説明

基板保持トレー

【課題】基板処理装置で、それには設置できない小さい基板に大きい基板と同様の処理を施せ、反りや撓みを防止および静電チャックの消耗を抑制し、精度の良い基板処理を実現できる基板保持トレーを提供することにある。
【解決手段】基板処理装置で処理可能な大きさの基板より小さい基板Wsを、前記基板処理装置で処理する際に保持する基板保持トレー1であって、該基板保持トレー1は、小さい基板Wsを保持するためのザグリ2を基板保持トレー1の上面に具備する皿形状であり、基板保持トレー1の材質はシリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのいずれかであり、基板保持トレー1の大きさは、小さい基板Wsを保持したまま前記基板処理装置に設置できる大きさであり、基板保持トレー1は、前記基板処理装置で処理可能な大きさの基板と同様の処理を、前記基板処理装置で小さい基板Wsに施すことができるものであることを特徴とする基板保持トレー1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径用基板処理装置で小口径の基板を処理するときに、該小口径基板を保持するための基板保持トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンデバイス製造工程における基板の処理は、例えば、エッチング、アッシング、スパッタリング、成膜処理等があり、基板の特性を測定する処理は、例えば、蛍光X線測定等がある。
これらの処理を所定の大きさを有する基板に施すには、それぞれの処理にあった基板処理装置が用いられ、例えば、縦型ボート支持治具に基板を載置するタイプの基板処理装置や静電チャック上に基板を保持するタイプの基板処理装置等がある。
【0003】
図4に縦型ボート支持治具の一例を示す。縦型ボート支持治具3は、支柱31が縦に並び、該支柱31には溝32が設けられている。この溝32に基板を挿入して、シリコン基板等に熱酸化膜を形成するといった成膜処理や、シリコン基板のボロン濃度を測定する蛍光X線測定等の処理を基板に施す。このような縦型ボート支持治具3を使用する装置には、例えば、前記成膜処理を施すための縦型熱処理炉(例えば、特許文献1参照)や、蛍光X線測定をするための装置が挙げられる。
【0004】
特に、縦型熱処理炉内で熱酸化膜を基板表面に形成する場合、被処理基板がその端部だけで水平に支持されているため、基本的に基板自身の重さにより、基板が反るという問題点があった。さらに、縦型熱処理炉では、基板に熱を加えるので、さらに基板が熱変形し、その後の工程で搬送トラブルやフォトリソグラフィ工程等におけるステージ吸着不良が発生していた。
【0005】
そこで、特許文献2では、6インチ(直径約150mm)石英ガラス基板の熱変形を防ぐために6インチ用縦型熱処理装置において、粘度の高い第2の基板あるいはサポートを熱処理の対象である第1の基板あるいはウェハの下に敷いて熱処理を行うという熱処理方法がとられている。
【0006】
しかし近年では、シリコンデバイス製造工程において、シリコン基板の大口径化が進んでおり、6インチ(直径約150mm)から8インチ(直径200mm)、さらには12インチ(直径約300mm)といった大口径のシリコン基板が主流となっている。そして、そのような大口径の基板を処理するための縦型熱処理装置は、当然12インチ対応の大きさとなっている。
また、当然、前記縦型熱処理装置以外の基板処理装置も12インチ対応の大きさを有するものとなっている。
【0007】
図6に静電チャック上に基板が保持できる12インチ用プラズマ装置の概略図を示す。このプラズマ装置5は、上部電極6側から腐食性のガスを導入し、処理容器7内に導入した腐食性ガスのプラズマを発生させて静電チャック4に保持された直径12インチシリコン基板S12の不要な膜を除去するというエッチングやアッシング処理を行うことができる。
【0008】
しかし、12インチ用プラズマ装置において、8インチ、6インチといった小さい基板にエッチングやアッシング処理を行おうとした場合、基板によって静電チャックの全面を覆うことができないため、静電チャックもプラズマに曝され、消耗してしまうといった不具合が発生していた。
【0009】
また、縦型ボート支持治具を使用し蛍光X線でシリコン基板のボロン濃度を測定する場合、ボロンのリファレンスとしてPBN(熱分解窒化ホウ素)基板をシリコン基板と同時に載置して処理容器内にボートを挿入し、ボロン濃度の測定を行う。
【0010】
図5(A)は8インチシリコン基板のボロン濃度を蛍光X線で測定する際の概略図であり、8インチ用縦型ボート支持治具3aにボロンリファレンスのための8インチPBN基板P8とボロン濃度を測定する8インチシリコン基板S8が配置される。図5(B)は12インチ用縦型ボート支持治具の概略図を示したものであり、12インチ用縦型ボート支持治具3bにボロンリファレンスのための12インチPBN基板P12とボロン濃度を測定する12インチシリコン基板S12が配置される。
【0011】
図5(A)のように8インチPBN基板も8インチシリコン基板も、自重による変形はあまり見られることはないが、図5(B)のように12インチシリコン基板の変形は少ないのに対し、12インチPBN基板は自重によって変形して反りや撓みが発生するという問題が生じた。
その上、基板を搬送する際、基板の変形による搬送エラーが発生し、装置の稼働ができないといった不具合が発生していた。
【0012】
さらに、蛍光X線測定においてボロンのリファレンスとして用いるPBN基板は、実際には12インチである必要はないが、搬送系を含めた装置の仕様が12インチ用のため、12インチPBN基板を用いざるを得なくなっている。このように大口径のPBN基板は非常に高価なものであり、コスト高になるという問題も発生していた。
【0013】
【特許文献1】特開2005−203648号公報
【特許文献2】特開平5−291164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、大口径用基板処理装置で、それには設置できないような小さい基板にも大きい基板と同様の処理を施せ、反りや撓みの発生を防止および静電チャックの消耗防止を可能とし、精度の良い基板処理を実現できる基板保持トレーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的達成のため、基板処理装置で処理可能な大きさの基板より小さい基板を、前記基板処理装置で処理する際に該小さい基板を保持する基板保持トレーであって、
該基板保持トレーは、前記小さい基板を保持するためのザグリを前記基板保持トレーの上面に具備する皿形状であり、
前記基板保持トレーの材質はシリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのいずれかであり、
前記基板保持トレーの大きさは、前記小さい基板を保持したまま前記基板処理装置に設置できる大きさであり、
前記基板保持トレーは、前記基板処理装置で処理可能な大きさの基板と同様の処理を、前記基板処理装置で前記小さい基板に施すことができるものであることを特徴とする基板保持トレーを提供する(請求項1)。
【0016】
このように基板保持トレーが小さい基板を保持するためのザグリを基板保持トレーの上面に具備する皿形状で、基板保持トレーの大きさは、小さい基板を保持したまま基板処理装置に設置できる大きさであることにより、大口径用基板処理装置で小さい基板も処理できるようになり、大口径用基板処理装置のリファレンスとしてやむを得ず大型化していた高価な基板も、必要な大きさにサイズダウンすることができるので、コスト低減が可能となる。
また、小さい基板のエッチングやアッシング処理においても、大口径用静電チャックの全面を覆うことが可能となり、プラズマに曝されることがなくなるので大口径用静電チャックが消耗することを防止できる。
そして、基板保持トレーのザグリに小さい基板が保持されているので、大口径用搬送系で小さい基板を搬送でき、ザグリによって搬送中に小さい基板がはずれる恐れもない。
【0017】
さらに、基板保持トレーの材質はシリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのいずれかであることによって、縦型ボート支持治具を使用する際、例えばPBN基板のようにヤング率が小さく撓みやすい材料の基板を、シリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのようにヤング率が大きく撓みにくい材料の基板保持トレーによって支持できるので、大口径用縦型ボート支持治具に設置して処理を施しても、小さい基板の自重による撓みを防止できる。したがって、搬送系でエラーが発生するのを抑制することができる。
【0018】
また、本発明のように、基板処理装置で処理可能な大きさの基板と同様の処理を、前記基板処理装置で小さい基板に施すことができることによって、大きい基板と小さい基板を同時に大口径用基板処理装置で処理でき、大きい基板の特性を測定する際、同じ条件下で大きい基板とリファレンスとなる小さい基板を処理できるので、測定の精度を高めることができる。さらに、基板の口径毎に別個に必要だった基板処理装置は、基板保持トレーにより大きい基板と同様の処理を小さい基板にも施せるので、同じ大口径用基板処理装置で様々な口径の基板を処理できるようになり、設備費を削減できる。
【0019】
この場合、前記ザグリの深さTは前記小さい基板の厚さtに対して、0.1t≦T≦4tであることが好ましい(請求項2)。
このように、ザグリの深さTは小さい基板の厚さtに対して、0.1t≦T≦4tであることにより、搬送や処理中に被処理基板が基板保持トレーからはずれてしまうことを防止し、基板外周部でのエッチング、アッシング等の処理が基板面内で大きい基板と同じくらいに均一にすることができるので、加工コストを抑えることができる。
【0020】
そして、前記ザグリの直径Dは前記小さい基板の直径dに対して、1.0001d≦D≦1.1dであることが好ましい(請求項3)。
このように、ザグリの直径Dは小さい基板の直径dに対して、1.0001d≦D≦1.1dとすることにより、ザグリに小さい基板を載置し易くなり、基板の側面と基板保持トレーのザグリの側面とが擦れて傷がついたりし、パーティクルが発生することを抑制できる。また、搬送や処理中に小さい基板がザグリの中で必要以上に動いてしまうこともないので、精度良く小さい基板を処理することができる。
【0021】
また、前記基板保持トレーの外径は210mm以上であることが好ましい(請求項4)。
これにより、直径8インチ(200mm)用、直径12インチ(300mm)用といった大口径用基板処理装置で小さい基板を処理することができる。
【0022】
さらに、前記基板保持トレーの外径ODと前記ザグリの直径Dとの比はD/OD≦9/10であることが好ましい(請求項5)。
このように、基板保持トレーの外径ODとザグリの直径Dとの比はD/OD≦9/10であることことにより、基板保持トレーの縁と小さい基板を保持するためのザグリの外縁との幅が十分となるので、加工時に基板保持トレーの外周部が破損することを防止でき、十分に小さい基板であっても処理可能となる。
【0023】
さらに、前記基板処理装置は、エッチング処理装置、アッシング処理装置、スパッタリング処理装置、成膜処理装置、熱処理装置、及び蛍光X線測定装置のいずれかの装置であることが好ましい(請求項6)。
このように、本発明の基板保持トレーは例えばエッチング処理、アッシング処理、スパッタリング処理、成膜処理、熱処理、及び蛍光X線測定に使用される基板処理装置において好適に使用可能であり、それぞれ、口径のサイズにあった基板処理装置をそれぞれ用意せずとも、大口径用基板処理装置で小さい基板を処理でき、コストを削減できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る基板保持トレーであれば、大口径用基板処理装置で、小さい基板にも大口径基板と同様の処理を施せ、撓みや反りの発生を防止および静電チャックの消耗防止を可能とし、精度の良い基板処理を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1に本発明に係る基板保持トレーの一例を示す。(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は斜視図である。また、図2は基板処理装置で処理可能な大きさの基板より小さい基板の一例である。
【0027】
本発明の基板保持トレー1は、基板保持トレーの上面に直径6インチや8インチといった小さい基板Wsを保持するためのザグリ2を具備し、皿形状をしている。
このような構造であることにより、8インチ、6インチといった小さい基板も直径12インチ用基板処理装置に設置できるようになる。また、小さい基板を保持したまま12インチ用搬送系で搬送することもできる。
【0028】
図3は本発明の基板保持トレーを12インチ用基板処理装置に設置したときの一実施例である。
図3(A)は12インチ用縦型ボート支持治具で本発明の基板保持トレーを使用し、12インチシリコン基板のボロン濃度を測定する場合を示した図である。12インチシリコン基板S12とともに、基板保持トレー1に保持した8インチPBN基板P8が、12インチ用縦型ボート支持治具3bに配置される。そして、蛍光X線で12インチシリコン基板S12のボロン濃度を測定することができる。
【0029】
12インチ用縦型ボート支持治具で高価なPBN基板を使用する場合、ヤング率の低いPBN基板が撓まないようにPBN基板の厚さを厚くしたり、PBN基板を12インチ用縦型ボート支持治具に載置できるようやむおえずPBN基板の口径を12インチという大口径に作製して、コスト高となる問題があったが、本発明の基板保持トレー1がザグリ2を具備し、材質がヤング率が大きく撓みにくいシリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのいずれかであることによって、ヤング率が小さく撓みやすいPBN基板を、基板保持トレー1によって全面で支持できるので、自重による撓みを防止でき、PBN基板の厚さを薄くできる。さらには、基板保持トレー1が12インチ用縦型ボート支持治具3bに設置できる大きさであるので、基板保持トレー1のザグリに保持されるPBN基板は6インチや8インチといった小口径のものとすることができ、高価なPBN基板の厚さと口径をボロン測定に必要なサイズに作製すればよく、12インチシリコン基板のボロン測定にかかるコストを低減できる。
【0030】
また、基板保持トレー1によって、基板処理装置で処理可能な大きさの基板と同様の処理を、前記基板処理装置で小さい基板に施すことができるので、ボロン測定の際、12インチ用基板処理装置3bで同時に12インチシリコン基板S12とボロンのリファレンスである8インチPBN基板P8を配置し、同じ条件下でボロン濃度を測定することができ、測定の精度を高めることができる。
ここではシリコン基板のボロン濃度の測定について記述したが、リン濃度を測定する場合、リンのリファレンスとしてリン化合物を用いるなど本発明のトレーで保持できる小口径の基板はPBN基板に限定されるものではない。
【0031】
次に、図3(B)は静電チャックに本発明の基板保持トレーを設置した場合を示す図である。12インチ用プラズマ装置内の12インチ用静電チャック4の上に直径6インチシリコン基板S6を保持した基板保持トレー1を配置し、6インチシリコン基板S6にエッチングやアッシング処理を施すことができる。
【0032】
12インチ用プラズマ装置で6インチといった小さいシリコン基板S6にエッチングやアッシング処理を行おうとした場合、6インチシリコン基板S6は12インチシリコン基板S12のように12インチ用静電チャック4の全面を覆うことができないため、静電チャック4の一部もプラズマに曝され、消耗してしまうといった不具合が発生していたが、本発明の基板保持トレー1は12インチ用静電チャック4に設置できる大きさであることにより、12インチ用静電チャック4の全面を覆うことが可能となり、静電チャック4がプラズマに曝されることがなく、消耗することを防止できる。
【0033】
また、基板保持トレー1の材質はシリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのいずれかであることにより、エッチング耐性が高い上に、たとえ基板保持トレー1がエッチングやアッシング処理によってその表面が消耗されたとしても、処理を施すシリコン基板が金属汚染されることもない。
【0034】
そして上記いずれの基板処理装置においても、図1のように本発明の基板保持トレー1のザグリ2の深さTは小さい基板Wsの厚さtに対して、0.1t≦T≦4tであることが好ましい。ザグリ2の深さTがこのような範囲であることにより、基板処理装置間の搬送中や基板処理装置にて基板を処理中に6インチや8インチといった小さい基板が基板保持トレーからはずれにくくすることができる。また、特にエッチングやアッシング処理においては、エッチングやアッシング処理の効果を6インチや8インチといった小さいシリコン基板の面内でより均一できるようになるので、品質が向上し、加工コストも低減できる。
【0035】
また、基板保持トレー1が具備するザグリ2の直径Dは小さい基板Wsの直径dに対して、1.0001d≦D≦1.1dであることが好ましい。ザグリ2の直径Dがこのような範囲であることにより、小さい基板Wsをザグリ2に載置し易くなり、小さい基板Wsの側面とザグリ2の側面とが擦れにくくなるため、6インチや8インチといった小さい基板Wsのエッジに傷が付いて破損や、基板保持トレー1と小さい基板Wsの側面でパーティクルの発生を抑制することができる。また、搬送や処理中に小さい基板がザグリ2の中で必要以上に動いてしまうこともないので、精度良く処理をすることができる。
【0036】
さらに、基板保持トレー1の外径ODとザグリ2の直径Dとの比はD/OD≦9/10であることが好ましい。基板保持トレー1の外径ODとザグリ2の直径Dとの比がこのような値であると、基板保持トレー1の縁と小さい基板を保持するためのザグリ2の外縁との幅が十分となるので、基板保持トレー1にザグリ2を形成する加工時に基板保持トレーの外周部が破損しにくくなる。また、十分に小さい基板を保持できることになり、高価な基板の低コスト化に資する。
【0037】
そして本発明の基板保持トレー1が配置される12インチ用基板処理装置は、エッチング処理、アッシング処理、スパッタリング処理、成膜処理、熱処理、及び蛍光X線測定で使用する装置等であり、6インチ用、8インチ用といった基板処理装置を別途用意せずとも、12インチ用基板処理装置で6インチや8インチといった小さい基板を処理でき、設備コストが削減できる。但し、本発明の基板保持トレーが適用可能な基板処理装置は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<基板保持トレーの作製>
単結晶シリコンを母材として、外径300mm(12インチ)、厚み2mmの円板を作製した。
次に、マシニングセンタにダイヤモンドカップ砥石を取り付け、上記シリコン円板の中心に直径205mm、深さ1mmのザグリを形成する加工を行い、基板保持トレーを作製した。
【0039】
基板保持トレーにザグリを形成する際、特に外周部が破損するということはなかった。
【0040】
(実施例2)
<縦型ボート支持治具による蛍光X線測定>
直径8インチ(約200mm)、厚さ1.2mmの小さいPBN基板を作製し、該PBN基板を実施例1で作製した基板保持トレーに保持し、ボロン濃度を測定する12インチシリコン基板を12インチ用縦型ボート支持治具に12インチ用搬送系にて設置し、蛍光X線により12インチシリコン基板のボロン濃度を測定し、12インチ用搬送系にて12インチ用縦型ボート支持治具から8インチPBN基板を保持した上記基板保持トレーと12インチシリコン基板を取り出した。
【0041】
ボロン濃度の測定中、基板保持トレーが撓むことはなく、8インチPBN基板も自重による撓みはなかった。また、12インチ用搬送系にて8インチPBN基板を保持したままの基板保持トレーを搬送中、8インチPBN基板が基板保持トレーからはずれることはなく、搬送エラーも出なかった。
【0042】
(実施例3)
<静電チャック上でのプラズマエッチング処理>
直径6インチのシリコン基板を用意し、該シリコン基板を、直径300mm、ザグリの直径158mm、ザグリの深さ500μmという炭化ケイ素製の基板保持トレーに保持して、12インチ用搬送系にて12インチ用プラズマ装置内の12インチ用静電チャック上に設置し、腐食性ガスとしてCFを上部電極側から処理容器内に導入し、プラズマを発生させて、6インチシリコン基板にエッチング処理を施し、12インチ用搬送系にて基板保持トレーをプラズマ装置内から取り出した。その後、エッチング処理を行っていない他のシリコン基板にも同じ装置でエッチング処理を施し、10回ほど処理が終わった時点で、静電チャックの上面の消耗度を測定した。
【0043】
その結果、12インチ用静電チャックの上面はほとんど消耗していなかった。また、処理された6インチシリコン基板に基板保持トレーからの金属汚染はほとんど見られなかった。
【0044】
(比較例1)
<縦型ボート支持治具による蛍光X線測定>
直径12インチ(約300mm)、厚さ1.2mmのPBN基板を作製し、該PBN基板と、ボロン濃度を測定する12インチシリコン基板を12インチ用縦型ボート支持治具に12インチ用搬送系にて設置し、蛍光X線により12インチシリコン基板のボロン濃度を測定した。
【0045】
その結果、12インチPBN基板は搬送、処理中に撓んでしまい、12インチ用縦型ボート支持治具から12インチPBN基板と12インチシリコン基板を取り出す際、搬送エラーが出てしまった。しかも、測定後のPBN基板に反りと傷が生じており、再度使用することができないものであった。
【0046】
(比較例2)
<静電チャック上でのプラズマエッチング処理>
直径6インチシリコン基板を10枚用意し、基板保持トレーを使用せずに実施例3と同様の12インチ用の装置でプラズマエッチング処理を10回行った。
【0047】
その結果、12インチ用静電チャックの上面の6インチシリコン基板が覆っていない部分がプラズマに曝され、消耗が激しかった。また、静電チャックの消耗によって、6インチシリコン基板のパーティクル数が基板保持トレーを使用したときより3倍以上と多かった。
【0048】
以上、実施例、比較例より、本発明に係る基板保持トレーであれば、大口径用基板処理装置で、小さい基板にも大口径基板と同様の処理を施せ、撓みの発生を防止および静電チャックの消耗防止を可能とし、精度の良い基板処理を実現でき、シリコンデバイス製造工程でのコストを低減でき、大きい基板と同様の品質で小さい基板を処理することができることがわかる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0050】
本記では、特に基板処理装置としてボロン測定のための縦型ボート支持治具、プラズマエッチング処理のための静電チャックを例に説明したが、同様に基板処理装置で処理可能なサイズの基板より小さい基板を保持して基板処理する場合であれば、これらに限定はされない。また、基板とそれを処理する基板処理装置は、近年の基板の大口径化に伴って大型化するものであって、12インチ用基板処理装置で6インチ、8インチといった小さい基板を処理するといった組み合わせに限定されるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の基板保持トレーの一例を示す図で、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は斜視図である。
【図2】基板処理装置で処理可能な大きさの基板より小さい基板の斜視図である。
【図3】本発明の基板保持トレーの一実施例を示す図で、(A)は8インチPBN基板を基板保持トレーに保持し、12インチ用縦型ボート支持治具に設置し、ボロン濃度を測定する場合であり、(B)は6インチシリコン基板を基板保持トレーに保持し、12インチ用静電チャックに設置し、エッチング処理を施す場合である。
【図4】縦型ボート支持治具の一例を示す図である。
【図5】(A)は8インチ用縦型ボート支持治具でボロン濃度を測定する際の一部を示す図であり、(B)は12インチ用縦型ボート支持治具でボロン濃度を測定する際の一部を示す図である。
【図6】プラズマエッチング装置の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1…基板保持トレー、 2…ザグリ、 3…縦型ボート支持治具、
3a…8インチ用縦型ボート支持治具、 3b…12インチ用縦型ボート支持治具、
4…静電チャック、 5…12インチ用プラズマ装置、 6…上部電極、
7…処理容器、 31…支柱、 32…溝、 P8…8インチPBN基板、
P12…12インチPBN基板、 S6…6インチシリコン基板、
S8…8インチシリコン基板、 S12…12インチシリコン基板、
Ws…小さい基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置で処理可能なサイズの基板より小さい基板を、前記基板処理装置で処理する際に該小さい基板を保持する基板保持トレーであって、
該基板保持トレーは、前記小さい基板を保持するためのザグリを前記基板保持トレーの上面に具備する皿形状であり、
前記基板保持トレーの材質はシリコン、炭化珪素、窒化珪素、及びアルミナのいずれかであり、
前記基板保持トレーの大きさは、前記小さい基板を保持したまま前記基板処理装置に設置できる大きさであり、
前記基板保持トレーは、前記基板処理装置で処理可能なサイズの基板と同様の処理を、前記基板処理装置で前記小さい基板に施すことができるものであることを特徴とする基板保持トレー。
【請求項2】
前記ザグリの深さTは前記小さい基板の厚さtに対して、0.1t≦T≦4tであることを特徴とする請求項1に記載の基板保持トレー。
【請求項3】
前記ザグリの直径Dは前記小さい基板の直径dに対して、1.0001d≦D≦1.1dであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板保持トレー。
【請求項4】
前記基板保持トレーの外径は210mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の基板保持トレー。
【請求項5】
前記基板保持トレーの直径ODと前記ザグリの直径Dとの比はD/OD≦9/10であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の基板保持トレー。
【請求項6】
前記基板処理装置は、エッチング処理装置、アッシング処理装置、スパッタリング処理装置、成膜処理装置、熱処理装置、及び蛍光X線測定装置のいずれかの装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の基板保持トレー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−21686(P2008−21686A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189859(P2006−189859)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】