説明

半導体装置の製造方法

【課題】配線付支持部材と配線付半導体チップとをダイボンディングフィルムで加熱圧着する際、未充填部位を好適に取り除くことを可能とするとともに、良好な吸湿リフロー耐性を有すること。
【解決手段】本発明の半導体装置10の製造方法は、配線6付き支持部材4と配線3付き半導体チップ2とをダイボンディングフィルム1を介して加熱圧着する加熱圧着工程と、加熱圧着工程後、ダイボンディングフィルム1を加熱する熱硬化工程と、熱硬化工程後、支持部材の配線と半導体チップの配線をボンディングワイヤ8で接続するワイヤボンディング工程と、ワイヤボンディング工程後、支持部材4と半導体チップ2とを封止する封止工程と、を備え、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aとして、熱硬化工程におけるフィルム温度100℃〜120℃でのずり粘度が5000Pa・s以下である接着剤層を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと半導体チップ搭載用支持部材との接合には、銀ペーストが主に使用されていた。ところが、近年の半導体チップの小型化、高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化、細密化が要求されるようになってきた。さらに、携帯機器等の小型化、高密度化の要求に伴って、内部に複数の半導体チップを積層した半導体パッケージが開発、量産されている。しかし、上述の銀ペーストを用いた接合方法では、銀ペーストのはみ出しや、銀ペーストの流動性に起因する半導体チップの傾きによってワイヤボンディングに不具合が発生したり、銀ペーストの膜厚制御の困難性などが問題となっていた。そのため、最近では銀ペーストに代わってフィルム状のダイボンディング材(以下、「ダイボンディングフィルム」と言う。)が使用されるようになってきた。
【0003】
また、携帯機器に搭載されるメモリ容量の加速度的な増加に伴い、半導体パッケージ内に積層される半導体チップの積層段数が増大する傾向にある。より具体的には、携帯機器の総重量を抑制するために、半導体チップを多段積層した半導体パッケージの容積、重量を従来と変えずに、半導体チップの積層段数を増加させている。その結果、半導体チップを薄膜化する傾向にあり、100μm厚以下の半導体チップが使用されるようになってきた。
【0004】
例えば直径8インチ半導体ウェハの場合、700μm程度の厚みに切り出した後、半導体ウェハの裏面を研削することにより、所望の厚みの半導体ウェハを得る。従来では、半導体ウェハを薄く研削(バックグラインド)する際にウェハ回路面を保護するテープ(以下、「バックグラインドテープ」と言う。)を貼付け、研削後に該テープを剥離してからダイボンディングフィルムやダイシング基材へ貼り付けを行っていた。ところが、半導体ウェハが薄くなるにしたがって、搬送時に半導体ウェハが割れるリスクが高まる。そのため、バックグラインドテープを剥離せずにダイボンディングフィルム、ダイシング基材を貼り付けた後に、バックグラインドテープを剥離する手法がなされている。しかし、バックグラインドテープの耐熱温度の上限は80℃程度のため、ダイボンディングフィルムを半導体ウェハ裏面に貼付ける際は、80℃以下のラミネート温度で十分な密着性を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−074067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のダイボンディングフィルムは、例えば下記(1)又は(2)の方法で用いられる。
(1)任意のサイズに切り出したダイボンディングフィルムを配線付き半導体チップに貼り付け、その半導体チップを配線付き支持部材に加熱圧着する。
(2)ダイボンディングフィルムを半導体ウェハ裏面全体に貼り付けた後、ダイボンディングフィルムの裏面にダイシング基材を貼り付ける。その後、回転刃を用いて半導体ウェハをチップ化する。ダイボンディングフィルム付きの半導体チップをピックアップによりダイシング基材から剥離した後、当該半導体チップを配線付き支持部材に加熱圧着する。
【0007】
ところで、携帯電話や携帯音楽プレイヤー等に用いられる半導体パッケージでは、内部に複数の半導体チップが積層されたスタックドパッケージ構造が主流となっている。このような半導体パッケージでは、半導体チップ又は支持部材に設けられた配線の段差に起因して、ダイボンディングフィルムに未充填部位が残存している。この未充填部位を埋め込むには、樹脂封止の際に加わる高荷重で配線段差を充てんする方式(封止充てん方式)が主流である。
【0008】
しかしながら、半導体チップの積層段数が増加するにしたがって、封止工程の前に行われるワイヤボンディング工程に起因して、ダイボンディングフィルムへの熱履歴が増大する。その結果、ダイボンディングフィルムに配線段差が十分に充填されない部位(未充填部位、ボイド)が残存したまま、ダイボンディングフィルムが硬化することとなる。よって、封止工程の際に加わる高荷重で配線段差を充填することが困難となる。さらに、半導体パッケージの吸湿リフロー工程において、ダイボンディングフィルムが支持部材又は半導体チップから剥離してしまい、良好な半導体パッケージを得ることが困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、配線付き支持部材と配線付き半導体チップとをダイボンディングフィルムで加熱圧着する場合において、配線段差に起因するダイボンディングフィルムの未充填部位を効果的に取り除くことが可能であるとともに、良好な吸湿リフロー耐性を有する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決のため、本発明に係るフィルム状の接着剤層を含むダイボンディングフィルムを用いた半導体装置の製造方法は、配線付き支持部材と配線付き半導体チップとをダイボンディングフィルムを介して加熱圧着する加熱圧着工程と、加熱圧着工程後、ダイボンディングフィルムを加熱する熱硬化工程と、熱硬化工程後、支持部材の配線と半導体チップの配線をボンディングワイヤで接続するワイヤボンディング工程と、ワイヤボンディング工程後、支持部材と半導体チップとを封止する封止工程と、を備え、接着剤層として、熱硬化工程におけるフィルム温度100℃〜120℃でのずり粘度が5000Pa・s以下である接着剤層を用いる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法では、上述のずり粘度を有する接着剤層を含むダイボンディングフィルムを用いて、加熱圧着工程後であってワイヤボンディング工程前に、熱硬化工程を行う。その結果、配線段差に起因する未充填部位を効果的に埋め込むことができる。このようにワイヤボンディング工程前に未充填部位を効果的に取り除くことにより、ワイヤボンディング工程で未充填部位が残存したままダイボンディングフィルムが硬化してしまうことを抑制できる。従って、配線段差が十分に充填された半導体装置を得ることができる。さらに、後の吸湿リフロー工程時に当該ボイドが起点となって、ダイボンディングフィルムが半導体チップ又は支持部材から剥離することを抑制でき、半導体装置の高信頼性が得られる。
【0012】
また、上述の接着剤層として、加熱圧着工程における加熱温度100℃〜140℃での溶融粘度が50000Pa・s以下である接着剤層を用いることが好ましい。当該溶融粘度が50000Pa・s以下であると、加熱圧着工程後に未充填であった部位をより効果的に熱硬化工程で取り除くことができる。よって、ワイヤボンディング工程前にダイボンディングフィルム内に配線段差に起因する未充填部位が残存するおそれをより少なくできる。
【0013】
また、上述の前記接着剤層として、熱硬化性樹脂と無機フィラーとを少なくとも含む接着剤層を用いることが好ましい。接着剤層が熱硬化性樹脂を含むことにより、加熱圧着工程や熱硬化工程における入熱でダイボンディングフィルムの接着剤層を好適に硬化できる。また、接着剤層が無機フィラーを含むことにより、配線段差の充填性をより向上できる。
【0014】
また、上述の接着剤層として、ガラス転移温度10℃〜80℃で重量平均分子量20000〜100000のポリイミド樹脂を含む接着剤層を用いることが好ましい。重量平均分子量が20000未満であると、接着剤層の流動性が増加するものの、熱硬化工程時の入熱による発泡でボイドが発生するおそれがあり好ましくない。また、重量平均分子量が100000を超えると、接着剤層の粘度が増加し、熱硬化工程後における配線段差の充填を好適に行えず好ましくない。
【0015】
また、上述の接着剤層として、厚みが5μm〜80μmであり、40℃のプローブに対するフィルム未硬化時のタック力が1000mN以下である接着剤層を用いることが好ましい。この場合、ダイボンディングフィルムの接着剤層を接着させた半導体チップを割ることなくピックアップすることができる。よって、後の加熱圧着工程まで確実に半導体チップを好適に運ぶことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線付き支持部材と配線付き半導体チップとをダイボンディングフィルムで加熱圧着する場合、配線段差に起因する未充填部位を効果的に取り除くことが可能であるとともに、良好な吸湿リフロー耐性を有する半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ダイボンディングフィルムの一形態を示す側面図である。
【図2】図2は、配線付き半導体チップにダイボンディングフィルムが接着された一形態を示す側面図である。
【図3】図3は、配線付き支持部材の一形態を示す側面図である。
【図4】図4は、配線付き半導体チップと配線付き支持部材とが加熱圧着された後の一形態を示す側面図である。
【図5】図5は、配線付き半導体チップと配線付き支持部材とが熱硬化処理された後の一形態を示す側面図である。
【図6】図6は、配線付き半導体チップと配線付き支持部材とが樹脂封止された後の半導体装置の一形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るダイボンディングフィルムを用いた半導体装置の製造方法、及びダイボンディングフィルムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<ダイボンディングフィルムについて>
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるダイボンディングフィルム1は、接着剤層Aと基材フィルムBとを含む。接着剤層Aはフィルム状であり、熱硬化性樹脂と無機フィラーとを少なくとも含む。
【0020】
熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応を起こす反応性化合物である。このような化合物として、例えば、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。上記熱硬化性樹脂を使用する場合、その含量は、低アウトガス性とフィルム形成性(靭性)を両立でき、かつ熱硬化による耐熱性を有効に付与する観点で、適宜調整する。上記熱硬化性樹脂の硬化のために、硬化剤や触媒を使用することができ、必要に応じて硬化剤と硬化促進剤、又は触媒と助触媒を併用することができる。熱硬化性樹脂の具体例として、ビスアリルナジイミド、2官能以上のアクリレート化合物及び/又はメタクリレート化合物、エポキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、硬化促進剤を少なくとも含有するものがある。
【0021】
無機フィラーとして、絶縁性の無機フィラーが好ましく、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等からなるフィラーが挙げられる。これらの無機フィラーのうち粒径の異なる二種類以上のものを併用することもできる。中でもシリカは、高い接着力が得られ、かつ金属腐食を起こす原因となる不純物を少なくできるため、半導体装置の信頼性を向上できるので好ましい。また、ダイボンディングフィルムの膜厚方向の熱流動性と高い接着力を得る観点から、無機フィラーの形状は球状であることが好ましい。球状には、真球状、円粒状、楕円状などの形状が含まれる。無機フィラーの使用量は、付与する特性又は機能に応じて適宜決定される。
【0022】
ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aは更に、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は、2種以上の酸無水物と構造が異なる3種以上のアミンから作成されるポリイミド樹脂からなり、重量平均分子量20000〜100000であることが好ましく、より好ましくは重量平均分子量20000〜70000、特に好ましくは重量平均分子量20000〜50000である。重量平均分子量が20000未満であると、接着剤層の流動性が増加するものの、後述する熱硬化工程時の入熱による発泡でボイドが発生するおそれがあり好ましくない。また、重量平均分子量が100000を超えると、接着剤層の粘度が増加し、後述する熱硬化工程後における表面段差の充填を好適に行えず好ましくない。
【0023】
接着剤層Aのガラス転移温度は10℃〜80℃であることが好ましく、より好ましくは10℃〜70℃、さらに好ましくは10℃〜60℃である。接着剤層Aのガラス転移温度が60℃を超えると、ダイボンディングフィルム1の硬化前(Bステージ状態)の溶融粘度が高くなり加熱時に高流動化させることが困難になる傾向がある。
【0024】
接着剤層Aの厚さは特に制限はなく、ダイボンディングフィルムの膜厚やダイシングテープ一体型ダイボンディングフィルムの用途によって適宜、当業者の知識に基づいて定められるものであるが、例えば3μm〜80μmであることが好ましい。接着剤層Aの厚さが5μm未満であると、成膜性、取り扱いが困難となる傾向があり、80μmを超えると、経済性が悪く、成形性が困難になる傾向がある。これらの観点から接着剤層Aの厚さは5μm〜60μmであることがより好ましく、5μm〜40μmであることが特に好ましい。
【0025】
基材フィルムBとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。基材フィルムBは、これらのフィルムを2種以上組み合わせた多層フィルムとしてもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理された基材であってもよい。
【0026】
<ダイボンディングフィルム1の作製について>
以下に、本実施形態に係るダイボンディングフィルム1の作製方法の一例を説明する。
(1)接着剤層Aを構成するワニスの調製
まず、ポリイミド溶液、熱硬化性成分、無機フィラー、及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニス(接着剤層A塗工用のワニス)を調製する。例えば、熱可塑性樹脂、ビスアリルナジイミド、2官能以上のアクリレート化合物、必要に応じて、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、フィラー、及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。上記各成分の混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。ワニスの調製に用いる有機溶媒は、前記各成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらのなかでも、乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を使用することが好ましい。ワニスの調製に用いる際の有機溶媒の使用量には特に制限はなく、有機溶媒は加熱乾燥等によりダイボンディングフィルム1から除去されるものであるが、ダイボンディングフィルム1作製後の有機溶媒量(残存揮発分)は、全重量基準で0.01質量%〜3質量%であることが好ましく、耐熱信頼性の観点からは全重量基準で、0.01質量%〜2質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
(2)基材フィルムBへのワニスの塗工
基材フィルムB上に上記(1)で得られたワニスを塗工し、ワニスの層(接着剤層A)を形成する。ワニスの塗工には、例えばアプリケータ自動塗工機を用いることができ、塗工されるワニスの厚みは、最終的なダイボンディングフィルム1の厚さを考慮して決定されるが、例えば3μm〜100μmとする。
【0028】
(3)加熱乾燥
上記(2)で得られた、接着剤層A付き基材フィルムBを加熱乾燥する。加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、例えば50℃〜200℃で、0.1分〜90分間加熱して行う。加熱乾燥後、接着剤層Aから基材フィルムBを除去することにより、Bステージ状態のフィルム状の接着剤層Aを得ることができる。
【0029】
<半導体装置の製造方法>
以下、本実施形態に係るダイボンディングフィルム1を用いる半導体装置の製造方法の一例を説明する。
(1)貼り合わせ(ラミネート)工程
まず、上述のダイボンディングフィルム1を半導体ウェハに貼り合わせる。貼り合わせ方法として、例えば、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを半導体ウェハに貼り合わせた後、ダイボンディングフィルム1から基材フィルムBを剥がし、接着剤層Aをダイシングテープの粘着剤層に貼り合せる方法がある。あるいは、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aをダイシングテープの粘着剤層に貼り合わせた後、ダイボンディングフィルム1から基材フィルムBを剥がし、接着剤層Aに半導体ウェハを貼り合せる方法が挙げられる。
【0030】
上述の半導体ウェハとしては特に限定されないが、吸湿リフロー耐性に優れた半導体装置を作製する観点から、半導体ウェハの厚さは100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。本実施形態では、配線が半導体ウェハ上に予め設けられている。
【0031】
上述のダイシングテープとしては特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、必要に応じて、ダイシングテープに対して、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理などの表面処理を実施してもよい。
【0032】
(2)ダイシング工程
上記いずれかの貼り合わせ方法を用いて、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aと半導体ウェハを貼り合わせた後に、切断装置(ダイサー)の回転刃で所望の大きさのチップにダイシング(切断)する。これにより、図2に示すように、チップ側配線3が上面に形成されるとともにダイボンディングフィルム1の接着剤層Aが裏面に貼り付けられた半導体チップ2が得られる。ダイシング工程では、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを完全に切断するフルカット法を適用できる。あるいは、ダイボンディングフィルムの接着剤層Aを完全に切断せず一部を残すハーフカット法を適用できる。
【0033】
例えばハーフカット法の場合、切断されずに残ったダイボンディングフィルム1の接着剤層Aは、次工程のピックアップダイボンダーによるピックアップ工程時にダイシングテープを拡張すること、及び/又はピックアップ工程時に突き上げ針などの治具で押し上げることで切り込んだ部分を起点として分割することもできる。ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを切断する際に使用するダイサーや回転刃(ブレード)は上市されているものを適宜使用できる。ダイサーとして、例えば株式会社ディスコ製のフルオートマチックダイシングソー6000シリーズやセミオートマチックダイシングソー3000シリーズなどを使用できる。ブレードとして、例えば株式会社ディスコ製のダイシングブレードNBC−ZH05シリーズやNBC−ZHシリーズなどを使用できる。あるいは、ダイシング工程では、例えば、株式会社ディスコ製のフルオートマチックレーザソー7000シリーズなどのレーザを用いて切断する方法、すなわち、レーザーアブレーション加工又はステルスダイシング加工も適用可能である。
【0034】
(3)ピックアップ工程及び加熱圧着工程
次いで、チップ側配線3が上面に形成されるとともにダイボンディングフィルム1の接着剤層Aが裏面に貼り付けられた半導体チップ2をピックアップする。ダイシング工程によって個片化された接着剤層A付き半導体チップ2は、上市されているピックアップダイボンダーを適宜使用することでピックアップ及び加熱圧着できる。例えば、ルネサス東日本セミコンダクタ社製のフレキシブルダイボンダーDB−730やDB−700、株式会社新川製のダイボンダーSPA−300やSPA−400、キャノンマシナリ株式会社製BESTEM−D02等を適用できる。
【0035】
本実施形態では、図3に示すような支持部材側配線6付きの支持部材4に、ピックアップした配線3付き半導体チップ2をダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを介して接着する。より具体的には、支持部材4及び支持部材側配線6に、ピックアップした半導体チップ2の裏面(すなわちチップ側配線3の設けられていない面)を接着剤層Aを介して接着する。なお、支持部材4の孔部Hには、支持部材側配線6に接続するはんだボール等の端子5が充填されている。
【0036】
加熱圧着工程における加熱温度は、60℃〜150℃であることが好ましく、80℃〜140℃がより好ましく、100℃〜130℃がさらに好ましい。加熱温度が60℃より下回るとダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの粘度が下がらないので、配線段差を埋め込むことが難しくなる可能性がある。また加熱温度が150℃以上になると、支持部材4側の反りが増大し、ダイボンダーなどで搬送することが難しくなる可能性がある。また、加熱圧着工程における荷重は0.01MPa〜1MPa、加熱時間は0.1秒〜3秒の範囲で行うことができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、チップ側配線3が上面に形成されるとともにダイボンディングフィルム1が裏面に貼り付けられた別の半導体チップ2を先の半導体チップ2上に加熱圧着する。より具体的には、支持部材4上に先に貼り付けられた半導体チップ2の配線3上に、別の半導体チップ2の裏面に設けられたダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを介して、当該別の半導体チップ2を接着する。これらの加熱圧着工程後において、各ダイボンディングフィルム1の接着剤層A内には、未充填部位Vが残存している。
【0038】
(4)熱硬化工程
加熱圧着工程後、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを加熱する熱硬化工程を行う。当該熱硬化工程では、接着剤層Aのフィルム温度が室温〜150℃となるように加熱処理を行うことが好ましく、フィルム温度が80℃〜130℃となるように加熱処理を行うことがより好ましく、フィルム温度が100℃〜120℃となるように加熱処理を行うことがさらに好ましい。この熱硬化工程は、ワイヤボンディング工程前及び封止工程前に行われ、加熱圧着工程後に未充填であった部位(未充填部位V)の充填を完結させるために行われる。図5に熱硬化工程後の積層体の状態を示す。この状態では、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aに未充填部位Vが完全に無いことが好ましい。
【0039】
(5)ワイヤボンディング工程
続いて、図6に示すように、ボンディングワイヤ8を用いてチップ側配線3と支持部材側配線6とを接続するワイヤボンディング工程を行う。
【0040】
(6)封止工程及び熱硬化工程
次いで、図6に示すように、支持部材側配線6付き支持部材4と、チップ側配線3付き半導体チップ2とを含む積層体上に、封止樹脂9を成型して封止する。ここで、ダイボンディングフィルム1の接着剤層A、半導体チップ2、チップ側配線3、支持部材4、支持部材側配線6、及びボンディングワイヤ8が、封止樹脂9によって封止される。その後、再び熱硬化処理を行い、半導体装置(半導体パッケージ)10を得る。以上のように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、半導体装置10内のダイボンディングフィルム1の接着剤層Aは、加熱圧着工程、熱硬化工程、封止工程、及びその後の熱硬化工程における入熱により硬化されることとなる。
【0041】
<ダイボンディングフィルム1の物性について>
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるダイボンディングフィルム1の物性について説明する。
【0042】
(熱硬化工程におけるダイボンディングフィルム1のずり粘度)
上述の加熱圧着工程の後であってワイヤボンディング工程前に行われる熱硬化工程では、フィルム温度100℃〜120℃で加熱したときのずり粘度が5000Pa・s以下である接着剤層A(B〜Cステージ状態)を用いる。当該接着剤層Aを用いて熱硬化工程を行うことにより、配線段差に起因する未充填部位Vを効果的に埋め込むことができる。このようにワイヤボンディング工程前に未充填部位を効果的に取り除くことにより、ワイヤボンディング工程で未充填部位が残存したままダイボンディングフィルムが硬化してしまうことを抑制できる。従って、配線段差が十分に充填された半導体装置を得ることができる。さらに、後の吸湿リフロー工程時に当該ボイドが起点となって、ダイボンディングフィルムが半導体チップ又は支持部材から剥離することを抑制でき、半導体装置の高信頼性が得られる。
【0043】
また、フィルム温度100℃〜120℃で加熱したときの当該接着剤層Aのずり粘度は3000Pa・s以下であることがより好ましい。また、当該ずり粘度の下限値は特に制限されないが、500Pa・sより小さい場合、熱硬化工程における加熱時にダイボンディングフィルム1の接着剤層Aが発泡するおそれや、ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの硬化が遅くなり生産性が低下する可能性がある。また、当該熱硬化工程ではダイボンディングフィルム1の接着剤層Aをフィルム温度100℃〜120℃で加熱することが好ましいが、室温からの昇温がより好ましい。このときの昇温速度は1.0℃/分〜5.0℃/分が好ましく、1.5℃/分〜3.5℃/分がより好ましく、1.7℃/分〜2.5℃/分がさらに好ましい。
【0044】
以下に、ずり粘度の測定法を説明する。ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aをローラーを用いてラミネートし、重ね合わせ総厚300±50μmの多層フィルムを作製する。この多層フィルムを13±1mm□の試験片となるように打ち抜き、ずり粘度の測定を行う。本実施形態において、ずり粘度の測定は、モジュラーコンパクトレオメーター Physica MCR301(Anton Paar社製)を用いて行う。当該試験片を平行円板(直径12mm)に挟み、周波数1Hz、ひずみ1%、昇温速度5℃/分及び測定温度30〜200℃の条件で行い、当該試験片の温度が100℃〜120℃における複素粘度の値(Pa・s)をずり粘度とする。
【0045】
(加熱圧着工程におけるダイボンディングフィルム1の溶融粘度)
上述の加熱圧着工程では、支持部材4側の加熱温度100℃〜140℃(フィルム温度70℃〜100℃)におけるフィルム未硬化物(Bステージ状態)の溶融粘度が50000Pa・s以下である接着剤層Aを用いることが好ましい。当該溶融粘度が50000Pa・s以下である場合、加熱圧着工程後における配線段差(未充填部位V)の埋込性を90%以上とすることができる。よって、ダイボンディングフィルム1の接着剤層A内にボイドが残存するおそれが少ない。その結果、ボイドが起点となって吸湿リフロー時に剥離が生じるおそれは少なくなり、高信頼性が得られる。また、当該溶融粘度は、好ましくは40000Pa・s以下でありの範囲であり、より好ましくは、35000Pa・s以下でありの範囲であり、さらに好ましくは、30000Pa・s以下である。当該溶融粘度の下限は特に限定されないが、1000Pa・sより小さい場合、ダイボンディング工程、もしくはフィルム硬化工程等の加熱時にフィルムが発泡したりする可能性がある。
【0046】
ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの未硬化物の溶融粘度は、Journal of Applied Physics (17) P458 (1946)に示す平行平板プラストメータ法により測定、算出される。厚さ100μmのダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを打ち抜き型を用いて直径6mmに打ち抜いた後、その両面に厚さ150μmのスライドガラスを貼り付けることにより、試験サンプルを作製する。これをCOBボンダ(日立化成工業株式会社製、AC−SC−400B)を用いて加熱圧着(フィルム温度70℃〜110℃、荷重1MPa、時間3秒)する。加熱圧着前後の試験サンプルをスキャナで取り込み、画像解析ソフトで面積を計算し、加熱圧着前後のダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの厚みを算出する。ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの未硬化物の溶融粘度(η)は、下記式(1)を用いて算出される。
【数1】


:荷重を加える前のダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの厚さ
Z:荷重を加えた後のダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの厚さ
V:ダイボンディングフィルム1の接着剤層Aの体積
F:加える荷重の大きさ
t:荷重を加える時間
【0047】
(ダイボンディングフィルム1のタック力)
上述のピックアップ工程で配線3付き半導体チップ2を割ることなくピックアップするために、上述の加熱圧着工程で用いられるダイボンディングフィルム1において、厚みが5μm〜80μmであり、40℃のプローブに対するフィルム未硬化時のタック力が1000mN以下である接着剤層Aを用いることが好ましい。当該タック力が1000mNを超えるとピックアップミスを起こす可能性がある。これは、前チップをコレットツールを用いて支持部材側に加熱圧着する際に、ツールが支持部材側の熱の影響を受け、次チップをピックアップする際にツール側の熱がチップ及びダイボンディングフィルムへ伝わりフィルムが再溶融し隣チップのダイボンディングフィルム同士が付着してしまうため、複数のチップが同時にピックアップされたり、単独のみでも付着部分を切り離すことができずにピックアップミスを起こしてしまうためである。当該タック力は、より好ましくは800mN以下であり、さらに好ましくは、500mN以下である。なお、当該タック力の下限は特に限定されない。本実施形態において、40℃のプローブに対するフィルム未硬化時の接着剤層Aのタック力は、株式会社レスカ製のタッキング試験器を用いて測定される。測定条件は、接着剤層Aのフィルム厚:20μm、押し込み速度:2mm/秒、引き上げ速度:10mm/秒、停止加重:100gf/cm、停止時間:1秒であり、40℃のステージにサンプルの測定面を上にして固定し、40℃のプローブ(直径5.1mm(φ)のSUS304)に対するタック強度を測定し求める。ここで、測定面とは、接着剤層Aにおけるダイシングテープに貼り付ける側の面である。なお、フィルム未硬化時の接着剤層AとはBステージ状態のフィルムを示す。
【0048】
(ダイボンディングフィルム1による配線段差の埋込性)
配線6付き支持部材4と配線3付き半導体チップ2とをダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを介して加熱圧着する際の配線段差の埋込性(すなわち、ボイドや亀裂などがない状態)は、加熱圧着工程後に90%以上であることが好ましい。また、加熱圧着工程後であってワイヤボンディング工程前の熱硬化工程における配線段差の埋込性は、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。加熱圧着工程後であってワイヤボンディング工程前の熱硬化工程における配線段差の埋込性が95%以下であると残存ボイドが起点となって吸湿リフロー時に剥離が生じてしまい信頼性を損なうおそれがある。
【0049】
以上、好適な実施形態を示したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、ダイボンディングフィルム1が、接着剤層Aと基材フィルムBとをこの順に備えた2層構造である例を示したが、ダイボンディングフィルム1は、必要に応じて接着剤層Aの両面に基材フィルムBを備えた3層構造としたものでもよい。あるいは、上記実施形態のダイボンディングフィルム1を2枚以上ラミネートしたもの、上記実施形態のダイボンディングフィルム1とそれ以外のダイボンディングフィルムを複数ラミネートしたものであってもよい。なお、上記実施形態では、半導体チップ2を複数積層した例を示したが、半導体チップ2は1層でもよい。
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0051】
(実施例1〜2、比較例1〜2)
<ダイボンディングフィルム1の接着剤層を構成する樹脂組成物>
表1は、実施例1〜2及び比較例1〜4で作製したダイボンディングフィルム1の接着剤層Aを構成する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びフィラーの配合表である。表1の配合表に示されるように、実施例1〜2及び比較例1〜4では、ベース樹脂A〜Cをそれぞれ用いて、フィルム塗工ワニスを調合した。以下、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びフィラーについて説明する。
【0052】
(熱可塑性樹脂について)
(1)ベース樹脂A
温度計、攪拌機、冷却管、及び窒素流入管を装着した300mLフラスコ中に、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(マナック社製ODPA−M)7.6g(0.7mol)、デカメチレンビストリメリテート二無水物(黒金化成社製 6.5g(0.3mol))、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東レダウコーニングシリコーン社製BY16−871EG)5g(0.5mol)、及びN−メチル−2−ピロリドン30gを仕込んだ反応液を攪拌し、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱することにより、水と共にN−メチル−2−ピロリドンを50%と共沸除去し、ポリイミド樹脂(ベース樹脂A)を得た。得られたポリイミド樹脂をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)分析で測定したところ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mwは52800であった。また、得られたポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgは72℃であった。
【0053】
(2)ベース樹脂B
温度計、攪拌機、冷却管、及び窒素流入管を装着した300mLフラスコ中に、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(マナック社製ODPA−M)7.6g(0.7mol)、デカメチレンビストリメリテート二無水物(黒金化成社製 6.5g(0.3mol)、ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン社製)5.5g(0.4mol)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東レダウコーニングシリコーン社製BY16−871EG)5g(0.5mol)、及びN−メチル−2−ピロリドン30gを仕込んだ反応液を攪拌し、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱することにより、水と共にN−メチル−2−ピロリドンを50%と共沸除去し、ポリイミド樹脂(ベース樹脂B)を得た。得られたポリイミド樹脂をGPC分析で測定したところ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mwは53800であった。また、得られたポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgは、38℃であった。
【0054】
(3)ベース樹脂C
温度計、攪拌機、冷却管、及び窒素流入管を装着した300mLフラスコ中に、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(マナック社製ODPA−M)7.6g(0.7mol)、デカメチレンビストリメリテート二無水物(黒金化成社製 6.5g(0.3mol))、ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン社製D2000)5.5g(0.4mol)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東レダウコーニングシリコーン社製BY16−871EG)5g(0.5mol)、及びN−メチル−2−ピロリドン30gを仕込んだ反応液を攪拌し、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱することにより、水と共にN−メチル−2−ピロリドンを50%と共沸除去し、ポリイミド樹脂(ベース樹脂C)を得た。得られたポリイミド樹脂をGPC分析で測定したところ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mwは48100であった。また、得られたポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgは20℃であった。
【0055】
(熱硬化性樹脂について)
(1)エポキシ樹脂
VG−3010:三井化学(株)製、下記構造式(I)(多官能エポキシ樹脂)
【化1】


(2)硬化促進剤
TPPK:東京化成工業(株)製、下記構造式(II)(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート)
【化2】


(3)ナジイミド樹脂
BANI−X:丸善石油化学(株)製、下記構造式(III)(キシリレン型ビスアリルナジイミド)
【化3】


(4)アクリレート
R−712:日本化薬(株)製、下記構造式(IV)(エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート)
【化4】


(5)硬化剤
カヤハードNHN:日本化薬(株)製、フェノール樹脂(クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物)
(6)ビスマレイミド
BMI−80:ケイ・アイ化成(株)製、下記構造式(V)(2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン)
【化5】

【0056】
(フィラーについて)
H26:CIKナノテック(株)製、酸化ケイ素(平均粒径5μm)
H27:CIKナノテック(株)製、酸化ケイ素(平均粒径0.5μm)
HPP1:水島合金鉄(株)製、窒化ホウ素(平均粒径3μm)
比較例1及び4では、HPP1のみを使用した。
比較例2、3、実施例1、2では、H26とH27の2種を使用した。
【0057】
上記のようにして得られた実施例1〜2及び比較例1〜3の接着剤組成物(ワニス)を、それぞれ基材フィルム(剥離剤で処理したポリエチレンテレフタレートフィルム)上に20μmの厚さになるようにアプリケータ自動塗工機を用いて塗布した。次に、ワニスを塗工した基材フィルムをオーブン中で120℃で10分間加熱乾燥した。加熱乾燥後、それぞれの基材フィルムを除去してダイボンディングフィルムの接着剤層(Bステージ状態のフィルム)を得た。
【0058】
<ダイボンディングフィルムの物性測定>
(ダイボンディングフィルムのずり粘度の測定)
ダイボンディングフィルムの接着剤層をローラーによりラミネートし、重ね合わせ総厚300±50μmの多層フィルムを作製した。この多層フィルムを13±1mm□の試験片となるように打ち抜き、ずり粘度の測定を行った。ずり粘度の測定は、モジュラーコンパクトレオメーター Physica MCR301(Anton Paar社製)を用いて行った。当該試験片を、平行円板(直径12mm)に挟み、周波数1Hz、ひずみ1%、昇温速度5℃/分及び測定温度30℃〜200℃の条件で行い、当該試験片のフィルム温度が100℃〜120℃における複素粘度の値(Pa・s)をずり粘度とした。結果を表2に示す。
【0059】
(加熱圧着工程におけるダイボンディングフィルムの溶融粘度の測定)
フィルム未硬化時の接着剤層の溶融粘度は、Journal of Applied Physics (17) P458 (1946)に示す平行平板プラストメータ法により測定、算出した。厚さ100μmの接着剤層を打ち抜き型を用いて直径6mmに打ち抜いた後、その両面に厚さ150μmのスライドガラスを貼り付けて試験サンプルを作製した。試験サンプルをCOBボンダ(日立化成工業株式会社製、AC−SC−400B)を用いて加熱圧着(フィルム温度70℃〜100℃、荷重1MPa、時間3秒)した。加熱圧着前後の試験サンプルをスキャナで取り込み、画像解析ソフトで面積を計算し、加熱圧着後の試験サンプルの厚みを算出した。フィルム未硬化時の接着剤層の溶融粘度(η)は、上記数式(1)を用いることにより算出した。結果を表2に示す。表2の溶融粘度の欄に示される温度は加熱温度(熱板温度)を示し、カッコ内の数値はダイボンディングフィルムの接着剤層のフィルム温度を示す。
【0060】
(タック力の測定)
40℃のプローブに対するフィルム未硬化時(すなわち、Bステージ状態)の各ダイボンディングフィルムの接着剤層のタック力の測定には、株式会社レスカ製のタッキング試験器を用いた。条件は、フィルム厚:20μm、押し込み速度:2mm/秒、引き上げ速度:10mm/秒、停止加重:100gf/cm、停止時間:1秒で行い、40℃のステージにサンプルの測定面を上にして固定し、40℃のプローブ(直径5.1mm(φ)のSUS304)に対するタック強度を測定し求めた。ここで、測定面とは、各ダイボンディングフィルムの接着剤層におけるダイシングテープに貼り付ける側の面である。
【0061】
<ダイボンディングフィルムの組立性など>
(ピックアップ性の評価)
Bステージ状態のダイボンディングフィルムの接着剤層を直径210mmに切り抜いた後、厚さ80μmのダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名T−80MW)上に、ダイアタッチフィルムマウンター(株式会社ジェーシーエム製、商品名DM−300−H)を用いて室温(25℃)で貼り合わせた。なお、塗工時の開放面(ポリエチレンテレフタレートフィルムの逆側)とダイシングテープを貼り合わせて、ダイボンディングフィルム・ダイシングテープ積層品を得た。当該ダイボンディングフィルム・ダイシングテープ積層品に50μm厚の半導体ウェハを熱板上でラミネートし、半導体ウェハ・ダイボンディングフィルム・ダイシングテープ積層品を得てダイシングサンプルを作製した。ラミネート時の熱板表面温度は60℃〜120℃に設定した。株式会社ディスコ製、商品名フルオートマチックダイシングソーDFD−6361を用いて、当該ダイシングサンプルを切断した。切断は、ブレード1枚で加工を完了するシングルカット方式で行った。ブレードとして株式会社ディスコ製、商品名ダイシングブレードNBC−ZH104F−SE 27HDBBを用い、ブレード回転数45000/分、切断速度50mm/秒の条件で行った。切断時のブレードハイトは、ダイシングテープを20μm切り込む設定(60μm)とした。半導体ウェハを切断するサイズは10mm×10mmとした。
【0062】
上記方法で作製したダイボンディングフィルムの接着剤層付き半導体チップのピックアップ性について、株式会社ルネサス東日本セミコンダクタ製、商品名フレキシブルダイボンダーDB−730を使用して評価した。使用したピックアップ用コレットにはマイクロメカニクス社製、商品名RUBBER TIP 13−087E−33(サイズ:10mm×10mm)、突上げピンにマイクロメカニクス社製、商品名EJECTOR NEEDLE SEN2−83−05(直径:0.7mm、先端形状:直径350μmの半円)を用いた。突上げピンの配置は、ピン中心間隔4.2mmで9本配置した。ピックアップ時のピンの突上げ速度:10mm/秒、突上げ高さ:500μmの条件でピックアップ性を評価した。圧着条件は、熱板温度120℃、荷重0.1MPa、時間1秒とした。連続100チップをピックアップし、チップ割れ、ピックアップミス等が発生しない場合を「良好」、1チップでもチップ割れ、ピックアップミス等が発生した場合を「不良」とした。結果を表2に示す。
【0063】
(配線段差の埋込性の評価)
上記で得られたダイボンディングフィルム・ダイシングテープ積層品に100μm厚の半導体ウェハを熱板上でラミネートし、半導体ウェハ・ダイボンディングフィルム・ダイシングテープ積層品を得、ダイシングサンプルを作製した。ラミネート時の熱板表面温度は60℃〜120℃に設定した。株式会社ディスコ社製、商品名フルオートマチックダイシングソーDFD−6361を用いて、前記ダイシングサンプを切断した。切断は、ブレード1枚で加工を完了するシングルカット方式を用いた。ブレードとして株式会社ディスコ社製、商品名ダイシングブレードNBC−ZH104F−SE 27HDBBを用い、ブレード回転数45000/分、切断速度50mm/秒の条件で行った。切断時のブレードハイトは、ダイシングテープを20μm切り込む設定(60μm)とした。半導体ウェハを切断するサイズは7.5mm×7.5mmとした。
【0064】
上記方法で作製したダイボンディングフィルムの接着剤層付き半導体チップを、株式会社ルネサス東日本セミコンダクタ製、商品名フレキシブルダイボンダーDB−730を使用して、表面段差10μmの配線付き支持部材に圧着した。圧着条件は、熱板温度120℃、荷重0.1MPa、時間1秒とした。次に上記で作製した配線付き支持部材をダイボンディングフィルムの接着剤層付き半導体チップで圧着した積層体を、室温から120℃まで30分間で昇温した後、120℃で1時間の硬化を行った。
【0065】
半導体チップを加熱圧着した配線付き支持部材を、超音波映像診断システム(インサイト(株)社製 Insight−300 Scanning Acoustic Microscope:SAM)でダイボンディングフィルムと配線付き支持部材界面のボイドの有無を観察し、支持部材表面の配線段差の埋込み性の評価を行った。ここで、加熱圧着工程後のサンプル及び熱硬化工程後のサンプルを12個ずつ作製し、それぞれのダイボンディングフィルムと配線付き支持部材界面のボイドの有無を観察した。観察後、SAM画像から画像解析ソフトを用いて加熱圧着工程後のサンプル及び熱硬化工程後のサンプルにおける配線段差の埋込性(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0066】
(吸湿リフロー耐性の評価)
上記で作製した、配線付き支持部材をダイボンディングフィルムの接着剤層付き半導体チップで圧着した積層体を日立化成工業株式会社製の封止材、商品名CEL−9750ZHFを前記積層体上に成型し、175℃で5時間の硬化処理を行い、半導体パッケージ(半導体装置)を得た。超音波映像診断システム(インサイト(株)社製 Insight−300 Scanning Acoustic Microscope:SAM)で半導体パッケージ内部の剥離、ボイドの有無を観察した後、125℃で12時間乾燥した。乾燥後の半導体パッケージを85℃、60%RH及び168時間の吸湿処理を行った後、最大温度265℃、30秒となるように設定し、リフロー処理を3回行った。リフロー処理後の半導体パッケージを再度、超音波映像診断システムで観察し、半導体パッケージ内部の剥離、ボイドの有無を観察した。リフロー処理後について、12パッケージを観察し、半導体パッケージ内部の剥離、ボイドが存在しなかったものを吸湿リフロー耐性「良好」、1パッケージでも剥離、ボイドが存在したものを吸湿リフロー耐性「不良」とした。結果を表2に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
表2より、実施例1及び実施例2では、薄い半導体チップを割ることなくピックアップできた。また、実施例1及び実施例2では、加熱圧着工程で配線段差を90%以上充填可能であるとともに、熱硬化工程における加熱処理により熱圧着工程で未充填であった部位を完全に100%充填することもできた。さらに、当該ダイボンディングフィルムを用いて作製した半導体パッケージは、良好な吸湿リフロー耐性を有していた。
【0070】
一方、比較例2及び比較例3では、加熱圧着工程及び熱硬化工程の加熱処理においても配線段差を完全に充填することができなかった。その結果、吸湿後のリフロー処理時に未充填部位が起点となり剥離が生じた。また、比較例1では溶融粘度、ずり粘度ともに高く加熱圧着工程及び熱硬化工程の加熱処理において配線段差の埋め込み性が極端に悪い。一方、封止工程の加熱加圧処理により配線段差を埋め込むことが可能となり良好な吸湿リフロー耐性を有するものの、ワイヤボンド相当熱履歴が4時間を越えると封止工程の加熱加圧処理により配線段差を埋め込むことが不可能となり、吸湿後のリフロー処理時に未充填部位が起点となり剥離が生じた。また、比較例4では、40℃におけるフィルム未硬化時のタック力が1000mN以上であるので、ダイボンディングフィルムの接着剤層付半導体チップをピックアップすることができなかった。
【符号の説明】
【0071】
1…ダイボンディングフィルム、2…半導体チップ、3…チップ側配線、4…支持部材、5…端子、6…支持部材側配線、8…ボンディングワイヤ、9…封止樹脂、10…半導体装置、V…未充填部位(ボイド)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の接着剤層を含むダイボンディングフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
配線付き支持部材と配線付き半導体チップとを前記ダイボンディングフィルムを介して加熱圧着する加熱圧着工程と、
前記加熱圧着工程後、前記ダイボンディングフィルムを加熱する熱硬化工程と、
前記熱硬化工程後、前記支持部材の配線と前記半導体チップの配線をボンディングワイヤで接続するワイヤボンディング工程と、
前記ワイヤボンディング工程後、前記支持部材と前記半導体チップとを封止する封止工程と、を備え、
前記接着剤層として、前記熱硬化工程におけるフィルム温度100℃〜120℃でのずり粘度が5000Pa・s以下である接着剤層を用いる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤層として、前記加熱圧着工程における加熱温度100℃〜140℃での溶融粘度が50000Pa・s以下である接着剤層を用いる、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤層として、熱硬化性樹脂と無機フィラーとを少なくとも含む接着剤層を用いる、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤層として、ガラス転移温度10℃〜80℃で重量平均分子量20000〜100000のポリイミド樹脂を含む接着剤層を用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤層として、厚みが5μm〜80μmであり、40℃のプローブに対するフィルム未硬化時のタック力が1000mN以下である接着剤層を用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94586(P2012−94586A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238606(P2010−238606)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】