説明

回路のレイアウト装置,処理方法およびプログラム

【課題】 回路のレイアウト装置で,EOEの発生しやすい箇所を推定することを目的とする。
【解決手段】 回路レイアウト装置1は,被研磨対象となる回路の配線パターンを含む回路情報を取得する回路情報取得部11,回路を任意の単位領域でメッシュ状に区切り,各メッシュ領域について,メッシュ領域の配線密度とメッシュ領域の各辺に隣接する周辺領域の各々における配線密度とを示すメッシュ情報を生成するメッシュ情報生成部12,各メッシュ領域について,メッシュ領域と各周辺領域の密度の関係がEOEの発生条件に該当するメッシュ領域を抽出し,そのエラー情報を生成するエラー抽出部13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,LSI製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI製造において,近年主流となっている銅配線は,回路の絶縁素材上に生成された配線溝に銅メッキを施し,配線溝を銅で埋めるECP(Electro−Chemical Plating)により作成される。しかし,ECPの場合には,回路の配線溝上だけでなく同時に絶縁素材上全体をも銅メッキで覆われてしまうため,配線パターンを露出させるために,さらに銅メッキを研磨(平坦化)する工程が行われる。この研磨工程は,CMP(Chemical Mechanical Polishing)と呼ばれる。
【0003】
CMPにおいて,例えば,絶縁素材上の銅メッキに対する研磨の場合のように,複数の素材を研磨する場合に,各素材の研磨レートに差があるため,素材の密度分布に偏りがあるときに,EOE(Edge Over Erosion)と呼ばれる過研磨現象が生じることが知られている。
【0004】
図8は,被研磨対象物が絶縁素材と銅(Cu)である場合のCMPにおける研磨不良の例を示す図である。
【0005】
図8において,横軸は,被研磨対象物での位置,縦軸は,研磨後の相対的な高さを表している。従来のエロージョン(Erosion),ディッシング(Dishing)などの過研磨に対し,EOEは,ある領域が素材の研磨レート以上に急激に研磨される現象である。このEOEの発生メカニズムは,まだはっきりと知られていない。
【0006】
従来,CMPにおける過研磨による不良を防止するために,ダミーの配線パターンを挿入することにより異なる素材の密度分布を均一にして,過研磨が生じやすい箇所をなくすことが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−222214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
EOEは,ある領域の急激な過研磨現象であり,2つの被研磨素材の研磨レートの差が大きい場合,さらに,素材の密度分布に偏りがある場合に,発生しやすいと考えられる。特に,後者の,素材の密度分布に偏りに関しては,図8にも表れているように,低密度領域と接する高密度領域で発生しやすいと考えられている。
【0009】
しかし,従来,絶縁素材と配線素材の2つの素材に対するCMPにおけるEOEの発生箇所を特定することは,以下の問題により実現が困難である。
【0010】
(1) 従来のダミー配線の挿入による密度均一化の処理では,以下のような点からEOEの発生を防ぐことができない。
(a)EOEは,通常の密度の上下限でも発生する恐れがあるが,密度の上下限をより厳しく設定すると,ダミー配線を無理に詰め込むことになり,ダミー配線数の増加や配線形状の複雑化が生じ,データサイズが増大してしまう。
(b)本来の配線にダミー配線が近接する状態が生じるため,遅延などが変化してしまい,回路性能に影響を及ぼすことがある。
(c)手動操作によってダミー配線を強引に挿入して密度の均一化を行うと,ダミー配線が不規則に並ぶことになるため,データ量が膨大なものとなり,処理負荷が非常に大きなものになってしまう。
【0011】
(2) ダミー配線の挿入による密度均一化を行っても,どうしても密度の偏りが生じるが,その際に,EOEが発生すかどうかが不明であった。また,EOEの研磨量のモデルが未だ知られていないため,CMPのシミュレーションなどによって事前にEOEの発生を知ることが困難であった。そのため,実際の研磨工程において初めてEOEの発生が判明するという問題がある。
【0012】
1つの側面では,本発明は,回路レイアウトの際に,EOE(Edge Over Erosion)が発生する可能性がある箇所を抽出できる回路レイアウト技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様として開示する回路のレイアウト装置は,1)研磨対象となる回路の配線パターンを含む回路情報を取得する回路情報取得部と,2)前記回路をある単位領域でメッシュ状に区切り,区切られた各メッシュ領域について,該メッシュ領域の配線密度と該メッシュ領域の各辺に隣接する複数の単位領域である周辺領域の各々における配線密度の平均密度とを示すメッシュ情報を生成するメッシュ情報生成部と,3)前記回路の各メッシュ領域について,該メッシュ領域のメッシュ情報をもとに,該メッシュ領域と各周辺領域の密度の関係が,過研磨が発生する条件を示す発生条件に該当するかを判定し,前記発生条件に該当するメッシュ領域を抽出し,抽出したメッシュ領域と該メッシュ領域の各周辺領域の密度差を示すエラー情報を生成するエラー抽出部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
開示の回路のレイアウト装置によれば,EOEが発生する可能性がある箇所をエラーとして抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】研磨密度が異なる2素材に対するCMPにおいてEOEが発生しやすい箇所の例を示す図である。
【図2】開示する回路レイアウト装置の一実施例における構成例を示す図である。
【図3】一実施例におけるメッシュ領域および周辺領域の例を示す図である。
【図4】一実施例におけるメッシュ領域の配線密度の例を示す図である。
【図5】一実施例におけるメッシュ情報の例を示す図である。
【図6】一実施例におけるメッシュ領域と隣接する周辺領域との比較例を示す図である。
【図7】一実施例における回路レイアウト装置の概要処理フロー例を示す図である。
【図8】被研磨対象物が絶縁素材と銅である場合のCMPにおける研磨不良の例を示す図である。
【図9】回路レイアウト装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
EOEは,2つの被研磨素材(絶縁素材と配線素材)の研磨レートの差が大きく,2つの素材の密度分布に偏りがある場合,特に,低密度領域と接する高密度領域で発生しやすいことが知られている。
【0017】
図1は,研磨密度が異なる2素材に対するCMPにおいてEOEが発生しやすい箇所の例を示す図である。
【0018】
図1に示す例では,広い高密度の領域と広い低密度の領域との境界の高密度領域側の範囲を示す範囲AではEOEが発生しやすく,狭い高密度の領域と狭い低密度の領域の境界の範囲を示す範囲BではEOEは発生しない。
【0019】
本発明の一態様として開示する回路レイアウト装置は,LSI等の回路のレイアウト処理を行い,さらに,CMP(研磨)工程での研磨故障を軽減するために,研磨故障となるEOEが発生しやすい箇所を抽出し,さらに,抽出した箇所に対する修正を行うものである。
【0020】
回路レイアウト装置は,回路の各層の平面を小さな単位領域で区切り,区切った判定対象の領域の配線密度とその領域に隣接する四方の大きな領域各々の配線密度と比較する。そして,回路レイアウト装置は,両者の配線密度の関係が,EOEが発生しやすい箇所の条件を満たすかを判定し,例えば,図1の範囲Aに示すような箇所のみをエラー領域として抽出する機能を有する。さらに,回路レイアウト装置は,エラー領域として抽出した領域に対して,ダミー配線を用いた配線パターンの修正を行う機能を有する。
【0021】
図2は,開示する回路レイアウト装置の一実施例における構成例を示す図である。
【0022】
回路レイアウト装置1は,上述の機能を実現するため,回路情報取得部11,メッシュ情報生成部12,エラー抽出部13,エラー情報記憶部14,エラー情報ソート部15,エラー修正部16を備える。
【0023】
回路情報取得部11は,処理対象となる回路の配線パターンを含む回路情報を取得する。回路情報は,例えば,マスクCADなどから出力されるGDSIIなどの情報である。回路情報は,既にダミー配線の挿入によるパターン修正が施された配線パターンのものであってもよい。
【0024】
メッシュ情報生成部12は,処理対象となる回路を任意の単位領域でメッシュ状に区切り,区切った各メッシュ領域について,そのメッシュ領域の配線密度とメッシュ領域の四方に各辺に隣接する各周辺領域の配線密度とを示すメッシュ情報を生成する。
【0025】
より具体的には,メッシュ情報生成部12は,矩形の単位領域を用いて回路をメッシュ状に区切ってメッシュ領域を設定し,さらに,メッシュ領域の四辺の1つに隣接する周辺領域をそれぞれ設定する。
【0026】
単位領域のサイズは,ユーザによって任意のサイズに定義され,例えば,数十ナノメートル[nm](例えば40nm)などである。周辺領域は,複数の単位領域(メッシュ領域)分の広さに相当する矩形の領域である。
【0027】
さらに,メッシュ情報生成部12は,回路情報取得部11が取得した回路情報をもとに,メッシュ領域tの配線密度を計算する。さらに,メッシュ情報生成部12は,各周辺領域pについて,周辺領域pを構成する各メッシュ領域の配線密度の平均密度を計算し,周辺領域の配線密度とする。さらに,メッシュ情報生成部12は,メッシュ領域tの配線密度と,各周辺領域pの配線密度との密度差を計算する。
【0028】
メッシュ情報生成部12は,各メッシュ領域tとその周辺領域p1,p2,p3,p4との密度の関係を示すメッシュ情報を生成して保持する。
【0029】
図3は,一実施例におけるメッシュ領域および周辺領域の例を示す図である。
【0030】
図3に示す例では,回路をメッシュ状に区切った場合の状態を示す。回路内の1つの濃い灰色の矩形は,メッシュ領域tを表す。メッシュ領域tに接する破線で示される大きな4つの矩形は,周辺領域p(p1,p2,p3,p4)を表す。周辺領域p(p1,p2,p3,p4)は,ユーザにより定義され,複数のメッシュ領域t(数十〜数百のメッシュ領域)に相当する矩形の領域として設定される。
【0031】
図4は,一実施例におけるメッシュ領域の配線密度の例を示す図である。
【0032】
図4は,あるメッシュ領域tの配線パターンの例であり,濃い灰色の部分が回路の絶縁素材の範囲を,薄い灰色の部分が配線素材(銅)の範囲を表す。さらに,絶縁素材の範囲に対する配線素材の範囲の密度,すなわち配線密度が25%であることを示している。
【0033】
なお,本実施例において,回路の配線素材として,銅(Cu)を用いる。よって,配線密度は,銅密度と言い換えることができる。
【0034】
図5は,一実施例におけるメッシュ情報の例を示す図である。
【0035】
メッシュ情報は,回路が複数層である場合のメッシュ領域tが属する回路の層を示す「レイヤ」,回路平面上でのメッシュ領域tの座標位置(x,y)を示す「位置」,メッシュ領域tの配線密度を示す「密度」,各周辺領域pの密度を示す「周辺密度」,メッシュ領域tの密度と各周辺領域p1,p2,p3,p4の密度との密度差を示す「密度差」,EOEの発生条件を満たすメッシュ領域であるかを示す「エラーフラグ」,エラーと判定されたメッシュ領域に対する修正が実行されたことを示す「修正フラグ」などのデータ項目を有する。
【0036】
メッシュ情報の「エラーフラグ」は,エラー抽出部13の処理結果にもとづいて,メッシュ領域が発生条件を満たす場合に“1(エラー)”が,発生条件を満たさない場合に“0(否)”が設定される。
【0037】
「修正フラグ」は,エラー修正部16の処理結果にもとづいて,メッシュ領域に対するパターン修正が行われた場合に“1(修正済み)”が,パターン修正が行われなかった場合に“0(否)”が設定される。
【0038】
エラー抽出部13は,回路の全メッシュ領域について,それぞれ,そのメッシュ領域tのメッシュ情報をもとに,メッシュ領域tの密度と各周辺領域p1,p2,p3,p4の密度との関係が,過研磨が発生する条件(EOEの発生条件)に該当するかを判定する。
【0039】
エラー抽出部13は,EOEの発生条件として,例えば以下のような条件を保持する。
・ メッシュ領域の密度と周辺領域の密度の密度差が閾値以上である。
・ メッシュ領域の密度または周辺領域の密度が,低密度の閾値以下である。
・ メッシュ領域の密度または周辺領域の密度が,高密度の閾値以上である。
【0040】
発生条件は,予めユーザによって,材料評価用テスト回路パターン(TEG)により収集された密度情報などをもとに,数式,条件式等で定義される。
【0041】
エラー抽出部13は,保持する発生条件をもとに,メッシュ領域tとその周辺領域p1,p2,p3,p4についてそれぞれ判定処理を行う。
【0042】
図6は,一実施例におけるメッシュ領域と隣接する周辺領域との比較例を示す図である。
【0043】
エラー抽出部13は,図6(A)に示すような回路の1つのメッシュ領域tを判定対象とする場合に,図6(B)に示すように,メッシュ領域tの密度とその左辺側に隣接する周辺領域p1の密度とを比較し,両者の密度差が発生条件の閾値以上であるかを判定する。さらに,エラー抽出部13は,図6(C)に示すように,メッシュ領域tの密度と右辺側に隣接する周辺領域p2の密度とを,図6(D)に示すように,メッシュ領域tの密度と下辺側に隣接する周辺領域p3の密度とを,図6(E)に示すように,メッシュ領域tの密度と上辺側に隣接する周辺領域p4の密度とをそれぞれ比較し,密度差が発生条件の閾値以上であるかを判定する。
【0044】
ここで,図6(A)に示すメッシュ領域tが,回路において配線密度が高い領域に属している場合には,図6(F)に示すように,メッシュ領域tの密度と右辺側の周辺領域p2の密度との密度差が非常に大きくなる。よって,発生条件に定義された閾値以上となるため,発生条件を満たすことになる。エラー抽出部13は,メッシュ領域tの密度が周辺領域p2との関係で発生条件を満たすと判定する。エラー抽出部13は,回路に設定した全てのメッシュ領域について,それぞれ隣接する全ての周辺領域との密度差を判定する。
【0045】
エラー抽出部13は,メッシュ領域tが発生条件を満たすと判定した場合に,そのメッシュ領域tのメッシュ情報をエラー情報とし,エラー情報の該当する周辺領域pに対する「エラーフラグ」に“1”を設定し,エラー情報記憶部14に格納する。
【0046】
エラー情報記憶部14は,エラー抽出部13によって抽出されたエラー情報を記憶する。
【0047】
エラー情報ソート部15は,エラー情報記憶部14に格納されているエラー情報を,その「密度差(メッシュ領域の密度とその周辺領域の密度との密度差)」が大きい順にソートし,ソート結果を示すソートリストを生成する。ソートリストは,例えば,エラー情報から抽出された「レイヤ」,「位置」,エラー判定となった「周辺領域」,エラー判定となった周辺領域との「密度差」などのデータ項目を含む。
【0048】
エラー修正部16は,エラー情報記憶部14に格納されているエラー情報,または,エラー情報ソート部15により生成されたエラーリストをもとに,エラーと判定されたメッシュ領域の配線パターンの修正処理を行う。エラー修正部16は,既知のダミー配線を用いたパターン修正処理を行い,例えば,メッシュ領域内に設定されているダミー配線を削除して,新たにダミー配線を挿入したり,既に設定されているダミー配線間に,より小型のダミー配線を追加して挿入したりして,配線パターンを変更する。
【0049】
さらに,エラー修正部16は,メッシュ領域の配線パターンを修正した場合に,対応するエラー情報の「修正フラグ」に“1(エラー)”を設定する。
【0050】
次に,回路レイアウト装置1の処理の流れを説明する。
【0051】
図7は,一実施例における回路レイアウト装置の概要処理フロー例を示す図である。
【0052】
回路レイアウト装置1において,回路情報取得部11は,被研磨対象の回路の回路情報を取得する(ステップS1)。
【0053】
メッシュ情報生成部12は,回路をメッシュ状に区切ってメッシュ領域と,メッシュ領域に対応する4つの周辺領域とを設定し,各メッシュ領域について,自メッシュ領域の密度と,各周辺領域の密度(周辺領域を構成するメッシュ領域の平均密度)とを含むメッシュ情報を生成する(ステップS2)。
【0054】
回路レイアウト装置1において,処理が終了条件に該当するかが判定される(ステップS3)。終了条件は,「処理の繰り返しの回数が一定回数に達しているか」,「エラーとなったメッシュ領域の数が一定の数以下となったか」などの条件とする。
【0055】
処理が終了条件に該当していなければ(ステップS3のN),エラー抽出部13は,回路内の全てのメッシュ領域について発生条件による判定処理を行い,エラーと判定したメッシュ領域を抽出し,そのメッシュ領域のメッシュ情報をエラー情報としてエラー情報記憶部14に格納する(ステップS4)。
【0056】
次に,エラー情報ソート部15は,エラー情報記憶部14に記憶されているエラー情報を,メッシュ領域とその周辺領域との密度差でソートし,ソートリストを生成する(ステップS5)。エラー修正部16は,ソートリストをもとに,メッシュ領域とその周辺領域との密度差が大きいメッシュ領域から順に,ダミー配線によるパターン修正を行う(ステップS6)。
【0057】
一方,処理が終了条件に該当していれば(ステップS3のY),さらに,回路レイアウト装置1において,回路の全ての層について処理が終了したかが判定される(ステップS7)。回路の全層について処理が終了していなければ(ステップS7のN),ステップS3の処理へ戻され,回路の全層について処理が終了していれば(ステップS7のY),処理を終了する。
【0058】
上記の処理フローにおいて処理が繰り返される場合に,ステップS6の処理において,エラー修正部16は,処理の繰り返し回数に応じて,または,メッシュ領域の密度に応じて,エラーとなったメッシュ領域に対するパターン修正の内容を変えるようにしてもよい。例えば,エラー修正部16は,繰り返し回数に応じて,挿入するダミー配線のパターンを変更し,繰り返し回数が増えるごとに,より高密度となるようなダミー配線のパターンを採用して配線パターンを変更する。または,エラー修正部16は,低密度のメッシュ領域に対してサイズが大きいダミー配線を挿入し,高密度のメッシュ領域に対してサイズが小さいダミー配線を挿入するなどして配線パターンを変更する。
【0059】
図9は,上記の回路レイアウト装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0060】
回路レイアウト装置1は,図9に示すコンピュータ100として実施することができる。コンピュータ100は,例えば,演算装置(CPU:Central Processing Unit)101,メモリ102,入力装置103,出力装置104,外部記憶装置105,ネットワーク接続装置106,媒体駆動装置107などを備え,これらの各装置がバス108に接続された構成である。
【0061】
CPU101は,コンピュータ100の全体を制御する。メモリ102は,プログラムの実行やデータ更新などの処理において,外部記憶装置105や可搬型の記憶媒体に記憶されているプログラムやデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)などである。メモリ102は,CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラム,アプリケーションプログラム,CPU101による処理に必要な各種データの少なくとも一部が一時的に格納される。
【0062】
入力装置103は,例えばキーボード,マウス,タッチパネルなどである。出力装置104は,例えばディスプレイなどである。外部記憶装置105は,例えばハードディスク装置などである。外部記憶装置105には,プログラムやデータが格納される。
【0063】
ネットワーク接続装置106は,インターネットなどのネットワークに接続し,外部の情報処理装置とプログラムやデータの送受信を行う。
【0064】
媒体駆動装置107は,可搬型の記憶媒体に記憶されたプログラムやデータを読み出す。可搬型の記憶媒体は,例えば,FD(フレキシブルディスク),CD−ROM,DVD,光磁気ディスクなどの媒体である。
【0065】
コンピュータ100のCPU101は,メモリ102に読み出したプログラムやデータを用いて,回路レイアウト装置1の上述した実施例に示す処理を含む各種処理を実行する。
【0066】
すなわち,回路レイアウト装置1の回路情報取得部11,メッシュ情報生成部12,エラー抽出部13,エラー情報ソート部15,エラー修正部16などは,プログラムで構成することができ,これらのプログラムがメモリ102にロードされてCPU101で実行されることにより,回路レイアウト装置1の上述の処理部が有する各機能が実現される。また,エラー情報記憶部14などは外部記憶装置105に対応する。
【0067】
なお,回路レイアウト装置1の各処理および機能を実現するプログラムおよびデータは,必ずしも外部記憶装置105に記憶されている必要はなく,可搬型の記憶媒体に記憶されているプログラムおよびデータが,媒体駆動装置107によって読み取られ,メモリ102に格納されるようにしてもよい。さらに,ネットワーク接続装置106が,公衆回線,インターネット,LAN,WANなどのネットワークを介して他のコンピュータなどに記憶された上述のプログラムおよびデータを取得するようにしてもよい。
【0068】
以上,本発明の一態様として開示する回路レイアウト装置1について詳細に説明したが,本発明は上述する実施形態に限定されず,本発明の要旨を逸脱しない範囲において,各種の改良および変更を行ってもよいことは当然である。
【0069】
本発明の一態様として開示する回路レイアウト装置1は,エラー抽出部13により,回路内の各メッシュ領域の密度を,メッシュ領域の四方向について,隣接する相当程度に広い周辺領域の密度と比較し,EOEの発生条件に該当するかを判定する。よって,回路レイアウト装置1は,高密度の広領域と低密度の広領域との境界の高密度領域側に該当するような部分(メッシュ領域)をエラーとして抽出することができ,従来では,推定することが困難であったEOEが発生する可能性がある箇所を局所的に抽出することができる。
【0070】
また,回路レイアウト装置1は,エラー抽出部13により,エラーと判定したメッシュ領域と周辺領域との密度を示すエラー情報を生成する。よって,回路レイアウト装置1は,実際の研磨(CMP)工程を行うことなく,EOEが発生しやすい箇所に関する情報をエラー情報として提供することができる。
【0071】
さらに,回路レイアウト装置1は,エラー修正部16により,エラーと判定されたメッシュ領域,すなわちEOEが発生する可能性がある領域に対してパターンを修正する。よって,回路レイアウト装置1は,回路内でEOEが発生する可能性がある箇所を局所的に修正することができ,処理負荷を抑えて効率的に修正を行うことができる。
【0072】
また,回路レイアウト装置1は,エラー情報ソート部15により,エラー情報を,メッシュ領域と周辺領域との密度差が大きい順にソートする。よって,回路レイアウト装置1は,密度差が大きくEOEが発生する可能性がより高い箇所から,より効率的にパターン修正を行うことができる。
【0073】
したがって,回路レイアウト装置1は,次のような効果を奏する。
・ 実際にCMPを行うことなく,回路の配線パターンおよびTEGなどのテスト情報にもとづいて,回路内でEOEが発生する可能性がある箇所を抽出することができる。
・ 抽出されたEOEが発生しやすい箇所に対して局所的にパターン修正を行うことができるため,処理負荷やデータサイズの増大を招くことなく,効率的にダミー配線の挿入を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 回路レイアウト装置
11 回路情報取得部
12 メッシュ情報生成部
13 エラー抽出部
14 エラー情報記憶部
15 エラー情報ソート部
16 エラー修正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路のレイアウト装置において,
被研磨対象となる回路の配線パターンを含む回路情報を取得する回路情報取得部と,
前記回路をある単位領域でメッシュ状に区切り,区切られた各メッシュ領域について,該メッシュ領域の配線密度と該メッシュ領域の各辺に隣接する複数の単位領域の広さを持つ周辺領域各々における配線密度とを示すメッシュ情報を生成するメッシュ情報生成部と,
前記回路のメッシュ領域ごとに,前記メッシュ領域のメッシュ情報をもとに,該メッシュ領域の密度と各周辺領域の密度との関係が,過研磨が発生する条件を示す発生条件に該当するかを判定し,前記発生条件に該当するメッシュ領域をエラーとして抽出するエラー抽出部とを備える
ことを特徴とする回路のレイアウト装置。
【請求項2】
前記エラー抽出部によって抽出されたメッシュ領域に対するエラー情報を記憶するエラー情報記憶部と,
前記エラー情報をもとに,前記発生条件に該当するメッシュ領域に対して,ダミー配線を用いた配線パターンの修正を行うエラー修正部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の回路のレイアウト装置。
【請求項3】
前記エラー情報記憶部に記憶されたエラー情報を,前記メッシュ領域の密度と該メッシュ領域に隣接する周辺領域の密度との密度差をもとにソートするエラー情報ソート部を備えて,
前記エラー修正部は,前記ソートされたエラー情報の前記密度差が大きいメッシュ領域に対するパターン修正を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の回路のレイアウト装置。
【請求項4】
回路のレイアウトのために,コンピュータが,
被研磨対象となる回路の配線パターンを含む回路情報を取得し,
前記回路をある単位領域でメッシュ状に区切り,区切られた各メッシュ領域について,該メッシュ領域の配線密度と該メッシュ領域の各辺に隣接する複数の単位領域の広さを持つ周辺領域各々における配線密度とを示すメッシュ情報を生成し,
前記回路のメッシュ領域ごとに,該メッシュ領域のメッシュ情報をもとに,該メッシュ領域の密度と各周辺領域の密度との関係が,過研磨が発生する条件を示す発生条件に該当するかを判定し,前記発生条件に該当するメッシュ領域をエラーとして抽出する
ことを特徴とする回路のレイアウト処理方法。
【請求項5】
コンピュータに,
被研磨対象となる回路の配線パターンを含む回路情報を取得する処理と,
前記回路をある単位領域でメッシュ状に区切り,区切られた各メッシュ領域について,該メッシュ領域の配線密度と該メッシュ領域の各辺に隣接する複数の単位領域の広さを持つ周辺領域各々における配線密度とを示すメッシュ情報を生成する処理と,
前記回路のメッシュ領域ごとに,該メッシュ領域のメッシュ情報をもとに,該メッシュ領域の密度と各周辺領域の密度との関係が,過研磨が発生する条件を示す発生条件に該当するかを判定し,前記発生条件に該当するメッシュ領域をエラーとして抽出する処理とを,実行させる処理を行う
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37413(P2013−37413A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170640(P2011−170640)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】