説明

基板処理方法、基板処理装置、プログラムならびに記録媒体

【課題】基板処理工程において処理液を繰り返し使用した場合であっても被処理基板に対する処理が悪化することなく、しかも乾燥後の被処理基板の表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができる基板処理方法、基板処理装置、プログラムならびに記録媒体を提供する。
【解決手段】まず、チャンバー2内に第1のガスを満たした状態で処理液をチャンバー2内のウェハWの表面に供給して当該ウェハWの表面の処理を行う。この際に、チャンバー2から排出される処理液を処理液供給部に戻すようにする。その後、チャンバー2内に第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを満たした状態で液膜形成用流体をチャンバー2内のウェハWの表面に供給することによりウェハWの表面に液膜を形成しこのウェハWの表面の乾燥を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板に対して処理液による処理および乾燥処理を行う基板処理方法、基板処理装置、プログラムならびに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス等の製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)の表面に対してエッチング処理やポリマー除去処理等の、処理液による処理が行われ、その後、この表面に対して乾燥処理が行われている(例えば、特許文献1等参照)。
以下、処理液によるウェハの処理の一例として、エッチング処理について説明する。
【0003】
具体的には、まず基板処理装置のチャンバー内に載置されたウェハの表面にフッ酸水(HF液)等のエッチング液を供給して希フッ酸洗浄、バファードフッ酸洗浄等のエッチング処理を行い、その後、このウェハの表面に純水等のリンス液を供給してこのウェハの表面を洗浄する。なお、エッチング液として、フッ酸水(HF液)以外の液体、具体的には例えばフッ化アンモニウムを含む液体を用いることもできる。そして、その後このウェハを乾燥させる。
【0004】
ここで、エッチング処理に使用されたエッチング液はチャンバーから排出されるが、このエッチング液は回収されて再利用されるようになっている。すなわち、チャンバーから排出されたエッチング液は、ウェハの表面にエッチング液を供給するためのエッチング液供給部に戻され、このエッチング液供給部から再びウェハの表面に供給されることとなる。
【0005】
また、従来、ウェハを乾燥させる方法として、ウェハを回転させながら当該ウェハの表面にイソプロピルアルコール(IPA)等の有機溶剤の蒸気を供給する蒸気乾燥方法が知られている。ここで、乾燥時にウェハの表面にウォーターマークが発生することを抑制するため、除湿された空気をチャンバー内に供給することにより、ウェハの周囲の湿度を低減させる方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】実開平6−9130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の基板処理方法にあっては、エッチング工程、リンス工程、乾燥工程等からなる総ての処理工程においてウェハの周囲の湿度を低減させようとすると下記の問題が発生するおそれがある。すなわち、エッチング工程において、ウェハのエッチング処理に使用されたHF液やフッ化アンモニウム系薬液は回収されて再利用されるようになっているが、チャンバー内が乾燥状態となっている場合には、HF液等を繰り返し使用するとこのHF液等に含まれる水分が蒸発してしまい、当該HF液等の濃度が上昇する。このため、エッチング工程においてHF液等を繰り返し使用したときにウェハに対するエッチングレートが徐々に大きくなってしまい、同じHF液等でウェハに対して1枚ずつ処理を順番に行う場合、例えば数十番目以降のウェハに対するエッチングレートが増加していくおそれがある。
【0008】
一方、エッチング工程に用いられるHF液やフッ化アンモニウム系薬液はウェハの疎水性を強めるような性質の薬液であるため、ウェハの乾燥工程において当該ウェハの表面にIPA等の乾燥用流体を供給することが好ましい。なぜならば、このような乾燥用流体を使う乾燥方法は、乾燥後のウェハの表面におけるパーティクルやウォーターマークの形成を低減させると考えられるからである。
【0009】
ここで、エッチング工程、リンス工程、乾燥工程等からなる総ての処理工程においてチャンバー内の湿度を低減させない場合には、乾燥工程においてウェハに表面に供給されるIPA液にチャンバー内の水分(水蒸気)が溶け込んでしまう。IPA液に水分が溶け込んだ場合は、乾燥後のウェハの表面にパーティクル等が発生するおそれがある。
【0010】
以上においては処理液によるウェハの処理の一例としてエッチング処理について説明したが、代わりにポリマー除去処理を行う場合についても同様のことがいえる。すなわち、ポリマー除去液としてはアミン系の薬液が用いられるが、このようなアミン系の薬液は、乾燥したガスにより蒸発するような成分(水分)を含んでいる。このため、チャンバー内が乾燥状態となっているときにウェハに対してアミン系の薬液を供給してポリマー除去を行う場合には、このアミン系の薬液を繰り返し使用すると当該薬液中の水分が蒸発してしまい、ポリマーの除去性能が悪化してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、同一処理室(チャンバー)内で処理液による基板処理工程と乾燥工程が行われる場合に、基板処理工程において処理液を繰り返し使用した場合であっても被処理基板に対する処理が悪化することなく、しかも乾燥後の被処理基板の表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができる基板処理方法、基板処理装置、プログラムならびに記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1ガス供給部から第1のガスをチャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たす第1ガス供給工程と、前記チャンバー内が第1のガスで満たされた状態で、処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に前記チャンバーから排出される処理液を処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻す基板処理工程と、第2ガス供給部から第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内の第1のガスを第2のガスに置換する第2ガス供給工程と、前記チャンバー内が第2のガスで満たされた状態で、乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行う乾燥工程と、を備えたことを特徴とする基板処理方法である。
【0013】
また、本発明は、被処理基板を収容するためのチャンバーと、前記チャンバーに処理液を供給する処理液供給部と、前記チャンバーに乾燥用流体を供給する乾燥用流体供給部と、前記チャンバーから排出される処理液を回収して前記処理液供給部に戻す処理液回収ラインと、前記チャンバーに第1のガスおよびこの第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを各々供給する第1ガス供給部および第2ガス供給部と、前記処理液供給部、前記乾燥用流体供給部、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部の制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ガス供給部から第1のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たした状態で前記処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に、前記チャンバーから排出される処理液を前記処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻すようにし、その後、前記第2ガス供給部から第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内に第2のガスを満たした状態で前記乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行うよう、前記処理液供給部、前記乾燥用流体供給部、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部の制御を行うことを特徴とする基板処理装置である。
【0014】
上述の基板処理方法および基板処理装置において、被処理基板の処理に用いられる処理液は、その周囲にあるガスの湿度変化の影響を受ける液体となっており、湿度が比較的低いガス(例えば、第2のガス)により蒸発するような成分を含んでいる。
【0015】
このような基板処理方法および基板処理装置においては、基板処理工程において、被処理基板の処理に使用された処理液は回収されて再利用されるようになっているが、チャンバー内が比較的湿度の高い第1のガスで満たされているので、この処理液を繰り返し使用しても当該処理液中の水分が大きく蒸発することはない。このため、基板処理工程において処理液を繰り返し使用しても被処理基板に対する処理が悪化することはない。また、乾燥工程において、チャンバー内の雰囲気が第1のガスから湿度の低い第2のガスに置換されるので、被処理基板の表面に供給される乾燥用流体に水分が溶け込むことを抑制することができ、乾燥後の被処理基板の表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができる。さらに、チャンバー内が湿度の低い第2のガスで満たされた状態で被処理基板に対して乾燥処理を行うので、被処理基板の乾燥をより促進させることができる。
【0016】
本発明の基板処理方法および基板処理装置においては、前記処理液はエッチング液であることが好ましい。この場合、基板処理工程としてエッチング工程が行われることになるが、このエッチング工程においてエッチング液を繰り返し使用しても当該エッチング液の濃度が大幅に上昇することはない。このため、エッチング工程においてエッチング液を繰り返し使用しても被処理基板に対するエッチングレートが徐々に大きくなることはなく、被処理基板に対してエッチングが過剰に行われることを防止することができる。なお、前記エッチング液はフッ酸水(HF)またはフッ化アンモニウムを含む液体であることがより好ましい。
【0017】
あるいは、本発明の基板処理方法および基板処理装置においては、前記処理液はポリマー除去液であることが好ましい。この場合、基板処理工程としてポリマー除去工程が行われることになるが、このポリマー除去工程においてポリマー除去液を繰り返し使用してもポリマー除去液中の水分が大きく蒸発することはない。このため、ポリマー除去工程においてポリマー除去液を繰り返し使用しても被処理基板に対する処理が悪化することはない。
【0018】
本発明の基板処理方法においては、前記基板処理工程と前記乾燥工程との間で、前記第2ガス供給工程時にリンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するリンス工程を更に備えたことが好ましい。また、本発明の基板処理装置においては、前記チャンバーにリンス液を供給するリンス液供給部を更に備え、前記制御部は、被処理基板の表面の処理とこの表面の乾燥処理との間で、第2のガスの供給時に前記リンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するよう、前記リンス液供給部の制御も行うようになっていることが好ましい。
【0019】
本発明の基板処理方法および基板処理装置においては、前記乾燥用流体は有機溶剤であることが好ましい。とりわけ、前記有機溶剤はイソプロピルアルコール(IPA)を含む流体であることが好ましい。
【0020】
本発明は、基板処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムであって、当該プログラムを実行することにより、前記制御コンピュータが前記基板処理装置を制御して基板処理方法を実行させるものにおいて、前記基板処理方法が、第1ガス供給部から第1のガスをチャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たす第1ガス供給工程と、前記チャンバー内が第1のガスで満たされた状態で、処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に前記チャンバーから排出される処理液を処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻す基板処理工程と、第2ガス供給部から第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内の第1のガスを第2のガスに置換する第2ガス供給工程と、前記チャンバー内が第2のガスで満たされた状態で、乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行う乾燥工程と、を実施するものであることを特徴とするプログラムである。
【0021】
本発明のプログラムにおいては、前記基板処理方法が、前記基板処理工程と前記乾燥工程との間で、前記第2ガス供給工程時にリンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するリンス工程を更に実施するものであることが好ましい。
【0022】
本発明は、基板処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、当該プログラムを実行することにより、前記制御コンピュータが前記基板処理装置を制御して基板処理方法を実行させるものにおいて、前記基板処理方法が、第1ガス供給部から第1のガスをチャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たす第1ガス供給工程と、前記チャンバー内が第1のガスで満たされた状態で、処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に前記チャンバーから排出される処理液を処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻す基板処理工程と、第2ガス供給部から第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内の第1のガスを第2のガスに置換する第2ガス供給工程と、前記チャンバー内が第2のガスで満たされた状態で、乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行う乾燥工程と、を実施するものであることを特徴とする記録媒体である。
【0023】
本発明の記録媒体においては、前記基板処理方法が、前記基板処理工程と前記乾燥工程との間で、前記第2ガス供給工程時にリンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するリンス工程を更に実施するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の基板処理方法、基板処理装置、プログラムならびに記録媒体によれば、基板処理工程において処理液を繰り返し使用した場合であっても被処理基板に対する処理が悪化することなく、しかも乾燥後の被処理基板の表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、基板としての半導体ウェハW(以下、「ウェハ」という。)の表面をエッチングしてその後洗浄するような基板処理装置に基づいて説明する。図1に示すように、本実施の形態にかかる基板処理装置1のチャンバー2内には、略円板形のウェハWを略水平に保持するスピンチャック3が備えられている。また、ウェハWにエッチング用の薬液として例えばHF液(フッ酸水)を供給する薬液ノズルとしての、また、リンス液として例えば純水(DIW)を供給するリンス液ノズルとしてのノズル5が備えられている。このノズル5は、ノズルアーム6によって支持されている。さらに、リンス液である純水より揮発性が高い乾燥用流体としてIPA(イソプロピルアルコール)液等を供給する乾燥用流体ノズル12と、乾燥用ガスとして例えば窒素(N)ガス等の不活性ガスを供給する乾燥用ガスノズルとしての不活性ガスノズル13とが備えられている。乾燥用流体ノズル12と不活性ガスノズル13は、乾燥用ノズルアーム15によって支持されている。また、スピンチャック3によって保持されたウェハWの周囲の雰囲気の湿度、すなわちチャンバー2内(処理空間S中)の雰囲気の湿度を調節可能な湿度調節機構16が設けられている。基板処理装置1の各部の制御は、CPUを備えた制御部としての制御コンピュータ17の命令によって行われる。なお、本実施の形態の基板処理装置1においては、同一のチャンバー2内でエッチング処理と乾燥処理の両方を行うことができるようになっている。
【0026】
図2に示すように、チャンバー2には、チャンバー2内の処理空間SにウェハWを搬入出させるための搬入出口18、および搬入出口18を開閉するシャッター18aが設けられている。この搬入出口18を閉じることにより、ウェハWの周囲の雰囲気、すなわち処理空間Sを密閉状態にすることが可能である。なお、搬入出口18の外側は、ウェハWを搬送する搬送エリア20になっており、搬送エリア20には、ウェハWを一枚ずつ保持して搬送する搬送アーム21aを有する搬送装置21が設置されている。また、図1に示すように、チャンバー2の底面には、処理空間Sの排気を行う排気路24およびチャンバー2内のHF液を排液する排液路28が開口されている。この排液路28はHF液回収ライン29に接続されている。具体的には、排液路28にはミストトラップ29aが接続されており、このミストトラップ29aの下流側においてHF液回収ライン29にポンプ29bが介設されている。このポンプ29bは、チャンバー2からミストトラップ29a内に送られたHF液を後述するHF液タンク43に搬送するようになっている。また、HF液回収ライン29においてミストトラップ29aとポンプ29bとの間に三方弁29dが介設されており、この三方弁29dからドレン管29cが分岐するようになっている。そして、当該三方弁29dで切り換えを行うことにより、ミストトラップ29a内においてポンプ29bにより回収されない排液はドレン管29cによりドレンされるようになっている。なお、ポンプ29bの駆動は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0027】
図1および図2に示すように、スピンチャック3は、上部に3個の保持部材3aを備えており、これらの保持部材3aをウェハWの周縁3箇所にそれぞれ当接させてウェハWを略水平に保持するようになっている。スピンチャック3の下部には、スピンチャック3を略垂直方向の回転中心軸を中心として回転させるモータ25が取り付けられている。このモータ25の駆動により、スピンチャック3を回転させると、ウェハWがスピンチャック3と一体的に、ウェハWの略中心Poを回転中心として、略水平面内で回転させられるようになっている。図示の例では、ウェハWの上方からみた平面視において、ウェハWは反時計方向(CCW)の回転方向に回転させられる。モータ25の駆動は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0028】
ノズルアーム6は、スピンチャック3に支持されたウェハWの上方に備えられている。
ノズルアーム6の基端部は、略水平に配置されたガイドレール31に沿って移動自在に支持されている。また、ガイドレール31に沿ってノズルアーム6を移動させる駆動機構32が備えられている。駆動機構32の駆動により、ノズルアーム6は、スピンチャック3に支持されたウェハWの上方とウェハWの周縁より外側(図1においては左側)との間で移動することができる。また、ノズルアーム6の移動に伴って、ノズル5がウェハWの略中心部上方から周縁部上方に向かってウェハWと相対的に移動するようになっている。駆動機構32の駆動は制御コンピュータ17によって制御される。
【0029】
ノズル5は、ノズルアーム6の先端下面に固定された昇降機構35の下方に突出する昇降軸36の下端に取り付けられている。昇降軸36は、昇降機構35により昇降自在になっており、これにより、ノズル5が任意の高さに昇降されるようになっている。昇降機構35の駆動は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0030】
ノズル5には、HF液を供給する薬液供給源41が、薬液供給路42およびHF液タンク43を介して接続されている。具体的には、HF液タンク43には薬液供給源41およびリンス液(DIW)供給源47がそれぞれ開閉弁41a、47aを介して接続されており、薬液供給源41からHF液がHF液タンク43に送られるとともにリンス液供給源47からDIWがHF液タンク43に送られるようになっている。そして、HF液タンク43には薬液供給路42が接続されており、この薬液供給路42に介設されたポンプ44によりHF液タンク43からHF液が引き抜かれるようになっている。薬液供給路42は途中で分岐しており、一方の分岐先は開閉弁42aを介してノズル5に連通している。また、他方の分岐先は再びHF液タンク43に戻るようになっている。また、HF液回収ライン29において、ミストトラップ29aからもHF液がポンプ29bによりHF液タンク43に戻されるようになっている。さらに、ノズル5には、DIWを供給するリンス液(DIW)供給源47に接続されたリンス液供給路48が接続されている。このリンス液供給路48には開閉弁48aが介設されている。各開閉弁41a、42a、47a、48aの開閉動作は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0031】
ここで、制御コンピュータ17により開閉弁42aが閉じられているときには、ポンプ44によりHF液タンク43から引き抜かれたHF液は薬液供給路42を経て再びHF液タンク43に戻されるようになっており、このようにしてHF液の循環が行われる。一方、制御コンピュータ17により開閉弁42aが開かれたときには、ポンプ44によりHF液タンク43から引き抜かれたHF液はノズル5に送られることとなる。ポンプ44の駆動は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0032】
乾燥用ノズルアーム15は、スピンチャック3に支持されたウェハWの上方に設けられている。乾燥用ノズルアーム15の基端部は、略水平に配置されたガイドレール51に沿って移動自在に支持されている。また、ガイドレール51に沿って乾燥用ノズルアーム15を移動させる駆動機構52が備えられている。駆動機構52の駆動により、乾燥用ノズルアーム15は、ウェハWの上方とウェハWの周縁より外側(図1においては右側)との間で移動することができる。また、乾燥用ノズルアーム15の移動に伴って、乾燥用流体ノズル12および不活性ガスノズル13がウェハWの略中心部上方から周縁部上方に向かってウェハWと相対的に移動するようになっている。駆動機構52の駆動は制御コンピュータ17によって制御される。
【0033】
乾燥用ノズルアーム15の先端下面には、昇降軸54を備えた昇降機構55が固定されている。昇降軸54は、昇降機構55の下方に突出するように配置されており、この昇降軸54の下端に、乾燥用流体ノズル12および不活性ガスノズル13が取り付けられている。昇降軸54は昇降機構55の駆動により伸縮し、これにより、乾燥用流体ノズル12および不活性ガスノズル13が一体的に昇降させられるようになっている。昇降機構55の駆動は、制御コンピュータ17によって制御される。すなわち、制御コンピュータ17の命令により、駆動機構52の駆動を制御して乾燥用ノズルアーム15、乾燥用流体ノズル12および不活性ガスノズル13を水平方向に移動させるとともに、昇降機構55の駆動を制御して、乾燥用流体ノズル12および不活性ガスノズル13の高さを調節するようになっている。
【0034】
乾燥用流体ノズル12と不活性ガスノズル13は、ウェハWの中心と周縁右端部とを結ぶ略半径方向に向かう直線に沿って、ウェハWの上方において並ぶように設けられている。また、不活性ガスノズル13は、図1において乾燥用流体ノズル12の左側に設けられている。すなわち、乾燥用ノズルアーム15の移動により、乾燥用流体ノズル12が図1において中心PoからウェハWの周縁部右側に向かう移動方向Dに沿って移動するとき、不活性ガスノズル13は、移動方向Dにおいて乾燥用流体ノズル12の後方、すなわち、平面視において、中心Poと乾燥用流体ノズル12との間に配置されながら、乾燥用流体ノズル12を追従して移動するような構成になっている。
【0035】
乾燥用流体ノズル12には、IPA液を貯溜するタンク等の流体供給源66に接続された流体供給路67が接続されている。流体供給路67には開閉弁68が介設されている。
開閉弁68の開閉動作は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0036】
不活性ガスノズル13には、不活性ガス(N)供給源71に接続された不活性ガス供給路72が接続されている。不活性ガス供給路72には開閉弁73が介設されている。開閉弁73の開閉動作は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0037】
次に、湿度調節機構16について説明する。図1に示すように、湿度調節機構16は、処理空間Sに湿度調節用ガス(空気)としてクリーンエア(清浄空気)またはCDA(Clean Dried Air:クリーンドライエア(低露点清浄空気))を吹き込むガス供給チャンバー91と、ガス供給チャンバー91に湿度調節用ガスを供給する湿度調節用ガス供給ライン92を備えている。なお、湿度調節機構16は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0038】
ガス供給チャンバー91は、チャンバー2の天井部、すなわち、スピンチャック3によって保持されたウェハWの上方に配置されている。図3に示すように、ガス供給チャンバー91の下面には、ガス供給チャンバー91の内部から湿度調節用ガスを吐出させる複数のガス吐出口91aが、下面全体に均等に分布した状態で設けられている。すなわち、スピンチャック3によって保持されたウェハWの表面全体に、複数のガス吐出口91aが均等に対向するように設けられおり、処理空間Sに湿度調節用ガスの整流されたダウンフローが形成されるようになっている。なお、ガス供給チャンバー91の下面を構成する下板91bとしては、例えばパンチング板(パンチングスクリーン)、すなわち、プレス打ち抜き加工によって多数の孔を空けた板を使用しても良く、そのパンチング板に空けられた孔を、ガス吐出口91aとしても良い。
【0039】
ガス供給チャンバー91の側壁には、湿度調節用ガス供給ライン92の下流端部(後述する主供給路101の水平部101a)が接続されている。
【0040】
湿度調節用ガス供給ライン92は、ガス供給チャンバー91を介して湿度調節用ガスを処理空間Sに導入する主供給路101、クリーンエアを供給する湿度調節用ガス供給源であるFFU(Fan Filter Unit:空気清浄機)102、FFU102から供給されるクリーンエアを主供給路101に導入させるクリーンエア供給路103、CDAを供給する湿度調節用ガス供給源(低露点ガス供給源)であるCDA供給源104、およびCDA供給源104から供給されるCDAを主供給路101に導入させるCDA供給路(低露点ガス供給路)105を備えている。主供給路101の上流端部とクリーンエア供給路103の下流端部とは、切換部としての切換ダンパ107を介して互いに接続されている。主供給路101の上流端部とCDA供給路105の下流端部も、切換ダンパ107を介して互いに接続されている。
【0041】
主供給路101は、例えば管状のダクトの内部流路であり、略水平方向に沿って延設された水平部101aと略鉛直方向に沿って延設された鉛直部101bとを有する略L字型に形成されている。水平部101aの先端部は、ガス供給チャンバー91の側壁に開口されている。鉛直部101bの上端部は、切換ダンパ107(後述する筐体121の下面)に開口されている。
【0042】
FFU102は、チャンバー2の外部上方に配設されており、例えば、基板処理装置1が配置されているクリーンルームの天井部、あるいは、基板処理装置1が内蔵されている処理システムの天井部等に設置されている。図示の例では、搬送エリア20の天井部に設置されている。なお、図示はしないが、FFU102の内部には、空気を送風する送風機、空気を清浄化してクリーンエアにするフィルタ等が設けられている。また、FFU102の下面には、整流板、クリーンエアを吐出する複数のクリーンエア吐出口等が設けられており、FFU102の下面からは、整流されたクリーンエアが吐出され、クリーンエアのダウンフローが形成されるようになっている。
【0043】
FFU102の下方には、FFU102から供給されるクリーンエアを受け止めてクリーンエア供給路103に取り込むための取り込み用カップ110が備えられている。この取り込み用カップ110は、上面が開口部110aとなっており、開口部110aをFFU102の下面に対向させるようにして設置されている。取り込み用カップ110の下面には、クリーンエア供給路103の上流端部が接続されている。また、取り込み用カップ110の一側壁の上縁部とFFU102の下面との間には、取り込み用カップ110内からクリーンエアを排出するクリーンエア排出口としての隙間111が形成されている。
【0044】
クリーンエア供給路103は、例えば管状のダクトの内部流路であり、取り込み用カップ110の下面から下方に向かって、略鉛直方向に沿って真っ直ぐに延設されている。クリーンエア供給路103の下流端部は、切換ダンパ107の上面(後述する筐体121の上面)に接続されている。なお、クリーンエア供給路103の下流端部と前述した主供給路101の鉛直部101bの上流端部とは、切換ダンパ107の内部(後述するクリーンエア供給路接続室123)を挟んで、互いに対向するように設けられており、クリーンエア供給路103と鉛直部101bは、互いにほぼ同一の鉛直線上に並ぶように設けられている。
【0045】
CDA供給源104としては、例えば、CDAを圧縮した状態で内部に貯蔵したボンベ等が使用される。なお、CDAは、例えば圧縮空気中の有機物、水分等の不純物を吸着剤や触媒を充填した精製器等を用いて精製(除去)することにより得られる乾燥した空気であって、その湿度は、通常の空気(大気)やFFU102から供給されるクリーンエアの湿度と比較して、大幅に低減されている。すなわち、通常の空気やクリーンエアよりも露点温度が低くなっている。CDA供給源104から供給するCDAの露点温度は、例えば約−40℃以下程度であれば良く、さらに好ましくは、約−110℃〜−120℃程度であることが望ましい。
【0046】
CDA供給路105には、上流側(CDA供給源104側)と下流側(切換ダンパ107側)とを遮断する状態と連通させる状態とを切り換え可能な開閉弁112が介設されている。CDA供給路105の下流端部は、切換ダンパ107に接続されている。開閉弁112の開閉動作は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0047】
図4および図5に示すように、切換ダンパ107は、筐体121と、筐体121内においてクリーンエア供給路103の下流端部開口を開閉する略平板状の可動部材122とを備えている。
【0048】
筐体121は、例えば略直方体状をなしており、クリーンエア供給路103の端部が接続されているクリーンエア供給路接続室123と、CDA供給路105の端部が接続されているCDA供給路接続室124とを備えている。クリーンエア供給路接続室123とCDA供給路接続室124は、互いに横に隣接するように並べて設けられており、また、互いに連通させられている。図示の例では、筐体121内の空間のうち、右半分(筐体121の内側面121c側)がクリーンエア供給路接続室123となっており、残りの左半分(内側面121cおよびクリーンエア供給路接続室123と対向する内側面121d側)がCDA供給路接続室124になっている。
【0049】
クリーンエア供給路接続室123において、筐体121の上面(天井面)121aには、クリーンエア供給路103の下流端部が開口されており、筐体121の下面(底面)121bには、主供給路101(鉛直部101b)の上流端部が開口されている。すなわち、クリーンエア供給路103の端部は、主供給路101の端部の上方、かつ、主供給路101の端部とクリーンエア供給路接続室123を挟んで対向する位置に設けられており、主供給路101の端部に向かってクリーンエアを吐出する方向に指向している。
【0050】
可動部材122は、クリーンエア供給路接続室123内に設けられており、回転中心軸126を介して、筐体121に対して回転可能に支持されている。回転中心軸126は、クリーンエア供給路接続室123における筐体121の上面121a側において、クリーンエア供給路103の端部の側方(内側面121c側)に配置されており、可動部材122の縁部を支持している。可動部材122は、この回転中心軸126を回転中心として回転することにより、可動部材122の一側面(上面)をクリーンエア供給路103の端部に対して近接および離隔させることができる。具体的には、可動部材122は、上面121aに沿って横向きに配置され、クリーンエア供給路103の端部を可動部材122の一側面によって閉塞する閉塞位置P1(図4)と、クリーンエア供給路103の端部から離隔して、クリーンエア供給路103の端部を開口させる開放位置P2(図5)との間で移動することができる。開放位置P2に配置された状態では、可動部材122は、回転中心軸126の下方において、内側面121cに沿うように、縦向きにして配置させられる。
かかる可動部材122の回転動作、すなわち、クリーンエア供給路103を主供給路101に対して連通させる状態と遮断させる状態とを切り換える動作は、制御コンピュータ17によって制御される。
【0051】
CDA供給路接続室124は、筐体121の内側面121d側に設けられている。CDA供給路接続室124内には、CDA供給路105の下流端部側が、筐体121の下面121bを上下に貫通するようにして挿入されており、CDA供給路105の下流端部は、内側面121dに対向するようにして開口され、内側面121dに向かってCDAを吐出する方向に指向している。すなわち、切換ダンパ107の内部において、CDA供給路105の端部は、主供給路101の端部と対向しない位置に設けられており、主供給路101の端部とは異なる位置に向かってCDAを吐出する方向に指向している。このようにすると、CDA供給路105の端部をクリーンエア供給路接続室123側に指向させる場合や、主供給路101の端部に向かってCDAを吐出するように指向させる場合よりも、CDA供給路105の端部から吐出されるCDAの流れの勢いを弱めることができる。
【0052】
次に、制御コンピュータ17について説明する。図1に示すように、基板処理装置1の各機能要素は、基板処理装置1全体の動作を自動制御する制御コンピュータ17に、信号ラインを介して接続されている。ここで、機能要素とは、例えば前述したモータ25、ポンプ29b、44、駆動機構32、昇降機構35、駆動機構52、昇降機構55、開閉弁41a、42a、47a、48a、68、73、切換ダンパ107、開閉弁112等の、所定のプロセス条件を実現するために動作する総ての要素を意味している。制御コンピュータ17は、典型的には、実行するソフトウェアに依存して任意の機能を実現することができる汎用コンピュータである。
【0053】
図1に示すように、制御コンピュータ17は、CPU(中央演算装置)を備えた演算部17aと、演算部17aに接続された入出力部17bと、入出力部17bに挿着され制御ソフトウェアを格納した記録媒体17cと、を有する。この記録媒体17cには、制御コンピュータ17によって実行されることにより基板処理装置1に後述する所定の基板処理方法を行わせる制御ソフトウェアが記録されている。制御コンピュータ17は、該制御ソフトウェアを実行することにより、基板処理装置1の各機能要素を、所定のプロセスレシピにより定義された様々なプロセス条件(例えば、モータ25の回転数等)が実現されるように制御する。なお、該制御ソフトウェアに基づいた基板処理方法には、後に詳細に説明するように、エッチング工程、リンス工程、および乾燥工程が含まれており、これらの工程を行う制御が順次行われるようになっている。
【0054】
記録媒体17cは、制御コンピュータ17に固定的に設けられるもの、あるいは、制御コンピュータ17に設けられた図示しない読み取り装置に着脱自在に装着されて該読み取り装置により読み取り可能なものであっても良い。最も典型的な実施形態においては、記録媒体17cは、基板処理装置1のメーカーのサービスマンによって制御ソフトウェアがインストールされたハードディスクドライブである。他の実施形態においては、記録媒体17cは、制御ソフトウェアが書き込まれたCD−ROMまたはDVD−ROMのような、リムーバブルディスクである。このようなリムーバブルディスクは、制御コンピュータ17に設けられた図示しない光学的読取装置により読み取られる。また、記録媒体17cは、RAM(random access memory)またはROM(read only memory)のいずれの形式のものであっても良い。さらに、記録媒体17cは、カセット式のROMのようなものであっても良い。要するに、コンピュータの技術分野において知られている任意のものを記録媒体17cとして用いることが可能である。なお、複数の基板処理装置1が配置される工場においては、各基板処理装置1の制御コンピュータ17を統括的に制御する管理コンピュータに、制御ソフトウェアが格納されていても良い。この場合、各基板処理装置1は、通信回線を介して管理コンピュータにより操作され、所定のプロセスを実行する。
【0055】
次に、以上のように構成された基板処理装置1を用いたウェハWの処理方法について説明する。この処理方法の概要について簡単に説明すると、まずチャンバー2内に比較的湿度の高いクリーンエアを満たした状態でウェハWを回転させながら当該ウェハWの表面に薬液供給源41からHF液を供給してこのウェハWの表面のエッチング処理を行う。次にチャンバー2内の雰囲気をクリーンエアからCDAに置換して処理空間S内の湿度を大幅に減少させ、その後、ウェハWを回転させながら当該ウェハWの表面に純水を供給することによりリンス処理を行う。そして、チャンバー2内にCDAを満たした状態でウェハWを回転させながら当該ウェハWの表面に流体供給源66からIPA液を供給してこのウェハWの表面にIPA液膜を形成し、最後にウェハWの回転を続けながら当該ウェハWの表面にIPA液および窒素ガスを供給してこのウェハWの表面の乾燥を行う。ここで、ウェハWの表面に対するIPA液膜の形成およびその後のウェハWの表面の乾燥をまとめて「乾燥処理」という。
【0056】
次に、上記処理方法の各工程について詳述する。
【0057】
まず、ガス供給チャンバー91から比較的湿度が高いクリーンエアをチャンバー2内に供給する場合について説明する。このようなクリーンエアのチャンバー2内への供給は、ウェハWに対するエッチング処理の前段階およびその最中に行われる。この場合は、制御コンピュータ17の制御命令によって、切換ダンパ107の可動部材122を開放位置P2(図5参照)に配置させ、かつ、開閉弁112は閉じた状態にする。すなわち、FFU102およびクリーンエア供給路103を主供給路101に対して連通させ、かつ、CDA供給源104およびCDA供給路105を主供給路101から遮断させた状態にする。
【0058】
かかる状態においては、FFU102から送出されたクリーンエアは、開口部110aを通じて取り込み用カップ110内に流入し、取り込み用カップ110からクリーンエア供給路103を通じて、切換ダンパ107のクリーンエア供給路接続室123に導入される。そして、クリーンエア供給路接続室123から主供給路101を通じて、ガス供給チャンバー91内に導入される。そして、複数のガス吐出口91aを通って整流されながら下向きに吐出される。こうして、FFU102から供給されたクリーンエアは、取り込み用カップ110、クリーンエア供給路103、クリーンエア供給路接続室123、主供給路101、ガス供給チャンバー91を順に通過することにより、処理空間S内に導入される。処理空間Sに供給されたクリーンエアは、処理空間S内を下降して、排気路24によって処理空間Sから排気される。こうして、処理空間S内にクリーンエアが供給されながら排気が行われることで、処理空間S内の雰囲気がクリーンエアに置換される。この場合、処理空間S内の雰囲気の露点温度は、例えばクリーンルーム内とほぼ同じになる。
【0059】
次に、ガス供給チャンバー91からCDAをチャンバー2内に供給する場合について説明する。このようなCDAのチャンバー2内への供給は、ウェハWに対するリンス処理の最中、ならびに乾燥処理の最中に行われる。この場合は、制御コンピュータ17の制御命令によって、切換ダンパ107の可動部材122を閉塞位置P1(図4参照)に配置させ、かつ、開閉弁112は開いた状態にする。すなわち、可動部材122によってFFU102およびクリーンエア供給路103を主供給路101から遮断させ、かつ、CDA供給源104およびCDA供給路105を主供給路101に対して連通させた状態にする。
【0060】
かかる状態においては、CDA供給源104から送出されたCDAは、CDA供給路105を通じて、切換ダンパ107のCDA供給路接続室124に導入される。図4に示すように、CDA供給路接続室124においては、CDAは、CDA供給路105の端部から、クリーンエア供給路接続室123とは反対側に位置する内側面121dに向かって、横向きに吐出される。そして、内側面121dに衝突することにより、気流の向きが逆向きに、すなわち、クリーンエア供給路接続室123側に向かうように方向転換させられる。その後、CDAは、CDA供給路接続室124からクリーンエア供給路接続室123に向かって流入し、クリーンエア供給路接続室123の下部に設けられている主供給路101の端部に流入し、主供給路101を通じて、ガス供給チャンバー91内に導入される。
そして、複数のガス吐出口91aを通って整流されながら下向きに吐出される。こうして、CDA供給源104から供給されたCDAは、CDA供給路105、CDA供給路接続室124、クリーンエア供給路接続室123、主供給路101、ガス供給チャンバー91を順に通過することにより、処理空間S内に導入される。処理空間Sに供給されたCDAは、処理空間S内を下降して、チャンバー2の底部に設けられた排気路24によって、処理空間Sから排気される。こうして、処理空間S内にCDAが供給されながら、処理空間Sの排気が行われることで、処理空間S内の雰囲気がCDAに置換され、処理空間S内の湿度が減少する(露点温度が低くなる)。処理空間S内の雰囲気の露点温度は、CDAと同じ露点温度、例えば約−40℃以下程度、好ましくは約−110℃〜−120℃程度にまで低減される。これにより、後に説明する乾燥処理において、IPA液膜の形成やその後の乾燥を行う際に、IPAに取り込まれる水分の量を低減できる。また、この乾燥処理において、ウェハWに対する乾燥性能を向上させることができる。なお、通常、基板処理装置1等が設置されるクリーンルーム内の温度は常温(約23℃程度)であり、相対湿度は約40%〜45%程度になっているが、処理空間S中の湿度は、かかるクリーンルーム内の相対湿度よりも低減させられる。
【0061】
次に、ウェハWに対するエッチング処理について説明する。まず、搬入出口18を開き、搬送装置21の搬送アーム21aにより、処理空間S内に未だ処理が行われていないウェハWを搬入し、図1に示すようにウェハWをスピンチャック3に受け渡す。ウェハWをスピンチャック3に受け渡すときは、図2において二点鎖線で示すように、ノズルアーム6および乾燥用ノズルアーム15をスピンチャック3の左右に位置する待機位置にそれぞれ退避させておく。
【0062】
ウェハWがスピンチャック3に受け渡されたら、処理空間Sから搬送アーム21aを退出させ、シャッター18aによって搬入出口18を閉じ、モータ25の駆動によりスピンチャックおよびウェハWの回転を開始させ、エッチング処理を開始する。まず、ガス供給チャンバー91からクリーンエアをチャンバー2内に供給させ、このチャンバー2内をクリーンエアで満たされた状態とする。そして、この状態でノズルアーム6をウェハWの上方に移動させ(図2において一点鎖線)、ノズル5をウェハWの中心Po上方に配置する。そして、開閉弁42aを開き、薬液供給路42からHF液をノズル5に送液させ、回転するウェハWの中心Poに向かって、ノズル5からHF液を供給する。中心Poに供給されたHF液は、遠心力によりウェハWの表面全体に拡散し、当該HF液によってウェハWの表面をエッチング処理する。この際に、チャンバー2内にあるHF液は排液路28から排液されるが、排液されたHF液はミストトラップ29aに送られ、ポンプ29bによりHF液タンク43に戻される。このようにして、HF液は回収されて再利用される。なお、このエッチング処理が行われると、ウェハWの表面の疎水性が、エッチング処理前よりも強められる。
【0063】
開閉弁42aを閉じ、エッチング液処理が終了したら、リンス処理を行う。リンス処理においては、まず、ガス供給チャンバー91からCDAをチャンバー2内に供給させ、このチャンバー2内の雰囲気をクリーンエアからCDAに置換する。そして、ウェハWを回転させながら、開閉弁48aを開きノズル5からウェハWの中心Poに向かって純水を供給する。中心Poに供給された純水は、遠心力によりウェハWの表面全体に拡散させられる。ウェハWの表面に付着していたHF液は、純水によってウェハWから洗い流される。
ウェハWが純水によって十分にリンス処理されたら、開閉弁48aを閉じノズル5からの純水の供給を停止させ、ノズルアーム6をウェハWの上方から退避させ、待機位置に戻す。
【0064】
かかるリンス処理の後、チャンバー2内がCDAで満たされた状態で、ウェハWを乾燥させる乾燥処理を行う。具体的には、まず、ウェハWにIPA液の液膜を形成するIPA液膜形成処理を行い、その後、IPA液および窒素ガスによりウェハWの乾燥を行う。
最初に、IPA液膜形成処理について以下に詳述する。まず、乾燥用ノズルアーム15をウェハWの上方に移動させ(図2において一点鎖線)、乾燥用流体ノズル12をウェハWの中心Po上方に配置する。そして、図6に示すように、ウェハWをスピンチャック3によって回転させながら、乾燥用流体ノズル12からウェハWの中心Poに向かってIPA液を供給する。中心Poに供給されたIPA液は、遠心力によりウェハWの表面全体に拡散させられ、ウェハWの表面全体にIPA液が液膜状に塗布される。
【0065】
このようにウェハWの表面にIPA液の液膜を形成することにより、ウェハWの上面全体において、純水をIPAに置換させることができる。また、ウェハWの表面をIPA液の液膜で覆うことにより、ウェハWの表面、特に上面周縁部が自然乾燥することを防止できる。この場合、ウェハWの表面にパーティクルやウォーターマークが発生することを防止できる。特に、HF液によるエッチング処理によってウェハWの表面の疎水性が強められた場合であっても、パーティクル等の発生を効果的に防止できる。また、大口径のウェハWであっても、ウェハWの周縁部付近に発生するパーティクル(薬液などの析出によって生じる筋状のウォーターマーク等)を抑制することができる。
【0066】
こうして、ウェハWの表面にIPA液の液膜を形成した後、ウェハWにIPA液と窒素ガスを供給してウェハWを乾燥させる。まず、乾燥用流体ノズル12と不活性ガスノズル13をウェハWの中心Po上方近傍に配置した状態において、乾燥用流体ノズル12からのIPA液の供給、および、不活性ガスノズル13からの窒素ガスの供給を開始する。そして、スピンチャック3によってウェハWを回転させながら、IPA液と窒素ガスを供給しつつ、乾燥用ノズルアーム15を移動させる。これにより、乾燥用流体ノズル12と不活性ガスノズル13が乾燥用ノズルアーム15と一体的に移動方向Dに移動させられ、図7に示すように、ウェハの表面における乾燥用流体ノズル12からのIPA液の供給位置Sfと、不活性ガスノズル13からの窒素ガスの供給位置Snとが、移動方向Dに沿って、ウェハWの中心Poから周縁までの問をスキャンするように移動させられる。このように、ウェハWを回転させながら、IPA液の供給位置Sfと窒素ガスの供給位置Snとを少なくともウェハWの中心Poから周縁部まで移動させることにより、ウェハWの表面全体にIPA液と窒素ガスを供給する。
【0067】
回転するウェハWの表面に供給されたIPA液は、遠心力によってウェハWの外周側に向かって流れる。また、IPA液の供給位置SfがウェハWの中心Po側から周縁部側に向かって移動する間、不活性ガスノズル13から供給された窒素ガスは、IPA液の供給位置Sfよりも常にウェハWの中心Po側において、供給位置Sfに隣接した供給位置Snに供給される。また、窒素ガスの供給位置Snは、中心Poと供給位置Sfとの間に配置されながら、供給位置Sfを追従するように、中心Po側から周縁部側に移動させられる。
【0068】
このように、供給位置Sfに対して中心Po側に隣接した供給位置Snに窒素ガスを供給することで、ウェハWの表面に供給されたIPA液がすぐに窒素ガスによって押し流され、ウェハWの乾燥が促進させられる。また、ウェハWの表面をむらなく効率的に乾燥させることができる。さらに、ウォーターマークの発生原因である酸素濃度も低くできるため、ウォーターマークの発生を防止できる。また、IPAと純水との揮発性の差から生じるパーティクルの発生を防止でき、ウェハWの品質を向上させることができる。
【0069】
IPA液の供給位置SfをウェハWの周縁まで移動させたら、乾燥用流体ノズル12からのIPA液の供給を停止させる。そして、窒素ガスの供給位置SnをウェハWの周縁まで移動させたら、不活性ガスノズル13からの窒素ガスの供給を停止させる。こうして、乾燥処理が終了する。
【0070】
乾燥処理の後、スピンチャック3の回転を停止させてウェハWを静止させ、搬入出口18を開き、搬送アーム21aをチャンバー2内に進入させ、ウェハWをスピンチャック3から受け取り、チャンバー2から搬出する。また、開閉弁112を閉じ、チャンバー2内へのCDAの供給を停止させるとともに、FFU102からクリーンエアをチャンバー2内へ供給させ、チャンバー2内の雰囲気をCDAからクリーンエアに置換する。こうして、基板処理装置1におけるウェハWの一連の処理が終了する。
【0071】
以上のように本実施の形態の基板処理装置1およびこの基板処理装置1による基板処理方法によれば、まず、FFU102から比較的湿度の高いクリーンエアをチャンバー2内に供給してこのチャンバー2内にクリーンエアを満たした状態でHF液をチャンバー2内のウェハWの表面に供給して当該ウェハWの表面のエッチング処理を行い、この際に、チャンバー2から排出されるHF液をHF液回収ライン29によりHF液タンク43に戻すようにしている。そして、その後、CDA供給源104から湿度の低いCDAをチャンバー2内に供給してこのチャンバー2内にCDAを満たした状態で流体供給源66からIPA液をチャンバー2内のウェハWの表面に供給することによりこのウェハWの表面の乾燥を行うようにしている。
【0072】
上述のようなウェハWの処理を行うことにより、エッチング工程において、ウェハWのエッチング処理に使用されたHF液は回収されて再利用されるようになっているが、チャンバー2内が比較的湿度の高いクリーンガスで満たされているので、このHF液を繰り返し使用しても当該HF液中の水分が蒸発することが抑制され、このHF液の濃度が大幅に上昇することはない。このため、エッチング工程においてHF液を繰り返し使用してもウェハWに対するエッチングレートが徐々に大きくなることはなく、繰り返し使用されたHF液により処理されるウェハWに対してエッチングが過剰に行われることを防止することができる。また、乾燥工程において、チャンバー2内の雰囲気がクリーンガスから湿度の低いCCDに置換されるので、ウェハWの表面に供給されるIPA液に水分が溶け込むことを抑制することができ、乾燥後のウェハWの表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができる。さらに、チャンバー2内が湿度の低いCCDで満たされた状態でウェハWに対して乾燥処理を行うので、ウェハWの乾燥をより促進させることができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態の一例を示したが、本発明はここで説明した形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上述の実施形態においては、エッチング液としてフッ酸水(HF)を用いる場合について説明したが、代わりにエッチング液としてフッ化アンモニウムを含む液体を用いることもできる。この場合、フッ化アンモニウムを含む液体も、フッ酸水と同様に、乾燥したガスにより蒸発するような成分(水分)を含む液体であるので、エッチング液としてフッ酸水(HF)を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、エッチング液としてフッ化アンモニウムを含む液体を用いた場合においても、フッ酸水をエッチング液として用いた場合と同様に、エッチング工程においてエッチング液を繰り返し使用した場合であってもウェハWに対する処理が悪化することなく、しかも乾燥後のウェハWの表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができる。
【0075】
また、湿度調節機構16の構成は、以上の実施形態に示したような、FFU102から供給されるクリーンエアとCDA供給源104から供給されるCDAとを用いて湿度調節を行うものに限定されない。例えば、湿度調節用ガスの水分含有量を任意の値に調節できる水分調節器や、湿度調節用ガスを除湿する除湿機等を備えた構成としても良い。この場合、水分含有量が調節された状態の湿度調節用ガスを処理空間Sに導入して、処理空間S内の雰囲気を置換させることにより、処理空間S内の湿度を任意の値に調節できる。
【0076】
また、湿度調節用ガスとして用いられる気体は、空気(クリーンエア、CDA)には限定されない。例えばクリーンエアに代えて他のガスを用いても良く、CDAに代えて他の低露点ガスを用いても良い。例えば、窒素ガス等の不活性ガスであっても良い。
また、例えば、清浄化した(通常の露点温度の)不活性ガスと清浄化した低露点の不活性ガスとを、湿度調節用ガスとして選択的に供給できるようにしても良い。また、以上の実施形態では、同一の種類の気体(空気)であるクリーンエアとCDAを湿度調節用ガスとして用いる形態としたが、互いに異なる種類であり、かつ、互いに異なる露点温度を有する気体を、湿度調節用ガスとして用いても良い。例えば、FFUから供給されるクリーンエアを第一の湿度調節用ガスとし、CDAに代えて低露点の窒素ガスを第二の湿度調節用ガスとして用いても良い。
【0077】
乾燥処理において供給されるIPAを含む流体は、液体状のもののほか、ミスト状(霧状)、噴流、気体状のものなどであっても良い。例えば、IPA液のミスト、IPA溶液のミスト、IPA蒸気、または、IPA溶液の蒸気(IPA蒸気と水蒸気が混合した混合蒸気)などを、IPAを含む流体として使用しても良い。さらに、IPA液のミスト、IPA溶液のミスト、IPA蒸気、または、IPA溶液の蒸気などに、窒素ガスなどの気体を混合させたものを、IPAを含む流体として使用しても良い。このようなIPAを含む流体を使用する場合も、処理空間Sの湿度を減少させることで、IPAに水分が取り込まれることを防止できる。IPAを含む流体を供給するためのノズルとしては、二流体ノズルを用いても良い。
【0078】
また、ウェハWの表面の乾燥を行う乾燥用流体として、IPAを含む流体以外の、他の有機溶剤を使用してもよい。具体的には、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等を用いることができる。
【0079】
また、上述の実施形態においては、処理液によるウェハWの処理の一例としてエッチング処理について説明したが、代わりにポリマー除去液を用いてポリマー除去処理を行う場合についても同様のことがいえる。すなわち、エッチング液の代わりにポリマー除去液を用い、エッチング処理を行う代わりにポリマー除去処理を行う場合においても、ポリマー除去工程においてポリマー除去液を繰り返し使用してもこのポリマー除去液中の水分が大きく蒸発することはない。このため、ポリマー除去工程においてポリマー除去液を繰り返し使用しても被処理基板に対する処理が悪化することはない。
【0080】
なお、この場合、ポリマー除去液としては、アミン系の薬液が用いられる。このアミン系の薬液は、乾燥したガスにより蒸発するような成分を含む液体である。
【0081】
さらに、以上の実施形態では、ウェハWをスピンチャック3によって保持して一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置1を例示したが、本実施形態は、複数枚のウェハWを一括して処理するバッチ式の処理装置に応用することもできる。また、基板は半導体ウェハに限らず、その他のLCD基板用ガラスやCD基板、プリント基板、セラミック基板などであっても良い。
【実施例】
【0082】
次に、上述のような基板処理方法に係る本実施例について述べる。また、比較の対象として、エッチング工程、リンス工程、乾燥工程等からなる総ての処理工程においてチャンバー内の雰囲気をそれぞれCDA、クリーンエアとした比較例1、2についても説明する。
【0083】
〔本実施例〕
図1乃至図7に示すような基板処理装置1を準備した。この基板処理装置1において、ウェハWに対するエッチング工程、リンス工程および乾燥工程を実施する際に、まず、FFU102から比較的湿度の高いクリーンエアをチャンバー2内に供給した。そして、チャンバー2内にクリーンエアを満たした状態でHF液をチャンバー2内のウェハWの表面に供給して当該ウェハWの表面のエッチング処理を行った。この際に、チャンバー2から排出されるHF液をHF液回収ライン29によりHF液タンク43に戻すようにした。その後、CDA供給源104から湿度の低いCDAをチャンバー2内に供給してチャンバー2内の雰囲気をクリーンエアからCDAに置換して処理空間S内の湿度を大幅に減少させた。その後、ウェハWを回転させながら当該ウェハWの表面に純水を供給することによりリンス処理を行った。そして、チャンバー2内にCDAを満たした状態でウェハWを回転させながらIPA液を当該ウェハWの表面に供給することによりウェハWの表面に液膜を形成し、その後、ウェハWの回転を続けながら当該ウェハWの表面にIPA液および窒素ガスを供給することによりこのウェハWの表面の乾燥を行った。
【0084】
上述のような方法によりウェハWに対して一枚ずつ順次各種処理を行ったときにおける、エッチング工程を行った後の1枚目、25枚目、50枚目、75枚目のウェハWに対するエッチングレート(Etching Rate)〔A/min〕を下表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
本実施例によれば、1枚目のウェハWに対するエッチングレートは37.0A/minであるのに対し、75枚目のウェハWに対するエッチングレートは37.7A/minとなり、エッチングレートの増加は0.7A/minであった。また、乾燥後のウェハWの表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることはなかった。
【0087】
〔比較例1〕
比較例1においても図1乃至図7に示すような基板処理装置1を準備した。この基板処理装置1において、ウェハWに対するエッチング工程、リンス工程および乾燥工程を実施する際に、エッチング工程、リンス工程、乾燥工程等からなる総ての処理工程においてチャンバー内の雰囲気をCDAとし、これ以外の点においては上述の実施例と同様の処理を行った。
【0088】
上述のような方法によりウェハWに対して一枚ずつ順次各種処理を行ったときにおける、エッチング工程を行った後の1枚目、25枚目、50枚目、75枚目のウェハWに対するエッチングレート(Etching Rate)〔A/min〕を下表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
比較例1によれば、1枚目のウェハWに対するエッチングレートは37.8A/minであるのに対し、75枚目のウェハWに対するエッチングレートは39.6A/minとなり、エッチングレートの増加は1.8A/minであった。上述の実施例と比較すると、エッチングレートの増加量が大きかった。なお、乾燥後のウェハWの表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることはなかった。
【0091】
〔比較例2〕
比較例2においても図1乃至図7に示すような基板処理装置1を準備した。この基板処理装置1において、ウェハWに対するエッチング工程、リンス工程および乾燥工程を実施する際に、エッチング工程、リンス工程、乾燥工程等からなる総ての処理工程においてチャンバー内の雰囲気をクリーンエアとし、これ以外の点においては上述の実施例と同様の処理を行った。
【0092】
上述のような方法によりウェハWに対して一枚ずつ順次各種処理を行ったときにおける、エッチング工程を行った後の1枚目、25枚目、50枚目、75枚目のウェハWに対するエッチングレート(Etching Rate)〔A/min〕を下表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
比較例2によれば、1枚目のウェハWに対するエッチングレートは37.0A/minであるのに対し、75枚目のウェハWに対するエッチングレートは37.3A/minとなり、エッチングレートの増加は0.3A/minであった。しかしながら、乾燥後のウェハWについて、一部のウェハWの表面にはパーティクルやウォーターマークが形成されてしまい、所望のウェハWを得ることができない場合があった。
【0095】
〔実験結果について〕
上述のように、まず、チャンバー2内にクリーンエアを満たした状態でエッチング処理を行い、その後、チャンバー2内の雰囲気をクリーンエアからCDAに置換した後に乾燥処理を行うようにした場合には、エッチング工程においてエッチング液を繰り返し使用した場合であってもウェハWに対するエッチングレートが増加する傾向はなく、しかも乾燥後のウェハWの表面にパーティクルやウォーターマークが形成されることを防止することができることがわかった。
【0096】
これに対して、エッチング工程、リンス工程、乾燥工程等からなる総ての処理工程においてチャンバー2内の雰囲気をそれぞれCDA、クリーンエアとした場合には、各々、実施例と比較してウェハWに対する処理性能が劣ることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一の実施形態における基板処理装置の概略縦断面図である。
【図2】図1の基板処理装置における処理空間の概略平面図である。
【図3】図1の基板処理装置における湿度調節機構の構成を説明する説明図である。
【図4】図3の湿度調節機構における切換ダンパの構成を示し、クリーンエア供給路と主供給路とが遮断させられている状態を説明する概略縦断面図である。
【図5】図3の湿度調節機構における切換ダンパの構成を示し、クリーンエア供給路と主供給路とが連通させられている状態を説明する概略縦断面図である。
【図6】ウェハにIPA液膜を形成する際の流体ノズルの配置を説明する説明図である。
【図7】ウェハを乾燥する際の流体ノズルと不活性ガスノズルの動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0098】
S 処理空間
W ウェハ
1 基板処理装置
2 チャンバー
3 スピンチャック
3a 保持部材
5 ノズル
6 ノズルアーム
12 乾燥用流体ノズル
13 不活性ガスノズル
15 乾燥用ノズルアーム
16 湿度調節機構
17 制御コンピュータ
17a 演算部
17b 入出力部
17c 記録媒体
18 搬入出口
18a シャッター
20 搬送エリア
21 搬送装置
21a 搬送アーム
24 排気路
25 モータ
28 排液路
29 HF液回収ライン
29a ミストトラップ
29b ポンプ
29c ドレン管
29d 三方弁
31 ガイドレール
32 駆動機構
35 昇降機構
36 昇降軸
41 薬液供給源
41a 開閉弁
42 薬液供給路
42a 開閉弁
43 HF液タンク
44 ポンプ
47 リンス液供給源
47a 開閉弁
48 リンス液供給路
48a 開閉弁
51 ガイドレール
52 駆動機構
54 昇降軸
55 昇降機構
66 流体供給源
67 流体供給路
68 開閉弁
71 不活性ガス供給源
72 不活性ガス供給路
73 開閉弁
91 ガス供給チャンバー
91a ガス吐出口
91b 下板
92 湿度調節用ガス供給ライン
101 主供給路
101a 水平部
101b 鉛直部
102 FFU
103 クリーンエア供給路
104 CDA供給源
105 CDA供給路
107 切換ダンパ
110 取り込み用カップ
110a 開口部
111 隙間
112 開閉弁
121 筐体
121a 上面
121b 下面
121c 内側面
121d 内側面
122 可動部材
123 クリーンエア供給路接続室
124 CDA供給路接続室
126 回転中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス供給部から第1のガスをチャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たす第1ガス供給工程と、
前記チャンバー内が第1のガスで満たされた状態で、処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に前記チャンバーから排出される処理液を処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻す基板処理工程と、
第2ガス供給部から第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内の第1のガスを第2のガスに置換する第2ガス供給工程と、
前記チャンバー内が第2のガスで満たされた状態で、乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行う乾燥工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記処理液はエッチング液であることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチング液はフッ酸水であることを特徴とする請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチング液はフッ化アンモニウムを含む液体であることを特徴とする請求項2記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記処理液はポリマー除去液であることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板処理工程と前記乾燥工程との間で、前記第2ガス供給工程時にリンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するリンス工程を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記乾燥用流体は有機溶剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記有機溶剤はイソプロピルアルコール(IPA)を含む流体であることを特徴とする請求項7記載の基板処理方法。
【請求項9】
被処理基板を収容するためのチャンバーと、
前記チャンバーに処理液を供給する処理液供給部と、
前記チャンバーに乾燥用流体を供給する乾燥用流体供給部と、
前記チャンバーから排出される処理液を回収して前記処理液供給部に戻す処理液回収ラインと、
前記チャンバーに第1のガスおよびこの第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを各々供給する第1ガス供給部および第2ガス供給部と、
前記処理液供給部、前記乾燥用流体供給部、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部の制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1ガス供給部から第1のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たした状態で前記処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に、前記チャンバーから排出される処理液を前記処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻すようにし、その後、前記第2ガス供給部から第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内に第2のガスを満たした状態で前記乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行うよう、前記処理液供給部、前記乾燥用流体供給部、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部の制御を行うことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記処理液はエッチング液であることを特徴とする請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記エッチング液はフッ酸水であることを特徴とする請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記エッチング液はフッ化アンモニウムを含む液体であることを特徴とする請求項10記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記処理液はポリマー除去液であることを特徴とする請求項9記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記チャンバーにリンス液を供給するリンス液供給部を更に備え、
前記制御部は、被処理基板の表面の処理とこの表面の乾燥処理との間で、第2のガスの供給時に前記リンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するよう、前記リンス液供給部の制御も行うようになっていることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記乾燥用流体は有機溶剤であることを特徴とする請求項9乃至14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記有機溶剤はイソプロピルアルコール(IPA)を含む流体であることを特徴とする請求項15記載の基板処理装置。
【請求項17】
基板処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムであって、当該プログラムを実行することにより、前記制御コンピュータが前記基板処理装置を制御して基板処理方法を実行させるものにおいて、
前記基板処理方法が、
第1ガス供給部から第1のガスをチャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たす第1ガス供給工程と、
前記チャンバー内が第1のガスで満たされた状態で、処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に前記チャンバーから排出される処理液を処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻す基板処理工程と、
第2ガス供給部から第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内の第1のガスを第2のガスに置換する第2ガス供給工程と、前記チャンバー内が第2のガスで満たされた状態で、乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行う乾燥工程と、
を実施するものであることを特徴とするプログラム。
【請求項18】
前記基板処理方法が、前記基板処理工程と前記乾燥工程との間で、前記第2ガス供給工程時にリンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するリンス工程を更に実施するものであることを特徴とする請求項17記載のプログラム。
【請求項19】
基板処理装置の制御コンピュータにより実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、当該プログラムを実行することにより、前記制御コンピュータが前記基板処理装置を制御して基板処理方法を実行させるものにおいて、
前記基板処理方法が、
第1ガス供給部から第1のガスをチャンバー内に供給してこのチャンバー内に第1のガスを満たす第1ガス供給工程と、
前記チャンバー内が第1のガスで満たされた状態で、処理液供給部から処理液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面の処理を行い、この際に前記チャンバーから排出される処理液を処理液回収ラインにより前記処理液供給部に戻す基板処理工程と、
第2ガス供給部から第1のガスよりも湿度が低い第2のガスを前記チャンバー内に供給してこのチャンバー内の第1のガスを第2のガスに置換する第2ガス供給工程と、
前記チャンバー内が第2のガスで満たされた状態で、乾燥用流体供給部から乾燥用流体を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給することにより当該被処理基板の表面の乾燥を行う乾燥工程と、
を実施するものであることを特徴とする記録媒体。
【請求項20】
前記基板処理方法が、前記基板処理工程と前記乾燥工程との間で、前記第2ガス供給工程時にリンス液供給部からリンス液を前記チャンバー内の被処理基板の表面に供給して当該被処理基板の表面を洗浄するリンス工程を更に実施するものであることを特徴とする請求項19記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−112971(P2008−112971A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215753(P2007−215753)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】