説明

危険箇所回避支援装置

【課題】不意な事態が発生しても危険箇所の回避を支援できる危険箇所回避支援装置を提供する。
【解決手段】地図データおよび危険箇所データを記憶するデータ記憶部15と、現在位置を測位する測位部12と、目的地を入力する入力部11と、危険因子の危険の有無を判断する危険因子判断部13と、判断された危険因子の危険の有無に基づき、通常ルートまたは回避ルートのいずれを使用すべきかを判定する使用ルート判定部31と、通常ルートを使用すべき旨が判定された場合に、測位部12で測位された現在位置から入力部11で入力された目的地までの推奨ルートを、データ記憶部15から読み出した地図データに基づき計算する通常ルート計算部51と、回避ルートを使用すべき旨が判定された場合に、現在位置から目的地までの危険箇所を回避した推奨ルートを、データ記憶部15から読み出した地図データおよび危険箇所データに基づき計算する回避ルート計算部52を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばナビゲーション装置に搭載され、目的地までの経路上に存在する危険箇所の回避を支援する危険箇所回避支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、危険箇所回避支援装置の1つとして、車両が危険地区を走行する場合に、どのような危険が存在し得るのかを運転者に具体的に報知することができる危険箇所情報表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この危険箇所情報表示装置においては、車載器CPUは、車両の位置に基づいて、データ格納部にデータベースとして記録されているヒヤリハットマップ中のヒヤリハットポイントを車両が通過することが想定される場合、表示装置により当該ヒヤリハットポイントにおける危険因子に関する情報をフロントウインドウに投射し、実際の前方視界に重畳させて視覚的イメージで表示させる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−51973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された危険箇所情報表示装置においては、時々刻々と変化する外部条件、例えば外部通信が不可能になる状況、タイヤの磨耗、気象情報にない雨などを自車のみでリアルタイムに監視できないため、不意な事態に対処できないという問題がある。
【0005】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、不意な事態が発生しても危険箇所の回避を支援することができる危険箇所回避支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る危険箇所回避支援装置は、地図データおよび危険箇所を表す危険箇所データを記憶するデータ記憶部と、現在位置を測位する測位部と、目的地を入力する入力部と、危険因子の危険の有無を判断する危険因子判断部と、危険因子判断部で判断された危険因子の危険の有無に基づき、通常ルートまたは回避ルートのいずれを使用すべきかを判定する使用ルート判定部と、使用ルート判定部において、通常ルートを使用すべき旨が判定された場合に、測位部で測位された現在位置から入力部で入力された目的地までの推奨ルートを、データ記憶部から読み出した地図データに基づき計算する通常ルート計算部と、使用ルート判定部において、回避ルートを使用すべき旨が判定された場合に、測位部で測位された現在位置から入力部で入力された目的地までの危険箇所を回避した推奨ルートを、データ記憶部から読み出した地図データおよび危険箇所データに基づき計算する回避ルート計算部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る危険箇所回避支援装置によれば、危険因子の危険の有無に応じて、通常ルートまたは回避ルートをユーザに提供できるので、不意な事態が発生しても危険箇所の回避を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る危険箇所回避支援装置の構成を示すブロック図である。この危険箇所回避支援装置は、ナビゲーション装置の中に組み込まれて実現されており、制御部10、入力部11、測位部12、危険因子判断部13、フラグ判定値設定部14、データ記憶部15および表示部16から構成されている。
【0009】
制御部10は、例えばマイクロコンピュータから構成されており、この危険箇所回避支援装置の全体を制御する。この制御部10の詳細は後述する。
【0010】
入力部11は、例えば出発地、経由地または目的地などを入力するために用いられ、図示しない本体パネルに設けられた入力ボタン、リモートコントローラ(リモコン)、表示部16の画面上に載置されたタッチパネル、音声操作を行うための音声入力用マイクロホン(図示は省略する)、または、これらの組合せによって構成されている。この入力部11から入力されたデータは、操作データとして制御部10に送られる。
【0011】
測位部12は、GPS(Global Positioning System)受信機、車速センサおよび角速度センサ(いずれも図示は省略する)から得られる信号に基づいて自車の現在位置を計算し、自車位置データとして制御部10に送る。
【0012】
危険因子判断部13は、夜間検知部21、外気温検知部22、雨滴検知部23およびタイヤ磨耗検知部24を備えている。
【0013】
夜間検知部21は、ナビゲーション装置に内蔵される時計およびカレンダ(図示は省略する)から得られる現在の時刻および季節に基づき、周囲が暗い時間帯(例えば、夏は20時〜4時、冬は17時〜7時など)を判断し、周囲が暗い時間帯、つまり夜間帯であれば、危険因子の1つとしての夜間走行フラグをセット(「1」に設定)し、夜間帯でなければ夜間走行フラグをクリア(「0」に設定)する。この夜間走行フラグの設定状態は、制御部10に送られる。
【0014】
外気温検知部22は、車両に搭載された温度計(図示は省略する)から得られる信号に基づき外気温を判断し、例えば外気温が0°C以下になった場合は、路面凍結の恐れがあるため、危険因子の1つとして外気温フラグをセットし、外気温が0°Cより大きい場合は、外気温フラグをクリアする。この外気温フラグの設定状態は、制御部10に送られる。
【0015】
雨滴検知部23は、車両に搭載された雨滴検知センサ(図示は省略する)から得られる信号、または、ワイパーが所定時間以上継続して動作していることを示す信号に基づき降雨があるか否かを判断し、降雨があることを判断した場合は、危険因子の1つとして雨フラグをセットし、降雨がないことを判断した場合は、雨フラグをクリアする。この雨フラグの設定状態は、制御部10に送られる。
【0016】
タイヤ磨耗検知部24は、ユーザが入力部11を用いて入力したタイヤの溝の深さが、例えば2mm以下であるかどうかを判断し、タイヤの溝の深さが2mm以下であることを判断した場合は、タイヤが磨耗している旨を認識し、危険因子の1つとしてタイヤ磨耗フラグをセットし、タイヤの溝の深さが2mmより大きいことを判断した場合は、タイヤが磨耗していない旨を認識してタイヤ磨耗フラグをクリアする。このタイヤ磨耗フラグの設定状態は、制御部10に送られる。
【0017】
なお、タイヤ磨耗検知部24は、タイヤの溝の深さを、ユーザが入力部11から入力した値からではなく、オプションとして画像認識装置17を追加し、この画像認識装置17から得られる画像データを解析して求めるように構成することもできる。
【0018】
フラグ判定値設定部14は、この発明の選択手段の一部に対応し、上述した夜間走行フラグ、外気温フラグ、雨フラグおよびタイヤ磨耗フラグを有効にするか否かを指示するフラグ判定値を設定する。フラグ判定値は、夜間走行フラグ、外気温フラグ、雨フラグおよびタイヤ磨耗フラグの各々に対応させて設けられる。このフラグ判定値設定部14で設定されたフラグ判定値は、制御部10に送られる。
【0019】
データ記憶部15は、地図データおよび危険箇所データを記憶する。地図データは、基本的には、交差点に対応するノードと2つの交差点(ノード)を結ぶ道路に対応する道路リンクとの集合から構成されており、地図の表示または目的地までのルート計算などに用いられる。
【0020】
危険箇所データは、以下のデータを含む。
(1)雨または外気温などといった気象条件により路面が通常より滑りやすくなるような箇所、例えばマンホール、グレーチングまたは橋などといった凍結しやすい路面を示すデータ。
(2)夜間走行時に危険因子を見落とす危険性が増加するような箇所、例えば狭い道、障害物が多い道路などを示すデータ。なお、時間帯毎の渋滞情報などは、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System)から得ることができるので、ここで言うデータには含まれない。
(3)タイヤが磨耗している状態では、通常よりグリップ力が低下し、コーナーなどで滑りやすくなるので、グリップ力低下時にスリップする危険がある箇所、例えば事故が多いコーナーなどを示すデータ。
【0021】
このデータ記憶部15に記憶されている地図データおよび危険箇所データは、制御部10によって読み出される。
【0022】
表示部16は、制御部10から送られてくる表示データに従って、例えば自車の周辺の地図、目的地までのルート、その他の種々のメッセージを表示する。
【0023】
次に、制御部10の詳細を説明する。制御部10は、使用ルート判定部31および案内ルート計算部32を備えている。
【0024】
使用ルート判定部31は、フラグ判定値記憶部41を備えている。このフラグ判定値記憶部41は、この発明の選択手段の他の一部に対応し、フラグ判定値設定部14から送られてくるフラグ判定値を記憶する。使用ルート判定部31は、フラグ判定値設定部14に記憶されているフラグ判定値と危険因子判断部13から送られてくる夜間走行フラグ、外気温フラグ、雨フラグおよびタイヤ磨耗フラグとを比較することにより、通常ルートまたは回避ルートのいずれを使用するかを判定する。この使用ルート判定部31の判定結果は、案内ルート計算部32に送られる。
【0025】
案内ルート計算部32は、通常ルート計算部51および回避ルート計算部52を備えている。通常ルート計算部51は、入力部11から送られてきた操作データによって示される出発地または測位部12から送られてきた自車位置データによって示される現在位置から、入力部11から送られてきた操作データによって示される目的地までの推奨ルートを、データ記憶部15から読み出した地図データに基づき計算する。この通常ルート計算部51で計算された推奨ルートを表すデータは、表示部16に送られる。
【0026】
回避ルート計算部52は、入力部11から送られてきた操作データによって示される出発地または測位部12から送られてきた自車位置データによって示される現在位置から、入力部11から送られてきた操作データによって示される目的地までの危険箇所を回避した推奨ルートを、データ記憶部15から読み出した地図データおよび危険箇所データに基づき計算する。この回避ルート計算部52で計算された推奨ルートを表すデータは、表示部16に送られる。
【0027】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係る危険箇所回避支援装置の動作を、ユーザを目的地まで案内するルート案内を開始させるルート案内開始処理を中心に、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、フラグ判定値は、フラグ判定値設定部14を用いてフラグ判定値記憶部41にあらかじめ設定されており、また、目的地は、入力部11を用いて案内ルート計算部32に設定されているものとする。
【0028】
入力部11からの指示によりルート案内開始処理が開始されると、まず、危険因子判断モードはONであるかどうかが調べられる(ステップST11)。すなわち、使用ルート判定部31は、危険因子判断部13から送られてくる夜間走行フラグ、外気温フラグ、雨フラグおよびタイヤ磨耗フラグの少なくとも1つがセット(「1」に設定)されているかどうかを調べる。このステップST11において、危険因子判断モードはONでないことが判断されると、シーケンスはステップST14に進む。
【0029】
一方、ステップST11において、危険因子判断モードはONであることが判断されると、次いで、危険因子のフラグが立っているかどうかが調べられる(ステップST12)。すなわち、使用ルート判定部31は、フラグ判定値記憶部41に記憶されているフラグ設定値(危険因子を表す夜間走行フラグ、外気温フラグ、雨フラグおよびタイヤ磨耗フラグに対応する値)の少なくとも1つが設定されているかどうかを調べる。
【0030】
このステップST12において、危険因子のフラグが立っていないことが判断されると、シーケンスはステップST14に進む。ステップST14においては、通常ルート案内が行われる。すなわち、通常ルート計算部51は、測位部12から送られてきた自車位置データによって示される現在位置から、入力部11から入力された目的地までの推奨ルートを、データ記憶部15から読み出した地図データに基づき計算する。この通常ルート計算部51で計算された推奨ルートを表すデータは、表示部16に送られる。これにより、危険箇所の回避を行わない通常の案内ルートが表示部16に表示され、ルート案内が開始される。以上により、ルート案内開始処理は終了する。
【0031】
上記ステップST12において、危険因子のフラグが立っていることが判断されると、回避ルート案内が行われる(ステップST13)。すなわち、回避ルート計算部52は、測位部12から送られてきた自車位置データによって示される現在位置から、入力部11から入力された目的地までの推奨ルートを、データ記憶部15から読み出した地図データおよび危険箇所データに基づき計算する。この回避ルート計算部52で計算された推奨ルートを表すデータは、表示部16に送られる。これにより、危険箇所を回避した案内ルートが表示部16に表示され、ルート案内が開始される。以上により、ルート案内開始処理は終了する。
【0032】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る危険箇所回避支援装置によれば、雨、外気温、時間帯およびタイヤ磨耗といった危険因子の危険の有無に応じて、通常ルートまたは回避ルートをユーザに提供できるので、不意な事態が発生しても危険箇所の回避を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態1に係る危険箇所回避支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る危険箇所回避支援装置の動作を、ルート案内開始処理を中心に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
10 制御部、11 入力部、12 測位部、13 危険因子判断部、14 フラグ判定値設定部(選択手段)、15 データ記憶部、16 表示部、17 画像認識装置、21 夜間検知部、22 外気温検知部、23 雨滴検知部、24 タイヤ磨耗検知部、31 使用ルート判定部、32 案内ルート計算部、41 フラグ判定値記憶部(選択手段)、51 通常ルート計算部、52 回避ルート計算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データおよび危険箇所を表す危険箇所データを記憶するデータ記憶部と、
現在位置を測位する測位部と、
目的地を入力する入力部と、
危険因子の危険の有無を判断する危険因子判断部と、
前記危険因子判断部で判断された危険因子の危険の有無に基づき、通常ルートまたは回避ルートのいずれを使用すべきかを判定する使用ルート判定部と、
前記使用ルート判定部において、通常ルートを使用すべき旨が判定された場合に、前記測位部で測位された現在位置から前記入力部で入力された目的地までの推奨ルートを、前記データ記憶部から読み出した地図データに基づき計算する通常ルート計算部と、
前記使用ルート判定部において、回避ルートを使用すべき旨が判定された場合に、前記測位部で測位された現在位置から前記入力部で入力された目的地までの危険箇所を回避した推奨ルートを、前記データ記憶部から読み出した地図データおよび危険箇所データに基づき計算する回避ルート計算部
とを備えた危険箇所回避支援装置。
【請求項2】
危険因子判断部で判断される危険因子は、雨、外気温、時間帯およびタイヤ磨耗の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1記載の危険箇所回避支援装置。
【請求項3】
危険因子判断部で危険の有無が判断される複数の危険因子の中から、通常ルートまたは回避ルートのいずれを使用すべきかの判定に使用する危険因子を選択する選択手段を備え、
使用ルート判定部は、前記危険因子判断部で危険の有無が判断される危険因子のうち、前記選択手段で選択された危険因子の危険の有無に基づき、通常ルートまたは回避ルートのいずれを使用すべきかを判定する
ことを特徴とする請求項2記載の危険箇所回避支援装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−8350(P2010−8350A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170714(P2008−170714)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】