説明

半導体デバイスの成膜用ホルダ及び成膜用装置

【課題】成膜元素が半導体デバイスの反成膜源側端面に回り込むことを確実に防止する半導体デバイスの成膜用ホルダを提供する。
【解決手段】半導体デバイスの被成膜面を露出させ、半導体デバイスを保持するホルダ本体と、半導体デバイスの被成膜面を露出させた状態で、半導体デバイス及びホルダ本体の間に形成される間隙を半導体デバイスの被成膜源側から遮蔽する遮蔽体17とを備えた。これにより、成膜源3から間隙に向かう成膜元素16は、遮蔽体17に進行を遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスの成膜用ホルダ及び成膜用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザにおいては、光導波路の対向する両端面に反射膜を形成する必要がある。この反射膜は、成膜用ホルダに保持されたレーザバーの両端面に形成される。反射膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法がある。
【0003】
従来の成膜用ホルダにおいては、レーザバーの反成膜源側端面近傍を平板で覆っていた(例えば、特許文献1及び2参照)。即ち、成膜源と平板の間にレーザバーが配置される構成である。これにより、レーザバーの一方の端面に反射膜を形成している際に、成膜元素が、反成膜源側端面に回り込まないようにしていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−220390号公報
【特許文献2】特開2000−252580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の成膜用ホルダにおいては、成膜元素が、レーザバーと成膜用ホルダの間に形成される間隙を成膜源側から通過する。当該間隙を通過した成膜元素は、平板で反射する。そして、反射した成膜元素が、レーザバーの反成膜源側端面に回り込む。これにより、レーザバーの反成膜源側端面に予期せぬ被膜が形成されるという問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、成膜元素が半導体デバイスの反成膜源側端面に回り込むことを確実に防止する半導体デバイスの成膜用ホルダ及び成膜用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る半導体デバイスの成膜用ホルダは、半導体デバイスの被成膜面を露出させ、前記半導体デバイスを保持するホルダ本体と、前記半導体デバイスの前記被成膜面を露出させた状態で、前記半導体デバイス及び前記ホルダ本体の間に形成される間隙を前記半導体デバイスの前記被成膜源側から遮蔽する遮蔽体とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、半導体デバイスの被成膜面を露出させ、前記半導体デバイスを保持するホルダ本体と、前記半導体デバイスの前記被成膜面を露出させた状態で、前記半導体デバイス及び前記ホルダ本体の間に形成される間隙を前記半導体デバイスの前記被成膜源側から遮蔽する遮蔽体とを備える構成としたことで、成膜元素が半導体デバイスの反成膜源側端面に回り込むことを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置に、一般の成膜用ホルダを使用した場合を示した全体構成図である。図2はこの発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置に一般の成膜用ホルダを使用した場合を、成膜源側から見た平面図である。図3は一般の成膜用ホルダで半導体デバイスを保持した状態を示した正面図である。図4は図3のA−A線における横断面図である。図5は図3のB−B線における縦断面図である。図6はこの発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置の全体構成図である。図7はこの発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いた成膜用装置成膜源側から見た場合の平面図である。図8はこの発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダの横断面図であって、図4相当図である。図9は各成膜用ホルダを使用して成膜したときの半導体デバイス7の反成膜源側端面をオージェ電子分光分析した結果を示した図である。
【0011】
まず、図1及び図2を用いて、この発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置に、一般の成膜用ホルダを使用した場合を説明する。図1において、1は成膜室である。この成膜室1内の下方には、蒸着ルツボ2が設けられている。この蒸着ルツボ2には、成膜源3が入れられている。一方、成膜室1内の上方には、ホルダ支持体4が設けられている。通常、ホルダ支持体4は、成膜源3との距離が各箇所で略同距離となるドームで構成される。このホルダ支持体4は、成膜室1に対して回転可能となっている。
【0012】
さらに、ホルダ支持体4外面の所定箇所には、複数のホルダポケット5が設けられている。これらのホルダポケット5は、矩形凹部で構成される。また、これらのホルダポケット5の矩形凹部底面には、成膜源3側からホルダ支持体4外面側まで貫通する貫通穴が設けられている。そして、これらのホルダポケット5には、成膜用ホルダ6aが収納されている。これらの成膜用ホルダ6aには、複数の半導体デバイス7が保持されている。実施の形態1においては、半導体デバイス7とは、レーザバーのことである。これらの半導体デバイス7は、成膜すべき両端面の一方7aをホルダポケット5の貫通穴から成膜源3側に露出させている(図2参照)。なお、以下では、半導体デバイス7の成膜すべき端面を被成膜面ということにする。
【0013】
上記構成の半導体デバイス7の成膜用装置では、成膜源3から蒸発した成膜元素が、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aに付着する。これにより、半導体デバイス7の成膜が行われる。なお、半導体デバイス7の成膜を行う際には、ホルダ支持体4が回転される。これにより、成膜の均一性が図られる。
【0014】
次に、図3乃至図5を用いて、一般の成膜用ホルダ6aを説明する。成膜用ホルダ6aは、上部台座8a及び下部台座8bを備えている。これらの台座8a、8bは、互いに離れて配置されている。また、これらの台座8a、8bの両側部は、一対のフレーム9a、9bにより連結されている。このような構成の台座8a、8b及びフレーム9a、9bでホルダ本体10が構成される。
【0015】
さらに、上部台座8a表面のホルダ本体10中央側縁部には、段差が形成されている。一方、下部台座8b表面のホルダ本体10中央側縁部にも、段差が形成されている。そして、これらの段差底面には、複数の半導体デバイス7の上下端が載置されている。これらの段差により、半導体デバイス7は、ホルダ本体10に対して上下方向へ移動できないようになっている(図5参照)。
【0016】
さらに、半導体デバイス7の載置されたホルダ本体10表面側から、押さえ11a、11bが、それぞれ、上部台座8a、下部台座8bに固定されている。即ち、半導体デバイス7の上下端が、台座8a、8b及び押さえ11a、11bに挟持されている。この挟持により、半導体デバイス7は、ホルダ本体10に対してホルダ本体10表裏面方向へ移動できないようになっている(図5参照)。
【0017】
加えて、フレームの一方9aの中央部には、ネジ12がホルダ本体10外側から内側に向けて水平方向にねじ込まれている。一方、フレームの他方9bのホルダ本体10中央側側面には、ストッパ13が設けられている。そして、適宜、ネジ12のねじ込み量が調整される。このネジ12のねじ込み量の調整により、半導体デバイス7は、ネジ12及びストッパ13により挟持される。この挟持により、半導体デバイス7は、ホルダ本体10に対してネジ12のねじ込み方向と平行な水平方向へ移動できないようになっている(図3及び図4参照)。
【0018】
上述したように、半導体デバイス7は、3方向の移動が規制されている。これにより、半導体デバイス7は、ホルダ本体10内でばらつかないように保持されている。そして、半導体デバイス7は、ホルダ本体10から両被成膜面7a、7bを露出させている(図4及び図5参照)。このとき、一般に、ネジ12、ストッパ13等の構造の影響で、半導体デバイス7及びホルダ本体10の間に間隙14が形成される。この間隙14は、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7a側から他方7b側へ貫通するものである(図3参照)。
【0019】
上記構成の一般の成膜用ホルダ6aを用いて半導体デバイス7に成膜する場合、成膜元素は、成膜源3から間隙14に向かうものもある。当該成膜元素は、成膜源3側から間隙14を通過する。その後、成膜室1の天井で反射する。反射した成膜元素は、半導体デバイス7の反成膜源側端面に向かって進行するものもある。そして、当該成膜元素は、半導体デバイス7の反成膜源側端面に付着する。即ち、一般の成膜用ホルダ6aを用いた場合においては、成膜元素が、成膜室1の天井での一回の直接反射で半導体デバイス7の反成膜源側端面に到達して付着する場合もある。
【0020】
次に、この発明の実施の形態1における成膜用ホルダ6bを用いた場合を説明する。図6及び図7において、成膜用ホルダ6b以外の成膜室1等の成膜用装置は、一般の成膜用ホルダ6aを使用する場合と同様の構成である。以下、実施の形態1における成膜用ホルダ6bをより詳細に説明する。
【0021】
実施の形態1における成膜用ホルダ6bは、一般の成膜用ホルダ6aに第一及び第二の遮蔽体15a、15bを付加したものである(図8参照)。ここで、第一の遮蔽体15aは、両フレーム9a、9b表面に固定される一対の遮蔽板からなる。これらの遮蔽板は、ホルダ本体10と略同じ高さである。そして、これらの遮蔽板は、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7a側で両フレーム9a、9bからホルダ本体10中央側に突出している。かかる構成の第一の遮蔽体15aは、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aを露出した状態で、間隙14を半導体デバイス7の両端面の一方7a側から遮蔽している。
【0022】
第二の遮蔽体15bは、第一の遮蔽体15aと略対称的な配置構成である。即ち、第二の遮蔽体15bは、両フレーム9a、9b裏面に固定される一対の遮蔽板からなる。これらの遮蔽板は、ホルダ本体10と略同じ高さである。そして、これらの遮蔽板は、半導体デバイス7の両被成膜面の他方7b側で両フレーム9a、9bからホルダ本体10中央側に突出している。かかる構成の第二の遮蔽体15bは、半導体デバイス7の両被成膜面の他方7bを露出した状態で、間隙14を半導体デバイス7の両被成膜面の他方7b側から遮蔽している。
【0023】
次に、実施の形態1における半導体デバイス7の成膜手順について説明する。まず、成膜前の複数の半導体デバイス7が、成膜用ホルダ6bに保持される。そして、成膜用ホルダ6bが、ホルダ支持体4のホルダポケット5に収納される。このとき、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7a及び第一の遮蔽体15aが、ホルダポケット5の貫通穴から成膜源3側に露出される。
【0024】
この状態で、成膜源3が蒸発させられる。成膜源3から蒸発した成膜元素は、様々な航路で進行する。ある成膜元素(図示せず)は、成膜源3から半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aに向かう。この成膜元素は、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aに付着する。一方、別の成膜元素16は、成膜源3から間隙14に向かう。この別の成膜元素16は、第一の遮蔽体15aに進行を遮断される。そして、所定時間経過後、成膜源3の蒸発が停止される。
【0025】
その後、成膜用ホルダ6bが、ホルダポケット5から取り外される。そして、成膜用ホルダ6bが反転される。次いで、成膜用ホルダ6bがホルダポケット5に収納される。このとき、半導体デバイス7の両被成膜面の他方7b及び第二の遮蔽体15bが、ホルダポケット5の貫通穴から成膜源3側に露出される。この状態で、成膜源3が蒸発させられる。このとき、ある成膜元素(図示せず)は、成膜源3から半導体デバイス7の両被成膜面の他方7bに向かう。この成膜元素は、半導体デバイス7の両被成膜面の他方7bに付着する。
【0026】
一方、別の成膜元素(図示せず)は、成膜源3から間隙14に向かう。この別の成膜元素は、第二の遮蔽体15bに進行を遮断される。そして、所定時間経過後、成膜源3の蒸発が停止される。その後、成膜用ホルダ6bがホルダポケット5から取り出される。最後に、半導体デバイス7が成膜用ホルダ6bから取り外される。なお、実施の形態1における成膜用ホルダ6bを用いる場合、半導体デバイス7の反成膜源側端面を反成膜源側から、例えば、図17に示す別の遮蔽体で遮蔽してもよい。これにより、間隙14以外の航路を経由した成膜元素も遮断される。
【0027】
次に、図9を用いて、半導体デバイス7の反成膜源側端面への成膜元素の付着について、より詳細に説明する。図9は、各成膜用ホルダ6a、6bを使用して成膜したときの半導体デバイス7の反成膜源側端面をオージェ電子分光分析した結果である。当該結果は、砒化ガリウム(GaAs)結晶にアルミナ(Al)を成膜した場合の結果である。そして、当該結果により、半導体デバイス7の成膜用ホルダ6a、6b内の位置と、反成膜源側端面のGa元素の検出強度に対するAl元素の検出強度比との関係が示される。
【0028】
ここで、「カバーなし」とは、単純に、上述した一般の成膜用ホルダ6aのみを用いた場合の結果である。また、「背面のみカバーあり」とは、一般の成膜用ホルダ6aを用いて、かつ、上述した別の遮蔽体で半導体デバイス7の反成膜源側端面を反成膜源側から遮蔽した場合の結果である。そして、「両側カバーあり」とは、実施の形態1における成膜用ホルダ6bを用いて、かつ、別の遮蔽体で半導体デバイス7の反成膜源側端面を反成膜源側から遮蔽した場合の結果である。
【0029】
「背面のみカバーあり」の場合は、「カバーなし」の場合よりもAl元素の検出量が多い。これは、別の遮蔽体が半導体デバイス7の反成膜源側に近づくにつれ、間隙14を通過して反射する成膜元素の回り込み量が増大することによる。一方、「両側カバーあり」は、ほとんどAl元素が検出されない。これは、成膜源3から間隙14に向かう成膜元素が、第一又は第二の遮蔽体15a、15bに進行を遮断されることによる。なお、実施の形態1における成膜用ホルダ6bを用いた場合には、別の遮蔽体により、間隙14以外の航路を経由した成膜元素の回り込みもより確実に防止される。
【0030】
以上で説明した実施の形態1によれば、成膜源3から間隙14に向かう成膜元素は、第一又は第二の遮蔽体15a、15bに進行を遮断される。このため、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことはない。即ち、予期せぬ被膜が半導体デバイス7の反成膜源側端面に形成されることはない。従って、半導体レーザの反射膜の高精度反射率制御も可能となる。
【0031】
また、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aに成膜した後に両被成膜面の他方7bに成膜する場合は、成膜用ホルダ6bが反転される。即ち、半導体デバイス7を反転して成膜用ホルダ6bに保持し直す必要がない。このため、作業能率が良い。
【0032】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。図11はこの発明の実施の形態2における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。図12はこの発明の実施の形態2における半導体デバイスの成膜用装置の要部拡大図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
実施の形態1では、ホルダ本体10に第一及び第二の遮蔽体7a、7bが設けられていた。一方、実施の形態2では、ホルダポケット5に遮蔽体17が設けられている。ここで、実施の形態2におけるホルダポケット5は、実施の形態1と同様の構成である。このホルダポケット5の矩形凹部底面は、ホルダ支持体4内面よりも成膜源3側に配置されている。遮蔽体17は、当該矩形凹部を成膜源3側から覆うようにホルダポケット5に設けられている。
【0034】
この遮蔽体17は、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aを露出させた状態で、半導体デバイス7及びホルダ本体10の間に形成される間隙14を成膜源3側から遮蔽している。さらに、この遮蔽体17は、ホルダ本体10及びホルダポケット5の間に形成される間隙(図示せず)も成膜源3側から遮蔽している。
【0035】
次に、実施の形態2における半導体デバイス7の成膜手順について説明する。まず、成膜前の複数の半導体デバイス7が、一般的な成膜用ホルダ6aに保持される。そして、成膜用ホルダ6aが、ホルダ支持体4のホルダポケット5に収納される。このとき、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aが、ホルダポケット5の貫通穴から成膜源3側に露出される。この状態で、成膜源3が蒸発させられる。成膜源3から蒸発した成膜元素は、様々な航路で進行する。ある成膜元素(図示せず)は、成膜源3から半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aに向かう。この成膜元素は、半導体デバイス7の両被成膜面の一方7aに付着する。一方、別の成膜元素16は、成膜源3から間隙14に向かう。この別の成膜元素は、遮蔽体17に進行を遮断される。そして、所定時間経過後、成膜源3の蒸発が停止される。
【0036】
その後、成膜用ホルダ6aが、ホルダポケット5から取り外される。そして、成膜用ホルダ6aが反転される。次いで、成膜用ホルダ6aがホルダポケット5に収納される。このとき、半導体デバイス7の両被成膜面の他方7bがホルダポケット5の貫通穴から成膜源3側に露出される。この状態で、成膜源3が蒸発させられる。このとき、ある成膜元素は、成膜源3から半導体デバイス7の両被成膜面の他方7bに向かう。この成膜元素は、半導体デバイス7の両被成膜面の他方7bに付着する。一方、別の成膜元素16は、成膜源3から間隙14に向かう。この別の成膜元素は、遮蔽体17に進行を遮断される。そして、所定時間経過後、成膜源3の蒸発が停止される。その後、成膜用ホルダ6aがホルダポケット5から取り出される。そして、半導体デバイス7が成膜用ホルダ6aから取り外される。
【0037】
以上で説明した実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。さらに、遮蔽体17のみで、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことを防止できる。このため、遮蔽板17が安価となる。
【0038】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。図14はこの発明の実施の形態3における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。なお、実施の形態2と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
実施の形態3は、実施の形態2に、反射防止体18を追加したものである。この反射防止体18は、成膜室1の壁面に設けられる。この反射防止体18は、複数の羽根状反射防止板からなる。そして、これらの羽根状反射防止板は、成膜室1の壁面から成膜室1中央側へ向かって下降傾斜している。これらの羽根状反射防止板は、成膜源3近傍から成膜室1天井近傍に渡って鉛直方向に並んでいる。上記構成の反射防止体18は、成膜源3から到達した成膜元素が成膜室1の中央側へ反射することを防止するものである。特に、実施の形態3の反射防止体18は、成膜源3から成膜室1の壁面及びホルダ支持体4の間に形成される間隙19に到達した成膜元素が成膜室1の中央側へ反射することを防止する点を特徴としている。以下、反射防止体18の機能を説明する。
【0040】
成膜源3から蒸発する成膜元素の一部20は、間隙19に到達する。その後、これらの成膜元素は、成膜室1の壁面上部にあるいずれかの羽根状反射防止板の傾斜下面に到達する。この成膜元素の一部は、当該傾斜下面に付着する。残りの成膜元素は、当該傾斜下面で反射する。そして、反射した成膜元素は、前述の羽根状反射板の直下にある羽根状反射防止板の傾斜上面に到達する。この成膜元素の一部は、当該傾斜上面に付着する。残りの成膜元素は、当該傾斜上面で反射する。そして、反射した成膜元素は、再び、前述の羽根状反射板の傾斜下面に到達する。このように、成膜元素は、隣接する羽根状反射防止板の間で反射及び減衰を繰り返す。即ち、成膜源3から間隙19に到達した成膜元素は、最終的には、反射防止体18に付着する。
【0041】
以上で説明した実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の効果が得られる。さらに、反射防止体18は、成膜源3から隙間19に到達した成膜元素が成膜室1の中央側へ反射することを防止する。このため、成膜元素が成膜室1の壁面や天井で多段反射することを防止する。従って、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことをより確実に防止できる。なお、成膜元素が成膜室1の壁面や天井で多段反射することを防止する方法は、特に限定されない。例えば、成膜室1の壁面を水冷する方法でもよい。また、ホルダ支持体4の回転は維持される。このため、成膜の均一性は維持される。
【0042】
実施の形態4.
図15はこの発明の実施の形態4における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。図16はこの発明の実施の形態4における半導体デバイスの成膜用装置を反成膜源側から見た場合の平面図である。図17はこの発明の実施の形態4における半導体デバイスの成膜用装置の要部拡大図である。なお、実施の形態2と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
実施の形態4は、実施の形態2に、別の遮蔽体21を追加したものである。この別の遮蔽体は、半導体デバイス7の反成膜源側端面を、反成膜源3側から遮蔽するものである。実施の形態4では、成膜用ホルダ6aは、ホルダポケット5から反成膜源3側へ突出している。そして、別の遮蔽体21は、反成膜源3側から成膜用ホルダ6a全体を覆っている。このとき、別の遮蔽体21と半導体デバイス7の反成膜源側端面は密着していない。なお、別の遮蔽体21の形状は、特に限定されない。例えば、成膜用ホルダ6aがホルダポケット5の矩形凹部から突出しない場合は、平板状の別の遮蔽体21でホルダポケット5の矩形凹部を覆うようにしてもよい。また、別の遮蔽体21の固定方法は、特に限定されない。例えば、別の遮蔽体21をネジ止めでホルダポケット5に固定すればよい。
【0044】
以上で説明した実施の形態4によれば、実施の形態2と同様の効果が得られる。さらに、別の遮蔽体21が、半導体デバイス7の反成膜源側端面を反成膜源3側から遮蔽している。このため、成膜元素が成膜室1の壁面や天井で多段反射した場合でも、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことはない。また、実施の形態4では、実施の形態3のような大掛かりな反射防止体18は不要である。このため、既存の成膜用装置の改造及びその費用を最小限に抑えることができる。さらに、実施の形態3に比べ、成膜室1の壁面に付着した成膜元素を除去する際のクリーニング費用が安価となる。なお、別の遮蔽体21と半導体デバイス7の反成膜源側端面は密着していない。このため、異物が、半導体デバイス7の反成膜源側端面に付着することもない。また、ホルダ支持体4の回転は維持される。このため、成膜の均一性は維持される。
【0045】
実施の形態5.
図18はこの発明の実施の形態5における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。図19はこの発明の実施の形態5における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。なお、実施の形態2と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施の形態2においては、成膜室1の壁面及びホルダ支持体4周縁部の間には、間隙(図7の斜線部参照)が形成されていた。一方、実施の形態5では、成膜室1の壁面及びホルダ支持体22の間に形成される隙間を塞ぐホルダ支持体用遮蔽体23が設けられている(図18参照)。このホルダ支持体用遮蔽体23は、ホルダ支持体22周縁部からなる。そして、ホルダ支持体用遮蔽体23は、成膜室1の壁面に隙間を形成せずに固定的に接合されている。
【0047】
以上で説明した実施の形態5によれば、実施の形態2と同様の効果が得られる。さらに、成膜元素が、成膜源3側から成膜室1の壁面及びホルダ支持体22の間を通過することがない。このため、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことをより確実に防止できる。なお、実施の形態4と同様、実施の形態3のような大掛かりな反射防止体18は不要である。従って、実施の形態3に比べ、成膜室1の壁面に付着した成膜元素を除去する際のクリーニング費用が安価となる。
【0048】
実施の形態6.
図20はこの発明の実施の形態6における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。図21はこの発明の実施の形態6における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。なお、実施の形態5と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
実施の形態5においては、ホルダ支持体用遮蔽体23は、成膜室1の壁面と間隙を形成せずに固定的に接合されていた。一方、実施の形態6においては、ホルダ支持体24の鍔部が、上下方向からホルダ支持体用遮蔽体25により挟持されている。このホルダ支持体用遮蔽体25は、成膜室1の壁面に設けられている。そして、このホルダ支持体用遮蔽体25の内径は、ホルダ支持体24の鍔部外径よりも小さく形成されている。このため、成膜室1の壁面及びホルダ支持体24の間には、間隙が形成されない。そして、ホルダ支持体24は、ホルダ支持体用遮蔽体25により成膜室1に対して回転可能に支持されている。
【0050】
以上で説明した実施の形態6によれば、実施の形態5と同様の効果を得られる。なお、ホルダ支持体24の鍔部は、上下方向からホルダ支持体用遮蔽体25により挟持されている。このため、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことを確実に防止できる。なお、仮に、ホルダ支持体24の鍔部及びホルダ支持体用遮蔽体25の間に微小隙間ができるとしても、当該微小隙間は縦断面略コ字状に屈曲したものとなる。このため、ホルダ支持体24の鍔部下面に成膜室1中央側から鋭角に入射する成膜元素も、確実に半導体デバイス7の反成膜源側端面方向への進行を遮断される。さらに、ホルダ支持体24の回転は維持される。このため、成膜の均一性は維持される。
【0051】
なお、実施の形態1〜実施の形態6では、ホルダ支持体4等をドームとした場合で説明した。しかし、ホルダ支持体4等の形状は、特に限定されない。例えば、ホルダ支持体4を平板とし、適宜、ホルダポケット5を傾斜させる等してもよい。
【0052】
以上で説明したこの発明は、特に真空蒸着法により半導体デバイス7の両被成膜面7a、7bに成膜を行う場合に有効である。真空蒸着法による成膜用装置においては、指向性が高いとされ、成膜元素が半導体デバイス7の反成膜源側端面に回り込むことが考慮されていないことが多いからである。しかし、成膜方法は、特に限定されない。例えば、成膜源3をターゲット材として、スパッタリング法により半導体デバイス7の両被成膜面7a、7bに成膜を行う場合でも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置に、一般の成膜用ホルダを使用した場合を示した全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置に一般の成膜用ホルダを使用した場合を、成膜源側から見た平面図である。
【図3】一般の成膜用ホルダで半導体デバイスを保持した状態を示した正面図である。
【図4】図3のA−A線における横断面図である。
【図5】図3のB−B線における縦断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いる成膜用装置の全体構成図である。
【図7】この発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダを用いた成膜用装置成膜源側から見た場合の平面図である。
【図8】この発明の実施の形態1における半導体デバイスの成膜用ホルダの横断面図であって、図4相当図である。
【図9】各成膜用ホルダを使用して成膜したときの半導体デバイス7の反成膜源側端面をオージェ電子分光分析した結果を示した図である。
【図10】この発明の実施の形態2における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。
【図11】この発明の実施の形態2における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。
【図12】この発明の実施の形態2における半導体デバイスの成膜用装置の要部拡大図である。
【図13】この発明の実施の形態3における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。
【図14】この発明の実施の形態3における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。
【図15】この発明の実施の形態4における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。
【図16】この発明の実施の形態4における半導体デバイスの成膜用装置を反成膜源側から見た場合の平面図である。
【図17】この発明の実施の形態4における半導体デバイスの成膜用装置の要部拡大図である。
【図18】この発明の実施の形態5における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。
【図19】この発明の実施の形態5における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。
【図20】この発明の実施の形態6における半導体デバイスの成膜用装置の全体構成図である。
【図21】この発明の実施の形態6における半導体デバイスの成膜用装置を成膜源側から見た場合の平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 成膜室
2 蒸着ルツボ
3 成膜源
4 ホルダ支持体
5 ホルダポケット
6a、6b 成膜用ホルダ
7 半導体デバイス
7a、7b 被成膜面
8a 上部台座
8b 下部台座
9a、9b フレーム
10 ホルダ本体
11a、11b 押さえ
12 ネジ
13 ストッパ
14 間隙
15a 第一の遮蔽体
15b 第二の遮蔽体
16 別の成膜元素
17 遮蔽体
18 反射防止体
19 間隙
20 成膜元素の一部
21 別の遮蔽体
22 ホルダ支持体
23 ホルダ支持体用遮蔽体
24 ホルダ支持体
25 ホルダ支持体用遮蔽体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの被成膜面を露出させ、前記半導体デバイスを保持するホルダ本体と、
前記半導体デバイスの前記被成膜面を露出させた状態で、前記半導体デバイス及び前記ホルダ本体の間に形成される間隙を前記半導体デバイスの前記被成膜源側から遮蔽する遮蔽体と、
を備えたことを特徴とする半導体デバイスの成膜用ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体は、半導体デバイスの対向する両被成膜面を露出させ、
前記遮蔽体は、
前記半導体デバイスの前記両被成膜面の一方を露出させた状態で、前記半導体デバイス及び前記ホルダ本体の間に形成される間隙を前記半導体デバイスの前記両被成膜面の一方側から遮蔽する第一の遮蔽体と、
前記半導体デバイスの前記両被成膜面の他方を露出させた状態で、前記半導体デバイス及び前記ホルダ本体の間に形成される間隙を前記半導体デバイスの前記両被成膜面の他方側から遮蔽する第二の遮蔽体と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体デバイスの成膜用ホルダ。
【請求項3】
成膜室と、
前記成膜室内に設けられる成膜源と、
前記成膜室内に設けられるホルダ支持体と、
前記ホルダ支持体に支持され、半導体デバイスの被成膜面を前記成膜源側に露出させて前記半導体デバイスを保持するホルダ本体と、
前記半導体デバイスの前記被成膜面を露出させた状態で、前記半導体デバイス及び前記ホルダ本体の間に形成される間隙を前記成膜源側から遮蔽する遮蔽体と、
を備えたことを特徴とする半導体デバイスの成膜用装置。
【請求項4】
前記遮蔽体は、前記ホルダ支持体に設けられることを特徴とする請求項3記載の半導体デバイスの成膜用装置。
【請求項5】
前記ホルダ本体は、前記ホルダ支持体との間に間隙を形成し、
前記遮蔽体は、前記ホルダ支持体及び前記ホルダ本体の間に形成される前記間隙も前記成膜源側から遮蔽することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の半導体デバイスの成膜用装置。
【請求項6】
前記ホルダ支持体は、前記成膜室の壁面との間に間隙を形成し、
前記成膜源から前記成膜室の壁面及び前記ホルダ支持体の間に形成される前記間隙に到達した成膜元素が前記成膜室の中央側へ反射することを防止する反射防止体を備えたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の半導体デバイスの成膜用装置。
【請求項7】
前記半導体デバイスの前記被成膜面と反対側の端面を、前記成膜源の反対側から遮蔽する別の遮蔽体を備えたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の半導体デバイスの成膜用装置。
【請求項8】
前記ホルダ支持体は、前記成膜室の壁面との間に間隙を形成し、
前記成膜室の壁面及び前記ホルダ支持体の間に形成される前記間隙を遮蔽するホルダ支持体用遮蔽体を備えたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の半導体デバイスの成膜用装置。
【請求項9】
前記ホルダ支持体は、前記成膜室に対して回転可能に支持されることを特徴とする請求項3〜請求項8のいずれかに記載の半導体デバイスの成膜用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−76818(P2009−76818A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246716(P2007−246716)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】