説明

半導体製造装置の洗浄装置

【課題】従来に比べて効率良く洗浄作業を行うことができ、かつ、高い洗浄効果を得ることのできる半導体製造装置の洗浄装置を提供する。
【解決手段】半導体製造装置の洗浄装置100は、純水スチームを生成する純水スチーム生成容器2と、純水スチームを被洗浄部位へ供給する供給口10と、純水スチーム生成容器2と供給口10とを接続する純水スチーム供給ライン9と、純水を貯留する純水タンク5と、純水タンク5と純水スチーム生成容器2とを接続する純水供給ライン4と、純水供給ライン4に介挿された純水供給ポンプ6と、純水スチーム生成容器2内の純水の量を検知する重量センサ3と、重量センサ3からの信号に応じて純水供給ポンプ6を駆動し、純水スチーム生成容器2内に純水タンク5内の純水を供給する制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等を処理して半導体装置を製造するための半導体製造装置を洗浄するための半導体製造装置の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板を処理して半導体装置を製造するための半導体製造装置が使用されている。このような半導体製造装置、例えば、成膜装置やエッチング装置では、処理により半導体ウエハ等を処理する処理チャンバ内等が堆積物やパーティクル等によって汚染される場合がある。このため、メンテナンス時等において半導体製造装置の洗浄が行われている。
【0003】
上記のような半導体製造装置の洗浄は、エタノール等を用いた不繊布による拭き取り、乾拭き等により、作業員が手作業で行う場合が多い。また、部材を取り外して洗浄する場合は、エアジェット洗浄や超音波洗浄により洗浄を行う方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−273078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したとおり、従来においては、不繊布による拭き取り等によって半導体製造装置の洗浄を行っている。しかしながら、このような洗浄方法では、手作業で拭き取りを行うため、作業者によって洗浄効果にばらつきが生じ、定量的な洗浄効果を得ることが難しいという課題があった。また、装置内の手が届かない場所や、微小な場所、凹凸がある場所等については、洗浄が不十分となり、洗浄直後にも拘わらずパーティクルが発生する場合があるという課題があった。さらに、拭き取りによっては2次汚染が発生する場合があり、人が直接堆積物等に触れるため危険であるという課題もあった。
【0005】
また、超音波洗浄やエアジェット洗浄によって洗浄を行う場合は、部材を取り外して行わなければならず、洗浄作業に時間と手間を要するという課題がある。そこで、本発明者等は、純水から純水スチームを生成し、純水スチームを用いて半導体製造装置の洗浄を行う半導体製造装置の洗浄装置の開発を従来から進めてきた。しかしながら、このような純水スチームを用いて半導体製造装置の洗浄を行う半導体製造装置の洗浄装置では、純水スチーム生成容器で発生させた高温、高圧の純水スチームを用いる。このため、純水スチーム生成容器内の純水がなくなると、純水スチーム生成容器が100℃以下に冷えるのを待って、純水を給水しなければならず、また、給水した純水が所定温度まで加熱されて所定の高温、高圧の純水スチームが発生するまで待たなければならず、洗浄作業に時間的間隔が空いてしまうという問題があった。また、連続的に洗浄可能な時間も数分程度に限られるため、洗浄作業の効率が悪くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、従来に比べて効率良く洗浄作業を行うことができ、かつ、高い洗浄効果を得ることのできる半導体製造装置の洗浄装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の半導体製造装置の洗浄装置は、半導体製造装置の洗浄装置であって、純水から純水スチームを生成する純水スチーム生成容器と、純水スチームを被洗浄部位へ供給する供給口と、前記純水スチーム生成容器と前記供給口とを接続する純水スチーム供給ラインと、純水を貯留する純水タンクと、前記純水タンクと前記純水スチーム生成容器とを接続する純水供給ラインと、前記純水供給ラインに介挿され、前記純水タンクから前記スチーム生成容器に純水を供給するための純水供給ポンプと、前記純水スチーム生成容器内の純水の量を検知するためのセンサと、前記センサからの信号に応じて前記純水供給ポンプを駆動し、前記純水スチーム生成容器内に前記純水タンク内の純水を供給して、当該純水スチーム生成容器から連続的に純水スチームを発生可能とする制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記供給口の純水スチームを供給するための開口の径が1〜1.5mmとされていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1又は2記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記センサが前記純水スチーム生成容器の重量を検出する重量センサであることを特徴とする。
【0010】
請求項4の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1〜3いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記純水供給ラインの一部が、前記純水スチーム生成容器の外側に巻回されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1〜4いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記純水供給ライン又は前記純水タンク内の純水を予め加熱する抵抗加熱式ヒータを具備した予備加熱機構を有することを特徴とする。
【0012】
請求項6の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1〜5いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記純水スチーム生成容器は、純水との接触面が樹脂コーティング又は電解研磨によって構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1〜6いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記供給ラインは、純水スチームとの接触面が樹脂材料によって構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1〜7いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記供給ラインは、導電性を有し、電気的に接地されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1〜8いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記供給口の周囲に設けられ、洗浄に使用された使用済みスチームを被洗浄部位から回収する回収口と、使用済みスチームを凝縮させて回収する回収容器と、前記回収口と前記回収容器とを接続する回収ラインとを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項9項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記供給ライン及び前記回収ラインは、前記供給口側及び前記回収口側の一部において二重配管構造であることを特徴とする。
【0017】
請求項11の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項9又は10記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、前記回収ラインは、導電性を有し、電気的に接地されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来に比べて効率良く洗浄作業を行うことができ、かつ、高い洗浄効果を得ることのできる半導体製造装置の洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の半導体製造装置の洗浄装置の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置の構成を示すものである。同図に示すように、半導体製造装置の洗浄装置100は、内部に機器を収容するためのケース1を具備している。このケース1内には、純水(超純水を含む)から純水スチームを生成する純水スチーム生成容器2が設けられている。
【0021】
上記純水スチーム生成容器2は、高温、高圧の純水スチームを収容するため、例えばステンレス鋼等の金属から構成されている。また、金属イオン等の不純物の混入を防ぐため、純水スチーム生成容器2内の純水及び純水スチームとの接触面は、樹脂によって構成されている。このように、純水及び純水スチームとの接触面を、樹脂によって構成する方法としては、純水スチーム生成容器2内に樹脂のコーティングを行う方法を使用できる。このような樹脂としては、例えば、PEEK(商品名(ポリエーテルエーテルケトン))、PFA(パーフルオロアルコキシルアルカン)等を使用することができる。その他の方法として電解研磨や化学研磨を用いてもよい。
【0022】
上記純水スチーム生成容器2内には、ヒータ2aが設けられている。このヒータ2aは、純水スチーム生成容器2内の下半部に位置するよう、純水スチーム生成容器2の底部近傍に配置されている。ヒータ2aとしては、容量が1000〜2500W程度(本実施形態では2100W)のものを使用することが好ましく、高温、例えば150℃程度に発熱し、純水スチーム生成容器2内の純水から純水スチームを発生させる。また、純水スチーム生成容器2には、純水スチーム生成容器2内の純水の量を検知するためのセンサとして、重量センサ3が設けられている。さらに、純水スチーム生成容器2には、純水スチーム生成容器2内の圧力を検出するための圧力センサ18が設けられている。なお、純水スチーム生成容器2の底部には、ドレン配管が設けられており、ドレン配管には、ドレン弁16が介挿されている。また、純水スチーム生成容器2の天井部には、純水スチーム生成容器2内部の圧力が所定値以上となった時に作動するリリーフ弁17が介挿されたリリーフ用配管が接続されている。
【0023】
上記純水スチーム生成容器2には、純水供給ライン4を介して純水タンク5が接続されており、この純水タンク5から純水供給ライン4を通って純水スチーム生成容器2内に純水が供給されるようになっている。純水供給ライン4には、純水供給ポンプ6、フィルタ7、開閉弁8が介挿されている。
【0024】
また、純水スチーム生成容器2の上部には、純水スチーム供給ライン9の一端が接続されており、この純水スチーム供給ライン9の他端には、純水スチームを被洗浄部位へ供給するための供給口10が設けられている。この純水スチーム供給ライン9には、純水スチームの供給・停止を制御するための開閉弁15が介挿されている。
【0025】
上記純水スチーム供給ライン9は、可撓性を有する円環状の部材から構成されており、その内部を純水スチームが流通するようになっている。また、金属イオン等の不純物の混入を防ぐため、この純水スチーム供給ライン9内の純水スチームとの接触面は、樹脂製(本実施形態ではPFA製)とされている。本実施形態では、純水スチーム供給ライン9は、樹脂製の側壁部の外側に、導電性部材(例えば導電性PFA)からなる導電層を配置した構造となっており、この導電層は、接地電位に接続されている。
【0026】
上記導電層は、純水スチーム供給ライン9内を流通する純水スチームによって発生した静電気によって純水スチーム供給ライン9が帯電することを防止するためのものである。本実施形態では、純水スチーム供給ライン9を構成するチューブとしてナフロンPFA−NEチューブ(商品名:ニチアス社製)を使用した。このような帯電防止対策がなされていないと、静電気の帯電により、後述する制御部20に誤作動が起きたり、作業員が触れた際に静電気の放電が起きる等の問題が生じる。なお、本実施形態では、前述した純水供給ライン4についても、帯電防止対策がなされているナフロンPFA−NEチューブ(商品名:ニチアス社製)を使用した。
【0027】
図1に示すように、上記供給口10の周囲には、供給口10より先端側に突出するように回収口11が設けられている。この回収口11は、被洗浄部に供給され、洗浄に使用された使用済みスチームを回収するとともに、被洗浄部から洗浄により剥離した剥離物を回収するためのものである。この回収口11の部分は、純水スチーム供給ライン9の外側に回収ライン12が設けられた2重管構造となっている。この回収ライン12は、可撓性を有する材料から構成されており、2重管構造の部分においてもフレキシブルに屈曲できるようになっている。また、使用済みスチームの回収過程においても、静電気の蓄積がないように、回収ライン12は導電性材料から構成されている。本実施形態では、回収ライン7を構成するチューブとしてTACダクトAS(商品名:東拓工業社製)を使用した。
【0028】
上記回収口11は、純水スチームを被洗浄部位へ供給しつつ洗浄を実施する際に、被洗浄部位の形状に応じてその形がある程度変形するよう、可撓性を有する樹脂製の円筒状部材から構成されている。また、この回収口11の部分は、洗浄対象である半導体製造装置の処理チャンバ内等に直接接触する部位であるので、処理チャンバ等に傷を付けないよう柔軟で、かつ、不純物による汚染やパーティクルによる汚染を防止することのできる材料から構成する必要がある。
【0029】
上記回収ライン12の終端は、ケース1内に設けられた回収容器13に接続されている。この回収容器13は、回収された洗浄後の純水スチームを凝縮させて水に戻し、この水を貯留するためのものである。この回収容器13には、純水スチームを回収するための吸引源となるバキュームクリーナ14が接続されている。
【0030】
バキュームクリーナ14の入り口側には、入口側フィルタ14aが設けられており、洗浄によって除去されたパーティクル等がバキュームクリーナ14側に進入することを防止するようになっている。また、バキュームクリーナ14の出口側には、出口側フィルタ14bが設けられており、パーティクル等がクリーンルーム内にまき散らされることを防止するようになっている。なお、バキュームクリーナ14の出口側の排気口14cは、クリーンルームの排気経路に接続可能となっている。
【0031】
また、ケース1の上部には、CPU、メモリー等を具備した前述した制御部20が設けられており、上記した各部の動作を制御するようになっている。
【0032】
上記構成の半導体製造装置の洗浄装置100を用いて半導体製造装置の洗浄を行う場合、予め、純水タンク5内に純水を導入し、純水タンク5から純水スチーム生成容器2に純水を供給し、ヒータ2aで加熱することによって、純水から純水スチームを生成し、この純水スチームが、純水スチーム生成容器2内に蓄積された状態としておく。この時、純水スチーム生成容器2内の圧力が圧力センサ18によって検出され、純水スチーム生成容器2内の圧力が所定圧力となるように、ヒータ2aに対する電力の供給が、制御部20によって制御される。すなわち、ヒータ2aによる加熱によって、純水スチーム生成容器2内に十分な量の純水スチームが発生し、純水スチーム生成容器2内の圧力が所定の圧力に達した時点で、ヒータ2aに対する通電を停止、或いはこの状態を維持できるような僅かな電力の供給に切り替えられる。また、後述するように、純水スチームが噴射され、純水スチーム生成容器2内の圧力が所定の圧力より低下した場合には、ヒータ2aに大きな電力が供給され、純水の加熱を促進して純水スチームを発生させる。
【0033】
次に、回収口11を半導体製造装置の被洗浄部位に押圧した状態で、開閉弁15を開き、純水スチーム生成容器2からの純水スチームの供給を行う。この時、純水スチーム生成容器2内で発生し、純水スチーム生成容器2内に蓄積されていた純水スチームは、純水スチーム生成容器2内から純水スチーム供給ライン9を通って純水スチーム供給口10に供給され、純水スチーム供給口10から被洗浄部に向けて供給される。この純水スチームの噴射により、被洗浄部に付着した堆積物、パーティクル等が除去される。
【0034】
そして、これらの被洗浄部から剥離した堆積物、パーティクル等は、被洗浄部から回収口11により洗浄に使用された使用済みスチームとともに回収される。そして、使用済みスチーム及び被洗浄部から剥離した堆積物、パーティクル等は、回収ライン12により、回収口11から回収容器13内に回収される。
【0035】
回収容器13内に回収された使用済みスチームは、この回収容器13内で冷却され凝縮される。そして、凝縮した水は、回収容器13内に貯留される。また、被洗浄部から剥離した堆積物、パーティクル等も、この回収容器13内に溜められる。
【0036】
上記のように洗浄作業を行うと、純水スチーム生成容器2内の純水が消費され、減少する。この純水スチーム生成容器2内の純水の減少は、重量センサ3によって純水スチーム生成容器2の重量の減少として検知することができる。制御部20は、図2のフローチャートに示すように、重量センサ3からの検出信号に基づいて、純水スチーム生成容器2内の純水の水位が所定の下限レベル以下に低下したか否かを監視する(201)。そして、純水の水位が下限レベル以下になると、純水供給ポンプ6を駆動するとともに、開閉弁8を開いて、純水タンク5から純水スチーム生成容器2内に純水の供給を開始する(202)。そして、純水スチーム生成容器2内の純水の水位が所定の上限レベルに到達した時点で(202)、開閉弁8を閉じ、純水供給ポンプ6を停止する。このようにして、純水スチーム生成容器2内の純水の量(水位)を一定のレベルに保つ。これによって、連続的に純水スチームを供給することが可能となり、連続的な洗浄作業を行えるようになっている。なお、本実施形態では、純水スチーム生成容器2の容量が2リットルとなっており、この純水スチーム生成容器2内の純水の量が約1リットルとなるように設定されている。
【0037】
ここで、純水スチーム生成容器2内から放出される純水スチームによって純水スチーム生成容器2内から放出される熱量等が、ヒータ2aによって供給される熱量より多くなると、たとえ純水スチーム生成容器2内の純水の量を一定のレベルに保ったとしても、連続的に純水スチームを供給することはできない。すなわち、新たな純水の供給により、純水スチーム生成容器2内の温度及び圧力が低下し、純水スチームを連続的に放出できなくなってしまうからである。
【0038】
図3は、上記の熱量を考察する際のモデルを示すもので、図3示すdが純水スチーム供給口10のノズル径(開口径)(m)、Aがノズル面積(開口面積)(m2)、Pがノズル2次側圧力(Pa)、mが蒸気の質量流量(kg/s)、P0がノズル1次側圧力(Pa)、ρが純水スチーム生成容器2内の蒸気密度(P0/RT)、Tが温度(K)、aが音速(m/s)である。この場合、κを比熱比(Cp/Cv)(定圧比熱/定量比熱)、Cv={1/(κ−1)}R、Rをガス定数(J/kg・K)として、蒸気の質量流量mは、
m=ρ・a・A{2/(κ−1)[(P/P0)2/κ−(P/P0)κ+1/κ]}1/2
として表すことができる。
【0039】
また、純水スチーム生成容器2内の圧力を維持しつつ蒸発させるための熱量は、Lを蒸発潜熱(J/kg)として、
W=m×L=(7×10-4)×(2.13×106
=1500W
=1500×K=2100W
となる。但し、純水スチーム生成容器2内の水蒸気が0.3MPa、ノズル径が1.4mmの時の質量流量が7×10-4(kg/s)、Kは実験結果からの補正係数で1.4である。
【0040】
図4は、横軸を純水スチーム供給口10のノズル径(mm)、縦軸を純水スチームを連続的に供給するために必要となるヒータ容量(W)とし、これらの関係を示したものである。同図に示すように、純水スチーム供給口10のノズル径が1mm程度であれば、ヒータ容量は1000W程度でよいが、3mmの場合10000W程度必要となってしまう。そして、実用的には、ヒータ容量が2500W以上となるヒータを所定の純水スチーム生成容器2の容積内で構成することは困難である。したがって、純水スチーム供給口10のノズル径は、1.5mm以下とすることが好ましい。
【0041】
純水スチームを連続的に噴射するためには、ノズル径とヒータ容量が一定の関係を有することが必要になる。図4に示すように、ノズル径に対する適正なヒータ容量にすることで、効率的かつ効果的な純水スチームの連続噴射が可能となる。仮に、ノズル径1mmに対してヒータ容量2000W以上で構成すれば、スチームの連続噴射は可能だが、無駄に大きなヒータを付けることになる。
【0042】
一方、洗浄効果の観点からは、純水スチーム供給口10のノズル径がある程度大きい方が、洗浄効果が高くなる傾向がある。図5は、純水スチーム供給口10のノズル径が1mm、3mm、7mmの場合の洗浄効果の相異を調べた結果を示すものである。すなわち、半導体製造装置のパーツを模擬したサンプル(表面に陽極酸化処理を施したアルミニウム製の板材(30mm×30mm×2mm))に堆積したC48ガスのプラズマに起因する堆積物(デポ)を除去するための洗浄を、上記実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置100により、純水スチーム供給口10のノズル径を1mm、3mm、7mmに変更して行った場合の洗浄効果を比較して示すものである。洗浄効果の比較は、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)による分析結果によって示している。同図において、(a)は堆積物の堆積前、(b)は堆積物の堆積直後、(c)はノズル径を1mmとした場合、(d)はノズル径を3mmとした場合、(e)はノズル径を7mmとした場合の結果を示している。また、図5の上部は、純水スチーム温度が130℃の場合、下部は純水スチーム温度が150℃の場合を示している。
【0043】
図5(a)に示されるように、堆積物の堆積前は、OのピークとAlのピークが高く、Cのピーク、Fのピーク等は低い。また、(b)に示されるように、堆積物の堆積後は、表面が堆積物で覆われるため、OのピークとAlのピークは低くなり、Cのピーク、Fのピークは高くなる。(c)(d)に示されるように、1mm、3mmノズル径で純水スチームによる洗浄を行った場合、(b)に比べてCのピークは低く、Fのピークはほとんどなく、Oのピーク、Alのピークは高くなり、堆積物の堆積前の(a)と略同一の状態となっていた。一方で7mmノズル径ではFのピークは(b)に比べて低くはなっているもののFは完全に洗浄できているとはいえない。このように、純水スチーム供給口10のノズル径が1〜3mmの範囲であれば、略同様な良好な洗浄効果が得られた。一方、純水スチーム供給口10のノズル径が1mm未満となると、7mm同様に洗浄効果の低下がみられた。したがって、純水スチーム供給口10のノズル径は1mm以上3mm以下とすることが好ましい。
【0044】
以上の説明から明らかなように、ヒータの構成が可能な範囲、かつ、洗浄効果が十分得られる範囲で、純水スチームの連続噴射を可能とするためには、純水スチーム供給口10のノズル径を1〜1.5mmの範囲とすることが好ましい。
【0045】
上記のように、純水スチーム生成容器2内から連続的に純水スチームを発生させるためには、純水タンク5から純水スチーム生成容器2内に供給される純水を、予めある程度加熱しておくことも有効である。このため、図6及び図6の要部を拡大して示す図7に示すように、純水供給ライン4の一部を純水スチーム生成容器2の周囲に巻回した構成としてもよい。なお、図7において、30は、純水スチーム生成容器2及び純水供給ライン4の周囲を囲む断熱材を示している。
【0046】
純水スチーム生成容器2の外径が約165mmで、純水スチーム生成容器2内の純水の液量が1.5リットル、純水スチーム生成容器2の内側温度が143.6℃(0.3MpaG)の時、外側の温度は、約133℃程度となっている。この場合、純水供給ライン4にステンレス配管(内径2.17mm、外径3.17mm、肉厚0.5mm、熱伝導率0.2W/(m・K))を用いた場合、1周巻き付け長さは約528.8mm、1周巻き付け時の伝熱面積は5263.3mm2、1周巻き付け時の体積は、約0.002リットルとなる。この場合、初期水温Tm0の水を目標温度TmLにするためのチューブ長さLは、
L=Wcp(TmL−Tm0)/(πDq)
q=Q/A
で与えられる。
但し、Wは純水の流量(7.0×10-4kg/s)
Cpは低圧比熱(4.19×103J/kg・K((20+95)/2=60℃における水の物性値))
Dは管の内径(0.0022m)
qは平均熱流束(32160.38W/m2
Qはタンク表面からの伝熱量(170.45W(チューブ1周分))
Aは伝熱面積(0.0053m(チューブ1周分))
である。この場合、20℃の純水を95℃とするためには、L=0.99となり、
0.99÷0.5288=1.9(巻き)
となる。すなわち、約2巻き程度純水スチーム生成容器2の外側に巻回すれば、純水供給ライン4内の純水を20℃から95℃程度まで予め加熱することができる。
【0047】
また、図6に示すように、純水供給ライン4に当該純水供給ライン4内の純水を予備加熱するための抵抗加熱式ヒータを具備する予備加熱機構31を設けてもよい。なお、このような純水の予備加熱用の予備加熱機構は、純水タンク5に設けてもよく、純水供給ライン4と純水タンク5の双方に設けてもよい。
【0048】
図8は、石英製の半導体製造装置のパーツに付着したパーティクルを除去するための洗浄を、上記実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置100によって行った場合と、アルコールを用いた不繊布による拭き取りによって行った場合の洗浄効果を比較して示すものである。同図において、縦軸は石英製の半導体製造装置のパーツに付着していた単位面積当たりのパーティクル数を示しており、実線Aは半導体製造装置の洗浄装置100を使用した場合、点線Bはアルコールを用いた不繊布による拭き取りによって行った場合の結果を示している。洗浄は合計5回行い、洗浄毎にパーツに付着しているパーティクル数をカウントした。同図に示すように、半導体製造装置の洗浄装置100を使用した場合、拭き取りによる場合に比べて1桁程度パーティクル数を減少させることができた。
【0049】
図9は、半導体製造装置のパーツを模擬したサンプル(表面に陽極酸化処理を施したアルミニウム製の板材(30mm×30mm×2mm))に堆積したC48ガスのプラズマに起因する堆積物(デポ)を除去するための洗浄を、上記実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置100によって行った場合と、アルコールを用いた不繊布による拭き取りによって行った場合の洗浄効果を示すものである。洗浄効果の比較は、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)による分析結果によって示している。同図において、(a)は堆積物の堆積前、(b)は堆積物の堆積直後、(c)はアルコールを用いた不繊布による拭き取り後、(d)は上記実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置100による洗浄後の結果を示している。
【0050】
なお、アルコールを用いた不繊布による拭き取りでは、目視により堆積物が不繊布に付着しなくなるまで洗浄を行い、この時の洗浄時間は約4〜5分であった。一方、半導体製造装置の洗浄装置100による洗浄では、純水スチームの供給口5の径が3mm、純水スチーム生成容器2内の設定温度が150℃、純水スチームの供給口5とサンプルとの距離が1〜2mm、洗浄時間は30秒である。
【0051】
図9(a)に示されるように、堆積物の堆積前は、OのピークとAlのピークが高く、Cのピーク、Fのピーク等は低い。また、(b)に示されるように、堆積物の堆積後は、表面が堆積物で覆われるため、OのピークとAlのピークは低くなり、Cのピーク、Fのピークは高くなる。アルコールを用いた不繊布による拭き取りを行った場合、(c)に示されるように、(b)に比べてCのピーク、Fのピークは低く、Oのピーク、Alのピークは高くなるが、堆積物の堆積前の(a)とは明らかに相違している。
【0052】
一方、上記実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置100による純水スチームによる洗浄を行った場合、(d)に示されるように、(b)に比べてCのピーク、Fのピークは低く、Oのピーク、Alのピークは高くなり、堆積物の堆積前の(a)と略同一の状態となっていた。このように、本実施形態によれば、堆積物の除去の洗浄効果が、従来方法に比べて明らかに優れていることがわかった。また、洗浄時間も従来方法に比べて、数分の1程度と短縮することが可能で、効率的に洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体製造装置の洗浄装置の概略構成を示す図。
【図2】制御部による純水スチーム生成容器内の純水水位の制御を示すフローチャート。
【図3】連続噴射における熱量を考察する際のモデルを示す図。
【図4】ノズル径と連続噴射に必要なヒータ容量との関係を示すグラフ。
【図5】図1の半導体製造装置の洗浄装置の堆積物の洗浄効果をノズル径を変えて調べた結果を示すグラフ。
【図6】図1の半導体製造装置の洗浄装置の変形例の要部概略構成を示す図。
【図7】図6の要部概略構成を拡大して示す図。
【図8】図1の半導体製造装置の洗浄装置のダストの洗浄効果を調べた結果を示すグラフ。
【図9】図1の半導体製造装置の洗浄装置の堆積物の洗浄効果を調べた結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0054】
100……半導体製造装置の洗浄装置、1……ケース、2……純水スチーム生成容器、3……重量センサ、4……供給ライン、5……純水タンク、6……純水供給ポンプ、7……フィルタ、8……開閉弁、9……純水スチーム供給ライン、10……純水スチーム供給口、11……回収口、12……回収ライン、13……回収容器、14……バキュームクリーナ、20……制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置の洗浄装置であって、
純水から純水スチームを生成する純水スチーム生成容器と、
純水スチームを被洗浄部位へ供給する供給口と、
前記純水スチーム生成容器と前記供給口とを接続する純水スチーム供給ラインと、
純水を貯留する純水タンクと、
前記純水タンクと前記純水スチーム生成容器とを接続する純水供給ラインと、
前記純水供給ラインに介挿され、前記純水タンクから前記スチーム生成容器に純水を供給するための純水供給ポンプと、
前記純水スチーム生成容器内の純水の量を検知するためのセンサと、
前記センサからの信号に応じて前記純水供給ポンプを駆動し、前記純水スチーム生成容器内に前記純水タンク内の純水を供給して、当該純水スチーム生成容器から連続的に純水スチームを発生可能とする制御部と
を備えることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記供給口の純水スチームを供給するための開口の径が1〜1.5mmとされていることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記センサが前記純水スチーム生成容器の重量を検出する重量センサであることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記純水供給ラインの一部が、前記純水スチーム生成容器の外側に巻回されていることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記純水供給ライン又は前記純水タンク内の純水を予め加熱する抵抗加熱式ヒータを具備した予備加熱機構を有することを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記純水スチーム生成容器は、純水との接触面が樹脂コーティング又は電解研磨によって構成されていることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記供給ラインは、純水スチームとの接触面が樹脂材質によって構成されていることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記供給ラインは、導電性を有し、電気的に接地されていることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記供給口の周囲に設けられ、洗浄に使用された使用済みスチームを被洗浄部位から回収する回収口と、
使用済みスチームを凝縮させて回収する回収容器と、
前記回収口と前記回収容器とを接続する回収ラインと
を備えることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項10】
請求項9項記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記供給ライン及び前記回収ラインは、前記供給口側及び前記回収口側の一部において二重配管構造であることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の半導体製造装置の洗浄装置であって、
前記回収ラインは、導電性を有し、電気的に接地されていることを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129966(P2010−129966A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306451(P2008−306451)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】