原生動物寄生虫に関連する疾患の治療のためのRHO/ROCK/PI3/AKTキナーゼ阻害剤
本発明は原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防又は治療のために意図される医薬の製造のためのRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原生動物寄生虫疾患の治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリア及びアフリカトリパノソーマ症(睡眠病)は2の主要な熱帯のベクター伝染原生動物感染を代表する17。例えば、マラリアは現在危険性のある107の国に住む32億人の公衆衛生に対する主要な脅威のままである。毎年3〜5億の臨床事例が報告されており、及び100万人超の人が多器官不全(腎臓、肝臓、肺、すい臓)又は大脳マラリア(CM)と呼ばれる急性神経学的症候群の如き、Plasmodium falciparum感染(重篤なマラリア)1に関連する重篤な合併症で亡くなる。
【0003】
大脳マラリアはサハラ以南のアフリカにおいて幼い子供及び妊婦に主として影響し、一方で多器官不全は東南アジアにおいて主に成人で見られる。重篤なマラリア事例はその後すばやく、しばしば24時間以内に、昏睡に進行し、及び処置されないままの場合死に至りうる。CMは広範囲に研究されているが、その病因は明らかにされないままであり、及び上記疾患の開始を予想する方法はない。さらに、大脳合併症及び発作を導く事件の連続は十分に確立されていない。脳障害の他の原因が除外されたとき、CMは(損なわれた意識からひきつけ又は昏睡までの)急性神経学的症候群及びP. falciparumマラリア寄生虫の陽性末梢血スミアを示す、マラリア地方病領域に住む又は上記領域を最近旅行した患者において診断される2。
【0004】
これまで、重篤なマラリアのための緊急処置は主にキニンの静脈内投与から成っていたが、研究及び臨床試験は現在アルテミシニン及び誘導体の如き他の抗マラリア薬を用いることについて行われている3-5。寄生虫から血液を洗浄することにおけるそれらの分子の高い効率にもかかわらず、15〜20%の死亡率がまだ観察されており、及び遅延した小脳性運動失調又は他の認知の神経学的後遺症のいくつかの事例は昏睡回復後の処置された患者において報告されている6-8。したがって、主に直接的な抗寄生虫策に頼る、現在の重篤なマラリア治療は十分でないようであり、及び他の追加のアプローチは上記疾患の結果を改善するために必要とされる。
【0005】
小GTPアーゼのRhoファミリーのメンバーはさまざまな膜受容体のシグナル伝達において中枢の役割を果たすことが知られる。それらはGTP−結合のとき活性であり、及びGDP−結合のとき不活性である分子スイッチとしてはたらき、及び下流のエフェクターRho−キナーゼ(ROCK)を伴う細胞内シグナルカスケードのはじめの媒介物である10。Rho−キナーゼ阻害剤(ROCKI)は血管及び神経保護治療のために現在調査されている。ファスヂルは臨床使用に入手可能なRho−キナーゼ阻害剤である。それは市場に出ており、及びクモ膜下出血後の患者における大脳血管痙攣に対して1995年以来日本において広く使用されており、及び安定なアンギナ16又は大脳虚血卒中11の患者のためのフェーズ2臨床試験において安全で及び有効であることが近頃示されている。
本発明の目的は寄生虫感染に関連する病理のための処置を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明は、ファスヂルはPlasmodium falciparum誘発細胞死、内皮破壊、及び内皮活性化を予防する傾向があるという、本発明者による予想外の発見から生ずる。
【0007】
したがって、本発明は治療的に有効な量のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターを個体に投与することを含む、個体において原生動物寄生虫による感染に関連する病理を予防する及び/又は治療するための方法に関連する。
上記に定義される方法の態様は抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物を投与することをさらに含む。
【0008】
本発明はまた原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防及び/又は治療のために意図される医薬の製造のためのRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの使用にも関する。
上記に定義される使用の態様において、上記医薬は抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物をさらに含む。
本発明はまた医薬として許容される担体と共に、活性物質として:
−少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む医薬組成物にも関する。
【0009】
本発明はまた原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防又は治療のための同時の、別々の又は連続の使用のための混合された調製物として
−少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む製品にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター
本明細書中で意図されるように、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路はRho GTP−結合タンパク質、好ましくはRhoA;Rhoキナーゼ(ROCK)、好ましくはRhoAキナーゼ;フォスファチヂルイノシトール3キナーゼ(PI3K);Aktキナーゼ;内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)の如きAktキナーゼの細胞標的;及び膜伝達接着分子の如きRhoタンパク質と相互作用することによりRhoタンパク質を活性化する傾向がある細胞膜成分を含む。この経路はWolfrum et al.(2004) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 24:1842−1847において特に定義される。本発明者は、この経路が寄生虫細胞接着の結果として細胞、詳細には内皮細胞において活性化されうることを示した。より正確には、感染した生物の感染していない標的細胞の表面での寄生された細胞の又は寄生虫の接着は、これらの標的細胞において、膜伝達接着分子をとおしてRhoの活性化を誘発する;活性化されたRhoはその後いくつかの他の標的のうち、PI3K及びAktキナーゼを阻害するRho−キナーゼを活性化する。感染した赤血球により接着された内皮細胞において、例えば、Aktキナーゼ阻害は今度はeNOS阻害の原因であることができ、それは特にアポトーシスに対する負の制御のeNOSの発揮を緩和し、それにより内皮の接着された細胞のアポトーシス及び内皮破壊を誘発する。
【0011】
本明細書中で意図されるように、「Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター」は、上記経路の結果がRhoタンパク質の活性化に際して通常起こることと反対であるように、Rho/ROCK/PI3K/Akt経路の活性を調節する傾向がある化合物に関連する。明らかなように、上記モヂュレーターは原生動物寄生虫により感染される危険性のある又は感染される個体の細胞のRho/ROCK/PI3K/Akt経路を調節することをねらう。詳細には、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは(i)Rho及びRhoキナーゼのうちの少なくとも1を阻害する、及び/又は(ii)PI3K、Aktキナーゼ及びeNOSのうちの少なくとも1を活性化する傾向がある。好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターはその標的タンパク質(例えば、Rho、Rhoキナーゼ、PI3K、Aktキナーゼ又はeNOS)への結合により活動する。上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは詳細には感染した生物において寄生虫の細胞接着の負の結果を予防するために有用である。
【0012】
好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターはRhoキナーゼ阻害剤(ROCKI)である。ROCKIsはTamura et al. Development of specific Rho−kinase inhibitors and their clinical application Biochim. Biophys. Acta 2005;1754:245−252中に特に示される。他のROCKIsはまたEP 1256574、EP 1270570、及びEP 1550660中に示される。
【0013】
より好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化1】
【化2】
又はその医薬として許容される塩から成る群から選択されるROCKIである。
【0014】
最も好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化3】
又はその医薬として許容される塩から選択されるROCKIである。
【0015】
これらの後者の2の化合物はそれぞれ、(HA−1077又はAT877としても知られる)ファスヂル及び(H−4413としても知られる)ヒドロキシファスヂルである。ヒドロキシファスヂルはファスヂルの活性代謝産物である。
【0016】
本明細書中で意図されるとき、医薬として許容される塩は上記に挙げられる化合物の比較的非毒性の無機及び有機酸添加塩、及び塩基添加塩に関する。例示的な塩は臭化水素酸、塩酸、硫酸、重硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、吉草酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリル酸、ホウ酸、安息香酸、乳酸、リン酸、トシル酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、ナフチル酸、メシル酸、グルコヘプトン酸、ラクチオビオン酸、スルファミン酸、マロン酸、サリチル酸、プロピオン酸、メチレン−ビス−b−ヒドロキシナフトール酸(ヒドロキシナフトアート)、ゲンチジン酸、イセチオン酸、ヂ−p−トルオイル酒石酸、メタン−スルフォン酸、エタンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナテスラウリルスルフォン酸、アミン、及び金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム又はアルミニウム)塩等を含む(例えば、Berge et al.(1977)《Pharmaceutical Salts》 J. Pharm. Sci. 66:1−19を参照のこと)。
ファスヂルの塩酸塩は好ましい。
【0017】
病理
本明細書中で意図されるとき、「原生動物寄生虫による感染に関連する病理」は直接的に又は間接的に原生動物寄生虫による感染の結果である障害、疾患又は症候群に関する。本発明にしたがう病理は好ましくは、それ自体寄生虫細胞接着から特に生じうる、寄生虫誘発アポトーシス、細胞活性化、詳細には内皮活性化、及び/又は内皮破壊から部分的に又は全体的に生じる。
【0018】
好ましくは、上記原生動物寄生虫はTrypanosoma spp及びPlasmodium sppから成る群から選択される。詳細には、上記原生動物寄生虫はPlasmodium falciparum及びTrypanosoma brucei brucei、Trypanosoma brucei gambiense、及びTrypanosoma brucei rhodesienseの如き、Trypanosoma brucei sppから成る群から選択されうる。
【0019】
上記病理は好ましくはマラリア、及びアフリカトリパノソーマ症(睡眠病)から成る群から選択される。
より好ましくは、上記病理は重篤なマラリア、大脳マラリア、多器官不全症候群、及び進行した段階のアフリカトリパノソーマ症から成る群から選択される。
【0020】
抗寄生虫活性を有する化合物
本明細書中で意図されるとき、「抗寄生虫活性を有する化合物」は原生動物寄生虫による感染又はそれらの病理学的結果の治療の過程において使用されるどんな化合物にも関する。抗寄生虫活性を有する化合物は好ましくは感染した生物において寄生虫ロードを減少させるために使用される化合物に関する。
【0021】
Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは寄生虫疾患における補助治療として有用である。そのように、Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの及び抗寄生虫活性を有する化合物の関連は、それは寄生虫細胞接着により誘発される細胞活性化、詳細には内皮活性化、内皮破壊、及びアポトーシスの如き寄生虫感染の結果を予防する及び/又は治療する一方で寄生虫自体を破壊するので、本発明の枠組内で有益である。
【0022】
好ましくは、抗寄生虫活性を有する上記化合物は抗マラリア活性を有する化合物である。
好ましくは、抗マラリア活性を有する上記化合物はキニン(Quinine)、キニヂン(Quinidine)、キニン−ドキシサイクリン(Quinine−doxycycline)、アルテメテール(Artemether)、アルテモチル(Artemotil)、アルテスネート(Artesunate)、アルテエーテル(Arteether)、メフロキン(Mefloquine)、アモヂアキン(Amodiaquine)、ヂヒドロアルテミシニン(Dihydroartemisinine)、ピペラキン(Piperaquine)、ハロファントリン(Halofantrine)、アトヴァクオン(Atovaquone)、クロロキン(Chloroquine)、ダプソン(Dapsone)、ドキシサイクリン(Doxycycline)、サイクリン(Cycline)、ルメファントリン(Lumefanthrine)、プログアニル(Proguanil)、ピリメタミン(Pyrimethamine)、ピロナリヂン(Pyronaridine)、スルファドキシン(Sulfadoxine)、ヂアミヂン(Diamidine)、フェロキン(Ferroquine)、フルオロキノロン(Fluoroquinolone)、フォスミドマイシン(Fosmidomycine)、タフェノキン(Tafenoquine)、及びトリオキサキン(Trioxaquine)から成る群において選択される。
【0023】
投与
本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、抗寄生虫活性を有する化合物、医薬、医薬組成物又は製品は経口、皮内、静脈内、筋内又は直腸内経路により投与されうる。
【0024】
本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、抗寄生虫活性を有する化合物、医薬、医薬組成物又は製品は溶液、懸濁物、錠剤又はカプセルの形態で投与されうる。
【0025】
「医薬として許容される担体」の選択は当業者によりルーチンで決定されうる。それは一般的に上記活性物質の溶解性及び化学特性にしたがって決定される。例えば、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムの如き賦形剤及びステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクの如き潤滑剤と混合されたデンプン、アルギン酸及びいくつかのケイ酸塩複合体の如き崩壊剤は錠剤を調製するために使用されうる。カプセルを調製するために、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールを使用することは有益である。水性懸濁物が使用されるとき、それらは乳化剤又は懸濁を促進する剤を含みうる。スクロース、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及びクロロフォルム又はそれらの混合物の如き希釈剤もまた使用されうる。
【0026】
本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、抗寄生虫活性を有する化合物、医薬、医薬組成物又は製品がその必要のある個体に投与されうる用量は当業者によりルーチンで決定されうる。詳細には、抗寄生虫活性を有する上記化合物はそれが本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターと関連して使用されないときと同じ用量で投与されうる。
例のために、ファスヂルは50mg〜500mg、詳細には80mgの単位用量で、50mg/日〜500mg/日の投与量で、詳細には240mg/日で投与されうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は:(E)接触(黒色カラム)又は非接触(白色カラム)状態下でのコントロール内皮細胞;(RBC)コントロール赤血球により接触された(黒色カラム)又は接触されない(白色カラム)内皮細胞;(3D7)3D7クローンに寄生された赤血球により接触された(黒色カラム)又は接触されない(白色カラム)内皮細胞;(F12)F12クローンに寄生された赤血球により接触された(黒色カラム)又は接触されない(白色カラム)内皮細胞からの内皮細胞抽出物についての活性化されたRhoAの細胞質濃度([Rho−GTP]、垂直軸、任意の単位)を示す。結果は[Rho−GTP]を示す細胞抽出物の490nmでの光学濃度の計測後に得られた。データは3の独立した実験の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図2】図2は:(RhoA)G−LISA(商標)キット中に提供される精製RhoAタンパク質から成る陽性コントロール;(溶解緩衝液)G−LISA(商標)細胞抽出緩衝液;(E)コントロール内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(RBC)コントロール赤血球により接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(RBC+HF2)コントロール赤血球により及び37℃で24時間30μMのファスヂルで接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(pRBC)寄生された赤血球により接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(pRBC+HF2)寄生された赤血球により及び37℃で24時間30μMのファスヂルで接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物についての活性化されたRhoAの細胞質濃度([Rho−GTP]、垂直軸、任意の単位)を示す。結果は[Rho−GTP]を示す細胞抽出物の490nmでの光学濃度の計測後に得られた。データは3の独立した実験の平均+/−SDを表す。*P<0.05;**P<0.01。
【図3】図3はアポトーシス細胞により取り込まれるApoppercentage(商標)紫色素の存在下での(パネルA)非暴露内皮細胞;(パネルB)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞;(パネルC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞;(パネルD)寄生された赤血球に及び30μMのファスヂルに暴露された内皮細胞の逆相コントラスト顕微鏡写真を示す。矢印は紫色素の取り込みを示す。
【図4】図4は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露され、及び0μM(黒色カラム)、1μM(灰色カラム)又は30μM(水玉カラム)ファスヂルと共にインキュベートされた内皮細胞についての図3中に示される逆相コントラスト顕微鏡写真についての紫色素ピクセル数(Apop%、垂直軸)を示す。ピクセル数はAdobe(商標)Photoshop(商標)を用いて決定された。データは3の独立した実験の代表的な範囲の4の写真からのピクセル数の平均+/−SDを表す。
【図5】図5は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC+z−vad 10μM)寄生された赤血球に暴露された及び10μMの広範囲キャスパーゼ阻害剤z−vadと共にインキュベートされた内皮細胞、(pRBC+z−vad 100μM)寄生された赤血球に暴露された及び100μMのz−vadと共にインキュベートされた内皮細胞についての内皮の境界完全(630nmのEvans Blueマーカーの光学濃度(OD)、垂直軸、×10-3)を示す。データは3の独立した実験及びそれぞれの条件についての6の繰返しからの10-3光学濃度値の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図6】図6は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC+HF1)寄生された赤血球に暴露された及び続いて1μMのファスヂルで20時間処理された内皮細胞、(pRBC+HF2)寄生された赤血球に暴露された及び続いて30μMのファスヂルで20時間処理された内皮細胞についての内皮の境界完全(630nmのEvans Blueマーカーの光学濃度(OD)、垂直軸、×10-3)を示す。データは3の独立した実験及びそれぞれの条件当たり6の繰返しからの10-3光学濃度値の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図7】図7は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC+HF2)寄生された赤血球に暴露された及び続いて30μMのファスヂルで20時間処理された内皮細胞、(pRBC+HF2+LY)寄生された赤血球に暴露された及び続いて30μMのファスヂル及び15μMのPI3K阻害剤LY294002で20時間処理された内皮細胞についての内皮の境界完全(630nmのEvans Blueマーカーの光学濃度(OD)、垂直軸、×10-3)を示す。データは3の独立した実験及びそれぞれの条件当たり3の繰返しからの10-3光学濃度値の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図8】図8は非暴露(コントロール)又は非感染赤血球(RBC)、TNFα、寄生された赤血球(pRBC)及び寄生された赤血球+30μMのファスヂル(pRBC+HF2)に暴露された活性化HLEC(完全であり、部分的でない移動核NF−カッパーB P65サブユニット染色を伴う細胞)の数がカウントされたことを示す。データは陽性核P65細胞の%の平均+/−SDを示す。**P<0.005。
【実施例】
【0028】
実施例
材料及び方法:
ヒト肺内皮細胞(HLEC)の培養
初代内皮細胞(HLEC)を以前に示されるように12酵素消化後にヒト肺から単離し、及び連続勾配及び免疫磁気精製技術を用いて選択した。1のバッチに由来する9代目から12代目の内皮細胞を実験に使用した。使用前に、細胞を以前に示されるようにICAM−1、CD36、Von Willebrand factor、VCAM−1、CD31、E/P−セレクチン及びCSAのそれらの発現について確認した。HLECを10μg/mlの内皮細胞成長サプリメント(ECGS)(Upstate、Lake Placid、NY)及び10%のウシ胎児血清(Biowest、South America origin)で補充したM199培地(Gibco)中で、37℃で5%CO2で、8のチャンバーlab−tek(Nalge Nunc International, Napervil, I11)、6ウェルプレート(Becton Dickinson)又はTranswell insert supports(Corning Incorporated)を用いて育てた。
【0029】
Plasmodium falciparum培養
P. falciparum 3D714及びF129クローンを私たちの実験のために使用した。P. falciparum感染赤血球(pRBCs)を8.3g.l-1のHepes、2.1g.l-1のNaHCO、0.1mg.ml-1のジェンタマイシン及び2g.l-1のデキストロース及び0.4%のAlbumax II(Gibco、Invitrogen Corporation)で補充されたRPMI(Gibco)中の赤血球(RBC)の懸濁物中でTrager及びJensenの技術にしたがって培養中で維持した13。上記3D7クローンは以前に示されるように14接着表現型について特徴づけられ、及びICAM−1及びCD36についてそれぞれ30%及び45%でHLECに接着する。その派生型F12クローンはその乏しい接着特性のために使用された9(最大で1pRBC/20 HLEC、>1 pRBC/HLECが通常観察される3D7クローンと比較して)。それぞれの実験について、寄生虫培養物をPlasmagelフローティングにより成熟形でリッチにした15。簡単に記述すると、赤血球を5〜10%の寄生培養物で収穫し、及び2000rpmで5分間遠心分離した。細胞をPlasmion(商標)(fresenius kabi、France)中に再懸濁し、及び37℃で25分間インキュベートした。成熟トロフォゾイト(栄養体)及びシゾント(栄養体から生じた娘個体)を含む上側画分をその後集め、及びRPMI中で3回洗浄した。寄生された赤血球懸濁物をその後1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血に合わせた。
【0030】
試薬
凍結乾燥Rhoキナーゼ阻害剤ファスヂル(HA−1077)をBiaffin(Kassel、Germany)から購入し、及びPBS中で再構成した。ファスヂルを1μM(HF1)、30μM(HF2)又は100μM(HF3)で使用した。フォスファチヂルイノシトール3キナーゼ阻害剤LY294002をCalbiochemから購入し、及び15μMでの使用前に15mMストック溶液でエタノール中に可溶化した(LY)。キャスパーゼの広範囲阻害剤Z−VAD−fmkをSigmaから購入した。全ての試薬を−20℃で貯蔵した。
【0031】
内皮の境界完全の分析
事前に暴露されたpRBCs内皮細胞に対する処理の効果を計測するために、私たちは内皮単層をとおしたEvans Blue拡散に基づいた方法を開発した。簡単に記述すると、HLECをTranswell Permeable supports(ポリエステル膜、3μmポアサイズ、6.5mm直径、Corning Incorporated Life Sciences)上でM199培地中でコンフルエントになるまで育てた。3D7 P. falciparumクローンの成熟形をその後培養物から収穫し、及び1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血に合わせ、その後37℃、5%CO2で4時間共−インキュベートした。pRBC暴露後、内皮細胞単層をファスヂル(1μM又は30μM)で20時間処理した。非感染赤血球との同様のインキュベーション又は内皮細胞単独をコントロールとしてとった。Transwell区画をその後RPMIに基づく接着培地で3回洗浄した。Transwell insertsをPBSで満たした新しいプレートに移した;0.5mg/mLのEvans Blue(ICN Biomedicals Inc.)の溶液をその後上側区画に添加し、及び37℃、5%CO2で5分間インキュベートした。下側区画を標準のマイクロタイタープレートリーダー(Bio−Tek(商標)EL311SX、Instruments Inc)を用いた拡散されたEvans Blueの630nmでの光学濃度分析のために最後に回収した。
【0032】
定量的アポトーシス分析
内皮アポトーシスをBiocolor Ltd.(Belfast、Northern Ireland)から購入したAPOPercentage(商標)色素を用いて定量的に評価した。上記分析はアポトーシス細胞には選択的に組み込まれるが壊死細胞には組み込まれない赤紫色色素を使用する。上記色素の一方だけの取り込みはアポトーシスを経験する細胞の外側の膜のフォスファチヂルセリンをとおして起こる。内皮細胞をコンフルエントになるまで6ウェルプレート中で培養し、その後P. falciparum感染赤血球に24時間暴露した。HLECを共−インキュベーション時間が達成される前にApopercentage色素(1/20)と共に1時間インキュベートし、及び注意深くPBSで3回洗浄した。アポトーシスをその後Analytical Digital Photomicroscopy(ADP)により定量した:それぞれの実験について、細胞培養物のそれぞれのウェルの4の代表的な範囲をデジタルカメラとカップリングした逆相コントラスト顕微鏡を用いて写真に撮った。イメージをその後コンピューターに移し、及びアポトーシスの値をAdobe(商標)Photoshop(商標)によりカウントされる赤色ピクセル数として表した。
【0033】
RhoA/Rhoキナーゼ経路活性化分析
RhoA及びその下流のエフェクターRhoキナーゼの活性をCytoskeleton(Denver,CO)から購入したG−LISA(商標)RhoA Activation Assay Biochem Kitを用いて評価した。上記分析の原理はRho−GTP結合タンパク質コーティングされた96ウェルプレート及び免疫試薬での最終的な検出で培養細胞から抽出された活性GTP結合RhoAの量を決定することである。簡単に記述すると、HLECを製造業者により推奨されるように50〜70%コンフルエントになるまで6ウェルプレート中で培養し、及び1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血でP. falciparum感染赤血球又は非感染赤血球に暴露した。使用されるとき、ファスヂルを30μMで寄生虫と付随して添加した。24時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、及びプロテアーゼ阻害剤を含むリン酸緩衝塩水中に氷冷溶解した。細胞溶解物をその後タンパク質濃度の計測前に4℃、10,000rpmで2分間の遠心分離により不純物除去した。細胞抽出物を溶解緩衝液で等しくして同一のタンパク質濃度を与え、Rho−GTPアフィニティプレート中で4℃で30分間インキュベートした。G−LISA(商標)キット中に提供される抗体検出試薬(第一抗RhoA抗体、第二抗体、HRP検出試薬)を添加し、及びシグナルをルミノメトリー分析(490nm)で発展した。接触なし分析において、HLECをTranswell(0.4μMポアのポリエステル膜)(Corning Incorporated Life Sciences)の下側区画中でコンフルエントになるまでサブ培養した。pRBC及びコントロールRBCをその後上側区画に添加し、及び37℃で24時間インキュベートし、その後上記に示されるようにG−LISA(商標)試験を行った。
【0034】
統計分析
それぞれの実験を独立に3回行い、及びそれぞれの共−培養条件から回収したデータを平均±SDとして表す。結果を一方向ANOVA、続いてTukey多比較試験を用いて統計的有意差について分析した。p<0.05の値は有意と考えられた。
【0035】
実施例1
ファスヂルはヒト内皮細胞においてP. falciparum接触により誘発されるRhoA/Rho−キナーゼ経路活性化を妨げうる
本発明者はP. falciparumが内皮細胞においてRhoA/Rho−キナーゼ経路を誘発することができることをはじめて確立した。
簡単に記述すると、P. falciparum感染赤血球(pRBC)又は非感染赤血球(RBC)と共に24時間共−インキュベートされたHLECにおけるRhoA活性を材料及び方法の節において示されるようにG−LISA(商標)RhoA活性化キット(Cytoskeleton, Denver CO)を用いて計測した。
図1中に見られるように、感染した赤血球と共に24時間共−インキュベートされたHLECは非感染赤血球に暴露されたHLEC(p<0.01)又は非暴露HLEC(p<0.01)に比較して細胞活性化RhoA濃度における顕著な増大を示した。
さらに、本発明者は、HLEC及び感染した赤血球(pRBC)の間の物理的接触がRhoA活性に必要とされることを示した。
【0036】
簡単に記述すると、HLECを細胞接着を避けるために「接触なし」分析におけるpRBC又はコントロールRBCと共にトランスウェルにおいて共−インキュベートした(材料及び方法の節)。この状態において、区画は赤血球が内皮細胞に接着することを妨げるが巨大分子及び培地の通過を妨げない多孔性膜(0.4μmポア)により分離された。接触なし分析におけるpRBCとの共−インキュベーションは基底値と同様の活性化RhoA濃度を示した。
これはpRBCsを調製するためにP. falciparum 3D7クローンの代わりに細胞接着性のないP. falciparum F12クローンを用いてさらに確認された。F12はRhoA/Rho−キナーゼ経路を誘発することができなかった。
本発明者はその後、24時間のpRBC接触共−インキュベーションにおける30μMの既知のRhoA/Rho−キナーゼ阻害剤、ファスヂルはpRBCのみ(p<0.05)に比較して活性化RhoA濃度における顕著な減少を誘発する傾向があることを示した(図2)。
【0037】
実施例2
Rho−キナーゼ阻害剤ファスヂルはP. falciparum誘発内皮細胞アポトーシスを減少させる
本発明者はそれから、ファスヂルはP. falciparum誘発アポトーシスから内皮細胞を保護する傾向があることを示した。
簡単に記述すると、Analytical Digital Photomicroscopy(ADP)を用いてアポトーシスHLECによる赤紫色素の放出を定量的に評価することにより、APOPercentage(商標)を誘発されたアポトーシス及びpRBC/HLEC共−インキュベーション中の細胞生存に対するファスヂルの効果を定量するための手段として使用した。HLECは暴露されなかった(図3、パネルA)、RBCと共に共−インキュベートされた(図3、パネルB)又はpRBCのみと共に(図3、パネルC)、1μMのファスヂルと共に(図3、パネルD)又は30μMのファスヂルと共に(図4)共−インキュベートされた。
【0038】
したがって、本発明者は、pRBCはRBCに比較されるときHLECアポトーシスを誘発することができることを観察した(9.5倍)。しかしながら、細胞が1μMのファスヂルで処理されるとき、非処理細胞と比較してpRBC暴露HLECのアポトーシスにおける減少が観察される(1.4倍減少)。アポトーシスにおけるこの減少は細胞がより高い濃度のファスヂル(30μM)で処理されるとき増強される(4.1倍減少)。
【0039】
実施例3
Rho−キナーゼ阻害剤でのP. falciparum誘発内皮浸透性の復帰
本発明者は、P. falciparumは、おそらく細胞アポトーシスのために、境界完全の喪失を導く内皮浸透性に対する強烈な効果を有しうることを示した。
簡単に記述すると、内皮境界機能に対するP. falciparum細胞接着効果をコンフルエントになるまでTranswell insertsにおいてHLECを培養し、その後上記のようにpRBCの成熟形にそれらを4時間暴露することにより評価した。下側区画において回収されたEvans Blueの量はコントロールRBC/HLEC(p<0.01)又は非暴露内皮細胞条件(p<0.01)におけるよりpRBC/HLEC共−インキュベーション条件において顕著に高かった。それらのコントロールにおいて回収されたEvans Blueは同等の値のままであり、及びRBC共−インキュベーションの場合において観察されたわずかな増大は顕著でない。さらに、pRBC/HLEC共−インキュベーション条件における下側区画中のEvans Blueの量は広範囲キャスパーゼ阻害剤z−vadの存在下で顕著に減少された(図5)。したがって、Evans Blueの通過は比較的妨げられ、アポトーシス阻害をとおした単層浸透性の改善を反映した。
【0040】
本発明者はそれから、ファスヂルはP. falciparum誘発内皮浸透性を妨げうることを示した。
簡単に記述すると、HLECをコンフルエントになるまでTranswell insertsにおいて培養した。得られた細胞単層をその後pRBC接着に4時間暴露し、続いて1μM又は30μMのファスヂルで(図6)及び/又は15μMのPI3K阻害剤LY294002で(図7)20時間処理した。内皮境界完全を上記に示されるように評価した。
【0041】
上記インキュベーションをHLEC、pRBC及び30μMのファスヂルと共に行ったとき、Evans Blueマーカーの量はインキュベーションがHLEC及びpRBCと共に行われたとき(p<0.01)より顕著に低いことがわかった(図6)。そのうえ、ファスヂルの効果はLY294002により逆転されることができ、そのことはファスヂルの効果は少なくとも部分的にはRhoキナーゼ阻害に続いて起こるPI3K活性化に由来することを示す(図7)。
【0042】
実施例4
P. falciparum誘発NF−カッパーB内皮活性化に対するファスヂルの効果
内皮活性化はP. falciparumマラリア急性相の重篤さにおいて重要な役割を果たすと考えられている18。P. falciparum細胞接着はNF−カッパーB転写因子を暗示するシグナルカスケードを介して前炎症性内皮応答を誘発することが知られる19,20。それらの刺激に際して、NF−カッパーBは特定の残基上でリン酸化され、活性化された状態になり、及び核へ移行する。
本発明者はそれゆえ、ファスヂルがまたP. falciparum誘発内皮活性化を調節しうるかどうかを試験した。
【0043】
簡単に記述すると、HLECを8チャンバーLabtekプレート中で培養し、及び1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血でpRBCに6時間暴露した。Rho−キナーゼ阻害剤ファスヂルを30μMでpRBCと同時に添加した。20ng/mlのTNFαをNF−カッパーB核移行の陽性コントロールとして使用した。細胞をその後固定し、及び第一抗NF−カッパーB P65サブユニット抗体及び第二FITC−抗マウスIgG抗体での免疫染色に浸透させた。核をヂアミヂノ−フェニルインドール(DAPI)で染色した。NF−カッパーB P65サブユニットの免疫染色後、結果を蛍光顕微鏡により分析し、及びそれぞれの条件(n=4)当たりの活性化されたHLEC(完全であり、部分的でない核移行P65染色を有する細胞)の数をカウントした(図8)。
【0044】
結果は、ファスヂルはP. falciparum誘発NF−カッパーB核移行の阻害により示されるようにP. falciparum誘発内皮活性化を顕著に減少させることを示す。
【0045】
引用文献
【化4】
【化5】
【技術分野】
【0001】
本発明は原生動物寄生虫疾患の治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリア及びアフリカトリパノソーマ症(睡眠病)は2の主要な熱帯のベクター伝染原生動物感染を代表する17。例えば、マラリアは現在危険性のある107の国に住む32億人の公衆衛生に対する主要な脅威のままである。毎年3〜5億の臨床事例が報告されており、及び100万人超の人が多器官不全(腎臓、肝臓、肺、すい臓)又は大脳マラリア(CM)と呼ばれる急性神経学的症候群の如き、Plasmodium falciparum感染(重篤なマラリア)1に関連する重篤な合併症で亡くなる。
【0003】
大脳マラリアはサハラ以南のアフリカにおいて幼い子供及び妊婦に主として影響し、一方で多器官不全は東南アジアにおいて主に成人で見られる。重篤なマラリア事例はその後すばやく、しばしば24時間以内に、昏睡に進行し、及び処置されないままの場合死に至りうる。CMは広範囲に研究されているが、その病因は明らかにされないままであり、及び上記疾患の開始を予想する方法はない。さらに、大脳合併症及び発作を導く事件の連続は十分に確立されていない。脳障害の他の原因が除外されたとき、CMは(損なわれた意識からひきつけ又は昏睡までの)急性神経学的症候群及びP. falciparumマラリア寄生虫の陽性末梢血スミアを示す、マラリア地方病領域に住む又は上記領域を最近旅行した患者において診断される2。
【0004】
これまで、重篤なマラリアのための緊急処置は主にキニンの静脈内投与から成っていたが、研究及び臨床試験は現在アルテミシニン及び誘導体の如き他の抗マラリア薬を用いることについて行われている3-5。寄生虫から血液を洗浄することにおけるそれらの分子の高い効率にもかかわらず、15〜20%の死亡率がまだ観察されており、及び遅延した小脳性運動失調又は他の認知の神経学的後遺症のいくつかの事例は昏睡回復後の処置された患者において報告されている6-8。したがって、主に直接的な抗寄生虫策に頼る、現在の重篤なマラリア治療は十分でないようであり、及び他の追加のアプローチは上記疾患の結果を改善するために必要とされる。
【0005】
小GTPアーゼのRhoファミリーのメンバーはさまざまな膜受容体のシグナル伝達において中枢の役割を果たすことが知られる。それらはGTP−結合のとき活性であり、及びGDP−結合のとき不活性である分子スイッチとしてはたらき、及び下流のエフェクターRho−キナーゼ(ROCK)を伴う細胞内シグナルカスケードのはじめの媒介物である10。Rho−キナーゼ阻害剤(ROCKI)は血管及び神経保護治療のために現在調査されている。ファスヂルは臨床使用に入手可能なRho−キナーゼ阻害剤である。それは市場に出ており、及びクモ膜下出血後の患者における大脳血管痙攣に対して1995年以来日本において広く使用されており、及び安定なアンギナ16又は大脳虚血卒中11の患者のためのフェーズ2臨床試験において安全で及び有効であることが近頃示されている。
本発明の目的は寄生虫感染に関連する病理のための処置を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明は、ファスヂルはPlasmodium falciparum誘発細胞死、内皮破壊、及び内皮活性化を予防する傾向があるという、本発明者による予想外の発見から生ずる。
【0007】
したがって、本発明は治療的に有効な量のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターを個体に投与することを含む、個体において原生動物寄生虫による感染に関連する病理を予防する及び/又は治療するための方法に関連する。
上記に定義される方法の態様は抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物を投与することをさらに含む。
【0008】
本発明はまた原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防及び/又は治療のために意図される医薬の製造のためのRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの使用にも関する。
上記に定義される使用の態様において、上記医薬は抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物をさらに含む。
本発明はまた医薬として許容される担体と共に、活性物質として:
−少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む医薬組成物にも関する。
【0009】
本発明はまた原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防又は治療のための同時の、別々の又は連続の使用のための混合された調製物として
−少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む製品にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター
本明細書中で意図されるように、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路はRho GTP−結合タンパク質、好ましくはRhoA;Rhoキナーゼ(ROCK)、好ましくはRhoAキナーゼ;フォスファチヂルイノシトール3キナーゼ(PI3K);Aktキナーゼ;内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)の如きAktキナーゼの細胞標的;及び膜伝達接着分子の如きRhoタンパク質と相互作用することによりRhoタンパク質を活性化する傾向がある細胞膜成分を含む。この経路はWolfrum et al.(2004) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 24:1842−1847において特に定義される。本発明者は、この経路が寄生虫細胞接着の結果として細胞、詳細には内皮細胞において活性化されうることを示した。より正確には、感染した生物の感染していない標的細胞の表面での寄生された細胞の又は寄生虫の接着は、これらの標的細胞において、膜伝達接着分子をとおしてRhoの活性化を誘発する;活性化されたRhoはその後いくつかの他の標的のうち、PI3K及びAktキナーゼを阻害するRho−キナーゼを活性化する。感染した赤血球により接着された内皮細胞において、例えば、Aktキナーゼ阻害は今度はeNOS阻害の原因であることができ、それは特にアポトーシスに対する負の制御のeNOSの発揮を緩和し、それにより内皮の接着された細胞のアポトーシス及び内皮破壊を誘発する。
【0011】
本明細書中で意図されるように、「Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター」は、上記経路の結果がRhoタンパク質の活性化に際して通常起こることと反対であるように、Rho/ROCK/PI3K/Akt経路の活性を調節する傾向がある化合物に関連する。明らかなように、上記モヂュレーターは原生動物寄生虫により感染される危険性のある又は感染される個体の細胞のRho/ROCK/PI3K/Akt経路を調節することをねらう。詳細には、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは(i)Rho及びRhoキナーゼのうちの少なくとも1を阻害する、及び/又は(ii)PI3K、Aktキナーゼ及びeNOSのうちの少なくとも1を活性化する傾向がある。好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターはその標的タンパク質(例えば、Rho、Rhoキナーゼ、PI3K、Aktキナーゼ又はeNOS)への結合により活動する。上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは詳細には感染した生物において寄生虫の細胞接着の負の結果を予防するために有用である。
【0012】
好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターはRhoキナーゼ阻害剤(ROCKI)である。ROCKIsはTamura et al. Development of specific Rho−kinase inhibitors and their clinical application Biochim. Biophys. Acta 2005;1754:245−252中に特に示される。他のROCKIsはまたEP 1256574、EP 1270570、及びEP 1550660中に示される。
【0013】
より好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化1】
【化2】
又はその医薬として許容される塩から成る群から選択されるROCKIである。
【0014】
最も好ましくは、上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化3】
又はその医薬として許容される塩から選択されるROCKIである。
【0015】
これらの後者の2の化合物はそれぞれ、(HA−1077又はAT877としても知られる)ファスヂル及び(H−4413としても知られる)ヒドロキシファスヂルである。ヒドロキシファスヂルはファスヂルの活性代謝産物である。
【0016】
本明細書中で意図されるとき、医薬として許容される塩は上記に挙げられる化合物の比較的非毒性の無機及び有機酸添加塩、及び塩基添加塩に関する。例示的な塩は臭化水素酸、塩酸、硫酸、重硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、吉草酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリル酸、ホウ酸、安息香酸、乳酸、リン酸、トシル酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、ナフチル酸、メシル酸、グルコヘプトン酸、ラクチオビオン酸、スルファミン酸、マロン酸、サリチル酸、プロピオン酸、メチレン−ビス−b−ヒドロキシナフトール酸(ヒドロキシナフトアート)、ゲンチジン酸、イセチオン酸、ヂ−p−トルオイル酒石酸、メタン−スルフォン酸、エタンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナテスラウリルスルフォン酸、アミン、及び金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム又はアルミニウム)塩等を含む(例えば、Berge et al.(1977)《Pharmaceutical Salts》 J. Pharm. Sci. 66:1−19を参照のこと)。
ファスヂルの塩酸塩は好ましい。
【0017】
病理
本明細書中で意図されるとき、「原生動物寄生虫による感染に関連する病理」は直接的に又は間接的に原生動物寄生虫による感染の結果である障害、疾患又は症候群に関する。本発明にしたがう病理は好ましくは、それ自体寄生虫細胞接着から特に生じうる、寄生虫誘発アポトーシス、細胞活性化、詳細には内皮活性化、及び/又は内皮破壊から部分的に又は全体的に生じる。
【0018】
好ましくは、上記原生動物寄生虫はTrypanosoma spp及びPlasmodium sppから成る群から選択される。詳細には、上記原生動物寄生虫はPlasmodium falciparum及びTrypanosoma brucei brucei、Trypanosoma brucei gambiense、及びTrypanosoma brucei rhodesienseの如き、Trypanosoma brucei sppから成る群から選択されうる。
【0019】
上記病理は好ましくはマラリア、及びアフリカトリパノソーマ症(睡眠病)から成る群から選択される。
より好ましくは、上記病理は重篤なマラリア、大脳マラリア、多器官不全症候群、及び進行した段階のアフリカトリパノソーマ症から成る群から選択される。
【0020】
抗寄生虫活性を有する化合物
本明細書中で意図されるとき、「抗寄生虫活性を有する化合物」は原生動物寄生虫による感染又はそれらの病理学的結果の治療の過程において使用されるどんな化合物にも関する。抗寄生虫活性を有する化合物は好ましくは感染した生物において寄生虫ロードを減少させるために使用される化合物に関する。
【0021】
Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは寄生虫疾患における補助治療として有用である。そのように、Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの及び抗寄生虫活性を有する化合物の関連は、それは寄生虫細胞接着により誘発される細胞活性化、詳細には内皮活性化、内皮破壊、及びアポトーシスの如き寄生虫感染の結果を予防する及び/又は治療する一方で寄生虫自体を破壊するので、本発明の枠組内で有益である。
【0022】
好ましくは、抗寄生虫活性を有する上記化合物は抗マラリア活性を有する化合物である。
好ましくは、抗マラリア活性を有する上記化合物はキニン(Quinine)、キニヂン(Quinidine)、キニン−ドキシサイクリン(Quinine−doxycycline)、アルテメテール(Artemether)、アルテモチル(Artemotil)、アルテスネート(Artesunate)、アルテエーテル(Arteether)、メフロキン(Mefloquine)、アモヂアキン(Amodiaquine)、ヂヒドロアルテミシニン(Dihydroartemisinine)、ピペラキン(Piperaquine)、ハロファントリン(Halofantrine)、アトヴァクオン(Atovaquone)、クロロキン(Chloroquine)、ダプソン(Dapsone)、ドキシサイクリン(Doxycycline)、サイクリン(Cycline)、ルメファントリン(Lumefanthrine)、プログアニル(Proguanil)、ピリメタミン(Pyrimethamine)、ピロナリヂン(Pyronaridine)、スルファドキシン(Sulfadoxine)、ヂアミヂン(Diamidine)、フェロキン(Ferroquine)、フルオロキノロン(Fluoroquinolone)、フォスミドマイシン(Fosmidomycine)、タフェノキン(Tafenoquine)、及びトリオキサキン(Trioxaquine)から成る群において選択される。
【0023】
投与
本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、抗寄生虫活性を有する化合物、医薬、医薬組成物又は製品は経口、皮内、静脈内、筋内又は直腸内経路により投与されうる。
【0024】
本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、抗寄生虫活性を有する化合物、医薬、医薬組成物又は製品は溶液、懸濁物、錠剤又はカプセルの形態で投与されうる。
【0025】
「医薬として許容される担体」の選択は当業者によりルーチンで決定されうる。それは一般的に上記活性物質の溶解性及び化学特性にしたがって決定される。例えば、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムの如き賦形剤及びステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクの如き潤滑剤と混合されたデンプン、アルギン酸及びいくつかのケイ酸塩複合体の如き崩壊剤は錠剤を調製するために使用されうる。カプセルを調製するために、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールを使用することは有益である。水性懸濁物が使用されるとき、それらは乳化剤又は懸濁を促進する剤を含みうる。スクロース、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及びクロロフォルム又はそれらの混合物の如き希釈剤もまた使用されうる。
【0026】
本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、抗寄生虫活性を有する化合物、医薬、医薬組成物又は製品がその必要のある個体に投与されうる用量は当業者によりルーチンで決定されうる。詳細には、抗寄生虫活性を有する上記化合物はそれが本発明にしたがうRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターと関連して使用されないときと同じ用量で投与されうる。
例のために、ファスヂルは50mg〜500mg、詳細には80mgの単位用量で、50mg/日〜500mg/日の投与量で、詳細には240mg/日で投与されうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は:(E)接触(黒色カラム)又は非接触(白色カラム)状態下でのコントロール内皮細胞;(RBC)コントロール赤血球により接触された(黒色カラム)又は接触されない(白色カラム)内皮細胞;(3D7)3D7クローンに寄生された赤血球により接触された(黒色カラム)又は接触されない(白色カラム)内皮細胞;(F12)F12クローンに寄生された赤血球により接触された(黒色カラム)又は接触されない(白色カラム)内皮細胞からの内皮細胞抽出物についての活性化されたRhoAの細胞質濃度([Rho−GTP]、垂直軸、任意の単位)を示す。結果は[Rho−GTP]を示す細胞抽出物の490nmでの光学濃度の計測後に得られた。データは3の独立した実験の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図2】図2は:(RhoA)G−LISA(商標)キット中に提供される精製RhoAタンパク質から成る陽性コントロール;(溶解緩衝液)G−LISA(商標)細胞抽出緩衝液;(E)コントロール内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(RBC)コントロール赤血球により接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(RBC+HF2)コントロール赤血球により及び37℃で24時間30μMのファスヂルで接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(pRBC)寄生された赤血球により接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物;(pRBC+HF2)寄生された赤血球により及び37℃で24時間30μMのファスヂルで接触された内皮細胞からの内皮細胞抽出物についての活性化されたRhoAの細胞質濃度([Rho−GTP]、垂直軸、任意の単位)を示す。結果は[Rho−GTP]を示す細胞抽出物の490nmでの光学濃度の計測後に得られた。データは3の独立した実験の平均+/−SDを表す。*P<0.05;**P<0.01。
【図3】図3はアポトーシス細胞により取り込まれるApoppercentage(商標)紫色素の存在下での(パネルA)非暴露内皮細胞;(パネルB)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞;(パネルC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞;(パネルD)寄生された赤血球に及び30μMのファスヂルに暴露された内皮細胞の逆相コントラスト顕微鏡写真を示す。矢印は紫色素の取り込みを示す。
【図4】図4は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露され、及び0μM(黒色カラム)、1μM(灰色カラム)又は30μM(水玉カラム)ファスヂルと共にインキュベートされた内皮細胞についての図3中に示される逆相コントラスト顕微鏡写真についての紫色素ピクセル数(Apop%、垂直軸)を示す。ピクセル数はAdobe(商標)Photoshop(商標)を用いて決定された。データは3の独立した実験の代表的な範囲の4の写真からのピクセル数の平均+/−SDを表す。
【図5】図5は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC+z−vad 10μM)寄生された赤血球に暴露された及び10μMの広範囲キャスパーゼ阻害剤z−vadと共にインキュベートされた内皮細胞、(pRBC+z−vad 100μM)寄生された赤血球に暴露された及び100μMのz−vadと共にインキュベートされた内皮細胞についての内皮の境界完全(630nmのEvans Blueマーカーの光学濃度(OD)、垂直軸、×10-3)を示す。データは3の独立した実験及びそれぞれの条件についての6の繰返しからの10-3光学濃度値の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図6】図6は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC+HF1)寄生された赤血球に暴露された及び続いて1μMのファスヂルで20時間処理された内皮細胞、(pRBC+HF2)寄生された赤血球に暴露された及び続いて30μMのファスヂルで20時間処理された内皮細胞についての内皮の境界完全(630nmのEvans Blueマーカーの光学濃度(OD)、垂直軸、×10-3)を示す。データは3の独立した実験及びそれぞれの条件当たり6の繰返しからの10-3光学濃度値の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図7】図7は(E)非暴露内皮細胞、(RBC)コントロール赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC)寄生された赤血球に暴露された内皮細胞、(pRBC+HF2)寄生された赤血球に暴露された及び続いて30μMのファスヂルで20時間処理された内皮細胞、(pRBC+HF2+LY)寄生された赤血球に暴露された及び続いて30μMのファスヂル及び15μMのPI3K阻害剤LY294002で20時間処理された内皮細胞についての内皮の境界完全(630nmのEvans Blueマーカーの光学濃度(OD)、垂直軸、×10-3)を示す。データは3の独立した実験及びそれぞれの条件当たり3の繰返しからの10-3光学濃度値の平均+/−SDを表す。**P<0.01。
【図8】図8は非暴露(コントロール)又は非感染赤血球(RBC)、TNFα、寄生された赤血球(pRBC)及び寄生された赤血球+30μMのファスヂル(pRBC+HF2)に暴露された活性化HLEC(完全であり、部分的でない移動核NF−カッパーB P65サブユニット染色を伴う細胞)の数がカウントされたことを示す。データは陽性核P65細胞の%の平均+/−SDを示す。**P<0.005。
【実施例】
【0028】
実施例
材料及び方法:
ヒト肺内皮細胞(HLEC)の培養
初代内皮細胞(HLEC)を以前に示されるように12酵素消化後にヒト肺から単離し、及び連続勾配及び免疫磁気精製技術を用いて選択した。1のバッチに由来する9代目から12代目の内皮細胞を実験に使用した。使用前に、細胞を以前に示されるようにICAM−1、CD36、Von Willebrand factor、VCAM−1、CD31、E/P−セレクチン及びCSAのそれらの発現について確認した。HLECを10μg/mlの内皮細胞成長サプリメント(ECGS)(Upstate、Lake Placid、NY)及び10%のウシ胎児血清(Biowest、South America origin)で補充したM199培地(Gibco)中で、37℃で5%CO2で、8のチャンバーlab−tek(Nalge Nunc International, Napervil, I11)、6ウェルプレート(Becton Dickinson)又はTranswell insert supports(Corning Incorporated)を用いて育てた。
【0029】
Plasmodium falciparum培養
P. falciparum 3D714及びF129クローンを私たちの実験のために使用した。P. falciparum感染赤血球(pRBCs)を8.3g.l-1のHepes、2.1g.l-1のNaHCO、0.1mg.ml-1のジェンタマイシン及び2g.l-1のデキストロース及び0.4%のAlbumax II(Gibco、Invitrogen Corporation)で補充されたRPMI(Gibco)中の赤血球(RBC)の懸濁物中でTrager及びJensenの技術にしたがって培養中で維持した13。上記3D7クローンは以前に示されるように14接着表現型について特徴づけられ、及びICAM−1及びCD36についてそれぞれ30%及び45%でHLECに接着する。その派生型F12クローンはその乏しい接着特性のために使用された9(最大で1pRBC/20 HLEC、>1 pRBC/HLECが通常観察される3D7クローンと比較して)。それぞれの実験について、寄生虫培養物をPlasmagelフローティングにより成熟形でリッチにした15。簡単に記述すると、赤血球を5〜10%の寄生培養物で収穫し、及び2000rpmで5分間遠心分離した。細胞をPlasmion(商標)(fresenius kabi、France)中に再懸濁し、及び37℃で25分間インキュベートした。成熟トロフォゾイト(栄養体)及びシゾント(栄養体から生じた娘個体)を含む上側画分をその後集め、及びRPMI中で3回洗浄した。寄生された赤血球懸濁物をその後1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血に合わせた。
【0030】
試薬
凍結乾燥Rhoキナーゼ阻害剤ファスヂル(HA−1077)をBiaffin(Kassel、Germany)から購入し、及びPBS中で再構成した。ファスヂルを1μM(HF1)、30μM(HF2)又は100μM(HF3)で使用した。フォスファチヂルイノシトール3キナーゼ阻害剤LY294002をCalbiochemから購入し、及び15μMでの使用前に15mMストック溶液でエタノール中に可溶化した(LY)。キャスパーゼの広範囲阻害剤Z−VAD−fmkをSigmaから購入した。全ての試薬を−20℃で貯蔵した。
【0031】
内皮の境界完全の分析
事前に暴露されたpRBCs内皮細胞に対する処理の効果を計測するために、私たちは内皮単層をとおしたEvans Blue拡散に基づいた方法を開発した。簡単に記述すると、HLECをTranswell Permeable supports(ポリエステル膜、3μmポアサイズ、6.5mm直径、Corning Incorporated Life Sciences)上でM199培地中でコンフルエントになるまで育てた。3D7 P. falciparumクローンの成熟形をその後培養物から収穫し、及び1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血に合わせ、その後37℃、5%CO2で4時間共−インキュベートした。pRBC暴露後、内皮細胞単層をファスヂル(1μM又は30μM)で20時間処理した。非感染赤血球との同様のインキュベーション又は内皮細胞単独をコントロールとしてとった。Transwell区画をその後RPMIに基づく接着培地で3回洗浄した。Transwell insertsをPBSで満たした新しいプレートに移した;0.5mg/mLのEvans Blue(ICN Biomedicals Inc.)の溶液をその後上側区画に添加し、及び37℃、5%CO2で5分間インキュベートした。下側区画を標準のマイクロタイタープレートリーダー(Bio−Tek(商標)EL311SX、Instruments Inc)を用いた拡散されたEvans Blueの630nmでの光学濃度分析のために最後に回収した。
【0032】
定量的アポトーシス分析
内皮アポトーシスをBiocolor Ltd.(Belfast、Northern Ireland)から購入したAPOPercentage(商標)色素を用いて定量的に評価した。上記分析はアポトーシス細胞には選択的に組み込まれるが壊死細胞には組み込まれない赤紫色色素を使用する。上記色素の一方だけの取り込みはアポトーシスを経験する細胞の外側の膜のフォスファチヂルセリンをとおして起こる。内皮細胞をコンフルエントになるまで6ウェルプレート中で培養し、その後P. falciparum感染赤血球に24時間暴露した。HLECを共−インキュベーション時間が達成される前にApopercentage色素(1/20)と共に1時間インキュベートし、及び注意深くPBSで3回洗浄した。アポトーシスをその後Analytical Digital Photomicroscopy(ADP)により定量した:それぞれの実験について、細胞培養物のそれぞれのウェルの4の代表的な範囲をデジタルカメラとカップリングした逆相コントラスト顕微鏡を用いて写真に撮った。イメージをその後コンピューターに移し、及びアポトーシスの値をAdobe(商標)Photoshop(商標)によりカウントされる赤色ピクセル数として表した。
【0033】
RhoA/Rhoキナーゼ経路活性化分析
RhoA及びその下流のエフェクターRhoキナーゼの活性をCytoskeleton(Denver,CO)から購入したG−LISA(商標)RhoA Activation Assay Biochem Kitを用いて評価した。上記分析の原理はRho−GTP結合タンパク質コーティングされた96ウェルプレート及び免疫試薬での最終的な検出で培養細胞から抽出された活性GTP結合RhoAの量を決定することである。簡単に記述すると、HLECを製造業者により推奨されるように50〜70%コンフルエントになるまで6ウェルプレート中で培養し、及び1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血でP. falciparum感染赤血球又は非感染赤血球に暴露した。使用されるとき、ファスヂルを30μMで寄生虫と付随して添加した。24時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、及びプロテアーゼ阻害剤を含むリン酸緩衝塩水中に氷冷溶解した。細胞溶解物をその後タンパク質濃度の計測前に4℃、10,000rpmで2分間の遠心分離により不純物除去した。細胞抽出物を溶解緩衝液で等しくして同一のタンパク質濃度を与え、Rho−GTPアフィニティプレート中で4℃で30分間インキュベートした。G−LISA(商標)キット中に提供される抗体検出試薬(第一抗RhoA抗体、第二抗体、HRP検出試薬)を添加し、及びシグナルをルミノメトリー分析(490nm)で発展した。接触なし分析において、HLECをTranswell(0.4μMポアのポリエステル膜)(Corning Incorporated Life Sciences)の下側区画中でコンフルエントになるまでサブ培養した。pRBC及びコントロールRBCをその後上側区画に添加し、及び37℃で24時間インキュベートし、その後上記に示されるようにG−LISA(商標)試験を行った。
【0034】
統計分析
それぞれの実験を独立に3回行い、及びそれぞれの共−培養条件から回収したデータを平均±SDとして表す。結果を一方向ANOVA、続いてTukey多比較試験を用いて統計的有意差について分析した。p<0.05の値は有意と考えられた。
【0035】
実施例1
ファスヂルはヒト内皮細胞においてP. falciparum接触により誘発されるRhoA/Rho−キナーゼ経路活性化を妨げうる
本発明者はP. falciparumが内皮細胞においてRhoA/Rho−キナーゼ経路を誘発することができることをはじめて確立した。
簡単に記述すると、P. falciparum感染赤血球(pRBC)又は非感染赤血球(RBC)と共に24時間共−インキュベートされたHLECにおけるRhoA活性を材料及び方法の節において示されるようにG−LISA(商標)RhoA活性化キット(Cytoskeleton, Denver CO)を用いて計測した。
図1中に見られるように、感染した赤血球と共に24時間共−インキュベートされたHLECは非感染赤血球に暴露されたHLEC(p<0.01)又は非暴露HLEC(p<0.01)に比較して細胞活性化RhoA濃度における顕著な増大を示した。
さらに、本発明者は、HLEC及び感染した赤血球(pRBC)の間の物理的接触がRhoA活性に必要とされることを示した。
【0036】
簡単に記述すると、HLECを細胞接着を避けるために「接触なし」分析におけるpRBC又はコントロールRBCと共にトランスウェルにおいて共−インキュベートした(材料及び方法の節)。この状態において、区画は赤血球が内皮細胞に接着することを妨げるが巨大分子及び培地の通過を妨げない多孔性膜(0.4μmポア)により分離された。接触なし分析におけるpRBCとの共−インキュベーションは基底値と同様の活性化RhoA濃度を示した。
これはpRBCsを調製するためにP. falciparum 3D7クローンの代わりに細胞接着性のないP. falciparum F12クローンを用いてさらに確認された。F12はRhoA/Rho−キナーゼ経路を誘発することができなかった。
本発明者はその後、24時間のpRBC接触共−インキュベーションにおける30μMの既知のRhoA/Rho−キナーゼ阻害剤、ファスヂルはpRBCのみ(p<0.05)に比較して活性化RhoA濃度における顕著な減少を誘発する傾向があることを示した(図2)。
【0037】
実施例2
Rho−キナーゼ阻害剤ファスヂルはP. falciparum誘発内皮細胞アポトーシスを減少させる
本発明者はそれから、ファスヂルはP. falciparum誘発アポトーシスから内皮細胞を保護する傾向があることを示した。
簡単に記述すると、Analytical Digital Photomicroscopy(ADP)を用いてアポトーシスHLECによる赤紫色素の放出を定量的に評価することにより、APOPercentage(商標)を誘発されたアポトーシス及びpRBC/HLEC共−インキュベーション中の細胞生存に対するファスヂルの効果を定量するための手段として使用した。HLECは暴露されなかった(図3、パネルA)、RBCと共に共−インキュベートされた(図3、パネルB)又はpRBCのみと共に(図3、パネルC)、1μMのファスヂルと共に(図3、パネルD)又は30μMのファスヂルと共に(図4)共−インキュベートされた。
【0038】
したがって、本発明者は、pRBCはRBCに比較されるときHLECアポトーシスを誘発することができることを観察した(9.5倍)。しかしながら、細胞が1μMのファスヂルで処理されるとき、非処理細胞と比較してpRBC暴露HLECのアポトーシスにおける減少が観察される(1.4倍減少)。アポトーシスにおけるこの減少は細胞がより高い濃度のファスヂル(30μM)で処理されるとき増強される(4.1倍減少)。
【0039】
実施例3
Rho−キナーゼ阻害剤でのP. falciparum誘発内皮浸透性の復帰
本発明者は、P. falciparumは、おそらく細胞アポトーシスのために、境界完全の喪失を導く内皮浸透性に対する強烈な効果を有しうることを示した。
簡単に記述すると、内皮境界機能に対するP. falciparum細胞接着効果をコンフルエントになるまでTranswell insertsにおいてHLECを培養し、その後上記のようにpRBCの成熟形にそれらを4時間暴露することにより評価した。下側区画において回収されたEvans Blueの量はコントロールRBC/HLEC(p<0.01)又は非暴露内皮細胞条件(p<0.01)におけるよりpRBC/HLEC共−インキュベーション条件において顕著に高かった。それらのコントロールにおいて回収されたEvans Blueは同等の値のままであり、及びRBC共−インキュベーションの場合において観察されたわずかな増大は顕著でない。さらに、pRBC/HLEC共−インキュベーション条件における下側区画中のEvans Blueの量は広範囲キャスパーゼ阻害剤z−vadの存在下で顕著に減少された(図5)。したがって、Evans Blueの通過は比較的妨げられ、アポトーシス阻害をとおした単層浸透性の改善を反映した。
【0040】
本発明者はそれから、ファスヂルはP. falciparum誘発内皮浸透性を妨げうることを示した。
簡単に記述すると、HLECをコンフルエントになるまでTranswell insertsにおいて培養した。得られた細胞単層をその後pRBC接着に4時間暴露し、続いて1μM又は30μMのファスヂルで(図6)及び/又は15μMのPI3K阻害剤LY294002で(図7)20時間処理した。内皮境界完全を上記に示されるように評価した。
【0041】
上記インキュベーションをHLEC、pRBC及び30μMのファスヂルと共に行ったとき、Evans Blueマーカーの量はインキュベーションがHLEC及びpRBCと共に行われたとき(p<0.01)より顕著に低いことがわかった(図6)。そのうえ、ファスヂルの効果はLY294002により逆転されることができ、そのことはファスヂルの効果は少なくとも部分的にはRhoキナーゼ阻害に続いて起こるPI3K活性化に由来することを示す(図7)。
【0042】
実施例4
P. falciparum誘発NF−カッパーB内皮活性化に対するファスヂルの効果
内皮活性化はP. falciparumマラリア急性相の重篤さにおいて重要な役割を果たすと考えられている18。P. falciparum細胞接着はNF−カッパーB転写因子を暗示するシグナルカスケードを介して前炎症性内皮応答を誘発することが知られる19,20。それらの刺激に際して、NF−カッパーBは特定の残基上でリン酸化され、活性化された状態になり、及び核へ移行する。
本発明者はそれゆえ、ファスヂルがまたP. falciparum誘発内皮活性化を調節しうるかどうかを試験した。
【0043】
簡単に記述すると、HLECを8チャンバーLabtekプレート中で培養し、及び1%のヘマトクリット及び50%の寄生虫血でpRBCに6時間暴露した。Rho−キナーゼ阻害剤ファスヂルを30μMでpRBCと同時に添加した。20ng/mlのTNFαをNF−カッパーB核移行の陽性コントロールとして使用した。細胞をその後固定し、及び第一抗NF−カッパーB P65サブユニット抗体及び第二FITC−抗マウスIgG抗体での免疫染色に浸透させた。核をヂアミヂノ−フェニルインドール(DAPI)で染色した。NF−カッパーB P65サブユニットの免疫染色後、結果を蛍光顕微鏡により分析し、及びそれぞれの条件(n=4)当たりの活性化されたHLEC(完全であり、部分的でない核移行P65染色を有する細胞)の数をカウントした(図8)。
【0044】
結果は、ファスヂルはP. falciparum誘発NF−カッパーB核移行の阻害により示されるようにP. falciparum誘発内皮活性化を顕著に減少させることを示す。
【0045】
引用文献
【化4】
【化5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防及び/又は治療のために意図される医薬の製造のためのRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの使用。
【請求項2】
上記原生動物寄生虫はTrypanosoma spp.及びPlasmodium spp.から成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記病理はマラリア及びアフリカトリパノソーマ症(睡眠病)から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
上記病理は重篤なマラリア、大脳マラリア、多器官不全症候群、及びアフリカトリパノソーマ症の進行した段階から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターはRhoキナーゼ阻害剤(ROCKI)である、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化1】
【化2】
【化3】
又はその医薬として許容される塩から成る群から選択されるROCKIである、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化4】
又はその医薬として許容される塩から成る群から選択されるROCKIである、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
上記医薬は抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
抗寄生虫活性を有する上記化合物は抗マラリア活性を有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
抗マラリア活性を有する上記化合物はキニン(Quinine)、キニヂン(Quinidine)、キニン−ドキシサイクリン(Quinine−doxycycline)、アルテメテール(Artemether)、アルテモチル(Artemotil)、アルテスネート(Artesunate)、アルテエーテル(Arteether)、メフロキン(Mefloquine)、アモヂアキン(Amodiaquine)、ヂヒドロアルテミシニン(Dihydroartemisinine)、ピペラキン(Piperaquine)、ハロファントリン(Halofantrine)、アトヴァクオン(Atovaquone)、クロロキン(Chloroquine)、ダプソン(Dapsone)、ドキシサイクリン(Doxycycline)、サイクリン(Cycline)、ルメファントリン(Lumefanthrine)、プログアニル(Proguanil)、ピリメタミン(Pyrimethamine)、ピロナリヂン(Pyronaridine)、スルファドキシン(Sulfadoxine)、ヂアミヂン(Diamidine)、フェロキン(Ferroquine)、フルオロキノロン(Fluoroquinolone)、フォスミドマイシン(Fosmidomycine)、タフェノキン(Tafenoquine)、及びトリオキサキン(Trioxaquine)から成る群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
医薬として許容される担体と共に、活性物質として:
−請求項1及び5〜7のいずれかにおいて定義される少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−請求項8〜10のいずれかにおいて定義される抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかにおいて定義される病理の予防及び/又は治療のための同時の、別々の又は連続の使用のための混合調製物として:
−請求項1及び5〜7のいずれかにおいて定義される少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−請求項8〜10のいずれかにおいて定義される抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む製品。
【請求項1】
原生動物寄生虫による感染に関連する病理の予防及び/又は治療のために意図される医薬の製造のためのRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターの使用。
【請求項2】
上記原生動物寄生虫はTrypanosoma spp.及びPlasmodium spp.から成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記病理はマラリア及びアフリカトリパノソーマ症(睡眠病)から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
上記病理は重篤なマラリア、大脳マラリア、多器官不全症候群、及びアフリカトリパノソーマ症の進行した段階から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターはRhoキナーゼ阻害剤(ROCKI)である、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化1】
【化2】
【化3】
又はその医薬として許容される塩から成る群から選択されるROCKIである、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
上記Rho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーターは以下の式の化合物:
【化4】
又はその医薬として許容される塩から成る群から選択されるROCKIである、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
上記医薬は抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
抗寄生虫活性を有する上記化合物は抗マラリア活性を有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
抗マラリア活性を有する上記化合物はキニン(Quinine)、キニヂン(Quinidine)、キニン−ドキシサイクリン(Quinine−doxycycline)、アルテメテール(Artemether)、アルテモチル(Artemotil)、アルテスネート(Artesunate)、アルテエーテル(Arteether)、メフロキン(Mefloquine)、アモヂアキン(Amodiaquine)、ヂヒドロアルテミシニン(Dihydroartemisinine)、ピペラキン(Piperaquine)、ハロファントリン(Halofantrine)、アトヴァクオン(Atovaquone)、クロロキン(Chloroquine)、ダプソン(Dapsone)、ドキシサイクリン(Doxycycline)、サイクリン(Cycline)、ルメファントリン(Lumefanthrine)、プログアニル(Proguanil)、ピリメタミン(Pyrimethamine)、ピロナリヂン(Pyronaridine)、スルファドキシン(Sulfadoxine)、ヂアミヂン(Diamidine)、フェロキン(Ferroquine)、フルオロキノロン(Fluoroquinolone)、フォスミドマイシン(Fosmidomycine)、タフェノキン(Tafenoquine)、及びトリオキサキン(Trioxaquine)から成る群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
医薬として許容される担体と共に、活性物質として:
−請求項1及び5〜7のいずれかにおいて定義される少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−請求項8〜10のいずれかにおいて定義される抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかにおいて定義される病理の予防及び/又は治療のための同時の、別々の又は連続の使用のための混合調製物として:
−請求項1及び5〜7のいずれかにおいて定義される少なくとも1のRho/ROCK/PI3K/Akt経路モヂュレーター、及び
−請求項8〜10のいずれかにおいて定義される抗寄生虫活性を有する少なくとも1の化合物
を含む製品。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2009−545544(P2009−545544A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522177(P2009−522177)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006857
【国際公開番号】WO2008/015001
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(504317743)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006857
【国際公開番号】WO2008/015001
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(504317743)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) (18)
【Fターム(参考)】
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