説明

基板保持治具および洗浄装置

【課題】メガソニック洗浄装置での基板洗浄において、超音波によるダメージに強く、基板保持位置の変位による基板の搬送トラブルを防止でき、良好な洗浄を実施できる基板保持治具を提供することを目的とする。
【解決手段】バッチ式のメガソニック洗浄装置において、洗浄時に洗浄槽内で基板を保持する基板保持治具であって、洗浄槽内に基板を保持するための対向する側板と、側板に両端が接続された2以上の石英製支持部材と、1つの保持溝を有し、石英製支持部材に複数取り付けられた樹脂製保持部材とを具備し、樹脂製保持部材が他の樹脂製保持部材と接触しないように石英製支持部材に取り付けられたものであり、樹脂製保持部材の保持溝に基板の周縁部を嵌めることで基板が保持されるものである基板保持治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッチ式のメガソニックを用いたカセットレス洗浄装置において、洗浄時に基板を保持する基板保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工学部品や基板等の洗浄には、超音波洗浄装置を用いて洗浄することが一般的に行われている。
図4に一般的な超音波洗浄装置の一例の概略図を示す。
図4に示すように、一般的な超音波洗浄装置101は、被洗浄物104を洗浄するための洗浄液107を収容する洗浄槽102と、洗浄槽102に超音波を伝搬するための伝搬水108を収容する超音波伝搬槽103と、超音波伝搬槽103の外壁面に備えられた、例えばセラミック製の圧電素子から成る超音波を発生させる振動子109により超音波を伝搬水108に印加する振動板105等を備えるものである。また、被洗浄物104は基板保持治具106等により洗浄槽102中に保持され、洗浄槽102内の洗浄液に浸漬される。
【0003】
そして、振動板105によって印加された超音波は、伝搬水108を介して洗浄槽102に伝搬され、洗浄液107の液面や洗浄槽壁等を境界とする定在波が形成される。このとき、定在波の腹に当たる洗浄液が大きく振動し、この振動による音圧で、被洗浄物104が洗浄される。
【0004】
近年、半導体部品等の超音波洗浄において、例えばウェーハのパーティクル除去に効果的であり、パーティクル品質を向上させるという点等から、1MHzといった高周波の超音波が使用されるメガソニック洗浄装置が用いられている。メガソニックは従来用いられた超音波の波長領域のもののような定在波が発生し難いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−204197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッチ式のメガソニック洗浄装置において、洗浄時に基板を保持する基板保持治具として、基板に傷を生じさせないように一般的には樹脂部材を使用している。しかし、樹脂は超音波を吸収する傾向があるためメガソニックによる洗浄効果が下がってしまい、また、樹脂そのものも超音波によるダメージにさらされ、パーティクル発生の問題が生じる。また樹脂の特性として、温度変化による基板保持治具の変位が生じてしまい、それにより基板の保持位置がずれて、搬送トラブル、基板へのダメージの懸念等の問題があった。
【0007】
洗浄時に基板を保持するものとしては、例えば特許文献1にウェハボートが記載されている。しかし、このウェハボートをメガソニック洗浄装置に用いた場合に、超音波にさらされる樹脂部分の面積は大きく、ダメージの低減には不十分であり、その温度変化による変位についても、処理液の使用温度によって溝ピッチを変更する必要があるため、実際問題調整が困難であり、洗浄効率も良くなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、メガソニック洗浄装置での基板洗浄において、超音波によるダメージに強く、基板保持位置の変位による基板の搬送トラブルを防止でき、良好な洗浄を実施できる基板保持治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、バッチ式のメガソニック洗浄装置において、洗浄時に洗浄槽内で基板を保持する基板保持治具であって、少なくとも、前記洗浄槽内に基板を保持するための対向する側板と、該側板に両端が接続された2以上の石英製支持部材と、1つの保持溝を有し、前記石英製支持部材に複数取り付けられた樹脂製保持部材とを具備し、該樹脂製保持部材が他の樹脂製保持部材と接触しないように前記石英製支持部材に取り付けられたものであり、前記樹脂製保持部材の保持溝に前記基板の周縁部を嵌めることで基板が保持されるものであることを特徴とする基板保持治具を提供する。
【0010】
このように、本発明の基板保持治具は、基板に直接接触する保持部材を樹脂製として、これを支持する支持部材を石英製とすることで、樹脂部分が少ないため洗浄の際に吸収される超音波が低減されてパーティクル発生が少なく基板洗浄効果が高くなり、また、治具への超音波によるダメージにも強くなるため劣化が防止され、治具の交換サイクルが延びる。そして、保持部分は樹脂であるため保持する基板へのキズの発生は防止される。さらに、樹脂製保持部材の超音波に曝される領域が小さくなるため樹脂部分へのダメージも小さくなり、交換サイクルは治具全体が樹脂の場合に比べて長く、またその交換も保持部材のみ交換すればよいため、コストが低減される。さらには、樹脂製保持部材の超音波による発熱も抑制される。また、樹脂製保持部材の保持溝を1つにして、かつ石英製支持部材に他の樹脂製保持部材と接触しないように取り付けることで、温度変化によって石英部分はほとんど熱膨張せず、樹脂製保持部材が熱膨張しても保持溝は一つであり、隣同士の影響も無いため、保持溝の位置はほぼ変わらず、基板保持位置の変位はほとんど生じない。従って、基板搬送上のトラブルも発生しにくい。
以上のように、本発明の基板保持治具であれば、メガソニック洗浄において、基板の搬送トラブルが無く、基板へのダメージやパーティクルの心配も無い、良好な洗浄を低いコストで効率的に行うことができる。
【0011】
このとき、前記樹脂製保持部材が、フッ素樹脂製であることが好ましい。
このように、フッ素樹脂であれば、強度も高く、洗浄液に対する耐性も強いため好適である。
【0012】
このとき、前記樹脂製保持部材が円筒状であり、該樹脂製保持部材が前記石英製支持部材に設けられた穴に嵌め込まれることで取り付けられたものであることが好ましい。
このように、樹脂製保持部材が円筒状であれば、製作が容易である上に、石英製支持部材の穴に嵌めこむことで取り付け、交換が容易になる。従って、簡単で安価に構成できる。
【0013】
このとき、前記石英製支持部材に取り付けられた前記樹脂製保持部材は、前記メガソニック洗浄装置における超音波を発生させる振動子側に前記石英製支持部材が、その反対側が前記樹脂製保持部材となるように配置されたものであることが好ましい。
このような配置であれば、振動子からの超音波は石英支持部に直接あたり、反対側にある樹脂製保持部材は超音波に直接曝されないため、超音波の吸収もより低減されて洗浄効果がさらに高くなる。さらには、直接曝される場合に比べ、石英製支持部材により超音波が遮蔽されるため樹脂製保持部材へのダメージ、発熱もより抑制される。
【0014】
また、本発明は、基板を洗浄するためのメガソニック洗浄装置であって、少なくとも、本発明の基板保持治具を具備し、該基板保持治具によって洗浄槽内に保持された基板を、振動子により発生させた超音波をあてながら洗浄するものであることを特徴とするメガソニック洗浄装置を提供する。
このようなメガソニック洗浄装置であれば、メガソニック洗浄において、基板の搬送トラブルが無く、基板へのダメージやパーティクルの心配も無い、良好な洗浄を低いコストで効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の基板保持治具であれば、メガソニック洗浄において、基板の搬送トラブルが無く、基板へのダメージやパーティクルの心配も無い、良好な洗浄を低いコストで効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の基板保持治具の石英製支持部材に取り付けられた樹脂製保持部材の概略拡大図である。
【図2】本発明の基板保持治具をメガソニック洗浄装置に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の基板保持治具をメガソニック洗浄装置に取り付けた状態を示す概略平面図である。
【図4】従来の一般的な超音波洗浄装置の概略図である。
【図5】実施例、比較例における洗浄後の基板のパーティクル数と、洗浄後の基板のパーティクルを観察した図である。
【図6】洗浄後の基板のパーティクル数の超音波の出力による違いを示すグラフと、洗浄後の基板のパーティクルを観察した図である。
【図7】実施例、比較例における洗浄プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
メガソニック洗浄装置を用いた洗浄の際に基板を保持する基板保持治具は、超音波によるダメージやそれに基づくパーティクルの発生、洗浄液の温度や超音波による治具自体の発熱で熱膨張して基板保持位置が変位することによる基板搬送トラブル、樹脂のメガソニック吸収による洗浄効果の低減等の問題があった。
【0018】
以上のような問題に対して、本発明者らが鋭意検討を行った結果、5.5×10−7/℃と熱膨張係数が非常に小さく、かつ強度の高い石英を支持部材として用い、さらに基板の保持部材のみに樹脂を用い、これを、石英製支持部材に取り付けることを想到した。さらに、一つの樹脂製保持部材に一つの保持溝を形成して、かつそれぞれの樹脂製保持部材を互いに接触させないように取り付けることで、樹脂の熱膨張による保持溝の位置の変位や隣同士の影響も無くなり、基板保持位置の変位を防止できることを見出して、本発明を完成させた。
【0019】
以下、本発明の基板保持治具について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の基板保持治具の石英製支持部材に取り付けられた樹脂製保持部材の概略拡大図である。図2は、本発明の基板保持治具をメガソニック洗浄装置に取り付けた状態を示す概略断面図であり、図3はその概略平面図である。
【0020】
図2、3に示すように、本発明の基板保持治具11を適用できるメガソニック洗浄装置10には、例えばシリコン単結晶ウェーハ等のような基板Wを浸漬して洗浄するための洗浄液16を収容する洗浄槽14と、洗浄槽14に超音波を伝搬するための伝搬水19を収容する超音波伝搬槽18と、超音波伝搬槽18の下部に配置され振動子17により超音波を伝搬水19に印加する振動板20とが設けられている。
ここで、洗浄液16としては、例えばSC−1溶液(アンモニア水と過酸化水素水と純水とを混合したもの)等のような薬液を使用することができるし、純水を使用することもできる。また、洗浄液16の液温は例えば5〜90℃とすることができる。
【0021】
このメガソニック洗浄装置10には、振動子17および振動板20が超音波伝搬槽18の下部に配置されている。この振動板20によって、振動子17による超音波振動を伝搬水19に印加して、洗浄される基板Wの下方から超音波振動をあてることができるようになっている。
ここで、振動子17の固有振動数は、例えば、500KHz〜5MHz、特には750KHz〜1.5MHzとすることができる。これらの条件は洗浄目的に従って決定されれば良く、特にこれに限定されないが、1MHz程度の高周波の超音波を利用することで、パーティクルの除去効果を高めることができる。
【0022】
そして、図1〜3に示すように、本発明の基板保持治具11は、洗浄槽14内に基板Wを保持するための対向する側板15と、側板15に両端が接続された2以上の石英製支持部材12と、1つの保持溝21を有し、石英製支持部材12に複数取り付けられた樹脂製保持部材13とを具備し、樹脂製保持部材13が他の樹脂製保持部材13と接触しないように石英製支持部材12に取り付けられたものであり、樹脂製保持部材13の1つの保持溝21に1枚の基板Wの周縁部を嵌めることで基板Wが保持されるものである。
【0023】
このように、本発明の基板保持治具は、保持部材を樹脂製として、保持部材が取り付けられる支持部材を石英製とすることで、全体として樹脂部分が少ないため洗浄の際に吸収される超音波が低減されて基板洗浄効果が高くなり、また、治具への超音波によるダメージにも強くなるため劣化が防止され、治具の交換サイクルが延びる。そして、保持部分は樹脂であるため保持する基板へのキズの発生は防止される。さらに、樹脂製保持部材の超音波に曝される領域が小さくなるため樹脂部分へのダメージも小さくなり、交換サイクルは治具全体が樹脂の場合に比べて長く、またその交換も保持部材のみ交換すればよいため、コストが低減される。さらには、樹脂製保持部材の超音波による発熱も抑制される。また、樹脂製保持部材の保持溝を1つにして、かつ石英製支持部材に他の樹脂製保持部材と接触しないように取り付けることで、温度変化によって石英部分はほとんど熱膨張せず、樹脂製保持部材が熱膨張しても保持溝は一つであり、隣同士の影響も無いため、保持溝の位置はほぼ変わらず、基板保持位置の変位はほとんど生じない。従って、ロボットアーム等で基板保持治具に基板を保持させたり取り出したりする際に、本発明であれば治具の正確な位置に基板があるため搬送トラブルはほとんど発生しない。
【0024】
側板15としては、例えば図2に示すように、洗浄槽14の上方に取り付けることができ、材質としては、特に限定されないが、例えば石英であれば、洗浄の際の汚染の心配もなく、強度も十分に有するため好ましい。また、この側板15は固定されていてもよいし、または、洗浄時や洗浄前後に可動するように取り付けられていてもよい。
【0025】
このとき、樹脂製保持部材13としては、例えば、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂製であることが好ましい。
フッ素樹脂であれば、強度も高く、洗浄液に対する耐性も強いため好適である。
【0026】
このとき、図1〜3に示すような、樹脂製保持部材13が円筒状であり、樹脂製保持部材13が石英製支持部材12に設けられた穴に嵌め込まれることで取り付けられたものであることが好ましい。
このように、樹脂製保持部材が円筒状であれば、製作が容易である上に、石英製支持部材の穴に嵌めこむことで取り付け、交換が容易になる。
また、樹脂製保持部材同士の間隔は、特に限定されないが、必要以上に間隔を空けると洗浄する基板の仕込み枚数が減少してしまうので、洗浄液の温度においても、隣接する樹脂製保持部材同士が膨張して接触しなければよい。
【0027】
このとき、図2、3に示すように、石英製支持部材12に取り付けられた樹脂製保持部材13は、メガソニック洗浄装置10における超音波を発生させる振動子17側に石英製支持部材12が、その反対側が樹脂製保持部材13となるように配置されたものであることが好ましい。
このような配置であれば、振動子からの超音波は石英支持部に直接あたり、反対側にある樹脂製保持部材は超音波に直接曝されないため、超音波の吸収もより低減されて洗浄効果がさらに高くなり、かつ樹脂製保持部材へのダメージ、発熱もより抑制される。
【0028】
なお、図1、2では下方に振動子があるメガソニック洗浄装置を示したが、横方向から超音波をあてるために振動子が洗浄槽の横に設置されたメガソニック洗浄装置についても、本発明の基板保持治具を適用することができ、その場合には石英製支持部材を外側に、樹脂製保持部材を内側に配置することができる。
【0029】
また、石英製支持部材12と樹脂製保持部材13を、上記のような配置にするとともに、樹脂製保持部材が石英製支持部材に下方(振動子側)から完全には隠れていないような場合には、樹脂製保持部材が超音波に曝されないように石英製支持部材の幅を広くする等調節することが好ましい。
このように、振動子側から見た場合の樹脂製保持部材の投影面積を石英製支持部材よりできるだけ小さくして、最も好ましくは、完全に隠れる(樹脂製保持部材の石英製支持部材との投影面積比率0%)ようにする。
また、石英製支持部材12の振動子側から見た厚みを、超音波の共振条件から外すように調節することが好ましい。これにより、石英製支持部材に取り付けられた樹脂製保持部材のダメージをより低減でき、発熱による樹脂の劣化もより抑制することができる。
【0030】
以上のように、本発明の基板保持治具であれば、メガソニック洗浄において、基板の搬送トラブルが無く、基板へのダメージやパーティクルの心配も無い、良好な洗浄を低いコストで効率的に行うことができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1〜3に示すような本発明の基板保持治具を具備するメガソニック洗浄装置を用いて、鏡面研磨後の直径300mmのシリコン基板5枚を、10分間メガソニック洗浄した。使用した保持部材の材質はフッ素樹脂とした。使用した洗浄液はアンモニア、過酸化水素水、水の混合液(SC−1溶液)とし、その混合比を1:1:10とした。洗浄液の温度を50℃とし、超音波の周波数は1MHzとした。同条件で同一治具を用いて合計200回の洗浄を行った。
この結果、搬送トラブルは一回も発生せず、治具にも基板にもキズ等は発生せず良好な洗浄を行うことができた。また、洗浄後の基板のパーティクルの数も比較例1に比べて低減されていた。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同一の条件で、ただし、基板保持治具は樹脂製保持部材が直方体で、かつ石英製支持部材に、隣の樹脂製保持部材同士を互いに接触させて連結するように取り付けられたものを用いて、鏡面研磨後の直径300mmのシリコン基板の洗浄を行った。
この結果、搬送トラブルが3回発生し、シリコン基板にもキズが発生した。
【0033】
(実施例2、比較例2)
洗浄槽を5つ有するメガソニック装置のそれぞれの洗浄槽に、図1〜3に示すような本発明の基板保持治具(石英スタンド)を設置したものと(実施例2)、全体が樹脂で作製された基板保持治具(樹脂スタンド)を設置したものを(比較例2)用いて、鏡面研磨後の直径300mmのシリコン基板の洗浄を行った。このとき、石英スタンドは装置の下方に配置された振動子側に石英製支持部材が配置され、樹脂製保持部材が振動子側から完全に隠れるように設置し、超音波に直接曝されないようにした。これらの洗浄槽間の基板の搬送は、スタンドへロボットアームによって搬送した。
上記のような装置を用いて、基板の洗浄を、図7に示すような洗浄プロセスで、工程1−5の順で行い、工程2におけるSC−1溶液による洗浄時の溶液の温度を70℃(条件1)、60℃(条件2)、50℃(条件3)の3条件で、各条件で基板5枚ずつ洗浄を実施した。工程2以外はDIW(純水)で洗浄を行った。また、図7に示すように、工程2、3ではメガソニックを印加しているが、この出力は540Wに設定した。
【0034】
上記のように洗浄を行った基板表面のパーティクルを高精度のパーティクルカウンター(KLAテンコール社製、Surf scan SP2、 High resolution mode、最小測定パーティクル:≧37nm)で測定した結果を図5に示す。
図5に示すように、溶液温度が高い条件で洗浄を行った基板程、パーティクルが少なくなっているが、本発明の石英スタンドで洗浄を行った場合の方が樹脂スタンドに比べパーティクルは大幅に低減されている。これは、樹脂スタンドの場合は樹脂がメガソニックを吸収してしまい、洗浄効果が下がり、一方本発明の石英スタンドの場合には、石英製支持部材がメガソニックをよりよく透過させて、洗浄効果の低減がほとんど無かったためと考えられる。また、樹脂スタンドを用いた比較例の場合には、溶液温度が高い条件ほど搬送トラブルが多発したが、本発明の石英スタンドでは搬送トラブルは発生しなかった。
また、本発明の石英スタンドであれば、50℃のような低温でも、洗浄効果が大きいので、必ずしも液温を70℃のように高温にする必要がない。従って、エネルギーコストや液の蒸発による飛散が防止され、新液の供給も抑制することができ、この点でもコストダウンが計れる。さらに、低温だと、エッチオフ量も少なくすることができるので、ウェーハの表面粗さの悪化を防止できる。
【0035】
(比較例3)
次に、樹脂スタンドを用いて、比較例2の条件1と同様の条件、洗浄プロセスで、ただしメガソニックの出力は条件1と同じ540W(100%)と、270W(50%)でそれぞれ洗浄を行った。この洗浄後の基板のパーティクルを実施例2、比較例2と同様の装置、方法で測定した結果を図6に示す。
図6に示すように、メガソニックの出力は高い方が洗浄効果が高く、基板のパーティクルを低減できることがわかる。但し、樹脂スタンドで行ったため、540W(100%)の出力で行った洗浄の場合には、複数回洗浄を行うと、樹脂に劣化が見られ、再びパーティクル数が増加した。
【0036】
(実施例3、比較例4)
次に、石英スタンドを設置した洗浄装置(実施例3)と、樹脂スタンドを設置した洗浄装置(比較例4)を用いて、実施例2、比較例2の条件3と同様の条件、洗浄プロセスで、ただし両方ともメガソニックの出力は750Wでそれぞれ洗浄を行った。
この場合でも石英スタンドの場合には、良好に洗浄が実施でき、出力のみが異なる実施例2の条件3よりも洗浄効果が高く、パーティクルは低減されていた。また、樹脂スタンドの場合には、出力のみが異なる比較例2の条件3よりも劣化が早く、パーティクルは大幅に増加した。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
10…メガソニック洗浄装置、 11…基板保持治具、
12…石英製支持部材、 13…樹脂製保持部材、 14…洗浄槽、
15…側板、 16…洗浄液、 17…振動子、 18…超音波伝搬槽、
19…伝搬水、 20…振動板、 21…保持溝、 W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ式のメガソニック洗浄装置において、洗浄時に洗浄槽内で基板を保持する基板保持治具であって、少なくとも、前記洗浄槽内に基板を保持するための対向する側板と、該側板に両端が接続された2以上の石英製支持部材と、1つの保持溝を有し、前記石英製支持部材に複数取り付けられた樹脂製保持部材とを具備し、該樹脂製保持部材が他の樹脂製保持部材と接触しないように前記石英製支持部材に取り付けられたものであり、前記樹脂製保持部材の保持溝に前記基板の周縁部を嵌めることで基板が保持されるものであることを特徴とする基板保持治具。
【請求項2】
前記樹脂製保持部材が、フッ素樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の基板保持治具。
【請求項3】
前記樹脂製保持部材が円筒状であり、該樹脂製保持部材が前記石英製支持部材に設けられた穴に嵌め込まれることで取り付けられたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板保持治具。
【請求項4】
前記石英製支持部材に取り付けられた前記樹脂製保持部材は、前記メガソニック洗浄装置における超音波を発生させる振動子側に前記石英製支持部材が、その反対側が前記樹脂製保持部材となるように配置されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の基板保持治具。
【請求項5】
基板を洗浄するためのメガソニック洗浄装置であって、少なくとも、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の基板保持治具を具備し、該基板保持治具によって洗浄槽内に保持された基板を、振動子により発生させた超音波をあてながら洗浄するものであることを特徴とするメガソニック洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−258084(P2010−258084A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104068(P2009−104068)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(590002172)株式会社プレテック (41)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】