半導体装置及び当該半導体装置の製造方法
【課題】良好な電気絶縁性が確保された熱伝導性絶縁樹脂シートを有する半導体装置と当該半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】熱伝導性絶縁樹脂シート30が、ヒートシンク7またはパワーモジュール20のいずか一方に設けられたシート接着用凹部51に封入され、シート接着用凹部51の周縁と相対するモールド樹脂5の面は、パワーモジュール20の上方に向けてモールド樹脂5内に突出して、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分と熱伝導性絶縁樹脂シート30から押し出されたボイドとを内包する窪み52を備える半導体装置1と当該半導体装置1の製造方法。
【解決手段】熱伝導性絶縁樹脂シート30が、ヒートシンク7またはパワーモジュール20のいずか一方に設けられたシート接着用凹部51に封入され、シート接着用凹部51の周縁と相対するモールド樹脂5の面は、パワーモジュール20の上方に向けてモールド樹脂5内に突出して、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分と熱伝導性絶縁樹脂シート30から押し出されたボイドとを内包する窪み52を備える半導体装置1と当該半導体装置1の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱伝導性絶縁部材を有する半導体装置と当該半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置では、発熱部である半導体素子と放熱部材との間に配置されて、半導体素子と放熱部材とを接着して熱を放熱部材へ伝達させ、且つ絶縁層としても機能する熱伝導性絶縁部材として、熱硬化性樹脂に無機充填材を添加した熱伝導性樹脂組成物が用いられている。
電力用半導体装置の場合では、この熱伝導性樹脂組成物として熱硬化性樹脂シートなどが用いられている。
このような電力用半導体装置用の熱伝導性絶縁樹脂シートは、例えば2500Vの交流電圧に1分間耐え得るなどの高い耐電圧特性が要求されるが、熱伝導性絶縁樹脂シート内に内在する気泡(いわゆる、ボイド)が耐電圧特性を低下させる要因となっている。
【0003】
しかし、パッシェンの法則に示されているように、熱伝導性絶縁樹脂シート内のボイドの大きさと放電電圧には相関関係があるため、ボイドの大きさを小さくすることで放電開始電圧を高めて、熱伝導性絶縁樹脂シートの耐電圧特性、すなわち電気絶縁性を向上させることができる。
ボイドの大きさを小さくする方法として、電力用半導体装置の製造工程において10MPaにも及ぶ高圧力を未硬化状態の熱伝導性絶縁樹脂シートに印加してボイドを潰したり、あるいはボイドを隣接する硬化途中のモールド樹脂内に押し出すという、例えば特許文献1に記載するような半導体装置と半導体装置の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−165281号公報 (第13頁 段落[0067])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の半導体装置及び半導体装置の製造方法では、高圧力を印加しても潰しきれないボイドが熱伝導性絶縁樹脂シートの内部に残存したり、隣接する硬化途中のモールド樹脂内に押し出せなかったボイドが熱伝導性絶縁樹脂シートの界面に残存するために、高い電気絶縁性を持つ熱伝導性絶縁樹脂シートを有する半導体装置を安定的に提供することが難しいという課題があった。
【0006】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、ボイドが抑制され良好な電気絶縁性が確保された熱伝導性絶縁部材を有する半導体装置と、当該半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る半導体装置は、
半導体素子と、
半導体素子が固着される金属配線部材と、
半導体素子と金属配線部材の下面以外とを封止してパワーモジュールを形成するモールド樹脂と、
金属配線部材の下面に熱伝導性絶縁樹脂シートを介して接着されるヒートシンクとを備えた半導体装置において、
熱伝導性絶縁樹脂シートは、ヒートシンクまたはパワーモジュールの少なくともいずか一方に設けられたシート接着凹部に封入され、
シート接着凹部の周縁と相対するモールド樹脂の面は、パワーモジュールの上方に向けてモールド樹脂内に突出して、熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを内包する窪みを備えたものである。
【0008】
この発明に係る半導体装置の製造方法は、
特許請求の範囲の請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
モールド樹脂を加熱しながらモールド樹脂の上面の中央部を加圧し、加圧範囲をパワーモジュールの外周に向けて徐々に拡大させて、加圧によりシート接着用凹部から溶出した熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と、熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを窪みに誘導するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る半導体装置は、
熱伝導性絶縁樹脂シートが、ヒートシンクまたはパワーモジュールの少なくともいずか一方に設けられたシート接着用凹部に封入され、
シート接着用凹部の周縁と相対するモールド樹脂の面には、パワーモジュールの上方に向けてモールド樹脂内に突出して、熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを内包する窪みが備えられたものなので、
熱伝導性絶縁樹脂シート内のボイドが低減され、良好な電機絶縁性を確保することができる。
【0010】
この発明に係る半導体装置の製造方法は、
モールド樹脂を加熱しながらモールド樹脂の上面の中央部を加圧し、加圧範囲をパワーモジュールの外周に向けて徐々に拡大させて、加圧によりシート接着用凹部から溶出した熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と、熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを窪みに誘導するものなので、
熱伝導性絶縁樹脂シート内のボイドを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る熱伝導性樹脂シートの設置圧着工程を示すフロー図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るパワーモジュールと加圧前の電力用半導体装置の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置の加圧中における断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置のシート接着用凹部の構成例である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る電力用半導体装置と電力用半導体装置の加圧中における断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置の断面図と、モールド樹脂の平面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置の加圧時における断面の連続図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る電力用半導体装置の断面図とモールド樹脂の平面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係る電力用半導体装置の断面図である。
【図11】この発明の実施の形態6に係る熱伝導性絶縁樹脂シートの要部拡大図である。
【図12】この発明の実施の形態7に係る電力用半導体装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図を用いて説明する。
図1は、電力用半導体装置100の断面図である。
半導体素子1は、例えばインバータやコンバータ等を構成するIGBT素子のような発熱性の電力用素子である。
半導体素子1の上面と主端子2aは半田3aにより半田付けされており、半導体素子1の下面と金属配線部材4は半田3bにより半田付けされている。
また、主端子2bと金属配線部材4も半田3cにより半田付けされている。
【0013】
半導体素子1と、主端子2a、2bと、金属配線部材4の下面以外とをモールド樹脂5で封止してパワーモジュール20を形成する。
主端子2a、2bの半田付けされていない側の端部はモールド樹脂5の外側に突出している。
また、金属配線部材4の下面は上述の通りモールド樹脂5に覆われていないため、パワーモジュール20より露出しており、この露出した金属配線部材4の下面に熱伝導性絶縁樹脂シート30を介してヒートシンク7を接着して、電力用半導体装置100を形成する。
【0014】
発熱性の電力用素子で構成された半導体素子1は、高電圧、高電流という環境下で使用されるために、非常に高温になる。半導体素子1の正常な動作を確保するためにはこの発生した熱を逃がし、半導体素子1の適切な動作温度を維持する必要がある。
そこで、金属配線部材4は、主端子2aと接続されて半導体素子1に通電をするという電極としての役割のみならず、ヒートスプレッダとしての役割をも兼ねている。
すなわち、半導体素子1にて発生した熱は、半田3bを介して金属配線部材4の全体に広がり、金属配線部材4に接着されている放熱板であるヒートシンク7に広範囲に渡って放熱されることで、電力用半導体装置100の放熱性が向上するのである。
【0015】
このように、金属配線部材4は2つの役割をもつので、金属配線部材4の材料としては、熱伝導性および電気伝導性の良いものが好ましく、例えば銅や、半田付け可能なようにニッケルメッキされたアルミニウム等を用いるとよい。勿論、これらの材料に限らず、熱および電気を伝導できる材料であれば、他の材料を用いてもよい。
一方、ヒートシンク7は、アルミニウムや銅など導電性の金属で構成されており、ヒートシンク7内を流れる導電性溶液を通じて、ラジエータなど周辺部品と接続されて冷却を行うという水冷方式が一般的に用いられている。
【0016】
次に金属配線部材4とヒートシンク7間に熱伝導性絶縁樹脂シート30を設置する理由について説明する。
例えばパワーモジュール20がインバータである場合に、金属配線部材4には直流電圧または交流電圧が印加されるため、パワーモジュール20の動作中に、金属配線部材4には電位が発生する。
このため、金属配線部材4とヒートシンク7とは電気的に絶縁分離される必要がある。
もしこの絶縁分離が十分でないと、ヒートシンク7は周辺部材とも接続されているので、最悪の場合に半導体素子1がヒートシンク7を介してアースと短絡し、半導体素子1が故障する可能性もある。
そのため、金属配線部材4とヒートシンク7間に、シート接着用凹部51という凹み部を設け、ここに熱を伝達する特性を有するだけでなく電気絶縁性も有する熱伝導性絶縁樹脂シート30を封入することで、金属配線部材4とヒートシンク7を絶縁分離している。
【0017】
以下、電力用半導体装置100の製造工程における熱伝導性絶縁樹脂シート30の設置、圧着方法の概要について、フロー図を基に説明する。
図2は、熱伝導性絶縁樹脂シート30の設置、圧着工程の概要を示すフロー図である。
まずヒートシンク7を設置し(S1)、その上に熱伝導性絶縁樹脂シート30を載置(S2)する。
そして熱伝導性絶縁樹脂シート30が、シート接着用凹部51内に配置されるように上方からパワーモジュール20を重ねて(S3)、電力用半導体装置100を組み立てる。
【0018】
ここで、真空式ヒータープレス装置8(以降、プレス装置8という)で電力用半導体装置100全体を減圧下におき(S4)、電力用半導体装置100の加熱を開始する(S5)。
熱伝導性絶縁樹脂シート30として用いる熱硬化性樹脂は、固体状態時に加熱すると最初は軟化するという性質を有する。加熱によって熱伝導性絶縁樹脂シート30が軟化した後に、金属配線部材4の中央部の鉛直上方付近のパワーモジュール20の上面を、プレス装置8で鉛直下方に加圧する(S6)。
【0019】
パワーモジュール20の上部を鉛直下方に加圧することで、その圧力が軟化された熱伝導性絶縁樹脂シート30に加わり、ボイドが潰しこまれる。
また、加熱された熱硬化性樹脂は加圧されると流動性を持つので、流動化した熱伝導性絶縁樹脂シート30内をボイドが移動して、熱伝導性絶縁樹脂シート30の外へボイドが押し出される(詳細は後述)。
ここで、電力用半導体装置100全体を減圧下におく理由は、減圧下でパワーモジュール20の上部に圧力を加えることで、熱伝導性絶縁樹脂シート30とヒートシンク7の界面、および熱伝導性絶縁樹脂シート30と金属配線部材4の界面に挟みこまれた空気層を低圧膨張させて、排出させやすくするためである。
【0020】
軟化した熱伝導性絶縁樹脂シート30は、シート接着用凹部51の形状に沿いながらシート接着用凹部51内に熱伝導性絶縁樹脂層を形成して圧着され、更なる加熱の継続により最後は硬化する。
熱伝導性絶縁樹脂シート30が完全に硬化した後に、パワーモジュール20の加圧を停止し(S7)、続いて電力用半導体装置100の加熱を停止し(S8)、最後にプレス装置8の減圧を停止して(S9)、熱伝導性絶縁樹脂シート30の設置圧着工程を終了する(S10)。
【0021】
好ましくは、加熱ステップ(S5)において、減圧下での加熱を一定時間以上保持するとよい。こうすることで硬化前の熱伝導性絶縁樹脂シート30に内包された溶剤や水分が気化し、排出されやすくなり、熱伝導性絶縁樹脂シート30の絶縁性が高まるからである。
本来この溶剤を使用しないことがボイド対策として有効であるが、この溶剤は熱伝導性絶縁樹脂シート30の加工を容易にするものであり、溶剤がないと熱伝導性絶縁樹脂シート30は粘度が高過ぎて加工性が非常に悪くなる。
【0022】
以下、電力用半導体装置100を加圧する工程(S6)およびこの工程(S6)にてボイドを潰しこむ作用について図を用いて詳しく説明する。
図3(a)は、熱伝導性絶縁樹脂シート30を取り付ける前のパワーモジュール20の断面図である。
図3(b)は、ヒートシンク7の上に載置された熱伝導性絶縁樹脂シート30が、シート接着用凹部51内にくるように上方からパワーモジュール20を重ねた図である。
図4は、プレス装置8により加圧される電力用半導体装置100の断面図である。
【0023】
図3(b)に示すように、シート接着用凹部51の厚み(d1)よりも大きい厚み(d2)を持つ熱伝導性絶縁樹脂シート30を用いる。
このように熱伝導性絶縁樹脂シート30の厚み(d2)を、シート接着用凹部51の厚み(d1)より大きくして、熱伝導性絶縁樹脂シート30の体積をシート接着用凹部51の体積よりも大きくする理由は、熱伝導性絶縁樹脂シート30内の溶剤が加熱により気化して押し出されるために、熱伝導性絶縁樹脂シート30の硬化後の体積が加熱加圧前に比べて約10%減少するからである。
シート接着用凹部51の厚み(d1)は絶縁性を確保するために必要な厚みであり、熱伝導性絶縁樹脂シート30がこの厚みを確保できるように、予め体積の大きな熱伝導性絶縁樹脂シート30を用意している。
【0024】
シート接着用凹部51の周縁と相対するモールド樹脂5の面には、パワーモジュール20の上方に向けて突出する窪みである余剰吸収部52が設けられている。
図1、図4に示すように、余剰吸収部52は、シート接着用凹部51内に収まりきらない熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分を収容する場所である。
この余剰吸収部52を設けていないと、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分が、パワーモジュール20とヒートシンク7との接触部分(P1)に不規則にはみ出し、熱伝導性絶縁樹脂シート30を封止するシート接着用凹部51が閉鎖された空間とならず、熱伝導性絶縁樹脂シート30に圧力を加えたとしても、この圧力が開放されてしまい、ボイド9を潰す作用が不十分となる。
一旦、熱伝導性絶縁樹脂シート30がはみ出る流路が発生すると、パワーモジュール20への加圧により、更にシート接着用凹部51内から熱伝導性絶縁樹脂が流出し、結果として熱伝導性絶縁樹脂シート30の厚みが非常に薄くなってしまい、所望の絶縁性が得られなくなる。
【0025】
そこで、シート接着用凹部51の体積より大きな体積を持つ熱伝導性絶縁樹脂シート30を用い、余剰吸収部52を設けておくことによって、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分を余剰吸収部52に排出させる。
パワーモジュール20を鉛直下方に加圧することで、パワーモジュール20とヒートシンク7との隙間(d1とd2の差による隙間)は閉じられ、余剰分は余剰吸収部52に収納される。
こうして、パワーモジュール20とヒートシンク7の接触部分(P1)に余剰分がはみ出すことなく、シート接着用凹部51を余すところなく熱伝導性絶縁樹脂で充填することができるので、熱伝導性絶縁樹脂層の十分な厚みが確保される。
こうして、金属配線部材4とヒートシンク7間の高い絶縁性を確保させつつ、ボイド9を確実に潰し込むという効果を得ることができる。
【0026】
熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分は、余剰吸収部52の体積内で確実に収まるように設定する必要がある。
シート接着用凹部51の表面に存在する微少な凹凸や、熱伝導性絶縁樹脂シート30の圧縮率の変化によりこの余剰分は多少増減するものの、この増減分の最大想定値で余剰分を想定することによって、余剰分は余剰吸収部52からあふれない。
また、シート接着用凹部51の体積および余剰吸収部52の体積を合算して得られる空間の体積を、硬化前の熱伝導性絶縁樹脂シート30の体積と同等程度に設定する方法を用いても、余剰分の体積が余剰吸収部52の体積を超えることはない。
こうして、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分が余剰吸収部52から流出することを防止することができる。
【0027】
次にパワーモジュール20の上面加圧時における、ボイド9の熱伝導性絶縁樹脂シート30外への押し出し作用について説明する。
図3(b)に示すように、加圧前の熱伝導性絶縁樹脂シート30には多数のボイド9が内包されている。ここでパワーモジュール20の上面を、プレス装置8で鉛直下方に加圧する。この加圧によりパワーモジュール20に、鉛直下方にしなる弓形状の反りが発生する。(図4参照)
熱伝導性絶縁樹脂シート30内のボイド9は、加熱及び加圧により軟化して流動化した熱伝導性絶縁樹脂シート30の浮力を受けて熱伝導性絶縁樹脂シート30内の高い位置、すなわちシート接着用凹部51の外周側にかけて徐々に移動し、最後は熱伝導性絶縁樹脂シート30から排出されて余剰吸収部52に収納される。(図1)
【0028】
ここで絶縁性が最も懸念される箇所は、図1に太線A部として示す金属配線部材4とヒートシンク7間の沿面放電距離である。
ヒートシンク7と金属配線部材4間の電位差により生じる等電位線を考えた時に、金属配線部材4とヒートシンク7の間の熱伝導性絶縁樹脂シート30にはきわめて大きい勾配の電界が生じるが、余剰吸収部52はこの領域から離して配置されており、沿面放電距離も十分に長くなるため余剰吸収部52において絶縁破壊は起きにくい。
【0029】
図5は、シート接着用凹部51をヒートシンク7側に設置する場合の1例である。
図5に示すようにシート接着用凹部51をパワーモジュール20側でなくヒートシンク7の上面に設ける場合でも、また、図示しないがシート接着用凹部51をパワーモジュール20とヒートシンク7の上面の両方に設置して互いを連通させても同様の効果を得られることは勿論のことである。
【0030】
熱伝導性絶縁樹脂シート30の材料としては、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂のような熱硬化性樹脂が好ましい。
熱伝導性絶縁樹脂シート30にはフィラーを含浸させることで、熱伝導率を格段に向上させることができるが、そのような材料としては、アルミナ、窒化ボロン、窒化シリコン、窒化アルミなどがある。フィラーの含有率としては、体積%で50%〜80%程度が好ましい。
すなわち、フィラーの含有率が50%以下であると熱伝導率が低く、80%以上、特に90%以上では、ボロボロと脆い物質となり、容易に成形できなくなる。
また、80%以上では、適切なフィラー粒径分布の配合比を選択しないと、十分な混ぜ込みができずにボイド9が残りやすい。
また、熱伝導性絶縁樹脂シート30の厚みとしては、およそ100μmから500μm程度が好ましい。
【0031】
この発明の実施の形態1の半導体装置および当該半導体装置の製造方法によると、熱伝導性絶縁樹脂を封入するシート接着用凹部51の周縁に余剰吸収部52を設けることで、シート接着用凹部51を余すところなく熱伝導性絶縁樹脂シート30で充填することができ、また絶縁性能を低下させる要因となる熱伝導性絶縁樹脂シート30内のボイド9を潰しこみ、あるいは絶縁性能に影響のない場所にボイド9を誘導することができるので、高い電気絶縁性を持つ熱伝導性絶縁樹脂シートを有する半導体装置を提供することができる。
【0032】
また、ボイド9が残らないことからシート接着用凹部51の厚みを小さくすることができ、結果、パワーモジュール20を小型化できる。これにより、パワーモジュール20やヒートシンク7を覆うケース部材の重量や材料使用量を削減できるという効果も得られる。
また、部留まりが向上するので、電力用半導体装置100に使用される半導体素子、半田接合剤などの環境負荷物質の使用量を低減することが可能となる。
【0033】
なお、本発明は電力用半導体装置以外の用途に使用する半導体装置に利用可能であることは言うまでもない。
【0034】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図6は、この発明の実施の形態2に係る電力用半導体装置200の断面図である。
パワーモジュール220は、その厚みが外周部から中央部に向かうに従って次第に薄くなるように、モールド樹脂205の上面が形成されている。
このモールド樹脂205の上面は緩やかな曲面で形成されており、その曲面の底部は金属配線部材4の中心部の鉛直方向上方にある。
【0035】
図6(b)に示すように、プレス装置8にてこのような曲面を持つモールド樹脂205の上面を加圧すると、曲面の底を中心として鉛直下方にしなる弓形状の反りが発生し、その反りは実施の形態1に比べて促進されている。
このようにパワーモジュール220の上面に曲面を持たせて加圧時の弓形状の反りを促進することで、余剰吸収部52へボイド9を排出する効果が高まる。
またこの曲面は、変曲点を持たない滑らかな面で構成されていると好ましい。
【0036】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図7(a)は、この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置300の断面図である。
図7(b)は、この発明の実施の形態3に係るモールド樹脂305の平面図である。
図8(a)、(b)は、この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置300の加圧時における断面の連続図である。
パワーモジュール320は、モールド樹脂305の上面であって且つ金属配線部材4の中央近傍の鉛直上方の位置に、直線状の溝である直線状溝部360を有している。
このパワーモジュール320の加圧方法は、図8(a)(b)に示すように、まず、プレス装置308でモールド樹脂の上面の中央部を鉛直下方に加圧し、加圧範囲をパワーモジュール320の外周に向けて徐々に拡大させる。
プレス装置308の加圧面は、加圧後のパワーモジュール320の撓み傾斜相当となるように中心から外周に傾斜を持たせた形状となっている。
【0037】
この加圧方法によると、加圧の初期段階でモールド樹脂305が反り、次第にプレス装置308の下面がモールド樹脂の上面全体に接触するので、パワーモジュール320を安定的に加圧して撓ませることができる。
このようにパワーモジュール320の平面部とプレス装置308の平面部とで加圧が進められることから、加圧工程におけるプロセス条件が安定する。
特に複数の半導体装置を加圧する場合に、各半導体装置の加圧におけるプロセス条件を一致させることができるので、各半導体装置で同等のボイド低減効果を得ることが可能になる。
【0038】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図9(a)は、この発明の実施の形態4に係る電力用半導体装置400の断面図である。
図9(b)は、この発明の実施の形態4に係るモールド樹脂405部の平面図である。
パワーモジュール420は、その上面に十字形の溝である十字状溝部461を有している。
この十字状溝部461を設けることによりパワーモジュール420の更なる反りを、パワーモジュール420の四方に渡って発生させることができ、余剰吸収部52へボイドを誘導する効果が高まる。
【0039】
実施の形態5.
以下、この発明の実施の形態5を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図10は、この発明の実施の形態5に係る電力用半導体装置500の断面図である。
シート接着用凹部51上に2個の半導体素子1が設置されている。
【0040】
一般に電力用半導体装置が自動車のモーター駆動用である場合には、小型化、軽量化が自動車の基本性能である燃費に直結するため、重要な要素となってくる。
またレイアウト設計において半導体素子が小型であると、設計の自由度が増すと共に、基板が小型化できるなど、利点が多いことから半導体の小型化要求は高い。
こうして複数の半導体素子1を近づけて配置して小型化された電力用半導体装置500においても、複数の半導体素子1の下にシート接着用凹部51と余剰吸収部52を設けることで、同様のボイドの低減効果を得ることができる。
【0041】
実施の形態6.
以下、この発明の実施の形態6を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図11は、この発明の実施の形態6に係る熱伝導性絶縁樹脂シート630の要部拡大図である。
熱伝導性絶縁樹脂シート630の周縁の厚みは中央部の厚みよりも大きくなるように形成されている。
一般に、パワーモジュールを構成する金属配線部材およびモールド樹脂の線膨張率は、ヒートシンクとの線膨張率と差が生じる。
例えば金属配線部材が銅の場合は、モールド樹脂を銅の線膨張率に合わせて、パワーモジュール全体として、ほぼ銅の線膨張率(16*10^−6/℃)と等価となるように調節して、パワーモジュールの半田3a、3b、3cの信頼性を確保する。
しかしヒートシンクはアルミニウム(23*10^−6/℃)等を通常使用するために、パワーモジュールとヒートシンクに線膨張率の差が生じるのである。
【0042】
この線膨張率の差によって、熱伝導性樹脂シート630の周縁(図中太線B部)からモールド樹脂の剥離が進展し、剥離が電位の発生する金属配線部材まで到達した場合には、金属配線部材とヒートシンクが通電する可能性がある
そのため、パワーモジュールとヒートシンクとの間に挟まれる熱伝導性絶縁樹脂シート630によって、その線膨張率差を吸収する必要がある。
ここでパワーモジュールとヒートシンクの線膨張率差に起因する熱応力が最も大きくかかる熱伝導性絶縁樹脂シート630の場所は、熱伝導性絶縁樹脂シート630の周縁である。
よって、熱伝導性絶縁樹脂シート630の周縁の厚みを大きくすることで、熱伝導性絶縁樹脂シート630にかかる熱応力を緩和して、モールド樹脂5の剥離進展を抑制することができる。
【0043】
実施の形態7.
以下、この発明の実施の形態7を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図12は、この発明の実施の形態7に係る電力用半導体装置の要部拡大図である。
モールド樹脂5の外周のヒートシンク7との接触部に、水分進入を防止する樹脂である水分進入抑制樹脂770を設けている。
これによりパワーモジュールの側面とヒートシンク7との接触部が隙間のない状態となり、高湿度環境下において熱伝導性絶縁樹脂シート30が封止されているシート接着用凹部51への水分の浸入が抑止でき、絶縁性低下を抑制出来る。
ここでの水分進入抑制樹脂770の材料としては、ポリイミド系樹脂などが好ましい。
【0044】
なお、以上で述べた実施の形態1乃至実施の形態7は、それぞれ組み合わせて使用してもよい。
また技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以上の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体素子、4 金属配線部材、5,205,305,405 モールド樹脂、
7 ヒートシンク、8,308 プレス装置、9 ボイド、
20,220,320,420,520 パワーモジュール、
30,630 熱伝導性絶縁樹脂シート、51 シート接着用凹部、52 余剰吸収部、100,200,300,400,500 電力用半導体装置、360 直線状溝部、
461 十字状溝部、770 水分進入抑制樹脂。
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱伝導性絶縁部材を有する半導体装置と当該半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置では、発熱部である半導体素子と放熱部材との間に配置されて、半導体素子と放熱部材とを接着して熱を放熱部材へ伝達させ、且つ絶縁層としても機能する熱伝導性絶縁部材として、熱硬化性樹脂に無機充填材を添加した熱伝導性樹脂組成物が用いられている。
電力用半導体装置の場合では、この熱伝導性樹脂組成物として熱硬化性樹脂シートなどが用いられている。
このような電力用半導体装置用の熱伝導性絶縁樹脂シートは、例えば2500Vの交流電圧に1分間耐え得るなどの高い耐電圧特性が要求されるが、熱伝導性絶縁樹脂シート内に内在する気泡(いわゆる、ボイド)が耐電圧特性を低下させる要因となっている。
【0003】
しかし、パッシェンの法則に示されているように、熱伝導性絶縁樹脂シート内のボイドの大きさと放電電圧には相関関係があるため、ボイドの大きさを小さくすることで放電開始電圧を高めて、熱伝導性絶縁樹脂シートの耐電圧特性、すなわち電気絶縁性を向上させることができる。
ボイドの大きさを小さくする方法として、電力用半導体装置の製造工程において10MPaにも及ぶ高圧力を未硬化状態の熱伝導性絶縁樹脂シートに印加してボイドを潰したり、あるいはボイドを隣接する硬化途中のモールド樹脂内に押し出すという、例えば特許文献1に記載するような半導体装置と半導体装置の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−165281号公報 (第13頁 段落[0067])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の半導体装置及び半導体装置の製造方法では、高圧力を印加しても潰しきれないボイドが熱伝導性絶縁樹脂シートの内部に残存したり、隣接する硬化途中のモールド樹脂内に押し出せなかったボイドが熱伝導性絶縁樹脂シートの界面に残存するために、高い電気絶縁性を持つ熱伝導性絶縁樹脂シートを有する半導体装置を安定的に提供することが難しいという課題があった。
【0006】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、ボイドが抑制され良好な電気絶縁性が確保された熱伝導性絶縁部材を有する半導体装置と、当該半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る半導体装置は、
半導体素子と、
半導体素子が固着される金属配線部材と、
半導体素子と金属配線部材の下面以外とを封止してパワーモジュールを形成するモールド樹脂と、
金属配線部材の下面に熱伝導性絶縁樹脂シートを介して接着されるヒートシンクとを備えた半導体装置において、
熱伝導性絶縁樹脂シートは、ヒートシンクまたはパワーモジュールの少なくともいずか一方に設けられたシート接着凹部に封入され、
シート接着凹部の周縁と相対するモールド樹脂の面は、パワーモジュールの上方に向けてモールド樹脂内に突出して、熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを内包する窪みを備えたものである。
【0008】
この発明に係る半導体装置の製造方法は、
特許請求の範囲の請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
モールド樹脂を加熱しながらモールド樹脂の上面の中央部を加圧し、加圧範囲をパワーモジュールの外周に向けて徐々に拡大させて、加圧によりシート接着用凹部から溶出した熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と、熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを窪みに誘導するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る半導体装置は、
熱伝導性絶縁樹脂シートが、ヒートシンクまたはパワーモジュールの少なくともいずか一方に設けられたシート接着用凹部に封入され、
シート接着用凹部の周縁と相対するモールド樹脂の面には、パワーモジュールの上方に向けてモールド樹脂内に突出して、熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを内包する窪みが備えられたものなので、
熱伝導性絶縁樹脂シート内のボイドが低減され、良好な電機絶縁性を確保することができる。
【0010】
この発明に係る半導体装置の製造方法は、
モールド樹脂を加熱しながらモールド樹脂の上面の中央部を加圧し、加圧範囲をパワーモジュールの外周に向けて徐々に拡大させて、加圧によりシート接着用凹部から溶出した熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と、熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを窪みに誘導するものなので、
熱伝導性絶縁樹脂シート内のボイドを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る熱伝導性樹脂シートの設置圧着工程を示すフロー図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るパワーモジュールと加圧前の電力用半導体装置の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置の加圧中における断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置のシート接着用凹部の構成例である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る電力用半導体装置と電力用半導体装置の加圧中における断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置の断面図と、モールド樹脂の平面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置の加圧時における断面の連続図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る電力用半導体装置の断面図とモールド樹脂の平面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係る電力用半導体装置の断面図である。
【図11】この発明の実施の形態6に係る熱伝導性絶縁樹脂シートの要部拡大図である。
【図12】この発明の実施の形態7に係る電力用半導体装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図を用いて説明する。
図1は、電力用半導体装置100の断面図である。
半導体素子1は、例えばインバータやコンバータ等を構成するIGBT素子のような発熱性の電力用素子である。
半導体素子1の上面と主端子2aは半田3aにより半田付けされており、半導体素子1の下面と金属配線部材4は半田3bにより半田付けされている。
また、主端子2bと金属配線部材4も半田3cにより半田付けされている。
【0013】
半導体素子1と、主端子2a、2bと、金属配線部材4の下面以外とをモールド樹脂5で封止してパワーモジュール20を形成する。
主端子2a、2bの半田付けされていない側の端部はモールド樹脂5の外側に突出している。
また、金属配線部材4の下面は上述の通りモールド樹脂5に覆われていないため、パワーモジュール20より露出しており、この露出した金属配線部材4の下面に熱伝導性絶縁樹脂シート30を介してヒートシンク7を接着して、電力用半導体装置100を形成する。
【0014】
発熱性の電力用素子で構成された半導体素子1は、高電圧、高電流という環境下で使用されるために、非常に高温になる。半導体素子1の正常な動作を確保するためにはこの発生した熱を逃がし、半導体素子1の適切な動作温度を維持する必要がある。
そこで、金属配線部材4は、主端子2aと接続されて半導体素子1に通電をするという電極としての役割のみならず、ヒートスプレッダとしての役割をも兼ねている。
すなわち、半導体素子1にて発生した熱は、半田3bを介して金属配線部材4の全体に広がり、金属配線部材4に接着されている放熱板であるヒートシンク7に広範囲に渡って放熱されることで、電力用半導体装置100の放熱性が向上するのである。
【0015】
このように、金属配線部材4は2つの役割をもつので、金属配線部材4の材料としては、熱伝導性および電気伝導性の良いものが好ましく、例えば銅や、半田付け可能なようにニッケルメッキされたアルミニウム等を用いるとよい。勿論、これらの材料に限らず、熱および電気を伝導できる材料であれば、他の材料を用いてもよい。
一方、ヒートシンク7は、アルミニウムや銅など導電性の金属で構成されており、ヒートシンク7内を流れる導電性溶液を通じて、ラジエータなど周辺部品と接続されて冷却を行うという水冷方式が一般的に用いられている。
【0016】
次に金属配線部材4とヒートシンク7間に熱伝導性絶縁樹脂シート30を設置する理由について説明する。
例えばパワーモジュール20がインバータである場合に、金属配線部材4には直流電圧または交流電圧が印加されるため、パワーモジュール20の動作中に、金属配線部材4には電位が発生する。
このため、金属配線部材4とヒートシンク7とは電気的に絶縁分離される必要がある。
もしこの絶縁分離が十分でないと、ヒートシンク7は周辺部材とも接続されているので、最悪の場合に半導体素子1がヒートシンク7を介してアースと短絡し、半導体素子1が故障する可能性もある。
そのため、金属配線部材4とヒートシンク7間に、シート接着用凹部51という凹み部を設け、ここに熱を伝達する特性を有するだけでなく電気絶縁性も有する熱伝導性絶縁樹脂シート30を封入することで、金属配線部材4とヒートシンク7を絶縁分離している。
【0017】
以下、電力用半導体装置100の製造工程における熱伝導性絶縁樹脂シート30の設置、圧着方法の概要について、フロー図を基に説明する。
図2は、熱伝導性絶縁樹脂シート30の設置、圧着工程の概要を示すフロー図である。
まずヒートシンク7を設置し(S1)、その上に熱伝導性絶縁樹脂シート30を載置(S2)する。
そして熱伝導性絶縁樹脂シート30が、シート接着用凹部51内に配置されるように上方からパワーモジュール20を重ねて(S3)、電力用半導体装置100を組み立てる。
【0018】
ここで、真空式ヒータープレス装置8(以降、プレス装置8という)で電力用半導体装置100全体を減圧下におき(S4)、電力用半導体装置100の加熱を開始する(S5)。
熱伝導性絶縁樹脂シート30として用いる熱硬化性樹脂は、固体状態時に加熱すると最初は軟化するという性質を有する。加熱によって熱伝導性絶縁樹脂シート30が軟化した後に、金属配線部材4の中央部の鉛直上方付近のパワーモジュール20の上面を、プレス装置8で鉛直下方に加圧する(S6)。
【0019】
パワーモジュール20の上部を鉛直下方に加圧することで、その圧力が軟化された熱伝導性絶縁樹脂シート30に加わり、ボイドが潰しこまれる。
また、加熱された熱硬化性樹脂は加圧されると流動性を持つので、流動化した熱伝導性絶縁樹脂シート30内をボイドが移動して、熱伝導性絶縁樹脂シート30の外へボイドが押し出される(詳細は後述)。
ここで、電力用半導体装置100全体を減圧下におく理由は、減圧下でパワーモジュール20の上部に圧力を加えることで、熱伝導性絶縁樹脂シート30とヒートシンク7の界面、および熱伝導性絶縁樹脂シート30と金属配線部材4の界面に挟みこまれた空気層を低圧膨張させて、排出させやすくするためである。
【0020】
軟化した熱伝導性絶縁樹脂シート30は、シート接着用凹部51の形状に沿いながらシート接着用凹部51内に熱伝導性絶縁樹脂層を形成して圧着され、更なる加熱の継続により最後は硬化する。
熱伝導性絶縁樹脂シート30が完全に硬化した後に、パワーモジュール20の加圧を停止し(S7)、続いて電力用半導体装置100の加熱を停止し(S8)、最後にプレス装置8の減圧を停止して(S9)、熱伝導性絶縁樹脂シート30の設置圧着工程を終了する(S10)。
【0021】
好ましくは、加熱ステップ(S5)において、減圧下での加熱を一定時間以上保持するとよい。こうすることで硬化前の熱伝導性絶縁樹脂シート30に内包された溶剤や水分が気化し、排出されやすくなり、熱伝導性絶縁樹脂シート30の絶縁性が高まるからである。
本来この溶剤を使用しないことがボイド対策として有効であるが、この溶剤は熱伝導性絶縁樹脂シート30の加工を容易にするものであり、溶剤がないと熱伝導性絶縁樹脂シート30は粘度が高過ぎて加工性が非常に悪くなる。
【0022】
以下、電力用半導体装置100を加圧する工程(S6)およびこの工程(S6)にてボイドを潰しこむ作用について図を用いて詳しく説明する。
図3(a)は、熱伝導性絶縁樹脂シート30を取り付ける前のパワーモジュール20の断面図である。
図3(b)は、ヒートシンク7の上に載置された熱伝導性絶縁樹脂シート30が、シート接着用凹部51内にくるように上方からパワーモジュール20を重ねた図である。
図4は、プレス装置8により加圧される電力用半導体装置100の断面図である。
【0023】
図3(b)に示すように、シート接着用凹部51の厚み(d1)よりも大きい厚み(d2)を持つ熱伝導性絶縁樹脂シート30を用いる。
このように熱伝導性絶縁樹脂シート30の厚み(d2)を、シート接着用凹部51の厚み(d1)より大きくして、熱伝導性絶縁樹脂シート30の体積をシート接着用凹部51の体積よりも大きくする理由は、熱伝導性絶縁樹脂シート30内の溶剤が加熱により気化して押し出されるために、熱伝導性絶縁樹脂シート30の硬化後の体積が加熱加圧前に比べて約10%減少するからである。
シート接着用凹部51の厚み(d1)は絶縁性を確保するために必要な厚みであり、熱伝導性絶縁樹脂シート30がこの厚みを確保できるように、予め体積の大きな熱伝導性絶縁樹脂シート30を用意している。
【0024】
シート接着用凹部51の周縁と相対するモールド樹脂5の面には、パワーモジュール20の上方に向けて突出する窪みである余剰吸収部52が設けられている。
図1、図4に示すように、余剰吸収部52は、シート接着用凹部51内に収まりきらない熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分を収容する場所である。
この余剰吸収部52を設けていないと、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分が、パワーモジュール20とヒートシンク7との接触部分(P1)に不規則にはみ出し、熱伝導性絶縁樹脂シート30を封止するシート接着用凹部51が閉鎖された空間とならず、熱伝導性絶縁樹脂シート30に圧力を加えたとしても、この圧力が開放されてしまい、ボイド9を潰す作用が不十分となる。
一旦、熱伝導性絶縁樹脂シート30がはみ出る流路が発生すると、パワーモジュール20への加圧により、更にシート接着用凹部51内から熱伝導性絶縁樹脂が流出し、結果として熱伝導性絶縁樹脂シート30の厚みが非常に薄くなってしまい、所望の絶縁性が得られなくなる。
【0025】
そこで、シート接着用凹部51の体積より大きな体積を持つ熱伝導性絶縁樹脂シート30を用い、余剰吸収部52を設けておくことによって、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分を余剰吸収部52に排出させる。
パワーモジュール20を鉛直下方に加圧することで、パワーモジュール20とヒートシンク7との隙間(d1とd2の差による隙間)は閉じられ、余剰分は余剰吸収部52に収納される。
こうして、パワーモジュール20とヒートシンク7の接触部分(P1)に余剰分がはみ出すことなく、シート接着用凹部51を余すところなく熱伝導性絶縁樹脂で充填することができるので、熱伝導性絶縁樹脂層の十分な厚みが確保される。
こうして、金属配線部材4とヒートシンク7間の高い絶縁性を確保させつつ、ボイド9を確実に潰し込むという効果を得ることができる。
【0026】
熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分は、余剰吸収部52の体積内で確実に収まるように設定する必要がある。
シート接着用凹部51の表面に存在する微少な凹凸や、熱伝導性絶縁樹脂シート30の圧縮率の変化によりこの余剰分は多少増減するものの、この増減分の最大想定値で余剰分を想定することによって、余剰分は余剰吸収部52からあふれない。
また、シート接着用凹部51の体積および余剰吸収部52の体積を合算して得られる空間の体積を、硬化前の熱伝導性絶縁樹脂シート30の体積と同等程度に設定する方法を用いても、余剰分の体積が余剰吸収部52の体積を超えることはない。
こうして、熱伝導性絶縁樹脂シート30の余剰分が余剰吸収部52から流出することを防止することができる。
【0027】
次にパワーモジュール20の上面加圧時における、ボイド9の熱伝導性絶縁樹脂シート30外への押し出し作用について説明する。
図3(b)に示すように、加圧前の熱伝導性絶縁樹脂シート30には多数のボイド9が内包されている。ここでパワーモジュール20の上面を、プレス装置8で鉛直下方に加圧する。この加圧によりパワーモジュール20に、鉛直下方にしなる弓形状の反りが発生する。(図4参照)
熱伝導性絶縁樹脂シート30内のボイド9は、加熱及び加圧により軟化して流動化した熱伝導性絶縁樹脂シート30の浮力を受けて熱伝導性絶縁樹脂シート30内の高い位置、すなわちシート接着用凹部51の外周側にかけて徐々に移動し、最後は熱伝導性絶縁樹脂シート30から排出されて余剰吸収部52に収納される。(図1)
【0028】
ここで絶縁性が最も懸念される箇所は、図1に太線A部として示す金属配線部材4とヒートシンク7間の沿面放電距離である。
ヒートシンク7と金属配線部材4間の電位差により生じる等電位線を考えた時に、金属配線部材4とヒートシンク7の間の熱伝導性絶縁樹脂シート30にはきわめて大きい勾配の電界が生じるが、余剰吸収部52はこの領域から離して配置されており、沿面放電距離も十分に長くなるため余剰吸収部52において絶縁破壊は起きにくい。
【0029】
図5は、シート接着用凹部51をヒートシンク7側に設置する場合の1例である。
図5に示すようにシート接着用凹部51をパワーモジュール20側でなくヒートシンク7の上面に設ける場合でも、また、図示しないがシート接着用凹部51をパワーモジュール20とヒートシンク7の上面の両方に設置して互いを連通させても同様の効果を得られることは勿論のことである。
【0030】
熱伝導性絶縁樹脂シート30の材料としては、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂のような熱硬化性樹脂が好ましい。
熱伝導性絶縁樹脂シート30にはフィラーを含浸させることで、熱伝導率を格段に向上させることができるが、そのような材料としては、アルミナ、窒化ボロン、窒化シリコン、窒化アルミなどがある。フィラーの含有率としては、体積%で50%〜80%程度が好ましい。
すなわち、フィラーの含有率が50%以下であると熱伝導率が低く、80%以上、特に90%以上では、ボロボロと脆い物質となり、容易に成形できなくなる。
また、80%以上では、適切なフィラー粒径分布の配合比を選択しないと、十分な混ぜ込みができずにボイド9が残りやすい。
また、熱伝導性絶縁樹脂シート30の厚みとしては、およそ100μmから500μm程度が好ましい。
【0031】
この発明の実施の形態1の半導体装置および当該半導体装置の製造方法によると、熱伝導性絶縁樹脂を封入するシート接着用凹部51の周縁に余剰吸収部52を設けることで、シート接着用凹部51を余すところなく熱伝導性絶縁樹脂シート30で充填することができ、また絶縁性能を低下させる要因となる熱伝導性絶縁樹脂シート30内のボイド9を潰しこみ、あるいは絶縁性能に影響のない場所にボイド9を誘導することができるので、高い電気絶縁性を持つ熱伝導性絶縁樹脂シートを有する半導体装置を提供することができる。
【0032】
また、ボイド9が残らないことからシート接着用凹部51の厚みを小さくすることができ、結果、パワーモジュール20を小型化できる。これにより、パワーモジュール20やヒートシンク7を覆うケース部材の重量や材料使用量を削減できるという効果も得られる。
また、部留まりが向上するので、電力用半導体装置100に使用される半導体素子、半田接合剤などの環境負荷物質の使用量を低減することが可能となる。
【0033】
なお、本発明は電力用半導体装置以外の用途に使用する半導体装置に利用可能であることは言うまでもない。
【0034】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図6は、この発明の実施の形態2に係る電力用半導体装置200の断面図である。
パワーモジュール220は、その厚みが外周部から中央部に向かうに従って次第に薄くなるように、モールド樹脂205の上面が形成されている。
このモールド樹脂205の上面は緩やかな曲面で形成されており、その曲面の底部は金属配線部材4の中心部の鉛直方向上方にある。
【0035】
図6(b)に示すように、プレス装置8にてこのような曲面を持つモールド樹脂205の上面を加圧すると、曲面の底を中心として鉛直下方にしなる弓形状の反りが発生し、その反りは実施の形態1に比べて促進されている。
このようにパワーモジュール220の上面に曲面を持たせて加圧時の弓形状の反りを促進することで、余剰吸収部52へボイド9を排出する効果が高まる。
またこの曲面は、変曲点を持たない滑らかな面で構成されていると好ましい。
【0036】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図7(a)は、この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置300の断面図である。
図7(b)は、この発明の実施の形態3に係るモールド樹脂305の平面図である。
図8(a)、(b)は、この発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置300の加圧時における断面の連続図である。
パワーモジュール320は、モールド樹脂305の上面であって且つ金属配線部材4の中央近傍の鉛直上方の位置に、直線状の溝である直線状溝部360を有している。
このパワーモジュール320の加圧方法は、図8(a)(b)に示すように、まず、プレス装置308でモールド樹脂の上面の中央部を鉛直下方に加圧し、加圧範囲をパワーモジュール320の外周に向けて徐々に拡大させる。
プレス装置308の加圧面は、加圧後のパワーモジュール320の撓み傾斜相当となるように中心から外周に傾斜を持たせた形状となっている。
【0037】
この加圧方法によると、加圧の初期段階でモールド樹脂305が反り、次第にプレス装置308の下面がモールド樹脂の上面全体に接触するので、パワーモジュール320を安定的に加圧して撓ませることができる。
このようにパワーモジュール320の平面部とプレス装置308の平面部とで加圧が進められることから、加圧工程におけるプロセス条件が安定する。
特に複数の半導体装置を加圧する場合に、各半導体装置の加圧におけるプロセス条件を一致させることができるので、各半導体装置で同等のボイド低減効果を得ることが可能になる。
【0038】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図9(a)は、この発明の実施の形態4に係る電力用半導体装置400の断面図である。
図9(b)は、この発明の実施の形態4に係るモールド樹脂405部の平面図である。
パワーモジュール420は、その上面に十字形の溝である十字状溝部461を有している。
この十字状溝部461を設けることによりパワーモジュール420の更なる反りを、パワーモジュール420の四方に渡って発生させることができ、余剰吸収部52へボイドを誘導する効果が高まる。
【0039】
実施の形態5.
以下、この発明の実施の形態5を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図10は、この発明の実施の形態5に係る電力用半導体装置500の断面図である。
シート接着用凹部51上に2個の半導体素子1が設置されている。
【0040】
一般に電力用半導体装置が自動車のモーター駆動用である場合には、小型化、軽量化が自動車の基本性能である燃費に直結するため、重要な要素となってくる。
またレイアウト設計において半導体素子が小型であると、設計の自由度が増すと共に、基板が小型化できるなど、利点が多いことから半導体の小型化要求は高い。
こうして複数の半導体素子1を近づけて配置して小型化された電力用半導体装置500においても、複数の半導体素子1の下にシート接着用凹部51と余剰吸収部52を設けることで、同様のボイドの低減効果を得ることができる。
【0041】
実施の形態6.
以下、この発明の実施の形態6を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図11は、この発明の実施の形態6に係る熱伝導性絶縁樹脂シート630の要部拡大図である。
熱伝導性絶縁樹脂シート630の周縁の厚みは中央部の厚みよりも大きくなるように形成されている。
一般に、パワーモジュールを構成する金属配線部材およびモールド樹脂の線膨張率は、ヒートシンクとの線膨張率と差が生じる。
例えば金属配線部材が銅の場合は、モールド樹脂を銅の線膨張率に合わせて、パワーモジュール全体として、ほぼ銅の線膨張率(16*10^−6/℃)と等価となるように調節して、パワーモジュールの半田3a、3b、3cの信頼性を確保する。
しかしヒートシンクはアルミニウム(23*10^−6/℃)等を通常使用するために、パワーモジュールとヒートシンクに線膨張率の差が生じるのである。
【0042】
この線膨張率の差によって、熱伝導性樹脂シート630の周縁(図中太線B部)からモールド樹脂の剥離が進展し、剥離が電位の発生する金属配線部材まで到達した場合には、金属配線部材とヒートシンクが通電する可能性がある
そのため、パワーモジュールとヒートシンクとの間に挟まれる熱伝導性絶縁樹脂シート630によって、その線膨張率差を吸収する必要がある。
ここでパワーモジュールとヒートシンクの線膨張率差に起因する熱応力が最も大きくかかる熱伝導性絶縁樹脂シート630の場所は、熱伝導性絶縁樹脂シート630の周縁である。
よって、熱伝導性絶縁樹脂シート630の周縁の厚みを大きくすることで、熱伝導性絶縁樹脂シート630にかかる熱応力を緩和して、モールド樹脂5の剥離進展を抑制することができる。
【0043】
実施の形態7.
以下、この発明の実施の形態7を実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。
図12は、この発明の実施の形態7に係る電力用半導体装置の要部拡大図である。
モールド樹脂5の外周のヒートシンク7との接触部に、水分進入を防止する樹脂である水分進入抑制樹脂770を設けている。
これによりパワーモジュールの側面とヒートシンク7との接触部が隙間のない状態となり、高湿度環境下において熱伝導性絶縁樹脂シート30が封止されているシート接着用凹部51への水分の浸入が抑止でき、絶縁性低下を抑制出来る。
ここでの水分進入抑制樹脂770の材料としては、ポリイミド系樹脂などが好ましい。
【0044】
なお、以上で述べた実施の形態1乃至実施の形態7は、それぞれ組み合わせて使用してもよい。
また技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以上の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体素子、4 金属配線部材、5,205,305,405 モールド樹脂、
7 ヒートシンク、8,308 プレス装置、9 ボイド、
20,220,320,420,520 パワーモジュール、
30,630 熱伝導性絶縁樹脂シート、51 シート接着用凹部、52 余剰吸収部、100,200,300,400,500 電力用半導体装置、360 直線状溝部、
461 十字状溝部、770 水分進入抑制樹脂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が固着される金属配線部材と、
前記半導体素子と前記金属配線部材の下面以外とを封止してパワーモジュールを形成するモールド樹脂と、
前記金属配線部材の下面に熱伝導性絶縁樹脂シートを介して接着されるヒートシンクとを備えた半導体装置において、
前記熱伝導性絶縁樹脂シートは、前記ヒートシンクまたは前記パワーモジュールの少なくともいずか一方に設けられたシート接着用凹部に封入され、
前記シート接着用凹部の周縁と相対する前記モールド樹脂の面は、前記パワーモジュールの上方に向けて前記モールド樹脂内に突出して、前記熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と前記熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを内包する窪みを備えた半導体装置。
【請求項2】
前記パワーモジュールの厚みは外周部から中央部に向かうに従って薄くなるように前記モールド樹脂の上面を形成する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記モールド樹脂の上面であって且つ前記金属配線部材の中央近傍の鉛直上方の位置に、直線状の溝を設けた請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記直線状の溝は十字形である請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記パワーモジュールを構成する前記半導体素子を複数個配置した請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記熱伝導性絶縁樹脂シートの外周部側の厚みを中央部側の厚みに比べて大きくなるように形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記モールド樹脂の外周の前記ヒートシンクとの接触部に、水分進入抑制樹脂を配置した請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記モールド樹脂を加熱しながら前記モールド樹脂の上面の中央部を加圧し、加圧範囲を前記パワーモジュールの外周に向けて徐々に拡大させて、加圧により前記シート接着用凹部から溶出した前記熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と、前記熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを前記窪みに誘導する半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が固着される金属配線部材と、
前記半導体素子と前記金属配線部材の下面以外とを封止してパワーモジュールを形成するモールド樹脂と、
前記金属配線部材の下面に熱伝導性絶縁樹脂シートを介して接着されるヒートシンクとを備えた半導体装置において、
前記熱伝導性絶縁樹脂シートは、前記ヒートシンクまたは前記パワーモジュールの少なくともいずか一方に設けられたシート接着用凹部に封入され、
前記シート接着用凹部の周縁と相対する前記モールド樹脂の面は、前記パワーモジュールの上方に向けて前記モールド樹脂内に突出して、前記熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と前記熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを内包する窪みを備えた半導体装置。
【請求項2】
前記パワーモジュールの厚みは外周部から中央部に向かうに従って薄くなるように前記モールド樹脂の上面を形成する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記モールド樹脂の上面であって且つ前記金属配線部材の中央近傍の鉛直上方の位置に、直線状の溝を設けた請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記直線状の溝は十字形である請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記パワーモジュールを構成する前記半導体素子を複数個配置した請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記熱伝導性絶縁樹脂シートの外周部側の厚みを中央部側の厚みに比べて大きくなるように形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記モールド樹脂の外周の前記ヒートシンクとの接触部に、水分進入抑制樹脂を配置した請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記モールド樹脂を加熱しながら前記モールド樹脂の上面の中央部を加圧し、加圧範囲を前記パワーモジュールの外周に向けて徐々に拡大させて、加圧により前記シート接着用凹部から溶出した前記熱伝導性絶縁樹脂シートの余剰分と、前記熱伝導性絶縁樹脂シートから押し出されたボイドとを前記窪みに誘導する半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−65648(P2013−65648A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202706(P2011−202706)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]