説明

半導体チップ接合用接着剤、非導電性ペースト及び非導電性フィルム

【課題】貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高く、半導体チップボンディング時のアライメントマークの認識を容易なものとする半導体チップ接合用接着剤、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤と、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールとを含有する半導体チップ接合用接着剤、並びに該接着剤を用いて製造されることを特徴とする非導電性ペースト及び非導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高く、半導体チップボンディング時のアライメントマークの認識を容易なものとする半導体チップ接合用接着剤に関する。また、本発明は、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体チップを基板又は他の半導体チップに接着固定するボンディング工程が行われる。半導体チップをボンディングする際には、現在では、接着剤、接着シート等が用いられることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体チップと可撓性の配線基板とそれらに挟まれた絶縁層からなる構造を有する半導体装置において、絶縁層が加熱接着温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘度が、100〜2000Pa・sである絶縁層用接着フィルムが開示されている。特許文献1には、同文献に記載の絶縁層用接着フィルムは、浸出量制御、即ち半導体チップに設けられた電気信号を出力するための電極部分に流出する接着剤の抑制に優れ、耐熱性、回路充填性にも優れることが記載されている。
【0004】
一方、近年、半導体装置の小型化、高集積化が進展し、例えば、表面に電極として複数の突起を有するフリップチップ、複数の薄研削した半導体チップを積層したスタックドチップ等も生産されている。更に、このような小型化、高集積化した半導体装置を効率よく生産するために、製造工程の自動化もますます進展している。
【0005】
近年の自動化されたボンディング工程においては、半導体チップ上に設置されたアライメントマークをカメラが認識することよって、半導体チップの位置合わせが行われる。このとき、アライメントマークは半導体チップ上に塗布された接着剤の上から認識されるため、ボンディング時に用いられる接着剤には、カメラがアライメントマークを充分に認識することができる程度の透明性が求められる。
しかしながら、従来の接着剤では、透明性を向上させると、同時に貯蔵安定性が低下することが問題であり、透明性と貯蔵安定性とを両立し、半導体装置の生産性の向上に貢献することのできる新しい接着剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−12545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高く、半導体チップボンディング時のアライメントマークの認識を容易なものとする半導体チップ接合用接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂と、水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤と、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールとを含有する半導体チップ接合用接着剤である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
一般に、硬化性化合物としてエポキシ樹脂を含有する半導体チップ接合用接着剤において、透明性を改善するためには、例えば、エポキシ樹脂に対する硬化剤及び硬化促進剤の溶解性を高めることが考えられる。しかしながら、エポキシ樹脂に対して硬化剤及び硬化促進剤が充分に溶解していると、保管中でも硬化反応が進行しやすく、貯蔵安定性の低下につながる。
この問題に対し、本発明者らは、エポキシ樹脂と、水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤と、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールとを含有する半導体チップ接合用接着剤は、貯蔵安定性及び速硬化性に優れるとともに、透明性も高く、半導体チップボンディング時のアライメントマークの認識を容易なものとすることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、エポキシ樹脂を含有する。
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及び、これらの変性物、水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0011】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有してもよい。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物は靭性をもち、優れた耐衝撃性を発現することができる。
【0012】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物は優れた靭性を発現する。即ち、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物は、上記エポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた靭性とを兼備することにより、高い接合信頼性や接続信頼性を発現することができる。
【0013】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性、靭性等を発現できることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、該エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万である。上記重量平均分子量が1万未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤の造膜性が不充分となり、例えば、半導体チップ接合用接着剤をフィルム状にしようとしても、フィルムとして形状を保持することができないことがある。
【0015】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、該エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ当量が200未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が堅く、脆くなることがある。上記エポキシ当量が1000を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の機械的強度、耐熱性等が不充分となることがある。
【0016】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が500重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が1重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物は、熱によるひずみが発生する際、靭性が不充分となり、接合信頼性が劣ることがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が500重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の耐熱性が低下することがある。
【0017】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤を含有する。水酸基当量が110未満のフェノール系硬化剤を含有する場合、得られる半導体チップ接合用接着剤は、貯蔵安定性が低下する。本発明の半導体チップ接合用接着剤は、水酸基当量が115以上のフェノール系硬化剤を含有することが好ましい。
【0018】
上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤は、水酸基当量が110以上であれば特に限定されず、例えば、クレゾールノボラック型樹脂、BPAノボラック型樹脂(ビスフェノールAノボラック型樹脂)、ビフェニルフェノールノボラック型樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型樹脂等が挙げられる。
【0019】
上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が150重量部である。上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤の含有量が5重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤は、充分に硬化しなかったり、速硬化性が低下したりすることがある。上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤の含有量が150重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤は、貯蔵安定性が低下したり、透明性が低下したりすることがある。上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤の含有量は、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が10重量部である。
【0020】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールを含有する。
上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤と、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールとを併用することで、得られる半導体チップ接合用接着剤は、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、保管中は硬化反応が進行しないが、一旦加熱すると速やかに硬化反応が進行する。従って、このような半導体チップ接合用接着剤を用いて半導体チップをボンディングする際には、半導体チップ接合用接着剤の加熱硬化時間を短縮することができ、半導体装置の製造にかかる時間(タクトタイム)を大幅に短縮することができる。また、ボンディングする半導体チップが薄型である場合には、ソリの発生を抑制する効果も得られる。
【0021】
更に、上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤と、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールとを併用することで、得られる半導体チップ接合用接着剤は、透明性が高く、このような半導体チップ接合用接着剤を用いて半導体チップをボンディングする際には、カメラによるアライメントマークの認識が容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0022】
2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールの市販品として、例えば、TBZ(四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0023】
2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールの含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールの含有量が0.1重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤は、充分に硬化しなかったり、速硬化性が低下したりすることがある。2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールの含有量が10重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤は、貯蔵安定性が低下したり、透明性が低下したりすることがある。2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールの含有量は、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が0.2重量部、より好ましい上限が5重量部、更に好ましい上限は1重量部である。
【0024】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で無機充填材を含有してもよい。
上記無機充填材を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率が低下する。従って、このような半導体チップ接合用接着剤を用いて半導体チップをボンディングする際には、半導体チップ、基板等に生じる応力を抑制することができ、半導体チップ、基板等の剥がれ又はソリ、ハンダ等の導通部分に生じるクラック等を抑制することができる。
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスビーズ、ガラスフリット等が挙げられる。
【0025】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は0.1nm、好ましい上限は30μmである。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が0.1nm未満であると、増粘効果が高く、得られる半導体チップ接合用接着剤の流動性が低下することがある。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が30μmを超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤を用いて半導体チップをボンディングする際に、電極間で上記無機充填材を噛みこむことがある。
【0026】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記無機充填材を含有する場合、上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記無機充填材の含有量が5重量部未満であると、上記無機充填材を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記無機充填材の含有量が80重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率は低下するものの、同時に弾性率が上昇し、半導体チップ、基板等に生じる応力を抑制できないことがある。
上記無機充填材の含有量は、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は60重量部、更に好ましい下限は15重量部、更に好ましい上限は40重量部である。
【0027】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は特に限定されないが、半導体チップ接合用接着剤の加熱硬化時に硬化物に取り込まれる反応性希釈剤が好ましい。なかでも、得られる半導体チップ接合用接着剤の接着信頼性を悪化させないために、1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤がより好ましい。
上記1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤として、例えば、脂肪族型エポキシ、エチレンオキサイド変性エポキシ、プロピレンオキサイド変性エポキシ、シクロヘキサン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、フェノール型エポキシ等が挙げられる。
【0028】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記希釈剤を含有する場合、上記希釈剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記希釈剤の含有量が1重量部未満であると、上記希釈剤を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記希釈剤の含有量が50重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の接着信頼性が劣ったり、所望の粘度特性が得られなかったりすることがある。上記希釈剤の含有量は、上記エポキシ樹脂と上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0029】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0030】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。上記無機イオン交換体のうち、市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記無機イオン交換体を含有する場合、上記無機イオン交換体の含有量は特に限定されないが、本発明の半導体チップ接合用接着剤中の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%である。
【0031】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、その他必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等の添加剤を含有してもよい。
【0032】
本発明の半導体チップ接合用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ樹脂、上記水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤及び2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、必要に応じて添加される上記反応可能な官能基を有する高分子化合物、上記無機充填材及びその他の添加剤等を所定量配合して混合することにより半導体チップ接合用接着剤を得る方法等が挙げられる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明の半導体チップ接合用接着剤の用途は特に限定されないが、例えば、半導体装置の製造において、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて、半導体チップを基板又は他の半導体チップにボンディングすることができる。
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高いことから、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて半導体チップをボンディングする際には、半導体装置の製造にかかる時間(タクトタイム)を大幅に短縮することができるとともに、カメラによるアライメントマークの認識が容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0034】
更に、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて非導電性ペースト(NCP)及び非導電性フィルム(NCF)を製造し、該非導電性ペースト及び非導電性フィルムを用いて、半導体チップを基板又は他の半導体チップにボンディングすることもできる。このような非導電性ペースト及び非導電性フィルムもまた、本発明の1つである。
本発明の非導電性ペースト及び非導電性フィルムは、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造されることから、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高い。従って、本発明の非導電性ペースト及び非導電性フィルムを用いて半導体チップをボンディングする際には、半導体装置の製造にかかる時間(タクトタイム)を大幅に短縮することができるとともに、カメラによるアライメントマークの認識が容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0035】
本発明の非導電性フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は2μm、好ましい上限は500μmである。上記厚みが2μm未満であると、異物が混入された場合に平滑なフィルムが得られないことがある。上記厚みが500μmを超えると、非導電性フィルムの透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるアライメントマークの認識が困難となったり、溶剤が残留しやすく、ボンディング時及び加熱硬化時に気泡が発生したりすることがある。
【0036】
本発明の非導電性フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、押出機による押出成型法、上記エポキシ樹脂等の硬化性化合物等を溶剤で希釈して硬化性組成物溶液を調製し、この溶液をセパレーター上にキャスティングした後、乾燥させる溶剤キャスト法、上記溶液をウェーハに直接塗工するスピンコート法、上記溶液をスクリーン印刷する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高く、半導体チップボンディング時のアライメントマークの認識を容易なものとする半導体チップ接合用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0039】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表1の組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料を攪拌混合し、半導体チップ接合用接着剤を調製した。
【0040】
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「1004AF」、ジャパンエポキシレジン社製)
ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名「YX−4000」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0041】
(反応可能な官能基を有する高分子化合物)
グリシジル基含有アクリル樹脂(商品名「G−2050M」、日油社製)
【0042】
(フェノール系硬化剤)
クレゾールノボラック型樹脂(水酸基当量117、商品名「KA−1160」、DIC社製)
BPAノボラック型樹脂(水酸基当量118、商品名「VH−4150」、DIC社製)
ビフェニルフェノールノボラック型樹脂(水酸基当量229、商品名「GPH−103」、日本化薬社製)
フェノールノボラック型樹脂(水酸基当量104、商品名「TD−2131」、DIC社製)
【0043】
(酸無水物系硬化剤)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0044】
(硬化促進剤)
2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール(商品名「TBZ」、四国化成工業社製)
2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(固形イミダゾール、商品名「2MAOK」、四国化成工業社製)
【0045】
(無機充填材)
シリカフィラー(商品名「SE−4000」、アドマテックス社製)
ガラスビーズ(商品名「UBS−0010E」、ユニチカ社製)
【0046】
(その他)
シランカップリング剤(商品名「KBM−573」、信越化学社製)
増粘剤(商品名「レオロシール MT−10」、トクヤマ社製)
【0047】
(評価)
実施例、比較例で得られた半導体チップ接合用接着剤について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(1)貯蔵安定性
半導体チップ接合用接着剤について、23℃において、E型粘度計(商品名「VISCOMETER TV−22」、TOKI SANGYO CO.LTD社製、使用ローターφ15mm)を用いて初期粘度η(Pa・s)及び調製後1週間経過時の粘度η(Pa・s)を測定した。
粘度ηが初期粘度ηの2倍に達していない場合を「○」、2倍に達している場合を「×」として貯蔵安定性を評価した。
【0049】
(2)ゲル化時間の測定
半導体チップ接合用接着剤約0.1mLをホットプレート上に滴下し、予め120℃、150℃及び200℃の各温度に設定したホットプレート上で温めておいたガラスを上から押しつけた。そのガラスが外れなくなるまでの時間をゲル化時間として測定した。
【0050】
(3)ヘーズ値の測定
半導体チップ接合用接着剤を厚さ70μmのフィルム状とし、ヘーズ測定を行った。
ヘーズ値が80未満の場合を「○」、80以上の場合を「×」として透明性を評価した。なお、ヘーズ閾値を80としたのは、フリップチップボンダー(澁谷工業社製、「DB100」)に搭載されているアライメント認識用カメラを用いてアライメントマークを認識できたのが、ヘーズ値80未満の場合であったためである。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、貯蔵安定性及び速硬化性に優れ、かつ、透明性が高く、半導体チップボンディング時のアライメントマークの認識を容易なものとする半導体チップ接合用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、水酸基当量が110以上のフェノール系硬化剤と、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールとを含有することを特徴とする半導体チップ接合用接着剤。
【請求項2】
請求項1記載の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造されることを特徴とする非導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1記載の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造されることを特徴とする非導電性フィルム。

【公開番号】特開2011−132430(P2011−132430A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295044(P2009−295044)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】