説明

半導体用接着剤および半導体装置

【課題】作業性に優れ、反りが小さく十分な低応力性を有する樹脂組成物、該樹脂組成物をダイアタッチ材料として使用することで、高温リフロー、温度サイクル試験を行っても剥離が生じない高信頼性の半導体装置を提供する。
【解決手段】
グリシジル基を有する化合物(A)、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)およびリン原子含有化合物(C)とを含む半導体用接着剤であって、前記グリシジル基を有する化合物(A)が、下記成分(a)を該化合物(A)全重量に対して95重量%以上の割合で含有するものであることを特徴とする半導体用接着剤。
[成分(a):1分子中に含まれるグリシジル基の数が2である成分]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着剤および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高速化は著しく、多層配線部における配線抵抗と配線間の寄生容量に起因する信号伝搬速度の低下による伝送遅延が問題となってきている。こうした問題は、半導体デバイスの高集積化に伴う配線幅および配線間隔の微細化につれて配線抵抗が上昇しかつ寄生容量が増大するので、益々顕著となる傾向にある。そこで、配線抵抗および寄生容量の増大に基づく信号遅延を防止するために、従来のアルミニウム配線に代わり銅配線の導入が行われると共に、層間絶縁膜に比誘電率が二酸化シリコン膜の3.9より小さい低誘電率の絶縁膜の適用が行われている。特に設計基準が65nmから45nmへと構成素子の微細化が進む中で層間絶縁膜の比誘電率は2.0程度またはそれ以下の値が強く求められ、このために層間絶縁膜として膜内部の空孔率を高めることで比誘電率を小さくした多孔質絶縁膜が必要になってきている。
【0003】
このような多孔質絶縁膜は、その構造上一般的に機械的強度低下するという問題がある。すなわち従来の絶縁膜を使用した半導体素子に比較して外力による生じる内部ストレスに対して敏感なものとなり、これまで問題とされなかったストレスでも絶縁膜の破壊に至る場合がある。そこで半導体内部に発生するストレスを少なくするために、封止材料、ダイアタッチ材料などの半導体構成材料として低応力化可能なのものが要求されるとともに、半導体生産プロセスの見直しも行われている。
【0004】
半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板)、BT基板(シアネートモノマーおよびそのオリゴマーとビスマレイミドとからなるBTレジン使用基板)、ポリイミドフィルムなどの有機基板といった支持体に接着するダイアタッチプロセスにおいてはダイアタッチ後に半導体素子と支持体との熱膨張率が異なることに基づく反りが発生するが、過度の反りは層間絶縁膜のダメージの原因となるため、反りの発生しにくいダイアタッチ材料が求められている。
【0005】
一方、環境対応の一環として半導体製品からの鉛撤廃が進められている中、基板実装時に使用する半田も鉛フリー半田が使用されるため、錫−鉛半田の場合よりリフロー温度を高くする必要がある。高温でのリフロー処理は半導体パッケージ内部のストレスを増加させるため、リフロー中に半導体製品中に部材間(例えば半導体素子/封止材,半導体素子/ダイアタッチ層,ダイアタッチ層/ソルダーレジスト(基板表面),基板内部(ソルダーレジスト/銅トレース),リードフレーム/ダイアタッチ層,リードフレーム/封止材等)の剥離ひいては封止材のクラックが発生しやすくなる。この点からもダイアタッチ材料として上記のような剥離が生じにくい好適な低応力性を有する材料が望まれている。
【0006】
この様な要求を受け、これまでも
(1)液状の低応力剤を添加する方法(例えば、特許文献1参照)、
(2)固形の低応力剤を添加する方法(例えば、特許文献2参照)、
(3)架橋密度を低下させる方法(例えば、特許文献3参照)、
(4)樹脂骨格に柔軟構造を導入する方法(例えば、特許文献4参照)、
(5)低ガラス転移温度(Tg)のポリマーを添加する方法(例えば、特許文献5参照)などが検討されてきたが、例えば(1)の方法では液状の低応力剤自体が高粘度であるため十分な低弾性率化効果を得ることが可能な配合量添加すると高粘度で扱いにくくなる傾向にあり、(2)の方法では液状樹脂組成物中の固形分の割合が増えるため高粘度で扱いにくくなる傾向にあり、(3)の方法では高温での強度などの機械特性が悪化する傾向にあり、(4)の方法では柔軟骨格を導入した樹脂の粘度が高いため液状樹脂組成物も高粘度で扱いにくくなる傾向にあり、(5)の方法では溶剤を使用しなければ液状樹脂組成物を得ることができず、溶剤は液状樹脂組成物硬化中に揮発する必要があるので反りが問題となるようなチップサイズ(チップサイズが小さい場合にはほとんど反りは問題とならない)には不適であるなどの欠点も残されている。
このように作業性に優れ、反りが小さく十分な低応力性を有する樹脂組成物がダイアタッチ材料として望まれているが、十分に満足するものはなかった。
一方、ダイアタッチフィルムであれば,低応力材を添加しても作業性への影響は少なく,反りの発生しにくいダイアタッチ材として有用であるが,有機基板などへ半導体素子を接着する際、有機基板内の配線の有無に由来する基板表面の凹凸への埋込み性が悪く,ボイドの原因となってしまう欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−120914号公報
【0008】
【特許文献2】特開2003−347322号公報
【0009】
【特許文献3】特開平06−084974号公報
【0010】
【特許文献4】特開平08−176409号公報
【0011】
【特許文献5】特開2005−154687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、作業性に優れ、反りが小さく十分な低応力性を有する樹脂組成物、該樹脂組成物をダイアタッチ材料として使用することで、高温リフロー、温度サイクル試験を行っても剥離が生じない高信頼性の半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記[1]〜[6]に記載の本発明により達成される。
[1]グリシジル基を有する化合物(A)、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)およびリン原子含有化合物(C)とを含む半導体用接着剤であって、前記グリシジル基を有する化合物(A)が、下記成分(a)を該化合物(A)全重量に対して95重量%以上の割合で含有するものであることを特徴とする半導体用接着剤。
[成分(a):1分子中に含まれるグリシジル基の数が2である成分]
【0014】
[2]前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)中、下記成分(b1)の割合が50重量%以上90重量%以下,下記成分(b2)の割合が10重量%以上50重量%未満である前記[1]記載の半導体用接着剤。
[成分(b1):1分子中に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が2である成分]
[成分(b2):1分子中に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上である成分]
【0015】
[3]前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)のグリシジル基と反応可能な官能基がカルボキシル基、フェノール性水酸基、アミノ基からなる群より選らばれる少なくとも1つである前記[1]または[2]記載の半導体用接着剤。
【0016】
[4]分子量5000以上の有機化合物の含有量が、半導体用接着剤全重量に対して上限10重量%以下である前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0017】
[5]前記グリシジル基を有する化合物(A)に含まれるグリシジル基の数pと、前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数qと化合物(C)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数rが下記条件式1を満たす前記[1]記載の半導体用接着剤。
[条件式1:0.9≦p/(q+r)≦1.2]
【0018】
[6]ダイアタッチ材を介して支持体上に半導体素子を載置して得られる半導体装置であって、前記ダイアタッチ材が前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の半導体用接着剤であることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体用接着剤は、作業性に優れ、反りが小さく十分な低応力性を有するため、ダイアタッチ材料として用いることで高温リフロー、温度サイクル試験を行っても剥離が生じない信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の半導体用接着剤は、グリシジル基を有する化合物(A)、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)およびリン原子含有化合物(C)を含み、前記グリシジル基を有する化合物(A)中、1分子内に含まれるグリシジル基の数が2である成分の割合が95%以上であることを特徴とし、当該特徴により作業性に優れ、反りが小さく十分な低応力性を有するものとなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
(グリシジル基を有する化合物(A))
本発明に係る半導体用接着剤は、グリシジル基を有する化合物(A)を含み、該化合物(A)は、グリシジル基の数が2である成分(a)を該化合物(A)全重量に対して95重量%以上の割合で含有する。
【0022】
前記化合物(A)の成分(a)を含有する割合が95重量%以上であることにより化合物(B)と反応して直鎖状構造となる割合が高くなり,低応力性を有する硬化物が得られる。一方、1分子内に含まれるグリシジル基の数が2より大きい成分が過剰な場合、3次元架橋部分が増加し、反りが小さく十分な低応力性を有する硬化物を得る事が出来ない。また、1分子内に含まれるグリシジル基の数が2より小さい成分が過剰な場合、化合物(B)との停止反応の割合が高くなり,充分に分子が成長せず,凝集力が低い硬化物となり好ましくない。
【0023】
ここで、成分(a)の割合は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、RI検出器で検出した全ピーク面積のうち、1分子内に含まれるグリシジル基の数が2である成分のピーク面積の割合とした。
【0024】
本発明に用いるグリシジル基を有する化合物(A)は、1分子中に含まれるグリシジル基の数が2である成分(a)を化合物(A)全重量に対して95重量%以上の割合で含有するものであることが好ましい。成分(a)を上記範囲以上含有することにより、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)との重合体がほぼ直鎖状となる。このような化合物(A)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、2官能グリシジル変性アクリル樹脂、2官能グリシジル変性ポリブタジエンなどのような2官能グリシジル変性熱可塑性樹脂などが挙げられる。このなかでも特に硬化物の凝集力の観点からはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体が好ましい。
【0025】
(グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B))
本発明に係る半導体用接着剤は、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)を含む。化合物(B)は化合物(A)と反応し,低応力性を有する半導体用接着剤を得ることができる。ここでグリシジル基と反応可能可能な官能基とはカルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、酸無水物などが挙げられるが特に化合物(A)との反応性を高める,長期保存性という観点ではカルボキシル基、フェノール性水酸基、アミノ基であることが好ましい。カルボキシル基を有する化合物としては、各種フタル酸,ダイマー酸,トリメリット酸,シクロヘキサンジカルボン酸,カルボキシル基末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類およびその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類およびその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのものおよびその誘導体などが挙げられる。アミノ基を有する化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物などが挙げられる。なおこれらの中でも長期保存性と熱時硬化性とを両立させるという観点からフェノール性水酸基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0026】
また、前記化合物(B)には、1分子中にグリシジル基と反応可能な官能基の数が2である成分が(b1)が化合物(B)全重量に対して50重量%以上90重量%以下であることが好ましい。これにより化合物(A)と反応して直鎖状構造となる割合が高くなり,低応力性を有する硬化物が得られる。また,1分子中にグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上である成分が(b2)が化合物(B)全重量に対して10重量%以上50重量%未満であることが好ましい。これにより,一部で3次元架橋出来て,適度な凝集力を持たせることが出来る.1分子内に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上の成分(b2)が50重量%以上の場合、3次元架橋部分が増加し、反りが大きく十分な低応力性を有する硬化物を得る事が出来ない。また、1分子内に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上の成分(b2)が10重量%未満の場合、十分な架橋構造が得られず、凝集力が低い半導体用接着剤となり好ましくない.
【0027】
ここで、成分(b1)の割合は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、RI検出器で検出した全ピーク面積のうち、1分子内に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が2である成分のピーク面積の割合とした。成分(b2)の割合も同様の測定により、1分子内に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上である成分のピーク面積の割合とした。
【0028】
(化合物(C))
本発明に係る半導体用接着剤は、リン原子含有化合物(C)を含む。リン原子含有化合物(C)は,グリシジル基を有する化合物(A)の硬化促進剤として働き,保存安定性にも優れる。
【0029】
リン原子含有化合物(C)の具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等が挙げられる.長期保存性と熱時硬化性とを両立させるという観点からテトラ置換ホスホニウム化合物を用いることが好ましい.
【0030】
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0031】
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物等が挙げられる。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、Pはリン原子を表す。R1、R2、R3及びR4は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X1は、基Y1及びY2と結合する有機基である。式中X2は、基Y3及びY4と結合する有機基である。Y1及びY2は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y1及びY2が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y3及びY4はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y3及びY4が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X1、及びX2は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y1、Y2、Y3、及びY4は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0032】
一般式(2)において、R5、R6、R7及びR8としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0033】
また、一般式(2)において、X1は、Y1及びY2と結合する有機基である。同様に、X2は、基Y3及びY4と結合する有機基である。Y1及びY2はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y1及びY2が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY3及びY4はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y3及びY4が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X1及びX2は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y1、Y2、Y3、及びY4は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(2)中の−Y1−X1−Y2−、及び−Y3−X2−Y4−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0034】
また、一般式(2)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0035】
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、Pはリン原子を表す。R9、R10、R11及びR12は芳香族基又はアルキル基を表す。Bはホウ素原子を表す。R13、R14、R15及びR16は有機基を表す。)
【0036】
ホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】

(ただし、上記一般式(14)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。fは0〜5の整数であり、gは0〜3の整数である。)
【0037】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】

(ただし、上記一般式(5)において、Pはリン原子を表す。R17、R18及びR19は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R20、R21及びR22は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R20とR21が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0038】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0039】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0040】
(化合物(A)(B)(C)の官能基の数について)
上述の通り本発明に係る樹脂組成物は、成分(a)を所定の割合で含有するグリシジル基を有する化合物(A)とグリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)と化合物(C)を含むが、化合物(A)に含まれるグリシジル基の数をp、化合物(B)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数をq,化合物(C)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数をrとした場合、硬化物の凝集力を向上させるという観点、および硬化物の反り低減という観点から以下の関係式1を満たすものであることが好ましい。
関係式1:0.9≦p/(q+r)≦1.2
【0041】
各官能基の数がp/(q+r)≧0.9の関係となることにより樹脂組成物硬化後の凝集力が好適なものとなり、p/(q+r)≦1.2となることにより硬化物の弾性率が過度に高くなることを抑え硬化物の反りを抑制することができる。
【0042】
(その他の配合成分)
本発明に係る半導体用接着剤には、グリシジル基を有する化合物(A)、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B),リン原子含有化合物(C)を必須成分とするものであるが、リン原子含有化合物(C)以外のグリシジル基を有する化合物(A)の硬化促進剤、充填材、グリシジル基を有する化合物(A)以外の熱硬化性樹脂等を任意の割合で併用しても構わない。また、硬化物の耐リフロー性を向上させるためにはシアネート樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0043】
前記リン原子含有化合物(C)以外のグリシジル基を有する化合物(A)の硬化促進剤としては、イミダゾール類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物およびその塩類などが挙げられる。
【0044】
本発明に用いることができる充填材としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉などの金属粉、アルミナ粉末、チタニア粉末、アルミニウムナイトライド粉末、ボロンナイトライド粉末、シリカ粉末などのセラミック粉末、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサン粉末などの高分子粉末を使用することが可能である。特に導電性、熱伝導性が要求される場合には銀粉を使用することが好ましく、通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉などが入手可能である。電子材料用以外の銀粉ではイオン性不純物の量が多い場合があるので注意が必要である。
【0045】
前記充填材は、平均粒径が1μm以上30μm以下であることが好ましい。前記下限値以上であることにより樹脂組成物の粘度上昇を抑え好適な作業性を得ることができる。
また例えばダイアタッチ材として半導体用接着剤を使用する際には、ノズルを使用して半導体用接着剤を吐出することがあり、このような場合には充填材の粒径を前記上限値以下とすることによりノズルのつまりを防ぐことができる。
【0046】
また、本発明に用いることができる充填材の形状はフレーク状、球状など特に限定されないが、例えば、銀粉の場合は保存性や作業性を向上させる点からはフレーク状のものを用いることが好ましい。
【0047】
本発明において充填材の配合量は、目的に応じて適宜調整することが可能であるが、例えば銀粉を用いる場合は、通常樹脂組成物中に70重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより好適な導電性を得ることが可能となり、前記上限値以下とすることにより作業上好適な粘度とすることができる。
【0048】
本発明に係る半導体用接着剤は、必要に応じて熱硬化性樹脂を併用することができる。熱硬化性樹脂としては、加熱により3次元的網目構造を形成する一般的な熱硬化性樹脂である。この熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではないが、液状樹脂組成物を形成する材料であることが好ましく、室温で液状であることが望ましい。例えば、シアネート樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0049】
前記シアネート樹脂とは、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0050】
前記シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
また、シアネート樹脂は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0051】
前記ラジカル重合性のアクリル樹脂とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。(メタ)アクリロイル基は分子内に1つ以上有する必要があるが、2つ以上含まれていることが好ましく、具体的にはアクリル樹脂は分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体で(メタ)アクリル基を有する化合物が
挙げられる。
【0052】
前記ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0053】
前記ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0054】
前記ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0055】
前記ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。これら共重合体とカルボキシ基と反応する場合には水酸基を有するアクリレート、水酸基と反応する場合には(メタ)アクリル酸またはその誘導体を反応することにより得ることが可能である。
【0056】
前記ポリブタジエンとしては、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応、水酸基を有するポリブタジエンと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能であり、また無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることも可能である。
【0057】
前記ブタジエンアクリロニトリル共重合体としては、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることが可能である。
【0058】
前記マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
【0059】
また本発明に係る半導体用接着剤には、必要により以下に示す化合物を併用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0060】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0061】
さらに本発明に係る半導体用接着剤には重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験における分解開始温度(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。
【0062】
前記分解開始温度を満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。また、上記のラジカル重合性のアクリル樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0063】
本発明の半導体用接着剤には、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。その他の添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などであり、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0064】
また、作業性を調整する目的で、溶剤を使用しても構わない。溶剤としては、例えば、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、エチレングリコールモノ酪酸エステル、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチルグリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、サリチル酸メチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタートなどが挙げられる。なかでも特に好ましい溶剤は、沸点が210℃以上250℃以下のものであり、特に好ましいものは、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、エチレングリコールモノ酪酸エステル、炭酸プロピレン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチルグリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、サリチル酸メチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタートなどである。
【0065】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の半導体用接着剤は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0066】
(樹脂組成物の使用方法)
本発明に係る半導体用接着剤は、接着剤として使用可能であるが、より具体的な例としてはダイアタッチ材として半導体装置の製造に用いることが挙げられる。この場合公知の方法により本発明に係る半導体用接着剤を用いることができるが、以下本発明の半導体用接着剤を用いた場合の具体的な半導体装置の製造例を述べる。
【0067】
(半導体装置の製造方法)
市販のダイボンダーを用いて、リードフレームや基板などの支持体の所定の部位に本発明の半導体用接着剤を導電性ペーストとしてディスペンス塗布した後、チップなどの半導体素子をマウントし、加熱硬化することができる。ここで、支持体としては、リードフレームや有機基板、フレキシブル基板などのプリント基板であり、有機基板に半導体素子を搭載し、金線により電気的接続を行うものであるが、半導体素子を搭載する支持基板としては半導体素子自体やその他のものであっても構わない。また、半導体素子を搭載する支持体上に印刷して使用したり、半導体用接着剤を半導体ウエハに印刷し、その後半導体素子に切断したものを支持体に搭載して使用することもできる。液状樹脂組成物の印刷方法としてはスクリーン印刷、ステンシル印刷などが可能であるが、表面の平滑性の観点からステンシルマスクを使ったステンシル印刷法により印刷(塗布)されることが好ましい。ステンシル印刷法は公知の方法にて行うことが可能である。その後、ワイヤーボンディングし、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を作製する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に導電性ペーストをディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどといった使用方法も可能である。
【実施例】
【0068】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。配合割合は重量部で示す。
【0069】
[実施例1]
1分子内に含まれるグリシジル基の数が2である成分の割合が95%以上であるグリシジル基を有する化合物(A)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製,YDF870GS,エポキシ当量約160,1分子内に含まれるグリシジル基の数が2である成分の割合95重量%,以下化合物A1)を、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)としてビスフェノールF(DIC(株)製,DIC−BPF,水酸基当量約100,1分子内に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が2である成分(以下b1成分)の割合89重量%、1分子内に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上である成分(以下b2成分)の割合11重量%、以下化合物B1)を、化合物(C)としてテトラフェニルフォスフォニウム 4,4‘−スルフォニルジフェノラート(住友ベークライト(株)製,C03−MB,水酸基当量約238、以下化合物C1)を用いた。(実施例1に用いたグリシジル基を有する化合物(A)に含まれるグリシジル基の数pと、前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数qと化合物(C)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数rとの比p/(q+r)は表1に示す。(以下実施例2〜6および比較例において同じ))。
【0070】
カップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503P,以下カップリング剤1)を,充填材として平均粒径8μm、最大粒径30μmのフレーク状銀粉(以下銀粉)を用いた。上記原料を表1に示す配合割合に従い混合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡することで樹脂組成物を得た。ここで表1中の配合比率は重量部である。
【0071】
[実施例2〜6]
実施例1以外の化合物としては、以下の化合物を使用した。
グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)としてフェノール・キシリレン樹脂(明和化成(株)製、MEH−7800SS、水酸基当量約175、b1成分の割合24重量%、b2成分の割合76重量%以下化合物B2)、硬化促進剤としてイミダゾール(四国化成工業(株)製、2P4MHZ、以下硬化促進剤1)、メタクリル末端オリゴマー(宇部興産(株)製,UM90(1/3)DM,以下メタクリレート1)、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、1.6HX、以下メタクリレート2)、ラジカル開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解温度:126℃、以下ラジカル開始剤1),充填材として平均粒径0.6μm,比表面積5.0m/gのアモルファスシリカ(以下シリカ)、低応力剤としてフェノキシ樹脂(東都化成(株)製,YP−50U,重量平均分子量40000−45000,以下フェノキシ樹脂1)。
これらの中から選択した化合物を表1のように配合し、実施例1と同様に3本ロールを用いて混練し、脱泡することで樹脂組成物を得た。配合割合は重量部である。得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1〜3]
表1に示す割合で配合し実施例1と同様に樹脂組成物を得た。
実施例以外の化合物としては、以下の化合物を使用した。
グリシジル基を有する化合物としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製,SB−403S,エポキシ当量約165,1分子内に含まれるグリシジル基の数が2である成分の割合75%,以下化合物A2)。
得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0073】
評価方法
粘度:E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、2.5rpmでの値を樹脂組成物作製直後に測定した。作製直後の粘度が10〜50Pa・sの範囲内の場合を合格とした。(表1で合格は○,不合格は×と表記した。)
【0074】
チップ反り:実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて、10×10mm(厚さ200μm)のシリコンチップを有機基板(基板:住友ベークライト(株)製 ELC−4781を用いて、ソルダーレジスト:太陽インキ製造(株)製 PSR−4000−AUS308で被覆した。)にマウントし、さらに175℃オーブン中15分硬化することにより試験用半導体装置を得た。得られた半導体装置について非接触レーザー表面粗さ計を用いて25℃でのチップ表面反りを測定した。反りは,10×10mmの対角をゼロとしたときの最大値で表し,20μm以下を合格とした。(表1で合格は○,不合格は×と表記した。)
【0075】
耐リフロー性:実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて下記のリードフレームにシリコンチップをマウントしオーブン中175℃30分間硬化し接着した。マウントはダイボンダー(ASM社製)を用い、樹脂組成物塗布直後に塗布厚みが約25μmになるように調整して行った。樹脂組成物硬化後のリードフレームを封止材料(スミコンEME−G700H、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を85℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。剥離面積の単位は%である。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。(表1で合格は○,不合格は×と表記した。)
半導体装置:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:銀メッキした銅フレーム(被着部分が銀メッキ)
チップサイズ:6×6mm
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかであるように実施例1〜6に示す樹脂組成物は,粘度が目標範囲内であり、作業性に優れるもので、チップ反りも小さく、良好な耐リフロー性を示すことが確認できた。これに対し本発明を逸脱する比較例1〜3に示す樹脂組成物は、粘度は良好であるが、弾性率が高くなりチップ反りが不合格となった.更に耐リフロー性においても剥離が大量に発生し不合格となった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る樹脂組成物は、作業性に優れ、反りが小さく十分な低応力性を有するため、ダイアタッチ材料として用いることで高温リフロー、温度サイクル試験を行っても剥離が生じない信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシジル基を有する化合物(A)、グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)およびリン原子含有化合物(C)とを含む半導体用接着剤であって、
前記グリシジル基を有する化合物(A)が、下記成分(a)を該化合物(A)全重量に対して95重量%以上の割合で含有するものであることを特徴とする半導体用接着剤。
[成分(a):1分子中に含まれるグリシジル基の数が2である成分]
【請求項2】
前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)中、下記成分(b1)の割合が50重量%以上90重量%以下,下記成分(b2)の割合が10重量%以上50重量%未満である請求項1記載の半導体用接着剤。
[成分(b1):1分子中に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が2である成分]
[成分(b2):1分子中に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数が3以上である成分]
【請求項3】
前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)のグリシジル基と反応可能な官能基がカルボキシル基、フェノール性水酸基、アミノ基からなる群より選らばれる少なくとも1つである請求項1または2記載の半導体用接着剤。
【請求項4】
分子量5000以上の有機化合物の含有量が、半導体用接着剤全重量に対して上限10重量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体用接着剤。
【請求項5】
前記グリシジル基を有する化合物(A)に含まれるグリシジル基の数pと、
前記グリシジル基と反応可能な官能基を有する化合物(B)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数qと化合物(C)に含まれるグリシジル基と反応可能な官能基の数rが下記条件式1を満たす請求項1記載の半導体用接着剤。
[条件式1:0.9≦p/(q+r)≦1.2]
【請求項6】
ダイアタッチ材を介して支持体上に半導体素子を載置して得られる半導体装置であって、前記ダイアタッチ材が請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体用接着剤であることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2011−204917(P2011−204917A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70928(P2010−70928)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】