説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の配線における電気的干渉を低減する。
【解決手段】半導体装置1Aにおける接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路となる配線を、半導体基板11を覆う下地絶縁膜14上に形成された下層配線17と、下地絶縁膜14を覆うフィルム材19上に形成された上層配線21とを組み合わせて構成するとともに、半導体基板11から比較的離間した位置に配されて、下層配線17よりも半導体基板11と電気的に干渉しにくくなっている上層配線21の割合を高くするように、上層配線21を下層配線17よりも長く形成することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップのパッケージ方法として、いわゆるWLP(Wafer Level Package)法がある。WLP法はウエハ状態でウエハに封止膜や配線の形成を行った後、そのウエハをチップサイズに切り出して個片化した半導体装置を製造する方法である。これにより、内蔵するICチップとほぼ同じサイズの小型パッケージを製造することができる。
【0003】
例えば、小型の半導体パッケージである半導体装置において、電気素子が形成されたICチップの上面には、パッシベーション膜を介して膜厚4μm〜6μm程度の絶縁性樹脂膜が形成されている。絶縁性樹脂膜上にはコンタクトホールを通じて電気素子のパッド電極に一端が接続された配線が形成されており、その配線の他端は半導体装置の外部端子に接続されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3871609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の場合、半導体チップ上に例えばインダクタ素子のような高周波(RF)電気素子や配線が配置されると、電気素子や配線と半導体チップとの間の距離が短いために相互に電気的に干渉されやすいといった問題があった。
【0006】
本発明の課題は、電気的干渉を低減した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、半導体装置であって、
半導体基板の表面に複数の接続端子が形成された半導体デバイスウエハと、
前記複数の接続端子にそれぞれの一端が接続された複数の下層配線と、
前記複数の下層配線よりも上方に位置し、それぞれ対応する前記下層配線より長い複数の上層配線と、
前記複数の上層配線の下方に位置する、基材を含有した樹脂のフィルム材と、
前記複数の上層配線にそれぞれ接続された複数の半田端子と、
を備えることを特徴としている。
前記フィルム材は、ガラス繊維からなる布、シリカフィラー、アラミド繊維のいずれかの基材を含有した、エポキシ系樹脂或いはポリイミド系樹脂であることが好ましい。
前記フィルム材上にインダクタ素子を備えてもよい。
前記フィルム材は、少なくとも10μmの膜厚を有することが好ましく、より好ましくは30μm以上の膜厚が好ましい。
前記上層配線は、前記フィルム材に形成されたビアホール内のコンタクト部と、前記フィルム材上のランド部と、を有することが好ましい。
前記接続端子と、前記下層配線を介して前記接続端子に接続された前記上層配線の前記ランド部と、前記上層配線に接続された前記半田端子とは、平面視して重ならないことが好ましい。
前記上層配線と前記半田端子との接続領域の周囲に保護絶縁膜が設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の態様は、半導体装置の製造方法であって、
半導体基板及び前記半導体基板の一方の面に形成された複数の接続端子を備えた基板の前記接続端子に下層配線が接続された半導体装置の製造方法において、
前記基板の一方の面側に、基材を含有した樹脂のフィルム材を貼付するフィルム材貼付工程と、
前記下層配線の上方に対応する前記フィルム材に、前記下層配線を露出させるビアホールを形成するビアホール形成工程と、
前記ビアホールを介して前記下層配線と接続し、接続された前記下層配線より長い上層配線を前記フィルム材上に形成する上層配線形成工程と、
前記上層配線上に形成された半田端子を形成する半田端子形成工程と、
を備えることを特徴としている。
前記フィルム材貼付工程は、前記基板の周囲を囲うフレームに前記フィルム材を貼付する工程を含むことが好ましい。
前記フィルム材貼付工程の前に、前記半導体基板の裏面を研削して、その厚みを薄くする基板薄型化工程を備えてもよい。
前記上層配線形成工程は、前記ビアホール内と前記フィルム材上にメッキを施す工程を含み、前記フィルム材上の前記メッキ部分をパターニングすることにより、前記上層配線を形成してもよい。
前記フィルム材には、前記フィルム材貼付工程の前に、メッキ用金属膜が形成されていてもよい。
前記フィルム材上にインダクタ素子を形成するインダクタ形成工程を備えていてもよい。
前記上層配線は、前記フィルム材に形成されたビアホール内のコンタクト部と、前記フィルム材上のランド部と、を有していることが好ましい。
前記接続端子と、前記下層配線を介して前記接続端子に接続された前記上層配線の前記ランド部と、前記上層配線に接続された前記半田端子とは、平面視して重ならないことが好ましい。
前記上層配線と前記半田端子との接続領域の周囲に保護絶縁膜が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体装置における電気的干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る半導体装置を示し、配線を視認可能に図示した平面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図4】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図5】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図6】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図7】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図8】図7の矢印VIII方向からの矢視図である。
【図9】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図10】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図11】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図12】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図13】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図14】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図15】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図16】半導体装置の変形例であって、拡散抑制層がない半導体装置を示す断面図である。
【図17】半導体装置の変形例を示す平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線における断面図である。
【図19】半導体装置の変形例であって、拡散抑制層がない半導体装置を示す断面図である。
【図20】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図21】半導体装置の変形例であって、拡散抑制層がない半導体装置を示す断面図である。
【図22】本発明の実施形態2に係る半導体装置を示す平面図である。
【図23】図22のXXIII−XXIII線における断面図である。
【図24】図22のXXIV−XXIV線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る半導体装置1Aを示す平面図であり、配線(17、21)を視認可能に図示した説明図である。図2は、図1のII−II線における断面図である。
半導体装置1Aは、図1、図2に示すように、基板15の表面に下層配線17、上層配線21、半田端子23等を形成してなる。
基板15は、図2に示すように、半導体デバイスウェハ10に下地絶縁膜14が積層されてなる。
半導体デバイスウェハ10は、図2に示すように、シリコン等からなる半導体基板11と、金属等の導電性材料からなる複数の接続パッド(接続端子)12と、酸化シリコン等の絶縁性材料からなるパッシベーション膜13等を備えている。
【0013】
半導体基板11の内部や表面には、トランジスタ等の電器素子や配線等が形成されている。接続パッド12は半導体基板11上の配線と接続されている。パッシベーション膜13は半導体基板11の表面に形成され、電気素子や配線等を被覆する。また、パッシベーション膜13には、接続パッド12を露出させる開口13aが設けられている。図2に示すように、開口13aは接続パッド12よりも小さい。
【0014】
パッシベーション膜13の表面には、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等からなる下地絶縁膜14が形成されている。下地絶縁膜14には、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)等の高機能プラスチック材料、エポキシ系、フェノール系、シリコン系等のプラスチック材料、またはこれらの複合材料等を用いることができる。
下地絶縁膜14には、接続パッド12を露出させる開口14aが設けられている。開口14aは例えばレーザにより形成することができる。図2に示すように、下地絶縁膜14の開口14aはパッシベーション膜13の開口13aよりも小さく、開口14aの外周部で接続パッド12と下地絶縁膜14とが密着している。
【0015】
下層配線27は、電解めっき用シード層16及び主層17を有している。
電解めっき用シード層16は、銅等の金属を含み、下地絶縁膜14の表面の一部及び開口14aから露出した接続パッド12の上部に形成されている。電解めっき用シード層16は、200nm〜2000nmの厚さが好ましい。電解めっき用シード層16の一端部は、開口13aと開口14aを通じて接続パッド12に接続されている。
電解めっき用シード層16の表面には銅等の導電性材料からなる主層17が形成されている。主層17は1μm〜10μmの厚さが好ましい。下層配線27の一端部27aは、接続パッド12上に位置し、接続パッド12に接続されている。
【0016】
下層配線27及び下地絶縁膜14の表面には、接着剤層18を介してフィルム材19が設けられている。
接着剤層18は、例えば、エポキシ系の材料からなる接着剤が硬化してなり、フィルム材19を半導体デバイスウェハ10(基板15)に接着している。
フィルム材19は、例えば、ガラス繊維からなる布、シリカフィラー、アラミド繊維等のいずれかの低膨張率の基材を含有した、エポキシ系樹脂或いはポリイミド系樹脂のフィルム材である。フィルム材19は、10μmより厚く、例えば30μm〜50μmの厚さを有している。
また、フィルム材19の熱膨張率は、例えば6[ppm/℃]であり、半導体基板11を構成するシリコンの熱膨張率に近似した或いは同じ値を有している。フィルム材19の熱膨張率は、含有する低熱膨張率の添加材であるガラス繊維の割合等を調整することによって所望する値に調整されている。
このフィルム材19と接着剤層18には、下層配線27を露出させるビアホール20aが形成されている。
【0017】
下層配線27の一端部27aとは反対側の他端部27bの上面に、ビアホール20aが位置しており、そのビアホール20a内に銅等の導電性材料からなる上層配線21のコンタクト部20が形成されている。コンタクト部20の下端は下層配線27に接続されている。
フィルム材19の表面の一部には、コンタクト部20の上端に一端部21aが接続された上層配線21のランド部が形成されている。この上層配線21のランド部は、銅等の導電性材料からなり、コンタクト部20と一体に形成されている。なお、フィルム材19上の上層配線21の厚みは、例えば、10μm〜25μmであり、好ましくは10μm〜15μmである。
上層配線21は、当該上層配線21に接続される下層配線27よりも長いことが好ましく、図1に示すように、半導体装置1Aにおいて、上層配線21は対応する下層配線27より長く形成されている。つまり、接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路において、上層配線21の方が下層配線27より長い経路を占めるようになっている。上層配線21が下層配線27より長い経路を占めることによって、半導体基板11から比較的離間した位置に配される電流経路の割合をより高くすることができる。
なお、各上層配線21がフィルム材19上を引き回される配線形状は、対応する電流経路の両端となる各接続パッド12と各半田端子23の配置に応じて異なる。同様に下層配線27の配線形状も、対応する各接続パッド12と各半田端子23の配置に応じて異なってもよい。
【0018】
フィルム材19上には、上層配線21を覆うとともに、上層配線21の他端部21bを露出させる開口9aを有する保護絶縁膜9が形成されている。保護絶縁膜9は、絶縁性の樹脂材料からなるソルダーレジストである。
保護絶縁膜9の開口9a内の上層配線21の他端部21bの表面には、拡散抑制層22が形成されている。この拡散抑制層22を介して上層配線21の他端部21bを被覆する半田端子23が設けられている。
このように、上層配線21は下層配線27より、接着剤層18とフィルム材19の厚み分、半導体基板11から離間しているので、上層配線21や半田端子23は下層配線27よりも半導体基板11と電気的に干渉しにくい構造になっている。
半田端子23は、上層配線21の他端部21b側に設けられており、上層配線21の一端部21a側にコンタクト部20が設けられているので、半田端子23とコンタクト部20とは上層配線21の延在方向にずれたオフセット配置になっている。そして、半田端子23と接続パッド12とは下層配線27の延在方向にずれたオフセット配置になっている。つまり、平面視して半田端子23は、接続パッド12やコンタクト部20と重ならない配置に設定されている。このため、半田端子23が外部の回路基板の配線端子と接合するために熱圧着するときの応力は、接続パッド12やコンタクト部20よりも半田端子23直下のフィルム材19及び接着剤層18にかかるため、接続パッド12やコンタクト部20での荷重負担を軽減することができる。またフィルム材19は熱膨張率が十分低いので、経時的に半導体装置1Aが高温や低温雰囲気に曝されても、フィルム材19の膨張、収縮が小さいため、半導体基板11の反りを抑えることができる。
【0019】
拡散抑制層22は、銅からなる上層配線21に半田端子23からのSn拡散を抑制するために設けられている。例えば、電源IC向け等の大電流を流すICパッケージ(半導体装置)の場合、エレクトロマイグレーションによりSn拡散スピードが大きく、カーケンドールボイドなどの欠陥が発生する問題が生じることがあるので、拡散抑制層22によってSn拡散を抑制することで改善できる。
なお、上層配線21の表面に生じるSn拡散層は3μm〜5μm程度であるので、上層配線21の厚みを10μm〜15μmあるいはそれ以上の厚みに形成することによって、Sn拡散による影響を殆どないものとすることができる。この場合、Sn拡散を抑制する必要がないので、図16の半導体装置1Aaに示すように、拡散抑制層22を設けなくてもよい。
【0020】
次に、半導体装置1Aの製造方法について、図3〜図15を用いて説明する。
【0021】
まず、図3に示すように、半導体デバイスウェハ10の表面に下地絶縁膜14を設け、その下地絶縁膜14にフォトリソグラフィーでパターニングを施して接続パッド12に対応する位置に開口14aを形成し、基板15を形成する。
【0022】
次に、スパッタ等の気相堆積法により基板15における下地絶縁膜14の全面及び接続パッド12の全面を覆う電解めっき用シード層16を形成する。次いで、電解めっき用シード層16上の主層17を形成しない位置及びアライメントマークを形成しない位置(半導体デバイスウェハ10の周縁部の複数箇所)に再配線レジスト(図示省略)を形成し、電解めっき用シード層16を陰極とする電解めっきにより再配線レジスト(図示省略)が形成されていない部分に銅メッキを施し、主層17を形成する。
その後、図4に示すように、再配線レジストを除去し、さらに主層17が形成されていない部分の電解めっき用シード層16を除去することで下層配線27が完成する。なお、このとき主層17の一部もエッチングされるが、主層17は電解めっき用シード層16と比較して充分に厚いため影響はない。
また、主層17と同じ材料、同一製造プロセスで、基板15上にアライメントマーク30を形成している。
【0023】
次に、図5に示すように、半導体デバイスウェハ10における半導体基板11の裏面を、汎用のウエハグラインディング装置により研削して、半導体基板11の厚みを例えば50μm程度に薄くする。なお、基板15(半導体デバイスウェハ10)に下層配線27を形成した段階では、基板15に反りを生じさせてしまう構成(例えば、熱硬化する際に硬化収縮する封止樹脂層)は無く、基板15は平面性を保っているので、半導体基板11を容易に研削することができ、基板15を薄型化することができる。
【0024】
次に、図6、図7に示すように、一方の面に銅からなるメッキ用金属膜25が設けられ、他方の面に接着剤18aが塗布されたフィルム材19を配置する。
基板15の下層配線27がフィルム材19の未硬化の接着剤18aが塗布されている面に対向するように基板15を搬送する。ここでフィルム材19には、基板15(半導体デバイスウェハ10)のアライメントマーク30に対応する位置に、あらかじめアライメント用開口部31が形成されている。このアライメント用開口部31は、アライメントマーク30に比べて十分に大きい数mmの口径を有しており、基板15に対するフィルム材19のアライメント精度は要求されないようになっている。搬送された基板15のアライメントマーク30がこのアライメント用開口部31から視認することによって相対的な位置合わせを行う。位置合わせ後、フィルム材19及び基板15の少なくとも一方を移動して、フィルム材19の接着剤18aを基板15に貼付する。
引き続き、図6〜図8に示すように、基板15(半導体デバイスウェハ10)の周囲を囲う位置に配された、基板15を搬送する治具である金属製のフレーム40及びフィルム材19の少なくとも一方を移動して、貼付された基板15の周囲で一部露出した接着剤18aをフレーム40に貼付する。図8は、図7の矢印VIII方向からの矢視図である。
この接着剤18aが熱硬化性樹脂である場合、熱硬化することで接着剤層18になる。
そして、接着剤層18は、基板15にフィルム材19を取り付けるばかりでなく、中央において基板15を固定し、基板15の外周においてフレーム40に固定することで、薄型化された基板15をフレーム40と一体的に取り扱うことが可能になる。つまり、基板15のみでは薄すぎて、後工程で例えば基板15の周縁等を接触によって損傷しやすくまた変形により取り扱いにくいことがあるが、薄型化された基板15が接着剤層18を介してフレーム40に固定されていることで、基板15をフレーム40ごと取り扱うことができ、基板15を保護しながら基板15の搬送や基板15に対する加工を容易に行なうことができるようになる。
また、ここで熱硬化する構成は接着剤層18のみであり、接着剤層18は、フィルム材19に比べて極めて薄く形成されているので接着剤18aが熱硬化する際に、接着剤18aが硬化収縮による応力は小さく、また基板15の周囲の外では、剛直なフレーム40が接着剤18aを固定しているため、基板15の下面に位置する接着剤18aの収縮を抑え、ひいては収縮の応力による基板15の反りを抑える。なお接着剤層18は、フィルム材19と基板15との接着も兼ねているので効率よく製造することができる。
【0025】
次に、図9に示すように、基板15上のアライメントマーク30の位置を基準に、例えば、COレーザやUVレーザなどのレーザをフィルム材19に向けて照射するレーザビア加工を施して、下層配線27の他端部27bの上方に対応する位置の接着剤層18及びフィルム材19にビアホール20aを形成し、下層配線27を露出させる。このビアホール20aをレーザビア加工により細く形成することによって、ビアホール20a内に形成するコンタクト部20を細くすることが可能になる。
なお、フィルム材19にビアホール20aを形成する場合、COレーザによるレーザビア加工が好ましい。また、このとき下層配線27の一部にもレーザが当たるが、下層配線27は1〜12μm程度の充分な厚みを有しているので、下層配線27にはレーザビア加工による影響はない。
【0026】
次に、図10に示すように、無電解めっきによりビアホール20a内に薄く銅メッキを形成し、その銅メッキとフィルム材19上のメッキ用金属膜25を一体にする。その後、メッキ用金属膜25をシード層とする電解めっきによって、ビアホール20a内およびフィルム材19上に厚膜の銅メッキを施し、厚膜金属層26を形成する。
なお、予めフィルム材19の上面にメッキ用金属膜25を設けずに、メッキ用金属膜25のないフィルム材19にビアホール20aを形成した後、無電解メッキによりビアホール20a内からフィルム材19上にわたって連続した銅製のシード層を形成してもよい。そして、そのシード層を用いる電解めっきにより厚膜金属層26を形成するようにしてもよい。
【0027】
次に、図11に示すように、ビアホール20aの上方に対応し上層配線21となる部分にレジストマスクを配して、厚膜金属層26をパターンエッチングすることにより、上層配線21のランド部とともにビアホール20a内のコンタクト部20が形成される。コンタクト部20は、下層配線27と上層配線21のランド部を接続している。
なお、上層配線21となる厚膜金属層26のエッチングによるパターニングで形成することに限定されない。例えば、図9に示すビアホール20a内に無電解めっきで銅メッキを形成し、この銅メッキをフィルム材19上のメッキ用金属膜25と一体化した後、フィルム材19(メッキ用金属膜25)上で上層配線21を形成しない位置にレジストマスクを設け、銅メッキ及びメッキ用金属膜25をシード層とする電解めっきによりレジストマスクが形成されていない部分に銅メッキを施してと上層配線21のコンタクト部20と、ランド部となる部位を形成する。その後、レジストマスクを除去し、さらに上層配線21のランド部が形成されていない部分のメッキ用金属膜25をソフトエッチングにより除去して、互いに分離された各上層配線21のランド部を形成してもよい。
【0028】
次に、図12に示すように、上層配線21及びフィルム材19の上に、例えば、ソルダーレジストとなる液状樹脂材料を塗布するか、またソルダーレジストとなる薄膜樹脂材料をラミネートした後、フォトリソグラフィー法によりパターニングして、上層配線21の他端部21bを露出させる開口9aを有する保護絶縁膜9を形成する。
【0029】
次に、図13に示すように、保護絶縁膜9の開口9aから露出する上層配線21の表面に無電解めっきによって、Ni/Auメッキを施し、拡散抑制層22を形成する。なお図16の構造の場合、拡散抑制層22を形成しない。
次に、図14に示すように、拡散抑制層22を介して上層配線21を被覆する略球形状の半田端子23を形成する。この半田端子23を形成する際に、拡散抑制層22内にニッケルメッキ部分が残っていれば、拡散抑制層22における金メッキ部分は半田端子23中に拡散してもよい。
【0030】
次に、図15に示すように、基板15を所定のダイシングラインに沿いダイシングして、フレーム40と分離するとともに複数の半導体装置1Aに個片化することで、半導体装置1Aが製造される。
【0031】
以上のように、本実施形態1によれば、上層配線21を下層配線27よりも長く形成して、半導体装置1Aにおける接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路中、上層配線21が下層配線27より長い経路を占めるようにすることで、半導体基板11から比較的離間した位置に配される電流経路の割合をより高くすることができる。
ここで、上層配線21は下層配線27より、接着剤層18とフィルム材19の厚み分、半導体基板11から離間しているので、上層配線21は下層配線27よりも半導体基板11と電気的に干渉しにくくなっている。
つまり、電流経路となる配線中、上層配線21の割合を高くすることによって、半導体装置1Aの配線(下層配線27及び上層配線21)と半導体基板11との電気的干渉を低減することができる。
特に、半導体基板11と上層配線21の間に配設されているフィルム材19の膜厚は少なくとも10μmあり、接着剤層18及びフィルム材19の総厚が10μm以上あるので、半導体装置1Aの配線に関する電気的干渉を大幅に低減することができる。
なお、上層配線21が下層配線27よりも必ずしも長くなくてよい。接続パッド12と半田端子23を繋ぐ配線中、半導体基板11から離間した配置の上層配線21が含まれていれば、その上層配線21の割合に応じて半導体基板11との電気的干渉を低減することができる。
【0032】
また、半導体装置1Aにおいて接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路をなす配線を、下層配線27と上層配線21を組み合わせて構成することにより、下地絶縁膜14上に下層配線27のない領域をつくることができる。その下層配線27のない下地絶縁膜14上の領域は、他の配線や電気素子を設けるためのスペースとして利用することが可能になる。
具体的に、図17、図18に示すように、半導体装置1Bにおける下地絶縁膜14上には、下層配線27とは異なる下層配線271,272が接続パッド12に接続されて設けられている。下地絶縁膜14上の下層配線271,272は、上層配線21と異なる層に形成されているので、下層配線271,272と上層配線21は立体交差する配線パターンが可能になっている。
例えば、従来技術(例えば、特許第3871609号公報)のように、接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路が下層配線27のみである場合、下地絶縁膜14上に下層配線27が混み合ってしまい、各下層配線27が交差しないように配線パターンを設計しなければならない制約があった。
これに対し、半導体装置1Bのように、電流経路を下層配線27と上層配線21を組み合わせて構成することによれば、他の下層配線271,272と上層配線21を立体交差させるなど配線パターンの自由度が高くなるので、好適に半導体装置を製造することができる。
なお図19の半導体装置1Bbに示すように、拡散抑制層22を設けなくてもよい。
【0033】
また、立体交差可能な配線パターンを利用することによって、半田端子23の配置箇所の自由度も高くなる。
例えば、図20に示す半導体装置1Cにおける、図中右側の半田端子23に対する配線構造のように、コンタクト部20の上端にランド部の一端部21aが接続されたランド部の他端部21bを、接続パッド12の上方に配するように外層配線21を形成すれば、接続パッド12の上方に半田端子23を設けることができる。
このように、半田端子23を任意の位置に設けることが可能になる。
【0034】
また、基板15に反りが生じない段階で半導体基板11を容易に研削して薄型化することができるので、その薄型化された基板15を備える半導体装置1Aの薄型化を図ることができる。
また、薄型化された基板15は、フィルム材19に貼付されてフレーム40に固定されて、そのフレーム40ごと取り扱うことができるので、基板15の搬送や基板15に対する加工を容易に行なうことができ、半導体装置1Aを好適に製造することができる。
【0035】
また、基板15に貼付されたフィルム材19の熱膨張率は、半導体基板11を構成するシリコンとほぼ同じ値を有しているので、半導体装置1Aが使用される環境温度に変化がある場合でも、半導体装置1A自体の膨張や収縮を妨げることはない。具体的には、半導体装置1Aの半田端子23をメイン基板(回路基板)の配線端子に接合して実装するので、経時的に半導体装置1A及びメイン基板が高温や低温雰囲気に曝されても、半導体装置1Aのフィルム材19の膨張、収縮が小さいため、半導体装置1Aがメイン基板に抗して膨張と収縮することによって生じる応力が小さく、半田端子23と配線端子との間の接合不良を引き起こしにくい。
特に、半田端子23とコンタクト部20とは上層配線21の延在方向にずれたオフセット配置になっており、半田端子23はフィルム材19の上方に配されているので、半導体装置1Aにおける半田端子23の近傍にかかる応力は、フィルム材19により緩和することができる。また、下地絶縁膜14や保護絶縁膜9の膜厚に比べて、外層配線21は十分な長さを有し可撓性を有するので、半田端子23の近傍にかかる応力は、外層配線21の変形により緩和することができる。つまり、半田端子23と外層配線21の近傍にかかる応力は好適に緩和されるので、上層配線21と半田端子23は破断しにくく半導体装置1Aの製品安定性が向上する。
なお図21の半導体装置1Ccに示すように、拡散抑制層22を設けなくてもよい。
【0036】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る半導体装置について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0037】
半導体装置1Dは、図22〜図24に示すように、半導体デバイスウェハ10に下地絶縁膜14が積層されてなる基板15の表面に、下層配線27、上層配線21、半田端子23等を備えており、下地絶縁膜14上のインダクタ領域Rにインダクタ素子50を備えている。
半導体装置1Dにおいても、実施形態1の半導体装置1Aと同様に、接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路をなす配線中、上層配線21が占める割合を高くすることによって、下地絶縁膜14上に下層配線27のない領域を確保し、その領域をインダクタ領域Rとしている。
【0038】
インダクタ領域Rは、下地絶縁膜14上であって、その上方に上層配線21がない範囲に対応している。
インダクタ素子50は、金属等の導電性材料が巻回された構造を有する電気素子であり、外周端となる端部50aと、内周端となる端部50bを有している。インダクタ素子50の両方の端部50a、50bは、それぞれ半導体基板11の表面に形成されている接続パッド12に接続されている。具体的にはインダクタ素子50の端部50aは、ビアホール20aに設けられており、ビアホール20aで露出された下層配線27の他端部27bと接続されている。下層配線27の一端部27aは、開口13a及び開口14aを介して接続パッド12に接続されている。インダクタ素子50の端部50bは、他のビアホール20aに設けられており、ビアホール20aで露出された下層配線27の端子27cと接続されている。端子27cは、他の開口13a及び他の開口14aを介して他の接続パッド12に接続されている。
このインダクタ素子50は、例えば、上層配線21と同じ材料、同じ工程で形成される。
【0039】
以上のように、本実施形態2によれば、下地絶縁膜14上の下層配線27よりも、フィルム材19上の上層配線21の割合を高くすることによって、フィルム材19上にインダクタ領域Rを確保することができ、そのインダクタ領域Rにインダクタ素子50を設けることができる。
例えば、接続パッド12と半田端子23を繋ぐ電流経路が、従来技術(例えば、特許第3871609号公報)のように下層配線27のみである場合、下地絶縁膜14上のインダクタ素子50を避けるように配線パターンを設計しなければならず、その配線パターンに制約があるうえに配線が混み合ったものになってしまうことがある。
これに対し、本実施形態2の半導体装置1Dのように、電流経路を下層配線27と上層配線21を組み合わせて構成することによれば、配線パターンの自由度が高くなるとともに、下地絶縁膜14の上方にインダクタ領域Rを確保することができるので、好適にインダクタ素子50を設けることが可能になる。
【0040】
また、インダクタ素子50と半導体基板11の間のフィルム材19の膜厚が少なくとも10μmあるので、インダクタ素子50と半導体基板11との電気的な相互作用が大幅に低減されることによる。
なお、インダクタ素子50は、例えば、保護絶縁膜9上のように、フィルム材19より上方に形成されていれば、上層配線21と同じ材料で形成されることに限らなくてもよい。
上記実施形態においても必要に応じて拡散抑制層を設けてよい。
【0041】
また上記各実施の形態では、下層配線及び上層配線の二層構造であったが、間に中間配線を含む三層以上の構造であってもよい。
【0042】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1A、1B、1C、1D 半導体装置
9 保護絶縁膜
9a 開口
10 半導体デバイスウェハ
11 半導体基板
12 接続パッド(接続端子)
13 パッシベーション膜
14 下地絶縁膜
15 基板
16 電解めっき用シード層
18 接着剤層
19 フィルム材
20a ビアホール
21 上層配線
21a 一端部
21b 他端部
22 拡散抑制層
23 半田端子
25 メッキ用金属膜
26 厚膜金属層
27 下層配線
27a 一端部
27b 他端部
40 フレーム
50 インダクタ素子
50a 端部
271,272 下層配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に複数の接続端子が形成された半導体デバイスウエハと、
前記複数の接続端子にそれぞれの一端が接続された複数の下層配線と、
前記複数の下層配線よりも上方に位置し、それぞれ対応する前記下層配線より長い複数の上層配線と、
前記複数の上層配線の下方に位置する、基材を含有した樹脂のフィルム材と、
前記複数の上層配線にそれぞれ接続された複数の半田端子と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記フィルム材は、ガラス繊維からなる布、シリカフィラー、アラミド繊維のいずれかの基材を含有した、エポキシ系樹脂或いはポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フィルム材上にインダクタ素子を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フィルム材は、少なくとも10μmの膜厚を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上層配線は、前記フィルム材に形成されたビアホール内のコンタクト部と、前記フィルム材上のランド部と、を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接続端子と、前記下層配線を介して前記接続端子に接続された前記上層配線の前記ランド部と、前記上層配線に接続された前記半田端子とは、平面視して重ならないことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記上層配線と前記半田端子との接続領域の周囲に保護絶縁膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板及び前記半導体基板の一方の面に形成された複数の接続端子を備えた基板の前記接続端子に下層配線が接続された半導体装置の製造方法において、
前記基板の一方の面側に、基材を含有した樹脂のフィルム材を貼付するフィルム材貼付工程と、
前記下層配線の上方に対応する前記フィルム材に、前記下層配線を露出させるビアホールを形成するビアホール形成工程と、
前記ビアホールを介して前記下層配線と接続し、接続された前記下層配線より長い上層配線を前記フィルム材上に形成する上層配線形成工程と、
前記上層配線上に形成された半田端子を形成する半田端子形成工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記フィルム材貼付工程は、前記基板の周囲を囲うフレームに前記フィルム材を貼付する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記フィルム材貼付工程の前に、前記半導体基板の裏面を研削して、その厚みを薄くする基板薄型化工程を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記上層配線形成工程は、前記ビアホール内と前記フィルム材上にメッキを施す工程を含み、前記フィルム材上の前記メッキ部分をパターニングすることにより、前記上層配線を形成することを特徴とする請求項8〜10の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記フィルム材には、前記フィルム材貼付工程の前に、メッキ用金属膜が形成されていることを特徴とする請求項8〜11の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記フィルム材上にインダクタ素子を形成するインダクタ形成工程を備えることを特徴とする請求項8〜12の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記上層配線は、前記フィルム材に形成されたビアホール内のコンタクト部と、前記フィルム材上のランド部と、を有することを特徴とする請求項8〜13の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記接続端子と、前記下層配線を介して前記接続端子に接続された前記上層配線の前記ランド部と、前記上層配線に接続された前記半田端子とは、平面視して重ならないことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記上層配線と前記半田端子との接続領域の周囲に保護絶縁膜が設けられていることを特徴とする請求項8〜15の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−181859(P2011−181859A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47311(P2010−47311)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】