説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】Ru材料をCu配線のバリアメタル膜として使用した際、CMP時にCu溶出の発生しないCu配線形成方法を提供する。
【解決手段】層間絶縁膜上面の第1のバリアメタル上に形成された第2のバリアメタル膜(Ru膜)を除去する工程(d)と、前記工程(d)の後に、前記第1及び第2のバリアメタル膜上にシード銅(Cu)膜を堆積する工程(e)とを有する。このように、シード銅膜を形成する前に、上面の第2のバリアメタル膜を除去してしまうことにより、この第2のバリアメタル膜と銅との電池効果で、銅がスラリー中に溶出することを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高信頼性配線を有する半導体装置に関し、詳しくは埋め込み配線形成技術における微細パターン埋め込みに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化及び高速化のために、アルミニウムよりも低抵抗であると共に、高エレクトロマイグレーション(EM)耐性を有する銅(Cu)が配線材料として注目されている。Cu材料はドライエッチングが困難であるため、あらかじめ絶縁膜に配線用の溝とホールを形成し、バリアメタル層及びCuシード層を順次形成する。そして、めっき法によってCuを埋め込んだ後に、化学機械研磨(CMP)でバリアメタル層を除去することにより配線を形成する方法が提案されている。
【0003】
従来は、Cuのバリアメタルとして、スパッタ法で形成されたタンタル(Ta)薄膜などが主に使用されてきた。しかしながら、32nmノードのデバイス以降では、配線幅が約45nm程度になり、スパッタ法では十分なカバレジ(被覆性)が得られず、めっき時に埋め込み不良が発生するようになってきた。そこで、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法で成膜が可能であるルテニウム(Ru)やイリジウム(Ir)などをバリアメタルとする方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特に、Ru材料は、Cuとの密着性が良く、Taやその窒化膜(TaN)などに比べ、信頼性の向上が期待できる。図8を用いて、その製造方法の一例について説明する。
【0005】
図8(1)に示されるように、第2の層間絶縁膜104には、第1のCu配線103に接続するビアホール106と配線溝107が形成されている。そして、配線溝107とビアホール106内を含む全面に化学気相成長法によりバリアメタル膜であるRu膜105が形成されている。
【0006】
次に、CVD法によりCu膜108を、配線溝107とビアホール106内に埋め込む(図8(2))。
【0007】
引き続き、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)により余剰のCu膜108とRu膜105を除去することによりCu配線及びビアを形成する(図8(3))。
【特許文献1】特開平10−229084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発明者らがバリアメタル膜としてRu膜を用いて、Cu膜に対しCMPを行う実験をした結果、後述する電池効果によって配線材料であるCu膜が溶出してしまう現象を見出した。このCu膜の溶出は、半導体装置の歩留まり及び信頼性を劣化させる大きな問題となる。
【0009】
ここで、Cuの標準電極電位(25℃、pH=0、E0Cuと呼ぶことにする。)は0.337Vであり、Ruの標準電極電位(25℃、pH=0、E0Ruと呼ぶことにする。)は0.460Vである。また、CuとRuの電気化学平衡の式は、化1及び化2の通りとなる。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
ここで、SHE(standard hydrogen electrode(標準水素電極))とは、pH=0の水溶液に白金線を浸し、1atmの水素を吹き込んだ電極系のことを意味しており、反応が進む際の基準の電位として使用される。
【0013】
従って、「0.337V vs. SHE」とは、標準水素電極を0Vとした場合に、0.337Vの電位でCuの還元反応が開始することを意味している。この電位を標準電極電位と呼ぶ。一般的に、標準電極電位が低い物質と標準電極電位が高い物質が混在する溶液中では、標準電極電位が低い物質がイオン化する傾向がある。これが電池効果である。
【0014】
そのため、図9に示すように、図8(3)に示す工程においてCu−CMPをする場合には、Cuが電子e-を放出して、溶液中にCu2+として溶け出す反応が進み、一方で標準電極電位の高い物質(Ru)が析出する。
【0015】
また、図10に示すように、図8(3)に示すCMP工程において、Cu−CMP後、バリアメタル膜−CMPをする場合にも、Cuが電子を放出して、溶液中に溶け出す反応が進み、一方で標準電極電位の高い物質(Ru)が析出する。
【0016】
ここで、Cu−CMPとはスラリー溶液(研磨剤)に含まれる電解質により、銅を機械的強度の低い脆弱な酸化銅に変化させ、機械的圧力で酸化銅を研磨する研磨手法を指す。また、バリアメタル膜−CMPとは、スラリー溶液(研磨剤)に含まれる電解質により、バリアメタル膜を機械的強度の低い脆弱なバリアメタル膜の酸化物に変化させ、機械的圧力でバリアメタル膜の酸化物を研磨する研磨手法を指す。
【0017】
以下、バリアメタル膜として、Ruを使用するのであれば、バリアメタル膜を除去するCMP法をRu−CMPと表現し、バリアメタル膜として、TaNを使用するのであれば、バリアメタル膜を除去するCMP法をTaN−CMPと表現する。このような表記法は、バリアメタル膜の材料として、上記材料以外の材料を使用する場合にも同様とする。
【0018】
実際のCMPスラリー溶液中の電極電位は、上記標準電極電位の値とは一致しないが、CMP時にCu溶出が発生したことを鑑みると、スラリー中での電極電位は上記関係(E0Ru>E0Cu)を維持しているものと考えられる。スラリーの溶液を工夫することにより、E0Ru≒E0Cuとすることは可能かもしれないが、実際にはCMP特性からスラリー溶液の組成などが決まってしまう。このため、スラリー溶液を調整することによってCu溶出を防止することは困難である。
【0019】
このような課題を鑑み、本発明では、Ru材料をCu配線のバリアメタル膜として使用した際、CMP時にCu溶出の発生しないCu配線形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成するために、本発明では以下のような手段を採用している。
【0021】
まず、本発明の半導体装置は、半導体基板上の層間絶縁膜に形成された配線溝と、この配線溝の側壁及び底面に形成された第1のバリアメタル膜と、この配線溝の側壁において、第1のバリアメタル膜の上に形成された第2のバリアメタル膜とを有している。また、この配線溝内に設けられた銅膜を有する配線を有している。
【0022】
そして、このような半導体装置において、前記配線溝の上端が上方へ向けて広がった傾斜形状となっている。あるいは、前記第2のバリアメタル膜の上端は、前記配線溝側壁の上端よりも低く、前記配線溝側壁の上端で、前記第1のバリアメタル膜と前記銅膜が接している。
【0023】
次に、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上の層間絶縁膜に配線溝を形成する工程(a)と、前記工程(a)の後に、前記配線溝の側壁及び底部、及び前記層間絶縁間上に第1のバリアメタル膜を堆積する工程(b)とを有する。また、前記工程(b)の後に、前記第1のバリアメタル膜上に第2のバリアメタル膜を堆積する工程(c)を有する。
【0024】
そして、前記工程(c)の後に、前記層間絶縁膜上面の前記第1のバリアメタル上に形成された前記第2のバリアメタル膜を除去する工程(d)と、前記工程(d)の後に、前記第1及び第2のバリアメタル膜上にシード銅(Cu)膜を堆積する工程(e)とを有する。このように、シード銅膜を形成する前に、上面の第2のバリアメタル膜を除去してしまうことにより、この第2のバリアメタル膜と銅との電池効果で、銅がスラリー中に溶出することを防ぐのである。
【0025】
さらに、本発明の半導体装置の製造方法は、前記工程(e)の後に、前記シード銅膜上にめっき銅膜を堆積する工程(f)と、前記工程(f)の後に、化学機械研磨法により前記配線溝外の前記銅膜及び前記第1バリアメタル膜を除去して銅配線を形成する工程(g)とを有する。
【0026】
ここで、前記工程(d)は、前記配線溝側壁の前記第2のバリアメタル膜の上端が、前記配線溝側壁の上端よりも低くなるように、この第2のバリアメタル膜を除去する工程とすることもできる。これにより、銅のCMPにおいて、第2のバリアメタル膜が研磨表面に露出することがなくなるため、より確実に配線溝内の銅が電池効果で溶出することを防止できる。
【0027】
また、前記第1のバリアメタル膜の標準電極電位は、銅のそれ以下とし、前記第2のバリアメタル膜の標準電極電位は銅のそれより大きくする。これにより、バリアメタルのCMPにおいても、銅が電池効果で溶出することを防止できる。
【0028】
さらに、 前記工程(c)において、前記第2のバリアメタル膜を不連続に形成することもできる。これにより、スラリーとの接触面積が小さいため?銅の腐食は一層発生しにくいという効果がある。
【0029】
なお、前記第2のバリアメタル膜は、ルテニウム(Ru)あるいはルテニウムを主成分とする合金とする。また、前記第1のバリアメタル膜は、タンタル、またはタンタルと窒素、炭素、シリコンのうち少なくとも1つ以上との化合物である導電膜、あるいはタンタルと該化合物との積層膜とする。
【0030】
そして、前記工程(b)から前記工程(e)までを、同一装置内で大気に開放することなく行う。これが、形成される各膜の表面の酸化を防止し、各膜間の密着性を確保するためにも望ましい。また、特に、前記工程(d)は異方性エッチングとする。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によるとCuをスラリー中に溶出させることなく、Ruバリア膜を用いたCu膜をCMP加工できるので、半導体装置の高い歩留まりと信頼性の向上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図1(1)〜(4)及び図2(1)〜(3)を用いて説明する。
【0033】
まず、図1(1)に示すように、半導体基板1上に第1の層間絶縁膜2を250nmの膜厚で形成し、その後、従来のリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて、第1の層間絶縁膜2に配線溝5を形成する。図面上では省略しているが、配線溝5は半導体基板上に形成された半導体素子、容量素子、抵抗素子などと接続し、LSI(Large Scale Integrated Circuit)を形成する。本構造は、32nmノード以細のデバイスを想定しており、配線溝5の幅は、50nm以下である。ここで、第1の層間絶縁膜2の材料としては誘電率の低い絶縁膜、例えば、SiOC膜や、膜中に空孔を有するポーラスSiOC膜などを使用することができる。
【0034】
次に、図1(2)に示すように、配線溝5の側壁及び底部を含む第1の層間絶縁膜2上に、第1のバリアメタル膜3と第2のバリアメタル膜4を順に成膜する。ここで、第1のバリアメタル膜3としては、窒化タンタル(TaN)膜を使用する。また、第2のバリアメタル膜4としては、ルテニウム(Ru)膜を使用する。バリアメタル膜の形成方法としては、例えば、微細パターンにもカバレジ(被覆性)良く成膜可能な化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition : CVD法)を用いることができる。
【0035】
TaN膜3は、例えば、基板温度を200℃から400℃に昇温し、プリカーサー(前駆物質)としてPDMAT(ペンタキスジメチルアミドタンタル:構造式 Ta[N(CH3)2]5)を数秒間チャンバーに導入し、引き続き還元ガスとしてアンモニア(NH3)ガスをチャンバーに数秒間導入する工程を繰り返すことによって成膜される。第1の層間絶縁膜2の上に形成されるTaN膜3の膜厚は、2nm以上10nm以下である。カバレジが良く形成されるので、配線溝側壁及び底部においても同等の膜厚となっている。
【0036】
また、Ru膜4は、例えば、基板温度を200℃から400℃に昇温し、ルテニウムカルボニウム[Ru(CO)4]3を導入して、基板上での熱分解により、カバレジ良く成膜される。TaN膜の上に形成されるRu膜4の膜厚は、2nm以上10nm以下である。これもカバレジが良く形成されるので、配線溝側壁及び底部においても同等の膜厚となっている。
【0037】
なお、上記の方法以外にも、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition : ALD法)を用いても、上記第1及び第2のバリアメタル膜3,4を形成することができる。
【0038】
次に、図1(3)に示すように、第1の層間絶縁膜2上のTaN膜3の上に形成されたRu膜4を、エッチバックにより除去する。この除去方法としては、例えば、Arイオンによるスパッタエッチング(Arエッチバック)を用いることができる。Arエッチバックの場合、Ru膜のエッチングレートはTaN膜に比べ、約2倍以上大きいのでTaN膜を残した状態で表面のRu膜のみを除去できる。そして、Arエッチバックなどの異方性エッチバックでは、表面に比べ配線溝5の間口部分でのエッチングレートが大きく、配線溝5の上端は上方へ向けて広がった傾斜形状となる(図1(3)の円Cの位置)。
【0039】
このように、以下で述べるめっきCu膜を形する前に、TaN膜3の上面に堆積したRu膜4を除去することが本発明の最大の特徴である。
【0040】
次に、図1(4)に示すように、第1の層間絶縁膜2上のTaN膜3の上及び配線溝5の側壁及び底部に、Cu電解めっき時のシード層として機能するシードCu膜6を堆積する。シードCu膜6を成膜するには、例えば、スパッタリング法を用いる。特に、微細パターンを形成する場合には指向性の強いイオン化スパッタリング法を用いるのが良い。
【0041】
このシードCu膜6は、Cu電解めっきでボイドを形成することなく配線溝5を埋め込むために、配線溝5の側壁で連続な膜となるように形成される必要がある。特に、Ru材料はCuとの濡れ性・密着性が良いので、シードCu膜6を薄膜化(Ru膜の上に形成されている膜厚:3nm以上)しても配線溝5の側壁部での連続性は確保でき、良好なCu電解めっきを実施することができる。
【0042】
なお、ここで上記の「濡れ性」という言葉について、一言説明しておく。バリアメタル膜上でCuが集まる現象を凝集という。熱処理を行うとTaなどの従来から使用されているバリアメタル膜上でCuが凝集を起こし、不連続なCu膜になりやすい。しかし、バリアメタル膜がRuの場合には、熱処理を行ってもCuは凝集を起こさず、連続なCu膜を形成することができる。後者のように凝集が起こらないとき、Cuとバリアメタル膜の濡れ性がよいという。
【0043】
また、TaN膜3の堆積、Ru膜4の堆積、Arエッチバック、シードCu膜6の堆積の各処理の間は、半導体基板1を同一装置内で真空中あるいは不活性ガス中で搬送し、大気に開放することなく連続的に処理することが、各膜の表面の酸化を防止し、各膜間の密着性を確保するためにも望ましい。
【0044】
なお、図1(2)に示す工程において、TaN膜3とRu膜4の合計の膜厚が配線溝5内で所望の膜厚、例えば3nm以上の膜厚が得られるのであれば、これらの膜3,4はイオン化スパッタ法などで成膜してもよい。イオン化スパッタ法でRu膜4を成膜した場合、引き続きRuスパッタチャンバー内で基板にバイアスを印加することによって、堆積速度よりもArイオンによるエッチング速度を大きくすることにより、エッチバックを行うことも可能である。そうすることにより、Arエッチング(Arエッチバック)用のチャンバーが不要となるので、低コストで高スループットの処理が可能になる。
【0045】
次に、図2(1)に示すように、電解めっき法により、配線溝5内を含むTaN膜3及びRu膜4上にめっきCu膜を堆積し、100℃以上400℃以下の温度でアニール処理を行い、シードCu膜6とめっきCu膜を一体化させて、Cu膜7を形成する。
【0046】
次に、図2(2)に示すように、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing : CMP法)で配線溝5外の余剰のCu膜7を研磨除去する。このとき、Cuの標準電極電位(0.337V vs. SHE)は、Ruの標準電極電位(0.460V vs. SHE)に比べて小さい。しかし、本発明では上述の通り、TaN膜3の上面に堆積したRu膜4を既に除去してしまっている。このため、研磨表面に露出するRuの面積は非常に小さい(膜厚分の断面しか露出していない)ので、電池効果によってCu−CMP中に配線溝5内のCuが溶出する腐食現象は起きない。
【0047】
次に、図2(3)に示すように、バリアメタル膜−CMP法よって、配線溝5外の余剰のTaN膜3を研磨除去する。TaN膜3の標準電極電位は、Cuの標準電極電位に比べて小さいため、バリアメタル膜−CMP中に配線溝5内のCuが電池効果によって溶出する腐食現象は起きない。また、Cu−CMPをする時と同様に、研磨面に露出するRuの面積は非常に小さいので、バリアメタル膜−CMP中に配線溝5内のCuが溶出する腐食現象は起きない。ここで、配線溝5の外にわずかに存在するCu膜及びRu膜は、バリアメタル膜−CMP時に機械的に研磨除去される。
【0048】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法では、図1(3)に示すように、標準電極電位がCuよりも高い第2のバリアメタル膜を除去している。そのため、図2(2)及び図2(3)に示すように、Cu−CMP時及びバリアメタル膜−CMP時において、電池効果によって配線溝5内のCuが溶出する腐食現象が起きない。その結果、歩留まりが高くかつ信頼性の高い半導体装置を製造することができるという効果がある。
【0049】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図3(1)〜(3)、図4(1)〜(3)及び図5(1)〜(3)を用いて説明する。
【0050】
まず、図3(1)に示すように、半導体基板11上に第1の層間絶縁膜12を250nmの膜厚で形成し、その後、第1の層間絶縁膜12に第1のCu配線13を形成する。その後、第1の層間絶縁膜12及び第1のCu配線13上にライナー膜14を形成する。その後、ライナー膜14の上に第2の層間絶縁膜15を形成する。その後、ライナー膜14及び第2の層間絶縁膜15に、第1のCu配線13に達するビアホール16と第2のCu配線を形成するための配線溝17を形成する。ここで、第1の層間絶縁膜12及び第2の層間絶縁膜15の材料としては、第1の実施形態と同様にSiOC膜やポーラスSiOC膜などを使用することができる。
【0051】
次に、図3(2)に示すように、ビアホール16底の第1のCu配線13の表面をクリーニングし、配線溝17の側壁及び底部とビアホール16の側壁及び底部を含む第2の層間絶縁膜15上に、第1のバリアメタル膜18と第2のバリアメタル膜19を順に成膜する。ここで、第1のバリアメタル膜18としては、窒化タンタル(TaN)膜を使用する。また、第2のバリアメタル膜19としては、ルテニウム(Ru)膜を使用する。ここで、ビアホール底の第1のCu配線表面のクリーニングは、例えば水素雰囲気中での250℃から400℃程度の温度でのアニール処理や、アルゴン(Ar)と水素(H2)を含むガスからなるプラズマ処理により行う。TaN膜18およびRu膜19は、上記第1の実施形態と同様に、ALD法やCVD法で形成する。また、配線溝17側壁又はビアホール16側壁におけるTaN膜18及びRu膜19の合計の膜厚が所望の膜厚(例えば3nm以上)になるのであれば、これらバリアメタル膜18,19はイオン化スパッタ法などで成膜してもよい。
【0052】
次に、図3(3)に示すように、第2の層間絶縁膜15上のTaN膜18(表面)の上に形成されたRu膜19を、異方性のエッチングにより除去する。異方性エッチングとしては例えばArエッチバックなどがある。第1の実施形態と同様に、Arエッチバックの場合、Ru膜のエッチングレートはTaN膜に比べ、約2倍以上大きいのでTaN膜を残した状態で表面のRu膜のみを除去できる。そして、Arエッチバックなどの異方性エッチバックでは、表面に比べ配線溝17の間口部分でのエッチングレートが大きく、配線溝17上端は傾斜形状となる(図3(3)の円Cの位置)。
【0053】
本実施形態では表面のRu膜が除去された後もさらにArエッチバックを行い、Ru膜の表面高さ(図3(3)の点線A)が、第2の層間絶縁膜15と第1のバリアメタル膜が接する位置の高さ(図3(3)の点線B)よりも低い位置になるようにする。
【0054】
次に、図4(1)に示すように、シードCu層20aを堆積する。シードCu層20aは、イオン化スパッタリング法で堆積し、10nm以上40nm以下の膜厚である。Cuとの密着性が良いRu膜19が配線溝17又はビアホール16の側壁に存在しているので、上述の凝集などによってシードCu層20aが不連続な膜とはならない。その結果、シードCu層20aの薄膜化が可能となる。シードCu層20aが薄膜化できれば、シードCu層20aの堆積後の配線溝17やビアホール16の開口幅が広く確保できるため、次工程のCu電解めっきでの埋め込みが容易になる。
【0055】
次に、図4(2)に示すように、電解めっき法により配線溝17及びビアホール16内を含むバリアメタル膜18上にめっきCu膜を堆積し、100℃から400℃程度の温度でアニール処理を行い、シードCu層20aとめっきCu膜を一体化させて、Cu膜20bを形成する。
【0056】
次に、図4(3)に示すように、Cu−CMPによって、配線溝17及びビアホール16外の余剰のCu膜20bを研磨除去する。このとき、Cuの標準電極電位は、Ruの標準電極電位に比べて小さいが、研磨面にRu膜19が露出することがないので、電池効果によってCu−CMP中に配線溝5内のCuが溶出する腐食現象は起きない。
【0057】
次に、図5(1)に示すように、TaN−CMPによって、配線溝17及びビアホール16外の余剰のTaN膜を研磨除去する。この場合も、Cu−CMPをする場合と同様に、研磨表面にRu膜19が露出することがないので、電池効果によってTaN−CMP中に配線溝5内のCuが溶出する腐食現象は起きない。
【0058】
次に、図5(2)に示すように、第2の層間絶縁膜15の上に、第2のライナー膜21および第3の層間絶縁膜22を順次堆積し、従来のリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて、第2のビアホール23及び第2の配線溝24を形成する。このとき、第2のライナー膜21を開口して第2のCu配線が露出した後に洗浄処理されるが、Ru膜19が露出していないので、この洗浄工程においても電池効果によって配線溝5内のCuが溶出する腐食現象は起きない。
【0059】
なお、第1の実施形態において同様な洗浄を行う場合も、洗浄液とRu膜4の接触面積が極めて小さいので、配線溝内のCuが溶出する腐食現象が起きにくい。従って、第1の実施形態においても、配線と接続するようにビアを形成する場合には同じことが言える。
【0060】
次に、図3(2)〜図5(1)で説明した方法と同様の方法により、第3の層間絶縁膜22に第3のCu配線25を形成する。その結果、図5(3)に示す構造が形成される。
【0061】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法によると、図3(3)に示すように、標準電極電位がCuよりも高いRu膜19を除去している。そして、さらに、Ru膜19の表面高さ(図3(3)のA)が、第2の層間絶縁膜15とTaN膜18が接する位置の高さ(図3(3)のB)よりも低い位置になるようにRu膜19をエッチングしている。その結果、図4(3)及び図5(1)に示すように、Cu−CMP時及びバリアメタル膜−CMP時において、Ru膜19が研磨表面に露出することがなくなる。そのため、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法と比較して、Cu−CMP時及びバリアメタル膜−CMP時において、より確実に配線溝5内のCuが溶出する腐食現象(電池効果)が起きないという効果がある。
【0062】
なお、第1及び2の実施の形態では、純Cu配線について説明したが、Cu合金膜でも良い。また、第1及び2の実施形態では、第2のバリアメタル膜としてRu膜を例に説明したが、Ru膜の代わりにCu膜より大きい標準電極電位を有する金属(例えば、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au)を使用する場合にも、本発明は有効である。また、第1のバリアメタル膜としてTaN膜を例に説明したが、バリアメタル膜として使用可能な他の材質を使用してもよい。このような材質としては、例えば、Ta、またはTaに窒素、炭素、シリコンのうち少なくとも1つ以上を添加した導電膜、あるいはTaと窒素、炭素、シリコンのうち少なくとも1つ以上との積層膜などが挙げられる。
【0063】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施の形態では、第2のバリアメタル膜4、19を連続な膜となるように形成する場合について説明したが、これを不連続な膜となるように形成する場合について、図6及び7を参照しながら説明する。なお、不連続な膜を形成する方法としては、連続膜となる前に試料ガスの供給をストップすればよい。
【0064】
即ち、図6(1)に示すように、まず、半導体基板1上に第1の層間絶縁膜2を250nmの膜厚で形成し、その後、第1の層間絶縁膜2に配線溝5を形成する。これは第1の実施形態と同様である。
【0065】
次に、図6(2)に示すように、配線溝5の側壁及び底部を含む第1の層間絶縁膜2上に、第1のバリアメタル(TaN)膜3を形成した後、上述のように試料ガスの調整をすることで、TaN膜3上に、Ruの点在する不連続な膜26を形成することができる。
【0066】
次に、図6(3)に示すように、Ru膜26上にシードCu層27aをイオンスパッタリング法により堆積する。そして、図6(4)に示すように、電解めっき法により配線溝5及びビアホール16内を含むバリア膜上にめっきCu膜を堆積し、100℃から400℃程度の温度でアニール処理を行い、シードCu層27aとめっきCu膜を一体化させて、Cu膜27bを形成する。これも第1の実施形態と同様である。
【0067】
次に、図7(1)に示すように、Cu−CMPで配線溝5外の余剰のCu膜27bを研磨除去する。このとき、第2のバリアメタル膜26が不連続な膜となることで、Cu−CMP中に、研磨表面に存在するRuは不連続であるので、スラリーとの接触面積が小さいためCu−CMP中の腐食は発生しないという効果がある。
【0068】
最後に、図7(2)に示すように、TaN−CMP法よって、配線溝5外の余剰のTaN膜3を研磨除去する。このTaN−CMP中には研磨表面に存在するRuはほとんどないので、TaN−CMP中においてもCuの腐食は発生しないという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明の半導体装置の製造方法は高歩留まりかつ高信頼性を得ることができる。従って、半導体装置の微細敗戦形成等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図3】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図4】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図6】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図7】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程図。
【図8】従来の半導体装置の製造方法の工程図。
【図9】Cu−CMP時の腐食の説明図。
【図10】Cu−CMP時の腐食の説明図。
【符号の説明】
【0071】
1 半導体基板
2 第1の層間絶縁膜
3 第1のTaN膜
4 第1のRu膜
5 第1のCu配線
6 シードCu層
7 Cu膜
11 半導体基板
12 第1の層間絶縁膜
13 第1のCu配線
14 第1のライナー膜
15 第2の層間絶縁膜
16 第1のビアホール
17 配線溝
18 TaN膜
19 Ru膜
20a シードCu層
20b Cu膜
21 第2のライナー膜
22 第3の層間絶縁膜
23 第2のビアホール
24 第2の配線溝
25 第3のCu配線
26 不連続な第2のバリアメタル膜
27a シードCu層
27b Cu膜
100 半導体基板
101 第1の層間絶縁膜
102 第1のバリア膜
103 第1のCu膜
104 第2の層間絶縁膜
105 Ru膜
106 Cu膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の層間絶縁膜に形成された配線溝と、
前記配線溝の側壁及び底面に形成された第1のバリアメタル膜と、
前記配線溝の側壁において、第1のバリアメタル膜の上に形成された第2のバリアメタル膜と、
前記配線溝内に設けられ、銅膜を有する配線を有し、
前記配線溝の上端が上方へ向けて広がった傾斜形状であることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
半導体基板上の層間絶縁膜に形成された配線溝と、
前記配線溝の側壁及び底面に形成された第1のバリアメタル膜と、
前記配線溝の側壁において、第1のバリアメタル膜の上に形成された第2のバリアメタル膜と、
前記配線溝内に設けられ、銅膜を有する配線を有し、
前記第2のバリアメタル膜の上端は、前記配線溝側壁の上端よりも低く、
前記配線溝側壁の上端で、前記第1のバリアメタル膜と前記銅膜が接していることを特徴とする、半導体装置。
【請求項3】
前記第1のバリアメタル膜の標準電極電位が銅の標準電極電位以下であり、前記第2のバリアメタル膜の標準電極電位は銅の標準電極電位より大きい、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2のバリアメタル膜が不連続に形成されている、請求項1から3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2のバリアメタル膜が、ルテニウム、またはルテニウムを主成分とする合金である、請求項1から4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のバリアメタル膜が、タンタル、またはタンタルと窒素、炭素、シリコンのうち少なくとも1つ以上との化合物である導電膜、あるいはタンタルと該化合物との積層膜である、請求項1から5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板上の層間絶縁膜に配線溝を形成する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、前記配線溝の側壁及び底部、及び前記層間絶縁間上に第1のバリアメタル膜を堆積する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記第1のバリアメタル膜上に第2のバリアメタル膜を堆積する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記層間絶縁膜上面の前記第1のバリアメタル上に形成された前記第2のバリアメタル膜を除去する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記第1及び第2のバリアメタル膜上にシード銅膜を堆積する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記シード銅膜上にめっき銅膜を堆積する工程(f)と、
前記工程(f)の後に、化学機械研磨法により前記配線溝外の前記銅膜及び前記第1バリアメタル膜を除去して銅配線を形成する工程(g)と
を有することを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(d)が、前記配線溝側壁の前記第2のバリアメタル膜の上端が、前記配線溝側壁の上端よりも低くなるように、該第2のバリアメタル膜を除去する工程である、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1のバリアメタル膜の標準電極電位は、銅の標準電極電位以下であり、前記第2のバリアメタル膜の標準電極電位は銅の標準電極電位より大きいことを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(c)において、前記第2のバリアメタル膜を不連続に形成することを特徴とする請求項7から9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2のバリアメタル膜は、ルテニウムあるいはルテニウムを主成分とする合金である、請求項7から10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1のバリアメタル膜が、タンタル、またはタンタルと窒素、炭素、シリコンのうち少なくとも1つ以上との化合物である導電膜、あるいはタンタルと該化合物との積層膜である、請求項7から11のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(b)から前記工程(e)までを、同一装置内で大気に開放することなく行う、請求項7から12のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(d)が異方性エッチングである、請求項7から13のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−194195(P2009−194195A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34185(P2008−34185)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】