説明

半導体装置、及びそのテスト方法

【課題】シリアルインタフェース回路におけるCDR回路の位相追従機能を、ループバックテストによって検査する。
【解決手段】本発明による半導体装置において、PLL回路2は、周波数変調された参照クロック1に基づいて、受信用クロック21及び送信用クロック22を生成する。シリアライザ3は、送信用クロック22に応じたタイミングでパラレルデータ33をシリアル化して出力する。CDR回路8は、受信用クロック21に基づいて、受信データ20に対するクロックデータリカバリを実行し、再生データ24を生成する。デシリアライザ14は、再生データ24をパラレル化する。ループバック回線19は、シリアライザ7から出力されたシリアルデータ18を、受信データ20としてCDR回路8に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及びそのテスト方法に関し、特に高速シリアルインタフェース回路及び、そのループバックテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PCI−Expressに代表される半導体集積回路の入出力インターフェースが高速化し、GHz帯の信号を送受信するようになった。一般的に高速シリアルインタフェース回路は、トランスミッタ(送信部)、レシーバ(受信部)、参照周波数源(レファレンスクロック)に基づいて送信用の基準クロック(以下、送信用クロックと称す)や受信用の基準クロック(以下、受信用クロックと称す)を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路を備える。又、レシーバは、クロックデータリカバリ回路(以下、CDR回路と称す)を備えている。
【0003】
CDR回路はPLL回路で生成した受信用クロックの位相を調整し、受信データをサンプリングするのに最適なクロック(以下、再生クロックと称す)を生成する。これにより、受信データに位相変動がある場合でもその変動に追従してクロックを再生するため正しくデータを受信できる。この機能を位相追従機能と称す。
【0004】
このような高速シリアルインタフェース回路のテストは、GHz級の信号を出力、あるいはサンプリングするLSIテスタが必要となる。しかし、この様な機能を持つテスタは非常に高価でありテストコストの高騰に繋がる。
【0005】
そこで、一般的には、テストコスト低減のため、トランスミッタ(送信部)からの送信データを、そのまま自己のレシーバ(受信部)へ折り返してテストするループバックテストが採用されている。
【0006】
図1は、従来技術によるシリアルインタフェース回路の構成を示す図である。ここでは、http://focus.ti.com/lit/ds/symlink/tlk2501.pdfで示されたシリアルインタフェース回路の構成について説明する(非特許文献1参照)。
【0007】
図1に示されるシリアルインタフェース回路は、1つのレファレンスクロック(以下、参照クロックと称す)に基づいて送信用クロックと受信用クロックを生成するPLL回路51を備える。詳細には、従来技術によるシリアルインタフェース回路は、PLL回路51、シリアライザ53、CDR回路55、デシリアライザ57を備える。
【0008】
PLL回路51は、参照クロック50に基づいて送信用クロック52及び受信用クロック54を生成する。シリアライザ53はトランスミッタに設けられ、入力されるパラレルデータを送信用クロックに応じたタイミングでシリアル変換し、シリアルデータとして出力する。CDR回路55及びデシリアライザ57はレシーバに設けられる。CDR回路55は、受信用クロックに基づいて、受信したシリアルデータからクロック(以下、再生クロック56と称す)を再生する。デシリアライザ57は、再生クロック56に基づくタイミングで、受信したシリアルデータをパラレル変換し、パラレルデータとして出力する。
【0009】
ここで、ループバックテストを行う場合、LOOPEN信号によってレシーバ側セレクタ58、59が制御されることで、トランスミッタ(TX)とレシーバ(RX)がループバック回線60によって接続される。これにより、トランスミッタ(シリアライザ53)から送出されたシリアルデータがレシーバ(デシシリアライザ57)に入力される。ループバックテストでは、内部回路から送信されたパラレルデータと、ループバック回線60を介して受信したシリアルデータから得られたパラレルデータとを比較することで、シリアルインタフェース回路の機能検証が行われる。
【0010】
しかしながら、PLL回路55は、1つの参照クロックに基づいて、送信用クロック52及び受信用クロック54を生成しているため、送信用クロック52及び受信用クロック54の周波数は一致する。このため、ループバック回線60を介してレシーバ(RX)で受信したシリアルデータと、CDR回路55で再生された再生クロック56の周波数は一致する。
【0011】
従って、CDR回路55において、受信初期に最適なクロックを再生した後は、再生クロック56と受信データの間の位相差に全く変化が発生しないため、位相追従機能が動作しなくなる。このため、従来のループバックテストでは、CDR回路の位相追従機能が活性化せず、実動作に近い通信状態でテストできない。
【0012】
以上のように、共通の参照クロックに応じて送受信を制御するシリアルインタフェース回路に対するループバックテストでは、所定の時間が経過すると受信データの位相は常に一定となる。このため、受信初期にクロックを再生した後は、CDR回路の位相追従機能がほとんど活性化されない。よって、この機能に故障があった場合に検出できずテスト品質の低下をもたらす。
【0013】
一方、1つの参照クロックに応じて送信用クロック及び受信用クロックを生成した場合でも、CDR回路の位相追従機能の検証を可能としたループバックテスト方法が、例えば、特開2005−257376(特許文献1参照)や特開2008−219754(特許文献2参照)に記載されている。
【0014】
特許文献1では、受信用クロックの位相を強制的に変更する機構をCDR回路に設けることで、再生クロックと受信データ(受信用クロック)との間の位相差を発生させている。一方、特許文献2では、参照クロックに応じた擬似ランダムデータを送信用PLL回路に出力することで、ランダムなジッタを含んだ送信用クロックを生成し、受信用クロックとの周波数差を発生させている。このように、1つの参照クロックに応じて送信用クロック及び受信用クロックを生成した場合でも、再生クロックと受信用クロックとに位相差を発生させることで、CDR回路の位相追従機能の検証が可能となり、シリアルインタフェース回路の故障検出率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−257376
【特許文献2】特開2008−219754
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】TLK 2501 1.5 TO 2.5 GBPS TRANSCIEVER、P4 Fig1、[online]、2003、TEXAS INSTRUMENTS、インターネット<http://focus.ti.com/lit/ds/symlink/tlk2501.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1に記載のCDR回路は、テスト時と通常時とで異なる動作をする。このため、ループバックテストによってCDR回路の故障が検出された場合、その原因がCDR回路の位相追従機能にあるのか、受信用クロックの位相を強制変更する機構にあるのかを特定できない。従って、特許文献1に記載のテスト方法では、通常動作では問題がないCDR回路を不良として誤検出する可能性がある。
【0018】
特許文献2では、ランダムなジッタを含む送信用クロックを生成する送信用PLL回路を、受信用PLL回路とは別に用意する必要があるため、素子数や回路面積が増大してしまう。又、テスト時における送信用PLL回路は、通常時と異なる動作により送信用クロックを生成している。このため、ループバックテストによってCDR回路の故障が検出された場合、その原因がCDR回路の位相追従機能にあるのか、送信用クロックの生成機能にあるのかを特定できない。従って、特許文献2に記載のテスト方法でも、通常動作では問題のないCDR回路を不良として誤検出する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を括弧付きで用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。この番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0020】
本発明による半導体装置は、PLL(Phase Locked Loop)回路(2)、シリアライザ(7)、CDR(Clock Data Recovery)回路(8)、デシリアライザ(14)、及びループバック回線(19)を具備する。PLL回路(2)は、周波数変調された参照クロック(1)に基づいて、受信用クロック(21)及び送信用クロック(22)を生成する。シリアライザ(7)は、送信用クロック(22)に応じたタイミングでパラレルデータ(28、33)をシリアル化して出力する。CDR回路(8)は、受信用クロック(21)に基づいて、受信データ(20)に対するクロックデータリカバリを実行し、再生データ(24)を生成する。デシリアライザ(14)は、再生データ(24)をパラレル化する。ループバック回線(19)は、シリアライザ(7)から出力されたシリアルデータ(18)を、受信データ(20)としてCDR回路(8)に入力する。
【0021】
送信データ(18)は、ループバック回線(19)を経由した経路の寄生容量等により遅延する。すなわち、同じ周期で周波数が変動する受信用クロック(21)及び送信用クロック(22)の一方が遅延する。この結果、CDR回路(8)における受信データ(20)と、受信クロック(21)との周波数差(位相差)は変動し、ループバックテストにおいてCDR回路(8)の位相追従機能を検証することが可能となる。
【0022】
本発明によるテスト方法は、PLL回路(2)が、周波数変調された参照クロック(1)に基づいて、受信用クロック(21)及び送信用クロック(22)を生成するステップと、シリアライザ(7)が、送信用クロック(22)に応じたタイミングでパラレルデータ(28、33)をシリアル化して出力するステップと、シリアライザ(7)から出力されたシリアルデータ(18)が、ループバック回線(19)を介して受信データとしてCDR回路(8)に入力するステップと、CDR回路(8)が、受信用クロック(21)に基づいて、受信データ(20)に対するクロックデータリカバリを実行し、再生データ(24)を生成するステップと、デシリアライザ(14)が、再生データ(24)をパラレル化するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0023】
従って、本発明によれば、シリアルインタフェース回路におけるCDR回路の位相追従機能を、ループバックテストによって検査することができる。
【0024】
又、シリアルインタフェース回路におけるCDR回路の位相追従機能を、実動作と同じ状態でループバックテストすることができる。
【0025】
更に、シリアルインタフェース回路に対するループバックテストの検査品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、従来技術によるシリアルインタフェース回路の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明によるシリアルインタフェース回路の第1の実施の形態における構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明によるループバックテストにおける再生クロックと受信データの周波数差の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明によるループバックテストにおける再生クロックと受信データの周波数差の他の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明によるループバックテストにおける再生クロックと受信データの周波数差の変化と、当該周波数差の調整頻度との関係を示す図である。
【図6】図6は、本発明によるシリアルインタフェース回路の第2の実施の形態における構成の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明によるシリアルインタフェース回路の第2の実施の形態における構成の他の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明によるシリアルインタフェース回路の第2の実施の形態における構成の更に他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明による通信システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
1.第1の実施の形態
図2から図5を参照して、本発明によるシリアルインタフェース回路の第1の実施の形態を説明する。以下では、テストモード時におけるGHz級の高速シリアルインタフェース回路の構成を説明する。
【0029】
(構成)
先ず、図2を参照して第1の実施の形態におけるシリアルインタフェースの構成を説明する。図2は、本発明によるシリアルインタフェース回路の第1の実施の形態における構成を示す図である。第1の実施の形態におけるシリアルインタフェース回路は、PLL回路2、トランスミッタ(送信部)3、レシーバ(受信部)4、テストコントロール回路16、ループバック回線19、セレクタ31を具備する。
【0030】
PLL回路2は、図示しない外部装置から供給された単一の参照クロック1に応じて、同じ周波数の受信用クロック21及び送信用クロック22を生成する。ここで、参照クロック1は、所定の変調周波数や変調度で周波数変調されたクロック信号である。詳細には、シリアルインタフェースが通常動作する際、PLL回路2には、所定の周波数の参照クロックが供給される。一方、ループバックテスト時にPLL回路2に供給される参照クロック1は、図示しない外部装置によって、通常動作時の参照クロックを所定の周波数や変調度で周波数変調することで生成される。例えば、SSCG(Spread Spectrum Clock Generator)によって生成されたスペクトラム拡散クロックが、参照クロック1としてPLL回路2に供給される。
【0031】
ここで、参照クロック1を生成するための変調周波数や変調度(以下、参照クロック1の変調周波数、変調度と称す)は、任意の大きさに変更できることが好ましい。ただし、参照クロック1の変調周波数は、PLL回路2に搭載されたループフィルタ(図示なし)のカットオフ周波数より小さくなるように設定される。これにより、参照クロック1の変調周波数が、そのままPLL回路2が生成する受信用クロック21及び送信用クロック22にも伝達されることとなる。
【0032】
又、参照クロック1の変調度を大きくすると信号間隔のばらつきが大きくなるため、遅延効果が高くなり、ループバックされて受信された送信データ18(受信データ20)と再生クロック23との周波数差が大きくなる。このため、参照クロックの変調度を変更することで、CDR回路の位相追従能力の検証品質を変更することができる。
【0033】
ループバック回線19は、通常動作時には利用されず、ループバックテスト時にトランスミッタ3の出力とレシーバ4の入力とを接続する信号線として使用される。セレクタ31は、制御信号LOOP ENに応じて、外部信号線から受信されたシリアルデータ32とループバック回線19からの送信データ18(シリアルデータ)の一方を選択して受信データ20としてレシーバ4に出力する。セレクタ31は、通常動作時において外部からのシリアルデータ32をレシーバ4に出力し、ループバックテスト時においてループバック回線19を経由した送信データ18をレシーバ4に出力する。
【0034】
トランスミッタ3は、データ発生回路5、マルチプレクサ6、シリアライザ7を備える。データ発生回路5は、テストコントロール回路16からの指示信号に応じて所定のパタンのパラレルデータ33(以下、テストデータ33と称す)を生成する。テストデータ33は、マルチプレクサ6、及び後述するエラー検出回路15に入力される。マルチプレクサ6は、テストコントロール回路16からのデータ選択信号29に応じて、内部回路(図示なし)から出力されたパラレルデータ28とテストデータ33の一方を選択して、シリアライザ7に出力する。マルチプレクサ6は、通常動作時において内部回路からのパラレルデータ28をシリアライザ7に出力し、ループバックテスト時においてテストデータ33をシリアライザ7に出力する。シリアライザ7は、マルチプレクサ6から出力されたパラレルデータを、送信用クロック22に応じたタイミングでシリアル変換し、シリアルデータ(送信データ18)として出力する。
【0035】
レシーバ4は、クロックデータリカバリ回路(CDR回路)8、モニタ回路11、エラー検出回路15、デシリアライザ14を備える。
【0036】
CDR回路8は、受信用クロック21の位相を調整して再生クロック23を生成し、この再生クロック23に応じたタイミングで受信データ20から再生データ24を抽出(サンプリング)する。デシリアライザ14は、CDR回路8で抽出された再生データ24をパラレル変換してパラレルデータ30として内部回路(図示なし)及びエラー検出回路15に出力する。モニタ回路11は、CDR回路8における受信データ20と再生クロック23の周波数差の比較結果34を監視し、監視結果をテストコントロール回路16に通知する。エラー検出回路15は、パラレルデータ30とテストデータ33とが一致しているか否かを判定し、その結果をエラー判定結果(例えば、ビットエラーレートの値)としてテストコントロール回路16に通知する。
【0037】
次に、CDR回路8の構成の詳細を説明する。CDR回路8は、位相比較回路9、フィルタ回路10、制御回路12、及び位相調整回路13を備える。
【0038】
位相比較回路9は、位相調整回路13より生成される再生クロック23に応じたタイミングで受信データ20から再生データを抽出し、デシリアライザ14に出力する。又、位相比較回路9は、再生クロック23と受信データ20の位相を所定の周期で比較し、位相比較結果に応じた信号(UP信号25/DN信号26)を出力する。詳細には、位相比較回路9は、受信データ20より再生クロック23の位相が遅れている場合にはアップ信号25(以下、UP信号25と称す)を、逆に受信データより再生クロック23の位相が進んでいる場合にはダウン信号(以下、DN信号26と称す)を出力する。
【0039】
フィルタ回路(平均化回路)10は、位相比較結果信号(UP信号25/DN信号26)を所定の一定時間、平均化する。例えば、フィルタ回路10は、入力されるUP信号25/DN信号26に基づき、所定のタイミングでカウントアップ又はカウントダウンするカウンタを有する。この場合、フィルタ回路10は、所定に期間毎のカウント値を、平均化した位相比較結果信号(比較結果34)として制御回路12に出力する。制御回路12は、比較結果34に応じて、受信用クロック21の位相をずらす(変更する)ための位相制御信号35を生成する。位相調整回路13は、受信用クロック21を基準として、位相制御信号35に従い、その位相をずらして(変更して)再生クロック23を生成する。例えば、位相調整回路13は、比較結果34が“0”よりも大きい値である場合、受信用クロック21の位相を進めるように制御され、比較結果34が“0”よりも小さい値である場合、受信用クロック21の位相を遅らせるように制御される。又、比較結果34が“0”である場合は、受信用クロック21の位相をずらさずに再生クロック23として出力される。
【0040】
以上のような位相比較回路9から位相調整回路13による負帰還ループによって、再生クロック23の位相が受信データ20を受信するために最適となるように調整される。
【0041】
ここで、モニタ回路11は、テスト時においてフィルタ回路10により生成された比較結果34をある一定時間毎モニタし、UP信号25、及びDN信号26の発生頻度が所定の範囲内かを判定し、その結果(監視結果)をテストコントロール回路16へ出力する。
【0042】
テストコントロール回路16は、データ発生回路5に対する指示信号やマルチプレクサ6に対するデータ選択信号29を出力することで、トランスミッタ3に対するテスト時の動作シーケンス制御を行う。又、テストコントロール回路16は、エラー検出回路15からのエラー検出結果や、モニタ回路11からの監視結果を取得し、テスト結果の判定を行う。例えば、エラー検出結果で示されるビットエラーレートと予め設定された基準値とを比較し、基準値以上である場合、トランスミッタ3又はレシーバ4に異常があると判定する。あるいは、テストコントロール回路16は、モニタ回路11からの監視結果から、再生クロック23と受信データ20の周波数差が所定の範囲を超えた異常状態の発生頻度等を取得し、この発生頻度の基準値(CDR回路8に対して設定された位相追従が可能な範囲)と比較する。この際、異常状態の発生頻度が基準値以上である場合、テストコントロール回路16は、CDR回路8における位相追従機能に異常があると判定する。
【0043】
(動作)
次に、図2から図5を参照して、本発明によるシリアルインタフェースに対するループバックテストの動作の詳細を説明する。ループバックテストモードに移行すると、トランスミッタ3とレシーバ4との間は、ループバック回線19によって接続される。又、テストデータ33がトランスミッタ3からレシーバ4に送信される。
【0044】
PLL回路2におけるループフィルタ(図示なし)のカットオフ周波数は、この参照クロック1の変調周波数より大きい。このため、参照クロック1の変調周波数が、そのままPLL回路2が生成する受信用クロック21、及び送信用クロック22にも伝達される。すなわち、受信データ20の周波数(受信データ周波数100)と再生クロック23の周波数(再生クロック周波数200)は、同じ周期で変動する。一方、送信データ18は、トランスミッタ3からレシーバ4に至るループバック回線19を経由した経路の寄生容量等により遅延する。すなわち、同じ周期で周波数が変動する受信用クロック21及び送信用クロック22の一方(送信用クロック22)が遅延する。この結果、受信データ20と再生クロック23との間で周波数差300(位相差)が発生する。
【0045】
図3及び図4を参照して、受信データ20と再生クロック23との間に発生する周波数差(位相差)について詳細に説明する。
【0046】
ここで、参照クロック1の変調周波数が、PLL回路2から受信用クロック21に伝達し、さらに、位相調整回路13を通過して、位相比較回路9まで届くまでの遅延時間をtRXとする。同様に、参照クロック1の変調周波数が、PLL回路2から送信用クロック22に伝達し、送信用クロック22を基準に送信されたシリアルデータ(送信データ18)がループバック回線19を通過して位相比較回路9まで到達するまでの遅延時間をtTXとする。この場合、位相比較回路9において、受信データ20と再生クロック23の間の周波数差300は、遅延差400“tTX−tRX”に基づいて発生する。
【0047】
図3は、参照クロック1の変調周波数が三角波的に変化した場合の受信データ20と再生クロック23の周波数差300の一例を示す図である。又、図4は、参照クロック1の変調周波数がサイン波的に変化した場合の受信データ20と再生クロック23の周波数差300の一例を示す図である。
【0048】
再生クロック23と受信データ20の周波数は、時間とともに図3及び図4のように変化する。この場合、受信データ周波数100は、遅延差400“tTX−tRX”分だけ、再生クロック23より遅れて変化する。このため、再生クロック23と受信データ20の周波数差300(再生クロック周波数200−受信データ周波数100)も図3及び図4に示すように、変調周波数と同じ周期で変化する。
【0049】
以上のように、受信データ20と再生クロック23との周波数差300(位相差)は、時間とともに変動するため、CDR回路8の位相追従機能は活性化状態を維持する。
【0050】
この時、位相比較回路9は、この周波数差300に応じたUP信号25、DN信号26を発生する。例えば、周波数差300(再生クロック周波数200−受信データ周波数100)が負のときにUP信号25が出力され、正のときにDN信号26が出力される。UP信号25やDN信号26の発生頻度は、周波数差300の絶対値に比例して変化する。例えば、図3及び図4に示す周波数差300に対応するUP信号25及びDN信号26の発生頻度は、図5に示すように変化する。すなわち、受信用クロック21に対する調整頻度は、周波数差300に応じて変化する。
【0051】
モニタ回路11は、UP信号25、DN信号26の発生頻度、すなわち受信用クロック21に対する調整頻度が周期的に変化し、かつ所定の範囲内であることを、一定時間間隔で判定する。これと同時に、エラー検出回路15は、受信データ20にエラーが発生していないことを判定することで、CDR回路8の位相追従機能が正しく動作しているかを実動作に近い通信状態でテストすることができる。
【0052】
ここで、周波数差300は、参照クロック1の変調周波数、又は/及び変調度を変えることで制御可能である。又、参照クロック1の変調周波数、又は/及び変調度を変更することで、適切なテスト条件を調整可能である。
【0053】
シリアルインタフェースを使用する際、通信相手の参照周波数源(レファレンスクロック)との間に周波数オフセットが有る場合や、送信データの電磁波輻射(EMI)の低減のためにスペクトラム拡散クロックジェネレータ(SSCG)を使用している場合がある。このような場合、受信データ20の位相は常に変動する。本発明では、このような位相の変動を、送受信データに対する周波数変調及び遅延によって再現できるため、実状況と同様な通信環境でシリアルインタフェースに対するテストを行うことができる。
【0054】
又、本発明では、ループバックテスト中におけるPLL回路2、トランスミッタ3、及びCDR回路8のデータ転送に係る動作は、通常動作時と同じである。このため、本発明によれば、従来のように、通常動作で問題がない製品を異常として検出することがなく、シリアルインタフェース回路の故障検出率を向上することができる。
【0055】
更に、シリアルインタフェースが、図示しないSSCGを有している場合、SSCGを使用したループバックテストと、これを用いない上述のテストとを切り分けて試験することで、SSCGの不具合を検出することが可能となる。
【0056】
2.第2の実施の形態
図6から図8を参照して、本発明によるシリアルインタフェース回路の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態では、周波数差300を発生させる遅延差400は、主にループバック回線19による遅延量に依存している。しかし、遅延差400の大きさによっては、周波数差300がCDR回路8を活性化するまでに至らない大きさとなる場合がある。例えば、遅延量が、受信データ周波数100の1周期に相当する大きさである場合、再生クロック周波数200との遅延差400はなくなってしまう。このため、第1の実施の形態におけるシリアルインタフェースに加えて、遅延差400を発生又は変更するための遅延回路17を更に備えることが好ましい。
【0057】
図6は、本発明によるシリアルインタフェース回路の第2の実施の形態における構成の一例を示す図である。図6を参照して、第2の実施の形態におけるシリアルインタフェースは、ループバック回線19上に、送信データ18を遅延する遅延回路17を備える。又、遅延回路17は、テストコントロール回路16からの遅延制御信号27に応じて、その遅延時間を変更することが好ましい。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0058】
テストコントロール回路16は、ループバックテストの間のみ、遅延回路17を制御して、ループバック回線19を経由する送信データ18を遅延させる。又、遅延回路17の遅延量は、所定の範囲で調節可能であることが好ましい。
【0059】
本実施の形態では、送信用クロック22によって伝達された変調周波数がループバック回線19を通過して位相比較回路9まで到達するまでの遅延時間“tTX”を、遅延回路17によって変更できるため、受信データ20と再生クロック23の周波数差300を任意に設定することができる。これにより、CDR回路8に対する位相機能検証の条件を柔軟に変更することが可能となる。
【0060】
遅延回路17の設置位置は、ループバック回線19上とは限らず、図7に示すようにPLL回路2とトランスミッタ3(シリアライザ7)との間でも良い。この場合、遅延回路17は、遅延制御信号27に応じた所定の遅延量で、送信用クロック22を遅延させる。
【0061】
図7に示す一例では上述と同様に、遅延回路17は、遅延時間“tTX”を変更できるため、受信データ20と再生クロック23の周波数差300を任意に設定することができる。尚、遅延回路17は、通常動作時には、最小の遅延時間で送信用クロック22を通過させ、テスト時のみ所望の遅延を付加するように制御されることが好ましい。
【0062】
同様に、遅延回路17の設置位置は、図8に示すようにPLL回路2とレシーバ4(位相調整回路13)との間でも良い。この場合、遅延回路17は、遅延制御信号27に応じた所定の遅延量で、受信用クロック21を遅延させる。
【0063】
図8に示す一例では、受信用クロック21によって伝達された変調周波数が、位相調整回路13を通過して位相比較回路9まで届くまでの遅延時間“tRX”を、遅延回路17によって変更できるため、受信データ20と再生クロック23の周波数差300を任意に設定することができる。尚、遅延回路17は、通常動作時には、最小の遅延時間で受信用クロック21を通過させ、テスト時のみ所望の遅延を付加するように制御されることが好ましい。
【0064】
ただし、図8に示す一例では、遅延時間“tRx”が遅延時間“tTx”よりも大きくなるため、受信データ周波数100と再生クロック周波数200との関係は、第1の実施の形態とは逆となり、再生クロック周波数200は、遅延差400“tRx−tTx”だけ、受信データ20より送れて変化する。このため、周波数差300は、受信データ周波数100−再生クロック周波数200で規定される。これ以外の動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
以上のように、本発明によれば、同じ変調周波数が伝達された送信データ18及び再生クロック23の一方を遅延させることで、ループバックされた受信データ20と再生クロック23とに周波数差を生じさせることが可能となる。これにより、実動作に近い通信状態で、CDR回路8の位相追従機能を検証可能なループバックテストを行うことができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。又、上述の実施の形態は、技術的に矛盾のない範囲で組み合わせることができる。例えば、受信データ20と再生クロック23との間に遅延差が発生すれば、遅延回路17はPLL2とシリアライザ7との間、PLL回路2とCDR回路8との間、ループバック回線19上のいずれか又は全てに設けられても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1 :参照クロック
2 :PLL回路
3 :トランスミッタ
4 :レシーバ
5 :データ発生回路
6 :マルチプレクサ
7 :シリアライザ
8 :CDR回路
9 :位相比較回路
10:フィルタ回路
11:モニタ回路
12:制御回路
13:位相調整回路
14:デシリアライザ
15:エラー検出回路
16:テストコントロール回路
17:遅延回路
18:送信データ
19:ループバック回線
20:受信データ
21:クロック
22:信用クロック
23:再生クロック
24:再生データ
25:アップ信号
26:ダウン信号
27:遅延制御信号
28、30:パラレルデータ
29:データ選択信号
31:セレクタ
32:シリアルデータ
33:テストデータ
34:比較結果
35:位相制御信号
100:受信データ周波数
200:再生クロック周波数
300:周波数差
400:遅延差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調された参照クロックに基づいて、受信用クロック及び送信用クロックを生成するPLL(Phase Locked Loop)回路と、
前記送信用クロックに応じたタイミングでパラレルデータをシリアル化して出力するシリアライザと、
前記受信用クロックに基づいて、受信データに対するクロックデータリカバリを実行し、再生データを生成するCDR(Clock Data Recovery)回路と、
前記再生データをパラレル化するデシリアライザと、
前記シリアライザから出力されたシリアルデータを前記受信データとして前記CDR回路に入力するループバック回線と
を具備する
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記CDR回路は、前記受信用クロックの位相を調整し前記受信データから前記再生データを抽出するための再生クロックを生成する位相調整回路を備え、
前記再生クロックと、前記ループバック回線を介して前記CDR回路に入力される受信データとの遅延差を生成する遅延回路を更に具備する
半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記遅延回路は、前記ループバック回線上に設けられ、前記ループバック回線を通過する信号を遅延させる
半導体装置。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記遅延回路は、前記PLL回路と前記シリアライザとの間に設けられ、前記送信用クロックを遅延させる
半導体装置。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記遅延回路は、前記PLL回路と前記CDR回路との間に設けられ、前記受信用クロックを遅延させる
半導体装置。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記遅延回路で発生する遅延時間を設定するテストコントロール回路を更に具備する
半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置において、
テスト用パラレルデータを生成するデータ発生回路と、
前記テスト用パラレルデータと前記デシリアライザから出力されるパラレルデータとの比較結果に基づいてエラー判定を行うエラー検出回路と
を更に具備する
半導体装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記CDR回路における受信用クロックに対する調整頻度が所定の範囲内か否かを監視するモニタ回路を更に具備する
半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記モニタ回路の監視結果に応じて前記CDR回路における位相追従機能に異常があるか否かを判定するテストコントロール回路を更に具備する
半導体装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記参照クロックは、前記PLL回路におけるループフィルタのカットオフ周波数より低い周波数で変調される
半導体装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置において、
制御信号に応じて、外部信号線と前記ループバック回線の一方を選択して前記CDR回路に接続するセレクタを更に具備する
半導体装置。
【請求項12】
PLL(Phase Locked Loop)回路が、周波数変調された参照クロックに基づいて、受信用クロック及び送信用クロックを生成するステップと、
シリアライザが、前記送信用クロックに応じたタイミングでパラレルデータをシリアル化して出力するステップと、
前記シリアライザから出力されたシリアルデータが、ループバック回線を介して受信データとしてCDR(Clock Data Recovery)回路に入力するステップと、
前記CDR回路が、前記受信用クロックに基づいて、前記受信データに対するクロックデータリカバリを実行し、再生データを生成するステップと、
デシリアライザが、前記再生データをパラレル化するステップと、
を具備する
テスト方法。
【請求項13】
請求項12に記載のテスト方法において、
前記再生データを生成するステップは、前記CDR回路が、前記受信用クロックの位相を調整して前記受信データから前記再生データを抽出するための再生クロックを生成するステップを備え、
遅延回路が、前記再生クロックと、前記ループバック回線を介して前記CDR回路に入力される受信データとの遅延差を生成するステップを更に具備する
テスト方法。
【請求項14】
請求項13に記載のテスト方法において、
前記遅延差を生成するステップは、前記ループバック回線を通過する信号を遅延させるステップを備える
テスト方法。
【請求項15】
請求項13に記載のテスト方法において、
前記遅延差を生成するステップは、前記送信用クロックを遅延させるステップを備える
テスト方法。
【請求項16】
請求項13に記載のテスト方法において、
前記遅延差を生成するステップは、前記受信用クロックを遅延させるステップを備える
テスト方法。
【請求項17】
請求項13に記載のテスト方法において、
前記遅延回路で発生する遅延時間を設定するステップを更に具備する
テスト方法。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか1項に記載のテスト方法において、
テスト用パラレルデータを生成するステップと、
前記テスト用パラレルデータと前記デシリアライザから出力されるパラレルデータとの比較結果に基づいてエラー判定を行うステップと
を更に具備する
テスト方法。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか1項に記載のテスト方法において、
前記CDR回路における受信用クロックに対する調整頻度が所定の範囲内か否かを監視するステップを更に具備する
テスト方法。
【請求項20】
請求項19に記載のテスト方法において、
前記監視結果に応じて前記CDR回路における位相追従機能に異常があるか否かを判定するステップを更に具備する
テスト方法。
【請求項21】
請求項12から20のいずれか1項に記載のテスト方法において、
前記参照クロックは、前記PLL回路におけるループフィルタのカットオフ周波数より低い周波数で変調される
テスト方法。
【請求項22】
請求項12から21のいずれか1項に記載のテスト方法において、
制御信号に応じて、外部信号線と前記ループバック回線の一方を選択して前記CDR回路に接続するステップを更に具備する
テスト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−171808(P2011−171808A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31194(P2010−31194)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】