説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】貫通電極を介してのチップ間の電気的接続を確実に行えるようにする。
【解決手段】シリコン基板11中に裏面に達するように貫通電極16が形成されている。シリコン基板11の裏面側にシリコン基板21が貼り合わされていると共に、貫通電極16の露出先端部とシリコン基板21上の電極端子25とが電気的に接続されている。貫通電極16における露出先端部の側壁の傾斜角は、その他の部分の側壁の傾斜角と比べて大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法、特に、3次元集積回路を有する半導体装置においてウエハ/ウエハ間、チップ/ウエハ間又はチップ/チップ間の接続を行う貫通電極の構造及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、貫通電極によって互いに電気的に接続された複数のチップを積層した3次元集積回路素子が開発されてきている。このような3次元集積回路素子は、一般に、以下のようにして製造される。
【0003】
まず、シリコン基板の主面上に複数のトランジスタを形成する。次に、層間絶縁膜及びコンタクトを形成した後、貫通電極形成用ホールを形成して貫通電極となる銅を埋め込み、その後、層間絶縁膜上にさらに配線層を形成する。その後、基板裏面に対してCMP(chemical mechanical polishing )を行い、シリコン基板の裏面を平坦化した後、ドライエッチング法によりシリコン基板の裏面をさらにエッチング除去して、貫通電極形成用ホールの底部、つまり貫通電極の底部を露出させる。これにより、一方のチップの裏面側電極端子が形成される。続いて、この一方のチップの裏面側電極端子を、別途作製された他方のチップの表面側電極端子に加熱圧着させることにより、貫通電極を介した基板同士の接続(ウエハ/ウエハ間、チップ/ウエハ間又はチップ/チップ間の接続)が行われる(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
図6は、シリコン基板中に従来の貫通電極が形成された様子(基板裏面研磨前)を示す断面図である。図6に示すように、ゲート電極構造102が形成されたシリコン基板101上に層間絶縁膜103Aが形成されている。層間絶縁膜103A中にはシリコン基板101に達するコンタクト107が形成されている。シリコン基板101及び層間絶縁膜103Aに形成された貫通電極形成用ホールの壁面を覆うようにバリアメタル膜106Aが形成されていると共にバリアメタル膜106A上に当該貫通電極形成用ホールが埋まるように銅膜106Bが形成されており、これにより、貫通電極106が形成されている。層間絶縁膜103A上には層間絶縁膜103Bが形成されている。層間絶縁膜103B中には、貫通電極106及びコンタクト107と接続する多層配線104が形成されていると共に、層間絶縁膜103Bの表面部には、多層配線104と接続する電極端子105が形成されている。以上のようにして、貫通電極106を有するチップ100(ダイシング前であればウエハに作り込まれたチップ100:以下同じ)が形成されている。
【0005】
ここで、図6から分かるように、従来の貫通電極の底面は、一般的に平坦な形状を有している。
【0006】
また、このような貫通電極の底部(露出部)を一方のチップの電極端子として、他方のチップの電極端子に接続させる場合において、両電極端子が銅から構成されていると、両電極端子の接続には高温、高圧が必要となる。そこで、この貫通電極の露出部である電極端子を合金化すると共に別途作製された他方のチップの電極端子も合金化し、合金化された電極端子同士を接続することにより、低温、低加重で両電極端子の接続を行う方法が報告されている(例えば非特許文献2参照)。
【非特許文献1】ITRS2007 Assembly & Package Chapter(和訳版)、P.41-42
【非特許文献2】3D System Integration by Chip-to-Wafer Stacking Technologies、Peter Ramm他、Extended Abstracts of the 2003 International Conference on Solid State Devices and Materials 、東京、2003年、p.376-377
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の従来の貫通電極によって互いに電気的に接続された複数のチップを積層した3次元集積回路素子においては、チップ間の電気的接続の信頼性が悪いという問題がある。
【0008】
また、低温、低加重で電極端子同士を接続しようとすると、各電極端子を合金化する追加工程が必要となり、プロセスが複雑化してコストアップが生じるという問題もある。
【0009】
前記に鑑み、本発明は、貫通電極によって互いに電気的に接続された複数のチップを積層した3次元集積回路素子において、貫通電極を介してのチップ間の電気的接続を確実に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本願発明者は、従来の貫通電極によって互いに電気的に接続された複数のチップを積層した3次元集積回路素子において、チップ間の電気的接続の信頼性が悪い原因を検討した結果、次のような知見を得た。
【0011】
図7は、従来の貫通電極によって互いに電気的に接続された複数のチップを積層した半導体装置の断面図である。尚、図7に示すチップ100については、基本的に、図6に示すチップ100と同様の構造を有しているので、重複する説明を省略する。図7に示すように、ゲート電極構造202が形成されたシリコン基板201上に層間絶縁膜203が形成されている。層間絶縁膜203中にはシリコン基板201に達するコンタクト207が形成されている。また、層間絶縁膜203中には、コンタクト207と接続する多層配線204が形成されていると共に、層間絶縁膜203の表面部には、多層配線204と接続する電極端子205が形成されている。以上のようにして、チップ200(ダイシング前であればウエハに作り込まれたチップ200:以下同じ)が形成されている。このチップ200は、チップ100の裏面側に貼り合わされている。
【0012】
ところが、前述のように、貫通電極106の露出部分からなるチップ100の電極端子と、チップ200の電極端子205との間で電気的接続が実現できない場合がある。その理由は次の通りである。
【0013】
図7に示すように、チップ100つまりシリコン基板101の裏面側において、ドライエッチング法を用いて貫通電極106(つまり貫通電極形成用ホール内に埋め込まれた銅)を露出させる工程はエッチング時間によって制御されるため、基板面内(ウエハレベルで貫通電極形成を行う場合にはウエハ面内:以下同じ)において、貫通電極106の露出部分の高さにはばらつきが生じる。尚、このばらつきは、貫通電極形成用ホールを形成するためのリソグラフィー工程におけるレジストパターンの寸法ばらつきと、貫通電極形成用ホールを形成するための又は貫通電極106を露出させるためのドライエッチング工程におけるエッチング速度の基板面内でのばらつきとに起因して発生する。
【0014】
また、図7に示すように、ウエハ状態のシリコン基板101及び201には厚みのばらつきや反りが生じるため、貫通電極106の露出部分からなる電極端子が設けられたシリコン基板101の裏面と、電極端子205が設けられたシリコン基板201の表面とを平行に保つことはできない。このため、貫通電極106の露出部分からなる電極端子の底面と電極端子205の上面との距離がばらつくことになる。その結果、両電極端子を加熱圧着した場合、印加される圧力に基板面内ばらつきが生じる。そして、最悪の場合には、対向する両電極端子間に空隙が生じて両電極端子の接続を実現できなくなる。
【0015】
以上の知見に基づいて、本願発明者は、電極端子となる貫通電極の露出部分(他方のチップと接続する先端部)を他の部分と比べて尖った形状にすることにより、当該露出部分の変形が容易に生じるようにするという発明を想到した。これにより、電極端子間距離にばらつきがあっても、電極端子間距離が相対的に小さい貫通電極の露出部分を電極端子同士の加熱圧着時に変形させることができるので、電極端子間距離のばらつきの影響を吸収することができる。
【0016】
具体的には、本発明に係る半導体装置は、裏面に達する貫通電極が形成された第1の基板と、前記貫通電極を介して前記第1の基板と電気的に接続され、且つ前記第1の基板の裏面側に貼り合わされた第2の基板とを備え、前記貫通電極における前記第2の基板と接続する先端部の側壁の傾斜角は、その他の部分の側壁の傾斜角と比べて大きい。
【0017】
ここで、貫通電極側壁の傾斜角とは、貫通電極の延びる方向つまり基板主面に垂直な方向に対する角度を言う。
【0018】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通電極の前記先端部は円錐形状又は角錐形状を有していてもよい。
【0019】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通電極は主成分として銅を含んでいてもよい。
【0020】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の基板及び前記第2の基板は共にシリコン基板であってもよい。
【0021】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通電極における前記先端部の反対側の端部は、前記第1の基板上に形成された配線と接続されていてもよい。
【0022】
本発明に係る半導体装置において、前記貫通電極の前記先端部は、前記第2の基板上に形成された電極端子と接続されていてもよい。
【0023】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1の基板中に貫通電極形成用ホールを形成する工程(a)と、前記貫通電極形成用ホール下側の前記第1の基板をエッチングして、前記貫通電極形成用ホールの底部の壁面の傾斜角を、その他の部分の壁面の傾斜角と比べて大きくする工程(b)と、前記工程(b)の後、前記貫通電極形成用ホール内に導電材料を埋め込んで貫通電極を形成する工程(c)と、前記工程(c)の後、少なくとも前記貫通電極形成用ホールの前記底部に形成されている前記貫通電極が露出するように前記第1の基板を裏面側から薄くする工程(d)と、前記工程(d)の後、前記第1の基板の裏面側に第2の基板を貼り合わせると共に、前記貫通電極の露出部分と、前記第2の基板上に形成された電極端子とを電気的に接続する工程(e)とを備えている。
【0024】
ここで、貫通電極形成用ホールの壁面の傾斜角とは、前記貫通電極形成用ホールの延びる方向つまり基板主面に垂直な方向に対する角度を言う。
【0025】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(d)は、前記貫通電極が露出しないように前記第1の基板の裏面に対して研磨を行った後、少なくとも前記貫通電極形成用ホールの前記底部に形成されている前記貫通電極が露出するように前記第1の基板の裏面に対してエッチングを行う工程を含んでいてもよい。
【0026】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(e)は、前記貫通電極の前記露出部分と前記電極端子とを加熱圧着により電気的に接続する工程を含んでいてもよい。
【0027】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)では、ウェットエッチング法を用いて前記貫通電極形成用ホール下側の前記第1の基板をエッチングしてもよい。この場合、前記第1の基板は、(100)結晶面を主面とするシリコン基板であり、前記工程(b)の実施後における前記貫通電極形成用ホールの前記底部の壁面は(111)結晶面であってもよい。
【0028】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)では、ドライエッチング法を用いて前記貫通電極形成用ホール下側の前記第1の基板をエッチングしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、貫通電極における第2の基板(つまり他方のチップ)と接続する先端部の側壁の傾斜角が、その他の部分の側壁の傾斜角と比べて大きいため、言い換えると、貫通電極の先端部を他の部分と比べて尖った形状にしているため、当該先端部を露出させてなる電極端子を容易に変形させることができる。従って、当該電極端子と、他方のチップの電極端子との間の距離(電極端子間距離)にばらつきがあっても、電極端子間距離が相対的に小さい貫通電極の露出部分が電極端子同士の加熱圧着時に変形するため、電極端子間距離のばらつきの影響が吸収されるので、対向する両電極端子間に空隙が生じて両電極端子の電気的接続が得られなくなる事態を回避することができる。すなわち、貫通電極を介してのチップ間の電気的接続を確実に行うことができる。
【0030】
また、本発明によると、貫通電極の先端部を露出させてなる電極端子を容易に変形させることができるので、当該電極端子と他方のチップの電極端子とを低温且つ小さな加重で確実に接続することができる。ここで、両電極端子が低抵抗材料である銅から構成されている場合にも、両電極端子を合金化することなく低温且つ小さな加重で接続することができるので、プロセスの複雑化つまりコストアップを防止しながら低抵抗で且つ高信頼性を有するチップ間電気的接続を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、基板中に本発明の貫通電極が形成された様子(基板裏面研磨前)を示す断面図である。図1に示すように、ゲート電極構造12が形成されたシリコン基板11上に層間絶縁膜13Aが形成されている。層間絶縁膜13A中にはシリコン基板11に達するコンタクト17が形成されている。シリコン基板11及び層間絶縁膜13Aに形成された貫通電極形成用ホールの壁面を覆うようにバリアメタル膜16Aが形成されていると共にバリアメタル膜16A上に当該貫通電極形成用ホールが埋まるように銅膜16Bが形成されており、これにより、貫通電極16が形成されている。層間絶縁膜13A上には層間絶縁膜13Bが形成されている。層間絶縁膜13B中には、貫通電極16及びコンタクト17のそれぞれの上部と接続する多層配線14が形成されていると共に、層間絶縁膜13Bの表面部には、多層配線14と接続する電極端子15が形成されている。以上のようにして、貫通電極16を有するチップ10(ダイシング前であればウエハに作り込まれたチップ10:以下同じ)が形成されている。
【0033】
ここで、図1から分かるように、本実施形態の貫通電極16(貫通電極形成用ホールが)は、その底部の断面形状が尖端形状であることを特徴としている。言い換えると、貫通電極16の底部の側壁は、その他の部分の側壁と比べて、貫通電極16の延びる方向に対して大きく傾斜している。
【0034】
図2(a)〜(h)及び図3(a)〜(d)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0035】
まず、図2(a)に示すように、シリコン基板11上に複数のトランジスタのゲート電極構造12を形成する。次に、図2(b)に示すように、シリコン基板11上にゲート電極構造12を覆うように例えばCVD(chemical vapor deposition )酸化膜からなる層間絶縁膜(第1の層間絶縁膜)13Aを堆積した後、層間絶縁膜13Aの表面をCMPにより平坦化する。次に、図2(c)に示すように、リソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて層間絶縁膜13Aの所定領域にコンタクトホールを形成した後、当該コンタクトホールを例えばタングステンで埋め込むことによって、コンタクト17を形成する。
【0036】
次に、図2(d)に示すように、例えばドライエッチング法を用いて、層間絶縁膜13Aを貫通し且つシリコン基板11の例えば深さ30μmの箇所まで達する貫通電極形成用ホール30を形成する。ここで、貫通電極形成用ホール30の直径は例えば5μmである。また、貫通電極形成用ホール30の形成はエッチングを時間制御することにより行う。
【0037】
次に、図2(e)に示すように、例えばウェットエッチング法を用いて、貫通電極形成用ホール30下側のシリコン基板11をエッチングして、貫通電極形成用ホール30の底部を尖端形状(例えば円錐形状又は角錐形状等)に加工する。すなわち、貫通電極形成用ホール30の底部30bの壁面を、その他の部分30aの壁面と比べて、貫通電極形成用ホール30の延びる方向に対して大きく傾斜させる。ここで、シリコン基板11としては、(100)結晶面を主面とするシリコン基板を用いると共に、エッチャントとしては、例えば25%質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液を用い、当該エッチング液に、貫通電極形成用ホール30が形成されたウエハ状態のシリコン基板11を例えば温度90℃で10分間浸漬することによりエッチングを行う。これにより、(100)結晶面のエッチング速度が(111)結晶面のエッチング速度の300〜400倍程度となるため、貫通電極形成用ホール30の底部30bの壁面は(111)結晶面となる。また、貫通電極形成用ホール30の直径が5μmであるとすると、貫通電極形成用ホール30における尖端形状を有する底部30bの深さは5μm程度以上である。
【0038】
次に、図2(f)に示すように、例えば厚さ200nmのCVD酸化膜(図示省略)を貫通電極形成用ホール30の内壁面を覆うように形成した後、引き続き、バリアメタル膜16Aとして、例えば、厚さ50nmの窒化チタン膜及び厚さ50nmのチタン膜を、貫通電極形成用ホール30の内壁面を覆うようにスパッタ法により順次形成する。
【0039】
次に、図2(g)に示すように、例えば電解メッキ法により銅膜16Bを貫通電極形成用ホール30が埋まるように形成した後、図2(h)に示すように、例えばCMPにより、層間絶縁膜13A上に形成されている銅膜16B及びバリアメタル膜16Aを除去し、貫通電極形成用ホール30内のみに銅膜16B及びバリアメタル膜16Aを残存させる。これにより、例えば円錐形状又は角錐形状等の尖った底部を有する貫通電極16が形成される。
【0040】
次に、図3(a)に示すように、通常の埋め込み配線形成方法を使用して、層間絶縁膜13A上に層間絶縁膜(積層絶縁膜)13Bを形成すると共に層間絶縁膜13B中に、貫通電極16及びコンタクト17と接続する多層配線14を形成した後、層間絶縁膜13Bの表面部に、多層配線14と接続する電極端子15を形成する。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、層間絶縁膜13Bの最表面(最上層の配線層の上面)を支持基板31に接着させる。
【0042】
次に、図3(c)に示すように、貫通電極16が露出しないようにシリコン基板11の裏面に対して研磨を行ってシリコン基板11を薄くした後、少なくとも貫通電極形成用ホール30の底部30b(図2(e)参照)に形成されている貫通電極16(つまり貫通電極16における尖端形状を有する底部)が完全に露出するように、シリコン基板11の裏面の全体に対してドライエッチングを行う。
【0043】
次に、図3(d)に示すように、貫通電極16の露出部分を覆うCVD酸化膜(図示省略)及びバリアメタル膜16Aを例えばドライエッチングにより除去し、当該露出部分を構成する銅膜16Bを露出させる。これにより、貫通電極16を有する一方のチップが形成される。その後、当該チップの裏面側に、別途作成された他のチップを貼り合わせると共に、貫通電極16の露出部分からなる電極端子と、他のチップ上に形成された電極端子とを例えば加熱圧着して両電極端子を電気的に接続する。その後、チップ積層体から支持基板31を剥離する。
【0044】
図4は、以上に説明した工程により形成された、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。尚、図4に示すチップ10については、基本的に、図1に示すチップ10と同様の構造を有しているので、重複する説明を省略する。図1に示すように、ゲート電極構造22が形成されたシリコン基板21上に層間絶縁膜23が形成されている。層間絶縁膜23中にはシリコン基板21に達するコンタクト27が形成されている。また、層間絶縁膜23中には、コンタクト27と接続する多層配線24が形成されていると共に、層間絶縁膜23の表面部には、多層配線24と接続する電極端子25が形成されている。電極端子25は例えば銅膜から構成されている。以上のようにして、チップ20(ダイシング前であればウエハに作り込まれたチップ20:以下同じ)が形成されている。このチップ20は、チップ10の裏面側に、例えば接着層(図示省略)を介して貼り合わされている。
【0045】
本実施形態によると、チップ10の電極端子となる貫通電極16の露出部分(先端部)の側壁の傾斜角が、その他の部分の側壁の傾斜角と比べて大きいため、言い換えると、貫通電極16の先端部を他の部分と比べて尖った形状にしているため、当該先端部を露出させてなる電極端子を容易に変形させることができる。従って、当該電極端子と、他方のチップ20の電極端子25との間の距離(電極端子間距離)にばらつきがあっても、電極端子間距離が相対的に小さい貫通電極16の露出部分が電極端子同士の加熱圧着時に変形するため、電極端子間距離のばらつきの影響が吸収されるので、対向する両電極端子間に空隙が生じて両電極端子の電気的接続が得られなくなる事態を回避することができる。すなわち、貫通電極16の露出部分からなるチップ10の電極端子と、チップ20の電極端子25との間で確実に電気的接続が実現されるので、貫通電極16を介してのチップ間の電気的接続を確実に行うことができる。
【0046】
尚、本実施形態において、チップ10とチップ20との貼り合わせを、共にウエハ状態で行ってもよいし(ウエハ/ウエハ間接続)、共にダイシング後のチップ状態で行ってもよいし(チップ/チップ間接続)、一方がウエハ状態で他方がチップ状態で行ってもよい(チップ/ウエハ間接続)。
【0047】
図5(a)及び(b)は、貫通電極16の露出部分からなるチップ10の電極端子と、チップ20の電極端子25とを加熱圧着により接続する様子を示している。
【0048】
図5(a)に示すように、貫通電極16の露出部分である底部を尖端形状に加工しておくと、当該部分からなる電極端子を、別途作成されたチップ20の電極端子25に加熱圧着させた際に、図5(b)に示すように、貫通電極16における尖端形状を有する底部が電極端子25に食い込む。ここで、加熱圧着を開始する時点では、貫通電極16の底部を構成する銅膜16Bの表面にも電極端子25の表面にも自然酸化膜41が形成されているが、加熱圧着によって、貫通電極16の底部を構成する銅膜16Bが容易に変形するため、自然酸化膜41を除去しつつ、貫通電極16の底部と電極端子25との接続を実現することが可能となる。すなわち、両電極端子を合金化することなく低温且つ小さな加重で接続することができるので、プロセスの複雑化つまりコストアップを防止しながら低抵抗で且つ高信頼性を有するチップ間電気的接続を実現することができる。
【0049】
ところで、本実施形態においては、図2(d)に示す工程で貫通電極形成用ホール30を、ドライエッチングを時間制御することによって形成しているが、この場合にも、形成された貫通電極形成用ホール30の底面の高さにはばらつきが生じるので、結果として、電極端子となる貫通電極16の底部(露出部分)の高さにもばらつきが生じる。また、シリコン基板11及び21には厚みのばらつきや反りが生じているので、貫通電極16の露出部分からなる電極端子が設けられているシリコン基板11の裏面と、電極端子25が設けられているシリコン基板21の表面とを平行に保つことはできない。その結果、貫通電極16の露出部分からなる電極端子の底面と、電極端子25の上面との間の距離(電極端子間距離)にはばらつきが生じる。しかし、前述のように、電極端子となる貫通電極16の底部(露出部分)は尖った形状を有しており、電極端子同士の加熱圧着時に容易に変形するため、これによって、電極端子間距離のばらつきの影響を吸収することができるので、電極端子間に接続不良が生じることを防止することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態において、貫通電極16の主成分として銅(Cu)を用いたが、これに代えて、CuAl等の銅合金を用いてもよい。この場合、貫通電極16の底部や側部のみに銅合金を用いてもよい。このように銅に代えて銅合金を用いることにより、貫通電極16の底部と電極端子25との加熱圧着時の温度を低くすることができる。
【0051】
また、本実施形態において、基板としてシリコン(Si)基板を用いたが、SiGe基板等の他の基板を用いても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0052】
また、本実施形態においては、図2(e)に示す工程でウェットエッチング法を用いて、貫通電極形成用ホール30下側のシリコン基板11をエッチングして、貫通電極形成用ホール30の底部30bを尖端形状に加工したが、これに代えて、ドライエッチング法を用いてもよい。具体的には、図2(d)に示す貫通電極形成用ホール30の形成工程では、貫通電極形成用ホール30の壁面が垂直になるエッチング条件を選んで加工を行った後、図2(e)に示す工程では貫通電極形成用ホール30の壁面に堆積物が付着するエッチング条件に変更することにより、貫通電極形成用ホール30の底部30bに傾斜した壁面が形成されるように、つまり当該底部30bが尖端形状になるように加工することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上に説明したように、本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、貫通電極を介してのチップ間の電気的接続を確実に行えるようにするものであり、特に、3次元集積回路を有する半導体装置においてウエハ/ウエハ間、チップ/ウエハ間又はチップ/チップ間の接続を行う際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、基板中に本発明の貫通電極が形成された様子(基板裏面研磨前)を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(h)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(d)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法において貫通電極の露出部分からなる一方のチップの電極端子と他方のチップの電極端子とを加熱圧着により接続する様子を示す図である。
【図6】図6は、シリコン基板中に従来の貫通電極が形成された様子(基板裏面研磨前)を示す断面図である。
【図7】図7は、従来の貫通電極によって互いに電気的に接続された複数のチップを積層した半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 チップ
11 シリコン基板
12 ゲート電極構造
13A、13B 層間絶縁膜
14 多層配線
15 電極端子
16 貫通電極
16A バリアメタル膜
16B 銅膜
17 コンタクト
20 チップ
21 シリコン基板
22 ゲート電極構造
23 層間絶縁膜
24 多層配線
25 電極端子
27 コンタクト
30 貫通電極形成用ホール
30a 貫通電極形成用ホールの底部を除く他の部分
30b 底部
31 支持基板
41 自然酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に達する貫通電極が形成された第1の基板と、
前記貫通電極を介して前記第1の基板と電気的に接続され、且つ前記第1の基板の裏面側に貼り合わされた第2の基板とを備え、
前記貫通電極における前記第2の基板と接続する先端部の側壁の傾斜角は、その他の部分の側壁の傾斜角と比べて大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記貫通電極の前記先端部は円錐形状又は角錐形状を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記貫通電極は主成分として銅を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の基板及び前記第2の基板は共にシリコン基板であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記貫通電極における前記先端部の反対側の端部は、前記第1の基板上に形成された配線と接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記貫通電極の前記先端部は、前記第2の基板上に形成された電極端子と接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
第1の基板中に貫通電極形成用ホールを形成する工程(a)と、
前記貫通電極形成用ホール下側の前記第1の基板をエッチングして、前記貫通電極形成用ホールの底部の壁面の傾斜角を、その他の部分の壁面の傾斜角と比べて大きくする工程(b)と、
前記工程(b)の後、前記貫通電極形成用ホール内に導電材料を埋め込んで貫通電極を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後、少なくとも前記貫通電極形成用ホールの前記底部に形成されている前記貫通電極が露出するように前記第1の基板を裏面側から薄くする工程(d)と、
前記工程(d)の後、前記第1の基板の裏面側に第2の基板を貼り合わせると共に、前記貫通電極の露出部分と、前記第2の基板上に形成された電極端子とを電気的に接続する工程(e)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)は、前記貫通電極が露出しないように前記第1の基板の裏面に対して研磨を行った後、少なくとも前記貫通電極形成用ホールの前記底部に形成されている前記貫通電極が露出するように前記第1の基板の裏面に対してエッチングを行う工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(e)は、前記貫通電極の前記露出部分と前記電極端子とを加熱圧着により電気的に接続する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)では、ウェットエッチング法を用いて前記貫通電極形成用ホール下側の前記第1の基板をエッチングすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10の半導体装置の製造方法において、
前記第1の基板は、(100)結晶面を主面とするシリコン基板であり、
前記工程(b)の実施後における前記貫通電極形成用ホールの前記底部の壁面は(111)結晶面であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)では、ドライエッチング法を用いて前記貫通電極形成用ホール下側の前記第1の基板をエッチングすることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−80750(P2010−80750A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248680(P2008−248680)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】