単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法
【解決手段】本発明は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を形成する方法を提供する。これによれば、従来の方法に比べて、一回の蒸着工程で最終薄膜が形成されるため、工程が簡素化されて経済的になり、製造された薄膜の内部気孔が少なく、均一な表面が形成されるので、太陽電池用吸収層として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; MOCVD)工程によりI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法に関するもので、より詳細には、基板上に単一のMOCVD工程により、表面が均一でありながらも良質のI−III−VI2化合物薄膜を形成できるとともに、薄膜の製造時間の短縮によって生産性を高めることができるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、I−III−VI2族(I:Ag、Cu;III:Al、Ga、In;VI:S、Se、Te)化合物半導体は、常温大気圧下でカルコパイライト(chalcopyrite)構造を有しており、その構成元素を異ならせることによって様々な物性を示す点から、幅広い分野で応用されている。
【0003】
このようなI−III−VI2族化合物半導体は、1953年Hahn等によって初めて合成され、Goodman等によって半導体として利用可能性が提示されて以来、赤外線検出器(CuInSe2、CuInS2)をはじめとして発光ダイオード(CuInSe2、CuGaS2)、非線形光学素子(AgGaS2、AgGaSe2)及び太陽電池(CuInSe2(以下、“CIS”ともいう。)またはCuIn1−xGaxSe2(以下、“CIGS”ともいう。))などに応用されている。
【0004】
非線形光学素子に使用されるAgGaS2化合物半導体は、エネルギー帯の間隔が低温(2K)において2.72eVであり、他の半導体に比べて大きい複屈折率を有しており、0.45〜13μmの広い波長領域において高い透過率を有しており、1.8〜11μm範囲における二次調和波生成(second harmonic generation)に適合する特徴を有している。
【0005】
発光ダイオードに使用されるCuGaS2化合物半導体は、エネルギー帯の間隔が低温(2K)において2.53eVであり、p型伝導形態のみを示すので、n型伝導形態のみを示すCdSと異種接合(heterojuction)にすると効率の高い発光ダイオードを製作できるという特徴を有する。
【0006】
太陽電池に使用されるCIS化合物半導体は、常温でエネルギー帯の間隔が約1eVであり、線形光吸収係数が他の半導体に比べて10〜100倍程度大きい点から、太陽電池の吸収体として注目を浴びている。
【0007】
特に、これらのCIS系薄膜太陽電池は、既存のシリコン結晶を使用する太陽電池とは違い、10マイクロン以下の厚さに製作可能であり、長時間使用時にも安定した特性を示し、また、最近の薄膜型太陽電池の中でも最も高い19.5%のエネルギー変換効率を示
すことから、シリコン結晶質太陽電池に取って代わる低価型高効率薄膜型太陽電池として商業化可能性が非常に高いものと知られている。
【0008】
このようにI−III−VI2族化合物は様々な分野に広く利用可能ではあるものの、良質の薄膜を経済的な方法で製作し難いため、幅広く活用されていない現状にある。
【0009】
I−III−VI2族化合物単結晶を成長させる方法には、溶融法、ヨード(iodine)を用いた気相化学輸送法などがあるが、これらはいずれも実験室レベルで行われており、未だこれらの結晶は商用化されていないのが実情である。
【0010】
これまで開発されたI−III−VI2族化合物半導体薄膜の製造方法の中でCIS系薄膜を製造するための様々な方法として、米国特許4,523,051号では、真空雰囲気でそれぞれの元素を同時に蒸発させて基板に蒸着させる方法を紹介している。
しかし、このような方法は、大面積化が不可能なだけでなく、大量生産が難しいために不経済的であるという問題点があった。
【0011】
他の方法としては、米国特許第4,798,660号で、Cu−In金属薄膜をスパッタリング(sputtering)で蒸着し、H2Seをはじめとする含セレニウムガス雰囲気で加熱することでセレン化(Selenization)する方法が紹介されたことがある。
この方法は大面積化及び大量生産が可能であり、最近ではこの方法を用いた商用化が進んでいるが、良質の薄膜と多重層の薄膜を製作できないなどの問題点があった。
その他にも、電着法(Electrodeposition)、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy; MBE)などの方法が提示されているが、これらは、良質の薄膜を得ることがてきない、または、得られるといっても不経済的なため商用化には不適であった。
【0012】
そこで、最近では、良質のCIS系を含むI−III−VI2族化合物半導体薄膜を大量製造する目的で、既存半導体工程で広く使われている有機金属化学気相蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; 以下、“MOCVD”という。)を使用している。
【0013】
これと関連して、本発明の出願人は、韓国登録特許第495924号及び第495925号で、適切な前駆体を使用するMOCVD方法により所要の当量比を有するCuInSe2薄膜のようなI−III−VI2化合物の薄膜を形成できるようにした技術を先に出願して登録を受けたことがある。
これらの技術は、まず、Mo基板上にIn−Se前駆体を用いてInSe薄膜を形成し、ここに、Cuを蒸着してCu2Se薄膜に変換させた後、再びInSeソースを供給してCuInSe2薄膜を完成するものである。
このような薄膜形成方法は、工程段階が比較的単純であり、容易に化学当量比に近い良質の薄膜を製作できる方法であるが、工程過程でIn元素のような高価のIII族元素を余計に過剰消耗するという短所がある。
【0014】
上記の問題点を解決するために、本発明者は、韓国特許出願第2006−55064号で、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体を有機金属化学気相蒸着法で蒸着させることでIII−VIまたはIII2−VI3化合物薄膜を形成した後、I族金属を含む前駆体を有機金属化学気相蒸着法で蒸着させることでI族、III族、VI族で構成された薄膜を形成した後、VI族元素含有ガス雰囲気の下に熱処理する、または、VI族元素を含む前駆体を有機金属化学気相蒸着法で添加させることでI−III−VI2化合物薄膜を形成する方法を紹介したことがある。
【0015】
このような方法は、Inのような高価なIII族元素の余分の消耗を防ぎながらも、化学当量比に近い組成比を有する良質のI−III−VI2化合物の薄膜を製造できるため、経済的且つ効率的であり、よって、特に、太陽電池用光吸収層として用いられるCIS系薄膜の製造に非常に有用な効果を奏する。
【0016】
しかしながら、多段階の薄膜形成工程を経て最終薄膜を形成するこの種の薄膜製造方法は、全体工程時間が長く、表面が均一でなく、且つ成長膜の内部に気孔ができるという短所がある。
CIGS薄膜が均一によく成長できない理由についてより詳細に説明すると、次の通りである。
CISまたはCIGS薄膜を形成させるために1段階として成長させるIII−VI族薄膜は、成長初期に無秩序に配列された棒形態で成長し、成長時間が経過するにつれて次第に薄い六角形板状に無秩序に成長する。
ここに2段階及び3段階の工程が追加され、それらの薄膜がI−III−VI2相の結晶に変換するが、最終形成されたI−III−VI2相薄膜の表面は不均一とされるだけでなく、薄膜中には気孔が存在する形態で成長することとなる。
これら表面形状の変化を図1に示す。
【0017】
周知の如く、太陽電池を製作するには、CIGS吸収層上に緩衝(buffer)層としてCdSを50nm程度の厚さに被覆し、ここに窓(window)層としてZnOとAlドープZnOとをそれぞれ順次に被覆し、p−i−n構造の接合(junction)を構成する。
したがって、表面が不均一なCIGS薄膜で太陽電池を製作すると、緩衝層及び窓層が均一にCIGS吸収層薄膜上に塗布されず、位置による均一な接合が得られなく、また、内部漏電などが生じることがあり、高いエネルギー変換効率を有する太陽電池を製作できないという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明の発明者は、薄膜の表面が均一なCIGS薄膜製造のための薄膜製造方法を研究した結果、既存の多段階工程を通じて薄膜を製造する方法とは違い、単一工程を通じてCIGS薄膜を製造すると、均一な表面の薄膜の製造が可能になると共に、製造時間の短縮を図ることができ、生産性の向上を図ることができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、基板上に有機金属化学気相蒸着方法で表面が均一な良質のI−III−VI2化合物薄膜を製造できるとともに、薄膜形成工程時間を短縮させて低費用で大量生産が可能な、単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
なお、本発明は、上記の製造方法により製造されるI−III−VI2化合物薄膜を含む太陽電池用吸収層を提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、基板上に、有機金属化学気相蒸着を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法において、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着工程でI−III−VI2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を提供する。
【0022】
なお、本発明は、上記の単一の有機金属化学気相蒸着工程により製造されたI−III−VI2化合物薄膜を含むことを特徴とする太陽電池用吸収層を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来方法でCuInSe2またはCuInGaSe2薄膜を形成するための最初の工程としてInSe薄膜を成長させる時に、InSe薄膜成長様子の経時変化、及びCuを蒸着してCIS薄膜を形成した後の様子を示す走査型電子顕微鏡表面写真である。
【図2】本発明の第1実施例によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図3】第1実施例によってCuInSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第2実施例によるI−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図5】第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図6】第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する他の例を概略的に示す図である。
【図7】本発明の第3実施例によるI−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図8】第3実施例によってCuIn(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図9】本発明の第4実施例によるI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図10】第4実施例によってCuIn1−xGax(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図11】本発明によって薄膜製造例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図12】本発明によって薄膜製造例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図13】従来の方法によって薄膜製造比較例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図14】従来の方法によって薄膜製造比較例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図15】本発明によって薄膜製造例1及び2で成長させたCuInSe2薄膜とx=0.35のCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のXRD結果を示すグラフである。
【図16】本発明によって薄膜製造例1及び2で成長させたCuInSe2薄膜とx=0.35のCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のラマン(Raman)スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、添付の図面を参照しつつより具体的に説明する。
図2は、本発明の第1実施例によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0025】
図2に示すように、第1実施例による本発明は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; MOCVD)工程でI−III−VI2化合物薄膜を形成する。
【0026】
すなわち、本発明では、多段階の薄膜形成工程を通じて最終薄膜を形成した従来の方法とは違い、単一工程により最終薄膜を形成したことにその特徴がある。
ここで、それぞれの前駆体またはガスを共に供給するということは、それぞれの前駆体の入っているバブラー(bubbler)またはガスを同時に開放したり時間間隔をおいて開放したりして供給するという意味を含むことであり、基板上に薄膜成長初期から最終目的する化合物薄膜が形成されるように所要の全ての前駆体またはガスを略同時に供給するという意味であることを明らかにしたい。
【0027】
以下の説明において、I族元素は、銅(Cu)や銀(Ag)を含め、周期律表において1族に属するいずれの元素も適用可能であり、III族元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)を含め、周期律表においてIII族に属するいずれの元素も適用可能であり、VI族元素は、セレニウム(Se)、硫黄(S)またはテルリウム(Te)を含め、周期律表においてVI族に属するいずれの元素も適用可能であるということをあらかじめ明らかにしておく。
好ましくは、I族元素がCuまたはAgであり、III族元素はIn、GaまたはAlから選択されたいずれかであり、VI族元素はSe、TeまたはSから選択されたいずれかであれば良い。
【0028】
基板上に薄膜を形成させるために一般的に用いられるMOCVD法が適用される。
本発明では、当該分野で一般的に用いられる低圧MOCVD装置に、それぞれの前駆体が入っているバブラー(bubbler)を複数個装着した後、各前駆体の入っているバブラーを順次にまたは同時に活用することによって単一のMOCVD工程でI−III−VI2化合物薄膜を製造する。
【0029】
まず、基板は、一般的に使用するソーダガラス基板にモリブデン(Mo)金属が蒸着されたものを使用することができるが、これに限定されず、薄くて柔軟性のあるステンレススチール(stainless steel)やカプトン(Kapton、登録商標)、ポリイミド(polimide)などのような熱に強い高分子化合物からなるフィルムに、Mo金属を蒸着した基板を使用することもでき、必要に応じて様々な公知の基板を使用することができる。
【0030】
III族及びVI族元素を含む単一前駆体は、当該分野において一般的に用いられる単一前駆体とすることができ、例えば、[R2M(μ−ER’)]2構造の単一前駆体を使用することができる。
ここで、Mは、In、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、R及びR’はそれぞれ、独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子及びIII族原子が二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0031】
このような[R2M(μ−ER’)]2の例には、[Me2In(μ−SeMe)]2、[Me2Ga(μ−SeMe)]2、[Me2In(μ−SMe)]2、[Me2Ga(μ−SMe)]2、[Me2In(μ−TeMe)]2、[Me2Ga(μ−TeMe)]2、[Et2In(μ−SeEt)]2、[Et2Ga(μ−SeEt)]2、[Et2In(μ−TeEt)]2または[Et2In(μ−SEt)]2などがある。
ここで、Meはメチル(methyl)であり、Etはエチル(ethyl)を表す。
また、上で提示した単一前駆体の形態は特に限定されるものではなく、本発明で提示されない様々な形態の他の単一前駆体の使用も可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0032】
I族金属を含む前駆体として、当該分野において一般的に用いられる前駆体を用いることができ、例えば、1価のCuの前駆体である(hfac)I(DMB)形態の前駆体を使用することができる。
ここで、hfacは、ヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは、3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である。
なお、上で提示したI族金属を含む前駆体の形態は特に限定されず、本発明で提示されない様々な形態の他の単一前駆体も使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0033】
VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、EはSe、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、RはC1〜C6のアルキル基を表す)を使用することができ、その例として、(C2H5)2Se、(CH3)2Se、(C2H5)2S、(CH3)2S、(C2H5)2Teまたは(CH3)2Teから選択されたいずれかを使用することができ、その他にも様々な形態の他の単一前駆体が使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0034】
上記のVI族元素を含む前駆体に代用できるVI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(EはSe、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)であるH2S、H2SeまたはH2Teガスから選択されたいずれかを使用することができる。
例えば、CuInSe2のようなSe化合物を形成するためにはH2Seガスを使用すべきである。
以上で説明したIII族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に基板上に供給し、有機金属化学気相蒸着法で蒸着すると、I−III−VI2化合物薄膜が形成される。
この時、基板にはIII族及びVI族元素を含む単一前駆体が第1番目に到達することが好ましい。
これは、生成された薄膜と基板との付着力を向上させることができるためである。
【0035】
上述の第1実施例による本発明の製造方法は、従来技術で紹介した本発明者が先に出願した製造方法と比較した時、各段階別に薄膜を蒸着してI−III−VI2化合物薄膜を最終形成する従来と違い、本発明では、一回の工程によりI−III−VI2化合物薄膜を容易に得ることができ、製造工程が簡素化し、工程時間が短縮し、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一のI−III−VI2化合物結晶として成長するので、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0036】
したがって、上述した本発明による方法によって得られたI−III−VI2化合物薄膜は、太陽電池用吸収層の他に、薄膜の特性によって多様な分野に応用でき、既存のCIS形態の太陽電池用吸収層を得るための薄膜形成方法に比べて薄膜形成蒸着工程が単純なため経済的であり、薄膜の表面が均一であり、内部に気孔が生成されず、よって、高効率太陽電池の吸収体として好適に適用されることができる。
【0037】
このように形成された薄膜には、CuAlSe2、CuGaSe2、CuInSe2、AgAlSe2、AgGaSe2、AgInSe2、CuAlS2、CuGaS2、CuInS2、AgAlS2、AgGaS2、AgInS2、CuAlTe2、CuGaTe2、CuInTe2、AgAlTe2、AgGaTe2、AgInTe2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が形成可能であることは自明である。
その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0038】
図3は、第1実施例によってCuInSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、同図に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体、1価のCuの前駆体、及びSeを含む前駆体またはSeを含有するガスを共に供給しながらMOCVD法で蒸着させ、単一の工程下でCuInSe2化合物薄膜を製造する。
【0039】
上記のような太陽電池吸収層の製造方法は、先に出願されたCIS薄膜形成過程とは違い、薄膜成長初期から直接CIS化合物を薄膜として成長させるので、表面の均一な薄膜とすることができる。
【0040】
一方、三元化合物において、構成元素を、周期律表上における同一族(family)に属する他の元素に部分的に置き換えることでエネルギー帯の間隔を変化させることができる。
例えば、前述の通り、CISは光吸収係数が他の半導体に比べて非常に大きい点から太陽電池の吸収層として有用であるが、エネルギー帯の間隔が常温で約1eV程度と多少小さいため、これを用いて太陽電池を製作すると、短絡電流(Isc)は大きい反面、開放電圧(Voc)は小さいから、効率を極大化させることができない。
効率を極大化させるためには、大きい光吸収係数をそのまま維持した状態でより大きいエネルギー帯の間隔を有する半導体が必要とされ、このためには、構成元素の中の一部を、周期律表上において同一族に属する原子大きさがより小さい元素に置き換えると、エネルギー帯の間隔を置換比率に従って変えることができる。
これを化学式で表現すると、III族元素を部分的にIII’元素に替えた場合はI−III1−xIII’x−VI2で表現され、VI族元素をVI’元素に部分的に替えた場合、I−III−(VI1−yVI’y)2で表現される。
また、III族VI族元素を両方ともIII’元素VI’元素に部分的にそれぞれ替えた場合、I−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2で表現することができる。
ここで、xとyはそれぞれ0と1との間の値である。
このような化合物を、3元化合物のソリッドソリューション(solid solution)というが、化合物を本発明の範囲内で製作するためには、下記のような実施例によれば容易になし得る。
【0041】
図4は、本発明の第2実施例によるI−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0042】
図4に示すように、本発明による第2実施例は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、上記のIII族元素と異なるIII’族元素を含む前駆体を共に供給しながら蒸着させ、単一のMOCVD工程によりI−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜を形成する。
【0043】
ここで、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスは、前述の第1実施例で説明したのと同じものを適用すればいいので、その詳細な説明は省略する。
【0044】
ただし、本発明の第2実施例は、III’族元素を含む前駆体をさらに使用する点で異なる。
ここで、III’族元素とは、前述したIII族元素と区別するためのもので、周期律表上において同一族に属するが、異なる原子番号を有する元素のことを指す。
【0045】
III’族元素を含む前駆体には、当該分野において一般的に用いられるR3M形態の前駆体を使用することができる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基であり、MはAl、In、Gaから選択されるIII族金属元素を表す。
例えば、(C2H5)3Al(またはTEtAl)、(CH3)3Al(またはTMeAl)、(C2H5)3In(またはTEtIn)、(CH3)3In(またはTMeIn)、(C2H5)3Ga(またはTEtGa)または(CH3)3Ga(またはTMeGa)から選択されたいずれかを使用することができる。
ここで、TMeはトリメチル(tri−methyl)を表し、TEtはトリエチル(tri−ethyl)を表す。
【0046】
また、III’族元素を含む前駆体には、III’族元素及びVI族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、EはS、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0047】
以上のように、III’族元素を含む前駆体を薄膜成長過程で共に供給すると、I−III−VI2化合物薄膜においてIII族元素の一部が異なるIII’族元素に置き換わり、I−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜を形成することとなる。
ここで、xは0≦x≦1である。
【0048】
上述の第2実施例による本発明の製造方法も同様、第1実施例で明らかにしたように、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一構造のI−III1−xIII’x−VI2化合物結晶として成長するので、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0049】
このようにして形成される薄膜には、CuIn1−xGaxSe2、CuIn1−xAlxSe2、CuGa1−xAlxSe2、AgIn1−xGaxSe2、AgIn1−xAlxSe2、AgIn1−xGaxSe2、CuIn1−xGaxS2、CuIn1−xAlxS2、CuGa1−xAlxS2、AgIn1−xGaxS2、AgIn1−xAlxS2、AgIn1−xGaxS2、CuIn1−xGaxTe2、CuIn1−xAlxTe2、CuGa1−xAlxTe2、AgIn1−xGaxTe2、AgIn1−xAlxTe2、AgIn1−xGaxTe2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が形成可能であるということは自明である。
その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0050】
図5は、第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、図5に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体と、1価のCuの前駆体と、Seを含む前駆体またはSeを含有するガスとを共に供給し、有機金属化学気相蒸着法でCIS薄膜を成長させる過程において、Gaを含む前駆体を共に供給して蒸着するとCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜(0≦x≦1)が形成される。
【0051】
また、図6は、第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する他の例を概略的に示す図であり、図6に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体と、Cu 1価の前駆体と、Seを含む前駆体またはSeを含有するガスとを共に供給し、有機金属化学気相蒸着法でCIS薄膜を成長させる過程において、Ga及びSeを含む単一前駆体を共に供給して蒸着するとCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜(0≦x≦1)が形成される。
【0052】
図7は、本発明の第3実施例によるI−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0053】
図7に示すように、本発明による第3実施例は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程においてI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、上記のVI族元素とは異なるVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させ、単一のMOCVD工程によりI−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成する。
【0054】
この第3実施例で使用されるIII族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスは、前述した第1実施例で説明したのと同じものを適用すればいいので、その詳細な説明は省略する。
【0055】
ただし、本発明の第3実施例は、VI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に使用する点が異なる。
ここで、VI’族元素は、上述のVI族元素と区別するためのもので、周期律表上において同一族に属するが、異なる原子番号を有する元素を表す。
【0056】
このVI’族元素を含む前駆体には、当該分野において一般的に用いられるR2E形態の前駆体を使用することができる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基を表し、EはSe、S、Teから選択されるVI族カルコゲン元素を表す。
その例としては、(C2H5)2Se、(CH3)2Se、(C2H5)2S、(CH3)2S、(C2H5)2Teまたは(CH3)2Teから選択されたいずれかを使用することができ、その他にも様々な形態の他の単一前駆体が使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0057】
また、VI’族元素を含む前駆体としては、III族元素及びVI’族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体は、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、EはS、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μはVI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0058】
また、VI’族元素を含有するガスには、H2E形態のガス(Eは、Se、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)であるH2S、H2SeまたはH2Teガスから選択されたいずれかを使用することができる。
【0059】
このように、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスと、上記のVI族元素とは異なるVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスとを基板上に共に供給し、有機金属化学気相蒸着法により蒸着すると、I−III−VI2化合物薄膜においてVI族元素の一部がそれと異なるVI’族元素に置き換えられ、I−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜が形成される。
ここで、yは0≦y≦1である。
【0060】
この第3実施例による本発明の製造方法も同様、第1実施例で明らかにした通り、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一のI−III−(VI1−yVI’y)2化合物結晶として成長するから、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0061】
このようにして得られる薄膜には、CuIn(Se1−ySy)2、CuAl(Se1−ySy)2、CuGa(Se1−ySy)2、AgIn(Se1−ySy)2、AgAl(Se1−ySy)2、AgGa(Se1−ySy)2、CuIn(Se1−yTey)2、CuAl(Se1−yTey)2、CuGa(Se1−yTey)2、AgIn(Se1−yTey)2、AgAl(Se1−yTey)2、AgGa(Se1−yTey)2、CuIn(S1−yTey)2、CuAl(S1−yTey)2、CuGa(S1−yTey)2、AgIn(S1−yTey)2、AgAl(S1−yTey)2、AgGa(S1−yTey)2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が可能であるということは自明である。その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0062】
図8は、第3実施例によってCuIn(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、図8に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体と、1価のCuの前駆体と、Seを含む前駆体またはSeを含有するガスとを共に供給し、有機金属化学気相蒸着法によりCIS薄膜を成長させる過程において、InとSを含む単一前駆体を共に供給して蒸着すると、CuIn(Se1−ySy)2化合物薄膜(0≦y≦1)が形成される。
【0063】
図9は、本発明の第4実施例によるI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0064】
図9に示すように、本発明による第4実施例は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させることで、単一のMOCVD工程によりI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成することとなる。
【0065】
この第4実施例で使用されるIII族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスは、前述の第1実施例の説明におけると同一のものを適用すればいいので、その詳細な説明は省略する。
【0066】
ただし、本発明の第4実施例は、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に使用する点で異なる。
ここで、III’族元素とVI’族元素は、上述のIII族元素及びVI族元素と区別するためのものであり、それぞれは周期律表上において同一族に属するが、異なる原子番号を有する元素を表す。
【0067】
ここで、III’族元素を含む前駆体には、当該分野で一般的に使用されるR3M形態の前駆体を使用することができる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基であり、MはAl、In、Gaから選択されるIII族金属元素を表す。
例えば、(C2H5)3Al(またはTEtAl)、(CH3)3Al(またはTMeAl)、(C2H5)3In(またはTEtIn)、(CH3)3In(またはTMeIn)、(C2H5)3Ga(またはTEtGa)または(CH3)3Ga(またはTMeGa)から選択されたいずれかを使用することができる。
ここで、TMeはトリメチル(tri−methyl)を表し、TEtはトリエチル(tri−ethyl)を表す。
【0068】
また、III’族元素を含む前駆体には、III’族元素及びVI族元素を含む単一前駆体またはIII’族元素及びVI’族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、EはS、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0069】
なお、上記VI’族元素を含む前駆体には、当該分野において一般的に用いられるR2E形態の前駆体を使用できる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基を表し、EはSe、S、Teから選択されるVI族カルコゲン元素を表す。
その例として、(C2H5)2Se、(CH3)2Se、(C2H5)2S、(CH3)2S、(C2H5)2Teまたは(CH3)2Teから選択されたいずれかを使用することができ、この他にも様々な形態の他の単一前駆体が使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0070】
また、VI’族元素を含む前駆体には、III’族元素及びVI族元素を含む単一前駆体またはIII’族元素及びVI’族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0071】
また、VI’族元素を含有するガスには、H2E形態のガス(EはSe、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)であるH2S、H2SeまたはH2Teガスから選択されたいずれかを使用することができる。
【0072】
このように、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着すると、I−III−VI2化合物薄膜においてIII族及びVI族元素の一部が、それと異なるIII’及びVI’族元素に置き換えられ、I−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜が形成される。
ここで、x及びyは、0≦(x,y)≦1である。
【0073】
この第4実施例も同様、第1実施例で明らかにした通り、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一上のI−III1−xIII’−(VI1−yVI’y)2化合物結晶として成長するので、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0074】
このようにして得られる薄膜には、CuIn1−xGax(Se1−ySy)2、CuIn1−xAlx(Se1−ySy)2、CuGa1−xAlx(Se1−ySy)2、AgIn1−xGax(Se1−ySy)2、AgIn1−xAlx(Se1−ySy)2、AgIn1−xGax(Se1−ySy)2、CuIn1−xGax(Se1−yTey)2、CuIn1−xAlx(Se1−yTey)2、CuGa1−xAlx(Se1−yTey)2、AgIn1−xGax(Se1−yTey)2、AgIn1−xAlx(Se1−yTey)2、AgIn1−xGax(Se1−yTey)2、CuIn1−xGax(S1−yTey)2、CuIn1−xAlx(S1−yTey)2、CuGa1−xAlx(S1−yTey)2、AgIn1−xGax(S1−yTey)2、AgIn1−xAlx(S1−yTey)2、AgIn1−xGax(S1−yTey)2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が可能であるということは自明である。
その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0075】
図10は、第4実施例によってCuIn1−xGax(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、図10に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体、1価のCuの前駆体、Seを含有するガス、Gaを含有する前駆体及びSを含有する前駆体を共に供給し、有機金属化学気相蒸着法により蒸着すると、CuIn1−xGax(Se1−ySy)2化合物薄膜(0≦(x,y)≦1)を形成できる。
【0076】
上述した通り、本発明によって得られたI−III−VI2化合物薄膜は、薄膜の表面が均一で、内部に気孔が生成されないから、太陽電池用吸収層の他に、薄膜の特性によって様々な分野に応用することができる。
なお、既存のCIS形態の太陽電池用吸収層を得るための薄膜形成方法に比べて、薄膜形成蒸着工程が簡易化したため経済的であり、生産性を向上させることができるという有用性がある。
【0077】
以下、本発明を、下記の薄膜製造例を用いてより詳細に説明する。
ただし、それらは、本発明の理解を助けるために提示されたもので、本発明を限定するためのものでない。
<薄膜製造例1>
【0078】
低圧MOCVD装置にIn−Se単一前駆体として[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体及び1価のCuの前駆体として(hfac)Cu(DMB)前駆体が入っているバブラー(bubbler)を装着するとともに、SeのためにはH2Seガスを装着し、各前駆体の入っているバブラーとガスを作動させ、下記のような方法によりCuInSe2薄膜を製造する。
【0079】
450℃に加熱したMo素材の電極が付着されているソーダガラス基板上に、[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体と共にH2Seガス及び(hfac)Cu(DMB)前駆体を略同時に供給し、CuInSe2化合物薄膜を形成する。
各前駆体とガスを略同時に開放するが、この場合、[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体、H2Seガス、(hfac)Cu(DMB)前駆体の順に開放する。
<薄膜製造例2>
【0080】
低圧MOCVD装置にIn−Se単一前駆体として[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体及び1価のCuの前駆体として(hfac)Cu(DMB)前駆体が入っているバブラー(bubbler)を装着するとともに、GaのためのTMGa((CH3)3Ga)前駆体が入っているバブラー(bubbler)、SeのためにはH2Seガスを装着し、各前駆体が入っているバブラーとガスを作動させ、下記のような方法によりCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する。
【0081】
まず、450℃に加熱したMo素材の電極が付着されているソーダガラス基板上に、[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体とともにH2Seガス及び(hfac)Cu(DMB)前駆体を共に供給し、以降、TMGa((CH3)3Ga)前駆体を用いてGaを注入することでCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する。
この場合にも、各前駆体とガスを略同時に開放するが、[Me2In(μ−SeMe)]2、H2Seガス、(hfac)Cu(DMB)、MGa((CH3)3Ga)の順に開放する。
<薄膜製造比較例>
【0082】
低圧MOCVD装置にIn−Se単一前駆体として[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体及びCu 1価の前駆体として(hfac)Cu(DMB)前駆体が入っているバブラー(bubbler)を装着するとともに、SeのためにはH2Seガスを装着し、各前駆体が入っているバブラーとガスを作動させ、下記のような方法によりCuInSe2薄膜を製造する。
【0083】
まず、ソーダガラスに後方電極としてMo金属素材が蒸着されてなる基板上に、320℃で[Me2In(μ−SeMe)]2単一前駆体を用いて低圧MOCVD法でInSe薄膜を形成した後、形成されたInSe薄膜上に150℃で(hfac)Cu(DMB)のCu 1価の前駆体を用いた低圧MOCVD法でCuを蒸着し、Cu、In、Seで構成された化合物薄膜を形成した後、450℃H2Seガス雰囲気で熱処理し、CuInSe2化合物薄膜を形成する。
<実験例1>
【0084】
上記の薄膜製造例1及び製造比較例で製造したCuInSe2化合物薄膜について走査電子顕微鏡(SEM)表面及び断面写真を撮影した。
薄膜製造例1で製造したCuInSe2化合物薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)表面及び断面写真は、図11及び図12にそれぞれ示し、薄膜製造比較例1で製造したCuInSe2化合物薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)表面及び断面写真は、図13及び図14にそれぞれ示す。
【0085】
図11乃至図14に示すように、本発明によってCuInSe2化合物薄膜を製造した場合、写真からわかるように、表面が均一であり、気泡が生成されずによく発達した結晶性薄膜として成長しているに対し、従来の方法によってCuInSe2化合物薄膜を製造した場合は、写真からわかるように、薄膜の結晶はよく発達しているが、表面が不均一であり、気泡が生成されている。
<実験例2>
【0086】
薄膜製造例1及び薄膜製造例2で成長させたCuInSe2薄膜とx=0.35であるCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のXRD結果を図15に示し、ラマン(Raman)スペクトルを図16に示す。
【0087】
まず、図15に示すように、成長したCuInSe2薄膜のXRDパターンが、一般的に知られたCuInSe2単結晶のパターンとよく一致する。
成長した薄膜は、正方晶系(Tetragonal)構造の単一相を有する薄膜として成長したことがわかる。
CuInSe2薄膜の格子定数は、a=5.76Å、c=11.46Åと報告された結果と非常によく一致する。
CuInSe2のXRD回折模様において2θ=26.77°、35.74°に現れたピークはそれぞれ、(112)、(211)面に該当するピークであり、44.42°のピークは(220/204)面に該当するピークである。
【0088】
また、薄膜製造例2で成長させたCIGS薄膜のInとGaの組成比をXRFで分析した結果、[Ga]/[In+Ga]が0.35だった。
III族金属元素の組成比[Ga]/[In+Ga]の値が増加するにつれてXRDの(112)ピーク位置2θが大きい角度で移動するが、これは、Ga原子がIn原子に比べて原子の大きさが小さく、よって、InがGaで置き換えられる比率が増加するにつれて格子定数が減少するに伴う結果である。
[Ga]/[In+Ga]の組成比が増加するにつれて格子定数2 a及びcは線形的に減少することが知られている。
また、成長したCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜の格子定数はa=5.612Å、c=10.953Åであり、これより類推される[Ga]/[In+Ga]の組成比も0.32であり、XRFの結果と誤差範囲内でよく一致する。
CuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のXRD回折模様において、2θ=27.05°、36.07°に現れたピークはそれぞれ(112)、(211)面に該当するピークであり、44.97°のピークは(220/204)面に該当するピークである。
全てのXRD模様において観測される44.49°に位置しているピークは、Mo基板によるものである。
【0089】
また、図16に示すように、CuInSe2のラマンスペクトルにおいて175cm−1に現れたピークは、タニノ等(Tanino et. al.)の表示によればA1モードであり、214cm−1のピークは、最も高い横光学B2(TO)モードである。
CuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のラマンスペクトルにおいて、179cm−1に現れたピークはA1モードであり、217cm−1のピークはB2(TO)モードである。
これらの音量子エネルギー(phonon energy)が、CuInSe2の場合においてより大きいエネルギー側へ移動したことが見られるが、これは、In原子が、それよりも原子大きさの小さいGaと入れ替えられることから、該当の格子振動モードの振動エネルギーが増加したためである。
【0090】
以上では好ましい例に上げて本発明を説明してきたが、本発明の技術思想はそれに限定されない。
すなわち、以上の例ではその代表例としてCuInSe2及びCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜の製造工程についてのみ説明したが、これは、化学周期律表上におけるI族、III族及びVI族元素の中から選択された元素で構成されたI−III−VI2化合物の一実施例に過ぎず、本発明がそれに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記で説明した通り、本発明によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法は、既存の製造方法に比べて、一回の蒸着工程により最終薄膜が形成されるため、工程が簡素化されて経済的である他、製造された薄膜の内部気孔が少なく、且つ均一な表面が形成され、結果として太陽電池用吸収層として有用に使用できる。
【0092】
以上説明され且つ図面に示された本発明の例は、本発明の技術的思想を限定するものとして解釈してはならない。
本発明の技術分野における通常の知識を有する者にとっては、本発明の技術的思想内で様々な形態への改変が可能であり、これらの改変は、通常の知識を有する者に明らかなものである限り、いずれも本発明の保護範囲に属するというべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; MOCVD)工程によりI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法に関するもので、より詳細には、基板上に単一のMOCVD工程により、表面が均一でありながらも良質のI−III−VI2化合物薄膜を形成できるとともに、薄膜の製造時間の短縮によって生産性を高めることができるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、I−III−VI2族(I:Ag、Cu;III:Al、Ga、In;VI:S、Se、Te)化合物半導体は、常温大気圧下でカルコパイライト(chalcopyrite)構造を有しており、その構成元素を異ならせることによって様々な物性を示す点から、幅広い分野で応用されている。
【0003】
このようなI−III−VI2族化合物半導体は、1953年Hahn等によって初めて合成され、Goodman等によって半導体として利用可能性が提示されて以来、赤外線検出器(CuInSe2、CuInS2)をはじめとして発光ダイオード(CuInSe2、CuGaS2)、非線形光学素子(AgGaS2、AgGaSe2)及び太陽電池(CuInSe2(以下、“CIS”ともいう。)またはCuIn1−xGaxSe2(以下、“CIGS”ともいう。))などに応用されている。
【0004】
非線形光学素子に使用されるAgGaS2化合物半導体は、エネルギー帯の間隔が低温(2K)において2.72eVであり、他の半導体に比べて大きい複屈折率を有しており、0.45〜13μmの広い波長領域において高い透過率を有しており、1.8〜11μm範囲における二次調和波生成(second harmonic generation)に適合する特徴を有している。
【0005】
発光ダイオードに使用されるCuGaS2化合物半導体は、エネルギー帯の間隔が低温(2K)において2.53eVであり、p型伝導形態のみを示すので、n型伝導形態のみを示すCdSと異種接合(heterojuction)にすると効率の高い発光ダイオードを製作できるという特徴を有する。
【0006】
太陽電池に使用されるCIS化合物半導体は、常温でエネルギー帯の間隔が約1eVであり、線形光吸収係数が他の半導体に比べて10〜100倍程度大きい点から、太陽電池の吸収体として注目を浴びている。
【0007】
特に、これらのCIS系薄膜太陽電池は、既存のシリコン結晶を使用する太陽電池とは違い、10マイクロン以下の厚さに製作可能であり、長時間使用時にも安定した特性を示し、また、最近の薄膜型太陽電池の中でも最も高い19.5%のエネルギー変換効率を示
すことから、シリコン結晶質太陽電池に取って代わる低価型高効率薄膜型太陽電池として商業化可能性が非常に高いものと知られている。
【0008】
このようにI−III−VI2族化合物は様々な分野に広く利用可能ではあるものの、良質の薄膜を経済的な方法で製作し難いため、幅広く活用されていない現状にある。
【0009】
I−III−VI2族化合物単結晶を成長させる方法には、溶融法、ヨード(iodine)を用いた気相化学輸送法などがあるが、これらはいずれも実験室レベルで行われており、未だこれらの結晶は商用化されていないのが実情である。
【0010】
これまで開発されたI−III−VI2族化合物半導体薄膜の製造方法の中でCIS系薄膜を製造するための様々な方法として、米国特許4,523,051号では、真空雰囲気でそれぞれの元素を同時に蒸発させて基板に蒸着させる方法を紹介している。
しかし、このような方法は、大面積化が不可能なだけでなく、大量生産が難しいために不経済的であるという問題点があった。
【0011】
他の方法としては、米国特許第4,798,660号で、Cu−In金属薄膜をスパッタリング(sputtering)で蒸着し、H2Seをはじめとする含セレニウムガス雰囲気で加熱することでセレン化(Selenization)する方法が紹介されたことがある。
この方法は大面積化及び大量生産が可能であり、最近ではこの方法を用いた商用化が進んでいるが、良質の薄膜と多重層の薄膜を製作できないなどの問題点があった。
その他にも、電着法(Electrodeposition)、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy; MBE)などの方法が提示されているが、これらは、良質の薄膜を得ることがてきない、または、得られるといっても不経済的なため商用化には不適であった。
【0012】
そこで、最近では、良質のCIS系を含むI−III−VI2族化合物半導体薄膜を大量製造する目的で、既存半導体工程で広く使われている有機金属化学気相蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; 以下、“MOCVD”という。)を使用している。
【0013】
これと関連して、本発明の出願人は、韓国登録特許第495924号及び第495925号で、適切な前駆体を使用するMOCVD方法により所要の当量比を有するCuInSe2薄膜のようなI−III−VI2化合物の薄膜を形成できるようにした技術を先に出願して登録を受けたことがある。
これらの技術は、まず、Mo基板上にIn−Se前駆体を用いてInSe薄膜を形成し、ここに、Cuを蒸着してCu2Se薄膜に変換させた後、再びInSeソースを供給してCuInSe2薄膜を完成するものである。
このような薄膜形成方法は、工程段階が比較的単純であり、容易に化学当量比に近い良質の薄膜を製作できる方法であるが、工程過程でIn元素のような高価のIII族元素を余計に過剰消耗するという短所がある。
【0014】
上記の問題点を解決するために、本発明者は、韓国特許出願第2006−55064号で、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体を有機金属化学気相蒸着法で蒸着させることでIII−VIまたはIII2−VI3化合物薄膜を形成した後、I族金属を含む前駆体を有機金属化学気相蒸着法で蒸着させることでI族、III族、VI族で構成された薄膜を形成した後、VI族元素含有ガス雰囲気の下に熱処理する、または、VI族元素を含む前駆体を有機金属化学気相蒸着法で添加させることでI−III−VI2化合物薄膜を形成する方法を紹介したことがある。
【0015】
このような方法は、Inのような高価なIII族元素の余分の消耗を防ぎながらも、化学当量比に近い組成比を有する良質のI−III−VI2化合物の薄膜を製造できるため、経済的且つ効率的であり、よって、特に、太陽電池用光吸収層として用いられるCIS系薄膜の製造に非常に有用な効果を奏する。
【0016】
しかしながら、多段階の薄膜形成工程を経て最終薄膜を形成するこの種の薄膜製造方法は、全体工程時間が長く、表面が均一でなく、且つ成長膜の内部に気孔ができるという短所がある。
CIGS薄膜が均一によく成長できない理由についてより詳細に説明すると、次の通りである。
CISまたはCIGS薄膜を形成させるために1段階として成長させるIII−VI族薄膜は、成長初期に無秩序に配列された棒形態で成長し、成長時間が経過するにつれて次第に薄い六角形板状に無秩序に成長する。
ここに2段階及び3段階の工程が追加され、それらの薄膜がI−III−VI2相の結晶に変換するが、最終形成されたI−III−VI2相薄膜の表面は不均一とされるだけでなく、薄膜中には気孔が存在する形態で成長することとなる。
これら表面形状の変化を図1に示す。
【0017】
周知の如く、太陽電池を製作するには、CIGS吸収層上に緩衝(buffer)層としてCdSを50nm程度の厚さに被覆し、ここに窓(window)層としてZnOとAlドープZnOとをそれぞれ順次に被覆し、p−i−n構造の接合(junction)を構成する。
したがって、表面が不均一なCIGS薄膜で太陽電池を製作すると、緩衝層及び窓層が均一にCIGS吸収層薄膜上に塗布されず、位置による均一な接合が得られなく、また、内部漏電などが生じることがあり、高いエネルギー変換効率を有する太陽電池を製作できないという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明の発明者は、薄膜の表面が均一なCIGS薄膜製造のための薄膜製造方法を研究した結果、既存の多段階工程を通じて薄膜を製造する方法とは違い、単一工程を通じてCIGS薄膜を製造すると、均一な表面の薄膜の製造が可能になると共に、製造時間の短縮を図ることができ、生産性の向上を図ることができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、基板上に有機金属化学気相蒸着方法で表面が均一な良質のI−III−VI2化合物薄膜を製造できるとともに、薄膜形成工程時間を短縮させて低費用で大量生産が可能な、単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
なお、本発明は、上記の製造方法により製造されるI−III−VI2化合物薄膜を含む太陽電池用吸収層を提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、基板上に、有機金属化学気相蒸着を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法において、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着工程でI−III−VI2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を提供する。
【0022】
なお、本発明は、上記の単一の有機金属化学気相蒸着工程により製造されたI−III−VI2化合物薄膜を含むことを特徴とする太陽電池用吸収層を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来方法でCuInSe2またはCuInGaSe2薄膜を形成するための最初の工程としてInSe薄膜を成長させる時に、InSe薄膜成長様子の経時変化、及びCuを蒸着してCIS薄膜を形成した後の様子を示す走査型電子顕微鏡表面写真である。
【図2】本発明の第1実施例によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図3】第1実施例によってCuInSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第2実施例によるI−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図5】第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図6】第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する他の例を概略的に示す図である。
【図7】本発明の第3実施例によるI−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図8】第3実施例によってCuIn(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図9】本発明の第4実施例によるI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【図10】第4実施例によってCuIn1−xGax(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図である。
【図11】本発明によって薄膜製造例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図12】本発明によって薄膜製造例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図13】従来の方法によって薄膜製造比較例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図14】従来の方法によって薄膜製造比較例1で製造されたCuInSe2化合物薄膜の表面及び断面を撮影した写真である。
【図15】本発明によって薄膜製造例1及び2で成長させたCuInSe2薄膜とx=0.35のCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のXRD結果を示すグラフである。
【図16】本発明によって薄膜製造例1及び2で成長させたCuInSe2薄膜とx=0.35のCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のラマン(Raman)スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、添付の図面を参照しつつより具体的に説明する。
図2は、本発明の第1実施例によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0025】
図2に示すように、第1実施例による本発明は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; MOCVD)工程でI−III−VI2化合物薄膜を形成する。
【0026】
すなわち、本発明では、多段階の薄膜形成工程を通じて最終薄膜を形成した従来の方法とは違い、単一工程により最終薄膜を形成したことにその特徴がある。
ここで、それぞれの前駆体またはガスを共に供給するということは、それぞれの前駆体の入っているバブラー(bubbler)またはガスを同時に開放したり時間間隔をおいて開放したりして供給するという意味を含むことであり、基板上に薄膜成長初期から最終目的する化合物薄膜が形成されるように所要の全ての前駆体またはガスを略同時に供給するという意味であることを明らかにしたい。
【0027】
以下の説明において、I族元素は、銅(Cu)や銀(Ag)を含め、周期律表において1族に属するいずれの元素も適用可能であり、III族元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)を含め、周期律表においてIII族に属するいずれの元素も適用可能であり、VI族元素は、セレニウム(Se)、硫黄(S)またはテルリウム(Te)を含め、周期律表においてVI族に属するいずれの元素も適用可能であるということをあらかじめ明らかにしておく。
好ましくは、I族元素がCuまたはAgであり、III族元素はIn、GaまたはAlから選択されたいずれかであり、VI族元素はSe、TeまたはSから選択されたいずれかであれば良い。
【0028】
基板上に薄膜を形成させるために一般的に用いられるMOCVD法が適用される。
本発明では、当該分野で一般的に用いられる低圧MOCVD装置に、それぞれの前駆体が入っているバブラー(bubbler)を複数個装着した後、各前駆体の入っているバブラーを順次にまたは同時に活用することによって単一のMOCVD工程でI−III−VI2化合物薄膜を製造する。
【0029】
まず、基板は、一般的に使用するソーダガラス基板にモリブデン(Mo)金属が蒸着されたものを使用することができるが、これに限定されず、薄くて柔軟性のあるステンレススチール(stainless steel)やカプトン(Kapton、登録商標)、ポリイミド(polimide)などのような熱に強い高分子化合物からなるフィルムに、Mo金属を蒸着した基板を使用することもでき、必要に応じて様々な公知の基板を使用することができる。
【0030】
III族及びVI族元素を含む単一前駆体は、当該分野において一般的に用いられる単一前駆体とすることができ、例えば、[R2M(μ−ER’)]2構造の単一前駆体を使用することができる。
ここで、Mは、In、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、R及びR’はそれぞれ、独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子及びIII族原子が二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0031】
このような[R2M(μ−ER’)]2の例には、[Me2In(μ−SeMe)]2、[Me2Ga(μ−SeMe)]2、[Me2In(μ−SMe)]2、[Me2Ga(μ−SMe)]2、[Me2In(μ−TeMe)]2、[Me2Ga(μ−TeMe)]2、[Et2In(μ−SeEt)]2、[Et2Ga(μ−SeEt)]2、[Et2In(μ−TeEt)]2または[Et2In(μ−SEt)]2などがある。
ここで、Meはメチル(methyl)であり、Etはエチル(ethyl)を表す。
また、上で提示した単一前駆体の形態は特に限定されるものではなく、本発明で提示されない様々な形態の他の単一前駆体の使用も可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0032】
I族金属を含む前駆体として、当該分野において一般的に用いられる前駆体を用いることができ、例えば、1価のCuの前駆体である(hfac)I(DMB)形態の前駆体を使用することができる。
ここで、hfacは、ヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは、3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である。
なお、上で提示したI族金属を含む前駆体の形態は特に限定されず、本発明で提示されない様々な形態の他の単一前駆体も使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0033】
VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、EはSe、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、RはC1〜C6のアルキル基を表す)を使用することができ、その例として、(C2H5)2Se、(CH3)2Se、(C2H5)2S、(CH3)2S、(C2H5)2Teまたは(CH3)2Teから選択されたいずれかを使用することができ、その他にも様々な形態の他の単一前駆体が使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0034】
上記のVI族元素を含む前駆体に代用できるVI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(EはSe、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)であるH2S、H2SeまたはH2Teガスから選択されたいずれかを使用することができる。
例えば、CuInSe2のようなSe化合物を形成するためにはH2Seガスを使用すべきである。
以上で説明したIII族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に基板上に供給し、有機金属化学気相蒸着法で蒸着すると、I−III−VI2化合物薄膜が形成される。
この時、基板にはIII族及びVI族元素を含む単一前駆体が第1番目に到達することが好ましい。
これは、生成された薄膜と基板との付着力を向上させることができるためである。
【0035】
上述の第1実施例による本発明の製造方法は、従来技術で紹介した本発明者が先に出願した製造方法と比較した時、各段階別に薄膜を蒸着してI−III−VI2化合物薄膜を最終形成する従来と違い、本発明では、一回の工程によりI−III−VI2化合物薄膜を容易に得ることができ、製造工程が簡素化し、工程時間が短縮し、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一のI−III−VI2化合物結晶として成長するので、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0036】
したがって、上述した本発明による方法によって得られたI−III−VI2化合物薄膜は、太陽電池用吸収層の他に、薄膜の特性によって多様な分野に応用でき、既存のCIS形態の太陽電池用吸収層を得るための薄膜形成方法に比べて薄膜形成蒸着工程が単純なため経済的であり、薄膜の表面が均一であり、内部に気孔が生成されず、よって、高効率太陽電池の吸収体として好適に適用されることができる。
【0037】
このように形成された薄膜には、CuAlSe2、CuGaSe2、CuInSe2、AgAlSe2、AgGaSe2、AgInSe2、CuAlS2、CuGaS2、CuInS2、AgAlS2、AgGaS2、AgInS2、CuAlTe2、CuGaTe2、CuInTe2、AgAlTe2、AgGaTe2、AgInTe2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が形成可能であることは自明である。
その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0038】
図3は、第1実施例によってCuInSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、同図に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体、1価のCuの前駆体、及びSeを含む前駆体またはSeを含有するガスを共に供給しながらMOCVD法で蒸着させ、単一の工程下でCuInSe2化合物薄膜を製造する。
【0039】
上記のような太陽電池吸収層の製造方法は、先に出願されたCIS薄膜形成過程とは違い、薄膜成長初期から直接CIS化合物を薄膜として成長させるので、表面の均一な薄膜とすることができる。
【0040】
一方、三元化合物において、構成元素を、周期律表上における同一族(family)に属する他の元素に部分的に置き換えることでエネルギー帯の間隔を変化させることができる。
例えば、前述の通り、CISは光吸収係数が他の半導体に比べて非常に大きい点から太陽電池の吸収層として有用であるが、エネルギー帯の間隔が常温で約1eV程度と多少小さいため、これを用いて太陽電池を製作すると、短絡電流(Isc)は大きい反面、開放電圧(Voc)は小さいから、効率を極大化させることができない。
効率を極大化させるためには、大きい光吸収係数をそのまま維持した状態でより大きいエネルギー帯の間隔を有する半導体が必要とされ、このためには、構成元素の中の一部を、周期律表上において同一族に属する原子大きさがより小さい元素に置き換えると、エネルギー帯の間隔を置換比率に従って変えることができる。
これを化学式で表現すると、III族元素を部分的にIII’元素に替えた場合はI−III1−xIII’x−VI2で表現され、VI族元素をVI’元素に部分的に替えた場合、I−III−(VI1−yVI’y)2で表現される。
また、III族VI族元素を両方ともIII’元素VI’元素に部分的にそれぞれ替えた場合、I−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2で表現することができる。
ここで、xとyはそれぞれ0と1との間の値である。
このような化合物を、3元化合物のソリッドソリューション(solid solution)というが、化合物を本発明の範囲内で製作するためには、下記のような実施例によれば容易になし得る。
【0041】
図4は、本発明の第2実施例によるI−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0042】
図4に示すように、本発明による第2実施例は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、上記のIII族元素と異なるIII’族元素を含む前駆体を共に供給しながら蒸着させ、単一のMOCVD工程によりI−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜を形成する。
【0043】
ここで、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスは、前述の第1実施例で説明したのと同じものを適用すればいいので、その詳細な説明は省略する。
【0044】
ただし、本発明の第2実施例は、III’族元素を含む前駆体をさらに使用する点で異なる。
ここで、III’族元素とは、前述したIII族元素と区別するためのもので、周期律表上において同一族に属するが、異なる原子番号を有する元素のことを指す。
【0045】
III’族元素を含む前駆体には、当該分野において一般的に用いられるR3M形態の前駆体を使用することができる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基であり、MはAl、In、Gaから選択されるIII族金属元素を表す。
例えば、(C2H5)3Al(またはTEtAl)、(CH3)3Al(またはTMeAl)、(C2H5)3In(またはTEtIn)、(CH3)3In(またはTMeIn)、(C2H5)3Ga(またはTEtGa)または(CH3)3Ga(またはTMeGa)から選択されたいずれかを使用することができる。
ここで、TMeはトリメチル(tri−methyl)を表し、TEtはトリエチル(tri−ethyl)を表す。
【0046】
また、III’族元素を含む前駆体には、III’族元素及びVI族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、EはS、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0047】
以上のように、III’族元素を含む前駆体を薄膜成長過程で共に供給すると、I−III−VI2化合物薄膜においてIII族元素の一部が異なるIII’族元素に置き換わり、I−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜を形成することとなる。
ここで、xは0≦x≦1である。
【0048】
上述の第2実施例による本発明の製造方法も同様、第1実施例で明らかにしたように、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一構造のI−III1−xIII’x−VI2化合物結晶として成長するので、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0049】
このようにして形成される薄膜には、CuIn1−xGaxSe2、CuIn1−xAlxSe2、CuGa1−xAlxSe2、AgIn1−xGaxSe2、AgIn1−xAlxSe2、AgIn1−xGaxSe2、CuIn1−xGaxS2、CuIn1−xAlxS2、CuGa1−xAlxS2、AgIn1−xGaxS2、AgIn1−xAlxS2、AgIn1−xGaxS2、CuIn1−xGaxTe2、CuIn1−xAlxTe2、CuGa1−xAlxTe2、AgIn1−xGaxTe2、AgIn1−xAlxTe2、AgIn1−xGaxTe2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が形成可能であるということは自明である。
その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0050】
図5は、第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、図5に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体と、1価のCuの前駆体と、Seを含む前駆体またはSeを含有するガスとを共に供給し、有機金属化学気相蒸着法でCIS薄膜を成長させる過程において、Gaを含む前駆体を共に供給して蒸着するとCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜(0≦x≦1)が形成される。
【0051】
また、図6は、第2実施例によってCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する他の例を概略的に示す図であり、図6に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体と、Cu 1価の前駆体と、Seを含む前駆体またはSeを含有するガスとを共に供給し、有機金属化学気相蒸着法でCIS薄膜を成長させる過程において、Ga及びSeを含む単一前駆体を共に供給して蒸着するとCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜(0≦x≦1)が形成される。
【0052】
図7は、本発明の第3実施例によるI−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0053】
図7に示すように、本発明による第3実施例は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程においてI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、上記のVI族元素とは異なるVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させ、単一のMOCVD工程によりI−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成する。
【0054】
この第3実施例で使用されるIII族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスは、前述した第1実施例で説明したのと同じものを適用すればいいので、その詳細な説明は省略する。
【0055】
ただし、本発明の第3実施例は、VI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に使用する点が異なる。
ここで、VI’族元素は、上述のVI族元素と区別するためのもので、周期律表上において同一族に属するが、異なる原子番号を有する元素を表す。
【0056】
このVI’族元素を含む前駆体には、当該分野において一般的に用いられるR2E形態の前駆体を使用することができる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基を表し、EはSe、S、Teから選択されるVI族カルコゲン元素を表す。
その例としては、(C2H5)2Se、(CH3)2Se、(C2H5)2S、(CH3)2S、(C2H5)2Teまたは(CH3)2Teから選択されたいずれかを使用することができ、その他にも様々な形態の他の単一前駆体が使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0057】
また、VI’族元素を含む前駆体としては、III族元素及びVI’族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体は、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、EはS、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μはVI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0058】
また、VI’族元素を含有するガスには、H2E形態のガス(Eは、Se、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)であるH2S、H2SeまたはH2Teガスから選択されたいずれかを使用することができる。
【0059】
このように、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスと、上記のVI族元素とは異なるVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスとを基板上に共に供給し、有機金属化学気相蒸着法により蒸着すると、I−III−VI2化合物薄膜においてVI族元素の一部がそれと異なるVI’族元素に置き換えられ、I−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜が形成される。
ここで、yは0≦y≦1である。
【0060】
この第3実施例による本発明の製造方法も同様、第1実施例で明らかにした通り、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一のI−III−(VI1−yVI’y)2化合物結晶として成長するから、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0061】
このようにして得られる薄膜には、CuIn(Se1−ySy)2、CuAl(Se1−ySy)2、CuGa(Se1−ySy)2、AgIn(Se1−ySy)2、AgAl(Se1−ySy)2、AgGa(Se1−ySy)2、CuIn(Se1−yTey)2、CuAl(Se1−yTey)2、CuGa(Se1−yTey)2、AgIn(Se1−yTey)2、AgAl(Se1−yTey)2、AgGa(Se1−yTey)2、CuIn(S1−yTey)2、CuAl(S1−yTey)2、CuGa(S1−yTey)2、AgIn(S1−yTey)2、AgAl(S1−yTey)2、AgGa(S1−yTey)2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が可能であるということは自明である。その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0062】
図8は、第3実施例によってCuIn(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、図8に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体と、1価のCuの前駆体と、Seを含む前駆体またはSeを含有するガスとを共に供給し、有機金属化学気相蒸着法によりCIS薄膜を成長させる過程において、InとSを含む単一前駆体を共に供給して蒸着すると、CuIn(Se1−ySy)2化合物薄膜(0≦y≦1)が形成される。
【0063】
図9は、本発明の第4実施例によるI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜の製造方法を概略的に示す図である。
【0064】
図9に示すように、本発明による第4実施例は、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させることで、単一のMOCVD工程によりI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成することとなる。
【0065】
この第4実施例で使用されるIII族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスは、前述の第1実施例の説明におけると同一のものを適用すればいいので、その詳細な説明は省略する。
【0066】
ただし、本発明の第4実施例は、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に使用する点で異なる。
ここで、III’族元素とVI’族元素は、上述のIII族元素及びVI族元素と区別するためのものであり、それぞれは周期律表上において同一族に属するが、異なる原子番号を有する元素を表す。
【0067】
ここで、III’族元素を含む前駆体には、当該分野で一般的に使用されるR3M形態の前駆体を使用することができる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基であり、MはAl、In、Gaから選択されるIII族金属元素を表す。
例えば、(C2H5)3Al(またはTEtAl)、(CH3)3Al(またはTMeAl)、(C2H5)3In(またはTEtIn)、(CH3)3In(またはTMeIn)、(C2H5)3Ga(またはTEtGa)または(CH3)3Ga(またはTMeGa)から選択されたいずれかを使用することができる。
ここで、TMeはトリメチル(tri−methyl)を表し、TEtはトリエチル(tri−ethyl)を表す。
【0068】
また、III’族元素を含む前駆体には、III’族元素及びVI族元素を含む単一前駆体またはIII’族元素及びVI’族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、EはS、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0069】
なお、上記VI’族元素を含む前駆体には、当該分野において一般的に用いられるR2E形態の前駆体を使用できる。
ここで、RはC1〜C6のアルキル基を表し、EはSe、S、Teから選択されるVI族カルコゲン元素を表す。
その例として、(C2H5)2Se、(CH3)2Se、(C2H5)2S、(CH3)2S、(C2H5)2Teまたは(CH3)2Teから選択されたいずれかを使用することができ、この他にも様々な形態の他の単一前駆体が使用可能であるということは、当業者にとって自明である。
【0070】
また、VI’族元素を含む前駆体には、III’族元素及びVI族元素を含む単一前駆体またはIII’族元素及びVI’族元素を含む単一前駆体を使用することができる。
このような形態の単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2から選択された単一前駆体を使用することができる。
ここで、MはIn、Ga、AlなどのIII族金属元素を表し、RとR’はそれぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、TeなどのVI族カルコゲン元素を表し、μは、VI族原子とIII族原子とが二重にブリッジ(bridge)された結合をしているということを表す。
【0071】
また、VI’族元素を含有するガスには、H2E形態のガス(EはSe、S、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)であるH2S、H2SeまたはH2Teガスから選択されたいずれかを使用することができる。
【0072】
このように、基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着すると、I−III−VI2化合物薄膜においてIII族及びVI族元素の一部が、それと異なるIII’及びVI’族元素に置き換えられ、I−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜が形成される。
ここで、x及びyは、0≦(x,y)≦1である。
【0073】
この第4実施例も同様、第1実施例で明らかにした通り、低コストで大量生産が可能なだけでなく、薄膜の成長初期から単一上のI−III1−xIII’−(VI1−yVI’y)2化合物結晶として成長するので、薄膜中に気孔が少なく、表面が均一な良質の薄膜を得ることができる。
【0074】
このようにして得られる薄膜には、CuIn1−xGax(Se1−ySy)2、CuIn1−xAlx(Se1−ySy)2、CuGa1−xAlx(Se1−ySy)2、AgIn1−xGax(Se1−ySy)2、AgIn1−xAlx(Se1−ySy)2、AgIn1−xGax(Se1−ySy)2、CuIn1−xGax(Se1−yTey)2、CuIn1−xAlx(Se1−yTey)2、CuGa1−xAlx(Se1−yTey)2、AgIn1−xGax(Se1−yTey)2、AgIn1−xAlx(Se1−yTey)2、AgIn1−xGax(Se1−yTey)2、CuIn1−xGax(S1−yTey)2、CuIn1−xAlx(S1−yTey)2、CuGa1−xAlx(S1−yTey)2、AgIn1−xGax(S1−yTey)2、AgIn1−xAlx(S1−yTey)2、AgIn1−xGax(S1−yTey)2などがあり、その他にも様々な化合物薄膜が可能であるということは自明である。
その理由を簡単に説明すると、周期律表上における同一族の元素が有する化学的特性は互いに似ているためである。
【0075】
図10は、第4実施例によってCuIn1−xGax(Se1−ySy)2化合物薄膜を製造する一例を概略的に示す図であり、図10に示すように、基板上に、In及びSeを含む単一前駆体、1価のCuの前駆体、Seを含有するガス、Gaを含有する前駆体及びSを含有する前駆体を共に供給し、有機金属化学気相蒸着法により蒸着すると、CuIn1−xGax(Se1−ySy)2化合物薄膜(0≦(x,y)≦1)を形成できる。
【0076】
上述した通り、本発明によって得られたI−III−VI2化合物薄膜は、薄膜の表面が均一で、内部に気孔が生成されないから、太陽電池用吸収層の他に、薄膜の特性によって様々な分野に応用することができる。
なお、既存のCIS形態の太陽電池用吸収層を得るための薄膜形成方法に比べて、薄膜形成蒸着工程が簡易化したため経済的であり、生産性を向上させることができるという有用性がある。
【0077】
以下、本発明を、下記の薄膜製造例を用いてより詳細に説明する。
ただし、それらは、本発明の理解を助けるために提示されたもので、本発明を限定するためのものでない。
<薄膜製造例1>
【0078】
低圧MOCVD装置にIn−Se単一前駆体として[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体及び1価のCuの前駆体として(hfac)Cu(DMB)前駆体が入っているバブラー(bubbler)を装着するとともに、SeのためにはH2Seガスを装着し、各前駆体の入っているバブラーとガスを作動させ、下記のような方法によりCuInSe2薄膜を製造する。
【0079】
450℃に加熱したMo素材の電極が付着されているソーダガラス基板上に、[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体と共にH2Seガス及び(hfac)Cu(DMB)前駆体を略同時に供給し、CuInSe2化合物薄膜を形成する。
各前駆体とガスを略同時に開放するが、この場合、[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体、H2Seガス、(hfac)Cu(DMB)前駆体の順に開放する。
<薄膜製造例2>
【0080】
低圧MOCVD装置にIn−Se単一前駆体として[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体及び1価のCuの前駆体として(hfac)Cu(DMB)前駆体が入っているバブラー(bubbler)を装着するとともに、GaのためのTMGa((CH3)3Ga)前駆体が入っているバブラー(bubbler)、SeのためにはH2Seガスを装着し、各前駆体が入っているバブラーとガスを作動させ、下記のような方法によりCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する。
【0081】
まず、450℃に加熱したMo素材の電極が付着されているソーダガラス基板上に、[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体とともにH2Seガス及び(hfac)Cu(DMB)前駆体を共に供給し、以降、TMGa((CH3)3Ga)前駆体を用いてGaを注入することでCuIn1−xGaxSe2化合物薄膜を製造する。
この場合にも、各前駆体とガスを略同時に開放するが、[Me2In(μ−SeMe)]2、H2Seガス、(hfac)Cu(DMB)、MGa((CH3)3Ga)の順に開放する。
<薄膜製造比較例>
【0082】
低圧MOCVD装置にIn−Se単一前駆体として[Me2In(μ−SeMe)]2前駆体及びCu 1価の前駆体として(hfac)Cu(DMB)前駆体が入っているバブラー(bubbler)を装着するとともに、SeのためにはH2Seガスを装着し、各前駆体が入っているバブラーとガスを作動させ、下記のような方法によりCuInSe2薄膜を製造する。
【0083】
まず、ソーダガラスに後方電極としてMo金属素材が蒸着されてなる基板上に、320℃で[Me2In(μ−SeMe)]2単一前駆体を用いて低圧MOCVD法でInSe薄膜を形成した後、形成されたInSe薄膜上に150℃で(hfac)Cu(DMB)のCu 1価の前駆体を用いた低圧MOCVD法でCuを蒸着し、Cu、In、Seで構成された化合物薄膜を形成した後、450℃H2Seガス雰囲気で熱処理し、CuInSe2化合物薄膜を形成する。
<実験例1>
【0084】
上記の薄膜製造例1及び製造比較例で製造したCuInSe2化合物薄膜について走査電子顕微鏡(SEM)表面及び断面写真を撮影した。
薄膜製造例1で製造したCuInSe2化合物薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)表面及び断面写真は、図11及び図12にそれぞれ示し、薄膜製造比較例1で製造したCuInSe2化合物薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)表面及び断面写真は、図13及び図14にそれぞれ示す。
【0085】
図11乃至図14に示すように、本発明によってCuInSe2化合物薄膜を製造した場合、写真からわかるように、表面が均一であり、気泡が生成されずによく発達した結晶性薄膜として成長しているに対し、従来の方法によってCuInSe2化合物薄膜を製造した場合は、写真からわかるように、薄膜の結晶はよく発達しているが、表面が不均一であり、気泡が生成されている。
<実験例2>
【0086】
薄膜製造例1及び薄膜製造例2で成長させたCuInSe2薄膜とx=0.35であるCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のXRD結果を図15に示し、ラマン(Raman)スペクトルを図16に示す。
【0087】
まず、図15に示すように、成長したCuInSe2薄膜のXRDパターンが、一般的に知られたCuInSe2単結晶のパターンとよく一致する。
成長した薄膜は、正方晶系(Tetragonal)構造の単一相を有する薄膜として成長したことがわかる。
CuInSe2薄膜の格子定数は、a=5.76Å、c=11.46Åと報告された結果と非常によく一致する。
CuInSe2のXRD回折模様において2θ=26.77°、35.74°に現れたピークはそれぞれ、(112)、(211)面に該当するピークであり、44.42°のピークは(220/204)面に該当するピークである。
【0088】
また、薄膜製造例2で成長させたCIGS薄膜のInとGaの組成比をXRFで分析した結果、[Ga]/[In+Ga]が0.35だった。
III族金属元素の組成比[Ga]/[In+Ga]の値が増加するにつれてXRDの(112)ピーク位置2θが大きい角度で移動するが、これは、Ga原子がIn原子に比べて原子の大きさが小さく、よって、InがGaで置き換えられる比率が増加するにつれて格子定数が減少するに伴う結果である。
[Ga]/[In+Ga]の組成比が増加するにつれて格子定数2 a及びcは線形的に減少することが知られている。
また、成長したCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜の格子定数はa=5.612Å、c=10.953Åであり、これより類推される[Ga]/[In+Ga]の組成比も0.32であり、XRFの結果と誤差範囲内でよく一致する。
CuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のXRD回折模様において、2θ=27.05°、36.07°に現れたピークはそれぞれ(112)、(211)面に該当するピークであり、44.97°のピークは(220/204)面に該当するピークである。
全てのXRD模様において観測される44.49°に位置しているピークは、Mo基板によるものである。
【0089】
また、図16に示すように、CuInSe2のラマンスペクトルにおいて175cm−1に現れたピークは、タニノ等(Tanino et. al.)の表示によればA1モードであり、214cm−1のピークは、最も高い横光学B2(TO)モードである。
CuIn0.65Ga0.35Se2薄膜のラマンスペクトルにおいて、179cm−1に現れたピークはA1モードであり、217cm−1のピークはB2(TO)モードである。
これらの音量子エネルギー(phonon energy)が、CuInSe2の場合においてより大きいエネルギー側へ移動したことが見られるが、これは、In原子が、それよりも原子大きさの小さいGaと入れ替えられることから、該当の格子振動モードの振動エネルギーが増加したためである。
【0090】
以上では好ましい例に上げて本発明を説明してきたが、本発明の技術思想はそれに限定されない。
すなわち、以上の例ではその代表例としてCuInSe2及びCuIn0.65Ga0.35Se2薄膜の製造工程についてのみ説明したが、これは、化学周期律表上におけるI族、III族及びVI族元素の中から選択された元素で構成されたI−III−VI2化合物の一実施例に過ぎず、本発明がそれに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記で説明した通り、本発明によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法は、既存の製造方法に比べて、一回の蒸着工程により最終薄膜が形成されるため、工程が簡素化されて経済的である他、製造された薄膜の内部気孔が少なく、且つ均一な表面が形成され、結果として太陽電池用吸収層として有用に使用できる。
【0092】
以上説明され且つ図面に示された本発明の例は、本発明の技術的思想を限定するものとして解釈してはならない。
本発明の技術分野における通常の知識を有する者にとっては、本発明の技術的思想内で様々な形態への改変が可能であり、これらの改変は、通常の知識を有する者に明らかなものである限り、いずれも本発明の保護範囲に属するというべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、RとR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項1に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態の1価のCuの
.tylaceto)の略記であり、DMBは、3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。+
【請求項4】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項3に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項3に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項6】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、前記III族元素と異なるIII’族元素を含む前駆体を共に供給しながら蒸着させ、I−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記III’族元素を含む前駆体として、R3M形態の前駆体(ここで、Rは、C1〜C6のアルキル基を表し、Mは、Al、In、Gaなどを表す。)を使用することを特徴とする請求項6に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記III’族元素を含む前駆体として、III’族元素及びVI族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項6に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態の1価のCuの前駆体(ここで、hfacはヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項9に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項10に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項10に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項13】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上にIII族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、前記VI族元素と異なるVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させ、I−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項14】
前記VI’族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す)を使用することを特徴とする請求項13に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項15】
前記VI’族元素を含む前駆体として、III族元素及びVI’族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項13に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項16】
前記VI’族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項13に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項17】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれかに記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項18】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態の1価のCuの前駆体(ここで、hfacはヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項17に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項19】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項18に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項20】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項19に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項21】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させ、単一のMOCVD工程によりI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項22】
前記III’族元素を含む前駆体として、R3M形態の前駆体(ここで、Rは、C1〜C6のアルキル基を表し、Mは、Al、In、Gaなどを表す。)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項23】
前記III’族元素を含む前駆体として、III’族元素及びVI族元素またはIII’族元素及びVI’族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項24】
前記VI’族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項25】
前記VI’族元素を含む前駆体として、III族元素及びVI’族元素またはIII’族元素及びVI’族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項26】
前記VI’族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項27】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項21乃至請求項26のいずれか1項に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項28】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態のCu 1価の前駆体(ここで、hfacはヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項27に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項29】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項28に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項30】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項29に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項31】
請求項1、請求項6、請求項13または請求項21の単一の有機金属化学気相蒸着工程により製造されたI−III−VI2化合物薄膜を含んでいることを特徴とする太陽電池用吸収層。
【請求項1】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体と、I族金属を含む前駆体と、VI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスとを共に供給しながら蒸着させ、単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、RとR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項1に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態の1価のCuの
.tylaceto)の略記であり、DMBは、3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。+
【請求項4】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項3に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項3に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項6】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、前記III族元素と異なるIII’族元素を含む前駆体を共に供給しながら蒸着させ、I−III1−xIII’x−VI2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記III’族元素を含む前駆体として、R3M形態の前駆体(ここで、Rは、C1〜C6のアルキル基を表し、Mは、Al、In、Gaなどを表す。)を使用することを特徴とする請求項6に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記III’族元素を含む前駆体として、III’族元素及びVI族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項6に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態の1価のCuの前駆体(ここで、hfacはヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項9に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項10に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項10に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項13】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上にIII族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、前記VI族元素と異なるVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させ、I−III−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項14】
前記VI’族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す)を使用することを特徴とする請求項13に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項15】
前記VI’族元素を含む前駆体として、III族元素及びVI’族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項13に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項16】
前記VI’族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項13に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項17】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれかに記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項18】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態の1価のCuの前駆体(ここで、hfacはヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項17に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項19】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項18に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項20】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項19に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項21】
基板上に有機金属化学気相蒸着法を用いてI−III−VI2化合物薄膜を製造する方法であって、
基板上に、III族及びVI族元素を含む単一前駆体、I族金属を含む前駆体、及びVI族元素を含む前駆体またはVI族元素を含有するガスを使用して単一の有機金属化学気相蒸着工程によりI−III−VI2化合物薄膜を成長させる過程において、III’族元素を含む前駆体及びVI’族元素を含む前駆体またはVI’族元素を含有するガスを共に供給しながら蒸着させ、単一のMOCVD工程によりI−III1−xIII’x−(VI1−yVI’y)2化合物薄膜を形成することを特徴とする単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項22】
前記III’族元素を含む前駆体として、R3M形態の前駆体(ここで、Rは、C1〜C6のアルキル基を表し、Mは、Al、In、Gaなどを表す。)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項23】
前記III’族元素を含む前駆体として、III’族元素及びVI族元素またはIII’族元素及びVI’族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項24】
前記VI’族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項25】
前記VI’族元素を含む前駆体として、III族元素及びVI’族元素またはIII’族元素及びVI’族元素を含む[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項26】
前記VI’族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項21に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項27】
前記III族及びVI族元素を含む単一前駆体として、[R2M(μ−ER’)]2構造を有する単一前駆体(ここで、Mは、In、Ga、Alから選択されたIII族金属元素を表し、R及びR’は、それぞれ独立的にC1〜C6のアルキル基を表し、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、μは、MとEとが二重にブリッジされた結合をしているということを表す)を使用することを特徴とする請求項21乃至請求項26のいずれか1項に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項28】
前記I族元素を含む前駆体として、(hfac)Cu(DMB)形態のCu 1価の前駆体(ここで、hfacはヘキサフルオロアセチルアセト(hexafluoroacetylaceto)の略記であり、DMBは3,3−ジメチル−1−ブテン(3,3−dimethyl−1−butene)の略記である)を使用することを特徴とする請求項27に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項29】
前記VI族元素を含む前駆体として、R2E形態の前駆体(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表す。)を使用することを特徴とする請求項28に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項30】
前記VI族元素を含有するガスとして、H2E形態のガス(ここで、Eは、S、Se、Teから選択されたVI族カルコゲン元素を表す)を使用することを特徴とする請求項29に記載の単一の有機金属化学気相蒸着工程によるI−III−VI2化合物薄膜の製造方法。
【請求項31】
請求項1、請求項6、請求項13または請求項21の単一の有機金属化学気相蒸着工程により製造されたI−III−VI2化合物薄膜を含んでいることを特徴とする太陽電池用吸収層。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−530474(P2010−530474A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553506(P2009−553506)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001041
【国際公開番号】WO2008/111738
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506027262)イン−ソーラー−テック カンパニー,リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001041
【国際公開番号】WO2008/111738
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506027262)イン−ソーラー−テック カンパニー,リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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