圧電振動片、圧電振動子、電子デバイス
【課題】実装時の振動部への応力を緩和させた圧電振動片、およびこれを用いた圧電振動子、電子デバイスを提供する。
【解決手段】振動部22を有する薄肉部21と、前記薄肉部21の周縁に設けられた厚肉部17とを備えた圧電振動片10であって、前記厚肉部17には、緩衝部14とマウント部12が順に連結され、前記緩衝部14は、前記マウント部12と前記厚肉部17との間にスリット16を有し、前記マウント部12は、前記マウント部12と前記緩衝部14と前記厚肉部17との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き12aを有していることを特徴とする。
【解決手段】振動部22を有する薄肉部21と、前記薄肉部21の周縁に設けられた厚肉部17とを備えた圧電振動片10であって、前記厚肉部17には、緩衝部14とマウント部12が順に連結され、前記緩衝部14は、前記マウント部12と前記厚肉部17との間にスリット16を有し、前記マウント部12は、前記マウント部12と前記緩衝部14と前記厚肉部17との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き12aを有していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、およびこれを用いた圧電振動子、電子デバイスに関し、特に実装後に発生するマウント位置での応力の振動部への影響を緩和させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動片の実装形態には、導電性接着剤を塗布してパッケージに固着する形態がある。このように導電性接着剤で圧電振動片を支持すると、この導電性接着剤を硬化するリフロー工程で、圧電振動片、パッケージ、導電性接着剤のそれぞれの線膨張係数の違いによる歪みが固着部分に残ってしまい、固着部分からの振動部への応力、すなわちマウント歪みが振動に悪影響を与えてしまうという問題があった。これを避けるために、導電性接着剤を塗布する箇所と振動部の間にスリット(特許文献1乃至6参照)や切欠き(特許文献1、2、3、4、7、8参照)を設けている。また、強度確保等のために、圧電振動片の中央部に窪みを形成して逆メサ型とすることが行われている(特許文献9乃至11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−040715号公報
【特許文献2】実開昭61−187116号公報
【特許文献3】特開2004−165798号公報
【特許文献4】特開2009−158999号公報
【特許文献5】特開2010−109527号公報
【特許文献6】特開2005−136705号公報
【特許文献7】特許第4087186号公報
【特許文献8】特開2010−130123号公報
【特許文献9】特開2000−332571号公報
【特許文献10】特開2009−164824号公報
【特許文献11】特開2002−246869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年このような圧電振動片を用いたデバイスの小型化並びに高性能化が加速した状況においては、前述のごとき上記いずれの構成であっても、マウント歪みを十分に取り除くことは困難である。
そこで本発明は上記問題点に着目し、マウント部から振動領域への応力の伝播を十分に緩和することを可能とした圧電振動片、圧電振動子、電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられた厚肉部とを備えた圧電振動片であって、前記厚肉部には、緩衝部とマウント部が順に連結され、前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、前記マウント部は、前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠きを有していることを特徴とする圧電振動片。
上記構成により、実装時にマウント部において発生した応力が、振動部へ直線的に伝播することをスリットにより防ぐことができる。よってマウント部からの応力はスリットの周囲及び緩衝部に伝播することになる。さらに上記構成により、マウント部の幅は緩衝部の幅より狭くなるので、応力が緩衝部にまで伝播する経路が長くなる。よって応力が振動部に伝播する前に十分に緩和され、振動部への応力の影響を緩和することができる。
【0006】
[適用例2]前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に切欠きを有することを特徴とする適用例1に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片においてスリットの周縁及び緩衝部にまで伝播した応力が振動部へ直線的に伝播することを切欠きにより遮断することができるので、振動部への応力の影響を緩和することができる。
【0007】
[適用例3]前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、前記厚肉部の幅は、前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする適用例1または2に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0008】
[適用例4]水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸とZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶からなることを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、厚みすべり振動を効率的に発振可能な圧電振動片となる。
【0009】
[適用例5]前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至4のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0010】
[適用例6]前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする適用例1乃至5のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、薄肉部と厚肉部との実装面側の境界には厚み方向に段差が形成される。よって、引出電極に塗布される導電性接着剤と振動部との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0011】
[適用例7]前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、厚みすべり振動を振動部に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0012】
[適用例8]適用例1乃至7のいずれか1例に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた圧電振動子となる。
【0013】
[適用例9]請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた電子デバイスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は底面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す図である。
【図2】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は裏面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図である。
【図3】圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示す模式図である。
【図4】圧電振動片の製造工程(外形形成工程)の模式図である。
【図5】圧電振動片の製造工程(電極形成工程)の模式図である。
【図6】第2実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は底面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図1(a)のB−B線断面図である。
【図7】第1実施形態の圧電振動片の変形例であり、図7(a)は平面図、図7(b)は底面図、図7(c)は側面図である。
【図8】第2実施形態の圧電振動片の第1変形例であり、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は側面図である。
【図9】第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例の模式図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は底面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図9(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
【図10】本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す図である。
【図11】本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示し、図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の平面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。
【図12】図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図である。
【図13】本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示し、図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。
【図14】本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す図である。
【図15】本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示し、図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。なお以下の説明に用いられる図において、X軸、Y′軸、Z′軸は互いに直交するものとする。
【0016】
第1実施形態に係る圧電振動片を図1、図2に示す。図1(a)は平面図、図1(b)は底面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す図、図2(a)は正面図、図2(b)は裏面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図である。本実施形態に係る圧電振動片10は、圧電素板として、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶を採用している。
【0017】
そして矩形状のATカット水晶素板を用い、周縁に厚肉部17(補強部)を残したウエットエッチングにより、短辺方向を前記X軸方向、長辺方向を前記Z′軸方向となるように前記厚肉部17よりも厚みの薄い薄肉の薄肉部21(振動部22)を形成した逆メサ型の圧電振動片10である。またウエットエッチングで外形を形成する工程においてスリットも同時に形成している。そして圧電振動片10は、マウント部12、緩衝部14、振動部22から形成され、マウント部12と振動部22が圧電振動片10の長辺方向(Z′軸方向)の両端に配置され、緩衝部14がマウント部12と厚肉部17の間に形成されている。また圧電振動片10は、図1(a)のA−A線を中心線として線対称な形状を有している。そして圧電振動片10はマウント部12側を固定端とし、振動部22側を自由端として片持ち支持状態で、実装先の基板34に導電性接着剤32により固定される。
【0018】
マウント部12は、圧電振動片10のZ′軸の一方向の端部に配置されるとともに、X軸方向の両端には切欠き12aが形成されている。そして実装面となるマウント部の一主面(−Y′軸側の面)には後述の励振電極24、28と電気的に接続する引出電極26、30が配置されている。そして引出電極26、30には実装側の基板34と接着するための導電性接着剤32が塗布される。したがって導電性接着剤32を用いて基板34に接着することにより圧電振動子が形成される。
【0019】
マウント部12がこのような構成を有するので、導電性接着剤32の接着位置が近接する。よって、応力の発生範囲を導電性接着剤32が塗布された領域に集中させて、それ以外への領域へ伝播することを抑制することができる。さらに、マウント部12の幅は緩衝部14の幅より狭くなるので、応力がスリット16の周囲を伝播する経路が長くなる。したがって応力が振動部22に伝播する前に十分に緩和され、振動部22への応力の影響を緩和することができる。なお、緩衝部14には上述の引出電極26、30が形成されている。
【0020】
ところで、導電性接着剤32を用いた圧電振動片10の接着工程では導電性接着剤32を硬化させるために圧電振動片10を高温に曝す必要がある。よって接着後温度が低下するとマウント部12の導電性接着剤32が塗布されている2点の間を結ぶ領域で、圧電振動片10、基板34、導電性接着剤32の熱膨張係数の違いによる熱歪みが発生し、これに起因する応力が圧電振動片10全体に伝播することになる。
【0021】
緩衝部14は、マウント部12と厚肉部17との間に形成され、マウント部12で発生して振動部22側に伝播する応力を緩和させる作用を有している。これを実現するため、緩衝部14にはスリット16が設けられ、緩衝部14と厚肉部17との間に切欠き18が形成されている。なおマウント部12の緩衝部14側と緩衝部14のマウント部12側は一体的に形成されている。
【0022】
スリット16は、圧電振動片10の短辺方向(X軸方向)に沿って長辺を有している。これにより、実装時にマウント部12において発生した応力が、振動部22へ直線的に伝播することをスリット16により防ぐことができる。よってマウント部12からの応力は緩衝部14に形成されたスリット16の周囲を伝播することになる。
【0023】
切欠き18は、緩衝部14のスリット16と振動部22との間の領域に形成され、圧電振動片10の短辺方向(X軸方向)の両側に形成されている。よって緩衝部14の切欠き18に挟まれた領域には括れ部20が形成される。したがって緩衝部14のX軸方向の両端にまで伝播した応力はスリット16の周囲の振動部22側、括れ部20を伝播する。
【0024】
このように、緩衝部14のX軸方向の両端にまで伝播した応力が振動部22へ直線的に伝播することを切欠き18により遮断することができるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。緩衝部14から振動部22への応力の直線的な伝播経路を遮断する趣旨から、緩衝部14において切欠き18により形成される括れ部20のX軸方向の長さは、スリット16のX軸方向の長さ以下となることが望ましい。
【0025】
振動部22は、薄肉部21の一部を構成するとともに、圧電振動片10において厚みすべり振動を発生させる領域である。振動部22の中央の両主面(表裏面)には互いに対向するように励振電極24、28が形成されている。+Y′軸側の面に形成された励振電極28は引出電極30に接続され、−Y′軸側の面に形成された励振電極26は、−Y′軸側から圧電振動片10の端面を通って+Y′軸側に引き出された引出電極30と電気的に接続される。したがって、引出電極26、30に交流電圧を印加することにより振動部22は所定の周波数で厚みすべり振動を行なうことができる。
【0026】
ところで、振動部22に外部から応力が印加されると、振動部22の見かけ上の剛性が変化するため、共振周波数が変動する。そしてマウント部12におけるマウント状態は実装状態に依存して個々に異なるため、振動部22に伝播する応力にもバラつきが生じ、共振周波数にバラつきが生じることになる。しかし上述のように、マウント部12で発生した歪みを緩衝部14において緩和させることにより、周波数変動を抑制し、これを用いた圧電振動子の歩留を高めることができる。
【0027】
また、振動部22は、緩衝部14(即ち切欠き18により形成された括れ部20)より薄肉に形成されている。これにより、振動部22が緩衝部14から受ける応力が小さくなるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。さらに、図1に示すように、振動部22は導電性接着剤32が塗布される面側(−Y′軸側の面側)からハーフエッチングにより掘り込んで形成する。これにより振動部22と緩衝部14との接続位置を圧電振動片10の引出電極26、30が引き出された面(−Y′軸側の面)の反対側の面(+Y′軸側の面)に偏在させた状態で、緩衝部14と段差を形成することになる。これにより引出電極26、30に塗布される導電性接着剤32との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部22に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0028】
次に第1実施形態の圧電振動片の製造工程について説明する。
図3に、圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示し、図4に圧電振動片の製造工程(外形形成工程)を示し、図5に圧電振動片の製造工程(電極形成工程)を示す。大まかな手順としては、圧電振動片10の材料となる水晶基板36において、薄肉部21(振動部22)に相当する位置をハーフエッチングし、圧電振動片10の外形に倣ってエッチングし、励振電極24、28や引出電極26、30の形成を行なう。
【0029】
図3に示すように、最初に圧電振動片10を構成する薄肉部21(振動部22)の外形を形成する。まず図3(a)に示すように、圧電素板としてATカットの水晶基板36を用意し、水晶基板36においてレジスト膜38を塗布する。そして図3(b)に示すように、薄肉部21の形状に対応したフォトマスク40を用いてレジスト膜38を露光し、図3(c)に示すように感光したレジスト膜38aを除去する。そして図3(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が薄肉部21の厚みとなるまでハーフエッチングし、図3(e)に示すようにレジスト膜38を除去する。このとき水晶基板36には薄肉部21に対応する凹部21aが形成される。
【0030】
次に圧電振動片10の外形を形成する。図4(a)に示すように、凹部21aが形成された水晶基板36にレジスト膜42を塗布する。そして図4(b)に示すように圧電振動片10、スリット16、切欠き18の形状に対応したフォトマスク44を用いてレジスト膜42を露光し、図4(c)に示すように感光したレジスト膜42aを除去する。そして図4(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が貫通するまでエッチングし、図4(e)に示すようにレジスト膜42を除去する。これにより圧電振動片10の外形を有する圧電素板10aが形成される。
【0031】
そして圧電素板10aに電極を形成する。まず図5(a)に示すように、スパッタ等により圧電素板10aの全面にCrやAu等による金属膜46を蒸着する。このとき圧電素板10aの端面にも金属膜46が蒸着する。そして図5(b)に示すように金属膜46が蒸着した圧電素板10aの全面にレジスト膜48を塗布する。このとき圧電素板10aの端面にもレジスト膜48が塗布される。次に図5(c)に示すように圧電振動片10の両面の励振電極24、28、引出電極26、30の形状に対応したフォトマスク50を用いレジスト膜を露光する。このとき引出電極30の端面を通過する部分のレジスト膜48は感光しない。次に図5(d)に示すように感光したレジスト膜48aを除去し、図5(e)に示すように励振電極24、28、引出電極26、30に対応する部分以外の金属膜46を露出させエッチングを行なう。このとき、端面に蒸着した金属膜46は感光せずに残ったレジスト膜42により保護されている。よって引出電極30の端面を通過する部分の金属膜46は残り、引出電極30はその反対面にある励振電極28と電気的に接続される。そして図5(f)に示すようにレジスト膜48を除去することにより圧電振動片10が形成される。
【0032】
第2実施形態の圧電振動片を図6に示し、図6(a)は平面図、図6(b)は底面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図1(a)のB−B線断面図である。第2実施形態の圧電振動片60は、基本的には第1実施形態と類似するが、前記マウント部62と緩衝部64と厚肉部70との並ぶ方向に対して直交方向(Z′軸方向)に関し、厚肉部70の幅は、緩衝部64の幅よりも狭く形成された点で相違する(特徴1)。また、振動部(メサ部72)は、薄肉部71より厚肉に形成され、励振電極74、76はメサ部72の両面に形成された点で相違する(特徴2)構造としてよい。そうすることにより、メサ部に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。
【0033】
第2実施形態の圧電振動片60の製造工程は、ハーフエッチングの工程で、厚肉部70を周囲に有する薄肉部71を形成する点と、薄肉部71の中央に薄肉部より厚肉となるメサ部72を形成する点と、で相違するが、それ以外では第1実施形態と共通である。
【0034】
また厚肉部70の薄肉部が形成された部分のX軸方向の幅は、マウント部62のX軸方向の幅と同じであっても良いし、短く/長くなっても良いが、圧電振動片60が図7(a)のA−A線を中心線とした線対称な形状を有することが好ましい。また切欠き66により形成される括れ部68は、厚肉部70まで形成され、括れ部68と厚肉部70のX軸方向の幅が一致している。
【0035】
上述の特徴1を有することにより、圧電振動片60の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。さらに特徴2を有することにより、厚みすべり振動の振動領域を振動部(メサ部72)に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0036】
図7に第1実施形態の変形例、図8に第2実施形態の第1変形例を示す。ここで、図7(a)は平面図、図7(b)は底面図、図7(c)は側面図である。また、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は側面図である。
図7、図8に示すように、厚肉部を緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成する、すなわち薄肉部をX軸方向の両端まで形成することも好適である。これにより、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0037】
図9に、第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例を示し、図9(a)は平面図、図9(b)は底面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図7(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
図9に示すように第2実施形態の第2変形例おいては、メサ部80を薄肉部78の両面に設けることも好適である。このとき薄肉部78は水晶基板の両面からメサ部80の形状を残してハーフエッチングすることにより形成される。このようにメサ部80を両面に形成することにより、厚みすべり振動の閉じ込め効果を高めた圧電振動片61とすることができる。なお、第2実施形態において、励振電極74、76はメサ部80全面に矩形に形成されているが、メサ部80における実際の振動領域に対応して例えば円形状、楕円形状としてもよい。そうすることにより、メサ部に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。
【0038】
図10に本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す。本願発明者は、本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布についてシミュレーションを行った。シミュレーションの対象となる圧電振動片は、メサ部を除いて第2実施形態のものとほぼ同様の形態を有している(図6参照)。そして、図10に示すように、マウント部の実装面上に描かれた2つの円の中心の2点の位置において、2点間で互いに引き合う力若しくは互いに押し合う力を印加したときの、圧電振動片の応力の分布のシミュレーションを行った。なお、図10の左に縦一列に並べてある模様は、圧電振動片に印加された応力の強度(9段階)を示し、上から下に行くにつれて応力が小さくなることを表している。そしてこれらの模様は、圧電振動片上において圧電振動片の応力の強度分布に対応して描かれている。
【0039】
図10に示すように、マウント部全体及び緩衝部のマウント部側に強い応力が発生していることがわかる。そしてマウント部側で発生した応力は、緩衝部のスリットの周囲を伝って厚肉部に伝播するものの括れ部(厚肉部)の手前までである程度緩和されることがわかる。これは、スリットの周囲で伝播する応力がその伝播途中で大きな割合で緩和されるためと考えられる。さらに切欠きにより応力の薄肉部(振動部)への直線的な伝播経路が遮断され、応力の伝播経路が括れ部の中央に向くように曲げられ、この伝播経路の伝播途中でも大きな割合で応力が緩和されたと考えられる。
【0040】
そして厚肉部と薄肉部(振動部)との境界において応力の強度が不連続となって薄肉部(振動部)に対する応力が緩和されており、薄肉部(振動部)の殆どの領域において応力が緩和されている(応力の強度が最小となっている)ことがわかる。このとき、圧電振動片の上述の力が印加された面(実装面)において薄肉部と厚肉部との間には段差が形成されている。よって薄肉部(振動部)に残る応力は、厚肉部の実装面の反対側の面の応力を引き継いだものである。このことから、応力は上述の印加された面(実装面)から圧電振動片の厚み方向にも緩和すると考えられる。
【0041】
以上、実施例で説明したいずれの圧電振動片も、振動部(薄肉部)の短辺方向をX軸方向、長辺方向をZ′軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片としたが、本発明はこれに限らず、振動部の短辺方向をZ′軸方向、長辺方向をX軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片にも適用できることは言うまでもない。
【0042】
図11に本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示す。図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の平面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。圧電振動子100は圧電振動片60を収容する凹部を有するパッケージ(基板)と、凹部104を封止するリッド112により形成される。またパッケージ102の下面には外部電極106が形成され、凹部104の底面には貫通電極108を介して外部電極106と電気的に接続された接続電極110が配置されている。そしてこの接続電極110とマウント部62の引出電極114とが導電性接着剤32により接合される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージ102に接続される。上記構成により、圧電振動片の振動部への応力を緩和させた圧電振動子となる。
【0043】
図12、図13に本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示す。図12は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図を示し。また図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。本実施形態の電子デバイス200は、パッケージ202(基板)、圧電振動片60、61、圧電振動片60、61(図9参照)を駆動させる集積回路(IC210)、リッドにより構成されている。パッケージ202は、図13の破線で示すように3層構造で形成されている。パッケージ202の下面には外部電極214が形成されている。またパッケージ202の凹部204の下段部206には複数の接続電極216が配置されている。またパッケージ202の凹部204の上段部208には、パッド電極220と電気的に接続するとともに、圧電振動片60、61の引出電極114(図13(a)、図6参照)、115(図13(b)、図9参照)と導電性接着剤32を介して接続する接続電極218が形成されている。接続電極216はIC210のパッド電極220に対応して複数配置され、パッド電極220と導電性の接着剤により電気的に接続されるが、その一部は接続電極218や外部電極214に電気的に接続される。本実施形態の電子デバイス200においては、圧電振動片60、61とIC210とが共に凹部204においてリッド212により封止された構造を有している。上記構成により、圧電振動片の振動部への応力を緩和させた電子デバイスとなる。
【0044】
図14に本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す。図14においては、パッケージ302(基板)の両面に凹部304、306を形成し、一方の凹部304に圧電振動片60を搭載するとともにリッド308で封止し、他方の凹部306には集積回路(IC316)を取り付けた構成を有した電子デバイス300となっている。そしてパッケージ302の下端には外部電極310が形成され、また凹部306には外部電極310または凹部304に配置された接続電極320と電気的に接続するとともに、ワイヤー314を介してIC316のパッド電極318と電気的に接続する接続電極312が配置されている。一方凹部304に配置された接続電極320は、圧電振動片60の引出電極114と導電性接着剤32を介して接続される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージに接続される。このように圧電振動片60とIC316とを隔離することによって、圧電振動片60のIC316からの熱の影響を低減することができる。
【0045】
図15に本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示す。図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の平面図である。第2変形例においては、例えば図11に示す圧電振動子100を用いて電子デバイス400を形成している。すなわち、第2実施形態においては、圧電振動子100を駆動する集積回路(IC404)を搭載した基板402上にIC404(パッド電極406)と電気的に接続する電極球412を配置し、この電極球412により圧電振動子100を支持するとともに、電極球412と圧電振動子100の外部電極106とを電気的に接続し、基板402、IC404、電極球412、圧電振動子100を樹脂等のモールド剤416により一体形成している。ここで、基板402の下面には外部電極410が形成され、基板402の上面には外部電極410と貫通電極418を介して電気的に接続する接続電極408が形成されている。そしてIC404に形成されたパッド電極406のうち、一部は電極球412にワイヤー414を介して接続され、残りは接続電極408にワイヤー414を介して接続されている。
【0046】
上記構成とすることにより、既存の圧電振動子100の規格に対応して基板IC、電極球等の配置をして電子デバイス400を形成することができるのでコストを抑制することができる。なお、いずれの実施形態においてもICと各電極との接続はフェイスダウンボンディングでもよい。またいずれの圧電振動子、電子デバイスの実施形態においても、上述のいずれの実施形態の圧電振動片も適用できる。
【符号の説明】
【0047】
10………圧電振動片、10a………圧電素板、12………マウント部、12a………切欠き、14………緩衝部、16………スリット、17………厚肉部、18………切欠き、20………括れ部、21………薄肉部、21a………凹部、22………振動部、24………励振電極、26………引出電極、28………励振電極、30………引出電極、32………導電性接着剤、34………基板、36………水晶基板、38………レジスト膜、38a………レジスト膜、40………フォトマスク、42………レジスト膜、42a………レジスト膜、44………フォトマスク、46………金属膜、48………レジスト膜、48a………レジスト膜、50………フォトマスク、60………圧電振動片、61………圧電振動片、62………マウント部、64………緩衝部、66………切欠き、68………括れ部、70………厚肉部、71………薄肉部、72………メサ部、74………励振電極、76………励振電極、78………薄肉部、80………メサ部、100………圧電振動子、102………パッケージ、104………凹部、106………外部電極、108………貫通電極、110………接続電極、112………リッド、114………引出電極、115………引出電極、200………電子デバイス、202………パッケージ、204………凹部、206………下段部、208………上段部、210………IC、212………リッド、214………外部電極、216………接続電極、218………接続電極、220………パッド電極、300………電子デバイス、302………パッケージ、304………凹部、306………凹部、308………リッド、310………外部電極、312………接続電極、314………ワイヤー、316………IC、318………パッド電極、320………接続電極、400………電子デバイス、402………基板、404………IC、406………パッド電極、408………接続電極、410………外部電極、412………電極球、414………ワイヤー、416………モールド剤、418………貫通電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、およびこれを用いた圧電振動子、電子デバイスに関し、特に実装後に発生するマウント位置での応力の振動部への影響を緩和させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動片の実装形態には、導電性接着剤を塗布してパッケージに固着する形態がある。このように導電性接着剤で圧電振動片を支持すると、この導電性接着剤を硬化するリフロー工程で、圧電振動片、パッケージ、導電性接着剤のそれぞれの線膨張係数の違いによる歪みが固着部分に残ってしまい、固着部分からの振動部への応力、すなわちマウント歪みが振動に悪影響を与えてしまうという問題があった。これを避けるために、導電性接着剤を塗布する箇所と振動部の間にスリット(特許文献1乃至6参照)や切欠き(特許文献1、2、3、4、7、8参照)を設けている。また、強度確保等のために、圧電振動片の中央部に窪みを形成して逆メサ型とすることが行われている(特許文献9乃至11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−040715号公報
【特許文献2】実開昭61−187116号公報
【特許文献3】特開2004−165798号公報
【特許文献4】特開2009−158999号公報
【特許文献5】特開2010−109527号公報
【特許文献6】特開2005−136705号公報
【特許文献7】特許第4087186号公報
【特許文献8】特開2010−130123号公報
【特許文献9】特開2000−332571号公報
【特許文献10】特開2009−164824号公報
【特許文献11】特開2002−246869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年このような圧電振動片を用いたデバイスの小型化並びに高性能化が加速した状況においては、前述のごとき上記いずれの構成であっても、マウント歪みを十分に取り除くことは困難である。
そこで本発明は上記問題点に着目し、マウント部から振動領域への応力の伝播を十分に緩和することを可能とした圧電振動片、圧電振動子、電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられた厚肉部とを備えた圧電振動片であって、前記厚肉部には、緩衝部とマウント部が順に連結され、前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、前記マウント部は、前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠きを有していることを特徴とする圧電振動片。
上記構成により、実装時にマウント部において発生した応力が、振動部へ直線的に伝播することをスリットにより防ぐことができる。よってマウント部からの応力はスリットの周囲及び緩衝部に伝播することになる。さらに上記構成により、マウント部の幅は緩衝部の幅より狭くなるので、応力が緩衝部にまで伝播する経路が長くなる。よって応力が振動部に伝播する前に十分に緩和され、振動部への応力の影響を緩和することができる。
【0006】
[適用例2]前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に切欠きを有することを特徴とする適用例1に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片においてスリットの周縁及び緩衝部にまで伝播した応力が振動部へ直線的に伝播することを切欠きにより遮断することができるので、振動部への応力の影響を緩和することができる。
【0007】
[適用例3]前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、前記厚肉部の幅は、前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする適用例1または2に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0008】
[適用例4]水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸とZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶からなることを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、厚みすべり振動を効率的に発振可能な圧電振動片となる。
【0009】
[適用例5]前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至4のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0010】
[適用例6]前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする適用例1乃至5のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、薄肉部と厚肉部との実装面側の境界には厚み方向に段差が形成される。よって、引出電極に塗布される導電性接着剤と振動部との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0011】
[適用例7]前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする適用例1乃至6のいずれか1例に記載の圧電振動片。
上記構成により、厚みすべり振動を振動部に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0012】
[適用例8]適用例1乃至7のいずれか1例に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた圧電振動子となる。
【0013】
[適用例9]請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
上記構成により、振動部への応力を緩和させた電子デバイスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は底面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す図である。
【図2】第1実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は裏面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図である。
【図3】圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示す模式図である。
【図4】圧電振動片の製造工程(外形形成工程)の模式図である。
【図5】圧電振動片の製造工程(電極形成工程)の模式図である。
【図6】第2実施形態に係る圧電振動片の模式図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は底面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図1(a)のB−B線断面図である。
【図7】第1実施形態の圧電振動片の変形例であり、図7(a)は平面図、図7(b)は底面図、図7(c)は側面図である。
【図8】第2実施形態の圧電振動片の第1変形例であり、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は側面図である。
【図9】第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例の模式図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は底面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図9(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
【図10】本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す図である。
【図11】本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示し、図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の平面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。
【図12】図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図である。
【図13】本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示し、図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。
【図14】本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す図である。
【図15】本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示し、図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。なお以下の説明に用いられる図において、X軸、Y′軸、Z′軸は互いに直交するものとする。
【0016】
第1実施形態に係る圧電振動片を図1、図2に示す。図1(a)は平面図、図1(b)は底面図、図1(c)は水晶基板のカット角を表す図、図2(a)は正面図、図2(b)は裏面図、図2(c)は図1(a)のA−A線断面図である。本実施形態に係る圧電振動片10は、圧電素板として、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸をZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶を採用している。
【0017】
そして矩形状のATカット水晶素板を用い、周縁に厚肉部17(補強部)を残したウエットエッチングにより、短辺方向を前記X軸方向、長辺方向を前記Z′軸方向となるように前記厚肉部17よりも厚みの薄い薄肉の薄肉部21(振動部22)を形成した逆メサ型の圧電振動片10である。またウエットエッチングで外形を形成する工程においてスリットも同時に形成している。そして圧電振動片10は、マウント部12、緩衝部14、振動部22から形成され、マウント部12と振動部22が圧電振動片10の長辺方向(Z′軸方向)の両端に配置され、緩衝部14がマウント部12と厚肉部17の間に形成されている。また圧電振動片10は、図1(a)のA−A線を中心線として線対称な形状を有している。そして圧電振動片10はマウント部12側を固定端とし、振動部22側を自由端として片持ち支持状態で、実装先の基板34に導電性接着剤32により固定される。
【0018】
マウント部12は、圧電振動片10のZ′軸の一方向の端部に配置されるとともに、X軸方向の両端には切欠き12aが形成されている。そして実装面となるマウント部の一主面(−Y′軸側の面)には後述の励振電極24、28と電気的に接続する引出電極26、30が配置されている。そして引出電極26、30には実装側の基板34と接着するための導電性接着剤32が塗布される。したがって導電性接着剤32を用いて基板34に接着することにより圧電振動子が形成される。
【0019】
マウント部12がこのような構成を有するので、導電性接着剤32の接着位置が近接する。よって、応力の発生範囲を導電性接着剤32が塗布された領域に集中させて、それ以外への領域へ伝播することを抑制することができる。さらに、マウント部12の幅は緩衝部14の幅より狭くなるので、応力がスリット16の周囲を伝播する経路が長くなる。したがって応力が振動部22に伝播する前に十分に緩和され、振動部22への応力の影響を緩和することができる。なお、緩衝部14には上述の引出電極26、30が形成されている。
【0020】
ところで、導電性接着剤32を用いた圧電振動片10の接着工程では導電性接着剤32を硬化させるために圧電振動片10を高温に曝す必要がある。よって接着後温度が低下するとマウント部12の導電性接着剤32が塗布されている2点の間を結ぶ領域で、圧電振動片10、基板34、導電性接着剤32の熱膨張係数の違いによる熱歪みが発生し、これに起因する応力が圧電振動片10全体に伝播することになる。
【0021】
緩衝部14は、マウント部12と厚肉部17との間に形成され、マウント部12で発生して振動部22側に伝播する応力を緩和させる作用を有している。これを実現するため、緩衝部14にはスリット16が設けられ、緩衝部14と厚肉部17との間に切欠き18が形成されている。なおマウント部12の緩衝部14側と緩衝部14のマウント部12側は一体的に形成されている。
【0022】
スリット16は、圧電振動片10の短辺方向(X軸方向)に沿って長辺を有している。これにより、実装時にマウント部12において発生した応力が、振動部22へ直線的に伝播することをスリット16により防ぐことができる。よってマウント部12からの応力は緩衝部14に形成されたスリット16の周囲を伝播することになる。
【0023】
切欠き18は、緩衝部14のスリット16と振動部22との間の領域に形成され、圧電振動片10の短辺方向(X軸方向)の両側に形成されている。よって緩衝部14の切欠き18に挟まれた領域には括れ部20が形成される。したがって緩衝部14のX軸方向の両端にまで伝播した応力はスリット16の周囲の振動部22側、括れ部20を伝播する。
【0024】
このように、緩衝部14のX軸方向の両端にまで伝播した応力が振動部22へ直線的に伝播することを切欠き18により遮断することができるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。緩衝部14から振動部22への応力の直線的な伝播経路を遮断する趣旨から、緩衝部14において切欠き18により形成される括れ部20のX軸方向の長さは、スリット16のX軸方向の長さ以下となることが望ましい。
【0025】
振動部22は、薄肉部21の一部を構成するとともに、圧電振動片10において厚みすべり振動を発生させる領域である。振動部22の中央の両主面(表裏面)には互いに対向するように励振電極24、28が形成されている。+Y′軸側の面に形成された励振電極28は引出電極30に接続され、−Y′軸側の面に形成された励振電極26は、−Y′軸側から圧電振動片10の端面を通って+Y′軸側に引き出された引出電極30と電気的に接続される。したがって、引出電極26、30に交流電圧を印加することにより振動部22は所定の周波数で厚みすべり振動を行なうことができる。
【0026】
ところで、振動部22に外部から応力が印加されると、振動部22の見かけ上の剛性が変化するため、共振周波数が変動する。そしてマウント部12におけるマウント状態は実装状態に依存して個々に異なるため、振動部22に伝播する応力にもバラつきが生じ、共振周波数にバラつきが生じることになる。しかし上述のように、マウント部12で発生した歪みを緩衝部14において緩和させることにより、周波数変動を抑制し、これを用いた圧電振動子の歩留を高めることができる。
【0027】
また、振動部22は、緩衝部14(即ち切欠き18により形成された括れ部20)より薄肉に形成されている。これにより、振動部22が緩衝部14から受ける応力が小さくなるので、振動部22への応力の影響を緩和することができる。さらに、図1に示すように、振動部22は導電性接着剤32が塗布される面側(−Y′軸側の面側)からハーフエッチングにより掘り込んで形成する。これにより振動部22と緩衝部14との接続位置を圧電振動片10の引出電極26、30が引き出された面(−Y′軸側の面)の反対側の面(+Y′軸側の面)に偏在させた状態で、緩衝部14と段差を形成することになる。これにより引出電極26、30に塗布される導電性接着剤32との距離が、前述の段差の分だけ遠くなるので、振動部22に到達する応力をより多く緩和させることができる。
【0028】
次に第1実施形態の圧電振動片の製造工程について説明する。
図3に、圧電振動片の製造工程(薄肉部形成工程)を示し、図4に圧電振動片の製造工程(外形形成工程)を示し、図5に圧電振動片の製造工程(電極形成工程)を示す。大まかな手順としては、圧電振動片10の材料となる水晶基板36において、薄肉部21(振動部22)に相当する位置をハーフエッチングし、圧電振動片10の外形に倣ってエッチングし、励振電極24、28や引出電極26、30の形成を行なう。
【0029】
図3に示すように、最初に圧電振動片10を構成する薄肉部21(振動部22)の外形を形成する。まず図3(a)に示すように、圧電素板としてATカットの水晶基板36を用意し、水晶基板36においてレジスト膜38を塗布する。そして図3(b)に示すように、薄肉部21の形状に対応したフォトマスク40を用いてレジスト膜38を露光し、図3(c)に示すように感光したレジスト膜38aを除去する。そして図3(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が薄肉部21の厚みとなるまでハーフエッチングし、図3(e)に示すようにレジスト膜38を除去する。このとき水晶基板36には薄肉部21に対応する凹部21aが形成される。
【0030】
次に圧電振動片10の外形を形成する。図4(a)に示すように、凹部21aが形成された水晶基板36にレジスト膜42を塗布する。そして図4(b)に示すように圧電振動片10、スリット16、切欠き18の形状に対応したフォトマスク44を用いてレジスト膜42を露光し、図4(c)に示すように感光したレジスト膜42aを除去する。そして図4(d)に示すように、水晶基板36が露出した部分が貫通するまでエッチングし、図4(e)に示すようにレジスト膜42を除去する。これにより圧電振動片10の外形を有する圧電素板10aが形成される。
【0031】
そして圧電素板10aに電極を形成する。まず図5(a)に示すように、スパッタ等により圧電素板10aの全面にCrやAu等による金属膜46を蒸着する。このとき圧電素板10aの端面にも金属膜46が蒸着する。そして図5(b)に示すように金属膜46が蒸着した圧電素板10aの全面にレジスト膜48を塗布する。このとき圧電素板10aの端面にもレジスト膜48が塗布される。次に図5(c)に示すように圧電振動片10の両面の励振電極24、28、引出電極26、30の形状に対応したフォトマスク50を用いレジスト膜を露光する。このとき引出電極30の端面を通過する部分のレジスト膜48は感光しない。次に図5(d)に示すように感光したレジスト膜48aを除去し、図5(e)に示すように励振電極24、28、引出電極26、30に対応する部分以外の金属膜46を露出させエッチングを行なう。このとき、端面に蒸着した金属膜46は感光せずに残ったレジスト膜42により保護されている。よって引出電極30の端面を通過する部分の金属膜46は残り、引出電極30はその反対面にある励振電極28と電気的に接続される。そして図5(f)に示すようにレジスト膜48を除去することにより圧電振動片10が形成される。
【0032】
第2実施形態の圧電振動片を図6に示し、図6(a)は平面図、図6(b)は底面図、図6(c)は図6(a)のA−A線断面図、図6(d)は図1(a)のB−B線断面図である。第2実施形態の圧電振動片60は、基本的には第1実施形態と類似するが、前記マウント部62と緩衝部64と厚肉部70との並ぶ方向に対して直交方向(Z′軸方向)に関し、厚肉部70の幅は、緩衝部64の幅よりも狭く形成された点で相違する(特徴1)。また、振動部(メサ部72)は、薄肉部71より厚肉に形成され、励振電極74、76はメサ部72の両面に形成された点で相違する(特徴2)構造としてよい。そうすることにより、メサ部に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。
【0033】
第2実施形態の圧電振動片60の製造工程は、ハーフエッチングの工程で、厚肉部70を周囲に有する薄肉部71を形成する点と、薄肉部71の中央に薄肉部より厚肉となるメサ部72を形成する点と、で相違するが、それ以外では第1実施形態と共通である。
【0034】
また厚肉部70の薄肉部が形成された部分のX軸方向の幅は、マウント部62のX軸方向の幅と同じであっても良いし、短く/長くなっても良いが、圧電振動片60が図7(a)のA−A線を中心線とした線対称な形状を有することが好ましい。また切欠き66により形成される括れ部68は、厚肉部70まで形成され、括れ部68と厚肉部70のX軸方向の幅が一致している。
【0035】
上述の特徴1を有することにより、圧電振動片60の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。さらに特徴2を有することにより、厚みすべり振動の振動領域を振動部(メサ部72)に閉じこめ、励振効率を高めることができる。
【0036】
図7に第1実施形態の変形例、図8に第2実施形態の第1変形例を示す。ここで、図7(a)は平面図、図7(b)は底面図、図7(c)は側面図である。また、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は側面図である。
図7、図8に示すように、厚肉部を緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成する、すなわち薄肉部をX軸方向の両端まで形成することも好適である。これにより、圧電振動片の自由端側を軽量化して実装の安定性を高めることができる。
【0037】
図9に、第2実施形態に係る圧電振動片の第2変形例を示し、図9(a)は平面図、図9(b)は底面図、図9(c)は図9(a)のA−A線断面図、図7(d)は図9(a)のB−B線断面図である。
図9に示すように第2実施形態の第2変形例おいては、メサ部80を薄肉部78の両面に設けることも好適である。このとき薄肉部78は水晶基板の両面からメサ部80の形状を残してハーフエッチングすることにより形成される。このようにメサ部80を両面に形成することにより、厚みすべり振動の閉じ込め効果を高めた圧電振動片61とすることができる。なお、第2実施形態において、励振電極74、76はメサ部80全面に矩形に形成されているが、メサ部80における実際の振動領域に対応して例えば円形状、楕円形状としてもよい。そうすることにより、メサ部に厚みすべり振動である主振動のエネルギーを閉じ込めることができる。
【0038】
図10に本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布を示す。本願発明者は、本実施形態の圧電振動片のマウント部に応力を印加した場合の応力の強度分布についてシミュレーションを行った。シミュレーションの対象となる圧電振動片は、メサ部を除いて第2実施形態のものとほぼ同様の形態を有している(図6参照)。そして、図10に示すように、マウント部の実装面上に描かれた2つの円の中心の2点の位置において、2点間で互いに引き合う力若しくは互いに押し合う力を印加したときの、圧電振動片の応力の分布のシミュレーションを行った。なお、図10の左に縦一列に並べてある模様は、圧電振動片に印加された応力の強度(9段階)を示し、上から下に行くにつれて応力が小さくなることを表している。そしてこれらの模様は、圧電振動片上において圧電振動片の応力の強度分布に対応して描かれている。
【0039】
図10に示すように、マウント部全体及び緩衝部のマウント部側に強い応力が発生していることがわかる。そしてマウント部側で発生した応力は、緩衝部のスリットの周囲を伝って厚肉部に伝播するものの括れ部(厚肉部)の手前までである程度緩和されることがわかる。これは、スリットの周囲で伝播する応力がその伝播途中で大きな割合で緩和されるためと考えられる。さらに切欠きにより応力の薄肉部(振動部)への直線的な伝播経路が遮断され、応力の伝播経路が括れ部の中央に向くように曲げられ、この伝播経路の伝播途中でも大きな割合で応力が緩和されたと考えられる。
【0040】
そして厚肉部と薄肉部(振動部)との境界において応力の強度が不連続となって薄肉部(振動部)に対する応力が緩和されており、薄肉部(振動部)の殆どの領域において応力が緩和されている(応力の強度が最小となっている)ことがわかる。このとき、圧電振動片の上述の力が印加された面(実装面)において薄肉部と厚肉部との間には段差が形成されている。よって薄肉部(振動部)に残る応力は、厚肉部の実装面の反対側の面の応力を引き継いだものである。このことから、応力は上述の印加された面(実装面)から圧電振動片の厚み方向にも緩和すると考えられる。
【0041】
以上、実施例で説明したいずれの圧電振動片も、振動部(薄肉部)の短辺方向をX軸方向、長辺方向をZ′軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片としたが、本発明はこれに限らず、振動部の短辺方向をZ′軸方向、長辺方向をX軸方向となるように構成した逆メサ型の圧電振動片にも適用できることは言うまでもない。
【0042】
図11に本実施形態の圧電振動片を搭載した圧電振動子を示す。図11(a)は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の圧電振動子100の平面図、図11(b)は図11(a)のA−A線断面図である。圧電振動子100は圧電振動片60を収容する凹部を有するパッケージ(基板)と、凹部104を封止するリッド112により形成される。またパッケージ102の下面には外部電極106が形成され、凹部104の底面には貫通電極108を介して外部電極106と電気的に接続された接続電極110が配置されている。そしてこの接続電極110とマウント部62の引出電極114とが導電性接着剤32により接合される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージ102に接続される。上記構成により、圧電振動片の振動部への応力を緩和させた圧電振動子となる。
【0043】
図12、図13に本実施形態の圧電振動片を搭載した電子デバイスを示す。図12は図6に示す圧電振動片60を搭載した場合の電子デバイスの分解斜視図を示し。また図13(a)は図12のA−A線断面図であり、図13(b)は図12において図9に示す圧電振動片61を搭載した場合のA−A線断面図である。本実施形態の電子デバイス200は、パッケージ202(基板)、圧電振動片60、61、圧電振動片60、61(図9参照)を駆動させる集積回路(IC210)、リッドにより構成されている。パッケージ202は、図13の破線で示すように3層構造で形成されている。パッケージ202の下面には外部電極214が形成されている。またパッケージ202の凹部204の下段部206には複数の接続電極216が配置されている。またパッケージ202の凹部204の上段部208には、パッド電極220と電気的に接続するとともに、圧電振動片60、61の引出電極114(図13(a)、図6参照)、115(図13(b)、図9参照)と導電性接着剤32を介して接続する接続電極218が形成されている。接続電極216はIC210のパッド電極220に対応して複数配置され、パッド電極220と導電性の接着剤により電気的に接続されるが、その一部は接続電極218や外部電極214に電気的に接続される。本実施形態の電子デバイス200においては、圧電振動片60、61とIC210とが共に凹部204においてリッド212により封止された構造を有している。上記構成により、圧電振動片の振動部への応力を緩和させた電子デバイスとなる。
【0044】
図14に本実施形態の電子デバイスの第1変形例を示す。図14においては、パッケージ302(基板)の両面に凹部304、306を形成し、一方の凹部304に圧電振動片60を搭載するとともにリッド308で封止し、他方の凹部306には集積回路(IC316)を取り付けた構成を有した電子デバイス300となっている。そしてパッケージ302の下端には外部電極310が形成され、また凹部306には外部電極310または凹部304に配置された接続電極320と電気的に接続するとともに、ワイヤー314を介してIC316のパッド電極318と電気的に接続する接続電極312が配置されている。一方凹部304に配置された接続電極320は、圧電振動片60の引出電極114と導電性接着剤32を介して接続される。よって圧電振動片60はマウント部62を固定端として片持ち支持状態でパッケージに接続される。このように圧電振動片60とIC316とを隔離することによって、圧電振動片60のIC316からの熱の影響を低減することができる。
【0045】
図15に本実施形態の電子デバイスの第2変形例を示す。図15(a)は側面図、図15(b)は電子デバイスを構成する基板の平面図である。第2変形例においては、例えば図11に示す圧電振動子100を用いて電子デバイス400を形成している。すなわち、第2実施形態においては、圧電振動子100を駆動する集積回路(IC404)を搭載した基板402上にIC404(パッド電極406)と電気的に接続する電極球412を配置し、この電極球412により圧電振動子100を支持するとともに、電極球412と圧電振動子100の外部電極106とを電気的に接続し、基板402、IC404、電極球412、圧電振動子100を樹脂等のモールド剤416により一体形成している。ここで、基板402の下面には外部電極410が形成され、基板402の上面には外部電極410と貫通電極418を介して電気的に接続する接続電極408が形成されている。そしてIC404に形成されたパッド電極406のうち、一部は電極球412にワイヤー414を介して接続され、残りは接続電極408にワイヤー414を介して接続されている。
【0046】
上記構成とすることにより、既存の圧電振動子100の規格に対応して基板IC、電極球等の配置をして電子デバイス400を形成することができるのでコストを抑制することができる。なお、いずれの実施形態においてもICと各電極との接続はフェイスダウンボンディングでもよい。またいずれの圧電振動子、電子デバイスの実施形態においても、上述のいずれの実施形態の圧電振動片も適用できる。
【符号の説明】
【0047】
10………圧電振動片、10a………圧電素板、12………マウント部、12a………切欠き、14………緩衝部、16………スリット、17………厚肉部、18………切欠き、20………括れ部、21………薄肉部、21a………凹部、22………振動部、24………励振電極、26………引出電極、28………励振電極、30………引出電極、32………導電性接着剤、34………基板、36………水晶基板、38………レジスト膜、38a………レジスト膜、40………フォトマスク、42………レジスト膜、42a………レジスト膜、44………フォトマスク、46………金属膜、48………レジスト膜、48a………レジスト膜、50………フォトマスク、60………圧電振動片、61………圧電振動片、62………マウント部、64………緩衝部、66………切欠き、68………括れ部、70………厚肉部、71………薄肉部、72………メサ部、74………励振電極、76………励振電極、78………薄肉部、80………メサ部、100………圧電振動子、102………パッケージ、104………凹部、106………外部電極、108………貫通電極、110………接続電極、112………リッド、114………引出電極、115………引出電極、200………電子デバイス、202………パッケージ、204………凹部、206………下段部、208………上段部、210………IC、212………リッド、214………外部電極、216………接続電極、218………接続電極、220………パッド電極、300………電子デバイス、302………パッケージ、304………凹部、306………凹部、308………リッド、310………外部電極、312………接続電極、314………ワイヤー、316………IC、318………パッド電極、320………接続電極、400………電子デバイス、402………基板、404………IC、406………パッド電極、408………接続電極、410………外部電極、412………電極球、414………ワイヤー、416………モールド剤、418………貫通電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられた厚肉部とを備えた圧電振動片であって、
前記厚肉部には、緩衝部とマウント部が順に連結され、
前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、
前記マウント部は、
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠きを有している
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に切欠きを有することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、
前記厚肉部の幅は、
前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸とZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項6】
前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、
前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、
前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項7】
前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項1】
振動部を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられた厚肉部とを備えた圧電振動片であって、
前記厚肉部には、緩衝部とマウント部が順に連結され、
前記緩衝部は、前記マウント部と前記厚肉部との間にスリットを有し、
前記マウント部は、
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠きを有している
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記緩衝部と前記厚肉部との連結部に切欠きを有することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記マウント部と前記緩衝部と前記厚肉部との並ぶ方向に対して直交方向に関し、
前記厚肉部の幅は、
前記緩衝部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ傾けた軸とZ′軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ傾けた軸をY′軸とし、前記X軸と前記Z′軸に平行な面で構成され、前記Y′軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記厚肉部は、前記緩衝部と連結する部分を残して薄肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項6】
前記振動部の両面には前記振動部を振動させる励振電極が形成され、
前記マウント部の実装面には、各励振電極と電気的に接続された一対の引き出し電極が形成され、
前記薄肉部は、前記実装面の反対面側に偏って前記厚肉部に接続されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項7】
前記振動部は、前記薄肉部より厚肉に形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電振動片のマウント部の実装面を基板側に向け、前記マウント部と前記基板とを導電性接着剤で接着することにより前記圧電振動片を実装してなることを特徴とする電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−119856(P2012−119856A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266715(P2010−266715)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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