説明

圧電デバイス

【課題】バランス調整用のレーザ光がパッケージベースにあたるのを防止して、精度を向上した圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス10は、バランス調整部48を備えた圧電振動片40と、バランス調整部48と積層方向に重なる位置に少なくとも設けた絶縁基板32と、圧電振動片40と絶縁基板32とに接合し、圧電振動片40を絶縁基板32から離して保持するリード36と、凹陥部18を有し、この凹陥部18の底面に絶縁基板32を配設したパッケージベース14と、パッケージベース14の上面に接合した透明な蓋体24とを備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電デバイスに係り、特に圧電振動片の振動のバランス調整を行う圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスには、圧電振動片をパッケージベースに搭載し、このパッケージベースに蓋体を被せて圧電振動片を封止した後、この圧電振動片の振動を調整するものがある。具体的な構成は、次のようになっている。すなわち圧電デバイスはパッケージベースを有している。このパッケージベースは上方に向けて開口した凹陥部を有し、この凹陥部に圧電振動片を搭載している。そして圧電振動片は、金属を成膜して形成されたバランス調整部を備えている。このようなパッケージベースの上面に透明な蓋体を接合して、圧電振動片を気密封止している。そして圧電振動片の振動調整は、蓋体を通してバランス調整部にレーザ光を照射し、バランス調整部を削ることにより行われる。
【0003】
なお特許文献1には、音叉型の圧電振動片にレーザ光を照射して、振動腕の質量を削減し、発振周波数を調整することが開示されている。
【特許文献1】特開2004−6681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで圧電振動片には、透明な圧電材料を用いる場合がある。この場合には、前述したようにレーザ光を用いて圧電振動片の振動調整を行うと、レーザ光がバランス調整部(圧電振動片)を透過してパッケージベース(凹陥部)の底面に当たることがある。このときパッケージベースはレーザ光によって損傷を受け、パッケージベースの破片(微粒子)が凹陥部内に飛散してしまう。そして圧電振動片は、この微粒子が付いてしまうと所望の特性が得られなくなってしまう。また飛散した微粒子によって凹陥部内の真空度が悪化することによっても、圧電振動片の所望の特性が得られなくなってしまう。
【0005】
本発明は、バランス調整用のレーザ光がパッケージベースに当たるのを防止して、精度を向上した圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧電デバイスは、バランス調整部を備えた圧電振動片と、バランス調整部と積層方向に重なる位置に少なくとも設けた絶縁基板と、先端部が圧電振動片に接合するとともに基端部側が絶縁基板に接合し、圧電振動片を絶縁基板から離して保持するリードと、凹陥部を有し、この凹陥部の底面に絶縁基板および前記リードの基端部を配設したパッケージと、を備えたことを特徴としている。
【0007】
圧電振動片とパッケージベースの底面との間に絶縁基板を配設しているので、バランス調整用のレーザ光がバランス調整部(圧電振動片)を透過したとしても絶縁基板で吸収でき、パッケージが損傷を受けるのを防止できる。したがってパッケージが損傷を受けることによって生じる微粒子が圧電振動片に付くことがなく、また気密封止されている凹陥部の真空度が悪化することがないので、圧電振動片の特性が悪化することがなく、高精度な圧電デバイスが得られる。
【0008】
また本発明に係る圧電デバイスは、凹陥部の底面にレーザ光保護部を設けたことを特徴としている。また本発明に係る圧電デバイスは、凹陥部の側面にレーザ光保護部を設けたことを特徴としている。バランス調整用のレーザ光がバランス調整部等で反射する可能性がある。しかし凹陥部の側面や底面にレーザ光保護部を設けることで、バランス調整部等で反射したレーザ光をレーザ光保護部や絶縁基板で吸収できる。したがってパッケージが損傷を受けるのを防止でき、特性が悪化することのない圧電デバイスが得られる。
【0009】
また本発明に係る圧電デバイスは、バランス調整部を備えた圧電振動片と、凹陥部を有し、この凹陥部に前記圧電振動片を配設したパッケージと、前記バランス調整部と積層方向に少なくとも重なる位置における前記凹陥部の底面に設けたレーザ光保護部と、を備えたことを特徴としている。バランス調整用のレーザ光がバランス調整部(圧電振動片)を透過したとしてもレーザ光保護部で吸収でき、パッケージが損傷を受けるのを防止できる。したがってパッケージが損傷を受けることによって生じる微粒子が圧電振動片に付くことがなく、また気密封止されている凹陥部の真空度が悪化することがないので、圧電振動片の特性が悪化することがなく、高精度な圧電デバイスが得られる。
【0010】
また本発明に係る圧電デバイスは、凹陥部の側面や凹陥部の底面全体にレーザ光保護部を設けたことを特徴としている。バランス調整用のレーザ光がバランス調整部等で反射する可能性がある。しかし凹陥部の側面や底面にレーザ光保護部を設けることで、バランス調整部等で反射したレーザ光をレーザ光保護部で吸収できる。したがってパッケージが損傷を受けるのを防止でき、特性が悪化することのない圧電デバイスが得られる。
【0011】
そして前述した圧電振動片は、ジャイロセンサ用の圧電振動片であることを特徴としている。これにより上述した特徴を有する高精度な圧電ジャイロを得ることができる。
【0012】
また前述したパッケージは、凹陥部を有するパッケージベースと、このパッケージベースの上面に接合して凹陥部を封止した透明な蓋体とを備えたことを特徴としている。蓋体は透明なので、レーザ光を透過することができる。このためパッケージベースに搭載した圧電振動片を蓋体で封止した後に、圧電振動片の振動のバランスを調整できる。よって圧電振動片の振動のバランスがずれることはなく、高精度な圧電デバイスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る圧電デバイスの最良の実施形態について説明する。なお以下の実施形態では、圧電デバイスとして圧電ジャイロを用いた形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る圧電ジャイロの断面図である。第1の実施形態に係る圧電ジャイロ10の概略構成は、次のようになっている。すなわち圧電ジャイロ10はパッケージ12を有している。このパッケージ12は、凹陥部18を備えたパッケージベース14と、このパッケージベース14の上面に接合して凹陥部18を封止した蓋体24とを有している。そしてパッケージベース14は、圧電振動片40および中間基板30を凹陥部18に搭載している。またパッケージベース14と蓋体24は、これらの間に設けた接合材28によって固着している。
【0014】
具体的に説明すると、圧電ジャイロ10を構成するパッケージベース14は、その裏面に外部端子16を備えている。またパッケージベース14は、底面上の周縁に側壁を形成することにより、上方に向けて開口した凹陥部18を有している。この凹陥部18の底面にマウント電極20が設けてあり、このマウント電極20は外部端子16と導通している。
【0015】
このようなパッケージベース14は、凹陥部18の底面に中間基板30を搭載している。図2は圧電振動片および中間基板の説明図である。ここで図2(A)は圧電振動片の概略平面図であり、図2(B)は中間基板の概略平面図である。中間基板30は、図2(B)に示すように、樹脂等で形成された絶縁基板32を備えている。この絶縁基板32は枠型であり、その中央部にデバイスホール34を設けている。この絶縁基板32の下面に複数のリード36が固着している。このリード36は、絶縁基板32の周縁部からデバイスホール34の中央付近まで延びており、デバイスホール34の部分で上方に向かって折り曲げられている(図1参照)。そして、この折り曲げられたリード36の先端部36aに圧電振動片40が接合している。この接合には、例えばバンプ52を利用すればよい。またリード36の基端部36bは、導電性接着剤38等を用いてマウント電極20と接合している。
【0016】
また図2(A)に示す圧電振動片40は圧電ジャイロ用であり、その中央部に基部42を備えている。この基部42には、左右方向に延びる支持部44が接続している。すなわち支持部44は、基部42の外形を形成する左右それぞれの辺の中央から突き出ている。この支持部44の先端部には、上下方向に延びる駆動アーム46が接続している。そして各駆動アーム46のバランスを取るために、その先端部にバランス調整部48を設けている。このバランス調整部48は、錘となる金属であればよい。また基部42には、上下方向に延びる検出アーム50が接続している。すなわち検出アーム50は、基部42の外形を形成する上下それぞれの辺の中央から、駆動アーム46に対して平行に突き出ている。
【0017】
そして駆動アーム46に駆動電極(図示せず)を設けるとともに、検出アーム50に検出電極(図示せず)を設けている。そして基部42の裏面には、前記駆動電極と導通する接続電極(図示せず)を設けるとともに、前記検出電極と導通する接続電極(図示せず)を設けている。これらの接続電極は、バンプ52を介してリード36の先端部36aに接合している。これによりリード36等を介して圧電振動片40と外部端子16が導通する。なお中間基板30(絶縁基板32)は、圧電振動片40に設けられたバランス調整部48と積層方向に重なる位置に少なくとも設けられていればよい。すなわち絶縁基板32とバランス調整部48が平面視して重なっていればよい。
【0018】
そして図1に示すように、接合材28を介してパッケージベース14の上面に透明な蓋体24が接合している。この蓋体24は、バランス調整部48と平面視して重なる位置にレンズ26を備えている。このレンズ26は、バランス調整部48に照射されるレーザ光が通過する箇所であり、例えば球面レンズや非球面レンズ、シリンドリカルレンズ、フレネルレンズ等であればよい。
【0019】
また接合材28は、蓋体24よりも融点が低いものであり、例えば低融点ガラスであればよい。なお接合材28の加熱・溶融には、赤外線を照射できるハロゲンランプやヒータ等を用いればよい。そしてハロゲンランプは、可視光から近赤外域までの波長、すなわち約1.5μmまでの波長を照射できるものであればよい。
【0020】
次に、圧電ジャイロ10の製造方法について説明する。まず圧電振動片40と中間基板30を接合する。具体的には、まず圧電振動片40の裏面に設けた前記接続電極上にバンプ52を形成する。次に、中間基板30を構成しているリード36の先端部36aと前記接続電極が平面視して重なるように圧電振動片40と中間基板30を上下に配置する。そして中間基板30から圧電振動片40に向かってボンディングツールを移動する。このときボンディングツールはデバイスホール34を通過するので、前記ボンディングツールでリード36を折り曲げつつ、リード36の先端部36aを圧電振動片40の前記接続端子(バンプ52)に接合する。なおこの接合は、加熱圧着や超音波を用いて行えばよい。次に、パッケージベース14に設けられたマウント電極20に導電性接着剤38を塗布する。そして圧電振動片40が接合している中間基板30をマウント電極20の上に搭載する。このときマウント電極20とリード36が導電性接着剤38を介して1対1に導通する。
【0021】
この後、パッケージベース14(凹陥部18を形成する前記側壁)の上面に蓋体24を接合する。具体的には、まずパッケージベース14の上面および蓋体24の下面周縁部の少なくともいずれか一方に接合材28を設けておき、この接合材28を介してパッケージベース14の上面に蓋体24を載せる。そしてハロゲンランプから光を照射して蓋体24を加熱する。この加熱によって接合材28が溶融し、蓋体24とパッケージベース14が接合する。このときパッケージベース14と蓋体24の接合を真空中で行えば、圧電振動片40は真空封止される。またパッケージベース14に貫通孔(図示せず)を設けておき、パッケージベース14と蓋体24を接合した後に凹陥部18を真空にして、前記貫通孔に孔封止材を設けることによっても、圧電振動片40は真空封止される。
【0022】
この後、圧電振動片40の振動のバランス調整(チューニング)を行う。なお従来は、圧電振動片をパッケージベースに搭載する前にチューニングをしていた。しかしチューニングした圧電振動片をパッケージベースに搭載した後、パッケージベースの上面に蓋体を接合すると、チューニングがずれてしまっていた。このため本実施形態では、圧電ジャイロ10を高精度にするために、圧電振動片40をパッケージ12に搭載した後にチューニングを行うこととした。
【0023】
チューニングの具体的な方法は次の通りである。すなわちバランス調整部48の上方にレンズ26を配置しているので、圧電ジャイロ10の外側からこのレンズ26に向けてレーザ光を照射する。そしてレンズ26が凸レンズになっている場合は、このレンズ26でレーザ光を集光し、この集光したレーザ光でバランス調整部48の金属を蒸散させることにより、質量を削減して駆動アーム46のバランスを調整する。なおレンズ26の焦点距離はレンズ26からバランス調整部48までの距離である。またレンズ26が凹レンズになっている場合は、このレンズ26でレーザ光を平行光にし、この平行光となったレーザ光でバランス調整部48の金属を蒸散させることにより、質量を削減して駆動アーム46のバランスを調整する。このようなチューニングにより駆動アーム46のバランスが取れるので、圧電ジャイロ10は静止しているときにノイズを出力することがない。
【0024】
なおチューニング時において、レーザ光がバランス調整部48(圧電振動片40)を透過して、圧電振動片40の下方に照射される場合がある。しかしバランス調整部48と積層方向に重なるように中間基板30を配設しているので、透過レーザ光は中間基板30に当たり、パッケージベース14に当たることはない。このためパッケージベース14が損傷して微粒子が発生することはない。また中間基板30は、樹脂等で形成されているのでレーザ光が当たってもこれを吸収し、樹脂の微粒子(樹脂粒子)を発生することはない。このようなチューニングが終了すると、圧電ジャイロ10が完成する。
【0025】
なお蓋体24の製造方法は次のようになっている。まず蓋体24の形状に倣う金型を用意しておく。そして蓋体24をガラスで形成する場合は、この金型内にガラスを入れて、金型に配設された加熱装置でガラスを加熱する。ガラスを軟化点程度まで加熱したら、ガラスに圧力を加えて成形する。この後加熱を止めて、ガラスを金型から取り出せばレンズ26付きの蓋体24が得られる。
【0026】
このような圧電ジャイロ10は透明な蓋体24を用いているので、圧電振動片40をパッケージベース14に搭載し、このパッケージベース14の上面に蓋体24を接合した後に、圧電振動片40のチューニングを行える。したがって圧電振動片40のチューニングがずれることはなく、高精度な圧電ジャイロ10が得られる。
【0027】
また圧電振動片40とパッケージベース14の底面との間に中間基板30を配設しているので、レーザ光がバランス調整部48(圧電振動片40)を透過したときでも中間基板30で吸収でき、パッケージベース14が損傷するのを防止できる。したがって微粒子や樹脂粒子が圧電振動片40に付くことがなく、また気密封止されている凹陥部18の真空度が悪化することがないので、圧電振動片40の特性が悪化することがなく、高精度な圧電ジャイロ10が得られる。
【0028】
また蓋体24に設けられたレンズ26が凸レンズであれば、レーザ光をバランス調整部48に集光できるので、圧電振動片40以外の部分にレーザ光が当たるのを防止できる。また蓋体24に設けられたレンズ26が凹レンズであれば、レーザ光をバランス調整部48に均等に照射できるので、バランス調整部48を削る時間を短縮できる。
【0029】
なお前述した第1の実施形態は、圧電振動片40を透過したレーザ光からパッケージベース14を保護するために中間基板30を設けた構成である。しかしバランス調整部48に照射されたレーザ光は、バランス調整部48等で反射する可能性もある。このため反射したレーザ光からパッケージベース14を保護するために、凹陥部18の側面にレーザ光保護部を設けることができる。図3はレーザ光保護部を設けた圧電ジャイロの断面図である。すなわち、この圧電ジャイロ10は、中間基板30およびレーザ光保護部56を凹陥部18に備えている。このレーザ光保護部56は、例えば樹脂であればよく、この樹脂を凹陥部18の側面(前記側壁の内側面)に塗布した後、加熱して溶剤を気化することにより形成すればよい。これによりレーザ光がバランス調整部48等で反射したとしても、この反射レーザ光をレーザ光保護部56で吸収でき、パッケージベース14が損傷するのを防止できる。
【0030】
なおレーザ光保護部56は樹脂等で形成されているので、レーザ光が当たったとしても破損して樹脂粒子を発生させることはない。したがって微粒子や樹脂粒子が圧電振動片40に付くことがなく、また気密封止されている凹陥部18の真空度が悪化することがないので、圧電振動片40の特性が悪化することがなく、高精度な圧電ジャイロ10を得ることができる。そして、このようなレーザ光保護部56を、凹陥部18の底面(パッケージベース14の底面)に設けてもよい。すなわちレーザ光保護部56を、凹陥部18の側面および底面のうち少なくともいずれか一方に設けてもよい。
【0031】
次に、第2の実施形態について説明する。図4は第2の実施形態に係る圧電ジャイロの断面図である。第2の実施形態に係る圧電ジャイロ60は、中間基板30や圧電振動片40とともに集積回路(IC)チップ62をパッケージベース14の凹陥部18に搭載した構成である。具体的には、パッケージベース14は、側面に階段部64が設けられた凹陥部18を有している。この階段部64の上面にマウント電極20を設けるとともに、凹陥部18の底面にボンディング電極66を設けている。このボンディング電極66は複数有り、そのうちの一部がマウント電極20と導通し、他が外部端子16と導通している。このようなパッケージベース14は、その底面にICチップ62を搭載している。そしてICチップ62とマウント電極20が導通している。このICチップ62は、圧電振動片40に電気信号を供給するとともに、圧電振動片40から出力された信号を入力するものである。なお中間基板30や圧電振動片40、蓋体24は第1の実施形態と同構成である。
【0032】
このように形成すると、ICチップ62の上方に中間基板30が配置される。これにより圧電振動片40のチューニング時において、レーザ光がバランス調整部48(圧電振動片40)を透過しても中間基板30で吸収でき、ICチップ62やボンディング電極66、これらの導通部分(ワイヤ)、パッケージベース14がレーザ光によって破損するのを防止できる。なお第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、凹陥部18にレーザ光保護部を設けてもよい。この場合、ボンディング電極66をレーザ光保護部で覆わないようにしておけばよい。
【0033】
また第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、パッケージベース14と蓋体24の間にある接合材28をハロゲンランプで加熱・溶融して、パッケージベース14と蓋体24を接合できる。しかしこの場合には、圧電ジャイロ60の全体が加熱されるので、ICチップ62が高温になって壊れてしまうおそれがある。このため蓋体24の下面に赤外線反射膜68を設けることで、ICチップ62が壊れるのを防止できる。
【0034】
すなわち赤外線反射膜68は、ハロゲンランプから照射される赤外線を反射することで、ICチップ62に赤外線が照射されるのを防止し又はICチップ62に照射される赤外線の量を削減して、ICチップ62が高温になるのを防止するものである。そして赤外線反射膜68は、高屈折率の物質や低屈折率の物質、高屈折率と低屈折率の間にある中間屈折率の物質の中から任意の物質を適宜選択し、この物質を所定の膜厚で積層して形成されればよい。なお屈折率の高低は、可視光域の光学薄膜材料を対象に考えると次のような目安となる。すなわち屈折率は、1.9以上が高屈折率であり、1.6以下が低屈折率であり、1.6より大きく1.9未満が中間屈折率であると便宜的に分けることができる。
【0035】
この赤外線反射膜68の一例としては、次の構成であればよい。なお以下に示すλcは中心波長を示し、蓋体24の屈折率や赤外線反射膜68で反射させる光の波長に応じて中心波長を適宜設定すればよい。まず蓋体24の下面に、低屈折率物質を光学的膜厚λc/8設ける。次に、この低屈折率物質上に高屈折率物質を光学的膜厚λc/4設ける。次に、この高屈折率物質上に低屈折率物質を光学的膜厚λc/8設ける。そしてこの3層をP回繰り返す。なお低屈折率物質の光学的膜厚λc/4をLで表すととともに、高屈折率物質の光学的膜厚λc/4をHで表すと、赤外線反射膜68は(L/2HL/2)/蓋体という構成になる。これにより赤外線反射膜68は、可視光域を透過して、赤外域を反射・阻止する長波長カットフィルタとなる。なお、この3層積層系で得られる赤外線反射域が狭い場合、すなわち反射させる波長領域を広げたい場合は、前述した3層積層系の光学的膜厚よりも厚くした第2の3層積層系を追加すればよい。なお赤外線反射膜68の構成は、これに限定されることはない。
【0036】
これにより赤外線反射膜68は、ICチップ62に赤外線が当たるのを防止でき、またはICチップ62に当たる赤外線の量を削減できるので、ICチップ62が高温になって壊れるのを防止できる。また赤外線反射膜68で反射された赤外線は再び蓋体24を通過するので、この反射された赤外線によっても蓋体24を加熱できる。したがって、赤外線を効率的に使用できる。なおレンズ26の表面には、赤外線反射膜68を設けない構成であってもよい。また圧電振動片40のチューニングを行うレーザ光には、可視光域の波長を用いればよい。
【0037】
また蓋体24の上面では赤外線が反射する。すなわち蓋体24の屈折率が、例えば1.5であれば1面あたり4%の光を反射する。そして赤外線を効率的に使用するためには、この蓋体24の上面での反射を防止すればよく、このためには赤外線反射防止膜69を蓋体24の上面に設ければよい。この赤外線反射防止膜69は、高屈折率物質、低屈折率物質および中間屈折率物質の中から任意の物質を適宜選択し、この物質を所定の膜厚で積層して形成されればよい。また蓋体24よりも屈折率の低い低屈折率物質を蓋体24の上面に単層設けて赤外線反射膜68としてもよい。なお膜厚は、ハロゲンランプから照射される赤外線を反射するように適宜設定されればよい。これにより赤外線反射防止膜69は、蓋体24の上面で生じる反射を防止できる。そして蓋体24は、照射される赤外線を効率に使用できる。
【0038】
次に、第3の実施形態について説明する。図5は第3の実施形態に係る圧電ジャイロの断面図である。第3の実施形態に係る圧電ジャイロ70は、圧電振動片40をパッケージベース14の凹陥部18に搭載するとともに、レーザ光保護部56を凹陥部18に設けた構成である。具体的には、パッケージベース14は、凹陥部18の底面に圧電振動片40の搭載部72を備えている。この搭載部72の上面にマウント電極20が設けてあり、このマウント電極20は外部端子16と導通している。そして搭載部72の上面に圧電振動片40が接合している。なお、このとき導電性接着剤38を介して、圧電振動片40の前記接続電極とマウント電極20が接合している。
【0039】
また凹陥部18の底面にレーザ光保護部56を設けている。レーザ光保護部56は、圧電振動片40に設けられたバランス調整部48と積層方向に重なる位置に少なくとも設けられていればよい。すなわちレーザ光保護部56とバランス調整部48が平面視して重なっていればよい。このためレーザ光保護部56は、バランス調整部48の下方のみに設けた構成であってもよく、図6(A)に示すように凹陥部18の底面全体に設けた構成であってもよい。また図6(B)に一例を示すように、レーザ光保護部56は、前述したいずれかの構成とともに凹陥部18の側面に設けてもよい。さらに図6(C)に一例を示すように、レーザ光保護部56は、凹陥部18の底面および側面とともに、搭載部72の側面に設けてもよい。そしてレーザ光保護部56は、例えば樹脂等であればよい。この場合、レーザ光保護部56は、凹陥部18に樹脂を塗布した後、加熱して溶剤を気化することにより形成されればよい。
【0040】
なおチューニング時において、レーザ光がバランス調整部48(圧電振動片40)を透過して、圧電振動片40の下方に照射される場合がある。しかしバランス調整部48と積層方向に重なるようにレーザ光保護部56を配設しているので、透過レーザ光はレーザ光保護部56に当たり、パッケージベース14に当たることはない。このためパッケージベース14が損傷して微粒子が発生することがない。またレーザ光保護部56は、樹脂等で形成されているのでレーザ光が当たってもこれを吸収し、樹脂粒子を発生することはない。そして圧電振動片40や蓋体24は第1の実施形態と同構成である。
【0041】
このような圧電ジャイロ70であっても、透明な蓋体24を用いているので、パッケージベース14に搭載した圧電振動片40を蓋体24で気密封止した後に、圧電振動片40のチューニングを行える。したがって圧電振動片40のチューニングがずれることはなく、高精度な圧電ジャイロ70が得られる。
【0042】
またレーザ光保護部56を凹陥部18に設けているので、バランス調整用のレーザ光によってパッケージベース14が損傷するのを防止できる。またレーザ光がバランス調整部48で反射したとしても、この反射レーザ光をレーザ光保護部56で吸収でき、パッケージベース14が損傷するのを防止できる。したがって微粒子や樹脂粒子が圧電振動片40に付くことはなく、また気密封止されている凹陥部18の真空度が悪化することがないので、圧電振動片40の特性が悪化することがない。よって高精度な圧電ジャイロ70が得られる。
【0043】
なお前述した第1ないし第3の実施形態では、蓋体24にレンズ26を設けた構成について説明したが、本発明はこれに限定されることはない。すなわち蓋体は、レンズ26を備えていない平板であってもよい。この場合、蓋体には、ガラスや水晶、サファイア等を用いることができる。
【0044】
また前述した第1ないし第3の実施形態では、特にジャイロ用の圧電振動片40を用いた圧電ジャイロ10,60,70を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることはない。すなわち圧電振動片として音叉型圧電振動片等を用いることができ、このような圧電振動片を搭載した圧電デバイス(圧電振動子や圧電発振器等)についても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態に係る圧電ジャイロの断面図である。
【図2】圧電振動片および中間基板の説明図である。
【図3】レーザ光保護部を設けた圧電ジャイロの断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る圧電ジャイロの断面図である。
【図5】第3の実施形態に係る圧電ジャイロの断面図である。
【図6】変形例に係る圧電ジャイロの断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10,60,70………圧電ジャイロ、12………パッケージ、14………パッケージベース、18………凹陥部、24………蓋体、30………中間基板、32………絶縁基板、36………リード、40………圧電振動片、48………バランス調整部、56………レーザ光保護部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランス調整部を備えた圧電振動片と、
前記バランス調整部と積層方向に重なる位置に少なくとも設けた絶縁基板と、
前記圧電振動片と前記絶縁基板とに接合し、前記圧電振動片を前記絶縁基板から離して保持するリードと、
凹陥部を有し、この凹陥部の底面に前記絶縁基板および前記リードを配設したパッケージと、
を備えたことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記凹陥部の底面にレーザ光保護部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
バランス調整部を備えた圧電振動片と、
凹陥部を有し、この凹陥部に前記圧電振動片を配設したパッケージと、
前記バランス調整部と積層方向に少なくとも重なる位置における前記凹陥部の底面に設けたレーザ光保護部と、
を備えたことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
前記凹陥部の側面にレーザ光保護部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記圧電振動片は、ジャイロセンサ用の圧電振動片であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記パッケージは、前記凹陥部を有するパッケージベースと、このパッケージベースの上面に接合して前記凹陥部を封止した透明な蓋体とを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−278920(P2007−278920A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107335(P2006−107335)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】