説明

回路接続構造体

【課題】接続電極の接続の信頼性を保証する。
【解決手段】回路接続部5において、液晶表示基板2の透明電極膜2bは接続電極として基板端部に引き出されており、異方性導電膜6を介して、回路装置としてのフレキシブル回路基板4の電極接続部4bに電気的、機械的に接続されている。異方性導電膜6と液晶表示基板2との間に複数の針状導電片9がランダムに配設されている。針状導電片9のうち、いくつかはひび割れ8を跨いでおり、たとえひび割れ8が生じたとしても、針状導電片9がひび割れ8による隙間を電気的に接続する働きをするので、接続の信頼性を保証することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続電極を備えた基板と電極接続部を備えた回路装置とを電気的に接続する回路接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示パネル、タッチパネル等に用いられる基板には、重くて割れやすいガラス基板に代わって軽くて可撓性のある透明樹脂基板が用いられるようになってきている。また、このような基板と電気的に接続する回路装置としては、一般にフレキシブル回路基板が用いられている。
【0003】
図3は、このような従来の回路接続構造体の一例を示す平面図である。図3において、液晶表示装置1は、可撓性を有するプラスチック基板である液晶表示基板2上に設けたm本のストライプ状のITOから成る透明電極膜2bと、これに液晶層を挟んで対向した液晶表示基板2上に設けたn本のストライプ状の透明電極膜2bとの交差部であるm×n個の画素部からなる表示領域を有するマトリクス型のプラスチック液晶表示セルである。各々の液晶表示基板2の一端には透明電極膜2bが接続電極として引き出されており、回路接続部5において、異方性導電膜6を介して、回路装置としてのフレキシブル回路基板4の電極接続部4bに電気的、機械的に接続されている。
【0004】
図4は、図3のA−A´断面を示す回路接続部の断面図である。図4において、フレキシブル回路基板4のベースフィルム4a上に配設された電極接続部4bは回路接続部5部分を除いてカバーレイフィルム4cで覆われている。導電粒子(図4では導電粒子が一つしか描いてないが、実際には多数ある)6aを含有した接着シート6bである異方性導電膜6は、液晶表示基板2とフレキシブル回路基板4とに挟まれて熱圧着され、さらに上下両面から補強テープ7で覆われている。
【0005】
このような回路接続部5において、異方性導電膜6がフレキシブル回路基板4によって液晶表示基板2に対して強く熱圧着されたときに、液晶表示基板2がプラスチック基板であるから、導電粒子6aが透明電極膜2bを柔らかな樹脂基材2aに押しつけて変形させるために、透明電極膜2bにひび割れ8を生じさせる結果、透明電極膜2bと電極接続部4bとの接続回路の電気抵抗が過大になったり、極端な場合には断線してしまうという問題があった。
【0006】
この問題に対する対策としては、既に、フレキシブル回路基板の電極接続部の周囲のベースフィルムに補助材(カバーレイフィルム)を設けることにより、熱圧着時に透明電極膜に必要以上の圧力がかからないようにした発明が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、従来の異方性導電膜を改良し、導電粒子として熱硬化型の絶縁性接着剤に導電物質の粉末を混入した導電性の接着剤粒子としたものを用いて、透明電極膜を変形させないようにした発明も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2008−243947号公報(5頁、図1、図3)
【特許文献2】特許第3100436号公報(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の対策によっても、透明電極膜のひび割れを完全には防止できなかった。
【0008】
上記発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、透明電極膜にひび割れが生じたとしても電気的接続の信頼性を補償することができる回路接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の手段は、接続電極を備えた基板と電極接続部を備えた回路装置とを異方性導電膜を介して電気的に接続する回路接続構造体において、前記異方性導電膜と前記接続電極との間には、複数の針状導電片を配置したことを特徴とする。
【0010】
また、前記針状導電片はその長さが互いに隣り合う前記接続電極の間隔より短いことを特徴とする。
【0011】
また、前記基板は可撓性を有する基板であることを特徴とする。
【0012】
また、前記基板は液晶セル基板であり、前記接続電極は透明電極膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接続電極を備えた基板と電極接続部を備えた回路装置とを異方性導電膜を介して電気的に接続する回路接続構造体において、前記異方性導電膜と前記接続電極との間には、複数の針状導電片を配置したので、たとえ透明電極膜にひび割れが生じても、針状導電片のいくつかがひび割れ部分を跨いで電気的に接続するので、透明電極膜と電極接続部との導通が問題なく確保できる。
【0014】
また、前記針状導電片はその長さが互いに隣り合う前記接続電極の間隔より短いので、隣り合う電極膜間を導通させてしまうことがない。
【0015】
また、前記基板は可撓性を有する基板であるので、衝撃に強い回路接続構造体を得られる。
【0016】
また、前記基板は液晶セル基板であり、前記接続電極は透明電極膜であるので、液晶表示装置の回路接続部として好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態である回路接続構造体について図面を参照して詳細に説明する。図1は、図2のS部を拡大した本発明の実施形態である回路接続構造体を示す平面図である。図2は液晶表示装置とフレキシブル回路基板との回路接続構造体を示す平面図である。図1および図2では、説明の便宜上、図3で図示したフレキシブル回路基板4は除かれている。
【0018】
まず、本発明の実施の形態である回路接続構造体の構成について説明する。図1、図2において、従来の回路接続部と異なる点は、図2における回路接続部5において、異方性導電膜6と液晶表示基板2との間に複数の針状導電片9がランダムに配設されている点である。針状導電片9のうち、いくつかはひび割れ8を跨いでいる。その他の構成は従来技術で説明したものと同じであるから、同じ構成要素には同じ符号と名称とを付して詳細な説明を省略する。液晶表示装置1とフレキシブル回路基板とを接続するには、予め回路接続部5の液晶表示基板2上に針状導電片9を配設しておき、その上に異方性導電膜6、フレキシブル回路基板を順に重ねてこれらを外側からヒートツールで熱圧着する。
【0019】
ここで、針状導電片9としては、炭素繊維、金属繊維、あるいはガラス又は樹脂から成る繊維に蒸着等により導電膜を被着したもの等が用いられる。針状導電片9の直径は可撓性を持つように十分細い直径を有し、針状導電片9の長さは割れ8の隙間(数μm〜数十μm)よりも十分に長く、かつ隣り合う透明電極膜2bの間隔h(約50〜300μm)よりも短いものとする。また針状導電片9を配設する密度は、確実にひび割れ8を跨いでいる状態の針状導電片9が何本か存在し、かつ針状導電片9の連鎖が生じることによって、隣り合う透明電極膜2b同士を電気的に接続してしまうことがないように、適度な密度範囲に設定する。
【0020】
この針状導電片9の配置方法としては、例えば、透明導電膜2bを形成した際に用いたマスク(透明導電膜2bと同形状の窓枠を有するマスク)を用意し、そのマスク上から針状導電片9を散布する。このような方法によって、主に透明導電膜2b上に針状導電片9が配置され、透明導電膜2b間には、針状導電片9は配置されない。
【0021】
次に、この実施の形態の作用・効果について説明する。液晶表示基板2とフレキシブル回路基板との回路接続部5において、透明電極膜2bにひび割れ8が生じてもひび割れ8の隙間を跨いで存在する針状導電片9が折損することなく、ひび割れ8の両側の透明電極膜2bを電気的に接続するように作用するので、回路接続部5における電気的導通が問題なく確保される。
【0022】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、電極接続部を有する回路装置としては、例えば、バンプを備えたICチップであってもよい。また、接続電極を有する基板としては、例えば、タッチパネルの基板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図2のS部を拡大した図であり、本発明の実施の形態である液晶表示装置とフレキシブル回路基板との回路接続部を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態である液晶表示装置とフレキシブル回路基板との回路接続部を示す平面図である。
【図3】従来の液晶表示装置とフレキシブル回路基板との回路接続部を示す平面図である。
【図4】図3のA−A´断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
2 液晶表示基板
2b 透明電極膜
4 フレキシブル回路基板
4b 電極接続部
5 回路接続部
6 異方性導電膜
9 針状導電片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続電極を備えた基板と電極接続部を備えた回路装置とを異方性導電膜を介して電気的に接続する回路接続構造体において、前記異方性導電膜と前記接続電極との間には、複数の針状導電片を配置したことを特徴とする回路接続構造体。
【請求項2】
前記針状導電片はその長さが互いに隣り合う前記接続電極の間隔より短いことを特徴とする請求項1記載の回路接続構造体。
【請求項3】
前記基板は可撓性を有する基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路接続構造体。
【請求項4】
前記基板は液晶セル基板であり、前記接続電極は透明電極膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回路接続構造体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−147127(P2010−147127A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320611(P2008−320611)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】