、大きな荷重をかけて無理に分割するため、半導体チップのpnジャンクション部(チップが半導体発光素子チップであるときは、n型半導体層、発光層およびp型半導体層の領域を言う。)を損傷することで、リーク電流が発生する不良チップを多く作り出してしまうことがある。
このため、形成される脆弱領域に対応する半導体ウエハの一方の表面に、レーザ光の照射やドライエッチング、ウェットエッチングなどにより、断面形状がU字状またはV字状の溝(トレンチまたはグルーブ)を設けることが行われる。この場合、半導体ウエハは、半導体ウエハ表面の溝が分割の起点となって、より容易にチップに分割される。また、半導体ウエハ表面にレーザ光を照射して溝を設ける場合には、溝の部分の半導体ウエハ構成材料が飛散し、半導体素子の表面を汚染してしまうことがあった。
また、このような背景から、少ない荷重で容易に分割するためには溝を深く、幅を広くする必要がある。しかし、溝を深くすることはプロセス時間の増大によりコストがかかることに加え、溝の部分の半導体ウエハ構成材料が飛散し、半導体素子の表面を汚染してしまうことがあった。また、溝の幅を広くすることは1枚のウエハからのチップの収得数を減らしてしまう。
したがって、表面汚染がなく、低コストで半導体チップを分割するためには分割溝を浅く、幅が狭いままで容易に半導体チップに分割できる方法が必要であった。
【0006】
本発明の目的は、フェイスダウン(FD)実装に用いられる半導体チップを、より容易に製造できる半導体チップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が適用される半導体チップの製造方法は、基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、半導体素子に設けられた電極に接続され、半導体素子の基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って半導体ウエハの基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、半導体ウエハの突出電極が形成された側と反対側から、分割予定線に沿って半導体ウエハの基板にブレードを押圧して、半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程とを含む。
このような半導体チップの製造方法の脆弱領域形成工程において形成される脆弱な領域は、基板の内部に集光されたレーザ光によって形成されることを特徴とすることができる。また、脆弱領域形成工程において形成される脆弱な領域は、基板の分割予定線に沿った基板内に、基板の一方の表面から複数の距離に対して形成されることを特徴とすることができる。
さらに、半導体チップの製造方法の突出電極形成工程において形成される突出電極は、金(Au)または金(Au)を含む合金により構成されることを特徴とすることができる。
さらにまた、基板がサファイアで構成されていることを特徴とすることができる。
このような半導体チップの製造方法によって製造される半導体チップの半導体素子は、発光素子または受光素子であることを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される半導体ウエハの分割方法は、基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、半導体素子に設けられた電極に接続され、半導体素子の基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って半導体ウエハの基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、半導体ウエハの突出電極が形成された側と反対側から、分割予定線に沿って半導体ウエハの基板にブレードを押圧して、半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、フェイスダウン(FD)実装に用いられる半導体チップをより容易に製造できる。また、本発明は、半導体層への損傷の小さい半導体ウエハの分割方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される発光チップの断面模式図の一例を示す図である。
【図2】発光チップを図1の矢印IIの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。
【図3】発光チップを構成する積層半導体層の断面模式図の一例を示す図である。
【図4】発光チップを製造する方法を説明するフローチャートの一例である。
【図5】半導体素子形成工程および突出電極形成工程を説明する図である。
【図6】第1突出電極および第2突出電極が形成された側から見たウエハの平面図である。
【図7】脆弱領域形成工程および分割工程を説明する図である。
【図8】図1に示す発光チップを配線基板に実装した発光装置の構成の一例を示す図である。
【図9】本実施の形態が適用される発光チップの断面模式図の一例を示す図である。
【図10】発光チップを図9の矢印Xの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。
【図11】実施例および比較例における突出電極の高さ、発光チップの形状、LED特性およびIR不良率(%)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、ウエハ、チップなどを模式的に表しており、縮尺は正確ではない。
なお、本明細書では、基板上に複数の半導体素子を備えるものを半導体ウエハ(単にウエハと記載することがある。)と呼び、それぞれが半導体素子を備えるようにウエハを分割したものを半導体チップ(単にチップと記載することがある。)と呼ぶ。半導体チップの半導体素子が発光素子の場合、明細書中では発光チップと記載することがある。また、半導体チップの半導体素子が受光素子の場合、明細書中では受光チップと記載することがある。
半導体素子には、発光素子、受光素子、集積回路、機構系を電気・電子回路とともに組み込んだMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などが含まれる。ここでは、半導体素子の一例として発光素子で説明する。すなわち、半導体チップは発光チップとして説明する。
【0011】
〔発光チップ1〕
図1は本実施の形態が適用される発光チップ1の断面模式図の一例を示す図である。図2は、発光チップ1を図1の矢印IIの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。なお、図1の発光チップ1の断面模式図は、図2のI−I線での断面図である。
【0012】
まず、発光チップ1の断面構造を説明する。
図1に示すように、発光チップ1は、基板10と、基板10の表面10a上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備えている。また、発光チップ1は、下地層130上に積層されるn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層されるp型半導体層160とを備えている。なお、以下の説明においては、必要に応じて、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160を、まとめて積層半導体層100と呼ぶ。また、中間層120および下地層130とを含めて、積層半導体層100と呼ぶことがある。
【0013】
そして、発光チップ1は、p型半導体層160の上面160c(p型半導体層160の基板10と反対側の面)に形成される第1電極170と、積層されたp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140cに形成される第2電極180とを備えている。
【0014】
さらに、発光チップ1は、第1電極170および第2電極180と、p型半導体層160の上面160cの第1電極170が設けられていない領域と、半導体層露出面140cの第2電極180が設けられていない領域と、半導体層露出面140cを設けたことにより露出した積層半導体層100の側面とを覆うように積層された保護層190を備えている。ただし、保護層190は、第1電極170の上面170c(第1電極170の基板10と反対側の面)において、後述する第1突出電極210が形成される領域、および第2電極180の上面180c(第2電極180の基板10と反対側の面)において、後述する第2突出電極220が設けられる領域を除いて、第1電極170および第2電極180を覆うように積層されている。
【0015】
さらにまた、発光チップ1は、第1電極170の上面170c上に設けられた第1突出電極210および第2電極180の上面180c上に設けられた第2突出電極220を備えている。
【0016】
発光チップ1は、第1突出電極210を正極、第2突出電極220を負極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
ここで、発光素子20は、中間層120、下地層130、積層半導体層100、第1電極170、第2電極180を含んで構成されるとする。すなわち、発光チップ1は、基板10と発光素子20と第1突出電極210および第2突出電極220とを含んで構成されている。
【0017】
次に、発光チップ1の平面形状を説明する。
図2に示すように、発光チップ1の平面形状は、例えば350μm×350μmの正方形である。なお、発光チップ1の平面形状は、正方形に限らず、長方形など、他の形状であってもよい。
【0018】
半導体層露出面140cは、図2に示すように、発光チップ1の周縁を巡るように形成されている。なお、半導体層露出面140cは、図1において矢印II方向から発光チップ1を見たとき、正方形の4隅のうち1隅において、周縁から内側に向かって広がって設けられている。そして、第2電極180は、この広がって設けられた半導体層露出面140c上に設けられている。
一方、第1電極170は、p型半導体層160の上面160c上に設けられている。図1に示したように、発光チップ1は、発光層150から発光するため、第1電極170は面積が広いほど光量が大きい。よって、第1電極170は、発光チップ1の表面(平面形状)を大きく占めるように構成されている。
なお、第1電極170および第2電極180の形状および配置は、図2に示したものに限らず、他の形状および配置であってもよい。
【0019】
さらに、第1電極170上には、第1突出電極210と、第2電極180上には第2突出電極220とが設けられている。なお、図2では、第1突出電極210の断面形状は、第1電極170の外周部の輪郭を略縮小した円弧状の部分を有する形状であり、第2突出電極220は円形であるとしているが、断面形状が楕円形、正方形、長方形または他の形状であってもよい。
【0020】
では次に、発光チップ1の各構成要素について、より詳細に説明する。
<基板10>
基板10としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。ただし、本実施の形態の発光チップ1は、後述するように、基板10の裏面10b側から光を取り出すようにフェイスダウン(FD)実装されることから、発光層150から出射される光に対する透光性を有していることが好ましい。したがって、例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン等からなる基板10を用いることができる。
また、上記材料の中でも、特に、C面を主面とするサファイアを基板10として用いることが好ましい。サファイアを基板10として用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
さらに、基板10の裏面10bは、基板10の反りを抑制するために、面を荒らす処理を施しておくことが好ましい。
【0021】
<中間層120>
基板10の表面10a上に積層される中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板10と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0022】
中間層120は、基板10と下地層130との格子定数の違いを緩和し、特にC面を主面とするサファイアで基板10を構成した場合には、基板10の(0001)面(C面)上にc軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120上に単結晶の下地層130を積層すると、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。なお、本発明においては、中間層120の形成を行うことが好ましいが、必ずしも行わなくても良い。
【0023】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものであってもよく、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板10上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性および結晶性を有する結晶膜となる。
【0024】
さらに、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、成膜条件をコントロールすることにより、六角柱を基本とした集合組織からなる柱状結晶(多結晶)とすることも可能である。なお、ここでの集合組織からなる柱状結晶とは、隣接する結晶粒との間に結晶粒界を形成して隔てられており、それ自体は縦断面形状として柱状になっている結晶のことをいう。
【0025】
<下地層130>
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1−xN層が得られやすい。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドープしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0026】
<積層半導体層100>
積層半導体層100は、III族窒化物半導体からなる層であって、図1に示すように、下地層130上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。
ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1の導電型にて電気伝導を行うものであり、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2の導電型にて電気伝導を行うものである。
【0027】
図3は、発光チップ1を構成する積層半導体層100の断面模式図の一例を示す図である。図1におけるn型半導体層140はnコンタクト層140aとnクラッド層140bとを備えている。発光層150は、障壁層150aと井戸層150bとが交互に積層されてなる多重量子井戸構造で構成されている。そして、p型半導体層160は、pクラッド層160aとpコンタクト層160bとを備えている。
なお、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する積層半導体層100を形成できる。
以下、積層半導体層100を構成する層について説明する。
【0028】
(n型半導体層140)
n型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとを備えている。
nコンタクト層140aは、第2電極180を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
【0029】
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第2電極180との良好なオーミックコンタクトを維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
【0030】
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5〜5μmとされることが好ましく、1〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0031】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めとを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップエネルギよりも大きくすることが望ましい。なお、本明細書中では、各元素の組成比を省略してAlGaN、GaInNと記述する場合がある。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜500nmであり、より好ましくは5〜100nmである。nクラッド層140bのn型不純物濃度は1×1017〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。不純物濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0032】
なお、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、10nm以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに10nm以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。
また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0033】
(発光層150)
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することが可能である。本実施の形態では、図3に示すように、発光層150を、障壁層150aと井戸層150bとが交互に積層されてなる多重量子井戸構造で構成している。そして、発光層150は、nクラッド層140bと接する側およびpクラッド層160aと接する側は、それぞれ障壁層150aとなっている。
【0034】
ここで、井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
なお、本実施の形態では、発光層150が、青色光(発光波長λ=400〜465nm程度)を出力するようになっている。
【0035】
(p型半導体層160)
図3に示すように、p型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bを備える。ただし、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
【0036】
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
【0037】
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層160aにおけるp型不純物の濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、上述したnクラッド層140bと同様に超格子構造としてもよく、この場合には、組成比が異なるAlGaNと他のAlGaNとの交互構造または組成が異なるAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0038】
pコンタクト層160bは、第1電極170を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1−xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第1電極170との良好なオーミックコンタクトの維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物を1×1018〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミックコンタクトの維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0039】
<第1電極170>
次に、第1電極170の構成について、図1を参照して説明する。
第1電極170は、好ましくは、p型半導体層160の上面160c上に積層される第1導電層171と、第1導電層171上に積層される金属反射層172と、金属反射層172上に積層される第1ボンディング層174と、第1ボンディング層174上に後述する第1突出電極210が設けられる部分を除いて、第1ボンディング層174上に積層される第1密着層175とを備えている。
なお、金属反射層172と第1ボンディング層174との間に第1拡散防止層173が設けられてもよい。図1では、第1拡散防止層173が設けられた場合を示している。
以下、第1電極170を構成する各層について説明する。
【0040】
(第1導電層171)
p型半導体層160の上面160c上に第1導電層171が積層されているのが好ましい。図1および図2に示すように、第1導電層171は、p型半導体層160の上面160cの周縁部を除いて、p型半導体層160の上面160cのほぼ全面を覆うように設けられている。なお、図2では、第1電極170と記載した範囲に第1導電層171が形成されている。
第1導電層171の中央部は、一定の膜厚を有している。そして、第1導電層171の中央部のp型半導体層160と接する面と反対の面(表面)は、平坦であって、p型半導体層160の上面160cに対しほぼ平行である。一方、第1導電層171の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなるように、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜している。ただし、第1導電層171は、上記の形状に限定されるわけでなく、格子状や樹形状であってもよい。また、第1導電層171の断面の形状(断面形状)は、矩形状であってもよい。
【0041】
第1導電層171は、p型半導体層160とオーミックコンタクトがとれ、しかもp型半導体層160との接触抵抗が小さいものが好ましい。また、この発光チップ1では、発光層150から出射し、第1電極170側に向かう光を、金属反射層172で反射させて、基板10の裏面10bから取り出すことから、第1導電層171は透光性に優れたものを用いることが好ましい。さらにまた、p型半導体層160の全面に渡って電流を均一に拡散させるため、第1導電層171は優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布の少ないことが好ましい。
本実施の形態では、第1導電層171の中央部の厚さは、例えば5nmに設定されている。なお、第1導電層171の厚さは、2〜500nmの範囲より選択することができる。ここで、第1導電層171の厚さが2nmよりも薄いと、p型半導体層160とオーミックコンタクトが取れにくい場合があり、また、第1導電層171の厚さが500nmよりも厚いと、発光層150から出射し、第1電極170側に向かう光および金属反射層172で反射して基板10側に向かう光の透光性の点で好ましくない場合がある。
【0042】
第1導電層171の一例として、透明導電層が挙げられる。例えば、本実施の形態では、第1導電層171として、酸化物の導電性材料であって、発光層150から出射される光の波長に対して透光性のよいものが用いられる。特に、Inを含む酸化物の一部は、他の透明導電性材料と比較して、透光性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えばITO(酸化インジウム錫(In2O3−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In2O3−Ga2O3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In2O3−CeO2))等が挙げられる。これらに、例えばフッ素などのドーパントが添加されていてもかまわない。また、例えばInを含まない酸化物、例えばキャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いてもよい。
これらの材料を、後述する成膜手段で設けることによって、第1導電層171を形成できる。また、第1導電層171を形成した後に、第1導電層171の透明化と低抵抗化とを目的とした熱処理を施す場合もある。
【0043】
本実施の形態において、第1導電層171には、結晶化された構造のものを使用してよく、特に六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn2O3結晶を含む透光性材料(例えば、ITOやIZO等)を好ましく使用することができる。
例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを第1導電層171として使用する場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、その後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させることで、アモルファスのIZO膜よりも透光性に優れた電極に加工することができる。
【0044】
また、第1導電層171に用いるIZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。
例えば、IZO膜中のZnO濃度は1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%の範囲であることが更に好ましく、10質量%であると特に好ましい。
【0045】
第1導電層171に用いるIZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。なお、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn2O3結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
また、IZO膜の熱処理温度は、500〜1000℃が好ましい。500℃未満の温度で熱処理を行なった場合、IZO膜を十分に結晶化できない恐れが生じ、IZO膜の透光性が十分に高いものとならない場合がある。1000℃を超える温度で熱処理を行なった場合には、IZO膜は結晶化されているが、IZO膜の透光性が十分に高いものとならない場合がある。また、1000℃を超える温度で熱処理を行なった場合、IZO膜の下にある積層半導体層100を劣化させる恐れもある。
【0046】
特に、前述のように、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、p型半導体層160との密着性が良いため、本実施の形態において有効である。また、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、抵抗値が低下することから、発光チップ1における発光素子20の順方向電圧Vfを低減できる点でも好ましい。
【0047】
(金属反射層172)
図1に示すように、第1導電層171上には金属反射層172が積層されている。
金属反射層172は、平面視したときに第1導電層171の全面を覆うように形成されている。そして、金属反射層172の中央部は、一定の膜厚を有している。そして、金属反射層172の中央部の第1導電層171と接する面と反対の面は、ほぼ平坦である。一方、金属反射層172の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなるように、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜して設けられている。
【0048】
金属反射層172は、例えばAg(銀)で構成されている。金属反射層172としてAgを用いるのは、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の光に対して、高反射性を有しているためである。また、後述するように、金属反射層172は、第1導電層171を介してp型半導体層160に給電を行う機能も有している。よって、金属反射層172には、抵抗値が低く、且つ、第1導電層171との接触抵抗が低いことが必要である。
本実施の形態における金属反射層172の厚さは、例えば150nmに設定されている。金属反射層172の厚さは、50nm以上の範囲より好ましく選択することができる。ここで、金属反射層172の厚さが50nmよりも薄いと、発光層150から出射した光の反射性が低下する点で好ましくない場合がある。
なお、本実施の形態では、金属反射層172としてAg単体を用いているが、Agを含む合金を用いてもかまわない。また、Al(アルミ)やAl合金、Rh、Pt、Irなど反射率の高い白金族やその合金を用いてもよい。
【0049】
(第1拡散防止層173)
図1に示すように、金属反射層172上には第1拡散防止層173が積層されていることが好ましい。第1拡散防止層173は、接触状態にある金属反射層172を構成する金属(本実施の形態ではAg)が、第1ボンディング層174中に拡散するのを抑制するために設けられている。
第1拡散防止層173は、平面視したときに、金属反射層172の全面を覆うように設けられている。そして、第1拡散防止層173の中央部は、一定の膜厚を有している。第1拡散防止層173の中央部の金属反射層172と接する面と反対の面は、ほぼ平坦になっている。一方、第1拡散防止層173の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることで、第1拡散防止層173の端部の表面は、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜している。また、第1拡散防止層173は、p型半導体層160と直接接触しないように構成されている。
【0050】
第1拡散防止層173は、金属反射層172とオーミックコンタクトがとれ、しかも、金属反射層172との接触抵抗が小さいことが好ましい。ただし、後述するように、第1拡散防止層173は発光層150から出射する光を透光させる機能を要しないので、第1導電層171とは異なり、透光性を有する必要がない。
また、第1拡散防止層173は、金属反射層172および第1導電層171を介してp型半導体層160に給電する機能を有していることから、優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布が少ないことが好ましい。
【0051】
本実施の形態では、第1拡散防止層173の厚さは、例えば50nmに設定されている。第1拡散防止層173の厚さが50nm以上であれば、金属反射層172を構成するAgの拡散が抑制されやすい点で好ましい。これに対し、第1拡散防止層173の厚さが50nmよりも薄いと、第1拡散防止層173上に形成する第1ボンディング層174へのAgの拡散の防止の点で好ましくない。また、第1拡散防止層173の厚さが5μmよりも厚いと、コストアップの点で好ましくない。
【0052】
本実施の形態では、第1拡散防止層173として、Ta(タンタル)が用いられている。
【0053】
また、第1拡散防止層173としては、Ta(タンタル)の他、IZO、ITO、IGO、ICO等を用いることができる。また、例えばキャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いてもよい。さらに、Ni(ニッケル)やTi(チタン)などの金属材料を用いても差し支えない。
【0054】
(第1ボンディング層174)
図1に示すように、第1拡散防止層173上には第1ボンディング層174が積層されている。第1ボンディング層174は、平面視したときに、第1拡散防止層173の全面を覆うように設けられている。そして、第1ボンディング層174の中央部は、一定の膜厚を有している。第1ボンディング層174の中央部の第1拡散防止層173と接する面と反対側の面(第1電極170の上面170c)は、ほぼ平坦になっている。一方、第1ボンディング層174の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることで、第1ボンディング層174の端部の表面は、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜している。
【0055】
第1ボンディング層174は、少なくとも1層以上の層を備えている。この場合、第1拡散防止層173から最も離れて設けられた層(最表層)には、一般にAu(金)が用いられる。本実施の形態では、第1ボンディング層174としてAu(金)の単層膜を用いているが、例えば第1拡散防止層173に接して設けられる第1層としてのNi(ニッケル)層と、このNi層上に設けられる第2層としてのPt(白金)層と、さらに第2層のPt層上に設けられる第3層(最表層)としてのAu(金)層とを有する構造を採用してもよい。
本実施の形態では、第1ボンディング層174の全体の厚さが、例えば300nmに設定されている。第1ボンディング層174の全体の厚さは、後述する第1突出電極210が設けられ得る厚さがあれば、厚さに制限なく使用することができる。第1ボンディング層174の全体の厚さは、好ましくは50〜8000nmである。
【0056】
なお、第1ボンディング層174を複数の金属層で構成する場合において、第1拡散防止層173と接する第1層を構成する材料としては、上述したNi(ニッケル)の他、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、NiTi(ニッケルチタン)合金、およびこれらの窒化物を使用することができる。
【0057】
(第1密着層175)
図1に示すように、第1ボンディング層174上には、第1密着層175が積層されているのが好ましい。第1密着層175は、Au(金)で構成された第1ボンディング層174と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。
第1密着層175は、平面視したときに、第1ボンディング層174上の第1突出電極210が設けられる部分を除いて、第1ボンディング層174の表面を覆うように設けられている。なお、第1密着層175は、端部がp型半導体層160の上面160cと接するように設けられている。
【0058】
本実施の形態において、第1密着層175は、Ta(タンタル)で構成されている。ただし、第1密着層175の材料として、Ta(タンタル)以外に、例えばTi(チタン)やNi(ニッケル)、W(タングステン)を用いることも可能である。そして、本実施の形態では、第1密着層175の厚さは、例えば10nmに設定されている。第1密着層175の厚さは、5〜400nmとすることが好ましく、5〜300nmとすることがより好ましく、7〜100nmとすることがさらに好ましい。第1密着層175の厚みが5nm未満では、第1ボンディング層174と保護層190との密着性が低下するので好ましくない。
【0059】
<第2電極180>
続いて、第2電極180の構成について、図1を参照して説明する。
第2電極180は、好ましくは、n型半導体層140の半導体層露出面140c上に積層される第2導電層181と、第2導電層181上に積層される第2ボンディング層183と、第2ボンディング層183上に後述する第2突出電極220が設けられる部分を除いて、第2ボンディング層183上に積層される第2密着層184とを備えている。
なお、第2導電層181と第2ボンディング層183との間に第2拡散防止層182を設けてもよい。図1には、好ましい例として第2拡散防止層182を設けた場合を示している。
【0060】
(第2導電層181)
図1に示すように、n型半導体層140の上には第2導電層181が積層されているのがよい。
第2導電層181は、平面視したときの形状(平面形状)が円形状になっている(図2において、第2電極180の範囲に形成されている。)。そして、第2導電層181の中央部は、一定の膜厚を有している。第2導電層181の中央部の半導体層露出面140cと接する面と反対の面(表面)は、半導体層露出面140cに対しほぼ平坦である。一方、第2導電層181の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜している。
ただし、第2導電層181の平面形状は、上記の形状に限定されるわけでなく、格子状や樹形状であってもよい。また、第2導電層181の断面形状は、矩形状であってもよい。
【0061】
第2導電層181は、n型半導体層140とオーミックコンタクトがとれ、しかもn型半導体層140との接触抵抗が小さいものが好ましい。
本実施の形態では、第2導電層181として、Al(アルミニウム)を用いている。第2導電層181を構成するAl(アルミニウム)は、第1電極170の金属反射層172を構成するAg(銀)と同様、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の光に対して、高反射性を有しており、金属反射層として機能するようになっている。
本実施の形態における第2導電層181の厚さは、例えば150nmに設定されている。第2導電層181の厚さは、50〜1000nmの範囲より選択することができる。ここで、第2導電層181の厚さが50nmよりも薄いと、光が透過してしまうことによって光の取り出し効率が低下する。一方、第2導電層181の厚さが1000nmよりも厚いと、成膜時間が長くなって、第2導電層181を形成するために用いられるレジストが、加熱により硬化し、レジスト残渣が生じやすくなるなど、信頼性の面で好ましくない場合がある。
【0062】
また、第2導電層181を金属反射層172と同様にAg(銀)としてもよい。このとき、第2導電層181と金属反射層172との厚さを同じとすれば、後述するように、第2導電層181と金属反射層172とを同時に形成することができる。
【0063】
(第2拡散防止層182)
図1に示すように、第2導電層181に接して第2拡散防止層182が積層されていることが好ましい。この第2拡散防止層182は、第2導電層181を構成する金属(本実施の形態ではAl)が、第2ボンディング層183中に拡散することを抑制するために設けられている。
第2拡散防止層182は、平面視したときに、第2導電層181の全面を覆うように設けられている。そして、第2拡散防止層182の中央部は、一定の膜厚を有している。第2拡散防止層182の中央部の第2導電層181と接する面と反対側の面(表面)は、ほぼ平坦になっている。一方、第2拡散防止層182の端部は、端に近づくにつれて、膜厚が漸次薄くなることで、第2拡散防止層182の端部の表面は、n型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜している。また、第2拡散防止層182は、n型半導体層140と直接接触しないように構成されている。
【0064】
第2拡散防止層182は、第2導電層181とオーミックコンタクトがとれ、しかも、第2導電層181との接触抵抗が小さいことが好ましい。また、第2拡散防止層182は、第2導電層181を介してn型半導体層140に給電する機能を有していることから、優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布が少ないことが好ましい。
【0065】
本実施の形態では、第2拡散防止層182として、Pt(白金)が用いられている。
なお、第2拡散防止層182としては、Ptの他に、Rh(ロジウム)、W(タングステン)などを用いてもかまわない。
そして、本実施の形態における第2拡散防止層182の厚さは、例えば50nmに設定されている。第2拡散防止層182の厚さが50nm以上であれば、第2導電層181を構成するAlの第2ボンディング層183への拡散が抑制されやすくなる点で好ましい。これに対し、第2拡散防止層182の厚さが50nmよりも薄いと、第2ボンディング層183への第2導電層181を構成するAlの拡散の防止の点で好ましくない。また、第2拡散防止層182の厚さが5000nmよりも厚いと、材料のコストアップの点で好ましくない。
【0066】
なお、第2導電層181をAgとした場合には、第2拡散防止層182をIZOとしてもよい。このとき、第2拡散防止層182と第1拡散防止層173との厚さを同じとすれば、後述するように、第2拡散防止層182と第1拡散防止層173とを同時に形成することができる。
【0067】
(第2ボンディング層183)
図1に示すように、第2拡散防止層182上に第2ボンディング層183が積層されている。
第2ボンディング層183は、第2拡散防止層182の全面を覆うように設けられている。そして、第2ボンディング層183の中央部は、一定の膜厚を有している。第2ボンディング層183の中央部の第2拡散防止層182と接する面と反対側の面(第2電極180の上面180c)は、ほぼ平坦になっている。一方、第1ボンディング層174の端部は、端に近づくにつれて膜厚が漸次薄くなることで、第1ボンディング層174の端部の表面は、n型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜している。
【0068】
第2ボンディング層183は、前述した第1電極170の第1ボンディング層174と同様に、少なくとも1層以上の金属層を備えている。この場合、第2拡散防止層182から最も離れて設けられた層(最表層)には、一般にAu(金)が用いられる。本実施の形態では、第2ボンディング層183として、第1ボンディング層174と同様に、Auの単層膜を用いているが、第1拡散防止層173で説明したように、第2ボンディング層183を複数の金属層からなる積層構造とすることもできる。
本実施の形態では、第2ボンディング層183の全体の厚さが、例えば300nmに設定されている。第2ボンディング層183の全体の厚さは、後述する第2突出電極220を設けられ得る厚さがあれば、厚さに制限なく使用することができる。第2ボンディング層183の全体の厚さは、好ましくは50〜8000nmである。
【0069】
なお、第2ボンディング層183と第1ボンディング層174とを同じ構成、同じ膜厚とすれば、後述するように、第2ボンディング層183と第1ボンディング層174とを同時に形成することができる。
【0070】
(第2密着層184)
図1に示すように、第2ボンディング層183の上には、第2密着層184が積層されているのが好ましい。第2密着層184は、前述の第1電極170の第1密着層175と同様に、Auで構成された第2ボンディング層183と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。
第2密着層184は、平面視したときに、第2ボンディング層183上の第2突出電極220が設けられる部分を除いて、第2ボンディング層183の表面を覆うように設けられている。なお、第2密着層184は、端部がn型半導体層140の半導体層露出面140cと接するように設けられている。
【0071】
本実施の形態において、第2密着層184は、第1密着層175と同様にTa(タンタル)で構成されている。ただし、第2密着層184の材料として、Ta(タンタル)以外に、例えばTi(チタン)やNi(ニッケル)、W(タングステン)を用いることも可能である。そして、本実施の形態では、第2密着層184の厚さは、例えば10nmに設定されている。第2密着層184の厚さは、5〜400nmとすることが好ましく、5〜300nmとすることがより好ましく、7〜100nmとすることがさらに好ましい。第2密着層184の厚みが5nm未満では、第2ボンディング層183と保護層190との密着性が低下するので好ましくない。
【0072】
<保護層190>
図1に示すように、保護層190は、p型半導体層160の上面160cの第1電極170が設けられていない領域と、半導体層露出面140cの第2電極180が設けられていない領域と、半導体層露出面140cを設けたことにより露出した積層半導体層100の側面とを覆うように積層されている。ただし、保護層190は、第1電極170の上面170cにおいて、後述する第1突出電極210が形成される領域、および第2電極180の上面180cにおいて、後述する第2突出電極220が設けられる領域を除いて、第1電極170および第2電極180を覆うように積層されている。
保護層190は、外部から水等が、積層半導体層100、第1電極170および第2電極180に浸入するのを抑制する機能を備えている。なお、本実施の形態では、保護層190は、SiO2(2酸化珪素)で構成されている。
【0073】
<第1突出電極210>
第1突出電極210は、第1電極170上に設けられている。
本実施の形態では、第1突出電極210の平面形状は、図2に示すように第1電極170の外周部の輪郭を略縮小した円弧状の部分を有する形状である。第1突出電極210の上から見たときの面積は、例えば第1電極170の外周部の輪郭で囲われた面積の30%である。なお、第1突出電極210の平面形状は、円形や長方形でもよい。
そして、図1に示すように、第1突出電極210は、第1ボンディング層174上に積層された第1基部211と、第1基部211上に積層された第1接続部212とを備えている。
本実施の形態では、第1基部211は、第1ボンディング層174と同じAu(金)で構成されている。そして、第1接続部212はAuSn(金錫)合金で構成されている。
第1接続部212のAuSn合金を設ける理由は、AuSn合金の融点が300℃以下であって、発光チップ1が搭載される配線基板500の表面に設けられた正電極511(後述する図8参照)と容易に熱圧着させるためである。なお、第1突出電極210に第1接続部212を設けず、AuSn合金の層を配線基板500の正電極511(後述する図8参照)上に設けてもよい。
本実施の形態では、第1突出電極210の全体の厚さT1は、例えば15μmである。第1接続部212の厚さは1〜3μmである。
【0074】
<第2突出電極220>
第2突出電極220は、第2電極180上に設けられている。
本実施の形態では、第2突出電極220の平面形状は円形である(図2参照)。第2突出電極220の径も、例えば100μmである。なお、第2突出電極220の平面形状は、円形でなくともよい。
そして、第2突出電極220は、第2ボンディング層183上に積層された第2基部221と、第2基部221上に積層された第2接続部222とを備えている。
本実施の形態では、第2突出電極220は、第1突出電極210と同じ構成としている。すなわち、第2基部221は、第2ボンディング層183と同じAu(金)で構成されている。そして、第2接続部222はAuSn(金錫)合金で構成されている。
第2接続部222のAuSn合金を設ける理由は、第1接続部212の場合と同様である。なお、第2突出電極220に第2接続部222を設けず、AuSn合金の層を配線基板500の負電極512(後述する図8参照)上に設けてもよい。
本実施の形態では、第2突出電極220の全体の厚さT2は、第1突出電極210と同じく、例えば15μmである。第2接続部222の厚さは1〜3μmである。
【0075】
以上説明したように、第1突出電極210と第2突出電極220とは同じ構成であるので、後述する発光チップ1の製造工程において、同時に形成できる。また、同時に形成した場合、第1突出電極210の全体の厚さT1と第2突出電極220の全体の厚さT2とは同じになる(T1=T2)。
【0076】
本実施の形態では、第2突出電極220の全体としての厚さT2(本実施の形態では15μm)は、半導体層露出面140cを設けるためにエッチングにより積層半導体層100が除去された深さD(本実施の形態では0.6〜0.7μm)より、大きく設定されている(T2>D)。
そして、第1電極170の金属反射層172(150nm)と第2電極180の第2導電層181(150nm)と、第1電極170の第1拡散防止層173(50nm)と第2電極180の第2拡散防止層182(50nm)と、第1電極170の第1ボンディング層174(300nm)と第2電極180の第2ボンディング層183(300nm)とを、それぞれ同じ厚さにしている。また、第1電極170の第1導電層171の厚さは5nmと、他の層に比べて薄い。よって、p型半導体層160の上面160cから第1ボンディング層174の上面170cまでの第1電極170の厚さ(505nm)と、半導体層露出面140cから第2ボンディング層183の上面180cまでの第2電極180の厚さ(500nm)とは、ほとんど差がない。
よって、第2突出電極220の表面220c(第2接続部222の第2基部221と接した面とは反対の面)は、保護層190の基板10からの距離が最も大きい部分である第1電極170の第2密着層184上の表面190cより突き出ている。
【0077】
本実施の形態では、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210c(第1接続部212の第1基部211と接した面とは反対の面)の基板10との距離の差は、半導体層露出面140cを設けるためにエッチングにより積層半導体層100が除去された深さDとほぼ同じとなる。すなわち、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210cは、基板10の裏面10bからの距離が、互いに異なっている。
【0078】
なお、例えば第2電極180を構成する第2導電層181の厚さを100nm、第2拡散防止層182の厚さを100nm、第2ボンディング層183の厚さを1μmとすると、半導体層露出面140cから第2ボンディング層183の上面180cまでの第2電極180の厚さが1.2μmとなる。この厚さは、半導体層露出面140cを設けるためにエッチングにより積層半導体層100が除去された深さD(本実施の形態では0.6〜0.7μm)と、p型半導体層160の上面160cから第1ボンディング層174の上面170cまでの第1電極170の厚さ(505nm)とを加えた値となる。この場合、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210c(第1接続部212の第1基部211と接した面とは反対の面)の基板10との距離の差を小さく設定できる。
【0079】
[発光チップ1の製造方法]
次に、図1に示す発光チップ1を製造する方法(製造方法)の一例について説明する。
ウエハ30は、基板10上に複数の発光素子20が一括して設けられた状態であって、個別の発光チップ1に分割される前の状態である。ここでは、ウエハ30を製造する途中の工程においても、ウエハ30と呼ぶ。
【0080】
図4は、発光チップ1を製造する方法を説明するフローチャートの一例である。図4(a)に示すように、発光チップ1の製造方法は、基板10上に第1電極170および第2電極180を設けた発光素子20を形成する半導体素子形成工程(ステップ101)と、発光素子20の第1電極170上に第1突出電極210および第2電極180上に第2突出電極220を形成する突出電極形成工程(ステップ102)と、ステップ102の後に基板10の分割予定線H1〜H5、V1〜V5(後述する図6参照)に沿って、基板10内に脆弱領域321を形成する脆弱領域形成工程(ステップ103)と、基板10上に発光素子20が形成されたウエハ30を、脆弱領域321を起点として、発光チップ1に分割する分割工程(ステップ104)とを含む。
そして、半導体素子形成工程(ステップ101)は、図4(b)に示すように、基板10上に中間層120、下地層130、発光層150、p型半導体層160を含む積層半導体層100を形成する半導体層積層工程(ステップ201)と、積層半導体層100の一部を切り欠き除去して半導体層露出面140cを形成する半導体層露出面形成工程(ステップ202)と、積層半導体層100の上面160c上に第1電極170を形成する第1電極形成工程(ステップ203)と、半導体層露出面140c上に第2電極180を形成する第2電極形成工程(ステップ204)と、保護層190を形成する保護層形成工程(ステップ205)とを含む。
【0081】
本実施の形態が適用される発光チップ1の製造方法では、必要に応じて、第1電極形成工程(ステップ203)および第2電極形成工程(ステップ204)の後、ウエハに熱処理(アニール処理)を施すアニール工程をさらに有している場合がある。
【0082】
以下、各工程について、順番に説明する。
図5は、半導体素子形成工程(図4(a)のステップ101)および突出電極形成工程(図4(a)のステップ102)を説明する図である。図5は、ウエハ30の直径(後述する図6に示すウエハ30のV−V線)での断面図を示している。なお、図5では、例としてウエハ30の直径(V−V線)上に、4個の発光チップ1が並ぶとする。
【0083】
(半導体層積層工程)
図5(a)に示す半導体層積層工程(図4(b)のステップ201)を説明する。
先ず、基板10の表面10a上に、スパッタ法によって、中間層120を積層する。
スパッタ法によって、単結晶構造を有する中間層120を形成する場合、チャンバ内の窒素ガスと不活性ガスとの流量比を、窒素ガスが50〜100%、望ましくは75%となるようにすることが望ましい。
また、スパッタ法によって、柱状結晶(多結晶)を有する中間層120を形成する場合、チャンバ内の窒素ガスと不活性ガスとの流量比を、窒素ガスが1〜50%、望ましくは25%となるようにすることが望ましい。なお、中間層120は、上述したスパッタ法だけでなく、MOCVD法で形成することもできる。
【0084】
中間層120を形成した後、中間層120上に、単結晶の下地層130を形成する。下地層130は、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
下地層130の形成後、下地層130上にnコンタクト層140aおよびnクラッド層140bを積層してn型半導体層140を形成する。nコンタクト層140aおよびnクラッド層140bは、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0085】
発光層150の形成は、スパッタ法、MOCVD法のいずれの方法でもよいが、特にMOCVD法が好ましい。具体的には、障壁層150aと井戸層150bとを交互に繰り返して積層し、且つ、n型半導体層140側およびp型半導体層160側に障壁層150aが配される順で積層すればよい。
【0086】
p型半導体層160の形成は、スパッタ法、MOCVD法のいずれの方法でもよい。具体的には、発光層150上にpクラッド層160aと、pコンタクト層160bとを順次積層すればよい。
【0087】
(半導体層露出面形成工程)
次に、図5(b)に示す半導体層露出面形成工程(図4(b)のステップ202)を説明する。
基板10の表面10a上に、中間層120、下地層130、積層半導体層100が形成されたウエハ30の、p型半導体層160の上面160c上に、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法により、半導体層露出面140cを形成する部分が開口部となったレジスト膜(不図示)を形成し、それに引き続くエッチング等による手法によって、積層半導体層100の一部を除去して、nコンタクト層140aの一部を露出させ、半導体層露出面140cを形成する。こののち、レジスト膜を除去する。
【0088】
(第1電極形成工程)
図5(c)に示す第1電極形成工程(図4(b)のステップ203)を説明する。
従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法によって、p型半導体層160の上面160c上の第1電極170が形成される部分が開口部となったレジスト膜251を形成する。
なお、レジスト膜251の開口部では、レジスト膜251の側壁が庇(オーバハング)状(矢印Aで示す状態)になっていることが好ましい。
この後、ウエハ30上に第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を、従来公知のスパッタ法または真空蒸着法等の成膜の手法により連続して堆積する。
この後、ウエハ30をレジスト剥離液(レジストリムーバ)に浸漬するなどにより、レジスト膜251とともに、レジスト膜251上に堆積した第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を除去する(リフトオフ法)。これにより、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174が形成される。
【0089】
なお、レジスト膜251の開口部のオーバハング状(矢印A)の部分のp型半導体層160の上面160cには、シャドウ効果により、各層を構成する材料が付着しにくい。このため、各層の端部では、端に近づくにつれ、膜厚が薄くなる。このようにして、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174のそれぞれの端部は、端に近づくにつれて、膜厚を薄くすることができる。
また、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を順次連続して堆積するため、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の端の位置が同じとなる。
【0090】
なお、第1導電層171に熱処理を施すときは、第1導電層171の形成と、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の形成とを分けて行えばよい。
すなわち、第1導電層171を堆積後、レジスト膜を除去して、熱処理を施す。再度、レジスト膜を設け、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の材料の膜を順次連続して堆積すればよい。このとき、金属反射層172の端部が、p型半導体層160に接触しないよう、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174を形成するためのレジスト膜の開口部が、第1導電層171上に設けられるようにすればよい。
【0091】
(第2電極形成工程)
図5(d)に示す第2電極形成工程(図4(b)のステップ204)を説明する。
第1電極170の形成のための第1電極形成工程と同様に、第2電極180を形成する。すなわち、開口部の側壁がオーバハング状になったレジスト膜252を形成し、その後、第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183の材料の膜を、従来公知のスパッタ法または真空蒸着法等の成膜の手法により連続して堆積する。
この後、ウエハ30をレジスト剥離液に浸漬するなどにより、レジスト膜252とともに、レジスト膜252上に堆積した第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183の材料の膜を除去する(リフトオフ法)。これにより、第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183が形成される。
なお、第1電極形成工程において、第1導電層171の形成と、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174の形成とを分けて行えば、第2電極180の第2導電層181と第1電極170の金属反射層172とを同時に形成し、第2電極180の第2拡散防止層182と第1電極170の第1拡散防止層173とを同時に形成し、さらに、第2電極180の第2ボンディング層183と第1電極170の第1ボンディング層174とを同時に形成できる。
【0092】
図示しないが、この後、第1電極170における第1密着層175および第2電極180における第2密着層184を同時に形成する。第1密着層175および第2密着層184の形成は、第1密着層175および第2密着層184を構成する材料の膜を、ウエハ30の全面に堆積した後、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法によるレジスト膜の形成と、それに引き続く従来公知のエッチングなどの手法によって行ってもよい。また、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法によるレジスト膜の形成と、それに引き続く第1密着層175および第2密着層184を構成する材料の膜の堆積と、レジスト膜の除去とともに、レジスト膜上の第1密着層175および第2密着層184を構成する材料をリフトオフする手法によって行ってもよい。
【0093】
(保護層形成工程)
図5において図示しないが、保護層形成工程(図4(b)のステップ205)を説明する。
ウエハ30上に、SiO2からなる保護層190を構成する膜を形成した後、従来公知のフォトリソグラフィ法等の手法により、保護層190を構成する膜上にレジスト膜253を形成する(図5(e)参照)。レジスト膜253には、第1電極170上の第1突出電極210が形成される領域および第2電極180上の第2突出電極220が形成される領域に開口部が設けられている。
そして、従来公知のエッチングなどの手法によって、第1突出電極210および第2突出電極220が形成される領域の保護層190、第1密着層175、第2密着層184をエッチング除去し、次いでレジスト膜253を除去する。
【0094】
(突出電極形成工程)
図5(e)に示す第1突出電極210および第2突出電極220を形成する突出電極形成工程(図4(a)のステップ102)を説明する。
ウエハ30の全面に図示しないTiまたはTiとWとからなるTiW合金層とAu層からなるアンダーバンプメタル層(略してUBM膜と称する。)を形成し、その後レジスト膜253を再度形成する。レジスト膜253には上記と同様に、第1電極170上の第1突出電極210が形成される領域および第2電極180上の第2突出電極220が形成される領域に開口部が設けられている。
次に、公知の電解メッキ法によって、第1突出電極210の第1基部211および第2突出電極220の第2基部221を構成する材料(本実施の形態ではAu(金))を形成する。
次に、第1突出電極210の第1接続部212および第2突出電極220の第2接続部222を構成する材料(本実施の形態ではAuSn(金錫)合金)を、従来公知のスパッタ法、真空蒸着法などの成膜の手法により堆積する。
次いで、レジスト膜253を除去し、引き続き、レジスト膜253の除去により露出したUBM膜をエッチングで除去する。エッチング液としては、例えば、Auに対してはKIとI2の混合液を、TiまたはTiW合金に対しては硫酸加水溶液を用いることができる。
以上のようにして、発光チップ1に分割される前のウエハ30が製造される。
【0095】
このようにして得られたウエハ30を、例えば窒素などの還元雰囲気下において、150〜300℃、より好ましくは200〜250℃で熱処理してもよい。
この熱処理は、第1導電層171、金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174、第1密着層175、保護層190、第1基部211、第1接続部212間および第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183、第2密着層184、保護層190、第2基部221、第2接続部222間の密着性の向上および電気的な接触抵抗の低減を図るためである。なお、熱処理は必ずしも行う必要はないが、密着性の向上および電気的な接触抵抗の低減を図るためには行う方が好ましい。
【0096】
次に、半導体チップ分割のための、脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103)および分割工程(図4(a)のステップ104)について説明する。
図6は、第1突出電極210および第2突出電極220が形成された側から見たウエハ30の平面図である。
ウエハ30には、図6において、X方向ピッチpxおよびY方向ピッチpyで、複数の発光チップ1が並んで形成されている。なお、図6では、例としてウエハ30のX方向の直径に沿って、4個の発光チップ1が、ウエハ30のY方向の直径に沿って、4個の発光チップ1が並んでいるとしている。なお、図5に示したウエハ製造工程は、V−V線での断面図である。
そして、ウエハ30は、分割予定線H1〜H5および分割予定線V1〜V5で、発光チップ1に分割されるとする。図6では、分割予定線H1〜H5および分割予定線V1〜V5は線として示しているが、ウエハ30の表面からウエハ30の裏面(基板10の裏面10b)に延びた垂直な面(分割予定面)で切断されることになる。よって、以下では、分割予定線(H1〜H5およびV1〜V5)を分割予定面(H1〜H5およびV1〜V5)とも呼ぶ。
なお、図6では、ウエハ30の発光チップ1の個数を、4×4としているが、ウエハ30の発光チップ1の個数は、ウエハ30の直径と、発光チップ1のpxおよびpyによって決まる。
【0097】
図7は、脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103)および分割工程(図4(a)のステップ104)を説明する図である。
脆弱領域形成工程では、ウエハ30の基板10内部に脆弱領域321を形成する。そして、分割工程では、脆弱領域321を起点として、ウエハ30を発光チップ1に分割する。
(脆弱領域形成工程)
図7(a)に示す脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103)を説明する。
ウエハ30の第1突出電極210および第2突出電極220の形成された側を、ダイシングテープ315の一方の面であって、接着剤が塗布された面に貼り付ける。
ウエハ30の第1突出電極210の表面210cと第2突出電極220の表面220cとは、基板10の表面10aからの距離が異なっている。しかし、前述したように、本実施の形態における距離の差は0.6〜0.7μmである。また、ダイシングテープ315は、柔軟性のあるプラスチックフィルムであって、接着剤が塗布されている。よって、ウエハ30の第1突出電極210の表面210cおよび第2突出電極220の表面220cは、基板10の表面10aからの距離の差に関わらず、ダイシングテープ315に接着して固定される。
【0098】
次いで、ダイシングテープ315の接着剤が塗布された面に、金属製のウエハリング316を貼り付けて固定する。ウエハリング316は、ダイシングの際のウエハ30の固定治具として働く。
そして、ウエハリング316およびウエハ30を固定したまま、ダイシングテープ315のウエハリング316およびウエハ30が固定された面と反対側の面を、ダイシング装置のステージ317に載置する。
なお、ウエハ30をダイシングテープ315に貼り付ける前に、基板10の厚さを、研磨(研削)により薄くしてもよい。
【0099】
次に、図7(a)に示すように、基板10の裏面10bから、分割予定線H1〜H5およびV1〜V5に沿って、基板10の内部に焦点を合わせたレーザ光345を照射する。図7(a)では、基板10の分割予定線H2に沿って、基板10の内部に脆弱領域321を形成するところを示している。
具体的には、レーザ光345を固定し、レーザ光345が分割予定線H1〜H5、V1〜V5に沿って移動するように、ダイシング装置のステージ317を予め定められた速度で移動させる。
レーザ光345には、YAGレーザ光を用いることができる。レーザ光345にパルスレーザを用いると、分割予定線H1〜H5、V1〜V5に沿って、基板10の内部に点状に脆弱領域321が形成される。このとき、X方向の分割予定線H1に沿って、脆弱領域321を形成した後、ステージ317を移動して、分割予定線H2に沿って、脆弱領域321を形成する。同様に、分割予定線H3、H4、H5に沿って、脆弱領域321を形成する。この後、Y方向の分割予定線V1〜V5に沿って脆弱領域321を形成する。
【0100】
なお、脆弱領域321は、基板10の裏面10bから異なる距離に設けられてもよい。この場合、先に基板10の裏面10bから大きい距離に脆弱領域321を設けることが好ましい。もし、基板10の裏面10bから小さい距離に脆弱領域321を設けた後、基板10の裏面10bから大きい距離に脆弱領域321を設けると、基板10の裏面10bからの小さい距離に設けられた脆弱領域321により、レーザ光345が擾乱を受けて、レーザ光345の集光が妨げられ、基板10の裏面10bから大きい距離に脆弱領域321を形成することが難しくなってしまう。
【0101】
(分割工程)
図7(b)および(c)に示す分割工程(図4(a)のステップ104)を説明する。
図7(b)に示すように、脆弱領域321が形成されたウエハ30を、ダイシングテープ315およびウエハリング316を設けた状態で、ウエハリング316およびウエハ30が固定された面と反対側の面を、切断装置のステージ318に設定する。
ブレーキング装置のステージ318は、リング状のリングステージ318cと、リングステージ318cの中央に設けられ、直線状の間隙(隙間)を隔てて配置された2つのサブステージ318aと318bとから構成されている。よって、間隙に、分割予定線H1〜H5、V1〜V5のいずれかが対応するようにウエハ30を配置する。図7(b)では、分割予定線H3が2つのサブステージ318aと318bとの間の間隙に一致するように配置されている。
そして、図7(c)に示すように、基板10の裏面10bに、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)に沿って、ブレード320を押圧する。
このとき、第1突出電極210の表面210cおよび第2突出電極220の表面220cのいずれもが、基板10側から見て、保護層190の表面190cより突き出ている(図1参照)。そして、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)は、図6に示したように、突出電極(第1突出電極210および第2突出電極220)の間に設けられている。よって、ブレード320が基板10の裏面10bに対して押圧されると、ウエハ30は、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)を挟んで隣接する第1突出電極210の表面210cと第2突出電極220の表面220cの表面とを支点にして、分割予定線(H1〜H5、V1〜V5のいずれか)の部分が沈み込む。このとき、沈み込み量が大きいと、ウエハ30に切断する力(モーメント)が大きく働き、ウエハ30が切断されやすくなる。
本実施の形態では、突出電極(第1突出電極210および第2突出電極220)を設けて沈み込み量を大きくしているので、ウエハ30の発光チップ1への分割を容易にしている。
よって、本実施の形態では、ウエハ30の表面溝を設けることを要しないので、溝を形成するための工程において、ウエハ30の表面、すなわち半導体素子の表面が溝を構成する材料の飛散により汚染されることがない。
【0102】
[発光チップ1の使用方法]
次に、図1に示す発光チップ1の使用方法について説明する。
図8は、図1に示す発光チップ1を配線基板500に実装した発光装置3の構成の一例を示す図である。
配線基板500は、表面500a上に端子としての正電極511および負電極512を備えている。配線基板500の正電極511と負電極512は、図1に示す発光チップ1の第1突出電極210および第2突出電極220と対向させたとき、正電極511と第1突出電極210とが接続され、負電極512と第2突出電極220とが接続されることができるような位置に設けられている。
さらに、配線基板500の表面500aまたは表面500aおよび裏面500bには、図示しないが正電極511および負電極512に電流を供給するための複数の配線が設けられている。
なお、配線基板500は、配線基板500の内部に、ビア・ホールを介して正電極511および負電極512に接続される配線を備えた層(配線層)を1層または複数層備えた多層配線基板であってもよい。
【0103】
そして、配線基板500の正電極511および負電極512に対して、発光チップ1の第1突出電極210および第2突出電極220をそれぞれ接触させ、発光チップ1の第1接続部212および第2接続部222が溶融しうる温度に加熱した状態で、発光チップ1を配線基板500に押圧する。これにより、正電極511と第1突出電極210とが電気的に接続され、負電極512と第2突出電極220とが電気的に接続される。
上述の発光チップ1を配線基板500に実装する方法は、フェイスダウン(FD)実装と呼ばれるものである。
【0104】
図8では、発光チップ1は、基板10の裏面10bが配線基板500の表面500aに対して、傾いて実装されている。これは、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210cの基板10の裏面10bからの距離が、互いに異なっているためである。しかし、図8では配線基板500に対して、発光チップ1が大きく傾いて示しているが、前述したように距離の差は0.6〜0.7μmであって、発光チップ1の一辺の長さである350μmに比べきわめて小さく、配線基板500に対する発光チップ1の傾きは小さい。
前述したように、第2電極180を構成する第2導電層181、第2拡散防止層182、第2ボンディング層183のそれぞれの厚さを調整することにより、第2突出電極220の表面220cおよび第1突出電極210の表面210cの、基板10の裏面10bからの距離の差を抑制することができる。
【0105】
発光チップ1を配線基板500にフェイスダウン(FD)実装した発光装置3の動作について説明する。
配線基板500に設けられた配線を介して、正電極511と負電極512との間に電位を印加して、正電極511から負電極512に向かう電流を流すと、第1突出電極210および第2突出電極220を介して、発光チップ1の積層半導体層100に電流が流れ、発光層150から青色光が出射する。なお、第1電極170では、第1ボンディング層174、第1拡散防止層173、金属反射層172および第1導電層171を介して、均一化された電流がp型半導体層160に供給される。
【0106】
発光層150から出射される光のうち基板10側に向かう光は、n型半導体層140、下地層130、中間層120および基板10を透過し、図8に示す矢印方向すなわち発光チップ1の外部に出射する。
【0107】
一方、発光層150から出射される光のうち第1電極170側に向かう光は、p型半導体層160および第1導電層171を介して金属反射層172に到達し、金属反射層172で反射される。そして、金属反射層172で反射した光は、第1導電層171、p型半導体層160、発光層150、n型半導体層140、下地層130、中間層120および基板10を透過し、図8に示す矢印方向すなわち発光チップ1の外部に出射する。
【0108】
〔発光チップ2〕
次に発光チップ2について簡単に説明する。
図9は本実施の形態が適用される発光チップ2の断面模式図の一例を示す図である。図10は、発光チップ2を図9の矢印Xの方向から見た平面模式図の一例を示す図である。なお、図9の発光チップ2の断面模式図は、図10のIX−IX線での断面図である。
本実施形態のチップサイズは1辺350μmの正方形型である。第1導電層171の上にφ60μm〜110μmの金属反射層172、第1拡散防止層173、第1ボンディング層174、第1密着層175が順次成膜されていること以外の構造と製造方法および使用方法は発光チップ1と同じである。
【実施例】
【0109】
以下、本発明は発光層150を有する半導体素子(発光素子20)に関する実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみに限定されるものではない。
(実施例1)
以下に示すようにして、窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光層150を有するIII族窒化物半導体発光素子20(素子の形状は図1および図2に示す発光チップ1と同一)を作製した。
【0110】
図1に示すようにC面サファイア単結晶の基板10に、AlNからなる中間層120を介してアンドープGaNからなる厚さ4μmの下地層130を形成した。そして、下地層130上にSiドープ(濃度1×1019/cm3)GaNからなる厚さ3μmのnコンタクト層140a、Siドープ(濃度1×1018/cm3)In0.1Ga0.9Nからなる厚さ13nmのnクラッド層140b(nコンタクト層140aおよびnクラッド層140bからn型半導体層140が構成される。)、GaNからなる厚さ16nmの障壁層150aとIn0.2Ga0.8Nからなる厚さ2.5nmの井戸層150bを交互に6回積層させた後、最後に障壁層150aを設けた多重量子井戸構造の発光層150、Mgドープ(濃度1×1020/cm3)Al0.07Ga0.93Nからなる厚さ3nmのpクラッド層160aおよびMgドープ(濃度8×1019/cm3)GaNからなる厚さ0.18μmのpコンタクト層160b(pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bによりp型半導体層160が構成される。)を順次積層してなる厚み9μmのIII族窒化物半導体からなる積層半導体層100を形成した。
【0111】
次に、積層半導体層100のpコンタクト層160b上の所定の位置に公知のフォトリソグラフィ技術およびリフトオフ技術を用いて、IZOからなる第1導電層171(透光性正極)を形成した。次に、公知のフォトリソグラフィ技術を用い、第1導電層171(透光性正極)上に金属反射層(Ag)172、第1拡散防止層(Ta)173、第1ボンディング層(Pt/Au)174、第1密着層(Ta)175を順次形成して、第1導電層171(透光性正極)上にAg/Ta/Pt/Au/Ta構造を有する第1電極170を形成した。
【0112】
次に、第1電極170まで形成された積層半導体層100を、公知のフォトリソグラフィ技術および反応性エッチング技術を用いて、nコンタクト層140aを半円状に露出させ、半導体層露出面140cを形成した。さらに、半導体層露出面140c上に第2導電層(Al)181、第2拡散防止層(Ta)182、第2ボンディング層(Pt/Au)183、第2密着層(Ta)184を順次形成して、半導体層露出面140c上にAl/Ta/Pt/Au/Ta構造の第2電極180を公知の方法で形成した。
次にSiO2からなる保護層190を成膜し、公知のフォトリソグラフィ技術および反応性エッチング技術を用いて第1電極170の第1ボンディング層174および第2電極180の第2ボンディング層183のAu面を露出させた。
次に、TiW/Auの積層膜を公知のスパッタ法でウエハ30全面に成膜した後、第1ボンディング層174および第2ボンディング層183の露出部を開口させたレジスト膜を形成した。公知の電解メッキ法により第1ボンディング層174および第2ボンディング層183の露出部にAuを13μm成長させ、その後、蒸着法によりAuSnを2μ成膜した。公知のリフトオフ法によりレジスト膜およびAuSnを除去し、エッチング法によりAu、TiWを除去して、第1突出電極210および第2突出電極220を形成した。
【0113】
次に、基板10の裏面10bをラッピングおよびポリッシングすることで、中間層120、下地層130、積層半導体層100を加えた半導体層の厚みと基板10の厚みとを合わせた総厚が150μmとなるようにサファイア単結晶の基板10を薄板化した。
【0114】
次に、レーザ光の照射により脆弱領域を形成する脆弱領域形成工程(図4(a)のステップ103および図7(a)参照)を実施した。先ず、ウエハ30の第1突出電極210および第2突出電極220が設けられた側にダイシングテープ315を貼り付け、ダイシング装置のステージ317に載置した。次に、発光チップ1の平面サイズを350μm×350μmの正方形状とする分割予定線(図6のH1〜H5、V1〜V5に相当)に沿って、基板10の裏面10bから異なる距離の2箇所にレーザ光を照射して、二段の脆弱領域321を形成した。
【0115】
次に、ウエハ30の第1突出電極210および第2突出電極220が設けられた側にダイシングテープ315を貼り付けたまま、ブレード320を基板10の裏面10b側から押し込み、効果的にクラックを生じさせて分割することで、III族窒化物半導体からなる発光素子20を含む発光チップ1とした。
最後に、AlN基板を用いた配線基板500上に発光チップ1を裏返して設置し、配線基板500上の正電極511と発光チップ1の第1突出電極210とが、配線基板500上の負電極512と発光チップ1の第2突出電極220とが対応するように、発光チップ1と配線基板500とを位置合わせし、その後、300℃に加熱しつつ、発光チップ1を配線基板500に押圧(圧着)し、配線基板500上の正電極511と発光チップ1の第1突出電極210と、配線基板500上の負電極512と発光チップ1の第2突出電極220とをそれぞれ電気的に接続し、発光装置3(図8参照)とした。
発光チップ1を搭載した配線基板500(発光装置3)をTO18に載せてワイヤーで接続した。
実施例1において得られた発光チップ1のLED特性は、順方向電圧Vfが3.11V(順方向電流Ifが20mA)のとき、発光波長が452nmであり、発光出力Poが24.5mWであった。
【0116】
次に、複数の発光チップ1について、逆方向電圧Vrとして5Vを印加し、逆方向電流Irが2μA以上のものを不良(NG)とする評価を行った結果、不良(NG)の発生率(IR不良率)が0.5%であった。
【0117】
(実施例2〜4、比較例1,2)
実施例2は図9、図10に示すような構成とし、第1導電層171の上に直径100μmの金属反射層172、その上に第1拡散防止層173、その上に第1ボンディング層174が順次成膜されていること以外は実施例1と同様に、発光素子20を製造した。
また、実施例3、4は、実施例1に記載の第1突出電極210の高さT1(=第2突出電極220の高さT2)を図11に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様に発光素子20(チップの形状は図1および図2に示す発光チップ1)を製造した。
一方、比較例1では、第1突出電極210および第2突出電極220を形成しないこと以外、実施例1と同様に発光素子20を製造した。
さらに、比較例2では、第1突出電極210および第2突出電極220を形成しないこと以外は、実施例2と同様に発光素子20を製造した。
図11には、実施例1の特徴(第1突出電極210の高さT1および第2突出電極220の高さT2、発光チップの形状)、LED特性(順方向電圧Vf(V)、発光波長λ(nm)、発光出力Po(mW))およびIR不良率(%)と共に、実施例2〜4および比較例1、2の特徴、LED特性およびIR不良率(%)を示している。なお、図11では、第1突出電極210の高さT1および第2突出電極220の高さT2を突出電極の高さT1=T2として示している。
【0118】
図11から分かるように、実施例1〜4では、IR不良率(不良発生率)は2%以内で良好であった。一方、比較例1および比較例2では、IR不良率は5%以上と実施例1〜4と比べ格段に高い値を示した。この結果、比較例1および比較例2の場合は、チップ内のpnジャンクション部(n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の領域)に何らかの損傷が生じた可能性が高く、リーク電流が大きい不良チップの数を示すIR不良率が高い原因と考えられる。
以上の実施結果からわかるように、実施例1〜4では、同じ高さ(T1=T2)を有する第1突出電極210や第2突出電極220が発光チップ1(または発光チップ2)内に存在し、これらの突出電極の表面がウエハ30の分割時の力の支点となって、ウエハ30の分割を容易にしているとの結果となった。
さらに厳密には、第1突出電極210や第2突出電極220の高さがそれぞれ同じ高さ(T1=T2)で形成されたとしても、基板10の裏面10bからの高さが相違するために、この2つの支点までの押力のモーメントの相違により、ウエハ30の分割が容易となるためとも考えられる(図8参照)。
このように、本発明によれば、半導体ウエハの基板にブレード320を押圧して半導体ウエハを複数のチップに分割する前に、突出電極を半導体ウエハ上に形成することで格段に効率よくチップを分割(分離)することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、pnジャンクション部を有する半導体素子(またはチップ)の製造方法において、pnジャンクション部を損傷しないでIR不良率(不良発生率)の低い半導体素子の製造方法を提供することができる。特に、半導体ウエハをチップ形状に分割する前に、チップ上に突起電極を形成することで、半導体ウエハ当たりの分割収率を高める半導体チップの製造方法を効率的に提供することができる。そのため、半導体発光素子や受光素子以外の他の半導体素子構造を有するチップの製造方法にも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1、2…発光チップ、3…発光装置、10…基板、100…積層半導体層、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、150…発光層、160…p型半導体層、170…第1電極、180…第2電極、210…第1突出電極、220…第2突出電極、315…ダイシングテープ、316…ウエハリング、317、318…ステージ、320…ブレード、321…脆弱領域、345…レーザ光、500…配線基板、511…正電極、512…負電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、
前記半導体素子に設けられた電極に接続され、当該半導体素子の前記基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を前記半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、
前記半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、
前記半導体ウエハの前記突出電極が形成された側と反対側から、前記分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板にブレードを押圧して、当該半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程と
を含む半導体チップの製造方法。
【請求項2】
前記脆弱領域形成工程において形成される前記脆弱な領域は、前記基板の内部に集光されたレーザ光によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項3】
前記脆弱領域形成工程において形成される前記脆弱な領域は、前記基板の分割予定線に沿った当該基板内に、当該基板の一方の表面から複数の距離に対して形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項4】
前記突出電極形成工程において形成される突出電極は、金(Au)または金(Au)を含む合金により構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項5】
前記基板は、サファイアで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項6】
前記半導体素子は、発光素子または受光素子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項7】
基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、
前記半導体素子に設けられた電極に接続され、当該半導体素子の前記基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を前記半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、
前記半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、
前記半導体ウエハの前記突出電極が形成された側と反対側から、前記分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板にブレードを押圧して、当該半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程と
を含む半導体ウエハの分割方法。
【請求項1】
基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、
前記半導体素子に設けられた電極に接続され、当該半導体素子の前記基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を前記半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、
前記半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、
前記半導体ウエハの前記突出電極が形成された側と反対側から、前記分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板にブレードを押圧して、当該半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程と
を含む半導体チップの製造方法。
【請求項2】
前記脆弱領域形成工程において形成される前記脆弱な領域は、前記基板の内部に集光されたレーザ光によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項3】
前記脆弱領域形成工程において形成される前記脆弱な領域は、前記基板の分割予定線に沿った当該基板内に、当該基板の一方の表面から複数の距離に対して形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項4】
前記突出電極形成工程において形成される突出電極は、金(Au)または金(Au)を含む合金により構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項5】
前記基板は、サファイアで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項6】
前記半導体素子は、発光素子または受光素子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項7】
基板上に半導体素子が形成された半導体ウエハを形成する半導体素子形成工程と、
前記半導体素子に設けられた電極に接続され、当該半導体素子の前記基板から最も離れた面よりも、表面が突き出た突出電極を前記半導体ウエハ上に形成する突出電極形成工程と、
前記半導体ウエハに設けられた分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板内に他の領域に比べて脆弱な領域を形成する脆弱領域形成工程と、
前記半導体ウエハの前記突出電極が形成された側と反対側から、前記分割予定線に沿って当該半導体ウエハの前記基板にブレードを押圧して、当該半導体ウエハを複数の半導体チップに分割する分割工程と
を含む半導体ウエハの分割方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−142401(P2012−142401A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293549(P2010−293549)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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