説明

圧電振動デバイス

【課題】 省スペース化を実現し良好な特性を有する超小型の圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 水晶発振器1は、パッケージ2の一主面側に水晶振動素子4が搭載され、蓋3によって水晶振動素子4が封止され、パッケージ2の他主面側にはICチップ5を収容する凹部23が形成された構造となっている。ICチップ5は、凹部23の内底面230に、ICチップ5の一主面の全領域または一部の領域が樹脂材7を介して接合されており、ICチップ5の他主面は能動面となっている。そして前記他主面の外部接続用電極パッド51に形成された導電性部材6は水晶発振器1の外部接続端子となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器等に用いられる表面実装型の水晶発振器等の圧電振動デバイスに関する。特に、本発明は圧電振動デバイスの小型化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種情報機器や各種移動体通信機器において薄型および小型化が急速に進んでいる。このため、これらに用いられる水晶発振器などの圧電振動デバイスにも更なる小型化が要求されている。
【0003】
小型化に対応した水晶発振器の例としては、例えば特許文献1に示す構成の水晶発振器がある。また、別の構成の従来例を図6に示す。図6において水晶発振器1は、セラミックからなる容器(パッケージ2)の上面に水晶振動素子4を収容する凹部21と、パッケージ2の下面に発振回路用IC5を収容する凹部23が設けられている。凹部23の周縁は、IC5の厚み(高さ)よりも厚く(高く)形成された堤部24となっており、堤部24の下面には外部接続端子51が形成されている。IC5は能動面が凹部23の内底面230に対向するようにしてパッケージ2と金属バンプBを介して接合されており、IC5の能動面の外部接続端子用の端子(図示省略)は内部接続導体Mを経由して外部接続端子51と電気的に接続されている。また、IC5の能動面の圧電振動素子との接続端子(図示省略)も同様に内部接続導体Mを経由して水晶振動素子4と電気的に接続されている。ここで内部接続導体Mを堤部24の内部に形成するためには堤部24の幅をある程度確保しておく必要がある。しかしながら圧電振動デバイスが超小型化(例えば平面視矩形状の水晶発振器の外形寸法が2.0mm×1.6mm以下)になってくると、前記堤部の幅を確保することが困難になってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−146966号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、省スペース化を実現し良好な特性を有する超小型の圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、圧電振動デバイスのパッケージの一主面側に圧電振動素子が配され、蓋によって前記圧電振動素子が封止されるとともに、前記パッケージの他主面側に電子部品素子を収容する凹部が形成され、当該凹部の内底面に前記電子部品素子の一主面の全領域または一部の領域が樹脂材を介して接合された圧電振動デバイスであって、前記電子部品素子の他主面が能動面であり、前記他主面の接続端子に形成された導電性部材を前記圧電振動デバイスの外部接続端子としている。
【0007】
上記構成によれば圧電振動デバイスの小型化を図ることができる。これを水晶発振器を例に挙げて従来構造と対比して説明する。従来構造の水晶発振器は、水晶発振器のパッケージに形成された凹部に電子部品素子(ICチップ等)の一主面上に形成された電極パッドが金ワイヤ等によって、パッケージの前記凹部を包囲する環状の堤部分(以下、堤部と記載)に形成された内部接続導体を経由してパッケージ下面の外部接続端子へ導出されている構造であった。
【0008】
これに対して本発明の構造であれば、電子部品素子の能動面(回路パターンや配線が形成された一主面)側の接続端子に形成された導電性部材を圧電振動デバイスの外部接続端子として使用する。したがってパッケージ側に外部接続端子を形成する必要が無くなる。つまり前記堤部への外部接続端子の形成が不要となるため、前記堤部への内部接続導体の形成も不要となる。これにより前記堤部の幅を従来よりも狭くできるため圧電振動デバイスの小型化を図ることができる。なお前記電子部品素子は例えば圧電振動素子とともに圧電発振回路を構成するICチップであったり、あるいは当該圧電発振回路に付加して、温度補償回路あるいは電圧制御回路等の付加回路を構成してもよい。
【0009】
本発明において前記導電性部材として、導電性材料からなる球状体(例えば半田ボール)や角柱状の導体(導体ブロック)や、スタッドバンプ、メッキバンプ、導電性接着材の硬化物等が用いられる。これら以外にも、セラミックや樹脂等で構成されるコア部材の表面を導電性材料で被覆したものを用いてもよい。この場合、導電性材料として金属メッキやペースト状導体等が採用可能である。
【0010】
また上記構成によれば、電子部品素子は前記凹部の内底面に電子部品素子の一主面の全領域または一部の領域が樹脂材を介して接合されている。これにより前記樹脂材は外部応力の緩衝材として機能する。具体的には、電子部品素子は樹脂材を介してパッケージに接合されるため、圧電振動デバイスの外部接続端子が外部基板(ユーザー使用基板)に接合された際に生じる応力のパッケージへの伝播を緩和することができる。パッケージを介した圧電振動素子への応力伝播を緩和することができるため、安定した特性の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0011】
さらに上記目的を達成するために、前記凹部に絶縁性樹脂が充填されていてもよい。上記構成によれば、凹部内に収容された電子部品素子を安定して保持することができる。具体的には前述の堤部の側壁によって絶縁性樹脂を保持することができるため、当該絶縁性樹脂と接する電子部品素子を安定して保持することができる。前記絶縁性樹脂は必ずしも前記凹部の空間全体に充填する必要はなく、例えばICの側面の一部に接する程度の深さで充填してもよい。なお、前記凹部に電子部品素子全体と導電性部材の一部とが被覆されるように絶縁性樹脂が充填されていれば、電子部品素子はより確実に保持されるとともに、導電性部材の一部分は絶縁性樹脂によって保持されるので好適である。また、電子部品素子としてICを用いた場合、ICの電極パッドとパッケージに形成された電極パッドとを金ワイヤ等によって接続する方法があるが、金属ワイヤ等の保護の点から、金属ワイヤ等を被覆する深さまで絶縁性樹脂を充填するのが望ましい。具体的にはパッケージ下面から前記凹部の内底面の方向に僅かに窪む程度の充填が好ましい。
【0012】
さらに上記目的を達成するために、前記凹部は前記電子部品素子の厚みよりも深く形成されているとともに、前記導電性部材の一部が、前記圧電振動デバイスの下面よりも下側に突出してもよい。上記構造であれば、電子部品素子が凹部の内底面に接合された状態において、電子部品素子は凹部から外側(パッケージ下面から外側)に突出することが無く、かつ前記導電性部材の一部だけが前記凹部から外側に突出した状態にすることができる。これにより、導電性部材によって圧電振動デバイスと外部基板(ユーザー使用基板)との接続強度を十分に確保できるとともに、導電性部材の一部分だけがパッケージから突出した状態であるため、平坦なパッケージ下面に導電性部材を接合した構造の圧電振動デバイスよりも低背化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、省スペース化を実現し良好な特性を有する超小型の圧電振動デバイスを提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水晶発振器の断面図である。
【図2】図1の底面から見た平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る水晶発振器の断面図である。
【図4】図3の底面から見た平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の変形例に係る水晶発振器の断面図である。
【図6】従来の水晶発振器の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の第1乃至2の実施形態において、表面実装型の水晶発振器に本発明を適用した例について説明する。なお本発明の第1乃至2の実施形態において電子部品素子としてICチップが用いられている。
【0016】
−第1の実施形態−
図1は本発明の第1の実施形態に係る水晶発振器の断面図であり、図2は図1において水晶発振器の底面側から見た平面図となっている。なお図2においては説明のため絶縁性樹脂で覆われたICチップの位置を破線で示している。
【0017】
本発明の実施形態において水晶発振器1は、パッケージ2の上面(一主面)200に接合された水晶振動素子4と、外部基板(ユーザー使用基板)と正対する主面(他主面。後述するパッケージ下面220と同じ)に電子部品素子を収容する凹部23を備えたパッケージ2と、パッケージ2の凹部23に収容されるICチップ5と、ICチップ5の能動面50に形成された導電性部材6と、水晶振動素子4を覆い気密に封止する蓋3とが、主要構成部材となっている。
【0018】
図2においてパッケージ2は、平面視矩形状でアルミナ等のセラミックスからなる絶縁性の容器である。本実施形態ではパッケージ2はアルミナの焼成によって成形されており、パッケージ2の前記他主面(パッケージ2の下面220)側に凹部23を有する構造となっている。パッケージ2の上面200の縁部には全周囲に亘ってタングステン、ニッケル等からなる金属層(図示省略)がメタライズ技術、メッキ技術を用いて形成されている。なお、この金属層に代えてコバール材等の金属リングを用いてもよい。パッケージ2の上面200の一端側には、水晶振動素子4を電気的かつ機械的に接合するための圧電振動素子用電極パッド10,10が一対で並列形成されている。前記圧電振動素子用電極パッド10は、周知のセラミック積層技術を用いて形成された内部接続導体Mを経由して、凹部23の内底面230に形成される電極(図示省略)と電気的に接続されている。
【0019】
図1において水晶振動素子4は、ATカット水晶振動板の表裏面に水晶振動板を駆動させるための一対の励振電極(図示省略)が形成されたものであり、それぞれ圧電振動素子用電極パッド10,10に導電性接着材9によって接続されるよう水晶振動板の一端部に導出されている。そして図1に示すように水晶振動素子4の一端側が圧電振動素子用電極パッド10上に導電性接着材9を介して片持ち支持されている。
【0020】
水晶振動素子4は、接合材8を介して金属からなる蓋3によって気密に接合される(図2参照)。蓋3は周縁に環状の厚肉部30を有する金属製の蓋であり、厚肉部30の上面全体には、前述のパッケージ2の上面200の周縁に形成された金属層に対応してニッケル等からなる金属層が形成されている。なお、蓋3は金属板以外にセラミック板等でもよい。パッケージ2と蓋3は、不活性ガス雰囲気中あるいは減圧雰囲気中で前記パッケージ2の蒸着面200の周縁の金属層と、蓋3の厚肉部30の金属層とを溶融させることにより気密に接合される。接合方法は蓋3が金属板の場合、周知のシーム溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接等を用いることができる。また、蓋3がセラミック板の場合にはガラス封止や樹脂封止または金属ロウ材封止による接合方法が採用される。
【0021】
一方、図1に示すようにパッケージ2の凹部23にはICチップ5が収容されている。ICチップ5の一主面501は樹脂材7によって凹部23の内底面230に接合されている。ここで樹脂材7として例えばエポキシ系樹脂やシリコン系樹脂ウレタン系樹脂等が使用可能である。またICチップ5の他主面502には回路素子(図示省略)が形成されており他主面502はICチップ5の能動面50となっている。ICチップ5の他主面502には、外部接続端子用の電極パッド51(以下、外部接続用電極パッドと記載)と圧電振動素子との接続用端子(図示省略。以下、水晶振動素子接続用端子と記載)が形成されている。前記水晶振動素子接続用端子はICチップ5を厚み方向に貫く貫通電極52と電気的に接続されている。貫通電極52の凹部23の内底面230側の端部(以下、上端と略)は、前記内底面230に形成された電極パッド(図示省略)と接続されており、内部接続導体Mを経由して圧電振動素子用電極パッド10と電気的につながっている。
【0022】
図2においてICチップ5は、能動面50が凹部23の開口部22に向くようにして、凹部23の内底面230に絶縁性の樹脂材7によって接合されている。具体的には、凹部23の内底面230に形成された前述の図示しない電極パッドと、貫通電極52の上端との微小な接合領域だけは導通確保のために導電性の樹脂材(図示省略)によって接合されているが、それ以外のICチップ5の他主面502の領域は絶縁性の樹脂材7で接合されている。つまりICチップ5の他主面502の一部の領域(他主面502の大部分の領域のことを指す)は絶縁性の樹脂材7で前記他主面502と接合されている。これにより前記樹脂材7は外部応力の緩衝材として機能する。具体的には、ICチップ5は樹脂材7を介してパッケージ2に接合されるため、水晶発振器1の外部接続端子(導電性部材6)が外部基板(ユーザー使用基板)に接合された際に生じる応力のパッケージ2への伝播を緩和することができる。パッケージを介した圧電振動素子への応力伝播を緩和することができるため、安定した特性の水晶発振器を得ることができる。
【0023】
外部接続用電極パッド51には導電性部材6が導電接合されており、この導電性部材6が水晶発振器1の外部接続端子となっている。前記外部接続端子の具体的構成としてBGA(Ball Grid Alley)技術による導電性部材を使用している。本実施形態では半田材料によって構成される半田ボールを使用しているが、半田ボールに代えてその他の導体ボール(導電性を有する材料より成る球状体)を採用することも可能である(例えば金ボール)。この種の導電性部材は外部接続端子の形成スペースが比較的狭い場合であってもパッケージに対する接続強度を十分に確保できる。
【0024】
導電性部材6はその一部が、凹部23から外側、つまりパッケージ2の下面220よりも下側に突出している。上記構造であれば、ICチップ5が凹部23の内底面230に接合された状態において、ICチップ5は凹部23から外側(パッケージ2の下面220から外側)に突出することが無く、かつ導電性部材6の一部だけが凹部23から外側に突出した状態にすることができる。これにより、導電性部材6によって水晶発振器1と外部基板(ユーザー使用基板)との接続強度を十分に確保できるとともに、導電性部材6の一部分だけがパッケージ2から突出した状態であるため、平坦なパッケージ下面に導電性部材を接合した構造の水晶発振器よりも低背化を図ることができる。
【0025】
また、前述の凹部23には絶縁性の樹脂Rが充填されている。本実施形態では絶縁性樹脂Rとしてエポキシ系樹脂を使用しているが、エポキシ系樹脂以外にシリコン系樹脂やウレタン系樹脂も使用可能である。なお、前述の樹脂材7と絶縁性樹脂R(貫通電極52の上端の微小な接合領域を含む)に同種の樹脂を用いることにより、樹脂の熱膨張係数差が無くなるため好適である。
【0026】
絶縁性樹脂RはICチップ5全体を覆うように凹部23内に充填されており、導電性部材6の一部も絶縁性樹脂Rによって覆われている。絶縁性樹脂Rの充填深さはパッケージ2の下面220から外側に突出しない深さとなっている。上記構成によれば、凹部23に収容されたICチップ5を安定して保持することができる。具体的には堤部24の側壁によって絶縁性樹脂Rを保持することができるため、絶縁性樹脂Rと接するICチップ5を安定して保持することができる。絶縁性樹脂Rは必ずしも凹部23の空間全体に充填する必要はなく、例えばICチップ5の側面の一部に接する程度の深さで充填してもよい。なお、凹部23にICチップ5の全体と導電性部材6の一部とが被覆されるように絶縁性樹脂Rが充填されていれば、ICチップ5はより確実に保持されるとともに、導電性部材6の一部分は絶縁性樹脂Rによって保持されるので好適である。具体的には図1に示すようにパッケージ2の下面220から凹部23の内底面230の方向に僅かに窪む程度の充填が好ましい。
【0027】
上記構成によれば、ICチップ5は凹部23の内底面230にICチップ5の一主面501の一部の領域が樹脂材7を介して接合され、ICチップ5の他主面502が能動面50となっており、他主面502に形成された外部接続用電極パッド51に導電性部材6が導電接合されて水晶発振器1の外部接続端子として機能している。このような構成によって、圧電振動デバイスの小型化を図ることができる。これを水晶発振器を例に挙げると、従来構造の水晶発振器は水晶発振器のパッケージに形成された凹部に電子部品素子(ICチップ等)の一主面上に形成された電極パッドが金ワイヤ等によって、パッケージの前記凹部を包囲する環状の堤部分に形成された内部接続導体を経由してパッケージ下面の外部接続端子へ導出されている構造であった。これに対して本発明の構造であれば、電子部品素子の能動面側の接続端子に形成された導電性部材を圧電振動デバイスの外部接続端子として使用している。したがってパッケージ側に外部接続端子を形成する必要が無くなる。つまり前記堤部分への外部接続端子の形成が不要となるため、前記堤部分への内部接続導体の形成も不要となる。これにより前記堤部分の幅を従来よりも狭くできるため圧電振動デバイスの小型化を図ることができる。
【0028】
−第2の実施形態−
図3は本発明の第2の実施形態に係る水晶発振器の断面図であり、図4は図3において水晶発振器の底面側から見た平面図となっている。なお図3乃至4においては説明のため絶縁性樹脂で覆われたICチップの位置および金線(後述)を破線で示している。本発明の第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0029】
本発明の第2の実施形態におけるパッケージ2は第1の実施形態の変形例と同様に、絶縁基材を挟んで上下に2つの凹部(上凹部21と下凹部23)を有しているが下凹部23の一端側に段部25が形成されている。段部25の表面には電極パッド26(図4では図示省略)が形成されており、電極パッド26は内部接続導体Mを経由して圧電振動素子用電極パッド10と電気的に接続されている。
【0030】
本実施形態においてICチップ5は第1の実施形態と同様に、能動面50が下凹部23の開口部22に向くようにして、下凹部23の内底面230に樹脂材7によって接合されている。なお、本実施形態では樹脂材7は導電性あるいは絶縁性いずれの樹脂材を使用してもよい。これは本実施形態においてはICチップ5の水晶振動素子4との接続用端子と圧電振動素子用電極パッド10との電気的接続は、金線および内部接続導体を介して行うため、ICチップ5に貫通電極は形成されておらず、ICチップ5の一主面501上にまで水晶振動素子4との接続用端子から端子は導出されていないためである。つまり、樹脂材7がICチップ5の一主面501上の全領域に介在した状態で、ICチップ5が下凹部23の内底面230に接合されている。これにより、樹脂材7は外部応力の緩衝材として機能する。具体的には、ICチップ5は樹脂材7を介してパッケージ2に接合されるため、水晶発振器1の外部接続端子(導電性部材6)が外部基板に接合された際に生じる応力のパッケージ2への伝播を緩和することができる。パッケージを介した圧電振動素子への応力伝播を緩和することができるため、安定した特性の水晶発振器を得ることができる。
【0031】
ICチップ5の能動面50の周縁には、外部接続用電極パッド51と圧電振動素子との接続用端子(図示省略)が形成されている。具体的には図4において、4個の導電性部材6,6,6,6の下方に4つの外部接続用電極パッド51,51,51,51が形成されており、平面視矩形の凹部23の短辺方向に並列した外部接続用電極パッド51,51の間に2つの圧電振動素子との接続用端子が形成されている(図示省略)。前記圧電振動素子との接続用端子は前述の電極パッド26(図示省略)と金線を用いたワイヤボンディング法によって電気的に接続されている(ワイヤは図3乃至5においてWの記号で点線にて表示)。なお金線以外にアルミ線も使用可能である。
【0032】
図3乃至4に示すように下凹部23には絶縁性樹脂Rが充填されている。本実施形態においても絶縁性樹脂Rとしてエポキシ系樹脂が使用される。絶縁性樹脂RはICチップ5全体を被覆するとともに、段部25上の電極パッド26およびワイヤW全体と導電性部材6の一部を被覆するように充填されている。絶縁性樹脂Rの充填深さはパッケージ2の下面220から外側に突出しない深さとなっている。
【0033】
前述の構成によれば、下凹部23に収容されたICチップ5を安定して保持することができ、同時にワイヤW全体も保護することができる。具体的には堤部24の側壁によって絶縁性樹脂Rを保持することができるため、絶縁性樹脂Rと接するICチップ5を安定して保持することができる。絶縁性樹脂Rは必ずしも下凹部23の空間全体に充填する必要はなく、例えばICチップ5の側面の一部に接する程度の深さで充填してもよい。なお、下凹部23にICチップ5の全体と導電性部材6の一部とが被覆されるように絶縁性樹脂Rが充填されていれば、ICチップ5はより確実に保持されるとともに、導電性部材6の一部分は絶縁性樹脂Rによって保持されるので好適である。また、本実施形態のようにICの電極パッドとパッケージに形成された電極パッドとを金ワイヤ等によって接続する方法があるが、金属ワイヤ等の保護の点から、金属ワイヤ等を被覆する深さまで絶縁性樹脂を充填するのが望ましい。
【0034】
導電性部材6はその一部が、下凹部23から外側、つまりパッケージ2の下面220よりも下側に突出している。このような構造であれば、ICチップ5が凹部23の内底面230に接合された状態において、ICチップ5は凹部23から外側(パッケージ2の下面220から外側)に突出することが無く、かつ導電性部材6の一部だけが凹部23から外側に突出した状態にすることができる。これにより、導電性部材6によって水晶発振器1と外部基板との接続強度を十分に確保できるとともに、導電性部材6の一部分だけがパッケージ2から突出した状態であるため、平坦なパッケージ下面に導電性部材を接合した構造の水晶発振器よりも低背化を図ることができる。
【0035】
さらに、本実施形態によればICチップ5は下凹部23の内底面230にICチップ5の一主面501の全領域が樹脂材7を介して接合され、ICチップ5の他主面502が能動面50となっており、他主面502に形成された外部接続用電極パッド51に導電性部材6が導電接合されて水晶発振器1の外部接続端子として機能している。このような構成によって、圧電振動デバイスの小型化を図ることができる。つまり上記構成であれば、電子部品素子の能動面側の接続端子に形成された導電性部材を圧電振動デバイスの外部接続端子として使用している。したがってパッケージ側に外部接続端子を形成する必要が無くなる。つまり前記堤部分への外部接続端子の形成が不要となるため、前記堤部分への内部接続導体の形成も不要となる。これにより前記堤部分の幅を従来よりも狭くできるため圧電振動デバイスの小型化を図ることができる。
【0036】
本発明の第2の実施形態の変形例として図5に示すように、パッケージ2に段部25を形成せず、ICチップ5の水晶振動素子接続用端子と圧電振動素子用電極パッド10との電気的接続を貫通電極52を介して行う構成であってもよい。
【0037】
本発明は電子部品素子を収容する凹部を備えたパッケージの圧電振動デバイスに適用可能であるが、第1乃至2の実施形態の構造の圧電振動デバイスに限定されるものではなく、例えば電子部品素子を収容する凹部を有するパッケージであって、前記凹部が形成されていない側の主面上に、圧電振動子(パッケージ内に圧電振動素子を接合して蓋で気密封止したもの)の筐体を電気機械的に接合した構造のものにも本発明は適用可能である。また、本発明で使用されるパッケージ(容器体)の材料として、第1乃至2の実施形態ではセラミックスが用いられているが、これに限定されるものではなく、セラミックス以外にガラスや水晶、シリコン等の材料を使用することも可能である。
【0038】
本発明は、水晶に限らず、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどを使用した圧電振動素子を備えた圧電振動デバイスへの適用も可能である。
【0039】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 水晶発振器
10 圧電振動素子用電極パッド
2 パッケージ
21 上凹部
23 下凹部
230 内底面(下凹部)
24 堤部
3 蓋
4 水晶振動素子
5 ICチップ
50 能動面
51 外部接続用電極パッド
52 貫通電極
6 導電性部材
7 樹脂材
R 絶縁性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動デバイスのパッケージの一主面側に圧電振動素子が配され、蓋によって前記圧電振動素子が封止されるとともに、
前記パッケージの他主面側に電子部品素子を収容する凹部が形成され、当該凹部の内底面に前記電子部品素子の一主面の全領域または一部の領域が樹脂材を介して接合された圧電振動デバイスであって、
前記電子部品素子の他主面が能動面であり、前記他主面の接続端子に形成された導電性部材を前記圧電振動デバイスの外部接続端子としたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記凹部に絶縁性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記凹部は前記電子部品素子の厚みよりも深く形成されているとともに、前記導電性部材の一部が、前記圧電振動デバイスの下面よりも下側に突出していることを特徴とする請求項1乃至2に記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30910(P2013−30910A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164463(P2011−164463)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】