説明

半導体装置の製造方法

【課題】ゲート絶縁膜の側壁を熱酸化させて修復する際に、Ti元素を含む金属材料からなるゲート電極膜の酸化を抑制する。
【解決手段】基板上に形成されたゲート絶縁膜の側壁にプラズマによって活性化させた反応ガスを供給する工程を有する半導体装置の製造方法であって、ゲート絶縁膜上にはTi元素を含む金属材料からなるゲート電極膜が形成されており、前記反応ガス中に含まれるOガスの流量を、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/19以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、基板上にプラズマによって活性化させたガスを供給する工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやDRAM等の半導体装置の製造方法では、シリコンウエハ等の基板上に絶縁膜を形成する工程、絶縁膜上に導電膜を積層する工程、絶縁膜及び導電膜をドライエッチング等の手法を用いてパターニングして基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極膜を形成する工程、が順次実施される。上述のゲート絶縁膜及びゲート電極膜を形成する工程においては、エッチングによりゲート絶縁膜の側壁がダメージを受けてしまう場合があった。側壁のダメージは、半導体装置の信頼性を低下させたり、半導体装置の製造歩留りを悪化させたりする一要因となりうる。そこで、側壁のダメージを修復するため、ゲート絶縁膜の側壁に酸素ガスを供給してゲート絶縁膜の側壁を熱酸化させる修復工程が、ゲート絶縁膜及びゲート電極膜を形成する工程の後に行われてきた。
【0003】
なお、近年、ゲート電極の低抵抗化を図るため、ゲート電極膜の材料として、これまで用いられてきたポリシリコンに代わり、例えばW,Ru,Ta,Moといった金属材料が用いられるようになってきた。しかしながら、金属材料からなるゲート電極膜は酸化し易いため、上述の修復工程を実施するとゲート電極膜までもが酸化されてしまい、ゲート電極膜の抵抗値が上昇してしまう場合があった。そのため、上述の修復工程において、酸素ガス中に水素ガスを含有させることにより、ゲート電極膜の酸化を抑制させつつゲート絶縁膜のみを選択的に酸化させる選択酸化方法が用いられるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の選択酸化方法を用いたとしても、Ti元素を含む金属材料によりゲート電極を構成すると、修復工程を実施することによりゲート電極膜が酸化してしまい、ゲート電極膜の抵抗値が上昇してしまう場合があった。すなわち、Tiは金属材料の中でも特に酸化されやすい材料であるため、従来から行われている一般的な選択酸化方法では、ゲート電極膜の酸化を抑制することは困難であった。
【0005】
本発明は、ゲート絶縁膜の側壁を熱酸化させて修復する際に、Ti元素を含む金属材料からなるゲート電極膜の酸化を抑制することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、基板上に形成されたゲート絶縁膜の側壁にプラズマによって活性化させた反応ガスを供給する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記ゲート絶縁膜上にはTi元素を含む金属材料からなるゲート電極膜が形成されており、前記反応ガス中に含まれるOガスの流量を、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/19以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、ゲート絶縁膜の側壁を熱酸化させて修復する際に、Ti元素を含む金属材料からなるゲート電極膜の酸化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
以下に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の断面構成図である。MMT装置とは、電界と磁界とにより高密度プラズマを発生できる変形マグネトロン型プラズマ源(Modified Magnetron Typed Plasma Source)を用い、例えば基板としてのウエハ200を、プラズマを用いて処理する装置である。
【0009】
基板処理装置は、例えばシリコンからなる基板としてのウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202は、ウエハ200を収容する処理室201と、処理室201内に反応ガスを供給するガス供給ラインと、処理室201内のガスを排気するガス排気ラインと、処理室201内にプラズマを発生させるプラズマ発生機構と、処理室201内に収容された前記基板を加熱する加熱機構と、ガス供給ライン、排気ライン、プラズマ発生機構、及び加熱機構をそれぞれ制御する制御部としてのコントローラ121と、を備えている。
【0010】
(処理室)
図1に示すとおり、処理炉202が備える処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211と、を備えている。上側容器210が下側容器211の上に被せられることにより、上側容器210及び下側容器211内に処理室201が構成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム又は石英等の非金属材料により構成され、下側容器211は、例えばアルミニウムにより構成されている。
【0011】
処理室201内の底側中央には、ウエハ200を保持するための基板保持手段としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217は、ウエハ200上に形成する膜の金属汚染を低減することが出来るよう、例えば、窒化アルミニウムやセラミックス、又は石英等の非金属材料により構成されている。
【0012】
サセプタ217の内部には、加熱手段としてのヒータ(図中省略)が一体的に埋め込まれており、サセプタ217上に載置されたウエハ200を加熱できるようになっている。ヒータに電力を供給することで、ウエハ200の温度を所定の温度(例えば350℃〜700℃)に昇温できるようになっている。
【0013】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217の内部には、インピーダンスを変化させる電極としての第2の電極(図中省略)が装備されている。この第2の電極は、インピーダンス可変手段274を介して接地されている。インピーダンス可変手段274は、コイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのパターン数や可変コンデンサの容量値を制御することにより、第2の電極(図中省略)及びサセプタ217を介して、ウエハ200の電位を制御できるようになっている。
【0014】
サセプタ217には、サセプタ217を昇降させるサセプタ昇降手段268が設けられている。サセプタ217には、貫通孔217aが設けられている。一方、前述の下側容器211底面には、ウエハ200を突上げるウエハ突上げピン266が、少なくとも3箇所設けられている。サセプタ昇降手段268によりサセプタ217が下降させられた時には、ウエハ突上げピン266が、サセプタ217とは非接触な状態で貫通孔217aを突き抜けるように、貫通孔217a及びウエハ突上げピン266がそれぞれ配置されている。
【0015】
下側容器211の側壁には、仕切弁としてのゲートバルブ244が設けられている。ゲ
ートバルブ244を開けることにより、搬送手段(図中省略)を用いて処理室201内外にウエハ200を搬送することができるよう構成されている。ゲートバルブ244を閉めることにより、処理室201を気密に封止することができるよう構成されている。
【0016】
(ガス供給ライン)
処理室201の上部には、処理室201内へ反応ガスや不活性ガスを供給するシャワーヘッド236が設けられている。シャワーヘッド236は、キャップ状の蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239を備えている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される反応ガスや不活性ガスを分散して処理室201内へ供給する分散空間として機能する。
【0017】
ガス導入口234には、反応ガスとしてのOガスを供給する酸素ガス供給管232aと、反応ガスとしてのHガスを供給する水素ガス供給管232bと、不活性ガス(パージガス)としてのNガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素ガス供給管232aには、酸素ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ251a、開閉弁であるバルブ252aが上流から順に接続されている。水素ガス供給管232bには、水素ガス供給源250b、流量制御装置としてのマスフローコントローラ251b、開閉弁であるバルブ252bが上流から順に接続されている。不活性ガス供給管232cには、不活性ガス供給源250c、流量制御装置としてのマスフローコントローラ251c、開閉弁であるバルブ252cが上流から順に接続されている。主に、酸素ガス供給管232a、水素ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、酸素ガス供給源250a、水素ガス供給源250b、不活性ガス供給源250c、マスフローコントローラ251a〜252c、バルブ252a〜252cにより、ガス供給ラインが構成される。バルブ252a〜252cを開閉させることにより、マスフローコントローラ251a〜252cにより流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内にOガス、Hガス、Nガスを供給自在に構成されている。
【0018】
(ガス排気ライン)
下側容器211の側壁下方にはガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231が接続されている。ガス排気管231には、圧力調整器であるAPC242、開閉弁であるバルブ243b、排気装置である真空ポンプ246が、上流から順に接続されている。主に、ガス排気管231、APC242、バルブ243b、真空ポンプ246により、処理室201内のガスを排気するガス排気ラインが構成されている。真空ポンプ246を作動させ、バルブ243bを開けることにより、処理室201内の排気することが可能なように構成されている。また、APC242の開度を調整することにより、処理室201内の圧力値を調整自在に構成されている。
【0019】
(プラズマ発生機構)
処理容器203(上側容器210)の外周には、処理室201内のプラズマ生成領域224を囲うように、第1の電極としての筒状電極215が設けられている。筒状電極215は、筒状、例えば円筒状に形成されている。筒状電極215には、インピーダンスの整合を行うための整合器272を介して、高周波電力を発生する高周波電源273が接続されている。
【0020】
また、筒状電極215の外側表面の上下端側には、上部磁石216a及び下部磁石216bがそれぞれ取り付けられている。上部磁石216a及び下部磁石216bは、筒状、例えばリング状に形成された永久磁石によりそれぞれ構成されている。上部磁石216a及び下部磁石216bは、処理室201の半径方向に沿った両端(すなわち、各磁石の内周端と外周端)にそれぞれ磁極を有している。そして、上部磁石216a及び下部磁石2
16bの磁極の向きは、互いに逆向きになるよう配置されている。すなわち、上部磁石216a及び下部磁石216bの内周部の磁極同士は異極となっている。これにより、筒状電極215の内側表面に沿って、円筒軸方向の磁力線が形成される。
【0021】
主に、筒状電極215、整合器272、高周波電源273、上部磁石216a、下部磁石216bにより、プラズマ発生機構が構成される。処理室201内に反応ガスとしてのOガスとHガスとの混合ガスを導入した後、筒状電極215に高周波電力を供給して電界を形成するとともに、上部磁石216a及び下部磁石216bを用いて磁界が形成されることにより、処理室201内にマグネトロン放電プラズマが生成される。この際、上述の電磁界が、放出された電子を周回運動させることにより、プラズマの電離生成率が高まり、長寿命の高密度プラズマを生成させることができる。
【0022】
なお、筒状電極215、上部磁石216a、及び下部磁石216bの周囲には、これらが形成する電磁界が外部環境や他処理炉等の装置に悪影響を及ぼさないように、電磁界を有効に遮蔽するための遮蔽板223が設けられている。
【0023】
(コントローラ)
制御手段としてのコントローラ121は、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b、及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降手段268を、信号線Cを通じてゲートバルブ244を、信号線Dを通じて整合器272、及び高周波電源273を、信号線Eを通じてマスフローコントローラ251a〜252c、バルブ252a〜252cを、さらに図示しない信号線を通じてサセプタに埋め込まれたヒータやインピーダンス可変手段274を、それぞれ制御するように構成されている。
【0024】
(2)半導体装置の製造方法
続いて、上記の基板処理装置により実施される本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0025】
(ウエハの搬入工程)
まず、ウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0026】
続いて、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送手段を用いて処理室201内にウエハ200を搬入する。その結果、ウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。
【0027】
なお、ウエハ200の表面には、ゲート絶縁膜11a及びゲート電極膜12aが予め形成されているものとする。ゲート絶縁膜11a及びゲート電極膜12aが形成される様子を、図2(a)〜図2(d)に示す。図2は、本発明の一実施形態にかかる修復工程を含む基板処理工程を例示する概略図である。まず、図2(a)に示すように、シリコンからなるウエハ200の表面に、SiO等からなる絶縁膜(酸化膜)11を形成する。続いて、図2(b)に示すように、Ti元素を含む金属材料からなる導電膜(金属膜)12を絶縁膜11上に形成する。続いて、図2(c)に示すように、導電膜12の表面に所定のレジストパターン13を形成する。続いて、図2(d)に示すように、レジストパターン13をマスクとし、ドライエッチング等の手法を用いて絶縁膜11及び導電膜12をエッチングし、ゲート絶縁膜11a及びゲート電極膜12aをウエハ200上に形成する。なお、ゲート絶縁膜11aの側壁11bは、ドライエッチングの際にダメージを受けている。
【0028】
処理室201内にウエハ200を搬入したら、搬送手段を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降手段268を用いてサセプタ217を上昇させる。その結果、ウエハ200はサセプタ217の上面に配置される。その後、ウエハ200を所定の処理位置まで上昇させる。
【0029】
なお、ウエハ200を処理室201内に搬入する際には、ガス排気ラインにより処理室201内を排気しつつ、ガス供給ラインから処理室201内に不活性ガスとしてのNガスを供給し、処理室201内をNガスで満たすと共に、酸素濃度を低減させておくことが好ましい。すなわち、真空ポンプ246を作動させ、バルブ243bを開けることにより、処理室201内を排気しつつ、バルブ252cを開けることにより、バッファ室237を介して処理室201内にNガスを供給することが好ましい。
【0030】
(ウエハの昇温工程)
続いて、サセプタの内部に埋め込まれたヒータ(図示せず)に電力を供給し、ウエハ200の温度が所定温度(本実施形態では350℃以下)になるように加熱する。
【0031】
(反応ガスの導入工程)
続いて、バルブ252cを閉め、バルブ252a,252bを開け、OガスとHガスとの混合ガスである反応ガスを、バッファ室237を介して処理室201内に導入(供給)する。このとき、反応ガス中に含まれるOガスの流量を例えば50sccmとし、反応ガス中に含まれるHガスの流量を例えば950sccmとし、反応ガス中に含まれるOガスの流量を反応ガス中に含まれるHガスの流量の例えば1/19以下とするように、マスフローコントローラ251a,251bの開度をそれぞれ調整する。また、反応ガス供給後の処理室201内の圧力が、例えば15Pa以上250Pa以下となるように、APC242の開度を調整する。
【0032】
(反応ガスのプラズマ化工程)
反応ガスの導入を開始した後、筒状電極215に対して、高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することにより、処理室201内(ウエハ200の上方のプラズマ生成領域224内)にマグネトロン放電プラズマを生成させる。なお、印加する電力は、例えば800W以下の出力値とする。このときのインピーダンス可変手段274は、予め所望のインピーダンス値に制御しておく。
【0033】
上述のようにプラズマを生成させることにより、処理室201内に導入された反応ガス(OガスとHガスとの混合ガス)が活性化する。そして、ゲート絶縁膜11aの側壁11bが、プラズマにより活性化された反応ガス中に晒され、熱酸化される。そして、図2(e)に示すように、ゲート絶縁膜11aの側壁11bに新たな熱酸化膜11cが形成され、ドライエッチングの際に受けたダメージが修復される。
【0034】
その後、所定の処理時間(例えば30秒程度)経過したら、高周波電源273からの電力の印加を停止して、処理室201内におけるプラズマ生成を停止する。ゲート絶縁膜11aの側壁11bの熱酸化量は、Oガスの流量、Hガスの流量、処理室201内の圧力、ウエハ200の温度、高周波電源273からの供給電力量及び供給時間により規定される。
【0035】
ゲート絶縁膜11aの側壁11bを修復する際、Ti元素を含む金属材料からなるゲート電極膜12aも、プラズマにより活性化された反応ガス中に晒されることとなる。しかしながら、本実施形態では、反応ガス中に含まれるOガスの流量が、反応ガス中に含まれるHガスの流量の例えば1/19以下となるように、マスフローコントローラ251
a,251bの開度をそれぞれ調整している。そのため、ゲート電極膜12aの酸化は抑制される(酸化されたとしても還元される)こととなる。
【0036】
(処理室内の排気工程)
処理室201内におけるプラズマ生成を停止したら、バルブ252a,252bを閉めて処理室201内への反応ガスの供給を停止し、処理室201内を排気する。この際、バルブ252cを開けて処理室201内へNガスを供給し、処理室201内に残留している反応ガスや反応生成物の排出を促す。その後、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力を、処理室201に隣接するバキュームロックチャンバ(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力(例えば100Pa)に調整する。
【0037】
(ウエハの搬出工程)
処理室201内の圧力が大気圧に復帰したら、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送手段を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出し、本実施形態にかかる半導体装置の製造を終了する。その後、図2(f)に示すように、ゲート絶縁膜11aやゲート電極膜12aが形成されていないウエハ200表面近傍に、ソース領域14s、ドメイン領域14dを形成する工程や、レジストパターン13を剥離して除去する工程が実施される。
【0038】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0039】
(a)本実施形態によれば、反応ガスのプラズマ化工程において、ゲート絶縁膜11aの側壁11bが、プラズマにより活性化された反応ガス中に晒され、熱酸化される。そして、ゲート絶縁膜11aの側壁11bに新たな熱酸化膜11cが形成され、ドライエッチングの際に受けたダメージが修復される。その結果、半導体装置の信頼性が向上し、半導体装置の製造歩留りが改善する。
【0040】
(b)本実施形態によれば、反応ガスのプラズマ化工程において、Ti元素を含む金属材料からなるゲート電極膜12aも、プラズマにより活性化された反応ガス中に晒されることとなる。しかしながら、本実施形態では、反応ガス中に含まれるOガスの流量が、反応ガス中に含まれるHガスの流量の例えば1/19以下となるように、マスフローコントローラ251a,251bの開度をそれぞれ調整している。そのため、ゲート電極膜12aの酸化を抑制でき(酸化されたとしても還元でき)、ゲート電極膜12aの抵抗値の上昇を抑制することが可能となる。
【0041】
なお、Ti元素を含む金属材料からなるゲート電極膜12aの酸化具合は、ゲート電極膜12aに436nm又は633nmの波長の光を照射したときの反射光の光量を測定することにより把握することができる。Ti元素を含む金属材料は、酸化すると色彩が薄くなり、反射する光量が増加するからである。図4は、反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比を変化させたときのゲート電極膜の反射率比を示す表図(実験結果)である。図中において、「流量比」は、「反応ガス中におけるOガスの流量(sccm)/反応ガス中におけるHガスの流量(sccm)」を示しており、「反射率比」は、「酸化後の光量/酸化前の光量」を示している。図4におけるその他の処理条件は、上述の実施形態と同様である。図4によれば、流量比が1/19以下であれば、「反射率比」を1.9以下とすることができ、ゲート電極膜12aの酸化を抑制できることが分かる。なお、反応ガス中におけるOガスの流量が少なすぎると、ゲート絶縁膜11aの側壁11bの熱酸化の進行が遅くなりすぎるため、流量比は例えば1/999以上1/19以下とすることが好ましい。また、流量比を1/39以上1/19以下とする
ことにより、ゲート絶縁膜11aの側壁11bの熱酸化を十分に進行させつつ、「反射率比」を1.8以上1.9以下とし、ゲート電極膜12aの酸化を十分に抑制できることが分かる。一方、反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比が1/19を超える(例えば1/9とする)と、「反射率比」は例えば2.5に増大し、ゲート電極膜12aの酸化が進行してしまうことが分かる。
【0042】
図3は、従来の基板処理工程を例示する概略図である。従来の基板処理工程のように、反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比が1/19を超えている場合には、ゲート絶縁膜11aの側壁11bを修復しようとすると、図3(e)に示すようにゲート電極膜12aの側壁12c等までもが酸化されてしまい、ゲート電極膜12aの抵抗値が上昇してしまう場合があった。これに対して、本実施形態によれば、反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比を19以上になるよう調整されているので、ゲート電極膜12aの酸化が抑制される。
【0043】
(c)本実施形態によれば、反応ガスのプラズマ化工程において、ウエハ200の温度が350℃以下になるように、サセプタの内部に埋め込まれたヒータ(図示せず)を加熱している。そのため、ゲート電極膜12aの酸化をより確実に抑制し、ゲート電極膜12aの抵抗値の上昇をより確実に抑制することが可能となる。
【0044】
(d)本実施形態によれば、反応ガスのプラズマ化工程において、ゲート絶縁膜11a及びゲート電極膜12aがプラズマにより活性化された反応ガス中に晒される時間を30秒程度としている。そのため、ゲート電極膜12aの酸化をより確実に抑制し、ゲート電極膜12aの抵抗値の上昇をより確実に抑制することが可能となる。
【0045】
図5は、ウエハ200の温度、及び処理時間(プラズマにより活性化された反応ガスにゲート電極膜12aを晒す時間)をそれぞれ変化させたときのゲート電極膜12aの反射率比を示す表図(実験結果)である。図5においても、「反射率比」は「酸化後の光量/酸化前の光量」を示している。その他の処理条件は、上述の実施形態と同様である。図5によれば、ウエハ200の温度が高くなるほど反射率比が大きく、ゲート電極膜12aの酸化が進行してしまっていることが分かる。また、処理時間が増大すると(処理時間が240秒の場合の方が、処理時間が60秒の場合よりも)反射率比が大きく、ゲート電極膜12aの酸化が進行してしまっていることが分かる。図5によれば、ウエハ200の温度を350℃以下とし、処理時間を60秒以下とすることにより、反射率比を1.1以下とすることができ、ゲート電極膜12aの酸化をほぼ完全に抑制できることが分かる。
【0046】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、ウエハの昇温工程において、ウエハ200の温度が例えば350℃以下となるように加熱していた。また、上述の実施形態では、反応ガス中に含まれるOガスの流量を例えば50sccmとし、反応ガス中に含まれるHガスの流量を例えば950sccmとし、反応ガス中に含まれるOガスの流量を反応ガス中に含まれるHガスの流量の例えば1/19以下としていた。
【0047】
しかしながら、本発明は係る温度条件や流量比率に限定されない。例えば、ウエハ200の温度が例えば550℃以上700℃以下となるように加熱する。また、反応ガス中に含まれるOガスの流量を例えば10sccmとし、反応ガス中に含まれるHガスの流量を例えば990sccmとし、反応ガス中に含まれるOガスの流量を反応ガス中に含まれるHガスの流量の例えば1/99以下としてもよい。その他の条件は上述の実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態によれば、ウエハ200の温度を高くしたとしても、反応ガス中におけるO
ガスの流量とHガスの流量との比率を上述のように設定しているため、ウエハ200上に形成された膜の膜質(膜特性)を改善しつつ、ゲート電極膜12aの抵抗値の上昇を半導体装置のデバイス特性に影響ない程度に抑制することができる。つまり、ウエハ200の処理温度を上昇させて膜質(膜特性)を改善させた場合であっても、反応ガス中に含まれるOガスに対するHガスの流量比率を高めることにより、ゲート電極膜12aの酸化を抑制し、ゲート電極膜12aの抵抗値の上昇を抑制することが可能となる。
【0049】
図6は、ウエハ200の温度、及び反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比をそれぞれ変化させたときのゲート電極膜の反射率比を示す表図である。図6においても、「流量比」は、「反応ガス中におけるOガスの流量(sccm)/反応ガス中におけるHガスの流量(sccm)」を示しており、「反射率比」は「酸化後の光量/酸化前の光量」を示している。その他の条件は、上述の実施形態と同様である。図6によれば、ウエハ200の温度が高くなるほど反射率比が大きくなり、ゲート電極膜12aの酸化が進行してしまうことが分かる。ただし、図6によれば、ウエハ200の温度を高くした場合であっても、反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比を増大させることにより、ゲート電極膜12aの酸化の進行を抑制できることが分かる。例えば、ウエハ200の温度を550℃以上700℃以下とした場合であっても、反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比を例えば1/999以上1/99以下とすることにより、「反射率比」を1.9以下とすることができ、ゲート電極膜12aの酸化が抑制できることが分かる。
【0050】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0051】
本発明の一態様によれば、
基板上に形成されたゲート絶縁膜の側壁にプラズマによって活性化させた反応ガスを供給する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ゲート絶縁膜上にはTi元素を含む金属材料からなるゲート電極膜が形成されており、
前記反応ガス中に含まれるOガスの流量を、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/19以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0052】
好ましくは、前記反応ガス中に含まれるOガスの流量を、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/999以上1/19以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0053】
好ましくは、前記反応ガス中に含まれるOガスの流量を、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/39以上1/19以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0054】
好ましくは、前記基板の温度を550℃以上700℃以下とする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0055】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内に反応ガスを供給するガス供給ラインと、
前記処理室内のガスを排気するガス排気ラインと、
前記処理室内にプラズマを発生させるプラズマ発生機構と、
前記処理室内に収容された前記基板を加熱する加熱機構と、
前記ガス供給ライン、前記排気ライン、前記プラズマ発生機構、及び前記加熱機構をそれぞれ制御する制御部と、を備えた基板処理装置であって、
前記制御部は、
前記処理室内に供給される反応ガス中に含まれるOガスの流量が、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/19以下となるように前記ガス供給ラインを制御する
ことを特徴とする基板処理装置。
【0056】
好ましくは、
前記制御部は、
前記処理室内に供給される反応ガス中に含まれるOガスの流量が、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/39以上1/19以下となるように前記ガス供給ラインを制御する基板処理装置が提供される。
【0057】
好ましくは、
前記制御部は、
前記処理室内に供給される反応ガス中に含まれるOガスの流量が、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/999以上1/19以下となるように前記ガス供給ラインを制御する基板処理装置が提供される。
【0058】
好ましくは、
前記制御部は、
前記処理室内に収容された基板の温度が550℃以上700℃以下となるように前記加熱機構を制御する基板処理装置が提供される。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態限定されるものではなく、その用紙を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる修復工程を含む基板処理工程を例示する概略図である。
【図3】従来の基板処理工程を例示する概略図である。
【図4】反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比を変化させたときのゲート電極膜の反射率比を示す表図である。
【図5】ウエハの温度及び処理時間をそれぞれ変化させたときのゲート電極膜の反射率比を示す表図である。
【図6】ウエハの温度、及び反応ガス中におけるOガスと反応ガス中におけるHガスとの流量比をそれぞれ変化させたときのゲート電極膜の反射率比を示す表図である。
【符号の説明】
【0061】
11a ゲート絶縁膜
11b 側壁
12a ゲート電極膜
12c 側壁
200 ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたゲート絶縁膜の側壁にプラズマによって活性化させた反応ガスを供給する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ゲート絶縁膜上にはTi元素を含む金属材料からなるゲート電極膜が形成されており、
前記反応ガス中に含まれるOガスの流量を、前記反応ガス中に含まれるHガスの流量の1/19以下とする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−118489(P2010−118489A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290563(P2008−290563)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】