説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】製造工程を簡略化しながらも、特性のばらつきがなく、信頼性に優れたノーマリオフ特性を有する窒化物半導体からなる半導体装置を実現できるようにする。
【解決手段】半導体装置は、窒化物半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上に形成され、該チャネル層103よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる電子供給層104と、電子供給層104の上に選択的に形成されたp型半導体層105と、p型半導体層105の上に形成されたゲート電極106と、ゲート電極106の両側方の領域に、それぞれ少なくとも電子供給層104と接するように形成されたソース電極107及びドレイン電極108とを有している。p型半導体層105は、六方晶のII−VI族化合物半導体、例えばp型ZnOにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に窒化物半導体からなる半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系窒化物半導体は、シリコン(Si)半導体又は砒化ガリウム(GaAs)等の化合物半導体と比べてバンドギャップが大きいことから高い絶縁破壊電界を有すると共に、高い飽和ドリフト速度を有しており、高耐圧パワーデバイス及び高速高出力トランジスタ等の電子デバイスの応用に向け、注目されている。
【0003】
特に、このGaN系窒化物半導体は、一般に面方位の(0001)面に形成される、例えばAlGaN/GaNからなるへテロ接合では、アンドープであっても分極の影響により1013cm−2以上の高いシートキャリア濃度を得られることが大きな特徴である。これにより、ドレイン電流が大きいAlGaN/GaNへテロ接合電界効果トランジスタ(Heterojunction Field Effect Transistor:HFET)を実現することができる。このように、大電流動作が可能であるという特徴を活かしたGaN系電子デバイスの応用分野としてパワースイッチング素子が有望視されている。これを実用化するには、高耐圧化と、ゲート電極に電圧が印加されない状態で電流を流さないようにするノーマリオフ化とが強く求められる。
【0004】
以下、ノーマリオフ型と低オン抵抗化とを両立させる構造として、ゲート部にp型GaN層を形成した接合型電界効果トランジスタについて説明する(例えば、特許文献1を参照。)
図7は従来例に係るノーマリオフ化を実現する接合型電界効果トランジスタの断面構成を示している。図7に示すように、GaNからなるチャネル層2の上面には、AlGaNからなるバリア層4が形成されている。n型バリア層4の上には、ソース電極12とドレイン電極14とが形成され、ソース電極12とドレイン電極14との間には、p型GaNからなるp型ベース層6を介在させたゲート電極16が形成されている。
【0005】
ここでは、バリア層4の上にp型ベース層6を形成した後、塩素ガス等を用いたドライエッチングにより、p型ベース層6におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的にエッチングしている。
【特許文献1】特開2005−244072号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の接合型電界効果トランジスタは、p型ベース層6を構成するp型GaNとバリア層4を構成するAlGaNとを選択的にエッチングすることが困難である。このため、p型ベース層6の一部がエッチングされずに残るか、逆にバリア層4に対するオーバエッチングが生じる。その結果、トランジスタの電気的特性にばらつきが生じたり、製造歩留まりが悪化したりするという問題が生じる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決し、製造工程を簡略化しながらも、特性のばらつきがなく、信頼性に優れたノーマリオフ特性を有する窒化物半導体からなる半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置は、ゲート電極の下側に設けるp型半導体層に六方晶のII−VI族化合物半導体を用いる構成とする。
【0009】
具体的に、本発明に係る第1の半導体装置は、窒化物半導体からなる第1の半導体層と、第1の半導体層の上に形成され、第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層と、第2の半導体層の上に選択的に形成され、六方晶のII−VI族化合物半導体からなり且つp型の第3の半導体層と、第3の半導体層の上に形成されたゲート電極と、ゲート電極の両側方の領域に形成されたソース電極及びドレイン電極とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の半導体装置によると、ゲート電極が形成される第3の半導体層として、六方晶のp型II−VI族化合物半導体を用いているため、第3の半導体層の下側に形成された窒化物半導体からなる第2の半導体層に対して選択的に加工することが容易となる。このため、電気的特性のばらつきが小さい信頼性に優れたノーマリオフ型の電界効果トランジスタを実現することができる。
【0011】
本発明の第1の半導体装置において、第3の半導体層には、Zn1−xMgO(但し、xは0≦x<1である。)を用いることができる。
【0012】
本発明の第1の半導体装置において、第2の半導体層は凹部を有し、第3の半導体層は、凹部の底面を覆うように形成されていてもよい。
【0013】
このように、電子供給層である第2の半導体層におけるゲート電極形成領域を掘り込んだ構造とすることにより、チャネル層である第1の半導体層のキャリア濃度を低下させることなく、ゲート閾値電圧を正電圧側にシフトすることができる。これにより、ノーマリオフ化とオン抵抗の低減との両立が可能となり、また、電流コラプス現象を抑制することができる。
【0014】
本発明の第1の半導体装置において、第3の半導体層は、少なくとも2層からなる積層構造を有していてもよい。
【0015】
このようにすると、第3の半導体層におけるバンドギャップエネルギーを、例えばZnMgOにおけるMgの含有量により変化させることができるため、ゲート閾値電圧の制御をより広範囲に行うことができる。
【0016】
本発明の第1の半導体装置は、第3の半導体層にZn1−xMgO(但し、xは0≦x<1である。)を用いる場合に、第3の半導体層におけるMgの組成xの値は実質的に一定であり、第2の半導体層と第3の半導体層とは格子整合することが好ましい。
【0017】
このようにすると、第3の半導体層の結晶性を向上することができる。
【0018】
また、本発明の第1の半導体装置が、第3の半導体層にZn1−xMgO(但し、xは0≦x<1である。)を用いる場合に、第3の半導体層におけるMgの組成xの値は、第2の半導体層側からゲート電極側に向けて大きくなるように形成されていてもよい。
【0019】
このようにすると、第3の半導体層において格子定数が第2の半導体層側からゲート電極側に向かって大きくなるため、第3の半導体層にクラックを発生させることなく、ZnO/ZnMgOからなる積層構造を形成できるので、ZnMgOの組成設計によりゲート閾値電圧を制御することができる。
【0020】
また、本発明に係る第2の半導体装置は、ゲート電極の下側に設けるp型半導体層に、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体を用いる構成とする。
【0021】
具体的には、本発明に係る第2の半導体装置は、窒化物半導体からなる第1の半導体層と、第1の半導体層の上に形成され、第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層と、第2の半導体層の上に選択的に形成され、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体からなり、且つp型の第3の半導体層と、第3の半導体層の上に形成されたゲート電極と、ゲート電極の両側方の領域に形成されたソース電極及びドレイン電極とを備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の半導体装置によると、ゲート電極が形成される第3の半導体層として、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造のp型化合物半導体化合物半導体を用いているため、第3の半導体層の下側に形成された窒化物半導体からなる第2の半導体層に対して選択的に加工することが容易となる。このため、電気的特性のばらつきが小さい信頼性に優れたノーマリオフ型の電界効果トランジスタを実現することができる。
【0023】
本発明の第2の半導体装置において、第3の半導体層は、構成元素に遷移金属元素を含むことが好ましい。
【0024】
この場合に、遷移金属は、Cuであることが好ましい。
【0025】
本発明の第2の半導体装置において、第3の半導体層は、CuAlO、SrCu、LaCuOS及びLaCuOSeのうちのいずれかであることが好ましい。
【0026】
本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、基板の上に、窒化物半導体からなる第1の半導体層を形成する工程(a)と、第1の半導体層の上に、該第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層を形成する工程(b)と、第2の半導体層の上に、六方晶のII−VI族化合物からなり且つp型の第3の半導体層を形成する工程(c)と、工程(c)よりも後に、第3の半導体層におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的に除去する工程(d)と、第3半導体層の上にゲート電極を選択的に形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする。
【0027】
本発明の第1の半導体装置の製造方法によると、第2の半導体層の上に六方晶のII−VI族化合物からなり且つp型の第3の半導体層を形成し、その後、第3の半導体層におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的に除去する。このため、第3の半導体層の下側に形成された窒化物半導体からなる第2の半導体層に対して第3の半導体層を選択的にエッチングすることができる。これにより、電気的特性のばらつきが小さい信頼性に優れたノーマリオフ型の電界効果トランジスタを実現することができる。
【0028】
また、本発明に係る第2の半導体装置の製造方法は、基板の上に、窒化物半導体からなる第1の半導体層を形成する工程(a)と、第1の半導体層の上に、該第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層を形成する工程(b)と、第2の半導体層の上に、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体からなり、且つp型の第3の半導体層を形成する工程(c)と、工程(c)よりも後に、第3の半導体層におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的に除去する工程(d)と、第3半導体層の上にゲート電極を選択的に形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする。
【0029】
本発明の第2の半導体装置の製造方法によると、第2の半導体層の上に、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体からなり、且つp型の第3の半導体層を形成し、その後、第3の半導体層におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的に除去する。このため、第3の半導体層の下側に形成された窒化物半導体からなる第2の半導体層に対して第3の半導体層を選択的にエッチングすることができる。これにより、電気的特性のばらつきが小さい信頼性に優れたノーマリオフ型の電界効果トランジスタを実現することができる。
【0030】
本発明の第1又は第2の半導体装置の製造方法は、工程(d)において、第3の半導体層は、ウェットエッチングにより除去することが好ましい。
【0031】
このようにすると、第3の半導体層を高い選択性でエッチングすることができ、また、エッチングによるダメージを低減することができる。
【0032】
本発明の第1又は第2の半導体装置の製造方法は、工程(c)において、第3の半導体層は、物理的気相堆積法により形成することができる。
【0033】
本発明の第1又は第2の半導体装置の製造方法は、工程(d)よりも後に、第2の半導体層における第3の半導体層の両側方の領域に、ソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成する工程(f)をさらに備えていてもよい。
【0034】
本発明の第1又は第2の半導体装置の製造方法は、工程(f)において、ソース電極及びドレイン電極は、第1の半導体層にも接するように形成してもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、電気的特性のばらつきを抑え、且つ製造歩留まりが高いノーマリオフ特性を有する半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置であって、ヘテロ接合電界効果トランジスタの断面構成を模式的に示している。
【0038】
図1に示すように、第1の実施形態に係る電界効果トランジスタは、シリコン、サファイア、又は窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体が結晶成長可能な基板101の主面上に順次形成された、GaN又は窒化アルミニウム(AlN)等からなるバッファ層102と、厚さが約3μmのアンドープGaNからなるチャネル層103と、厚さが25nmのAl0.15Ga0.85Nからなる電子供給層104とを有している。
【0039】
電子供給層104の上には、厚さが200nmでp型不純物を含む酸化亜鉛(ZnO)からなるp型半導体層105が選択的に形成されている。p型半導体層105の上には、該p型半導体層105とオーミック接合し、例えばパラジウム(Pd)からなるゲート電極106が設けられている。また、電子供給層104の上におけるp型半導体層105の両側方の領域には、それぞれチタン(Ti)/アルミニウム(Al)からなるソース電極107及びドレイン電極108が設けられている。なお、ソース電極107及びドレイン電極108は、電子供給層104を掘り込むように形成することにより、各電極107、108の下部がチャネル層103とそれぞれ接するように設けてもよい。
【0040】
また、素子形成領域の周囲には、例えばホウ素(B)等のイオンを注入して高抵抗化された素子分離領域109を形成している。
【0041】
以下、前記のように構成された電界効果トランジスタの製造方法について図2(a)〜図2(e)を用いて説明する。
【0042】
まず、図2(a)に示すように、例えば有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法により、基板101の主面上に、バッファ層102、アンドープGaNからなるチャネル層103及びAl0.15Ga0.85Nからなる電子供給層104を順次エピタキシャル成長する。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、エピタキシャル成長した半導体層における素子形成領域の周囲で且つ電子供給層104からチャネル層103に至る領域に、例えばホウ素イオンをイオン注入することにより、素子分離領域109を形成する。
【0044】
次に、図2(c)に示すように、例えばスパッタ法又はパルスレーザ蒸着(Pulsed Laser Deposition:PLD)法等の物理的気相堆積法により、素子分離領域109を含む電子供給層104の上に、厚さが200nmのp型ZnO層105Aを形成する。ここで、p型ドーパントには、例えば窒素(N)又は砒素(As)等を用いることができる。ZnOは、GaN又はAlNと格子定数が近いため、AlGaNからなる電子供給層104の上に結晶性及び平坦性に優れたp型ZnO層105Aを形成することができる。
【0045】
次に、図2(d)に示すように、リソグラフィ法及び硝酸(HNO)を用いたウェットエッチング法により、p型ZnO層105Aにおけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的にエッチングして、p型ZnO層105Aからp型半導体層105を形成する。このとき、窒化物半導体であるGaN及びAlGaNは硝酸ではエッチングされないため、p型ZnO層105Aのみを選択的にエッチングすることができる。従って、p型ZnO層105Aのエッチング残り又は電子供給層104に対するオーバエッチによる製造歩留まりの悪化及び電気的特性のばらつきを防止することができる。また、ウェットエッチは、ドライエッチと比較してエッチング界面に生じる欠陥を少なくすることができる。
【0046】
次に、リソグラフィ法により、p型半導体層105を含む電子供給層104の上に、ソース電極及びドレイン電極の各電極形成領域に開口部を有するレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、電子ビーム蒸着法により、開口部を含むレジストパターンの上に、Ti/Alからなる積層膜を堆積し、その後、レジストパターンを除去する、いわゆるリフトオフ法により、図2(e)に示すように、Ti/Alからなるソース電極107及びドレイン電極108をそれぞれ形成する。続いて、電子ビーム蒸着法及びリフトオフ法により、p型半導体層105上に、Pdからなるゲート電極106を選択的に形成する。
【0047】
なお、第1の実施形態においては、p型半導体層105に、Mgを含むp型Zn1−xMgO(但し、xは0≦x<1である。)を用いてもよい。このとき、Mgの組成xの値は、実質的に一定とし、p型Zn1−xMgOからなるp型半導体層105とAlGaNからなる電子供給層104とを格子整合させることが好ましい。このようにすると、電子供給層104の組成を変えた場合であっても、p型半導体層105のMg含有量を調整することにより、該p型半導体層105を電子供給層104に格子整合させることができるため、p型半導体層105の結晶性が向上する。
【0048】
ここで、Mgの組成xの値が実質的に一定であるとは、必ずしも厳密に一定値である必要はなく、p型半導体層105と電子供給層104との間で格子不整合が生じない程度には変化していてもよい。例えば、Mgの組成xの値の最大値と最小値とが、組成xの値の平均値に対し、±5%以内(すなわち、組成xの平均値が0.5のときはx=0.525〜0.475)であることが好ましく、±1%以内であれば、さらに好ましい。Mgの組成x=0、すなわちp型半導体層105がMgを含まない場合は、Mgの含有量が測定値のバックグラウンド以下であればよい。
【0049】
以上説明したように、第1の実施形態によると、ゲート電極106と接合するp型半導体層105に、六方晶のII−VI族化合物半導体、例えばp型Zn1−xMgO(但し、xは0≦x<1である。)を形成することにより、p型半導体層105の下側に形成される、AlGaNからなる電子供給層104に対して選択的にパターニングすることを容易に行えるようになる。その結果、トランジスタの電気的特性のばらつきを抑えられる共に、製造歩留まりが高いノーマリオフ特性を有する接合型電界効果トランジスタを得ることができる。
【0050】
(第1の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例について図面を参照しながら説明する。
【0051】
図3は本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置であって、ヘテロ接合電界効果トランジスタの断面構成を模式的に示している。図3において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0052】
第1変形例においては、Al0.15Ga0.85Nからなる電子供給層104Aとして、その厚さを50nmとし、さらに、p型半導体層105の形成領域に例えば深さが30nmの凹部104aを設けている。
【0053】
厚さが200nmのp型ZnOからなるp型半導体層105は、その下部を電子供給層104Aに設けられた凹部104aに充填されるように形成されている。
【0054】
以下、前記のように構成された電界効果トランジスタの製造方法について図4(a)〜図4(f)を用いて説明する。
【0055】
まず、図4(a)に示すように、例えばMOCVD法により、基板101の主面上に、バッファ層102、アンドープGaNからなるチャネル層103及びAl0.15Ga0.85Nからなる電子供給層104Aを順次エピタキシャル成長する。
【0056】
次に、図4(b)に示すように、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、厚さが50nmの電子供給層104Aに深さが30nmの凹部104aを形成する。
【0057】
次に、図4(c)に示すように、エピタキシャル成長した半導体層における素子形成領域の周囲で且つ電子供給層104Aからチャネル層103に至る領域に、例えばホウ素イオンをイオン注入することにより、素子分離領域109を形成する。
【0058】
次に、図4(d)に示すように、例えばスパッタ法又はPLD法により、素子分離領域109及び凹部104aを含む電子供給層104Aの上に、厚さが200nmのp型ZnO層105Aを形成する。
【0059】
次に、図4(e)に示すように、リソグラフィ法及びHNOを用いたウェットエッチング法により、p型ZnO層105Aにおけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的にエッチングして、p型ZnO層105Aからp型半導体層105を形成する。このとき、前述したように、GaN及びAlGaNは硝酸ではエッチングされないため、p型ZnO層105Aのみを選択的にエッチングすることができる。
【0060】
次に、図4(f)に示すように、第1の実施形態と同様に、電子供給層104Aの上におけるp型半導体層105の両側方の領域に、Ti/Alからなるソース電極107及びドレイン電極108をそれぞれ形成する。続いて、p型半導体層105の上に、Pdからなるゲート電極106を選択的に形成する。
【0061】
このように、第1変形例によると、電子供給層104Aにおけるゲート電極106の下方の領域に凹部104aを形成し、形成した凹部104aにp型半導体層105の下部を形成している。これにより、チャネル層103におけるキャリア濃度を低下させることなく、ゲート閾値電圧を正電圧側にシフトすることができるため、ノーマリオフ化をより確実に行えるようになる。
【0062】
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2変形例について図面を参照しながら説明する。
【0063】
図5は本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置であって、ヘテロ接合電界効果トランジスタの断面構成を模式的に示している。図5において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0064】
第2変形例においては、p型ZnOからなるp型半導体層105とゲート電極106との間に、p型のZn1−xMgO(但し、xは0<x<1である。)層110を設けている。
【0065】
ここで、p型半導体層105の厚さは、例えば20nmであり、Zn1−xMgO層110の厚さは、例えば180nmである。
【0066】
このようにすると、酸化亜鉛マグネシウム(ZnMgO)は、酸化亜鉛(ZnO)よりもバンドギャップエネルギーが大きいため、ゲート電極106の下側部分でのポテンシャルエネルギーの持ち上がり量(増加量)を大きくできる。このため、ゲート閾値電圧を正電圧側にシフトさせたノーマリオフ状態をより確実に実現することができる。
【0067】
また、AlGaNからなる電子供給層104側にp型ZnOからなるp型半導体層105を設け、且つ、ゲート電極106側にZn1−xMgO層110を設けている。これにより、電子供給層104側からゲート電極106側に向けて、Zn1−xMgO層110におけるMgの組成xの値が大きくなる構成となる。ZnMgOはZnOと比べて格子定数が大きいため、クラックを発生させることなく、ZnO/ZnMgOからなる積層構造を形成することができる。従って、Zn1−xMgO層110の組成設計により、ゲート閾値電圧を制御することができる。
【0068】
なお、Zn1−xMgO層110を形成するには、p型ZnOからなるp型半導体層105を成長した後に、p型半導体層105の上に、原料に所定量のMgを追加して成長すればよい。
【0069】
以上により、高耐圧且つ大電流動作が可能なノーマリオフ型電界効果トランジスタを実現することができる。
【0070】
(第1の実施形態の第3変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第3変形例について図面を参照しながら説明する。
【0071】
図6は本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る半導体装置であって、ヘテロ接合電界効果トランジスタの断面構成を模式的に示している。図6において、図1及び図3に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0072】
第3変形例においては、第1変形例と同様に、Al0.15Ga0.85Nからなる電子供給層104Aとして、その厚さを50nmとし、さらに、p型半導体層105の形成領域に例えば深さが30nmの凹部104aを設けている。
【0073】
厚さが20nmのp型ZnOからなるp型半導体層105は、その下部を電子供給層104Aに設けられた凹部104aに充填されるように形成されている。さらに、第2変形例と同様に、p型半導体層105の上に、厚さが180nmのp型のZn1−xMgO(但し、xは0<x<1である。)層110を設けている。
【0074】
このようにすると、ZnMgOは、ZnOよりもバンドギャップエネルギーが大きいため、ゲート電極106の下側部分でのポテンシャルエネルギーの持ち上がり量(増加量)を大きくでき、ゲート閾値電圧を正電圧側にシフトさせたノーマリオフ状態をより確実に実現することができる。
【0075】
また、AlGaNからなる電子供給層104側にp型ZnOからなるp型半導体層105を設け、且つ、ゲート電極106側にZn1−xMgO層110を設けている。これにより、電子供給層104側からゲート電極106側に向けて、Zn1−xMgO層110におけるMgの組成xの値が大きくなる構成となる。ZnMgOはZnOと比べて格子定数が大きいため、クラックを発生させることなく、ZnO/ZnMgOからなる積層構造を形成することができる。従って、Zn1−xMgO層110の組成設計により、ゲート閾値電圧を制御することができる。
【0076】
また、電子供給層104におけるゲート電極106の下方の領域を掘り込んで凹部104aを形成することにより、チャネル層103におけるキャリア濃度を低下させることなく、ゲート閾値電圧を正電圧側にシフトすることができる。
【0077】
以上により、高耐圧且つ大電流動作が可能なノーマリオフ型電界効果トランジスタを実現することができる。
【0078】
なお、第1の実施形態及びその変形例において、p型半導体層105にp型ZnO層を用いたが、これに限られず、結晶構造が六方晶であって、他のp型のII−VI族化合物半導体を用いることができ、例えば、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)又はセレン化カドミウム(CdSe)等を用いることができる。
【0079】
なお、第1の実施形態及びその変形例において、p型半導体層105にp型ZnO層を用いたが、これに限られず、ZnO以外の六方晶のp型II−VI族化合物半導体を用いてもよい。六方晶であれば、窒化物半導体からなる第2の半導体層と結晶構造が同一であるため、第2の半導体層の上に直接形成した場合でも格子整合させることが容易である。例えば、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)又はセレン化カドミウム(CdSe)等を用いることができる。
【0080】
また、第1の実施形態及びその変形例において、p型半導体層105に、構成元素に酸素若しくは硫黄を含む他のp型化合物半導体を用いても良く、ZnOと同様にp型層の選択エッチングを容易に実現することができる。さらに、構成元素に遷移金属を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体とすることがより望ましい。例えば、CuAlO、SrCu、LaCuOS又はLaCuOSe等を用いることにより、第2の窒化物半導体層と良好な接合を実現でき、p型化も比較的容易に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、電気的特性のばらつきを抑え且つ製造歩留まりが高いノーマリオフ特性を有する接合型電界効果トランジスタを実現することができ、窒化物半導体からなる半導体装置及びその製造方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図4】(a)〜(f)は本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図7】従来例に係る接合型電界効果トランジスタを示す構成断面図である。
【符号の説明】
【0083】
101 基板
102 バッファ層
103 チャネル層
104 電子供給層
104a 凹部
105 p型半導体層
106 ゲート電極
107 ソース電極
108 ドレイン電極
109 素子分離領域
110 Zn1−xMgO層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体からなる第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上に形成され、前記第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上に選択的に形成され、六方晶のII−VI族化合物半導体からなり且つp型の第3の半導体層と、
前記第3の半導体層の上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側方の領域に形成されたソース電極及びドレイン電極とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第3の半導体層は、Zn1−xMgO(但し、xは0≦x<1である。)からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の半導体層は凹部を有し、
前記第3の半導体層は、前記凹部の底面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3の半導体層は、少なくとも2層からなる積層構造を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第3の半導体層におけるMgの組成xの値は実質的に一定であり、
前記第2の半導体層と前記第3の半導体層とは格子整合することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第3の半導体層におけるMgの組成xの値は、前記第2の半導体層側から前記ゲート電極側に向けて大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
窒化物半導体からなる第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上に形成され、前記第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上に選択的に形成され、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体からなり、且つp型の第3の半導体層と、
前記第3の半導体層の上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側方の領域に形成されたソース電極及びドレイン電極とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記第3の半導体層は、構成元素に遷移金属元素を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記遷移金属は、Cuであることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3の半導体層は、CuAlO、SrCu、LaCuOS及びLaCuOSeのうちのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
基板の上に、窒化物半導体からなる第1の半導体層を形成する工程(a)と、
前記第1の半導体層の上に、該第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層を形成する工程(b)と、
前記第2の半導体層の上に、六方晶のII−VI族化合物からなり且つp型の第3の半導体層を形成する工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、前記第3の半導体層におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的に除去する工程(d)と、
前記第3半導体層の上にゲート電極を選択的に形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板の上に、窒化物半導体からなる第1の半導体層を形成する工程(a)と、
前記第1の半導体層の上に、該第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体からなる第2の半導体層を形成する工程(b)と、
前記第2の半導体層の上に、構成元素に酸素若しくは硫黄を含むデラフォサイト構造又はカルコゲナイド構造の化合物半導体からなり、且つp型の第3の半導体層を形成する工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、前記第3の半導体層におけるゲート電極形成領域を除く領域を選択的に除去する工程(d)と、
前記第3半導体層の上にゲート電極を選択的に形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(d)において、前記第3の半導体層は、ウェットエッチングにより除去することを特徴とする請求項11又は12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(c)において、前記第3の半導体層は、物理的気相堆積法により形成することを特徴とする請求項11又は12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(d)よりも後に、
前記第2の半導体層における前記第3の半導体層の両側方の領域に、ソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成する工程(f)をさらに備えていることを特徴とする請求項11又は12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記工程(f)において、前記ソース電極及びドレイン電極は、前記第1の半導体層にも接するように形成することを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−165987(P2010−165987A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8937(P2009−8937)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】