説明

含フッ素ポリマーの精製方法

【課題】環境負荷の少ない含フッ素溶媒を用いた、光リソグラフィー用部材に用いられる含フッ素ポリマーの精製方法の提供。
【解決手段】含フッ素ポリマーが有機溶媒(A)に溶解した含フッ素ポリマー溶液と、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒と相溶する含フッ素溶媒(B)、とを混合し、含フッ素ポリマーを凝集させ、次いで凝集した含フッ素ポリマーを前記溶媒から分離する含フッ素ポリマーの精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素溶媒を用いる含フッ素ポリマーの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の高集積化の進展に伴い、配線微細化が進められている。そのため、半導体製造工程である光リソグラフィー工程に用いられる種々のポリマーに対して、分子量分布が狭く、均一性に優れるポリマーの製造、含有される金属不純物量の低減等が要求され、それらの実現のためにポリマーの精製技術の向上が求められている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0003】
従来のポリマーの精製方法としては、クロマトグラフィによるポリマーからオリゴマーの分離、活性炭等による吸着、凝集等の方法が知られている。しかし、クロマトグラフィによる分離は、多量のポリマーの処理には適さない。活性炭による吸着においては、活性炭に含まれる金属分が溶出し、ポリマー中の金属不純物量が増加する可能性が指摘されている。アルコール、炭化水素溶媒、水等を使用する、従来の凝集方法では、残存モノマー、オリゴマー等の不純物の除去のために、多量の媒体が必要であり、環境負荷が大きい(例えば、特許文献1及び2を参照。)。さらに、含フッ素ポリマーは、炭化水素溶媒との親和性に乏しく、含有される含フッ素オリゴマーが充分に除去できない場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−75930号公報
【特許文献2】特開2004−182796号公報
【非特許文献1】International Technology Roadmap for Semiconductors 2003edtion,Yield Enhancement,p21−24(Table 114a)(http://public.itrs.net/Files/2003ITRS/Home2003.htm)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、環境負荷の少ない含フッ素溶媒を用いる、光リソグラフィー用部材に用いられる含フッ素ポリマーの精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、含フッ素ポリマーが有機溶媒(A)に溶解した含フッ素ポリマー溶液と、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒と相溶する含フッ素溶媒(B)、とを混合し、含フッ素ポリマーを凝集させ、次いで凝集した含フッ素ポリマーを前記溶媒から分離することを特徴とする含フッ素ポリマーの精製方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、含フッ素ポリマーが有機溶媒(A)に溶解した含フッ素ポリマー溶液と、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒(A)と実質的に相溶しない含フッ素溶媒(C)、とを混合し、次いで該混合物から不純物を含む前記含フッ素溶媒(C)を分離して精製された含フッ素ポリマー溶液を得て、その後、該精製された含フッ素ポリマー溶液に対して請求項1に記載の処理を施すことを特徴とする含フッ素ポリマーの精製方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記精製方法で精製された含フッ素ポリマーを用いてなる光リソグラフィー用部材を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の精製方法によれば、環境負荷の少ない含フッ素溶媒を用いて、含フッ素ポリマーが容易に精製できる。含フッ素ポリマーに含有される含フッ素オリゴマー等の不純物を容易に除去でき、分子量分布が狭く、均一性に優れる含フッ素ポリマーが得られる。該精製方法で得られた含フッ素ポリマーは、レジスト材、保護膜又は反射防止膜等の光リソグラフィー部材に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における含フッ素溶媒(B)は、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒(A)と相溶する。
含フッ素溶媒(B)の沸点は20〜200℃が好ましい。沸点がこの範囲にあると該溶媒のリサイクル性、含フッ素ポリマーの乾燥の容易性、常温での取扱い容易性等に優れる。
【0011】
含フッ素溶媒(B)の構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子を含有してもよい。含フッ素溶媒(B)の炭素原子数は2〜12が好ましく、4〜10がより好ましい。
【0012】
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、C、(CFCFCHFCHFCF、C13H、C13、C17等、ハイドロフルオロエーテルとしてCOCH、COC、HCFCFOCHCF等、パーフルオロカーボンの具体例としては、C14、C18、(CN、パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロブタン)、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等、が挙げられる。
【0013】
含フッ素溶媒(B)としては、C、(CFCFCHFCHFCF、C13H、C13、C17、COCH、COC及びHCFCFOCHCFからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
含フッ素溶媒(B)には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン等の含フッ素溶媒(B)と相溶する有機溶媒を混合して用いることも好ましい。
【0014】
本発明における含フッ素ポリマーを溶解する有機溶媒(A)としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシメチルプロピオネート(MMP)等のエステル類、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のプロピレングリコールエーテル類、アセトン、メチルアミルケトン(MAK)等のケトン類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。好ましくは、THF、PGMEA、アセトン及びMAKからなる群から選ばれる1種以上である。
【0015】
含フッ素溶媒(B)は、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、該有機溶媒(A)と相溶する。ここで、実質的に溶解しないとは、含フッ素ポリマーを溶解しないが、含フッ素ポリマーに含有される含フッ素オリゴマー等の不純物を溶解することをいう。なお、含フッ素オリゴマーとは、重量平均分子量(Mw)が、300〜800であるような低重合体をいう。また、有機溶媒(A)と相溶するとは、有機溶媒(A)と混合した場合に、含フッ素溶媒(B)と有機溶媒(A)とが相分離せず、混ざり合うことをいう。
【0016】
本発明において、含フッ素ポリマーは、含フッ素ポリマー溶液と含フッ素溶媒(B)とを混合し、含フッ素ポリマーを凝集させ、次いで凝集した含フッ素ポリマーを前記溶媒から分離することにより精製される。凝集に用いる該含フッ素ポリマー溶液中の含フッ素ポリマー濃度は、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。含フッ素ポリマー溶液/含フッ素溶媒(B)の質量割合は、5/95〜70/30が好ましく、10/90〜60/40がより好ましい。含フッ素ポリマー溶液の割合があまりに少ないと凝集槽の容積効率が低く、あまりに多いと凝集時に析出する含フッ素ポリマーの精製状態が充分でない。この範囲にあると凝集槽の容積効率が高く、凝集時に析出する含フッ素ポリマーの精製状態に優れる。
【0017】
含フッ素ポリマー溶液と含フッ素溶媒(B)との混合方法としては、撹拌下の含フッ素ポリマー溶液に含フッ素溶媒(B)を添加することが好ましい。また、撹拌下の含フッ素溶媒(B)に含フッ素ポリマー溶液を添加することも好ましい。含フッ素ポリマー溶液と含フッ素溶媒(B)とが混合するに従い、含フッ素ポリマーが凝集し、粒子状態に析出する。含フッ素ポリマーが凝集し、析出した粒子は、ろ過等で分離し、乾燥し、含フッ素ポリマーが回収される。混合時の撹拌条件としては、温度が20〜25℃、撹拌速度が250〜300rpmであることが好ましい。
【0018】
本発明において、含フッ素ポリマーが有機溶媒(A)に溶解した含フッ素ポリマー溶液と、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒(A)と実質的に相溶しない含フッ素溶媒(C)、とを混合し、次いで該混合物から不純物を含む前記含フッ素溶媒(C)を分離して精製された含フッ素ポリマー溶液を得て、その後、該精製された含フッ素ポリマー溶液に対して含フッ素溶媒(B)を混合し、含フッ素ポリマーを凝集させ、次いで凝集した含フッ素ポリマーを前記溶媒から分離し、含フッ素ポリマーを精製することも好ましい。
【0019】
上記方法の前段の処理により、含フッ素ポリマーに含まれる含フッ素オリゴマー等の不純物が、含フッ素溶媒(C)により抽出され、除去され、精製された含フッ素ポリマー溶液が得られる。
含フッ素溶媒(C)の沸点は、20〜200℃が好ましい。また、含フッ素溶媒(C)の構造は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子を含有してもよい。炭素原子数は2〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜10が最も好ましい。
【0020】
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、C、(CFCFCHFCHFCF、C13H等、ハイドロフルオロエーテルの具体例としては、COCH、COC、HCFCFOCHCF等、パーフルオロカーボンの具体例としては、C14、C18、C1022等、が挙げられる。
【0021】
含フッ素溶媒(C)としては、C14、C18及びC1022からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
含フッ素溶媒(C)には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン等の有機溶媒を混合して用いることも好ましい。
【0022】
本発明における含フッ素溶媒(C)は、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒(A)と実質的に相溶しない。ただし、含フッ素溶媒(C)は、含フッ素オリゴマー等の不純物を溶解する。また、有機溶媒(A)と実質的に相溶しないとは、含フッ素溶媒(C)と有機溶媒(A)とを混合した場合に、含フッ素溶媒(C)と有機溶媒(A)とが2相に分離し、混ざり合わないことをいう。ただし、含フッ素溶媒(C)の相に有機溶媒(A)が少量含まれて入れもよく、有機溶媒(A)の相に含フッ素溶媒(C)が少量含まれていてもよい。
【0023】
本発明において、含フッ素ポリマー溶液と含フッ素溶媒(C)とを混合する場合には、含フッ素ポリマー溶液中の含フッ素ポリマー濃度は、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。含フッ素ポリマー溶液/含フッ素溶媒(C)の質量割合は、5/95〜70/30が好ましく、10/90〜60/40がより好ましい。含フッ素ポリマー溶液の割合があまりに少ないと混合槽の容積効率が低く、あまりに多いと含フッ素ポリマー溶液から含フッ素オリゴマー等の不純物が充分に抽出され、除去されない。この範囲にあると混合槽の容積効率が高く、含フッ素オリゴマー等の不純物が充分に抽出され、除去される。
【0024】
含フッ素ポリマー溶液と含フッ素溶媒(C)との混合方法としては、撹拌下の含フッ素溶媒(C)に含フッ素ポリマー溶液を添加することが好ましい。また、撹拌下の含フッ素ポリマー溶液に含フッ素溶媒(C)を添加することも好ましい。混合条件としては、温度が20〜25℃、撹拌速度が250〜300rpmであることが好ましい。
【0025】
混合して得られた混合液を静置し、含フッ素溶媒(C)の相を分離した後、含フッ素ポリマー溶液に含フッ素溶媒(B)を添加し、含フッ素ポリマーを凝集させ、析出した含フッ素ポリマーを、ろ過等で分離し、乾燥し、含フッ素ポリマーが回収される。一方、分離された含フッ素溶媒(C)の相を濃縮すれば、含フッ素オリゴマーが回収される。得られた含フッ素オリゴマーも、光リソグラフィー工程で用いられるポリマーへの添加剤、光リソグラフィ用部材等として有用である。
【0026】
本発明の精製方法により精製される含フッ素ポリマーとしては、従来から公知又は周知の含フッ素ポリマーが広範囲にわたって採用できる。含フッ素ポリマーとしては、フッ素モノマーの単独重合体、共重合体、含フッ素モノマーと非フッ素モノマーとの共重合体等が挙げられる。特に、光リソグラフィー用部材に用いられる含フッ素ポリマーが好ましい。その具体例としては、下記式(1)〜式(8)で表される繰り返し単位を含有する含フッ素ポリマーが好ましい。より好ましくは、式(1)で表される繰り返し単位を含有する含フッ素ポリマーである。これらの繰り返し単位を含有する含フッ素ポリマーは、特に、レジスト材、保護膜又は反射防止膜等の光リソグラフィー部材に適する。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1〜例5が実施例であり、例6が比較例である。なお、含フッ素ポリマーの平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定し、ポリスチレンを標準として算出した値である。
【0036】
[例1]
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン(以下、FHDモノマーという。)の1200g、酢酸エチル1247g、ジオキサン758gを内容積5Lのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてIPP(イソプロピルパーオキシカーボネート)の50%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(以下、IPP溶液という。)の46.4gを添加した。系内を凍結脱気した後、窒素置換し、恒温槽内(40℃)で18時間重合させ、ポリ(1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン)(以下、含フッ素ポリマーAという。)の溶液を得た。
【0037】
含フッ素ポリマーAの繰り返し単位の構造式を式(1)に示す。該含フッ素ポリマーAの溶液に酢酸エチル/ジオキサン混合溶液(混合質量比60/40)を添加して含フッ素ポリマーAの35質量%溶液の3456gを得た。該含フッ素ポリマーAの35質量%溶液の1.91L(3300g)を、撹拌下のC13Hの20L(33.4kg)中に滴下して、含フッ素ポリマーA−1を凝集させた後、含フッ素ポリマーA−1をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーA−1の1010gを得た。含フッ素ポリマーA−1は、数平均分子量(Mn)が15266、質量平均分子量(Mw)が30889、Mw/Mn=2.0であり、分子量分布が狭く、均一性に優れることがわかった。
【0038】
[例2]
例1で得た含フッ素ポリマーAの35質量%溶液の40mL(69g)を、撹拌下のHCFCFOCHCFの400mL(588g)中に滴下して、含フッ素ポリマーA−2を凝集させた後、含フッ素ポリマーA−2をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーA−2の9.4g得た。含フッ素ポリマーA−2は、数平均分子量(Mn)が13795、質量平均分子量(Mw)が26239、Mw/Mn=1.90であり、分子量分布が狭く、均一性に優れることがわかった。
【0039】
[例3]
FHDモノマーの180g、イソプロピルアルコール114g、酢酸エチル113gを内容積500mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてIPP溶液の60gを添加した。系内を凍結脱気した後、窒素置換し、恒温槽内(40℃)で18時間重合させ、含フッ素ポリマーBの溶液を得た。含フッ素ポリマーBの溶液に酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶液(混合質量比50/50)を添加して含フッ素ポリマーBの38質量%溶液の498gを得た。該含フッ素ポリマーBの38質量%溶液の300mL(498g)を、撹拌下のヘキサン/HCFCFOCHCF混合物(混合質量比80/20)の3L(2.46kg)中に滴下して、含フッ素ポリマーB−1を凝集させた後、含フッ素ポリマーB−1をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーB−1の128.7gを得た。フッ素ポリマーB−1は、数平均分子量(Mn)が3222、質量平均分子量(Mw)が5110、Mw/Mn=1.59であり、分子量分布が非常に狭く、均一性に優れることがわかった。
【0040】
[例4]
FHDモノマーの20g、ジオキサン82gを内容積100mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、IPP溶液の4gを添加した。系内を凍結脱気した後、窒素置換し、恒温槽内(40℃)で18時間重合させ、含フッ素ポリマーCの溶液を得た。該含フッ素ポリマーCの溶液にジオキサンを添加して、含フッ素ポリマーCの19質量%ジオキサン溶液の109gを得た。該含フッ素ポリマーCの19質量%ジオキサン溶液の34mL(38g)を、撹拌下のHCFCFOCHCFの340mL(500g)中に滴下して、含フッ素ポリマーC−1を凝集させた後、含フッ素ポリマーC−1をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーC−1の16gを得た。含フッ素ポリマーC−1は、数平均分子量(Mn)が16290、質量平均分子量(Mw)が28940、Mw/Mn=1.78であり、分子量分布が非常に狭く、均一性に優れることがわかった。
【0041】
上記で含フッ素ポリマーC−1を分離して得たろ液を濃縮した後、アセトンに溶解して、含フッ素ポリマーC−2の30質量%溶液を得た。該30質量%溶液の30mL(27g)を、撹拌下のHCFCFOCHCFの300mL(441g)中に滴下して、含フッ素ポリマーC−2を凝集させた後、含フッ素ポリマーC−2をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーC−2の3gを得た。含フッ素ポリマーC−2は、数平均分子量(Mn)が4655、質量平均分子量(Mw)が7815、Mw/Mn=1.68であり、分子量分布が非常に狭く、均一性に優れることがわかった。
【0042】
[例5]
FHDモノマーの20g、酢酸エチル20g、ジオキサン13gを内容積100mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、IPP溶液の1.2gを添加した。系内を凍結脱気した後、窒素置換し、恒温槽内(40℃)で18時間重合させ、含フッ素ポリマーDの溶液を得た。該含フッ素ポリマーDの溶液に酢酸エチル/ジオキサン混合溶液(混合質量比60/40)を添加して含フッ素ポリマーDの40質量%溶液を得た。該含フッ素ポリマーDの40質量%溶液の5mL(11.5g)を、パーフルオロヘキサン/エタノール混合溶液(混合質量比95/5)の50mL(82g)と混合した。混合液を静置後、上相を分離し、濃縮後、アセトンに溶解し含フッ素ポリマーD−1の30質量%溶液を得た。該含フッ素ポリマーD−1溶液を、C13Hの50mL(83.5g)中に滴下して、含フッ素ポリマーD−1を凝集させた後、含フッ素ポリマーD−1をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーD−2の2g得た。含フッ素ポリマーD−2は、数平均分子量(Mn)が11311、質量平均分子量(Mw)が22414、Mw/Mn=1.98であり、分子量分布が狭く、均一性に優れることがわかった。
【0043】
[例6(比較例)]
例1で得た含フッ素ポリマーAの35質量%溶液の50mL(86.4g)を、撹拌下のヘキサンの500mL(330g)中に滴下して、含フッ素ポリマーA−3を凝集させた後、含フッ素ポリマーA−3をろ過し、分離し、40℃で12時間真空乾燥して、含フッ素ポリマーA−3の21.6gを得た。含フッ素ポリマーA−3は、数平均分子量(Mn)が5855、質量平均分子量(Mw)が22532、Mw/Mn=3.85であり、分子量分布が広く、含フッ素オリゴマー等の低分子重合体が含有され、均一性が不充分であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の精製方法は、光リソグラフィー用部材用含フッ素ポリマーに適用される。さらに、成形用含フッ素ポリマー及び塗料用含フッ素ポリマーにも適用できる。本発明の精製方法で精製されて得られた含フッ素ポリマーは、種々の基材のコーティング材、塗料、撥水撥油剤、電気絶縁膜等に用いられる。さらに、成形材料にも用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ポリマーが有機溶媒(A)に溶解した含フッ素ポリマー溶液と、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒と相溶する含フッ素溶媒(B)、とを混合し、含フッ素ポリマーを凝集させ、次いで凝集した含フッ素ポリマーを前記溶媒から分離することを特徴とする含フッ素ポリマーの精製方法。
【請求項2】
含フッ素ポリマーが有機溶媒(A)に溶解した含フッ素ポリマー溶液と、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であり、沸点が10〜250℃であり、該含フッ素ポリマーを実質的に溶解せず、かつ該有機溶媒(A)と実質的に相溶しない含フッ素溶媒(C)、とを混合し、次いで該混合物から不純物を含む前記含フッ素溶媒(C)を分離して精製された含フッ素ポリマー溶液を得て、その後、該精製された含フッ素ポリマー溶液に対して請求項1に記載の処理を施すことを特徴とする含フッ素ポリマーの精製方法。
【請求項3】
前記含フッ素溶媒(B)が、C、(CFCFCHFCHFCF、C13H、C13、C17、COCH、COC及びHCFCFOCHCFからなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記含フッ素溶媒(C)が、C14、C18及びC1022からなる群から選ばれる1種以上である請求項2又は3に記載の精製方法。
【請求項5】
請求項第1〜4のいずれかに記載の精製方法で精製された含フッ素ポリマーを用いてなる光リソグラフィー用部材。
【請求項6】
前記部材が、レジスト材、保護膜又は反射防止膜である請求項5に記載の光リソグラフィー部材。



【公開番号】特開2006−160823(P2006−160823A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351102(P2004−351102)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】