説明

半導体素子及びその製造方法

【課題】半導体素子を提供する。
【解決手段】3次元構造の表面形態を持ち、非極性窒化物半導体で形成された第1非平坦非極性窒化物半導体層;第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に形成されたものであって、複数の固体粒子で形成された第1構造物層;第1非平坦非極性窒化物半導体層及び第1構造物層上に形成された第1非極性窒化物半導体層;を含む半導体素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光抽出効率が改善されるように非極性面を用いて形成される半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種接合半導体薄膜構造で成長した半導体物質は、半導体の格子定数あるいはバンドギャップを調節して光学的、電気的素子として利用できるという側面で産業的効用性がある。その例として、窒化物半導体は、熱的、化学的に安定して直接転移型の広いバンドギャップを持つので、異種接合トランジスタ(HBT)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、金属電界効果トランジスタ(MESFET)などの電子素子材料と、短い波長帯の光を発生させるレーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)などの発光素子材料として活用されている。特に青色または緑色などの短波長光を生成する窒化物半導体物質系のLEDは、総天然色の実現を可能にする高出力光素子であり、関連技術分野で評判になっている。
【0003】
現在c面のサファイア基板に極性(0001)c面方向の窒化物薄膜を形成することが商用化された技術であるが、この極性(0001)c面方向の窒化物薄膜では、内部電場による量子閉じ込めシュタルク効果(quantum−confined Stark effect;QCSE)が発生して、内部量子効率には限界がある。これらの問題を解決するために、非極性窒化物光素子を成長させて量子効率を極大化することが、代案として提案されている。
【0004】
サファイア基板やSiC基板などの異種基板を用いた非極性GaNエピ層の場合、現在までに1010/cmほどの貫通転位密度と、10/cmの非常に高い積層欠陥(basal stacking faults、BSF)密度を持つことが知られている。これらの欠陥密度は、現在極性c面GaN成長時のエピ層欠陥密度と比較して数十〜数百倍高い数値であり、これら欠陥が非発光中心に作用して量子効率を結果的に低減させる。
【0005】
欠陥密度を低減させるために、厚いサファイア基板を使用するか、またはELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)や中間層挿入などの技術を利用する研究が進んでいるが、工程の複雑さによる手間の増大で商業的な生産に適用し難く、したがって、高品質の非極性GaNエピ層を、簡素化した工程で再現性のあるように商業化する方案が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板と格子定数や熱膨張係数の異なる異種非極性窒化物半導体物質のエピ成長で、薄膜の表面を平坦に維持しつつ欠陥密度を低減させると同時に、基板と薄膜内部の応力による反りを低減させて光抽出効率を高めることができる半導体薄膜構造及びその形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一類型による半導体素子は、3次元構造の表面形態を持ち、非極性窒化物半導体で形成された第1非平坦非極性窒化物半導体層;前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に形成されたものであって、複数の固体粒子で形成された第1構造物層;前記第1非平坦非極性窒化物半導体層及び前記第1構造物層上に形成された第1非極性窒化物半導体層;を含む。
【0008】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面には複数の引込み部が形成されており、前記第1構造物層の複数の固体粒子は前記複数の引込み部内に配置される。
【0009】
本発明の一類型による半導体素子は、前記第1非極性窒化物半導体層上に形成されたものであって、3次元構造の表面形態を持ち、非極性化合物半導体で形成された第2非平坦非極性窒化物半導体層;前記第2非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に形成されたものであって、複数の固体粒子で形成された第2構造物層;前記第2非平坦非極性窒化物半導体層及び前記第2構造物層上に形成された第2非極性窒化物半導体層;をさらに備える。
【0010】
前記第2非平坦非極性窒化物半導体層の表面には複数の引込み部が形成されており、前記第2構造物層の複数の固体粒子は前記複数の引込み部内に配置される。
【0011】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面に形成された複数の引込み部と、前記第2非平坦非極性窒化物半導体層の表面に形成された複数の引込み部とは、互いにずれて配置されている。
【0012】
前記第1構造物層の複数の固体粒子と、前記第2構造物層の複数の固体粒子とは、サイズまたは形状が相異なって構成される。
【0013】
前記固体粒子は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)−ジルコニア、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)のうち少なくともいずれか一つを含んでなる。
【0014】
前記第1構造物層の固体粒子は、球形または多面体形状を持ち、前記固体粒子の屈折率は、前記第1非極性窒化物半導体層の屈折率と異なる値を持つ。
【0015】
前記第1構造物層の固体粒子は、球形シェルまたは多面体シェル形状を持ち、前記シェルの厚さは、前記固体粒子の半径の3%〜50%範囲の値を持つ。
【0016】
前記シェルの内部にはガスがトラップされており、前記固体粒子は、第1非極性窒化物半導体層の屈折率と同じ値または異なる値を持つ。
【0017】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の下部に基板がさらに備えられる。
【0018】
前記基板は、Al、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、InP、GaN、InAs、GaPまたはGaSbのうちいずれか一つを含む材質からなる。
【0019】
前記基板と前記第1非平坦非極性窒化物半導体層との間にバッファ層がさらに備えられる。
【0020】
また、本発明の一類型による半導体素子の製造方法は、基板を用意する段階;前記基板上に3次元構造の表面形態を持ち、非極性半導体で形成された第1非平坦非極性窒化物半導体層を形成する段階;前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に、複数の固体粒子で形成された第1構造物層を形成する段階;前記第1非平坦非極性窒化物半導体層及び前記第1構造物層上に第1非極性窒化物半導体層を形成する段階;を含む。
【0021】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層を形成する段階は、前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面が複数の引込み部を備える形態で形成する。
【0022】
前記第1構造物層を形成する段階は、前記第1構造物層の複数の固体粒子を前記複数の引込み部内のみに配置させる。
【0023】
前記第1非極性窒化物半導体層を形成する段階は、前記第1構造物層をマスクとして使用して、前記第1非平坦非極性窒化物半導体層からの側面過成長(Epitaxial Lateral Overgrowth、ELO)を誘導する。
【0024】
前記基板と前記第1非平坦非極性窒化物半導体層との間にバッファ層を形成する段階をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態による半導体素子の概略的な構成を示す断面図である。
【図2】図1の半導体素子に採用できる変形例による固体粒子を示す図面である。
【図3】本発明の他の実施形態による半導体素子の概略的な構成を示す断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態による半導体素子の概略的な構成を示す断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態による半導体素子の概略的な構成を示す断面図である。
【図6A】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6B】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6C】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6D】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6E】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6F】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6G】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【図6H】本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態の構成と作用を詳細に説明する。以下の図面で同じ参照符号は同じ構成要素を称し、図面上で各構成要素のサイズは、説明の明瞭性及び便宜性のため誇張している。
【0027】
図1は、本発明の実施形態による半導体素子100の概略的な構成を示す断面図であり、図2は、図1の半導体素子100に採用できる変形例による固体粒子141’を示す。
【0028】
図1を参照すれば、半導体素子100は3次元構造の表面形態を持ち、非極性窒化物半導体で形成された第1非平坦非極性窒化物半導体層130、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面の少なくとも一部上に形成されたものであって、複数の固体粒子141で形成された第1構造物層140、第1非平坦非極性窒化物半導体層130及び第1構造物層140上に形成された第1非極性窒化物半導体層150を備える。
【0029】
本発明の実施形態で、非極性窒化物は、内部電場による分極現象を低減させ、かつ量子効率を極大化させるために提示されるものである。一般的に極性(0001)c面方向に窒化物を形成する場合、内部電場による量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum−Confined Stark Effect;QCSE)が発生して内部量子効率が限界を持つことが知られている。これを克服するために、例えば、GaNエピ層の方向が非極性面、例えば、{1−100}であるm面または{11−20}であるa面でエピ成長した非極性GaNを利用する場合、GaNがc軸(0001)の表面と平行に成長して極性を帯びなくなり、分極現象による内部量子効率の低下を画期的に改善できる。ただし、異種基板に形成される非極性GaNエピ層の場合、貫通転位密度や積層欠陥密度が非常に高いことが知られており、これを低めて高品質の非極性窒化物を形成するために、複数の固体粒子141で形成された第1構造物層140を導入している。
【0030】
さらに具体的な構成と材質を説明する。
【0031】
基板110は、Al、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、InP、GaN、InAs、GaPまたはGaSb基板など、半導体物質の異種薄膜エピ成長に利用されるあらゆる基板が利用できる。ここで、異種薄膜は、GaN、AlN、InN、InAlAs、InAlGaAs、InP、InGaAsP、InGaAs、GaAsなどのあらゆる化合物半導体物質を含む。
【0032】
基板110上には3次元構造の表面形態を持ち、非極性窒化物半導体で形成された第1非平坦非極性窒化物半導体層130が形成されている。第1非平坦非極性窒化物半導体層130は、非極性面にエピ成長した構造を持つ。第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面は、3次元構造を持つ形態であって平坦でなく、図示されたように、複数の引込み部が形成されている。第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面形態は例示的なものであり、引込み部の形状や配置はランダムに形成される。第1非平坦非極性窒化物半導体層130の厚さは、約100nm〜1mmの範囲で定める。
【0033】
基板110と第1非平坦非極性窒化物半導体層130との間にはバッファ層120がさらに形成される。バッファ層120は、基板110と第1非平坦非極性窒化物半導体層130との格子定数の不一致による転位(dislocation)を低減させ、熱膨張係数の不一致によるクラックの生成を抑制するために備えられるものであって、非極性窒化物半導体物質で形成でき、単層または複数層構造を持つ。バッファ層120の厚さは、格子緩和が十分に起きるほどの範囲で定め、例えば、バッファ層120をGaNとする場合、10nm〜100nmの範囲の厚さを持つ。
【0034】
第1構造物層140は、複数の固体粒子141で形成され、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面の少なくとも一部上に形成される。第1構造物層140は、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された複数の引込み部内に複数の固体粒子141が配置されるように形成される。図示されたように、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された複数の引込み部内のみに複数の固体粒子141が配置されるように形成されてもよい。
【0035】
第1構造物層140は、この上に形成される第1非極性窒化物半導体層150の品質を確保するために設けられるものである。例えば、第1構造物層140の下部における窒化物成長を抑制し、第1構造物層140の表面部分に露出された第1非平坦非極性窒化物半導体層130から非極性窒化物を再成長させることで、第1構造物層140によるELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)効果を得ることができる。すなわち、第1構造物層140がELOマスクの役割を行い、また、貫通転位(Threading Dislocation、TD)の形成を抑制するので、欠陥密度の少ない高品質の非極性窒化物薄膜を形成できる。
【0036】
第1構造物層140はまた、薄膜構造内の屈折率を調節する役割も行える。基板110との屈折率差を大きくして、生成された光子が効率的に抜け出るようにする。それだけでなく、基板110の熱膨張係数が第1非平坦非極性窒化物半導体層130や、第1非極性窒化物半導体層150をなす非極性窒化物薄膜に比べてさらに大きい場合には、窒化物が成長しない第1構造物層140の固体粒子141間の空間、及び固体粒子141と窒化物との間の空間が温度下降時に圧縮することで非極性窒化物薄膜の全体応力が減少し、それにより基板110の反りを防止する役割も行う。
【0037】
第1構造物層140の固体粒子141は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)−ジルコニア、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)のうち少なくともいずれか一つを含んでなる。固体粒子141は、図示された球形だけでなく多面体形状を持つことができ、第1非平坦非極性窒化物半導体層130と屈折率差がある物質で選択されることができる。
【0038】
固体粒子141はまた、図2に示したように、球形シェル形状を持つことができる。シェルの厚さdは、固体粒子141の半径rの3%〜50%範囲の値を持つことができる。この場合、固体粒子141の屈折率は、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の屈折率と同じ値または異なる値を持つことができる。シェルの内部にはガスがトラップされていて、固体粒子141と第1非平坦非極性窒化物半導体層130とが屈折率差がなくても、固体粒子141の内部にトラップされたガスにより第1構造物層140内で屈折率差を得ることができるためである。固体粒子141は、図示された球形シェル形状だけでなく、多面体シェル形状を持ってもよい。
【0039】
固体粒子141のサイズは、約10nm〜100nm範囲の直径を持つことができ、具体的なサイズや固体粒子141が引込み部内に分布される密度は、第1構造物層140上に形成される第1非極性窒化物半導体層150の薄膜品質に鑑みて定める。
【0040】
第1非極性窒化物半導体層150は、第1非平坦非極性窒化物半導体層130及び第1構造物層140上に形成される。第1非極性窒化物半導体層130は、窒化物半導体が非極性面にエピ成長した構造を持つ。前述したように、第1構造物層140が第1構造物層140の下部の非極性窒化物からの成長は抑制し、第1構造物層140の表面周辺に露出された第1非平坦非極性窒化物半導体層130からの側面過成長を引き起こすため、第1非極性窒化物半導体層150は、第1非平坦非極性窒化物半導体層130とは異なって良好な表面状態を持つ。また、貫通転位TDも第1構造物層140により抑制されるため、貫通転位密度も低減する。
【0041】
第1非極性窒化物半導体層150は、不純物がドーピングされていない構成であり、また、必要に応じては、n型またはp型の不純物がドーピングされてもよい。
【0042】
図3は、本発明の他の実施形態による半導体素子200の概略的な構成を示す断面図である。該実施形態の半導体素子200は、図1の半導体素子100上に、3次元構造の表面形態を持ち、かつ非極性化合物半導体で形成された第2非平坦非極性窒化物半導体層160と、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面の少なくとも一部上に形成され、かつ複数の固体粒子171で形成された第2構造物層170と、第2非平坦非極性窒化物半導体層160及び第2構造物層170上に形成された第2非極性窒化物半導体層180と、をさらに備える構造である。これらの構造は、構造物層を反復適用することで貫通転位TDの密度をさらに低めるために提示される。貫通転位TDは、第1構造物層140により抑制されて第1非極性窒化物半導体層150の表面までは殆ど伝播されず、また、第1構造物層140周辺に形成されて、構造的に第1構造物層140による貫通転位抑制効果を受けることができず、第1非極性窒化物半導体層150の表面まで伝播された貫通転位TDは再び第2構造物層170により遮断されて、第2非極性窒化物半導体層180の表面に伝播されなくなる。したがって、貫通転位密度は、図1の場合より低くなる。
【0043】
第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面には、第1非平坦非極性窒化物半導体層130と同様に、複数の引込み部が形成されており、第2構造物層170の複数の固体粒子は、複数の引込み部内に配置される。図示されたように、第2構造物層170の複数の固体粒子は、複数の引込み部内のみに配置されてもよい。
【0044】
第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された複数の引込み部と、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面に形成された複数の引込み部は、互いにずれて形成される。図面では、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された複数の引込み部と、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面に形成された複数の引込み部とがいずれも互いにずれて配置されると図示されているが、これは例示的なものである。現実的な工程で、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成される複数の引込み部や、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面に形成される複数の引込み部は、規則的でなくランダムなサイズ及び分布を持つため、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成される複数の引込み部と、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面に形成される複数の引込み部のうち一部は、互いに外れる配置となり、他の一部は外れずに互いに対向する配置となってもよい。
【0045】
第1構造物層140の複数の固体粒子141と、前記第2構造物層170の複数の固体粒子171とは、サイズまたは形状が相異なって構成され、図2のようにシェル形状になってもよい。
【0046】
第2非極性窒化物半導体層180は、不純物がドーピングされていない構成であり、また、必要に応じては、n型またはp型の不純物がドーピングされてもよい。
【0047】
図4は、本発明のさらに他の実施形態による半導体素子300の概略的な構成を示す断面図である。該実施形態は、図1の半導体素子100に発光構造層をさらに形成した例であり、発光素子の役割を行う。すなわち、図1の半導体素子100上に、第1型半導体層310、活性層320、第2型半導体層330がより形成されている。また、第1型半導体層310と第2型半導体層330それぞれに電圧を印加する第1電極340、第2電極350が形成されている。
【0048】
第1型半導体層310は、n型不純物がドーピングされた窒化物半導体、例えば、n−GaNからなる。n型不純物としては、Si、Ge、Se、Te、Cのうちいずれか一つが使われる。
【0049】
活性層320は、電子−正孔の再結合により発光する層であり、例えば、InGaN系の窒化物半導体層で形成され、バンドギャップエネルギーを制御することでその発光波長帯域が調節される。例えば、活性層320は、InGaN系の量子ウェル構造であり、量子ウェル層と障壁層とがInGaN/GaN、InGaN/InGaN、InGaN/AlGaNまたはInGaN/InAlGaNの一対で構成された単一量子ウェル構造または多重量子ウェル構造で形成され、InGaN層におけるInモル分率を調節して発光色を調節できる。
【0050】
第2型半導体層330は、p型不純物がドーピングされた窒化物半導体、例えば、p−GaNからなりうる。p型不純物としては、Mg、Be、Zn、Scのうちいずれか一つが使われる。
【0051】
第1非極性窒化物半導体層150にn型不純物がドーピングされた場合、第1型半導体層310は省略してもよい。
【0052】
図5は、本発明のさらに他の実施形態による半導体素子400の概略的な構成を示す断面図である。該実施形態は、図3の半導体素子200に発光構造層がさらに形成された例であり、発光素子の役割を行う。すなわち、図3の半導体素子200上に、第1型半導体層310、活性層320、第2型半導体層330がさらに形成されている。また、第1型半導体層310と第2型半導体層330それぞれに電圧を印加する第1電極340、第2電極350が形成されている。
【0053】
該実施形態でも同様に、第2非極性窒化物半導体層180にn型不純物がドーピングされた場合、第1型半導体層310は省略してもよい。
【0054】
図4及び図5で例示した半導体素子400は、PN接合による発光構造を含む基本的な形態の例示であり、多様に変形できる。例えば、活性層330で電子、正孔が結合して発光が起きるように、第1型半導体層310と第2型半導体層330それぞれに電圧を印加する第1電極340、第2電極350などの電極構造は、他の形態に変形でき、また、基板110は、電極構造や発光方向などを定めるに当って、必要に応じて除去できる。
【0055】
図6Aないし図6Hは、本発明の実施形態による半導体素子の製造方法を説明する図面である。図6Aのように用意された基板110上に、図6Bのようにバッファ層120を形成する。
【0056】
基板110は、Al、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、InP、GaN、InAs、GaPまたはGaSb基板など、半導体物質の異種エピ薄膜の成長に利用されるあらゆる基板が利用できる。
【0057】
バッファ層120は、基板110と、バッファ層120上に形成される非極性窒化物半導体層との格子定数の不一致による転位を低減させ、かつ熱膨張係数の不一致によるクラック生成を抑制するために備えられるものであり、非極性窒化物半導体物質で形成でき、単層または複数層構造を持つ。バッファ層120の厚さは、格子緩和が十分に起きるほどの範囲で定め、例えば、バッファ層120をGaNとする場合、10nm〜100nm範囲の厚さを持つ。図示されたバッファ層120の表面形態は、非極性面を用いた成長において、表面が非平坦に形成されることを説明するためのものであり、図示された形状に制限されるものではない。
【0058】
次いで、図6Cのように、第1非平坦非極性窒化物半導体層130を形成する。第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面形態も、非極性面成長で起きる非平坦な表面形状の例として図示されており、図示された形状に制限されるものではない。第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面は、複数の引込み部が形成された形態でありうる。具体的な形態及び間隔は、成長変数を用いて調節できる。
【0059】
次いで、図6Dのように、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面の少なくとも一部上に、複数の固体粒子141で形成された第1構造物層140を形成する。第1構造物層140は、いろいろな形態のシリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)−ジルコニア、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)のうち少なくともいずれか一つで形成された複数の固体粒子141を含み、単一層あるいは複数層構造で構成できる。複数の固体粒子141は、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された引込み部内に配置され、図示されたように、第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された複数の引込み部内のみに複数の固体粒子141が配置されるように形成されてもよい。第1構造物層140の形成は、例えば、複数の固体粒子141が分散された溶液を第1非平坦非極性窒化物半導体層130上に塗布し、分散溶液のうち固体粒子141を除外した溶媒部分を除去する段階を含む。この時、第1非平坦非極性半導体層130と第1構造物層140とが帯びる電荷の強度及び分散溶液の濃度のうち少なくともいずれか一つを調節して、複数の固体粒子141が引込み部に塗布される密度を調節できる。
【0060】
次いで、図6Eのように、第1非平坦非極性窒化物半導体層130及び第1構造物層140の上に、第1非極性窒化物半導体層150を形成する。この時、第1構造物層140が、第1構造物層140の下部の非極性窒化物からの成長は抑制し、第1構造物層140の表面周辺に露出された第1非平坦非極性窒化物半導体層130からの側面過成長を引き起こすため、第1非極性窒化物半導体層150は、第1非平坦非極性窒化物半導体層130とは異なって良好な表面状態を持つ。また、貫通転位TDの伝播も第1構造物層140により抑制されるため、貫通転位密度も減少する。
【0061】
これらの過程によって、図1で例示した構造の半導体素子100が製造される。以後に形成される構造層の機能によって、第1非極性窒化物半導体層150の形成時に不純物ドーピングを選択することも可能である。例えば、第1非極性窒化物半導体層150には、必要に応じてn型またはp型の不純物がドーピングされることもある。
【0062】
図6Fは、第1非極性窒化物半導体層150上に第2非平坦非極性窒化物半導体層160をさらに形成したことを示す。貫通転位TDをさらに低減させるために構造物層を反復適用するためのものである。第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面には、第1非平坦非極性窒化物半導体層130と同様に、複数の引込み部が形成されている。第1非平坦非極性窒化物半導体層130の表面に形成された複数の引込み部と、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面に形成された複数の引込み部とは、互いにずれて形成される。
【0063】
次いで、図6Gのように、第2非平坦非極性窒化物半導体層160の表面の少なくとも一部上に、複数の固体粒子171で形成された第2構造物層170を形成する。第2構造物層170の複数の固体粒子171は複数の引込み部内に配置される。
【0064】
次いで、図6Hのように、第2非平坦非極性窒化物半導体層160及び第2構造物層170の上に第2非極性窒化物半導体層180を形成して、図3で説明した構造の半導体素子200が製造される。第1非極性窒化物半導体層150に形成された貫通転位TDは第2構造物層170により抑制されて、第2非極性窒化物半導体層180の表面までは殆ど伝播されないため、貫通転位密度は、図6Eの構造よりさらに低くなる。
【0065】
前述した説明で、バッファ層120、第1、第2非平坦非極性窒化物半導体層130、160、第1、第2非極性窒化物半導体層150、180に使われる窒化物半導体は、AlInGa1−x−yN(0≦x、y≦1、x+y≦1)の変数を適宜に調節した形態でありうる。製造方法においては、III−V族化合物半導体成長方法として知られた多様な方法を使用できる。各種蒸着法(e−beam evaporators、sublimation sources、Knudsen cell)と、イオンビーム蒸着法、気相エピタキシ法(ALE、CVD、APCVD、PECVD、RTCVD、UHVCVD、LPCVD、MOCVD、CBCVD、GSMBEなど)が使われる。成長温度は、低温緩衝層の場合に一般的な化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)で表面反応支配区間の温度範囲が使われ、高温エピ層の場合に物質移動支配区間の温度範囲が使われる。
【0066】
このような本願発明である半導体素子及びその製造方法は、理解を助けるために図面に図示された実施形態を参考までに説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は特許請求の範囲により定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0068】
100 半導体素子
110 基板
120 バッファ層
130 第1非平坦非極性窒化物半導体層
140 第1構造物層
141 固体粒子
150 第1非極性窒化物半導体層
TD 貫通転位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1非平坦非極性窒化物半導体層と、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に形成されたものであって、複数の固体粒子で形成された第1構造物層と、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層及び前記第1構造物層上に形成された第1非極性窒化物半導体層と、を備える半導体素子。
【請求項2】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層は、3次元構造を持ち、非極性半導体で形成され、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面には複数の引込み部が形成されており、
前記第1構造物層の複数の固体粒子は前記複数の引込み部内に配置される請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記第1非極性窒化物半導体層上に形成されたものであって、3次元構造の表面形態を持ち、非極性化合物半導体で形成された第2非平坦非極性窒化物半導体層と、
前記第2非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に形成されたものであって、複数の固体粒子で形成された第2構造物層と、
前記第2非平坦非極性窒化物半導体層及び前記第2構造物層上に形成された第2非極性窒化物半導体層と、をさらに備える請求項1に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記第2非平坦非極性窒化物半導体層の表面には複数の引込み部が形成されており、
前記第2構造物層の複数の固体粒子は前記複数の引込み部内に配置される請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面に形成された複数の引込み部と、前記第2非平坦非極性窒化物半導体層の表面に形成された複数の引込み部とは、互いにずれて配置されている請求項4に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第1構造物層の複数の固体粒子と、前記第2構造物層の複数の固体粒子とは、サイズまたは形状が相異なって構成された請求項4に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記固体粒子は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)−ジルコニア、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)のうち少なくともいずれか一つを含んでなる請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第1構造物層の固体粒子は、球形または多面体形状を持つ請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記固体粒子の屈折率は、前記第1非極性窒化物半導体層の屈折率と異なる値を持つ請求項8に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記第1構造物層の固体粒子は、球形シェルまたは多面体シェル形状を持つ請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項11】
前記シェルの厚さは、前記固体粒子の半径の3%〜50%範囲の値を持つ請求項10に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記シェルの内部にはガスがトラップされている請求項10に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記固体粒子は、前記第1非極性窒化物半導体層の屈折率と同じ値または異なる値を持つ請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項14】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の下部に基板がさらに備えられる請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項15】
前記基板は、Al、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、InP、GaN、InAs、GaPまたはGaSbのうちいずれか一つを含む材質からなる請求項14に記載の半導体素子。
【請求項16】
前記基板と前記第1非平坦非極性窒化物半導体層との間にバッファ層がさらに備えられる請求項14に記載の半導体素子。
【請求項17】
基板上に第1非平坦非極性窒化物半導体層を形成する段階と、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面の少なくとも一部上に、複数の固体粒子で形成された第1構造物層を形成する段階と、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層及び前記第1構造物層上に第1非極性窒化物半導体層を形成する段階と、を含む半導体素子の製造方法。
【請求項18】
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層は、3次元構造を持ち、非極性半導体で形成され、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層を形成する段階は、
前記第1非平坦非極性窒化物半導体層の表面が複数の引込み部を備える形態で形成する請求項17に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1構造物層を形成する段階は、
前記第1構造物層の複数の固体粒子を前記複数の引込み部内のみに配置させる請求項18に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項20】
前記第1非極性窒化物半導体層を形成する段階は、
前記第1構造物層をマスクとして使用して、前記第1非平坦非極性窒化物半導体層からの側面過成長(Epitaxial Lateral Overgrowth、ELO)を誘導する請求項19に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項21】
前記基板と前記第1非平坦非極性窒化物半導体層との間にバッファ層を形成する段階をさらに含む請求項17ないし20のうちいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【公開番号】特開2012−169628(P2012−169628A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29226(P2012−29226)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(508298075)ソウル大学校産学協力団 (27)
【Fターム(参考)】