説明

半導体装置及び半導体装置の作製方法

【課題】キャリア密度の制御された酸窒化物半導体を用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】酸化物半導体層中に、制御された窒素を導入することによって、目的とするキャリア密度及びオン特性を有する酸窒化物半導体をチャネルに用いたトランジスタを作製することができる。さらに、該酸窒化物半導体を用いることによって、酸窒化物半導体層と、ソース電極及びドレイン電極との間に、低抵抗層などを設けなくても、良好なコンタクト特性を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファスシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することができる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば酸化物半導体として、酸化亜鉛、In−Ga−Zn系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【0005】
また、In−Ga−Zn系酸化物は、膜中に窒素を導入して酸窒化物とすることにより、トランジスタではなく、透明導電膜としても使用できる技術が特許文献3で開示されている。これは、In−Ga−Zn系酸化物に窒素を導入することにより、導電率を変化させることができるためである、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【特許文献3】特開2010−133020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、キャリア密度の制御された半導体装置又は半導体装置の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
In−Ga−Zn系酸化物などの酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタにおいては、活性層の成膜工程以降の熱処理によって酸化物半導体層中に酸素欠損を生成させることで、キャリア密度を増加させることができる。しかし、熱処理によるキャリア密度の増加は制御性が悪く、目的とする半導体装置に合わせたオン特性を有する酸化物半導体層を得ることは困難である。
【0009】
また、酸化物半導体を用いた半導体装置において大型化、大面積化を考えた場合、熱処理を行うことは、製造タクトタイム及びコストの増加となってしまうため、好ましくない。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、酸化物半導体層中に含まれる窒素量を制御することによりキャリア密度を制御し、それによって、目的とするキャリア密度及びオン特性を有する酸窒化物半導体をチャネルに用いたトランジスタを作製する。
【0011】
また、スパッタリング法による成膜時において、被成膜面の温度は100℃以上としてもよい。それにより、水、水素などの不純物の被成膜物中への混入を防ぐことができる。
【0012】
酸窒化物半導体層を形成する方法として、酸化物半導体層をスパッタリング法により成膜する際に、成膜ガスとして窒素又は窒素を含むガスを導入することで、酸窒化物半導体層を成膜できる。また、酸化物半導体層に対して、窒素又は窒素を含むガスをドーパントとして添加することによっても、酸窒化物半導体層を形成できる。ドーパントを添加する方法として、例えばイオンドーピング法やイオンインプランテーション法を用いることができる。さらに、酸化物半導体層に対して、ドライエッチング装置及びプラズマCVD装置などを用いて、窒素雰囲気でのプラズマ照射によっても、酸窒化物半導体層を形成することができる。
【0013】
また、トランジスタの構造としては、トップゲート型のトランジスタ、ボトムゲート型のトランジスタを適宜適用することができる。さらに、半導体層が、ソース電極及びドレイン電極と基板との間に設けられるトップコンタクト型、ソース電極及びドレイン電極が、半導体層と基板との間に設けられるボトムコンタクト型も適宜適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様により、酸化物半導体と同等以上の性能を有する、酸窒化物半導体をチャネルに用いたトランジスタを作製できる。
【0015】
また、本発明の一態様により、キャリア密度の制御された酸窒化物半導体を用いた半導体装置を作製することができ、熱処理を行わなくても十分なオン特性を有することができる。さらに、半導体層と、ソース電極及びドレイン電極との間に、低抵抗層などを設けなくても、良好なコンタクト特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図及び断面図。
【図2】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図。
【図3】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図4】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図5】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図6】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図7】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図8】本発明の一態様である半導体装置の一形態を説明する図。
【図9】本発明の一態様である半導体装置の一形態を説明する図。
【図10】本発明の一態様である半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】本発明の一態様である半導体装置の一形態を説明する図。
【図12】本発明の一態様である半導体装置としての電子機器を示す図。
【図13】本発明の一態様である半導体装置の一形態を説明する図。
【図14】薄膜トランジスタの電気特性を説明する図。
【図15】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0018】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図7及び図15を用いて説明する。
【0020】
図1には、本発明の一態様の半導体装置の例として、トップゲートトップコンタクト型であるトランジスタ151の上面図及び断面図を示す。ここで、図1(A)は上面図であり、図1(B)及び図1(C)はそれぞれ、図1(A)におけるA−B断面及びC−D断面における断面図である。なお、図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ151の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁層112など)の図示を省略している。
【0021】
図1に示すトランジスタ151は、基板100上の、下地絶縁層102、酸窒化物半導体層106、ソース電極108a、ドレイン電極108b、ゲート絶縁層112、ゲート電極114を含む。
【0022】
酸窒化物半導体層106としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸窒化物を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0023】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0024】
例えば、酸窒化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−Zr−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物などのターゲットを用い、窒素を含む雰囲気中でのスパッタリング法などにより形成することができる。なお、スパッタリング法に限らず、真空蒸着法、パルスレーザ堆積法、CVD法などを用いて形成することができる。
【0025】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0026】
成膜の雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)と窒素の混合雰囲気、99%以上の窒素雰囲気、又は希ガス、酸素及び窒素の混合雰囲気とするとよい。
【0027】
形成した酸窒化物半導体層106に含まれる窒素濃度は、0.1atomic%以上30atomic%以下、より好ましくは5atomic%以上20atomic%以下とする。酸窒化物半導体層106に含まれる窒素濃度が0.1atomic%よりも低いと、キャリア密度が不十分であり、酸窒化物半導体層106に含まれる窒素濃度が30atomic%より高いと、絶縁性が高くなってしまうため、半導体としての機能が損なわれてしまう。
【0028】
トランジスタ151上には、さらに保護絶縁層が設けられていてもよい。保護絶縁層は、下地絶縁層102と同様の構成とすることができる。また、ソース電極108a及びドレイン電極108b並びに配線と、を電気的に接続させるために、ゲート絶縁層112などには開口部が形成されていてもよい。また、酸窒化物半導体層106の下方に、さらに、第2のゲート電極を有していてもよい。なお、酸窒化物半導体層106は島状に加工されていることが好ましいが、島状に加工されていなくてもよい。
【0029】
図2および図15に、トランジスタ151とは異なる構成のトランジスタの断面構造を示す。
【0030】
図2(A)に示すトランジスタ152は、下地絶縁層102、酸窒化物半導体層136、ソース電極138a、ドレイン電極138b、ゲート絶縁層132、ゲート電極134を有する。トランジスタ152とトランジスタ151との相違は、酸窒化物半導体層と、ソース電極およびドレイン電極とが接続する位置である。即ち、トランジスタ152では、酸窒化物半導体層136の下部において、酸窒化物半導体層136と、ソース電極138aやドレイン電極138bとが接している。その他の構成要素については、図1のトランジスタ151と同様である。
【0031】
図2(B)に示すトランジスタ153は、下地絶縁層102、酸窒化物半導体層166、ソース電極168a、ドレイン電極168b、ゲート絶縁層162、ゲート電極164を有する。トランジスタ153とトランジスタ151との相違は、酸窒化物半導体層に対するゲート電極の位置である。即ち、トランジスタ153では、酸窒化物半導体層166の下部にゲート絶縁層162を介してゲート電極164が設けられている。また、トランジスタ153では、ソース電極168a及びドレイン電極168b及び酸窒化物半導体層166を覆うように保護絶縁層169が設けられる。その他の構成要素については、図2(A)のトランジスタ152と同様である。
【0032】
図2(C)に示すトランジスタ154は、下地絶縁層102、酸窒化物半導体層176、ソース電極178a、ドレイン電極178b、ゲート絶縁層162、ゲート電極164を有する。トランジスタ154とトランジスタ151との相違は、酸窒化物半導体層に対するゲート電極の位置である。即ち、トランジスタ154では、酸窒化物半導体層176の下部にゲート絶縁層162を介してゲート電極164が設けられている。また、トランジスタ154では、ソース電極178a及びドレイン電極178b及び酸窒化物半導体層176を覆うように保護絶縁層179が設けられる。その他の構成要素については、図1のトランジスタ151と同様である。
【0033】
図2(D)に示すトランジスタ155は、下地絶縁層102、ゲート絶縁層182、ゲート電極184、ソース電極188a、ドレイン電極188bを有する。トランジスタ155は、同一平面上の酸窒化物半導体層中にチャネル領域126、ソース領域122a、ドレイン領域122bを形成する点でトランジスタ151及びトランジスタ152との相違がある。ソース領域122a及びドレイン領域122bには、保護絶縁層189を介して、それぞれソース電極188a及びドレイン電極188bが接続される。なお、チャネル領域126は、ゲート電極184と重畳する領域ということであり、ソース領域122a、ドレイン領域122bと同じもので形成されてもよい。
【0034】
下地絶縁層102は、トランジスタ151と同様の構成とすることができる。酸窒化物半導体層が形成された後、ゲート絶縁層182及びゲート電極184を形成する。ゲート電極184とゲート絶縁層182は同一のマスクを使用して加工することができる。あるいは、ゲート電極184を加工した後、ゲート電極184をマスクに用いてゲート絶縁層182を加工してもよい。次に、ゲート電極184をマスクに用い、酸窒化物半導体層を低抵抗化し、ソース領域122a及びドレイン領域122bを形成する。ゲート電極184下の領域はチャネル領域126となる。なお、該低抵抗化を行わなくても、酸窒化物半導体層の抵抗値を適宜調節することによりソース領域122a及びドレイン領域122bを形成すること無く、トランジスタ155を形成できる。
【0035】
また、図2(D)に示すトランジスタ155において、ソース領域122a及びドレイン領域122bの低抵抗化の際にゲート絶縁層182となる絶縁層の一部が除去され、酸窒化物半導体層の一部が露出しているが、図15に示すトランジスタ156のように、ゲート絶縁層113を除去せずとも、例えばイオンインプランテーション法などによって酸窒化物半導体層にドーパントを添加することによって、酸窒化物半導体層の低抵抗化ができる。
【0036】
次に、図3(A)乃至図3(E)を用いて、図1に示すトランジスタ151の作製工程の一例について説明する。
【0037】
まず、基板100上に下地絶縁層102を形成する(図3(A)参照。)。
【0038】
基板100の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、GaAs及びシリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
【0039】
また、基板100として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板上にトランジスタを設ける場合、可撓性基板上に直接的にトランジスタを作り込んでもよいし、他の基板にトランジスタを形成した後、これを剥離し、可撓性基板に転置してもよい。なお、トランジスタを剥離し、可撓性基板に転置するためには、上記他の基板とトランジスタとの間に剥離層を形成するとよい。
【0040】
下地絶縁層102の材料には、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどを用いればよい。また、下地絶縁層102には、前述の材料と酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム等またはこれらの混合材料等を積層して用いてもよい。例えば、下地絶縁層102を窒化シリコン層と酸化シリコン層の積層構造とすると、基板などからトランジスタ151への水分の混入を防ぐことができる。下地絶縁層102を積層構造で形成する場合、酸窒化物半導体層106と接する側を酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層などとするとよい。なお、下地絶縁層102はトランジスタ151の下地層として機能する。
【0041】
また、下地絶縁層102は化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁層を用いることが好ましい。
【0042】
化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁層は、TDS(Thermal Desorption Spectrocopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1020atoms/cm以上、より好ましくは3.0×1020atoms/cm以上である。
【0043】
ここで、TDS分析による、酸素原子に換算したときの酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0044】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、酸化物絶縁層のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
【0045】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および酸化物絶縁層のTDS分析結果から、酸化物絶縁層の酸素分子の放出量(N(O2))は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0046】
N(O2)=N(H2)/S(H2)×S(O2)×α (数1)
【0047】
N(H2)は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。S(H2)は、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、N(H2)/S(H2)とする。S(O2)は、酸化物絶縁層をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697号公報を参照する。なお、上記酸化物絶縁層の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定する。
【0048】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0049】
なお、N(O2)は酸素分子の放出量である。酸化物絶縁層においては、酸素原子に換算したときの酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0050】
化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁層をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0051】
化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁層の代表例として酸化シリコン膜を形成する場合、石英(好ましくは合成石英)をターゲットに用い、基板温度30℃以上450℃以下(好ましくは70℃以上200℃以下)、基板とターゲットの間の距離(T−S間距離)を20mm以上400mm以下(好ましくは40mm以上200mm以下)、圧力を0.1Pa以上4Pa以下(好ましくは0.2Pa以上1.2Pa以下)、高周波電源を0.5kW以上12kW以下(好ましくは1kW以上5kW以下)、成膜ガス中のO/(O+Ar)割合を1%以上100%以下(好ましくは6%以上100%以下)として、RFスパッタリング法により酸化シリコン膜を形成することが好ましい。なお、石英(好ましくは合成石英)ターゲットに代えてシリコンターゲットを用いることもできる。なお、成膜ガスとしては、酸素のみを用いてもよい。
【0052】
次に、下地絶縁層102上に酸窒化物半導体層を形成し、当該酸窒化物半導体層を加工して島状の酸窒化物半導体層106を形成する(図3(B)参照。)。
【0053】
酸窒化物半導体層106は、例えば、成膜ガスに窒素を用いたスパッタリング法などを用いて形成することができる。また、酸窒化物半導体層106の厚さは、3nm以上50nm以下とすることが好ましい。酸窒化物半導体層106を厚くしすぎると(例えば、厚さを100nm以上)、短チャネル効果の影響が大きくなり、チャネル長の小さなトランジスタでノーマリーオンになるおそれがあるためである。ここで、「ノーマリーオン」とは、ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れてしまう状態のことである。なお、下地絶縁層102及び酸窒化物半導体層106は、大気に触れさせることなく連続して成膜するのが好ましい。
【0054】
また、酸窒化物半導体層106の形成方法として、上述の酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体層を成膜した後、酸化物半導体層へ窒素を導入することによって形成してもよい。
【0055】
酸化物半導体層へ窒素を導入する方法としては、イオンドーピング法又はイオンインプランテーション法により、酸化物半導体層に窒素を導入することができる。また、窒素又は窒素を含むガスによるプラズマに曝すことによっても、酸化物半導体層に窒素を導入することができる。
【0056】
本実施の形態では、酸窒化物半導体層106を、In−Ga−Zn−O系の酸化物ターゲットを用いて、アルゴンと窒素の混合雰囲気でスパッタリングすることにより形成する。
【0057】
また、スパッタリング法による成膜時において、被成膜面の温度は100℃以上、基板の熱処理上限温度以下とするのが好ましい。それにより水、水素などの不純物の被成膜物中への混入を防ぐことができる。
【0058】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における結晶性酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0059】
In−Ga−Zn−O系の酸化物ターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物ターゲットを用いることができる。なお、ターゲットの材料及び組成を上述したものに限定する必要はない。例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比の酸化物ターゲットを用いることもできる。
【0060】
酸化物ターゲットの相対密度は、90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸窒化物半導体層106を緻密な層とすることができるためである。
【0061】
成膜は、酸窒化物半導体層への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが好ましい。
【0062】
酸窒化物半導体層106の加工は、所望の形状のマスクを酸窒化物半導体層上に形成した後、当該酸窒化物半導体層をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグラフィなどの方法を用いて形成することができる。または、インクジェット法などの方法を用いてマスクを形成してもよい。
【0063】
なお、酸窒化物半導体層のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0064】
次いで、下地絶縁層102及び酸窒化物半導体層106上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電層を形成し、当該導電層を加工して、ソース電極108a及びドレイン電極108bを形成する(図3(C)参照。)。なお、ここで形成されるソース電極108aの端部とドレイン電極108bの端部との間隔によって、トランジスタのチャネル長Lが決定されることになる。
【0065】
ソース電極108a及びドレイン電極108bに用いる導電層としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属層または上述した元素を成分とする金属窒化物層などを用いることができる。また、Al、Cuなどの金属層の下側または上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属層またはこれらの金属窒化物層を積層させた構成を用いてもよい。
【0066】
また、ソース電極108a及びドレイン電極108bに用いる導電層は、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In―SnO)、酸化インジウム酸化亜鉛(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0067】
導電層の加工は、レジストマスクを用いたエッチングによって行うことができる。当該エッチングに用いるレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光などを用いるとよい。
【0068】
なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、例えば、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて、レジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。したがって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを微細化することが可能であり、回路の動作を速くすることができる。
【0069】
また、いわゆる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチングを行ってもよい。多階調マスクを用いて形成されたレジストマスクは、複数の厚さを有する形状となり、アッシングによってさらに形状を変形させることができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることが可能である。このため、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。つまり、工程の簡略化が可能となる。
【0070】
なお、導電層のエッチングの際に、酸窒化物半導体層106の一部がエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸窒化物半導体層となることもある。
【0071】
その後、酸素、オゾン、二酸化窒素などのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸窒化物半導体層106の表面を酸化し、酸素欠損を埋めてもよい。プラズマ処理を行った場合、当該プラズマ処理に続けて大気に触れさせることなく、酸窒化物半導体層106の一部に接するゲート絶縁層112を形成することが好ましい。
【0072】
次に、ソース電極108a及びドレイン電極108bを覆い、かつ、酸窒化物半導体層106の一部と接するように、ゲート絶縁層112を形成する(図3(D)参照。)。
【0073】
ゲート絶縁層112は、下地絶縁層102と同様の構成とすることができる。ただし、トランジスタのゲート絶縁層として機能することを考慮して、酸化ハフニウムや酸化アルミニウムなどの比誘電率が高い材料を採用してもよい。また、ゲート絶縁耐圧や酸窒化物半導体との界面状態などを考慮し、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコンに酸化ハフニウムや酸化アルミニウムなどの比誘電率の高い材料を積層してもよい。ゲート絶縁層112の合計の膜厚は、好ましくは1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とする。ゲート絶縁層が厚いほど短チャネル効果が顕著となり、しきい値電圧がマイナス側へシフトしやすい傾向となる。また、ゲート絶縁層が5nm以下となるとトンネル電流によるリークが増大することがわかっている。
【0074】
その後、ゲート絶縁層112を介して、酸窒化物半導体層106上に、ゲート電極114を形成する(図3(E)参照。)。ゲート電極114は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの金属材料、これらの窒化物、またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。なお、ゲート電極114は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0075】
以上の工程でトランジスタ151が作製される。
【0076】
次に、図4(A)乃至図4(E)を用いて、図2(A)に示すトランジスタ152の作製工程の一例について説明する。
【0077】
まず、基板100上に下地絶縁層102を形成する(図4(A)参照。)。
【0078】
次に、下地絶縁層102上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電層を形成し、当該導電層を加工して、ソース電極138a及びドレイン電極138bを形成する(図4(B)参照。)。
【0079】
次に、下地絶縁層102、ソース電極138a及びドレイン電極138b上に、酸窒化物半導体層を形成し、当該酸窒化物半導体層を加工して島状の酸窒化物半導体層136を形成する(図4(C)参照。)。
【0080】
次に、ソース電極138a及びドレイン電極138bを覆い、かつ、酸窒化物半導体層136の一部と接するように、ゲート絶縁層132を形成する(図4(D)参照。)。
【0081】
その後、ゲート絶縁層132を介して酸窒化物半導体層136上に、ゲート電極134を形成する(図4(E)参照。)。
【0082】
以上の工程でトランジスタ152が形成される。
【0083】
次に、図5(A)乃至図5(E)を用いて、図2(B)に示すトランジスタ153の作製工程の一例について説明する。
【0084】
まず、基板100上に下地絶縁層102を形成する(図5(A)参照。)。
【0085】
次に、下地絶縁層102上に、ゲート電極164を形成する(図5(B)参照。)。
【0086】
次に、ゲート電極164を覆う、ゲート絶縁層162を形成する(図5(C)参照。)。
【0087】
次に、ゲート絶縁層162上に、ソース電極168a及びドレイン電極168bを形成し、ソース電極168a及びドレイン電極168b上に、酸窒化物半導体層を形成し、当該酸窒化物半導体層を加工して島状の酸窒化物半導体層166を形成する(図5(D)参照。)。
【0088】
次に、酸窒化物半導体層166及びソース電極168a及びドレイン電極168bを覆うように保護絶縁層169を形成する(図5(E)参照。)。
【0089】
なお、保護絶縁層169は、ゲート絶縁層162と同様の構成とすることができる。
【0090】
以上の工程でトランジスタ153が形成される。
【0091】
次に、図6(A)乃至図6(E)を用いて、図2(C)に示すトランジスタ154の作製工程の一例について説明する。
【0092】
まず、基板100上に下地絶縁層102を形成する(図6(A)参照。)。
【0093】
次に、下地絶縁層102上に、ゲート電極164を形成する(図6(B)参照。)。
【0094】
次に、ゲート電極164を覆う、ゲート絶縁層162を形成する(図6(C)参照。)。
【0095】
次に、ゲート絶縁層162上に、酸窒化物半導体層を形成し、当該酸窒化物半導体層を加工して島状の酸窒化物半導体層176を形成する。その後、酸窒化物半導体層176に接してソース電極178a及びドレイン電極178bを形成する(図6(D)参照。)。
【0096】
次に、酸窒化物半導体層176及びソース電極178a及びドレイン電極178bを覆うように保護絶縁層179を形成する(図6(E)参照。)。
【0097】
以上の工程でトランジスタ154が形成される。
【0098】
図7(A)乃至図7(E)を用いて、図2(D)に示すトランジスタ155の作製工程の一例について説明する。
【0099】
まず、基板100上に下地絶縁層102を形成する(図7(A)参照。)。
【0100】
次に、下地絶縁層102上に、酸窒化物半導体層を形成し、当該酸窒化物半導体層を加工して島状の酸窒化物半導体層106を形成する(図7(B)参照。)。
【0101】
次に、ゲート絶縁層182及びゲート電極184を形成し、フォトリソグラフィにより同様のパターンに加工する(図7(C)参照。)。このとき、ゲート電極184を加工し、その後、ゲート電極184をマスクにゲート絶縁層182を加工してもよい。
【0102】
次に、ゲート電極184をマスクに酸窒化物半導体層106を低抵抗化し、ソース領域122a及びドレイン領域122bを形成する。低抵抗化されないゲート電極下の領域はチャネル領域126となる(図7(D)参照。)。このとき、ゲート電極の幅によってトランジスタのチャネル長Lが決定されることになる。このように、ゲート電極をマスクに用いてパターニングすることで、ゲート電極とソース領域、ドレイン領域の重なりが生じず、この領域における寄生容量が生じないため、トランジスタ動作を速くすることができる。
【0103】
低抵抗化の方法としては、アルゴンなどの希ガスプラズマ処理、水素プラズマ処理またはアンモニアプラズマ処理などが挙げられる。さらに、リン(P)またはボロン(B)を含む雰囲気におけるプラズマ処理と組み合わせて行ってもよい。
【0104】
次に、保護絶縁層189を形成し、ソース領域及びドレイン領域と重畳する部分の保護絶縁層189に開口部を設ける。ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電層を形成し、当該導電層を加工して、ソース電極188a及びドレイン電極188bを形成する(図7(E)参照。)。
【0105】
以上の工程でトランジスタ155が作製される。
【0106】
以上のように、酸窒化物半導体をチャネルに用いることで、熱処理を行わなくても、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域のキャリア密度の制御された、酸化物半導体と同等以上の性能を有するトランジスタを作製できる。
【0107】
また、酸窒化物半導体を活性層に用いることにより、特別に低抵抗層を設けなくてもソース電極及びドレイン電極と良好なコンタクトを示すことができ、オン電流を大きくすることができる。
【0108】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0109】
(実施の形態2)
実施の形態1で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0110】
図8(A)において、第1の基板201上に設けられた画素部202を囲むようにして、シール材205が設けられ、第2の基板206によって封止されている。図8(A)においては、第1の基板201上のシール材205によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体層または多結晶半導体層で形成された走査線駆動回路204、信号線駆動回路203が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路203と、走査線駆動回路204または画素部202に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)218a、218bから供給されている。
【0111】
図8(B)及び図8(C)において、第1の基板201上に設けられた画素部202と、走査線駆動回路204とを囲むようにして、シール材205が設けられている。また画素部202と、走査線駆動回路204の上に第2の基板206が設けられている。よって画素部202と、走査線駆動回路204とは、第1の基板201とシール材205と第2の基板206とによって、表示素子と共に封止されている。図8(B)及び図8(C)においては、第1の基板201上のシール材205によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体層または多結晶半導体層で形成された信号線駆動回路203が実装されている。図8(B)及び図8(C)においては、別途形成された信号線駆動回路203と、走査線駆動回路204または画素部202に与えられる各種信号及び電位は、FPC218から供給されている。
【0112】
また図8(B)及び図8(C)においては、信号線駆動回路203を別途形成し、第1の基板201に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0113】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図8(A)は、COG方法により信号線駆動回路203、走査線駆動回路204を実装する例であり、図8(B)は、COG方法により信号線駆動回路203を実装する例であり、図8(C)は、TAB方法により信号線駆動回路203を実装する例である。
【0114】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むICなどを実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0115】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュールまたは表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0116】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0117】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機ELなどを含む。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0118】
半導体装置の一形態について、図9乃至図11を用いて説明する。図9乃至図11は、図8(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0119】
図9乃至図11で示すように、半導体装置は接続端子電極215及び端子電極216を有しており、接続端子電極215及び端子電極216はFPC218が有する端子と異方性導電層219を介して、電気的に接続されている。
【0120】
接続端子電極215は、第1の電極230と同じ導電層から形成され、端子電極216は、トランジスタ210、トランジスタ211のソース電極及びドレイン電極と同じ導電層で形成されている。
【0121】
また第1の基板201上に設けられた画素部202と、走査線駆動回路204は、トランジスタを複数有しており、図9乃至図11では、画素部202に含まれるトランジスタ210と、走査線駆動回路204に含まれるトランジスタ211とを例示している。
【0122】
本実施の形態では、トランジスタ210、トランジスタ211として、実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ210、トランジスタ211は、高温で熱処理などを行わなくても、十分なオン特性を得ることができる。よって、図9乃至図11で示す本実施の形態の半導体装置として低コストで半導体装置を提供することができる。
【0123】
画素部202に設けられたトランジスタ210は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0124】
図9に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図9において、表示素子である液晶素子213は、第1の電極230、第2の電極231、及び液晶層208を含む。なお、液晶層208を挟持するように配向層として機能する絶縁層232、233が設けられている。第2の電極231は第2の基板206側に設けられ、第1の電極230と第2の電極231とは液晶層208を介して積層する構成となっている。
【0125】
また、スペーサ235は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層208の厚さ(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0126】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶などを用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相などを示す。
【0127】
また、液晶層208に、配向層を不要とすることができるブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向層を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0128】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0129】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流などを考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。酸窒化物半導体層を有するトランジスタはリーク電流が小さいため、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0130】
また、本実施の形態で用いる酸窒化物半導体層を有するトランジスタは、高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0131】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0132】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0133】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0134】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0135】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式などを用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタなどを一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0136】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0137】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子及び正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、これらキャリア(電子及び正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0138】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0139】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0140】
図10に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子243は、画素部202に設けられたトランジスタ210と電気的に接続している。なお発光素子243の構成は、第1の電極230、発光層241、第2の電極231の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子243から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子243の構成は適宜変えることができる。
【0141】
隔壁240は、有機絶縁材料、または無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極230上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0142】
発光層241は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0143】
発光素子243に酸素、水素、水分、二酸化炭素などが侵入しないように、第2の電極231及び隔壁240上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、DLC層などを形成することができる。また、第1の基板201、第2の基板206、及びシール材205によって封止された空間には充填材244が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルムなど)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0144】
充填材244としては窒素やアルゴンなどの不活性ガスの他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0145】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、または円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に反射防止層を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0146】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0147】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0148】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0149】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0150】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子及び第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0151】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極である第1の電極及び第2の電極の間に配置し、第1の電極及び第2の電極に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0152】
図11に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図11の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。
【0153】
トランジスタ210と接続する第1の電極230と、第2の基板206に設けられた第2の電極231との間には、黒色領域255a及び白色領域255bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ252を含む球形粒子253が設けられており、球形粒子253の周囲は樹脂などの充填材254で充填されている。第2の電極231が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極231は、共通電位線と電気的に接続される。
【0154】
なお、図9乃至図11において、第1の基板201、第2の基板206としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0155】
絶縁層221は、無機絶縁材料または有機絶縁材料を用いて形成することができる。なお、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂などの、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いると、平坦化絶縁層として好適である。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)などを用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層221を形成してもよい。
【0156】
絶縁層221の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷など)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティングなどを用いることができる。
【0157】
表示装置は光源または表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁層、導電層などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0158】
表示素子に電圧を印加する第1の電極及び第2の電極(画素電極、共通電極、対向電極などともいう)においては、取り出す光の方向、電極が設けられる場所、及び電極のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0159】
第1の電極230、第2の電極231には、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0160】
また、第1の電極230、第2の電極231はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)などの金属、またはその合金、もしくはその窒化物から一つ、または複数種を用いて形成することができる。
【0161】
また、第1の電極230、第2の電極231として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、もしくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体等があげられる。
【0162】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0163】
以上のように実施の形態1で例示したトランジスタを適用することにより低温プロセス、低コストで、高いオン特性を有する半導体装置を提供することができる。なお、実施の形態1で例示したトランジスタは上述の表示機能を有する半導体装置のみでなく、電源回路に搭載されるパワーデバイス、LSIなどの半導体集積回路、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置など様々な機能を有する半導体装置に適用することが可能である。
【0164】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0165】
(実施の形態3)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビまたはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0166】
図12(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータの一例であり、本体301、筐体302、表示部303、キーボード304などによって構成されている。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、低コストのノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0167】
図12(B)は、携帯情報端末(PDA)の一例であり、本体311には表示部313と、外部インターフェイス315と、操作ボタン314などが設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス312がある。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、より低コストの携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0168】
図12(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍320は、筐体321及び筐体322の2つの筐体で構成されている。筐体321及び筐体322は、軸部325により一体とされており、該軸部325を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0169】
筐体321には表示部323が組み込まれ、筐体322には表示部324が組み込まれている。表示部323及び表示部324は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図12(C)では表示部323)に文章を表示し、左側の表示部(図12(C)では表示部324)に画像を表示することができる。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、低コストの電子書籍とすることができる。
【0170】
また、図12(C)では、筐体321に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体321において、電源326、操作キー327、スピーカー328などを備えている。操作キー327により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍320は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0171】
また、電子書籍320は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0172】
図12(D)は、携帯電話の一例であり、筐体330及び筐体331の二つの筐体で構成されている。筐体331には、表示パネル332、スピーカー333、マイクロフォン334、ポインティングデバイス336、カメラ用レンズ337、外部接続端子338などを備えている。また、筐体330には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル340、外部メモリスロット341などを備えている。また、アンテナは筐体331内部に内蔵されている。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、低コストの携帯電話とすることができる。
【0173】
また、表示パネル332はタッチパネルを備えており、図12(D)には映像表示されている複数の操作キー335を点線で示している。なお、太陽電池セル340で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0174】
表示パネル332は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル332と同一面上にカメラ用レンズ337を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー333及びマイクロフォン334は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体330と筐体331は、スライドし、図12(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0175】
外部接続端子338はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット341に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0176】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0177】
図12(E)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置360は、筐体361に表示部363が組み込まれている。表示部363により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド365により筐体361を支持した構成を示している。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、低コストのテレビジョン装置360とすることができる。
【0178】
テレビジョン装置360の操作は、筐体361が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0179】
なお、テレビジョン装置360は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0180】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0181】
本実施例では、本発明の一態様を用いて作製したトランジスタについて説明する。
【0182】
本実施例におけるトランジスタの構造を図13に示す。
【0183】
図13に示すトランジスタ510は、基板500上に設けられた下地絶縁層502と、酸窒化物半導体層506と、ソース電極508a及びドレイン電極508bと、ソース電極508a及びドレイン電極508b上に設けられたゲート絶縁層512と、ゲート絶縁層512上に設けられたゲート電極514と、ゲート電極514上に設けられた保護絶縁層516と、保護絶縁層516を介してソース電極508a及びドレイン電極508bにそれぞれ接続されたソース配線518a及びドレイン配線518bと、を有する。
【0184】
本実施例では、基板500として0.7mmのガラス基板を用い、下地絶縁層502として酸化シリコン層を300nm形成し、酸窒化物半導体層506としてIn−Ga−Zn−O−N系非単結晶層を50nm形成し、ソース電極508a及びドレイン電極508bとしてチタン層を150nm形成し、ゲート絶縁層512として酸化シリコン層を200nm形成し、ゲート電極514としてチタン層を300nm形成し、保護絶縁層516として酸化シリコン層を300nm形成し、ソース配線518a及びドレイン配線518bとしてチタン層とアルミニウム層とチタン層をそれぞれ50nmと100nmと5nm積層して形成した。
【0185】
本実施例のトランジスタ510は、酸窒化物半導体層506としてIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用い、窒素を含む雰囲気中でのスパッタリング法により形成している。そのため、熱処理を行わなくても、十分なオン特性を得ることができる。
【0186】
本実施例のトランジスタ510における酸窒化物半導体層506の形成条件は以下の通りである。また、本条件にて作製した酸窒化物半導体層506中の窒素濃度は約6.5atomic%である。なお、濃度分析はEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)分析によっておこなった結果である。
・成膜法:DCスパッタリング法
・ターゲット組成比:(In:Ga:Zn=1:1:0.5)
・成膜ガス:Ar(35sccm)、N(5sccm)
・電力:0.5kW(DC)
・圧力:0.4Pa
・T−S間距離:60mm
・基板温度:室温
【0187】
本実施例のトランジスタ510におけるドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)測定結果について図14(A)に示す。測定は、基板面内で25点行っており、図14(A)には重ねて表示している。チャネル長Lは10μmであり、チャネル幅Wは50μmである。なお、トランジスタのソース電極とドレイン電極の間の電圧Vdは1V及び10Vとした。
【0188】
図14(A)より、本実施例のトランジスタ510は良好なオン特性が得られていることがわかった。
【0189】
また、比較例として活性層に酸化物半導体層を形成し、さらに活性層形成後に350℃で熱処理を行って、その他の作製条件を上記した条件と同条件にてトランジスタを作製した。活性層形成条件は以下の通りである。また、そのトランジスタのドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)測定結果を図14(B)に示す。
・成膜法:DCスパッタリング法
・ターゲット組成比:(In:Ga:Zn=1:1:0.5)
・成膜ガス:Ar(30sccm)、O(15sccm)
・電力:0.5kW(DC)
・圧力:0.4Pa
・T−S間距離:60mm
・基板温度:室温
【0190】
また、図14(B)に示す酸化物半導体のキャリア密度をホール効果測定によって測定した結果、酸化物半導体層形成後は約2×1013cm−3であり、それを350℃で熱処理を行うことによって約2×1017cm−3に増加することがわかった。本願では示していないが、熱処理していない酸化物半導体層を活性層に用いてトランジスタを作製しても、オン特性を得ることはできない。しかし、図14(B)に示すように、熱処理によって酸化物半導体層のキャリア密度を増加させることで、トランジスタのオン特性が得られるようになる。
【0191】
図14(A)及び図14(B)の結果より、図14(A)に示す酸窒化物半導体層を活性層に用いたトランジスタと、図14(B)に示す酸化物半導体層に熱処理を行って作製したトランジスタは、同等の特性であることがわかり、図14(A)に示すトランジスタに用いた酸窒化物半導体層のキャリア密度は、オン特性が得られる十分なキャリア密度であることがわかる。
【0192】
上述の通り、本実施例のトランジスタ510は、熱処理なしで作製しても、オン電流が大きく、良好なトランジスタ特性が得られていることがわかった。
【符号の説明】
【0193】
100 基板
102 下地絶縁層
106 酸窒化物半導体層
108a ソース電極
108b ドレイン電極
112 ゲート絶縁層
113 ゲート絶縁層
114 ゲート電極
122a ソース領域
122b ドレイン領域
126 チャネル領域
132 ゲート絶縁層
134 ゲート電極
136 酸窒化物半導体層
138a ソース電極
138b ドレイン電極
151 トランジスタ
152 トランジスタ
153 トランジスタ
154 トランジスタ
155 トランジスタ
156 トランジスタ
162 ゲート絶縁層
164 ゲート電極
166 酸窒化物半導体層
168a ソース電極
168b ドレイン電極
169 保護絶縁層
176 酸窒化物半導体層
178a ソース電極
178b ドレイン電極
179 保護絶縁層
182 ゲート絶縁層
184 ゲート電極
188a ソース電極
188b ドレイン電極
189 保護絶縁層
201 基板
202 画素部
203 信号線駆動回路
204 走査線駆動回路
205 シール材
206 基板
208 液晶層
210 トランジスタ
211 トランジスタ
213 液晶素子
215 接続端子電極
216 端子電極
219 異方性導電層
221 絶縁層
230 電極
231 電極
232 絶縁層
233 絶縁層
235 スペーサ
240 隔壁
241 発光層
243 発光素子
244 充填材
252 キャビティ
253 球形粒子
254 充填材
255a 黒色領域
255b 白色領域
301 本体
302 筐体
303 表示部
304 キーボード
311 本体
312 スタイラス
313 表示部
314 操作ボタン
315 外部インターフェイス
320 電子書籍
321 筐体
322 筐体
323 表示部
324 表示部
325 軸部
326 電源
327 操作キー
328 スピーカー
330 筐体
331 筐体
332 表示パネル
333 スピーカー
334 マイクロフォン
335 操作キー
336 ポインティングデバイス
337 カメラ用レンズ
338 外部接続端子
340 太陽電池セル
341 外部メモリスロット
360 テレビジョン装置
361 筐体
363 表示部
365 スタンド
500 基板
502 下地絶縁層
506 酸窒化物半導体層
508a ソース電極
508b ドレイン電極
510 トランジスタ
512 ゲート絶縁層
514 ゲート電極
516 保護絶縁層
518a ソース配線
518b ドレイン配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸窒化物半導体層と、
ゲート電極と、
前記ゲート電極及び前記酸窒化物半導体層の間に設けられるゲート絶縁層と、
前記酸窒化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極が、前記酸窒化物半導体層及び前記ゲート絶縁層との間に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記酸窒化物半導体層が、前記ソース電極及び前記ドレイン電極並びに前記ゲート絶縁層との間に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
酸窒化物半導体層と、
前記酸窒化物半導体層に接して設けられたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層を介して、前記酸窒化物半導体層と重なって設けられたゲート電極と、を有し、
前記酸窒化物半導体層は、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層は、In、Zn、Ga、Snから選ばれた二種以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層に含まれる窒素濃度は、0.1atomic%以上30atomic%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
絶縁表面上に形成された酸化物絶縁層上に酸窒化物半導体層を形成し、
前記酸窒化物半導体層を選択的にエッチングし、
前記選択的にエッチングされた酸窒化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記選択的にエッチングされた酸窒化物半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極を覆って、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層を介して前記酸窒化物半導体層上にゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
絶縁表面上に形成された酸化物絶縁層上に、ソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に酸窒化物半導体層を形成し、
前記酸窒化物半導体層を選択的にエッチングし、
前記選択的にエッチングされた酸窒化物半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極を覆って、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層を介して前記酸窒化物半導体層上にゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
絶縁表面上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極を覆って、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に酸窒化物半導体層を形成し、
前記酸窒化物半導体層を選択的にエッチングし、
前記選択的にエッチングされた酸窒化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
絶縁表面上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極を覆って、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に、ソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に酸窒化物半導体層を形成し、
前記酸窒化物半導体層を選択的にエッチングすることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
絶縁表面上に形成された酸化物絶縁層上に酸窒化物半導体層を形成し、
前記酸窒化物半導体層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層を介して、前記酸窒化物半導体層と重なって設けられるゲート電極を形成し、
前記酸窒化物半導体層は、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記酸窒化物半導体層の一部に低抵抗化の処理を行うことで前記酸窒化物半導体層に前記ソース領域及び前記ドレイン領域を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層は、窒素を含むガスを用いてスパッタリング法により形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項7乃至12のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層は、イオンドーピング法又はイオンインプランテーション法により、酸化物半導体層に窒素を導入して形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項7乃至12のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層は、窒素又は窒素を含むガスによるプラズマに曝すことにより、酸化物半導体層に窒素を導入して形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項16】
請求項7乃至15のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層は、In、Zn、Ga、Snから選ばれた二種以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項17】
請求項7乃至16のいずれか一において、
前記酸窒化物半導体層に含まれる窒素濃度は、0.1atomic%以上30atomic%以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−114421(P2012−114421A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238329(P2011−238329)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】