説明

半導体電力変換装置、及びこれを用いたX線高電圧装置、フィラメント加熱装置、X線CT装置、X線診断装置

【課題】 インバータ回路などで構成される半導体電力変換回路を冷却する冷却装置に異常が発生し、回路部品が過熱状態になる恐れがある場合でも、動作中の回路機能を低減させることなく動作を継続し、また低コストで実施可能な半導体電力変換装置を提供する。
【解決手段】 複数の半導体素子をからなる半導体電力変換回路と、前記半導体電力変換回路を放熱する放熱構造体と、前記放熱構造体を冷却する冷却装置と、一部の前記半導体素子の近傍に設置する前記冷却装置の数よりも少ない温度測定箇所を有する温度監視回路と、前記半導体電力変換回路の動作を停止させるための温度閾値を複数有する電力変換制御回路と、を備える半導体電力変換装置において、冷却装置の異状を発生した場合、前記電力変換制御回路により温度閾値を下げて動作を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電力変換装置及びそれを用いたX線高電圧装置に関し、特に半導体電力変換装置に用いる半導体素子の過熱保護に関する。
【背景技術】
【0002】
動作中の回路装置において、その回路装置の一部の回路部品、あるいは回路部品を冷却する冷却ファンに異常が発生し、回路部品が過熱状態により故障する恐れがある場合、回路動作は継続したままで、過熱状態になる恐れがある回路部品にかかる負荷を、回路装置によって軽減させることで故障を防ぐユーザビリティを向上させた装置はあった。
【0003】
インバータ方式による電力変換装置に用いられる複数の半導体素子の過熱保護方法として、複数の半導体素子又はその近傍の温度を複数の温度センサで検出し、検出した温度、もしくは温度上昇率の最も高い値が、あらかじめ決められた温度、もしくは温度上昇率を超えた場合、電力変換装置にかかる負荷を低減し回路動作を継続する方法はあった(特許文献1参照)。また、X線CT装置の投影データ収集部を冷却する複数の冷却用ファンの1つが故障した場合、投影データ収集部の動作クロックを低減しX線CT装置の動作を継続する方法はあった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-194094号公報
【特許文献2】特開2009−56099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、共に、過熱状態で故障する恐れがある回路部品の負荷を軽減させることで故障を防ぐため、動作中の回路装置の機能は低減されている。また、特許文献1では、複数の半導体素子、又はその近傍ごとに温度センサを使用しているため、温度センサと温度検出回路によるコスト及び回路構成が大きくなることが懸念される。
【0006】
そこで本発明の目的は、冷却装置に異常が発生し回路部品が過熱状態になる恐れがある場合でも、動作中の回路の機能を低減させることなく動作を継続し、また低コストで実施可能な半導体電力変換装置、及びこれを用いたX線高電圧装置、フィラメント加熱装置、X線CT装置及びX線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の半導体素子を有する半導体電力変換回路と前記半導体電力変換回路を放熱する放熱構造体と、前記放熱構造体を冷却する少なくとも2つ以上の冷却装置と、前記冷却装置の異常を監視する冷却装置監視回路と、一部の前記半導体素子の近傍に設置する前記冷却装置の数よりも少ない数の温度センサを有する温度監視回路と、前記半導体電力変換回路の動作を停止させるための温度閾値を複数有し、且つ前記複数の温度閾値の中から一つの温度閾値を選択し設定する電力変換制御回路と、を備えた半導体電力変換装置において、前記冷却装置監視回路により、前記冷却装置の異常を検出した場合、前記電力変換制御回路により選択し設定する前記温度閾値を下げ、前記半導体電力変換回路の動作を継続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、冷却装置に異常が発生し半導体電力変換回路が過熱状態になる恐れがある場合でも、動作中の半導体電力変換回路の機能を低減させることなく動作を継続し、且つ、冷却装置の数に対し温度センサの数を少なく出来るため低コストで実施可能な半導体電力変換装置及び半導体電力変換装置を使用したX線高電圧装置、フィラメント加熱装置と、そのX線高電圧装置、フィラメント加熱装置を用いたX線CT装置とX線診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の半導体電力変換装置の構成例であり冷却装置が2つある場合の概略図
【図2】図1に示す半導体電力変換回路と放熱構造体と冷却装置と温度センサの実装配置図
【図3】図2に示す温度センサ部及び、その左右方向の放熱構造体表面の温度分布の特性図
【図4】図2において冷却装置f2が故障し停止した場合の放熱構造体表面の温度分布の特性図
【図5】本発明の半導体電力変換装置の構成例であり冷却装置が4つある場合の概略図
【図6】図5の半導体電力変換回路と放熱構造体と冷却装置と温度センサの実装配置図
【図7】図6に示す温度センサ部及び、その左右方向の放熱構造体表面の温度分布の特性図
【図8】図6において冷却装置f6又はf3とf6が故障し停止した場合の放熱構造体表面の温度分布の特性図
【図9】図6に示す冷却装置f5又はf6が故障し停止した場合の放熱構造体表面の温度分布の特性図
【図10】本発明の半導体電力変換装置を用いたX線高電圧装置とX線管の概略図
【図11】本発明の半導体電力変換装置を用いたフィラメント加熱装置とX線管の概略図
【図12】本発明のX線高電圧装置を用いたX線CT装置の概略図
【図13】本発明の実施例6を説明するためのフローチャート図
【図14】本発明の実施例6を説明するためのフローチャート図
【図15】本発明のX線高電圧装置を用いたX線診断装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明の半導体電力変換装置、及びこれを用いたX線高電圧装置、X線CT装置及びX線診断装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例について図1〜図4を用いて説明する。図1は、本発明の半導体電力変換装置の構成例であり冷却装置が2つある場合の概略図である。図2は、図1に示す半導体電力変換回路と放熱構造体と冷却装置と温度センサの実装配置図である。図3は、図2に示す温度センサ部及び、その左右方向の放熱構造体表面の温度分布の特性図である。図4は、図2において冷却装置f2が故障し停止した場合の放熱構造体表面の温度分布の特性図である。
【0012】
図1に示すように、半導体電力変換装置100は半導体電力変換回路101と放熱構造体102と冷却装置監視回路103と温度監視回路104と電力変換制御回路105と温度センサt1と冷却装置f1、f2と、を備えて構成される。
【0013】
半導体電力変換回路101は半導体素子s1〜s4を備えており、本実施例の場合、半導体素子s1〜s4はIGBTであり、半導体電力変換回路101はIGBTで構成されたインバータ回路である。半導体素子s1〜s4は他にFETなどでもよく、半導体電力変換回路101はコンバータ回路などでもよい。半導体素子s1〜s4は半導体電力変換回路101において各々同等程度、或いは同等の電力消費、及び発熱量を有する。放熱構造体102は半導体素子s1〜s4の放熱を行なうために半導体素子s1〜s4に密着し設置する。本実施例の場合、放熱構造体102はヒートシンクである。放熱構造体102は他にアルミブロックなどでもよい。
【0014】
冷却装置監視回路103は放熱構造体102の放熱を行なうために放熱構造体102に設置される冷却装置f1、f2の動作を監視する回路であり、冷却装置f1、f2の異常を検出するとその情報を電力変換制御回路105に通知する。本実施例の場合、冷却装置f1、f2は冷却ファンである。
【0015】
温度監視回路104は半導体素子s2、s3近傍の放熱構造体102の表面に密着し設置される温度センサt1より検出される温度をモニターし、その値を電力変換制御回路105に通知する。本実施例の場合、温度センサt1はサーミスタである。温度センサt1は他に熱電対などでもよい。温度センサの数は1つ以上冷却装置数未満であり、本実施例の場合、2つの冷却装置に対し温度センサは1つである。
【0016】
電力変換制御回路105は、半導体電力変換回路101の制御を行なうと共に、冷却装置監視回路103から送られてくる冷却装置f1、f2の動作状態の情報と、温度監視回路104から送られてくる温度センサt1の温度情報より、半導体電力変換回路101が過熱により故障となる前に停止させるあらかじめ決められた複数ある温度閾値と比較し、必要に応じて半導体電力変換回路101を停止する。電力変換制御回路105は、半導体電力変換回路101を停止する温度閾値を冷却装置の動作状態によって変更する。
【0017】
図3に示す温度分布の特性図は横軸に、図2の実装配置図において、冷却装置f1、f2を設置している側からみた場合の冷却装置f1、f2と半導体素子s1〜s4と温度センサt1との位置関係を示し、縦軸に温度を示している。縦軸上に示したTth1は冷却装置f1、f2に異常がない場合の温度閾値であり、本実施例で示す半導体電力変換装置100の第1の温度閾値である。温度センサt1により検出する温度が温度閾値Tth1以上となった場合、電力変換制御回路105により半導体電力変換回路101を停止させる。
【0018】
Lt0、Lt1、Lt2はそれぞれ、放熱構造体102の表面の温度を示した温度特性であり、半導体電力変換回路101の動作時間の経過に伴いLt0からLt1、Lt2の順で放熱構造体102の表面温度が上昇する様子を示している。tp0、tp1、tp2、は放熱構造体102の表面を温度センサt1で検出した検出温度であり、温度特性Lt0、Lt1、Lt2において、それぞれが最も温度の高い箇所となっている。温度センサt1は半導体素子s1〜s4のほぼ中央にあり、熱が集中する位置に配置している。温度センサt1の設置箇所は、半導体電力変換回路101の動作中において放熱構造体102の表面温度が最も高温となる、もしくは最も高温となる位置に近い位置に設置することが望ましい。
【0019】
図4に示すLtb1〜Ltb3は図3で示した温度特性Lt2において冷却装置f2が故障し停止した場合の温度特性を示している。冷却装置f2が停止したことにより放熱構造体102の表面温度分布に偏りが発生する。半導体電力変換回路101の連続動作時間の経過に伴いLtb1、Ltb2、Ltb3の順で半導体素子s3、s4近辺の温度が上昇し、Ltb2の段階で、Ltb2の中で最も温度が高い箇所が、温度閾値Tth1に到達している。Ltb2において温度センサt1による検出温度はtpb1である。
【0020】
検出温度tpb1は温度閾値Tth1より低いため温度閾値をTth1のままにしておくと半導体素子s3、s4が過熱により故障する。そのため、検出温度tpb1を第2の温度閾値Tth2として電力変換制御回路105にあらかじめ登録しておき、冷却装置f2が故障し停止した場合、電力変換制御回路105により、温度閾値の設定をTth1からTth2に変更する。本実施例では冷却装置f2が停止した場合の例を示したが、冷却装置f1が故障し停止した場合も同様に、温度閾値は電力変換制御回路105によってTth1からTth2に変更する。
【0021】
また、本実施例では特に詳説していないが、冷却装置f1、f2が同時に停止した場合は、放熱構造体102の表面温度分布に偏りが発生しないため温度閾値Tth1のまま設定を変更する必要はない。しかし、冷却装置が全て停止した状態になるので半導体素子s1〜s4の温度が急上昇する懸念がある。また、冷却装置f1、f2が同時に停止しない限り、放熱構造体102の表面温度分布に偏りが発生するため、このような場合は温度閾値をTth1からTth2に変更することが望ましい。
【0022】
以上説明した様に、本実施例の半導体電力変換装置100は一方の冷却装置が故障し停止した場合においても、温度閾値を変更することで半導体電力変換回路101を即停止することなく、温度センサt1による検出温度が変更後の温度閾値に到達するまで、半導体電力変換回路101の機能を制限することなく動作を継続することができる。また、冷却装置の数に対し温度センサの数を少なく出来るため低コストで実施することが出来る。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例について図5〜図8を用いて説明する。
図5は、本発明の半導体電力変換装置の構成例であり冷却装置が4つある場合の概略図である。図6は、図5に示す半導体電力変換回路と放熱構造体と冷却装置と温度センサの実装配置図である。図7は、図6に示す温度センサ部及び、その左右方向の放熱構造体表面の温度分布の特性図である。図8は、図6において冷却装置f6又はf3とf6が故障し停止した場合の放熱構造体表面の温度分布の特性図である。
【0024】
実施例1と共通部分については一部説明を省略する。
図5に示すように、半導体電力変換装置500は半導体電力変換回路501と放熱構造体502と冷却装置監視回路503と温度監視回路504と電力変換制御回路505と温度センサt2と冷却装置f3〜f6とを備えて構成される。図1に示した半導体電力変換装置に対し、冷却装置の数が2倍の4つになっている。また、半導体電力変換回路503を構成する半導体素子数も4つから8つになっている。半導体素子s5〜s12の電力消費、及び発熱量は、各々同等程度、或いは同等である。
【0025】
図7に示す温度分布の特性図は図6に示した冷却装置が4つになった場合の温度分布を示した特性図である。図3に示した特性図と同様に図7の横軸には冷却装置と半導体素子と温度センサの位置関係を示し、縦軸には温度を示している。縦軸上に示したTth3は冷却装置f3〜f6に異常がない場合の温度閾値である。温度閾値Tth3以上で半導体電力変換回路501を停止させる。Lt3は、放熱構造体502の表面温度を示した温度特性である。tp3は、放熱構造体502の表面を温度センサt2で検出した検出温度であり、温度特性Lt3において最も温度の高い箇所である。温度センサt2の設置箇所は、放熱構造体502の表面温度が最も高温となる、もしくは最も高温となる位置に近い場所に設置することが望ましい。
【0026】
図8に示すLtb4及びLtb5は、図7で示した温度特性Lt3において、それぞれ冷却装置f6のみが故障し停止した場合と、冷却装置f3とf6の2つが故障し停止した場合の温度特性をそれぞれ示している。Ltb4、Ltb5共に温度が最も高い箇所で温度閾値Tth3に到達している。tb4において温度装置t2による検出温度はtpb4であり、Ltb5においては、温度装置t2による検出温度はtpb5であり、冷却装置が1つ故障した場合の検出温度tpb4より冷却装置が2つ故障した場合の検出温度tpb5の方が高い。この為、電力変換制御回路505によって設定する温度閾値は冷却装置の故障数に応じて変更し、故障数が多い程、温度閾値を高くする。本実施例の場合、図8より冷却装置f6のみが故障した場合の検出温度tpb4を温度閾値Tth4、冷却装置f3、f6の2つが故障した場合の検出温度tpb5を温度閾値Tth5として電力変換制御回路505にあらかじめ登録しておき、冷却装置の故障状況に応じて、電力変換制御回路505により、温度閾値の設定をTth3からTth4もしくはTth5に変更する。
【0027】
以上説明した様に、本実施例の半導体電力変換装置は冷却装置の故障数に応じて温度閾値を変更することで、冷却装置の故障数に対し、より適切に半導体電力変換回路501の動作を継続することができる。
【実施例3】
【0028】
次に、本発明の実施例について図9を用いて説明する。
図9は、図6に示す冷却装置f5又はf6が故障し停止した場合の放熱構造体表面の温度分布の特性図である。実施例2と共通部分については一部説明を省略する。
【0029】
図9に示す温度分布の特性図では、図8で示した冷却装置f6が故障した場合のLtb4に対し、より温度センサt2に近い位置に配置される冷却装置f5が故障し停止した場合の温度特性をLtb6として示している。Ltb4、Ltb6共に冷却装置の故障数は1つだが、温度センサt2と故障した冷却装置の位置関係によって温度センサt2で検出する検出温度に差が生じる。温度センサt2による検出温度はLtb4とLtb6おいて、それぞれtpb4とtpb6であり、温度センサt2から遠い冷却装置が故障した場合の検出温度tpb4より、温度センサt2から近い冷却装置が故障した場合の検出温度tpb6の方が高い。
【0030】
この為、電力変換制御回路505によって設定する温度閾値は温度センサと故障した冷却装置との配置位置の距離に応じて変更し、その距離が近い程、温度閾値を高くする。本実施例の場合、図9より温度センサt2から遠い配置の冷却装置f6が故障した場合の検出温度tpb4を温度閾値Tth4、温度センサt2から近い配置の冷却装置f5が故障した場合の検出温度tpb6を温度閾値Tth6として電力変換制御回路505にあらかじめ登録しておき、冷却装置の故障状況に応じて、電力変換制御回路505により、温度閾値の設定をTth3からTth4もしくはTth6に変更する。
【0031】
以上説明した様に、本実施例の半導体電力変換装置は温度センサと故障した冷却装置との配置位置の距離に応じて温度閾値を変更することで、故障した冷却装置の配置位置に対し、より適切に半導体電力変換回路501の動作を継続することができる。
【実施例4】
【0032】
次に、本発明の実施例について図10を用いて説明する。
図10に示すように、X線高電圧装置1008は、直流電源1001と、直流電源1001と接続される半導体電力変換装置1002と、半導体電力変換装置1002と接続される高電圧変圧器1003と、高電圧変圧器1003と接続される整流器1004と、整流器1004と接続される平滑コンデンサ1005と、平滑コンデンサ1005と接続される管電圧検出器1006と、管電圧検出器1006と半導体電力変換装置1002と、に接続される管電圧フィードバック制御回路1007と、を備えて構成され、X線管1009を負荷として接続している。半導体電力変換装置1002は図1記載の半導体電力変換装置100において半導体電力変換回路101がX線高電圧装置用のインバータ回路で構成された装置である。
【0033】
次に上記構成要素の機能につき各々簡単に説明する。直流電源1001 によって発生する直流電圧は半導体電力変換装置1002により高周波交流電圧に変換し、変換した高周波交流電圧は高電圧変圧器1003の一次巻線に入力し、高電圧変圧器1003の二次巻線から昇圧された交流高電圧として出力する。高電圧変圧器1003から出力した交流高電圧は整流器1004により直流電圧に整流する。整流した直流電圧は平滑コンデンサ1005によって平滑し、平滑した直流電圧をX線管1009に供給する。また、管電圧検出器1006は平滑した直流電圧を監視し、所望の電圧がX線管1009に供給できていなければ、管電圧フィードバック制御回路1007を通じて半導体電力変換装置1002にフィードバック制御をかける。
【0034】
以上説明した様に、本実施例の半導体電力変換装置はX線管に電力を供給するX線高電圧装置の一部として使用することができる。そして、冷却装置が故障し停止した場合でも、半導体電力変換装置の動作を継続することができるので、安定してX線管に電力を供給することができる。
【実施例5】
【0035】
次に、本発明の実施例について図11を用いて説明する。
実施例4と共通部分については一部説明を省略する。図11に示すように、フィラメント加熱装置1104は、直流電源1101と、直流電源1101と接続される半導体電力変換装置1102と、フィラメント加熱変圧器1103と、を備えて構成され、X線管1009のフィラメント1105を負荷として接続している。半導体電力変換装置1102は図1記載の半導体電力変換装置100において半導体電力変換回路101がフィラメント加熱装置用のインバータ回路で構成された装置である。
【0036】
次に上記構成要素の機能につき各々簡単に説明する。直流電源1101によって発生する直流電圧は半導体電力変換装置1102により高周波交流電圧に変換する。変換した高周波交流電圧はフィラメント加熱変圧器1103により変圧し交流電圧を出力する。フィラメント加熱変圧器1103から出力した交流電圧をフィラメント1105に供給する。
【0037】
以上説明した様に、本実施例の半導体電力変換装置はX線管のフィラメントに電力を供給するフィラメント加熱装置の一部として使用することができる。そして、冷却装置が故障し停止した場合でも、半導体電力変換装置の動作を継続することができるので、安定してX線管のフィラメントに電力を供給することができる。
【実施例6】
【0038】
次に、本発明の実施例について図12を用いて説明する。
図12は、本発明のX線高電圧装置1008を用いたX線CT装置の概略図である。X線CT装置1200はスキャンガントリ部1201と操作卓1211とを備える。スキャンガントリ部1201は、X線管1009と、回転円盤1202と、コリメータ1203と、X線検出器1206と、データ収集装置1207と、寝台1205と、ガントリ制御装置1208と、寝台制御装置1209と、X線高電圧装置1008と、を備えている。X線管1009は寝台1205上に載置された被検体にX線を照射する装置である。コリメータ1203はX線管1009から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である 。
【0039】
回転円盤1202は、寝台1205上に載置された被検体が入る開口部1204を備えるとともに、X線管1009とX線検出器1206を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。X線検出器1206は、X線管1009と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤1202の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤1202の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。
【0040】
データ収集装置1207は、X線検出器1206で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置1208は回転円盤1202の回転を制御する装置である。寝台制御装置1209は、寝台1205の上下前後動を制御する装置である。X線高電圧装置1008は、X線管1009に入力される電力を制御する装置である。操作卓1211は、入力装置1212と、画像演算装置1213と、表示装置1216と、記憶装置1214と、システム制御装置1215とを備えている。入力装置1212は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置である。
【0041】
画像演算装置1213は、データ収集装置1207から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。表示装置1216は、画像演算装置1213で作成されたCT画像を表示する装置である。記憶装置1214は、データ収集装置1207で収集したデータ及び画像演算装置1213で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置である。システム制御装置1215は、これらの装置及びガントリ制御装置1208と寝台制御装置1209とX線高電圧装置1008を制御する装置である。
【0042】
入力装置1212から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線高電圧装置1008がX線管1009に入力される電力を制御することにより、X線管1009は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器1206は、X線管1009から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤1202はガントリ制御装置1208により制御され、入力装置1212から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台1205は寝台制御装置1209によって制御され、入力装置1212から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
【0043】
X線管1009からのX線照射とX線検出器1206による透過X線分布の計測が回転円盤1202の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置1213に送信される。画像演算装置1213は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置1216に表示される。
【0044】
次に本発明のX線CT装置に使用しているX線高電圧装置1008内の冷却装置に異常が発生した場合の動作を図13、図14を用いて2通りの方法を示す。図13、図14は本実施例を説明するためのフローチャート図である。
【0045】
図13のフローチャートにおいて、まず、ステップS1301では、放熱構造体102の表面温度を温度センサt1より検出する。検出した温度Tpは温度監視回路104によりモニターし、電力変換制御回路105に送る。次に、ステップS1302では、電力変換制御回路105により、あらかじめ登録した温度閾値Tth1、Tth2と検出温度Tpで比較を行う。Tth1は冷却装置に異常がなかった場合の温度閾値であり、Tth2は冷却装置に異常があった場合の温度閾値である。検出温度Tpが温度閾値Tth2未満の場合はステップS1301に戻り、温度閾値Tth1以上の場合はステップS1303に進み、温度閾値Tth2以上Tth1未満の場合はステップS1304に進む。次に、ステップS1303では、電力変換制御回路105によって半導体電力変換回路101を停止する。次に、ステップS1304では、検出温度Tpの情報は電力変換制御回路105からシステム制御装置1215に伝えられ、システム制御装置1215は表示装置1216に検出温度Tpが温度閾値Tth2以上であることを警告表示する。次に、ステップS1305では、冷却装置監視回路103により冷却装置f1、f2の状態を監視し、その状態を電力変換制御回路105に伝える。冷却装置に異常がなかった場合はステップS1301に戻り、冷却装置に異常があった場合はステップS1303に進む。
【0046】
次に、図14のフローチャートにおいて図13のフローチャートと異なるところを説明する。
ステップS1401では、冷却装置監視回路103により冷却装置f1、f2の状態を監視し、その状態を電力変換制御回路105に伝える。冷却装置に異常がなかった場合はステップS1404に進み、冷却装置に異常があった場合はステップS1402に進む。ステップS1402では、冷却装置の状態に関する情報は電力変換制御回路105からシステム制御装置1215に伝えられ、システム制御装置1215は表示装置1216に冷却装置が異常であることを警告表示する。ステップS1403では、電力変換制御回路105によりあらかじめ登録した温度閾値Tth2と検出温度Tpで比較を行う。検出温度Tpが温度閾値Tth2未満の場合はステップS1301に戻り、温度閾値Tth1以上の場合はステップS1303に進む。ステップS1404では、電力変換制御回路105によりあらかじめ登録した温度閾値Tth1と検出温度Tpで比較を行う。検出温度Tpが温度閾値Tth1未満の場合はステップS1405に進み、温度閾値Tth1以上の場合はステップS1303に進む。ステップS1405では、電力変換制御回路105により温度閾値Tth2と検出温度Tpで比較を行う。検出温度Tpが温度閾値Tth2未満の場合はステップS1301に戻り、温度閾値Tth2以上の場合はステップS1406に進む。ステップS1406では、システム制御装置1215により表示装置1216に検出温度Tpが温度閾値Tth2以上であることを警告表示する。
【0047】
以上説明した様に、本実施例のX線CT装置は冷却装置に異常が発生した場合でも、温度閾値を変更することでX線CT装置による撮影を即停止することなく、また機能を制限することなく動作を継続することができる。
【実施例7】
【0048】
次に、本発明の実施例について図15を用いて説明する。
図15は、本発明のX線高電圧装置1008を用いたX線診断装置1500の概略図である。X線高電圧装置1008の動作については実施例6と同様なので説明を省略する。X線診断装置1500は被検体1502を載せる天板1503と、被検体1502にX線を照射するX線管1009と、被検体1502に対するX線照射領域を設定する絞り装置1501と、X線管1009に電力供給を行なうX線高電圧装置1008と、X線管1009に対向する位置に配置され、被検体1502を透過したX線を検出するX線検出器1504と、X線検出器1504から出力されたX線信号に対して画像処理を行なう画像処理部1505と、画像処理部1505から出力されたX線画像を記憶する画像記憶部1506と、X線画像を表示する表示部1507と、上記各構成要素を制御する制御部1509と、制御部1509に対して指令を行なう操作部1510と、を備えている。X線管1009は寝台1503上に載置された被検体1502にX線を照射する装置である。絞り装置1501は、X線管1009から発生したX線を遮蔽するX線遮蔽用鉛板を複数有し、複数のX線遮蔽用鉛板をそれぞれ移動することにより、被検体1502に対するX線照射領域を決定する。X線検出器1504は、X線管1009から照射され、被検体1502を透過したX線の入射量に応じたX線信号を検出する機器である。画像処理部1505は、X線検出器1504から出力されたX線信号を画像処理し、画像処理されたX線画像データを出力する。表示部1507は、画像処理部1505から出力されたX線信号を被検体1502のX線画像として表示する。X線高電圧装置1008は、X線管1009に入力される電力を制御する装置である。
【0049】
以上説明した様に、本実施例のX線診断装置は実施例6で示したX線CT装置と同様に冷却装置に異常が発生した場合でも、温度閾値を変更することでX線診断装置による撮影を即停止することなく、また機能を制限することなく動作を継続することができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を述べたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
100、500 半導体電力変換装置、101、501 半導体電力変換回路、102、502 放熱構造体、103、503 冷却装置監視回路、104、504 温度監視回路、105、505 電力変換制御回路、s1〜s12 半導体素子、t1、t2 温度センサ、f1〜f6 冷却装置、1001、1101 直流電源、1002、1102 インバータ回路で構成された図1記載の半導体電力変換装置、1003 高電圧変圧器、1004 整流器、1005 平滑コンデンサ、1006 管電圧検出器、1007 管電圧フィードバック制御回路、1008 X線高電圧装置、1009 X線管、1103 フィラメント加熱変圧器、1104 フィラメント加熱装置、1105 フィラメント、1200 X線CT装置、1201 スキャンガントリ部、1202 回転円盤、1203 コリメータ、1204 開口部、1205 寝台、1206 X線検出器、1207 データ収集装置、1208 ガントリ制御装置、1209 寝台制御装置、1211 操作卓、1212 入力装置、1213 画像演算装置、1214 記憶装置、1215 システム制御装置、1216 表示装置、1500 X線診断装置、1501 X線照射領域を設定する絞り装置、1502 被検体、1503 天板、1504 X線検出器、1505 画像処理部、1506 画像記憶部、1507 表示部、1509 制御部、1510 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子を有する半導体電力変換回路と、前記半導体電力変換回路に付随し前記半導体電力変換回路を放熱する放熱構造体と、前記放熱構造体を冷却する2つ以上の冷却装置と、前記冷却装置の異常を監視する冷却装置監視回路と、一部の前記半導体素子の近傍に設置し前記冷却装置よりも少ない数の温度センサにより前記放熱構造体の表面温度を検出する温度監視回路と、前記半導体電力変換回路の動作を停止するための複数の温度閾値を有し、且つ前記複数の温度閾値の中から一つの温度閾値を選択し設定する電力変換制御回路と、を備える半導体電力変換装置において、前記冷却装置監視回路により、前記冷却装置の異常を検出した場合、前記電力変換制御回路により選択し設定する前記温度閾値を下げることを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において前記冷却装置監視回路により前記冷却装置の異常を検出した数に応じて、前記温度閾値を下げる幅を制御することを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項3】
請求項1において前記冷却装置監視回路により異常を検出した前記冷却装置の配置位置と前記温度センサとの距離に応じて、前記温度閾値の下げ幅を制御することを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項4】
請求項1において前記半導体電力変換回路はインバータ回路であり、直流電圧を発生する直流電源と、前記直流電源により発生する直流電圧を高周波交流電圧に変換する前記インバータ回路と、前記インバータ回路により発生する高周波交流電圧を交流高電圧に昇圧する高電圧変圧器と、前記高電圧変圧器により発生する交流高電圧を直流電圧に整流する整流器と、前記整流器により発生する直流電圧を平滑する平滑コンデンサからなることを特徴とするX線高電圧装置。
【請求項5】
請求項1において前記半導体電力変換回路はインバータ回路であり、直流電圧を発生する直流電源と、前記直流電源により発生する直流電圧を高周波交流電圧に変換する前記インバータ回路と、前記インバータ回路により発生する高周波交流電圧を変圧するフィラメント加熱変圧器からなることを特徴とするフィラメント加熱装置。
【請求項6】
被検体にX線を照射するX線管と、X線管と対向配置され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、X線検出器で検出したX線をデジタルデータとして収集するデータ収集装置と、データ収集装置から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う画像演算装置と、被検体の情報を入力するための入力装置と、を有するX線CT装置であって、前記X線管に用いるX線高電圧装置に請求項4記載のX線高電圧装置、又は、前記X線管に用いるフィラメント加熱装置に請求項5記載のフィラメント加熱装置を用いることを特徴とするX線CT装置。
【請求項7】
被検体にX線を照射するX線管と、前記X線管と対向配置され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、X線検出器で検出したX線をX線画像として表示する表示部と、を備えたX線診断装置であって、前記X線管に用いるX線高電圧装置に請求項4記載のX線高電圧装置、又は、前記X線管に用いるフィラメント加熱装置に請求項5記載のフィラメント加熱装置を用いることを特徴とするX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−24642(P2011−24642A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170676(P2009−170676)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】