説明

可変容量圧縮機の容量制御システム

【課題】吸入圧力を機械的にフィードバック制御するための感圧部材を有さない簡単な構成の容量制御弁を備え、可変容量圧縮機の回転数が高いときに当該圧縮機の負荷を低減可能な可変容量圧縮機の容量制御システムを提供する。
【解決手段】可変容量圧縮機の容量制御システム(A)は、外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて吸入圧力の目標である目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段(410)を有する。目標吸入圧力設定手段(410)は、下限圧力よりも大きな値に目標吸入圧力を設定する。下限圧力は、圧縮機回転数検知手段によって検知された物理量に基づいて変化し、可変容量圧縮機の回転数が高い高回転数領域では、可変容量圧縮機の回転数が低い低回転数領域に比べて大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに適用される可変容量圧縮機の容量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用空調システムに用いられる往復動型の可変容量圧縮機は、ハウジングを備え、ハウジングの内部には吐出室、吸入室、クランク室及びシリンダボアが区画形成される。クランク室内を延びる駆動軸には斜板が傾動可能に連結され、斜板を含む変換機構は、駆動軸の回転をシリンダボア内に配置されたピストンの往復運動に変換する。ピストンの往復運動は、吸入室からシリンダボア内への作動流体の吸入、吸入した作動流体の圧縮及び圧縮された作動流体の吐出室への吐出工程を実行する。
【0003】
ピストンのストローク長、即ち圧縮機の吐出容量は、クランク室の圧力(制御圧力)を変化させることにより可変となり、吐出容量を制御するために、吐出室とクランク室とを連通する給気通路には容量制御弁が配置され、クランク室と吸入室とを連通する抽気通路には絞りが配置される。
吐出容量の制御には吸入圧力制御があり、吸入圧力制御を実行するため、容量制御弁には、吸入室の圧力(吸入圧力)を感知するための感圧部材を内蔵するものがある。このような容量制御弁を用いた可変容量圧縮機では、吸入圧力が、設定吸入圧力に近付くように感圧部材によって機械的にフィードバック制御(吸入圧力制御)される。
【0004】
より詳しくは、感圧部材は、例えばベローズ若しくはダイアフラムにより構成される。ベローズを用いた感圧部材の場合、真空又は大気圧に保たれたベローズの内側に圧縮コイルばねが配置され、ベローズの一端には、外側から吸入圧力が作用する。従って、感圧部材としてのベローズは、吸入圧力の減少に伴い伸張しようとする。
容量制御弁の弁体は、ソレノイドの電磁力とともに、感圧部材としてのベローズが伸張しようとして発生する押圧力が作用するよう配置されている。そして、ソレノイドへの通電量が一定の場合、吸入圧力が通電量に対応して定まる設定吸入圧力にて一定になるよう、容量制御弁の開度が変化する。
【0005】
特許文献1が開示する可変容量圧縮機の制御方法は、吸入圧力制御であるが、可変容量圧縮機の負荷を高回転数領域で低減すべく、回転数が所定値以上の領域では、ソレノイドに供給される電流が一定値よりも小さくなるよう制限され、設定吸入圧力が上昇させられる。これにより可変容量圧縮機の吐出容量が、高回転数領域では、最大吐出容量にならないと考えられる。
【特許文献1】特開平9-280171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の吸入圧力制御は、感圧部材を有する容量制御弁を使用することを前提とし、機械的に吸入圧力を検知するものである。このため、従来の吸入圧力制御では、制御コンピュータの負担は軽かったが、容量制御弁の構造は複雑になってしまう。
近年、制御コンピュータの能力は著しく向上しており、演算処理の増大やメモリの消費は以前ほど問題ではない。むしろ、容量制御弁の構造が複雑になるほうが、可変容量圧縮機における容量制御弁の装着スペースの確保や、取付け姿勢に制限が加わり、問題となることが多い。
【0007】
他方、車両用空調システムにおいては、可変容量圧縮機がエンジンを動力源として駆動される。このため、車両の加速や減速に伴い、可変容量圧縮機の回転数は急激な上昇や低下を繰り返す。このような大きな回転数変動に伴い、容量制御システムには、設定吸入圧力の増減を頻繁に行うことが要求されるが、吸入圧力の増減を安定に制御することは困難であった。
【0008】
本発明は上述した事情に基づいてなされたもので、その目的の1つは、吸入圧力を機械的にフィードバック制御するための感圧部材を有さない簡単な構成の容量制御弁を備え、可変容量圧縮機の回転数が高いときに当該圧縮機の負荷を低減可能な可変容量圧縮機の容量制御システムを提供することにある。
また、本発明の目的の1つは、可変容量圧縮機の回転数が増減するときに、当該圧縮機の負荷を増減する制御が安定して行われる可変容量圧縮機の容量制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するべく、本発明によれば、空調システムの冷凍サイクルを構成すべく冷媒が循環する循環路に放熱器、膨張器及び蒸発器とともに介挿され、制御圧力の変化に基づいて容量が変化する可変容量圧縮機の容量制御システムにおいて、前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吐出圧力とし、前記冷凍サイクルの吸入圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吸入圧力としたときに、前記吐出圧力を受けるとともに、前記吐出圧力と対向する方向にて前記吸入圧力及びソレノイドの電磁力を受けて弁孔を開閉可能な弁体を有し、前記弁孔を開閉して前記制御圧力を変化させることにより前記可変容量圧縮機の容量を調整可能な容量制御弁と、前記吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段及び前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知するための回転数検知手段を含み、前記吐出圧力及び前記物理量を含めて2つ以上の外部情報を検知するための外部情報検知手段と、前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて前記吸入圧力の目標である目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段と、前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力及び前記目標吸入圧力設定手段によって設定された目標吸入圧力に基づいて、前記容量制御弁のソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する制御電流調整手段とを具備し、前記目標吸入圧力設定手段は、下限圧力よりも大きな値に前記目標吸入圧力を設定し、前記下限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い高回転数領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い低回転数領域に比べて大きいことを特徴とする可変容量圧縮機の容量制御システムが提供される(請求項1)。
【0010】
好ましくは、前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い(請求項2)。
好ましくは、前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記下限圧力は第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられる(請求項3)。
【0011】
好ましくは、前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、前記下限圧力は前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられる(請求項4)。
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記制御電流若しくはパラメータが上限値以下になるよう調整し、前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が上限圧力以上になったとき、前記上限値は小さくなるよう変更され、前記上限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域に比べて小さい(請求項5)。
【0012】
好ましくは、前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が前記上限圧力よりも小さく且つ前記上限値が最大値よりも小さいときに、前記上限値は、前記最大値を超えない範囲で大きくなるよう変更される(請求項6)。
好ましくは、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い(請求項7)。
【0013】
好ましくは、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記上限圧力は前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられる(請求項8)。
【0014】
好ましくは、前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、前記上限圧力は前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられる(請求項9)。
好ましくは、前記制御電流若しくはパラメータの前記上限値が小さくなるよう変更された結果として前記上限値が最小値よりも小さくなったとき、前記制御電流調整手段は、吐出容量が最小になるよう前記制御電流若しくはパラメータを調整する(請求項10)。
【0015】
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力及び前記目標吸入圧力によって設定された目標吸入圧力に基づいて前記ソレノイドに供給する制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを演算する制御電流演算手段と、前記ソレノイドを流れる制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを検知する電流検知手段を含み、前記電流検知手段で検知された制御電流若しくはパラメータが前記制御電流演算手段によって演算された前記制御電流若しくはパラメータに近付くように、前記ソレノイドに供給される制御電流のデューティ比を調整する(請求項11)。
【0016】
好ましくは、前記外部情報検知手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度を検知するための蒸発器出口空気温度検知手段と、前記蒸発器を通過した直後の空気流の目標温度を設定する蒸発器目標出口空気温度設定手段とを含み、前記目標吸入圧力設定手段は、前記蒸発器出口空気温度検知手段によって検知された前記空気流の温度が蒸発器目標出口空気温度設定手段によって設定された前記目標温度に近付くように、前記目標吸入圧力を設定する(請求項12)。
【0017】
好ましくは、前記可変容量圧縮機は、内部に吐出室、クランク室、吸入室及びシリンダボアが区画形成されたハウジングと、前記シリンダボアに配設されたピストンと、前記ハウジング内に回転可能に支持された駆動軸と、前記駆動軸の回転を前記ピストンの往復運動に変換する傾角可変の斜板要素を含む変換機構と、前記吐出室と前記クランク室とを連通する給気通路と、前記吸入室と前記クランク室とを連通する抽気通路とを備え、前記容量制御弁は、前記給気通路及び前記抽気通路のうち一方に介挿されている(請求項13)。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、吸入圧力を機械的にフィードバック制御するための感圧部材を有さない、簡単な構造の容量制御弁を用いることにより、可変容量圧縮機における容量制御弁の装着スペースの確保が容易になるとともに取付け姿勢の自由度が高くなる。
一方、この容量制御システムでは、感圧部材を有さない容量制御弁を用いても、目標吸入圧力設定手段が目標吸入圧力を設定することにより、吸入圧力が目標吸入圧力に近付くように吐出容量が制御される。
【0019】
そして、目標吸入圧力を下限圧力よりも高く設定するとしながら、可変容量圧縮機の回転数が高い高回転数領域では、下限圧力を大きくすることにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で作動するのが規制され、可変容量圧縮機の負荷が低減される。
この結果として、この容量制御システムによれば、感圧部材を有さない容量制御弁を用いても、可変容量圧縮機の信頼性が確保される。
【0020】
請求項2の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、高回転数領域での第2下限圧力から、低回転数領域での第1下限圧力に切り替えられるべき回転数が、第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられるべき回転数よりも低いことにより、第2下限圧力と第1下限圧力との間で下限圧力が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の回転数が大きく増減しても、下限圧力の制御が安定する。
【0021】
請求項3の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、下限圧力が第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられることにより、下限圧力が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の回転数が大きく増減しても、下限圧力の制御が安定する。
【0022】
請求項4の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、第2下限圧力から第1下限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、下限圧力が第2下限圧力から第1下限圧力に切り替えられることにより、下限圧力が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の回転数が大きく増減しても、下限圧力の制御が安定する。
【0023】
請求項5の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、制御電流調整手段が、制御電流若しくは制御電流に関連するパラメータを上限値以下に調整するとしながら、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力が上限圧力以上になったとき、上限値は小さくなるよう変更され、吐出圧力が異常に上昇するのが防止される。
また、この容量制御システムでは、上限圧力を可変容量圧縮機の回転数が高い領域で小さくすることにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で作動するのが規制され、可変容量圧縮機の負荷が低減される。
【0024】
この結果として、この容量制御システムによれば、感圧部材を有さない容量制御弁を用いても、可変容量圧縮機の信頼性がより一層確保される。
請求項6の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、所定の条件が満たされたときに、上限値が最大値を超えない範囲で大きくなるよう変更されることにより、上限値が一旦小さく変更された後でも、制御電流を最大値まで供給可能になる。この結果として、この容量制御システムでは、状況に応じて、制御電流の供給範囲ひいては吸入圧力の制御範囲が適当に確保され、空調システムの冷房能力が確保される。
【0025】
請求項7の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、可変容量圧縮機の回転数が高い領域での第2上限圧力から、低い領域での第1上限圧力に切り替えられるべき回転数が、第1上限圧力から第2上限圧力に切り替えられるべき回転数よりも低いことにより、第2上限圧力と第1上限圧力との間で上限圧力が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の回転数が大きく増減しても、上限圧力の制御が安定する。
【0026】
請求項8の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、第1上限圧力から第2上限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、下限圧力が第1上限圧力から第2上限圧力に切り替えられることにより、上限圧力が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の回転数が大きく増減しても、上限圧力の制御が安定する。
【0027】
請求項9の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、第2上限圧力から第1上限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、上限圧力が第2下限圧力から第1上限圧力に切り替えられることにより、上限圧力が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の回転数が大きく増減しても、下限圧力の制御が安定する。
【0028】
請求項10の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、制御電流若しくはパラメータの上限値が最小値よりも小さくなったとき、可変容量圧縮機、空調システム又は空調システムが設置された例えば車両等に何らかの異常が発生したと判定して、吐出容量が最小にされる。これにより、空調システムの異常が車両等にもたらす影響が最小限に抑制される。
請求項11の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、電流検知手段によって検知された電流が制御電流に近付くようにデューティ比を制御することにより、吸入圧力が高精度にて制御される。
【0029】
請求項12の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、蒸発器を通過した直後の空気流の温度が蒸発器目標出口空気温度に近付き、空調システムにより空調される車室等の温度制御の精度が向上する。
請求項13の可変容量圧縮機の容量制御システムが適用された可変容量圧縮機は、往復動型であり、斜板要素の最小傾角で規定されるピストンのストロークを非常に小さく設定できる。このため、最小吐出容量が非常に小さく、吐出容量の機械的な可変範囲が広い。この結果として、この容量制御システムは、目標吸入圧力を設定することにより吸入圧力の制御範囲を拡大した効果が十分に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、一実施形態の可変容量圧縮機の容量制御システムAについて説明する。
図1は、容量制御システムAが適用された車両用空調システムの冷凍サイクル10を示し、冷凍サイクル10は、作動流体としての冷媒が循環する循環路12を備える。循環路12には、冷媒の流動方向でみて、圧縮機100、放熱器(凝縮器)14、膨張器(膨張弁)16及び蒸発器18が順次介挿され、圧縮機100が作動すると、圧縮機100の吐出容量に応じて循環路12を冷媒が循環する。すなわち、圧縮機100は、冷媒の吸入工程、吸入した冷媒の圧縮工程及び圧縮した冷媒の吐出工程からなる一連のプロセスを行う。
【0031】
蒸発器18は、車両用空調システムの空気回路の一部も構成しており、蒸発器18を通過する空気流は、蒸発器18内の冷媒によって気化熱を奪われることにより、冷却される。
容量制御システムAが適用される圧縮機100は可変容量圧縮機であり、例えば斜板式のクラッチレス圧縮機である。圧縮機100はシリンダーブロック101を備え、シリンダーブロック101には、複数のシリンダボア101aが形成されている。シリンダーブロック101の一端にはフロントハウジング102が連結され、シリンダーブロック101の他端には、バルブプレート103を介してリアハウジング(シリンダヘッド)104が連結されている。
【0032】
シリンダーブロック101及びフロントハウジング102はクランク室105を規定し、クランク室105内を縦断して駆動軸106が延びている。駆動軸106は、クランク室105内に配置された環状の斜板107を貫通し、斜板107は、駆動軸106に固定されたロータ108と連結部109を介してヒンジ結合されている。従って、斜板107は、駆動軸106に沿って移動しながら傾動可能である。
【0033】
ロータ108と斜板107との間を延びる駆動軸106の部分には、斜板107を最小傾角に向けて付勢するコイルばね110が装着され、斜板107を挟んで反対側の部分、即ち斜板107とシリンダーブロック101との間を延びる駆動軸106の部分には、斜板107を最大傾角に向けて付勢するコイルばね111が装着されている。
駆動軸106は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通し、駆動軸106の外端には、動力伝達装置としてのプーリ112に連結されている。プーリ112は、ボール軸受113を介してボス部102aによって回転自在に支持され、外部駆動源としてのエンジン114のプーリとの間にベルト115が架け回される。
【0034】
ボス部102aの内側には軸封装置116が配置され、フロントハウジング102の内部と外部とを遮断している。駆動軸106はラジアル方向及びスラスト方向にベアリング117,118,119,120によって回転自在に支持され、エンジン114からの動力がプーリ112に伝達され、プーリ112の回転と同期して回転可能である。
シリンダボア101a内にはピストン130が配置され、ピストン130には、クランク室105内に突出したテール部が一体に形成されている。テール部に形成された凹所130a内には一対のシュー132が配置され、シュー132は斜板107の外周部に対し挟み込むように摺接している。従って、シュー132を介して、ピストン130と斜板107とは互いに連動し、駆動軸106の回転によりピストン130がシリンダボア101a内を往復動する。
【0035】
リアハウジング104には、吸入室140及び吐出室142が区画形成され、吸入室140は、バルブプレート103に設けられた吸入孔103aを介してシリンダボア101aと連通可能である。吐出室142は、バルブプレート103に設けられた吐出孔103bを介してシリンダボア101aと連通している。なお、吸入孔103a及び吐出孔103bは、図示しない吸入弁及び吐出弁によってそれぞれ開閉される。
【0036】
シリンダーブロック101の外側にはマフラ150が設けられ、マフラケーシング152は、シリンダーブロック101に一体に形成されたマフラベース101bに図示しないシール部材を介して接合されている。マフラケーシング152及びマフラベース101bはマフラ空間154を規定し、マフラ空間154は、リアハウジング104、バルブプレート103及びマフラベース101bを貫通する吐出通路156を介して吐出室142と連通している。
【0037】
マフラケーシング152には吐出ポート152aが形成され、マフラ空間154には、吐出通路156と吐出ポート152aとの間を遮るように逆止弁200が配置されている。具体的には、逆止弁200は、吐出通路156側の圧力とマフラ空間154側の圧力との圧力差に応じて開閉し、圧力差が所定値より小さい場合閉作動し、圧力差が所定値より大きい場合開作動する。
【0038】
したがって吐出室142は、吐出通路156、マフラ空間154及び吐出ポート152aを介して循環路12の往路部分と連通可能であり、マフラ空間154は逆止弁200によって断続される。一方、吸入室140は、リアハウジング104に形成された吸入ポート104aを介して循環路12の復路部分と連通している。
リアハウジング104には、容量制御弁(電磁制御弁)300が収容され、容量制御弁300は給気通路160に介挿されている。給気通路160は、吐出室142とクランク室105との間を連通するようにリアハウジング104からバルブプレート103を経てシリンダーブロック101にまで亘っている。
【0039】
一方、吸入室140は、クランク室105と抽気通路162を介して連通している。抽気通路162は、駆動軸106とベアリング119,120との隙間、空間164及びバルブプレート103に形成された固定オリフィス103cからなる。
また、吸入室140は、リアハウジング104に形成された感圧通路166を通じて、給気通路160とは独立して容量制御弁300に接続されている。
【0040】
より詳しくは、図2に示したように、容量制御弁300は、弁ユニットと弁ユニットを開閉作動させる駆動ユニットとからなる。弁ユニットは、円筒状の弁ハウジング301を有し、弁ハウジング301の一端には入口ポート(弁孔301a)が形成されている。弁孔301aは、給気通路160の上流側部分を介して吐出室142と連通し、且つ、弁ハウジング301の内部に区画された弁室303に開口している。
【0041】
弁室303内には、円柱状の弁体304が収容されている。弁体304は、弁室303内を弁ハウジング301の軸線方向に移動可能であり、弁ハウジング301の端面に当接することで弁孔301aを閉塞可能である。すなわち、弁ハウジング301の端面は弁座として機能する。
また、弁ハウジング301の外周面には出口ポート301bが形成され、出口ポート301bは、給気通路160の下流側部分を介してクランク室105と連通する。出口ポート301bも弁室303に開口しており、弁孔301a、弁室303及び出口ポート301bを通じて、吐出室142とクランク室105とは連通可能である。
【0042】
駆動ユニットは円筒状のソレノイドハウジング310を有し、ソレノイドハウジング310は弁ハウジング301の他端に同軸的に連結されている。ソレノイドハウジング310の開口端は、エンドキャップ312によって閉塞され、ソレノイドハウジング310内には、ボビン314に巻回されたソレノイド316が収容されている。
またソレノイドハウジング310内には、同心上に円筒状の固定コア318が収容され、固定コア318は、弁ハウジング301からエンドキャップ312に向けてソレノイド316の中央まで延びている。固定コア318のエンドキャップ312側はスリーブ320によって囲まれ、スリーブ320は、エンドキャップ312側に閉塞端を有する。
【0043】
固定コア318は、中央に挿通孔318aを有し、挿通孔318aの一端は弁室303に開口している。また、固定コア318とスリーブ320の閉塞端との間には、円筒状の可動コア322を収容する可動コア収容空間324が規定され、挿通孔318aの他端は、可動コア収容空間324に開口している。
挿通孔318aには、ソレノイドロッド326が摺動可能に挿通され、ソレノイドロッド326の一端に弁体304が一体且つ同軸的に連結されている。ソレノイドロッド326の他端は可動コア収容空間324内に突出し、ソレノイドロッド326の他端部は、可動コア322に形成された貫通孔に嵌合され、ソレノイドロッド326と可動コア322とは一体化されている。また、可動コア322の段差面と固定コア318の端面との間には、開放ばね328が配置され、可動コア322と固定コア318との間には所定の隙間が確保されている。
【0044】
可動コア322、固定コア318、ソレノイドハウジング310及びエンドキャップ312は磁性材料で形成され、磁気回路を構成する。スリーブ320は非磁性材料のステンレス系材料で形成されている。
ソレノイドハウジング310には感圧ポート310aが形成され、感圧ポート310aには、感圧通路166を介して吸入室140が接続されている。固定コア318の外周面には、軸線方向に延びる感圧溝318bが形成され、感圧ポート310aと感圧溝318bとは互いに連通している。従って、感圧ポート310a及び感圧溝318bを通じて、吸入室140と可動コア収容空間324とが連通し、ソレノイドロッド326を介して、弁体304の背面側には、閉弁方向に吸入室140の圧力(以下、吸入圧力Psと呼ぶ)が作用する。
【0045】
ソレノイド316には、圧縮機100の外部に設けられた制御装置400が接続され、制御装置400から制御電流Iが供給されると、ソレノイド316は電磁力F(I)を発生する。ソレノイド316の電磁力F(I)は、可動コア322を固定コア318に向けて吸引し、弁体304に対して閉弁方向に作用する。
容量制御弁300にあっては、好ましくは、弁体304が弁孔301aを閉じた時に吐出室142の圧力(以下、吐出圧力Pdという)が作用する弁体304の受圧面積(シール面積Svと呼ぶ)と、吸入圧力Psが作用する弁体304の面積、即ちソレノイドロッド326の断面積とが同等に形成される。
【0046】
この場合、弁体304には、開閉方向にクランク室105の圧力(以下、クランク圧力Pcと呼ぶ)は、実質的にほとんど作用しない。従って、弁体304に作用する力は、吐出圧力Pdと、吸入圧力Psと、ソレノイド316の電磁力F(I)と、開放ばね328の付勢力fsであり、吐出圧力Pd及び開放ばね328の付勢力fsは開弁方向、それ以外の吸入圧力Ps及びソレノイド316の電磁力F(I)は、開弁方向とは対抗する閉弁方向に作用する。
【0047】
この関係は、式(1)で示され、式(1)を変形すると式(2)となる。これらの式(1)、(2)から、吐出圧力Pdと、電磁力F(I)即ち制御電流Iが決まれば、吸入圧力Psが決まることがわかる。
【0048】
【数1】

【0049】
このような関係に基づけば、図3に示したように、吸入圧力Psの目標値として目標吸入圧力Pssを予め決定し、変動する吐出圧力Pdの情報がわかれば、発生させるべき電磁力F(I)つまり制御電流Iを演算できる。そして、ソレノイド316に供給された制御電流Iをこの演算された制御電流Iに等しくなるよう調整すれば、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように弁体304が動作し、クランク圧力Pcが調整される。すなわち、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように吐出容量が制御される。
【0050】
このように吸入圧力Psを目標吸入圧力Pssに近付けるような制御では、図3を参照すれば、吐出圧力Pdの高低に応じて、目標吸入圧力Pssの設定範囲、換言すれば吸入圧力Psの制御範囲を高低スライド可能である。すなわち、任意の吐出圧力Pd1のときの吸入圧力Psの制御範囲は、吐出圧力Pd1よりも低い吐出圧力Pd2のときの吸入圧力Psの制御範囲よりも高圧側にスライドさせられる。
【0051】
また式(2)から、シール面積Svを小さく設定すれば、小さな電磁力F(I)で、任意の吐出圧力Pdにおける目標吸入圧力Pssの制御範囲を拡大可能であることがわかる。上記目標吸入圧力Pssの制御範囲のスライドと、この制御範囲の拡大との相乗効果を発揮させれば、目標吸入圧力Pssの制御範囲が大幅に拡大される。
なお、ソレノイド316への通電量を増加させると、吸入圧力Psを低下させることができる。一方、ソレノイド316への通電量をゼロとすれば、開放ばね328の付勢力fsにより弁体304が離間して弁孔301aが強制開放される。これにより吐出室142からクランク室105に冷媒が導入され、吐出容量は最小に維持される。
【0052】
図4は、制御装置400を含む容量制御システムAの概略構成を示したブロック図である。
容量制御システムAは、2つ以上の外部情報を検知する外部情報検知手段を有し、外部情報検知手段は、蒸発器目標出口空気温度設定手段401及び蒸発器出口空気温度検知手段としての温度センサ402を含む。
【0053】
蒸発器目標出口空気温度設定手段401は、車室内温度設定を含む種々の外部情報に基づいて、圧縮機100の吐出容量制御の目標となる蒸発器18の出口での空気温度Teの目標値(蒸発器目標出口空気温度)Tesを設定し、そして、設定した蒸発器目標出口空気温度Tesを外部情報の1つとして制御装置400に入力する。蒸発器目標出口空気温度設定手段401は、例えば、空調システム全体の動作を制御するエアコン用ECUの一部により構成することができる。
【0054】
温度センサ402は、空気回路における蒸発器18の出口に設置され、蒸発器18を通過した直後の空気温度Teを検知する(図1参照)。検知された空気温度Teは、外部情報の1つとして制御装置400に入力される。
また、外部情報検知手段は、圧縮機100の回転数Ncnを検知するための圧縮機回転数検知手段を含む。圧縮機回転数検知手段は、エンジン114の回転数を検知するエンジン回転数センサ403を有し、エンジン回転数センサ403によって検知されたエンジン114の回転数に、所定のプーリー比を乗じることにより、圧縮機100の回転数Ncnを検知することができる。
【0055】
圧縮機回転数検知手段の構成は特に限定されず、圧縮機100の回転数に関連する物理量に基づいて、圧縮機100の回転数を検知可能であればよい。なお、圧縮機100の回転数に関連する物理量には、圧縮機100の回転数自体も含まれる。
更に、外部情報検知手段は吐出圧力検知手段を含み、吐出圧力検知手段は、その一部を構成する圧力センサ404を有する。吐出圧力検知手段は、弁体304に作用する吐出圧力Pdを検知するための手段である。圧力センサ404は、放熱器14の入口側に装着され、当該部位における冷媒の圧力(以下、検知圧力Phという)を検知し、制御装置400に入力する(図1参照)。
【0056】
なお、吐出圧力Pd及び検知圧力Phは、冷凍サイクル10の吐出圧力領域の圧力という一般的な意味においては、いずれも吐出圧力である。冷凍サイクル10の吐出圧力領域とは、吐出室142から放熱器14の入口までの領域をさす。
これに対し、冷凍サイクル10の吸入圧力領域とは、蒸発器18の出口から吸入室140に亘る領域をさす。また、吐出圧力領域には、圧縮工程にあるシリンダボア101aも含まれ、吸入圧力領域には、吸入工程にあるシリンダボア101aも含まれる。
【0057】
制御装置400は、例えば、独立したECU(電子制御ユニット)によって構成されるが、エアコン用ECU又はエンジン114の動作を制御するエンジン用ECUに含ませてもよい。また、蒸発器目標出口空気温度設定手段401を制御装置400に含ませてもよい。
制御装置400は、目標吸入圧力設定手段410、圧力補正手段411、制御電流演算手段412及びソレノイド駆動手段413を有する。
【0058】
目標吸入圧力設定手段410は、温度センサ402によって実際に検知された蒸発器出口空気温度Teと、蒸発器目標出口空気温度設定手段401によって設定された蒸発器目標出口空気温度Tesとの偏差ΔTに基づいて、制御目標となる吸入圧力Psの目標値である目標吸入圧力Pssを設定する。
つまり、目標吸入圧力設定手段410にとって、温度センサ402及び蒸発器目標出口空気温度設定手段401は、外部情報としての蒸発器出口空気温度Te及びその目標値である蒸発器目標出口空気温度Tesをそれぞれ提供する外部情報検知手段である。
【0059】
圧力補正手段411は、圧力センサ404とともに吐出圧力検知手段を構成しており、圧力センサ404によって検知された検知圧力Phを補正することにより、吐出圧力Pdを演算により求める。そして、圧力補正手段411は、演算した吐出圧力Pdを制御電流演算手段412に入力する。
このように検知圧力Phを補正するのは、吐出室142と放熱器14の入口との間では、同じ吐出圧力領域であっても、特に熱負荷が大きいときには、冷媒の圧力に差が生じるためである。吐出圧力Pdは、検知圧力Phを変数とする関数f(Ph)によって演算することができる。関数f(Ph)は予め求めておくことができる。
【0060】
制御電流演算手段412は、目標吸入圧力設定手段410によって設定された目標吸入圧力Pssと、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pdとから所定の演算式により、ソレノイド316に供給されるべき制御電流Iを演算する。
制御電流演算手段412は、演算された制御電流Iが可変上限値I2以上であるときには、制御電流Iを可変上限値I2で置き換える。また、制御電流演算手段412は、圧縮機100、空調システム又は車両に何らかの異常が発生した場合に、吐出容量が最小になるように制御電流Iを置き換える。
【0061】
これらの場合を除き、制御電流演算手段412は、演算された制御電流Iをそのまま制御電流Iとして設定する。
そして、制御電流演算手段412は、設定された制御電流Iを吐出容量制御信号としてソレノイド駆動手段413に入力する。
ソレノイド駆動手段413は、吐出容量制御信号に基づき、制御電流演算手段412で設定された制御電流Iに等しくなるよう、ソレノイド316に制御電流Iを供給し、容量制御弁300を駆動する。つまり、制御電流演算手段412及びソレノイド駆動手段413は、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pd及び目標吸入圧力設定手段410によって設定された目標吸入圧力Pssに基づいて、容量制御弁300のソレノイド316に供給される制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータを調整する制御電流調整手段を構成する。
【0062】
図5は、ソレノイド駆動手段413の構成を示す。
ソレノイド駆動手段413は、スイッチング素子420を有し、スイッチング素子420は、電源450とアースとの間を延びる電源ラインに、容量制御弁300のソレノイド316と直列に介挿されている。スイッチング素子420は、電源ラインを断続可能であり、スイッチング素子420の動作によって、所定の駆動周波数(例えば400〜500Hz)のPWM(パルス幅変調)にてソレノイド316に制御電流Iが供給される。
【0063】
なお、フライホイール回路を形成すべく、ソレノイド316と並列にダイオード421が接続される。
スイッチング素子420には、制御信号発生手段422から所定の駆動信号が入力され、この信号に対応して、PWMにおけるデューティ比が変更される。
また、電源ラインには、電流センサ423が介挿され、電流センサ423は、ソレノイド316を流れる制御電流Iを検知する。電流センサ423は、制御電流Iに相当する物理量を検知可能であれば電流計に限られず、電圧計であってもよい。
【0064】
電流センサ423は、制御電流比較判定手段424に検知した制御電流Iを入力し、制御電流比較判定手段424は、制御電流演算手段412によって設定された制御電流Iと、電流センサ423によって検知された制御電流Iとを比較する。そして、制御電流比較判定手段424は、比較結果に基づいて、検知された制御電流Iが制御電流Iに近付くように、制御信号発生手段422が発生する駆動信号を変更する。
【0065】
すなわち、ソレノイド駆動手段413は、所定の駆動周波数(例えば400〜500Hz)のPWM(パルス幅変調)にてデューティ比を変更することで、ソレノイド316に供給される制御電流Iを調整する。そして、ソレノイド駆動手段413は、ソレノイド316に流れる制御電流Iを検知して、検知した制御電流Iが制御電流演算手段412で演算された制御電流Iに近付くようにフィードバック制御する。
【0066】
なお、ソレノイド駆動手段413がデューティ比で制御電流Iを調整する場合、制御電流演算手段412は、制御電流Iと関連を有するパラメータとしてデューティ比を演算してもよく、この場合、制御電流演算手段412によって生成される吐出容量制御信号は、ソレノイド駆動手段413に所定のデューティ比で制御電流Iを供給させるための信号である。
【0067】
つまり、吐出容量制御信号は、制御電流Iに対応する信号であってもよいし、制御電流Iと関連のあるデューティ比等のパラメータに対応する信号であってもよい。
以下、上述した容量制御システムAの動作(使用方法)を説明する。
図6は制御装置400が実行するメインルーチンを示したフローチャートである。メインルーチンは、例えば車両のエンジンキーがオン状態になると起動され、オフ状態になると停止される。
【0068】
このメインルーチンでは、起動すると先ず、初期条件が設定される(S10)。具体的には、フラグF1,F2,F3がゼロに、可変下限圧力P1が所定の第1下限圧力PsLに、可変上限圧力P2が所定の第1上限圧力PdHに、下限値I1が所定の最小値Iminに、可変上限値I2が最大値Imaxに、目標吸入圧力Pssが初期値Pssに設定される。初期値Pssは、例えば、外気温度Tambに応じて次式により設定される。
【0069】
Pss0=K1・Tamb+K2 (K1,K2は定数)
また、S10では、制御電流Iが、圧縮機100の吐出容量が最小容量となるIに設定される。Iはゼロであってもよい。
次に、車両用空調システムのエアコンスイッチ(A/C)がオンであるか否かが判定される(S11)。即ち、乗員が、車室の冷房又は除湿を要求しているか否かが判定される。エアコンスイッチがオンの場合(Yesの場合)、圧力補正手段411は、圧力センサ404によって検知された検知圧力Phを読み込み(S12)、吐出圧力Pdを演算する(S13)。
【0070】
演算された吐出圧力Pdは、上限圧力設定ルーチン(S14)で設定された可変上限圧力P2よりも小さいか否か比較判定される(S15)。
S15の判定結果がYesの場合、フラグF1が0であるか否かが判定される(S16)。初期条件ではF1=0であるので、S16の判定結果はYesとなる。従って、吸入圧力制御ルーチンS17が実行された後、S11が再び実行される。
【0071】
S15の判定結果がNoの場合、フラグF1が1に設定され(S18)、制御電流上限値減少ルーチンS19を経て、吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。
フラグF1が1に設定されている間は、S16の判定結果がNoになり、制御電流上限値増大ルーチンS20を経て、吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。なお、フラグF1を0に設定するステップは、制御電流上限値増大ルーチンS20に含まれている。
【0072】
エアコンスイッチがオフにされS11の判定結果がNoになると、S10が実行され、フラグF1,F2,F3、可変下限圧力P1、可変上限圧力P2、下限値I1、可変上限値I2、目標吸入圧力Pss及び制御電流Iが初期値にリセットされる。
図7は、図6中の吸入圧力制御ルーチンS17の詳細を示すフローチャートである。
吸入圧力制御ルーチンS17では、まず圧縮機100の吐出容量制御の目標となる蒸発器目標出口空気温度Tesが設定され読み込まれる(S100)。次に、温度センサ402によって検知された蒸発器出口空気温度Teが読み込まれ(S101)、蒸発器目標出口空気温度Tesと、実際の蒸発器出口空気温度Teとの偏差ΔTが演算される(S102)。そして、演算された偏差ΔTに基づいて、例えばPI制御のための所定の演算式により目標吸入圧力Pssが演算される(S103)。
【0073】
なお、S103の演算式中、左側に目標吸入圧力Pssが含まれているが、目標吸入圧力Pssの初期値はPssである。
また、吸入圧力制御ルーチンS17を1回実行するごとに、S102で偏差ΔTが演算され、S103の演算式中の偏差ΔTの添字nは、偏差ΔTが今回のS102で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔTが前回のS102で演算されたものであることを示す。
【0074】
この後、演算された目標吸入圧力Pssは、下限圧力設定ルーチンS104で設定された可変下限圧力P1以上であるか否か比較判定される(S105)。S105の判定結果がNoであれば、可変下限圧力P1が目標吸入圧力Pssとして読み込まれてから(S106)、目標吸入圧力Pss及び吐出圧力Pdに基づいて、制御電流Iが演算される(S107)。
【0075】
S105の判定結果がYesの場合には、S103で演算された目標吸入圧力Pssと吐出圧力Pdとに基づいて、制御電流Iが演算される(S107)。
この後、演算された制御電流Iが、予め設定された下限値I1以上であるか否か比較判定される(S108)。S108の判定結果がNoであれば、下限値I1が制御電流Iとして読み込まれ(S109)、制御電流Iがソレノイド316に出力される(S110)。
【0076】
一方、S108の判定結果がYesであれば、制御電流Iが、下限値I1よりも大きい可変上限値I2以下であるか否か比較判定され(S111)、S111の判定結果がNoであれば、可変上限値I2が制御電流Iとして読み込まれ(S112)、出力される(S110)。
従って、S108及びS111の判定の結果、I1≦I≦I2であれば、S107で演算された制御電流Iがそのまま出力される。
【0077】
上述した吸入圧力制御ルーチンS17によれば、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように、吐出容量が制御される。この際、吐出圧力Pdが常時検知され、変動する吐出圧力Pdに応じて制御電流Iが調整される。つまり、目標吸入圧力Pssが変更されなくても、吐出圧力Pdが変化すれば制御電流Iが変更され、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように、吐出容量が制御される。
【0078】
また、吸入圧力制御ルーチンS17によれば、蒸発器目標出口空気温度設定手段401で設定された蒸発器目標出口空気温度Tesと、温度センサ402によって検知された蒸発器出口空気温度Teとの偏差ΔTに基づいて、ソレノイド316に供給される制御電流Iが調整される。従って、吸入圧力制御ルーチンS17によれば、蒸発器出口空気温度Teが蒸発器目標出口空気温度Tesに近付くように吐出容量が制御され、車室の快適性が確保される。
【0079】
図8は、図6中の上限圧力設定ルーチンS14の詳細を示すフローチャートである。
上限圧力設定ルーチンS14では、まず、圧縮機回転数Ncnが読み込まれる(S150)。読み込まれる圧縮機回転数Ncnは、エンジン回転数センサ403によって検知されたエンジン114の回転数に所定のプーリ比を乗じることにより演算される。
それから、圧縮機回転数Ncnが、所定の動作回転数NcHよりも低いか否か比較判定される(S151)。
【0080】
S151の判定結果がYesの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcHよりも低い場合、圧縮機回転数Ncnが、所定の復帰回転数NcLよりも低いか否か比較判定される(S152)。
S152の判定結果がYesの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低い場合、フラグF2が0であるか否かが比較判定される(S153)。S153の判定結果がYesの場合、可変上限圧力P2として第1上限圧力PdHが設定される(S154)。
【0081】
S153の判定結果がNoの場合、フラグF2が0に設定されてから(S155)、可変上限圧力P2として第1上限圧力PdHが設定される(S154)。
S152の判定結果がNoの場合、フラグF2が0であるか否か比較判定され(S156)、S156の判定結果がYesの場合、つまりフラグF2が0の場合には、可変上限圧力P2として第1上限圧力PdHが設定される(S154)。
【0082】
S156の判定結果がNoの場合、可変上限圧力P2として第2上限圧力PdLが設定される(S157)。第2上限圧力PdLは、第1上限圧力PdHよりも小さい。
S151の判定結果がNoの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上の場合、フラグF2が0であるか否か比較判定される(S158)。S158の判定結果がYesの場合、フラグF2が1に設定され(S159)、可変上限圧力P2として第2上限圧力PdLが設定される(S157)。S158の判定結果がNoの場合、可変上限圧力P2として第2上限圧力PdLが設定される(S157)。
【0083】
フラグF2の初期値は0であるため、S159でフラグF2が1に設定されない限り、S156の判定結果がNoとなることはない。従って、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上にならない限り、可変上限圧力P2が、初期値である第1上限圧力PdHから第2上限圧力PdLに低下することはない。
一方、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上になった後は、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低くならない限り、可変上限圧力P2が第2上限圧力PdLから第1上限圧力PdHに上昇することはない。
【0084】
つまり、図9に示したように、第1上限圧力PdHと第2上限圧力PdLとの間での可変上限圧力P2の切り替えには、動作回転数NcHと復帰回転数NcLとの差に対応した応差が設けられている。
図10は、図7中の下限圧力設定ルーチンS104の詳細を示すフローチャートである。
【0085】
下限圧力設定ルーチンS104では、上限圧力設定ルーチンS14のS150及びS151と同様に、圧縮機回転数Ncnが読み込まれ(S170)、圧縮機回転数Ncnが、動作回転数NcHよりも低いか否か比較判定される(S171)。
S171の判定結果がYesの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcHよりも低い場合、圧縮機回転数Ncnが、復帰回転数NcLよりも低いか否か比較判定される(S172)。
【0086】
S172の判定結果がYesの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低い場合、フラグF3が0であるか否かが比較判定される(S173)。S173の判定結果がYesの場合、可変下限圧力P1として第1下限圧力PsLが設定される(S174)。
S173の判定結果がNoの場合、フラグF3が0に設定されてから(S175)、可変下限圧力P1として第1下限圧力PsLが設定される(S174)。
【0087】
S172の判定結果がNoの場合、フラグF3が0であるか否か比較判定され(S176)、S176の判定結果がYesの場合、つまりフラグF3が0の場合には、可変下限圧力P1として第1下限圧力PsLが設定される(S174)。
S176の判定結果がNoの場合、可変下限圧力P1として第2下限圧力PsHが設定される(S177)。第2下限圧力PsHは、第1下限圧力PsLよりも大きい。
【0088】
S171の判定結果がNoの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上の場合、フラグF3が0であるか否か比較判定される(S178)。S178の判定結果がYesの場合、フラグF3が1に設定され(S179)、可変上限圧力P1として第2下限圧力PsHが設定される(S177)。S178の判定結果がNoの場合、可変下限圧力P1として第2下限圧力PsHが設定される(S177)。
【0089】
フラグF3の初期値は0であるため、S179でフラグF3が1に設定されない限り、S176の判定結果がNoとなることはない。従って、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上にならない限り、可変下限圧力P1が、初期値である第1下限圧力PsLから第2下限圧力PdHに上昇することはない。
一方、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上になった後は、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低くならない限り、可変下限圧力P1が第2上限圧力PsHから第1下限圧力PsLに低下することはない。
【0090】
つまり、図9に示したように、第1下限圧力PsLと第2下限圧力PsHとの間での可変下限圧力P1の切り替えには、動作回転数NcHと復帰回転数NcLとの差に対応した応差が設けられている。
図11は、図6中の制御電流上限値減少ルーチンS19の詳細を示すフローチャートである。
【0091】
制御電流上限値減少ルーチンS19では、まず、現在設定されている制御電流Iが読み込まれる(S200)。それから、読み込まれた制御電流Iから所定値ΔI1を減算することにより、変更値Ia1が演算される(S201)。
演算された変更値Ia1は、現在の下限値I1よりも大きいか否か比較判定される(S202)。S202の判定結果がYesの場合、つまり演算された変更値Ia1が下限値I1よりも大きい場合、現在の可変上限値I2が、変更値Ia1に書き換えられて更新され(S203)、それから吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。
【0092】
S202の判定結果がNoの場合、制御電流Iとして0が読み込まれてから(S204)、制御電流Iが出力される(S205)。つまり、演算された変更値Ia1が下限値I1以下の場合、ソレノイド316に供給される制御電流Iがゼロになる。
そして、S205の後、メインルーチン、つまり吐出容量制御が停止される(S206)。
【0093】
図12は、図6中の制御電流上限値増大ルーチンS20の詳細を示すフローチャートである。
制御電流上限値増大ルーチンS20では、まず、現在設定されている制御電流Iが読み込まれる(S250)。それから、読み込まれた制御電流Iに所定値ΔI1を加算することにより、変更値Ia2が演算される(S251)。
【0094】
演算された変更値Ia2は、最大値Imax以上であるか否か比較判定される(S252)。S252の判定結果がYesの場合、つまり演算された変更値Ia2が最大値Imaxに等しい場合、現在の可変上限値I2が、最大値Imaxに書き換えられて更新されるとともに(S253)。フラグF1が0に設定され(S254)、吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。
【0095】
S252の判定結果がNoの場合には、現在の可変上限値I2が、演算された変更値Ia2に書き換えられて更新されてから(S255)、吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。
つまり、吐出圧力Pdが可変上限圧力P2以上になると、可変上限値I2は、現在設定されている制御電流Iを基準として所定値ΔI1ずつ減少させられ、この一方で、吐出圧力Pdが可変上限圧力P2よりも小さければ、可変上限値I2は、現在設定されている制御電流Iを基準として所定値ΔI1ずつ最大値Imaxまで増大される。
【0096】
上述した容量制御システムAでは、容量制御弁300が、吸入圧力Psを機械的にフィードバック制御するための感圧部材を有さない、簡単な構造を有する。このため圧縮機100における容量制御弁300の装着スペースの確保が容易になるとともに取付け姿勢の自由度が高くなる。
一方、この容量制御システムAでは、感圧部材を有さない容量制御弁300を用いても、目標吸入圧力設定手段410が目標吸入圧力Pssを設定することにより、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように吐出容量が制御される。
【0097】
そして、目標吸入圧力Pssを可変下限圧力P1よりも高く設定するとしながら、圧縮機100の回転数が高い高回転数領域では、可変下限圧力P1を大きくすることにより、圧縮機100が最大吐出容量で作動するのが規制され、圧縮機100の負荷が低減される。
この結果として、この容量制御システムAによれば、感圧部材を有さない容量制御弁300を用いても、圧縮機100の信頼性が確保される。
【0098】
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが高い領域(高回転数領域)での第2下限圧力PsHから、低い領域(低回転数領域)での第1下限圧力PsLに切り替えられるべき復帰回転数NcLが、第1下限圧力PsLから第2下限圧力PsHに切り替えられるべき動作回転数NcHよりも低いことにより、第2下限圧力PsHと第1下限圧力PsLとの間で可変下限圧力P1が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムAによれば、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcHを挟んで大きく増減しても、可変下限圧力P1の制御が安定する。
【0099】
容量制御システムAでは、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pdが可変上限圧力P2以上になったとき、可変上限値I2は小さくなるよう変更される。具体的には、吐出圧力Pdが可変上限圧力P2以上になったときの制御電流Iよりも小さくなるよう可変上限値I2が変更される。制御電流演算手段412は、変更された可変上限値I2以下となるように制御電流Iを設定するため、吐出圧力Pdが、可変上限圧力P2を超えて異常に上昇するのが防止される。
【0100】
また、この容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが高い領域で可変上限圧力P2を小さくすることにより、圧縮機100が最大吐出容量で作動するのが規制され、圧縮機100の負荷が低減される。
この結果として、この容量制御システムAによれば、感圧部材を有さない容量制御弁300を用いても、圧縮機100の信頼性がより一層確保される。
【0101】
容量制御システムAでは、所定の条件が満たされたときに、可変上限値I2が最大値Imaxを超えない範囲で大きくなるよう変更されることにより、可変上限値I2が一旦小さく変更された後でも、制御電流Iを最大値Imaxまで設定可能になる。この結果として、この容量制御システムAでは、状況に応じて、制御電流Iの供給範囲ひいては吸入圧力Psの制御範囲が適当に確保され、空調システムの冷房能力が確保される。
【0102】
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが高い領域での第2上限圧力PdLから、低い領域での第1上限圧力PdHに切り替えられるべき復帰回転数NcLが、第1上限圧力PdHから第2上限圧力PdLに切り替えられるべき動作回転数NcHよりも低いことにより、第2上限圧力PdLと第1上限圧力PdHとの間で可変上限圧力P2が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、この容量制御システムAによれば、圧縮機100の回転数Ncnが大きく増減しても、可変上限圧力P2の制御が安定する。
【0103】
容量制御システムAでは、可変上限値I2が下限値I1以下になったとき、吐出容量が最小にされる。これは、圧縮機100、空調システム又は空調システムが設置された車両に何らかの異常が発生しているか否かの判定を、可変上限値I2が下限値I1以下になったか否かを比較することにより行い、異常が発生したと判定したときに吐出容量を最小にするものである。これにより、圧縮機100又は空調システムの異常が車両にもたらす影響が最小限に抑制される。
【0104】
容量制御システムAでは、ソレノイド駆動手段413が、電流センサ423によって検知された制御電流Iが、制御電流演算手段412によって演算された制御電流Iに近付くようにデューティ比を制御することにより、吸入圧力Psが高精度にて制御される。
容量制御システムAでは、蒸発器18を通過した直後の空気流の温度Teが蒸発器目標出口空気温度Tesに近付き、空調システムにより空調される車室の温度制御の精度が向上する。
【0105】
容量制御システムAが適用された圧縮機100は、往復動型であり、斜板107の最小傾角で規定されるピストン130のストロークを非常に小さく設定できる。このため、最小吐出容量が非常に小さく、吐出容量の機械的な可変範囲が広い。このため、この容量制御システムAでは、目標吸入圧力Pssを設定することにより吸入圧力Psの制御範囲を拡大した効果が十分に発揮される。
【0106】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcH以上になると、すぐに可変下限圧力P1が第1下限圧力PsLから第2下限圧力PsHに切り替えられたが、圧縮機100の回転数Ncnが、所定時間連続して動作回転数NcH以上であるときにのみ、可変下限圧力P1が第1下限圧力PsLから第2下限圧力PsHに切り替わるようにしてもよい。これにより、可変下限圧力P1が頻繁に切り替わることが防止され、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcHを挟んで大きく増減しても、可変下限圧力P1の制御が安定する。
【0107】
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが、復帰回転数NcLよりも低くなると、すぐに可変下限圧力P1が第2下限圧力PsHから第1下限圧力PsLに切り替えられたが、圧縮機100の回転数Ncnが、所定時間連続して動作回転数NcLよりも低いときにのみ、可変下限圧力P1が第2下限圧力PsHから第1下限圧力PsLに切り替わるようにしてもよい。これにより、可変下限圧力P1が頻繁に切り替わることが防止される。この結果として、圧縮機100の回転数Ncnが復帰回転数NcLを挟んで大きく増減しても、可変下限圧力P1の制御が安定する。
【0108】
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcH以上になると、すぐに可変下限圧力P1が第1上限圧力PdHから第2上限圧力PdLに切り替えられたが、圧縮機100の回転数Ncnが、所定時間連続して動作回転数NcH以上のときにのみ、可変下限圧力P1が第1上限圧力PdHから第2上限圧力PdLに切り替わるようにしてもよい。これにより、可変上限圧力P2が頻繁に切り替わることが防止され、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcHを挟んで大きく増減しても、可変上限圧力P2の制御が安定する。
【0109】
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが、復帰回転数NcLよりも低くなると、すぐに可変上限圧力P2が第2下限圧力PsHから第1上限圧力PdHに切り替えられたが、圧縮機100の回転数Ncnが、復帰回転数NcLよりも所定時間連続して低いときにのみ、可変上限圧力P2が第2下限圧力PsHから第1上限圧力PdHに切り替わるようにしてもよい。これにより、可変上限圧力P2が頻繁に切り替わることが防止され、圧縮機100の回転数Ncnが復帰回転数NcLを挟んで大きく増減しても、可変下限圧力P1の制御が安定する。
【0110】
容量制御システムAでは、下限圧力P1と上限圧力P2との間で、復帰回転数NcL及び動作回転数NcHが共通していたが、相違していてもよい。
容量制御システムAでは、可変下限圧力P1が第1下限圧力PsLと第2下限圧力PsLとの間でステップ関数のように変化したが、図13に示したように、徐々に変化してもよい。同じく、可変上限圧力P2が第1上限圧力PdHと第2上限圧力PdLとの間でステップ関数のように変化したが、図13に示したように、徐々に変化してもよい。
【0111】
容量制御システムAでは、可変下限圧力P1が、第1下限圧力PsLと第2下限圧力PsHの2値間で切り替えられたが、3値以上の間で切り替えられるようにしてもよい。同じく、可変上限圧力P2が、第1上限圧力PdHと第2下限圧力PdLの2値間で切り替えられたが、3値以上の間で切り替えられるようにしてもよい。
容量制御システムAでは、圧縮機100の負荷が増大しないように、可変下限圧力P1及び可変上限圧力P2を設けて、吐出容量の増大を制限するものであったが、可変下限圧力P1のみを設定してもよい。
【0112】
容量制御システムAでは、S103で演算された目標吸入圧力Pssが、S105で可変下限圧力P1と比較されるけれども、演算された目標吸入圧力Pssに基づいて指標を設定し、当該指標と可変下限圧力P1とを比較してもよい。指標は、目標吸入圧力Pssのばらつきを考慮して設定される。
より詳しくは、容量制御システムAでは、目標吸入圧力Pssと吐出圧力Pdとに基づいて制御電流Iが演算されるが、容量制御弁300の製造上のばらつきにより、同一の制御電流Iがソレノイド316を流れていたとしても、吸入圧力Psや吐出圧力Pdは容量制御弁300ごとにわずかに異なる。また、検知圧力Phの検知にも測定誤差があり、検知圧力Phから吐出圧力Pdを演算するときにも誤差が生じる。
【0113】
これらの結果として、同一の目標吸入圧力Pssを設定したとしても、現実の吸入圧力Psにはばらつきが生じる。裏返せば、現実の吸入圧力Psが一定の値となる目標吸入圧力Pssには容量制御システム間でばらつきがある。そこで、このばらつきを考慮しながら、目標吸入圧力Pssに基づいて指標を設定し、現実の吸入圧力Psが可変下限圧力P1以上になるようにする。
【0114】
このような指標としては、例えば、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の上限値又は下限値を設定することができる。指標としてばらつき範囲の下限値を設定する場合、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の下限値をPss−σと表示するものとすると、図14に示したように、S105に代えて、ばらつき範囲の下限値Pss−σと可変下限圧力P1とを比較する(S115)。
【0115】
S115の判定の結果がYesならば、そのままS107を実行する。S115の判定結果がNoならば、S106に代えて、ばらつき範囲の下限値Pss−σと目標吸入圧力Pssとの差であるばらつき量σと、可変下限圧力P1とを加算した値を目標吸入圧力Pssとして読み込む(S116)。
これにより、目標吸入圧力Pssのばらつきの存在にかかわらず、吸入圧力Psを可変下限圧力P1以上に確実に制限できる。
【0116】
容量制御システムAでは、メインルーチンのS15において、S13で演算された吐出圧力Pdと、S14で設定された可変上限圧力P2とが比較判定されるけれども、吐出圧力Pdに基づいて指標を設定し、当該指標と可変上限圧力P2とを比較してもよい。
指標は、吐出圧力Pdを基準として、吐出圧力Pdのばらつきを考慮して設定される。吐出圧力Pdのばらつきは、前述したように、検知圧力Phを検知する際の測定誤差や、検知圧力Phから吐出圧力Pdを演算するときの誤差に基づいて生じる。
【0117】
例えば、指標としては、吐出圧力Pdのばらつき範囲の上限値又は下限値を設定することができる。吐出圧力Pdのばらつき範囲の上限値を指標として設定し、S15において、当該指標と可変上限圧力P2とを比較判定すれば、吐出圧力Pdのばらつきにかかわらず、吐出圧力Pdが可変上限圧力P2よりも小さくなるよう確実に制限される。
容量制御システムAでは、S103、S107、S201、S251の各演算式は実施例に限定されない。例えば、図7のS103では、偏差ΔTが正負の何れであるかに対応して、単純に一定値ΔPssだけPssを増減してもよい。
【0118】
また、図7のS107では、α・Pd−β・Pss+γ(ただしα、β、γは定数)としても良いし、(Pd−Pss)の項を含めて非線形としても良い。
容量制御システムAでは、ソレノイド駆動手段413が電流センサ423等の制御電流Iを検知するための手段を有していなくてもよい。
容量制御システムAでは、S107において、制御電流Iを演算したけれども、制御電流Iとデューティ比との関係を予め求めておき、デューティ比を演算してもよい。
【0119】
容量制御システムAでは、温度センサ402を使用しないで、設定された蒸発器目標出口空気温度Tesと、外部情報に基づいて、目標吸入圧力Pssを設定してもよい。
目標吸入圧力Pssの設定に用いられる外部情報としては、車両の内外の熱負荷に関する情報を用いることができる。この場合、外部情報検知手段は、車両の内外の熱負荷に関する情報を検知する熱負荷検知手段を含む。
【0120】
また、目標吸入圧力Pssの設定に用いられる外部情報として、圧縮機100の運転状態や車両の運転状態を用いることができる。車両の運転状態とは、例えば、エンジン114の回転数、車速、加速度等に関する情報である。
容量制御システムAでは、圧縮機回転数Ncnをエンジン114の回転数に基づいて検知したけれども、前述したように、圧縮機回転数Ncnと関連する物理量に基づいて検知してもよい。例えば、車速とギヤ位置とから圧縮機回転数Ncnを検知してもよい。また、スロットル開度(アクセル開度)を含む情報に基づいて圧縮機回転数Ncnを検知してもよい。
【0121】
また、容量制御システムAでは、圧縮機回転数Ncnに基づいて可変下限圧力P1及び可変上限圧力P2を切り替えたけれども、圧縮機回転数Ncnと関連する物理量に基づいて、可変下限圧力P1又は可変上限圧力P2を切り替えてもよい。
容量制御システムAでは、圧力センサ404が吐出圧力領域にて冷媒の圧力を検知したけれども、吐出圧力検知手段は吐出圧力Pdを検知することができればよいため、圧力センサ404を配置する部位は特に限定されず、冷凍サイクル10の高圧領域の何れかの部位に配置すればよい。高圧領域とは、吐出圧力領域に放熱器14から膨張器16の入口までの領域を加えた領域である。この場合、圧力補正手段411が、圧力センサ404によって検知した圧力から吐出圧力Pdを演算すればよい。
【0122】
容量制御システムAでは、容量制御弁300の弁体304には、吐出圧力Pdに対し、吸入圧力Psが対抗するように作用するが、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとが対抗しているときに、更にクランク圧力Pcが作用してもよい。
容量制御システムAの容量制御弁300では、機械的に吸入圧力Psをフィードバック制御する感圧部材は不要であるが、弁体304に対し、吐出圧力Pd、吸入圧力Ps又は電磁力F(I)を作用させるために、ベローズやダイヤフラムを用いてもよい。
【0123】
例えば、一端が開口し、他端が閉塞した小型のベローズを用いた場合、ベローズの閉塞端を、弁孔301aとは反対側の弁体304の一端に固定する。ソレノイドロッド326先端側の部分は、ベローズの開口端を通じてベローズの内側に挿入され、ソレノイドロッド325の先端をベローズの閉塞端の内面に連結する。これにより、ソレノイドロッド326が弁体304を電磁力F(I)にて付勢可能にする。そして、ベローズの内側の圧力は吸入圧力Psに等しくなるようにし、弁体304に吸入圧力Psを作用させる。
【0124】
容量制御システムAが適用された圧縮機100は、クラッチレス圧縮機であったが、容量制御システムAは、電磁クラッチを装着した圧縮機にも適用可能である。圧縮機100は斜板式の往復動圧縮機であったけれども、揺動板式の往復動圧縮機であってもよい。揺動板式の圧縮機は、揺動板を揺動させるための要素を有し、斜板107及びこの要素をまとめて斜板要素という。圧縮機100は、電動モータで駆動されるものであってもよい。
【0125】
更に、容量制御システムAは、スクロール式やベーン式の可変容量圧縮機にも適用可能である。すなわち、弁体に吐出圧力Pd、吸入圧力Ps及びソレノイドの電磁力F(I)が作用する容量制御弁を用いて、吐出容量を変化させるための制御圧力が容量制御弁の弁開度によって変化させることができれば、あらゆる可変容量圧縮機に適用可能である。
なお、制御圧力とは、往復動圧縮機の場合には、クランク室の圧力(クランク圧力Pc)である。
【0126】
容量制御システムAに適用された圧縮機100では、抽気通路162の流量を規制してクランク圧力Pcを昇圧するために、抽気通路162に絞り要素として固定オリフィス103cを配置したが、絞り要素として、流量可変の絞りを用いてもよく、また、弁を配置して弁開度を調整してもよい。
容量制御システムAでは、容量制御弁300は、吐出室142とクランク室105との間を繋ぐ給気通路160に配置されていたけれども、圧縮機100が斜板式又は揺動板式の場合、給気通路160に容量制御弁300を配置せずに、クランク室105と吸入室140との間を繋ぐ抽気通路162に容量制御弁を配置してもよい。即ち、給気通路160の開度を制御する入口制御に限定されず、抽気通路162の開度を制御する出口制御であってもよい。
【0127】
容量制御システムAが適用される冷凍サイクルでは、冷媒はR134aや二酸化炭素に限定されず、その他の新冷媒を使用してもよい。つまり、容量制御システムAは、従来の空調システムにも適用可能である。
容量制御システムAは、車両用空調システム以外の室内用空調システムの冷凍サイクルや、冷凍・冷蔵庫等の冷凍装置の冷凍サイクル等、冷凍サイクル全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】一実施形態の容量制御システムを適用した車両用空調システムの冷凍サイクルの概略構成を可変容量縮機の縦断面とともに示す図である。
【図2】図1の圧縮機における容量制御弁の接続状態を説明するための図である。
【図3】図1の容量制御弁における制御電流Iと目標吸入圧力Pssと吐出圧力Pdとの関係を示すグラフである。
【図4】一実施形態の容量制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4の容量制御システムにおける、ソレノイド駆動手段の概略構成を説明するためのブロック図である。
【図6】図4の容量制御システムが実行するメインルーチンを示す制御フローチャートである。
【図7】図6のメインルーチンに含まれる吸入圧力制御ルーチンの制御フローチャートである。
【図8】図6のメインルーチンに含まれる上限圧力制御ルーチンの制御フローチャートである。
【図9】可変下限圧力及び可変上限圧力の設定方法を説明するためのグラフである。
【図10】図7の吸入圧力制御ルーチンに含まれる下限圧力制御ルーチンの制御フローチャートである。
【図11】図6のメインルーチンに含まれる制御電流上限値減少ルーチンの制御フローチャートである。
【図12】図6のメインルーチンに含まれる制御電流上限値減少ルーチンの制御フローチャートである。
【図13】可変下限圧力及び可変上限圧力の設定方法の変形例を説明するためのグラフである。
【図14】変形例のメインルーチンの一部を示す制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0129】
316 ソレノイド
401 蒸発器目標出口空気温度設定手段
402 温度センサ
403 エンジン回転数センサ(圧縮機回転数検知手段)
404 圧力センサ(吐出圧力検知手段)
410 目標吸入圧力設定手段
411 圧力補正手段(吐出圧力検知手段)
412 制御電流演算手段
413 ソレノイド駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムの冷凍サイクルを構成すべく冷媒が循環する循環路に放熱器、膨張器及び蒸発器とともに介挿され、制御圧力の変化に基づいて容量が変化する可変容量圧縮機の容量制御システムにおいて、
前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吐出圧力とし、前記冷凍サイクルの吸入圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吸入圧力としたときに、前記吐出圧力を受けるとともに、前記吐出圧力と対向する方向にて前記吸入圧力及びソレノイドの電磁力を受けて弁孔を開閉可能な弁体を有し、前記弁孔を開閉して前記制御圧力を変化させることにより前記可変容量圧縮機の容量を調整可能な容量制御弁と、
前記吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段及び前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知するための回転数検知手段を含み、前記吐出圧力及び前記物理量を含めて2つ以上の外部情報を検知するための外部情報検知手段と、
前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて前記吸入圧力の目標である目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段と、
前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力及び前記目標吸入圧力設定手段によって設定された目標吸入圧力に基づいて、前記容量制御弁のソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する制御電流調整手段と
を具備し、
前記目標吸入圧力設定手段は、下限圧力よりも大きな値に前記目標吸入圧力を設定し、
前記下限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い高回転数領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い低回転数領域に比べて大きい
ことを特徴とする可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項2】
前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、
前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項3】
前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、
前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記下限圧力は第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項4】
前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、前記下限圧力は前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項5】
前記制御電流調整手段は、前記制御電流若しくはパラメータが上限値以下になるよう調整し、
前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が上限圧力以上になったとき、前記上限値は小さくなるよう変更され、
前記上限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域に比べて小さい
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項6】
前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が前記上限圧力よりも小さく且つ前記上限値が最大値よりも小さいときに、前記上限値は、前記最大値を超えない範囲で大きくなるよう変更されることを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項7】
前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、
前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項8】
前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、
前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記上限圧力は前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項9】
前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、前記上限圧力は前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられることを特徴とする請求項8に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項10】
前記制御電流若しくはパラメータの前記上限値が小さくなるよう変更された結果として前記上限値が最小値よりも小さくなったとき、前記制御電流調整手段は、吐出容量が最小になるよう前記制御電流若しくはパラメータを調整する
ことを特徴とする請求項5乃至9の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項11】
前記制御電流調整手段は、
前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力及び前記目標吸入圧力によって設定された目標吸入圧力に基づいて前記ソレノイドに供給する制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを演算する制御電流演算手段と、
前記ソレノイドを流れる制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを検知する電流検知手段とを含み、
前記電流検知手段で検知された制御電流若しくはパラメータが前記制御電流演算手段によって演算された前記制御電流若しくはパラメータに近付くように、前記ソレノイドに供給される制御電流のデューティ比を調整する
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項12】
前記外部情報検知手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度を検知するための蒸発器出口空気温度検知手段と、前記蒸発器を通過した直後の空気流の目標温度を設定する蒸発器目標出口空気温度設定手段とを含み、
前記目標吸入圧力設定手段は、前記蒸発器出口空気温度検知手段によって検知された前記空気流の温度が蒸発器目標出口空気温度設定手段によって設定された前記目標温度に近付くように、前記目標吸入圧力を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項13】
前記可変容量圧縮機は、
内部に吐出室、クランク室、吸入室及びシリンダボアが区画形成されたハウジングと、
前記シリンダボアに配設されたピストンと、
前記ハウジング内に回転可能に支持された駆動軸と、
前記駆動軸の回転を前記ピストンの往復運動に変換する傾角可変の斜板要素を含む変換機構と、
前記吐出室と前記クランク室とを連通する給気通路と、
前記吸入室と前記クランク室とを連通する抽気通路とを備え、
前記容量制御弁は、前記給気通路及び前記抽気通路のうち一方に介挿されている
ことを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−24509(P2009−24509A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185495(P2007−185495)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】