説明

固体撮像装置及びその製造方法

【課題】斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することを抑制することができ、且つ、感度の低下を抑制することができる固体撮像装置及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る固体撮像装置は、主面に複数の光電変換部が設けられた基板と、前記複数の光電変換部毎に設けられ、屈折率の異なる複数の層が積層され、所定の波長領域の光を選択的に透過させる干渉フィルタと、を備えている。そして、隣接する前記干渉フィルタ同士の間には、空隙が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、固体撮像装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサなどの固体撮像装置においては、画素の微細化(画素数増加)や低背化(小型化)が進んでいる。
そのため、従来から用いられてきた有機顔料を用いたカラーフィルタよりも画素の微細化や低背化に適した干渉フィルタを備えた固体撮像装置が提案されている。
干渉フィルタにおいては、斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することによって、混色の問題が生じる。
そのため、干渉フィルタの周縁に遮光部を備えた固体撮像装置が提案されている。
しかしながら、干渉フィルタの周縁に遮光部を設けるものとすれば、画素面積に占める遮光部の割合が大きくなったり、遮光部に光が吸収されたりすることで感度が低下するおそれがある。また、遮光部を設ける工程が必要となるので製造工程の複雑化や製造コストの増大を招くことにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−307748号公報
【特許文献2】特開2007−220832号公報
【特許文献3】特開2006−202778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することを抑制することができ、且つ、感度の低下を抑制することができる固体撮像装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る固体撮像装置は、主面に複数の光電変換部が設けられた基板と、前記複数の光電変換部毎に設けられ、屈折率の異なる複数の層が積層され、所定の波長領域の光を選択的に透過させる干渉フィルタと、を備えている。そして、隣接する前記干渉フィルタ同士の間には、空隙が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る固体撮像装置を例示するための模式断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る固体撮像装置を例示するための模式断面図である。
【図3】光学シミュレーションの条件を例示するための模式図である。
【図4】干渉フィルタ4が酸化シリコンを用いて形成された場合の光学シミュレーション結果を例示するためのグラフ図である。
【図5】干渉フィルタ4が酸化チタンを用いて形成された場合の光学シミュレーション結果を例示するためのグラフ図である。
【図6】第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法について例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、各図におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向を表し、X方向及びY方向は基板20の主面に平行な方向、Z方向は基板20の主面に直交する方向(積層方向)としている。
[第1の実施形態]
図1、図2は、第1の実施形態に係る固体撮像装置を例示するための模式断面図である。 なお、図1は裏面照射型の固体撮像装置1の場合、図2は表面照射型の固体撮像装置11の場合である。また、図1、図2は、一例として、3画素分の構成を例示するものである。
【0008】
まず、図1に例示をする裏面照射型の固体撮像装置1について説明する。
図1に示すように、固体撮像装置1には、光電変換部2、配線部3、干渉フィルタ4、レンズ5が設けられている。
【0009】
光電変換部2は、基板20の主面に複数設けられている。光電変換部2は、入射した光の強度に応じた電荷を発生させ、発生させた電荷を蓄積するものとすることができる。光電変換部2は、例えば、半導体プロセスにより形成された電荷蓄積領域を有するフォトダイオードとすることができる。この場合、光電変換部2rは、赤色の波長領域の光を受光し、受光した光の強度に応じた電荷を発生させて蓄積するものとすることができる。光電変換部2gは、緑色の波長領域の光を受光し、受光した光の強度に応じた電荷を発生させて蓄積するものとすることができる。光電変換部2bは、青色の波長領域の光を受光し、受光した光の強度に応じた電荷を発生させて蓄積するものとすることができる。
【0010】
光電変換部2r、2g、2bは、基板20に形成されたウェル領域内に設けられている。ウェル領域は、第1導電形(例えば、p形)の不純物を低い濃度で含む半導体(例えば、シリコン)で形成されたものとすることができる。p形の不純物は、例えば、ボロンとすることができる。光電変換部2r、2g、2bにおける電荷蓄積領域は、第1導電形と異なる導電形である第2導電形(例えば、n形)の不純物を含む半導体(例えば、シリコン)で形成されたものとすることができる。この場合、電荷蓄積領域における第2導電形の不純物濃度は、ウェル領域における第1導電形の不純物濃度よりも高い濃度とされている。n形の不純物は、例えば、リンまたは砒素とすることができる。
【0011】
配線部3は、光電変換部2の光が入射する側とは反対の側に設けられている。この場合、配線部3rは、光電変換部2rに対応させて設けられている。配線部3gは、光電変換部2gに対応させて設けられている。配線部3bは、光電変換部2bに対応させて設けられている。配線部3r、3g、3bには、絶縁部3r1、3g1、3b1と絶縁部3r1、3g1、3b1の内部に形成された配線パターン3r2、3g2、3b2がそれぞれ設けられている。絶縁部3r1、3g1、3b1は、例えば、酸化シリコンなどから形成されたものとすることができる。配線パターン3r2、3g2、3b2は、例えば、複数の層(図1に例示をしたものの場合は2層)に形成されたものとすることができる。配線パターン3r2、3g2、3b2は、例えば、銅などの金属を用いて形成されたものとすることができる。
【0012】
干渉フィルタ4は、入射した光のうち赤色、緑色、青色の波長領域の光を選択的に光電変換部2に導くカラーフィルターとして機能する。この場合、干渉フィルタ4rは、入射した光のうち赤色の波長領域の光を光電変換部2rに選択的に導く。干渉フィルタ4gは、入射した光のうち緑色の波長領域の光を光電変換部2gに選択的に導く。干渉フィルタ4bは、入射した光のうち青色の波長領域の光を光電変換部2bに選択的に導く。
【0013】
干渉フィルタ4は、低屈折率の無機材料を用いた層と、高屈折率の無機材料を用いた層とが積層されたフォトニック結晶型のフィルターとすることができる。
すなわち、干渉フィルタ4は、複数の光電変換部2毎に設けられ、屈折率の異なる複数の層が積層され、所定の波長領域の光を選択的に透過させる。
また、後述するように、隣接する干渉フィルタ4同士の間には空隙21が設けられている。
干渉フィルタ4は、上部積層部9a(第1の積層部の一例に相当する)、下部積層部9b(第2の積層部の一例に相当する)、上部積層部9aと下部積層部9bとの間に設けられた干渉部7r、7gを有する。なお、後述するように、干渉部の膜厚は、選択される光の波長領域に応じて設定されるので、光の波長領域によっては干渉部が設けられない場合もある。
上部積層部9aと下部積層部9bは、反射面が互いに対向したミラーとして機能し、可視光領域(例えば、400nm〜700nmの波長領域)における中心波長(例えば、550nm)をその中心波長として有する。この場合、可視光領域の中心波長は、反射面の反射率がピークとなる波長である。
この場合、可視光領域の誤差を考慮すると、中心波長は540nm以上、560nm以下の範囲とすることができる。
上部積層部9aと下部積層部9bにおいては、互いに屈折率の異なる誘電体層が交互に積層されている。図1に例示をしたものの場合には、上部積層部9aには、誘電体層6a(第1の誘電体層の一例に相当する)、誘電体層6b(第2の誘電体層の一例に相当する)、誘電体層6c(第3の誘電体層の一例に相当する)がこの順に積層されている。下部積層部9bには、誘電体層6d(第4の誘電体層の一例に相当する)、誘電体層6e(第5の誘電体層の一例に相当する)、誘電体層6f(第6の誘電体層の一例に相当する)がこの順に積層されている。この場合、誘電体層6aおよび誘電体層6cの屈折率は、誘電体層6bの屈折率よりも高く、誘電体層6dおよび誘電体層6fの屈折率は、誘電体層6eの屈折率よりも高くなっている。誘電体層6a、誘電体層6c、誘電体層6d、誘電体層6fは、例えば、酸化チタン(TiO、屈折率2.5)や窒化シリコン(SiN、屈折率2.0)などを用いて形成されるものとすることができる。誘電体層6b、誘電体層6eは、例えば、酸化シリコン(SiO、屈折率1.46)を用いて形成されるものとすることができる。
【0014】
誘電体層6a〜6fの光学的膜厚は、中心波長(可視光領域の中心波長)の1/4となるようになっている。誘電体層6a〜6fの光学的膜厚は、例えば、135nm以上、140nm以下とすることができる。
なお、光学的膜厚の値は、対象となる層の物理的な膜厚dにその層を形成する材料の屈折率nを乗じた値としている。
すなわち、誘電体層6a〜6fの膜厚dは以下の式で表すことができる。
【数1】

ここで、dは誘電体層6a〜6fの膜厚、nは屈折率、λは中心波長である。
例えば、中心波長λが550nm、誘電体層6dが酸化チタン(屈折率nが2.5)から形成され、誘電体層6eが酸化シリコン(屈折率nが1.46)から形成される場合には、誘電体層6dの膜厚は55nmとなり、誘電体層6eの膜厚は94nmとなる。誘電体層6a、6b、6c、6fについても同様にして膜厚を求めることができる。ただし、上部積層部9aにおいて下部積層部9bの側に形成される誘電体層6aの膜厚は55nmよりも薄くされる。
【0015】
また、干渉部7r、7gは、上部積層部9aと下部積層部9bの間に設けられ、上部積層部9aの反射面と下部積層部9bの反射面とで多重反射した光を干渉(多光束干渉)させるために設けられる。干渉部7r、7gは、ファブリーペロー干渉計と同じ原理に基づいた機能を有する。
干渉部7r、7gの屈折率は、誘電体層6a、6c、6d、6fの屈折率よりも低くなっている。干渉部7r、7gは、例えば、酸化シリコンを用いて形成されるものとすることができる。
干渉部7r、7gの膜厚は、選択される光の波長領域に応じて設定される。例えば、赤色の光の場合には干渉部7rの膜厚が85nmとされ、緑色の光の場合には干渉部7gの膜厚が35nmとされ、青色の場合には干渉部の膜厚が0nmとされる。すなわち、青色の場合には干渉部が設けられないことになる。
【0016】
干渉フィルタ4とレンズ5との間には、平坦化層8r、8g、8bが設けられている。干渉フィルタ4の厚み寸法が異なるものとなるので、レンズ5の位置が一定となるようにするために平坦化層8r、8g、8bが設けられる。平坦化層8r、8g、8bは、透明樹脂や酸化シリコンなどの透光性材料を用いて形成されている。
【0017】
レンズ5は、平坦化層8r、8g、8bの上に設けられている。
すなわち、レンズ5は、干渉フィルタ4の光電変換部2が設けられる側とは反対の側に設けられている。
レンズ5は、入射した光を集光して光電変換部2r、2g、2bに集める。レンズ5は、例えば、透明樹脂などの透光性材料を用いて形成されるようにすることができる。
また、レンズ5の周縁は、干渉フィルタ4の周縁よりも外側に設けられている。すなわち、レンズ5のXY平面(基板20の主面に平行な平面)における大きさは、干渉フィルタ4のXY平面における大きさよりも大きくなっている。この様にすれば、レンズ5に入射する光の量を増加させることができるので、感度を向上させることができる。
【0018】
ここで、干渉フィルタ4の代わりに有機顔料を用いたカラーフィルタを用いた場合には、画素の微細化(画素数増加)や低背化(小型化)を図ることが難しい。
一方、干渉フィルタ4を用いるものとすれば、画素の微細化や低背化を図ることができる。しかしながら、干渉フィルタ4を用いた場合には、干渉フィルタ4に斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入するという問題が発生する。この場合、干渉フィルタ4の周縁に遮光部を設けて斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することを抑制するようにすることもできる。ところが、干渉フィルタ4の周縁に遮光部を設けるものとすれば、画素面積に占める遮光部の割合が大きくなったり、遮光部に光が吸収されたりすることで感度が低下するおそれがある。また、遮光部を設ける工程が必要となるので製造工程の複雑化や製造コストの増大を招くことにもなる。
【0019】
そこで、本実施の形態においては、隣接する干渉フィルタ4同士の間に空隙部21を設けることで、干渉フィルタ4に斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することを抑制するようにしている。すなわち、空隙部21の屈折率は空気の屈折率(n=1)となるので、干渉フィルタ4に斜めに入射する光が干渉フィルタ4と空隙部21との界面で反射され、隣接する画素領域に混入することが抑制される。
この場合、隣接する平坦化層8r、8g、8b同士の間にも空隙部21が設けられるようにすることができる。
【0020】
また、空隙部21が基板20やレンズ5に達するようにすることもできる。しかしながら、空隙部21が基板20に達するようにすれば空隙部21の形成時に基板20にダメージが発生するおそれがある。また、空隙部21がレンズ5に達するようにすればレンズ5に入射する光の量が減少するので感度が低下するおそれがある。そのため、空隙部21は、隣接する干渉フィルタ4同士の間、隣接する平坦化層8r、8g、8b同士の間に設けられるようにすることが好ましい。
【0021】
空隙部21のXY平面における寸法L(隣接する干渉フィルタ4同士の間の寸法)は、感度を向上させるという観点からは小さくすることが好ましい。一方、空隙部21のXY平面における寸法Lは、隣接する画素領域に光が混入することを抑制するという観点からは大きくすることが好ましい。
次に、空隙部21のXY平面における寸法Lと斜めに入射する光の透過率との関係を光学シミュレーションを用いて求めた結果について説明する。
図3は光学シミュレーションの条件を例示するための模式図、図4は干渉フィルタ4が酸化シリコンを用いて形成された場合の光学シミュレーション結果を例示するためのグラフ図、図5は干渉フィルタ4が酸化チタンを用いて形成された場合の光学シミュレーション結果を例示するためのグラフ図である。
【0022】
図3に示すように、光学シミュレーションにおいては、干渉フィルタ4が酸化シリコンまたは酸化チタンを用いた層のみから構成されるものとしている。また、酸化シリコンの屈折率を1.46、酸化チタンの屈折率を2.5、空隙部21(空気)の屈折率を1としている。そして、斜めに入射する光23のXY平面に対する角度を入射角θとしている。 また、図4、図5に示す10は寸法Lが10nmの場合、50は寸法Lが50nmの場合、100は寸法Lが100nmの場合、200は寸法Lが200nmの場合、500は寸法Lが500nmの場合である。また、各寸法Lにおける「a」は光の波長が450nmの場合、「b」は光の波長が530nmの場合、「c」は光の波長が620nmの場合である。例えば、10aは寸法Lが10nm、光の波長が450nmの場合である。
【0023】
ここで、入射角θは、実用上、60°以上となり、また、透過率が50%以下(反射率が50%以上)となることが好ましい。
【0024】
図4から分かるように、干渉フィルタ4が酸化シリコンを用いて形成された場合には、寸法Lを100nm以上とすれば入射角θが60°の場合であっても透過率が50%以下(反射率が50%以上)となるようにすることができる。
図5から分かるように、干渉フィルタ4が酸化チタンを用いて形成された場合には、寸法Lを50nm以上とすれば入射角θが60°の場合であっても透過率が50%以下(反射率が50%以上)となるようにすることができる。
【0025】
この場合、干渉フィルタ4は、異なる屈折率を有する層が積層されたものであるため、干渉フィルタ4の屈折率は、異なる屈折率を平均したものになると考えられる。そのため、空隙部21のXY平面における寸法Lの条件は、図4と図5とに例示をしたものの中間となると考えられる。
すなわち、寸法Lは50nm以上とすることができ、100nm以上とすることがより好ましいことになる。
また、酸化チタンの代わりに窒化シリコンを用いる場合には、屈折率が2.0となるが寸法Lの好ましい範囲は同様とすることができる。
【0026】
次に、図2に例示をする固体撮像装置11について説明する。
図2に示すように、固体撮像装置11には、光電変換部2、配線部3、干渉フィルタ4、レンズ5が設けられている。
すなわち、表面照射型の固体撮像装置11は、光電変換部2と配線部3とのZ方向における位置が異なるものの基本的な構成は図1に例示をした裏面照射型の固体撮像装置1とほぼ同じである。
そのため、干渉フィルタ4、空隙部21、空隙部21のXY平面における寸法L、レンズ5、レンズ5の周縁位置などは前述したものと同様とすることができる。
【0027】
本実施の形態によれば、隣接する干渉フィルタ4同士の間に空隙部21を設けるようにしているので、干渉フィルタ4に斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することを抑制することができる。また、隣接する干渉フィルタ4同士の間に遮光部を設ける必要がないので感度の低下や製造工程の複雑化などを抑制することができる。
また、レンズ5の周縁は、干渉フィルタ4の周縁よりも外側に設けられている。そのため、レンズ5に入射する光の量を増加させることができるので、感度を向上させることができる。
【0028】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法について例示する。
図6は、第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法について例示するためのフローチャートである。
まず、基板20の主面に複数の光電変換部2を形成する(ステップS1)。
例えば、シリコンなどからなる基板20の上層部分にイオン注入法を用いて第1導電形(例えば、p形)の不純物を注入することでウェル領域を形成する。そしてさらに、イオン注入法を用いて、第1導電形と異なる導電形である第2導電形(例えば、n形)の不純物を注入して光電変換部2の電荷蓄積領域を形成する。この場合、電荷蓄積領域における第2導電形の不純物濃度は、ウェル領域における第1導電形の不純物濃度よりも高い濃度とされる。p形の不純物は、例えば、ボロンとすることができる。n形の不純物は、例えば、リンまたは砒素とすることができる。
【0029】
次に、光電変換部2の上に配線部3を形成する(ステップS2)。
例えば、スパッタ法やCVD法(Chemical Vapor Deposition法:化学気相成長法)などを用いて、光電変換部2の上に酸化シリコンなどの絶縁膜を成膜する。次に、成膜された絶縁膜の上に銅などの金属の膜を成膜し、フォトリソグラフィ法及びRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法を用いて配線パターンを形成する。そして、形成された配線パターンを覆うように酸化シリコンなどの絶縁膜を成膜することで配線部3を形成する。なお、配線パターンが複数の層に形成される場合には、絶縁膜の成膜と配線パターンの形成とが繰り返し実行される。また、必要に応じてビア、コンタクト、引出配線などを形成することができる。
【0030】
次に、屈折率の異なる複数の層が積層され、所定の波長領域の光を選択的に透過させる干渉フィルタ4を形成する。
ここで、図1に例示をする裏面照射型の固体撮像装置1の場合には、配線部3の上に支持用の基板を貼り合わせ、基板20の裏面側(光電変換部2が設けられた側とは反対の側)を研削エッチングして光電変換部2を露出させる(ステップS3−1−1)。
そして、光電変換部2の上に干渉フィルタ4となる積層体を形成する(ステップS3−1−2)。
また、図2に例示をする表面照射型の固体撮像装置11の場合には、配線部3の上に干渉フィルタ4となる積層体を形成する(ステップS3−2)。
【0031】
次に、干渉フィルタ4となる積層体の形成についてさらに例示をする。
干渉フィルタ4となる積層体の形成においては、まず、下部積層部9bとなる積層体を形成する。
例えば、スパッタ法やCVD法などを用いて、誘電体層6dとなる膜、誘電体層6eとなる膜、誘電体層6fとなる膜をこの順に積層する。
誘電体層6d、誘電体層6fとなる膜は、例えば、酸化チタン(TiO、屈折率2.5)や窒化シリコン(SiN、屈折率2.0)などを用いて形成されるものとすることができる。誘電体層6eとなる膜は、例えば、酸化シリコン(SiO、屈折率1.46)を用いて形成されるものとすることができる。
また、誘電体層6d〜6fとなる膜の光学的膜厚が、中心波長の1/4となるようにされる。誘電体層6d〜6fとなる膜の光学的膜厚は、例えば、135nm以上、140nm以下とすることができる。
例えば、中心波長λが550nm、誘電体層6d、6fとなる膜が酸化チタン(屈折率nが2.5)から形成され、誘電体層6eとなる膜が酸化シリコン(屈折率nが1.46)から形成される場合には、誘電体層6d、6fとなる膜の膜厚は55nmとされ、誘電体層6eとなる膜の膜厚は94nmとされる。
【0032】
次に、スパッタ法やCVD法などを用いて、誘電体層6fとなる膜の上に干渉部7rとなる膜を成膜する。干渉部7rとなる膜の膜厚は、赤色光の波長領域に応じたものとされる。干渉部7rとなる膜の膜厚は85nmとされる。干渉部7rとなる膜は、例えば、酸化シリコンを用いて形成されるものとすることができる。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、干渉フィルタ4rとなる領域を覆うレジストパターンを形成し、RIE法などを用いて、レジストパターンに覆われていない領域に露出した干渉部7rとなる膜の表面を除去する。この場合、干渉部7rとなる膜の膜厚が35nmとなるようにハーフエッチングして干渉部7gとなる膜を形成する。その後、レジストパターンを除去し、干渉フィルタ4bとなる領域が露出するレジストパターンを形成する。そして、RIE法などを用いて、干渉フィルタ4bとなる領域に露出した干渉部7gとなる膜を除去する。その後、レジストパターンを除去することで、干渉フィルタ4rとなる領域に膜厚が85nmの膜が形成され、干渉フィルタ4gとなる領域に膜厚が35nmの膜が形成される。この場合、干渉フィルタ4bとなる領域には干渉部となる膜が形成されていないことになる。
【0033】
次に、上部積層部9aとなる積層体を形成する。
上部積層部9aの形成は、下部積層部9bの形成と同様とすることができる。
ただし、下部積層部9bの側に形成される誘電体層6aとなる膜の膜厚は55nmよりも薄くされる。
以上のようにして、干渉フィルタ4となる積層体が形成される。
【0034】
次に、干渉フィルタ4となる積層体の上に平坦化層8r、8g、8bとなる膜を形成する(ステップS4)。
すなわち、上部積層部9aとなる積層体の上に平坦化層8r、8g、8bとなる膜を形成する。
例えば、透明樹脂や酸化シリコンなどの透光性材料を成膜し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて、成膜された膜の表面を平坦化することで平坦化層8r、8g、8bとなる膜を形成するようにすることができる。
【0035】
次に、干渉フィルタ4、平坦化層8r、8g、8bを形成する(ステップS5)。
例えば、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法などを用いて、下部積層部9bとなる積層体と、干渉部7r、7gとなる膜と、上部積層部9aとなる積層体と、平坦化層8r、8g、8bとなる膜とが積層された積層体から所定の形状を有する干渉フィルタ4、平坦化層8r、8g、8bを形成する。
【0036】
この場合、フォトリソグラフィ法を用いて、干渉フィルタ4、平坦化層8r、8g、8bとなる領域を覆うレジストパターンを形成し、ドライエッチング法を用いてレジストパターンで覆われていない部分を除去することで所定の形状を有する干渉フィルタ4、平坦化層8r、8g、8bを形成するようにすることができる。この際、レジストパターンで覆われていない部分が除去されることで、隣接する干渉フィルタ4同士の間に空隙部21が形成される。その後、レジストパターンを除去することで、所定の形状を有する干渉フィルタ4、平坦化層8r、8g、8b、空隙部21が形成される。
すなわち、干渉フィルタ4を形成する工程において、干渉フィルタ4が複数の光電変換部2毎に設けられるとともに、隣接する干渉フィルタ4同士の間に空隙21が設けられる。 この場合、空隙部21のXY平面における寸法L(隣接する干渉フィルタ4同士の間の寸法)は、50nm以上となるようにすることができる。
【0037】
ここで、酸化シリコンを用いた層と酸化チタンを用いた層とにより干渉フィルタ4が構成される場合には、例えば、CFとCHFの混合ガスを用いたプラズマエッチング処理において、混合ガスの圧力や投入パワーを適正化することで酸化シリコンと酸化チタンのエッチング速度をほぼ同じにすることができる。これにより、異なる2種類の層の端面が露出する干渉フィルタ4の側壁の表面を凹凸のない滑らかな平面状にすることができる。
また、裏面照射型の固体撮像装置1を製造する場合には、干渉フィルタ4を形成するためのプラズマエッチング処理が終わると光電変換部2が形成された基板20が露出することになる。この場合、基板20はシリコンから形成されているが、このシリコンに対するエッチング選択性に関しては、半導体プロセスにおけるコンタクトホールエッチングで用いられている既知のエッチング条件とすることでシリコンに対する酸化シリコンの適切な選択比を得ることができる。すなわち、基板20に対する干渉フィルタ4の選択的なプラズマエッチング処理は可能である。
【0038】
この場合、酸化チタンや酸化シリコンをプラズマエッチング処理する際に生じるチタン、シリコン、酸素などに関するプラズマ中の発光強度をモニタリングしてプラズマエッチング処理の状況や終点を検出することができる。
【0039】
次に、平坦化層8r、8g、8bの上にレンズ5を形成する(ステップS6)。
すなわち、干渉フィルタ4の光電変換部2が設けられる側とは反対の側にレンズ5を形成する。
レンズ5を形成する際には、レンズ5の周縁が干渉フィルタ4の周縁よりも外側に設けられるようにすることができる。
レンズ5に形成は、例えば、透明樹脂などの透光性材料を用いてレンズ5を形成し、形成されたレンズ5を平坦化層8r、8g、8bの上に接着するようにすることができる。 また、平坦化層8r、8g、8bの上に透明樹脂などの透光性材料を用いてレンズ5となる膜を成膜し、これを熱処理することでレンズ5の形状に成形するようにしてもよい。なお、レンズ5となる膜を成膜する際に、透明樹脂などの透光性材料が空隙部21に入らないように空隙部21を犠牲膜などで埋めておくようにすることもできる。
以上のようにして、固体撮像装置1、11を製造することができる。
【0040】
以上に例示をした実施形態によれば、斜めに入射する光が隣接する画素領域に混入することを抑制することができ、且つ、感度の低下を抑制することができる固体撮像装置及びその製造方法を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0041】
例えば、固体撮像装置1、11においては、複数の画素が1次元的に配列された構成とすることもできるし、複数の画素が2次元的に配列された構成とすることもできる。複数の画素が2次元的に配列された構成を有する場合、固体撮像装置1、11の仕様にあわせて所望のサイズおよびレイアウトを有した干渉フィルタ4を形成すればよい。例えば、図1に例示をした赤色、緑色、青色の各波長領域の光に対応する画素がベイヤー配列に従ってレイアウトされていてもよい。また、光電変換部2は、フォトダイオード以外のものとすることもできる。例えば、基板20と干渉フィルタ4との間に設けられた光電変換機能を有する無機膜または有機膜とすることもできる。また、干渉フィルタ4に設けられる上部積層部、干渉部、下部積層部における材料、積層数、各層の厚み寸法などは適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 固体撮像装置、2 光電変換部、2r 光電変換部、2g 光電変換部、2b 光電変換部、3 配線部、3r 配線部、3g 配線部、3b 配線部、4 干渉フィルタ、5 レンズ、6a〜6f 誘電体層、7r 干渉部、7g 干渉部、8r 平坦化層、8g 平坦化層、8b 平坦化層、9a 上部積層部、9b 下部積層部、11 固体撮像装置、20 基板、21 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に複数の光電変換部が設けられた基板と、
前記複数の光電変換部毎に設けられ、屈折率の異なる複数の層が積層され、所定の波長領域の光を選択的に透過させる干渉フィルタと、
を備え、
隣接する前記干渉フィルタ同士の間には、空隙が設けられたことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記干渉フィルタ同士の間の寸法は、50nm以上であることを特徴とする請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記干渉フィルタの前記光電変換部が設けられる側とは反対の側に設けられたレンズをさらに備え、
前記レンズの周縁は、前記干渉フィルタの周縁よりも外側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記干渉フィルタは、第1の積層部と、第2の積層部と、前記第1の積層部と前記第2の積層部との間に設けられた干渉部と、を有し、
前記第1の積層部は、第1の誘電体層、第2の誘電体層、第3の誘電体層がこの順に積層され、
前記第2の積層部は、第4の誘電体層、第5の誘電体層、第6の誘電体層がこの順に積層され、
前記第1の誘電体層および前記第3の誘電体層の屈折率は、前記第2の誘電体層の屈折率よりも高く、
前記第4の誘電体層および前記第6の誘電体層の屈折率は、前記第5の誘電体層の屈折率よりも高くされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記第2の誘電体層および前記第5の誘電体層は、酸化シリコンを用いて形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記第1の誘電体層と、前記第3の誘電体層と、前記第4の誘電体層と、前記第6の誘電体層と、は、酸化チタンまたは窒化シリコンを用いて形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1の誘電体層の光学的膜厚と、前記第2の誘電体層の光学的膜厚と、前記第3の誘電体層の光学的膜厚と、前記第4の誘電体層の光学的膜厚と、前記第5の誘電体層の光学的膜厚と、前記第6の誘電体層の光学的膜厚と、は、135nm以上、140nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
【請求項8】
基板の主面に複数の光電変換部を形成する工程と、
屈折率の異なる複数の層が積層され、所定の波長領域の光を選択的に透過させる干渉フィルタを形成する工程と、
を備え、
前記干渉フィルタを形成する工程において、前記干渉フィルタが前記複数の光電変換部毎に設けられるとともに、隣接する前記干渉フィルタ同士の間に空隙が設けられることを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項9】
前記干渉フィルタ同士の間の寸法は、50nm以上であることを特徴とする請求項8記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項10】
前記干渉フィルタの前記光電変換部が設けられる側とは反対の側にレンズを形成する工程をさらに備え、
前記レンズを形成する工程において、前記レンズの周縁が前記干渉フィルタの周縁よりも外側に設けられることを特徴とする請求項8または9に記載の固体撮像装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−38091(P2013−38091A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170144(P2011−170144)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】