説明

基板処理方法及び記憶媒体

【課題】低誘電率膜であるSiCOH膜とCu配線との夫々の露出面に炭素の脱落したダメージ層及び酸化物が夫々形成された基板に対してダメージ層を回復させ且つ酸化物を還元すること。
【解決手段】SiCOHを含む層間絶縁膜4とCuを含む配線2との夫々の露出面に炭素の脱落したダメージ層15及び酸フッ化層16が夫々形成されたウエハWに対して、H2ガスの供給とシリコン及び炭素を含むTMSDMAガスの供給とを同一の処理容器51においてこの順番で連続して行うことによって、酸フッ化層16の還元処理及びダメージ層15の回復処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の炭素及び酸素を含む低誘電率膜の露出面に形成されたダメージ層の回復処理を行う基板処理方法及びこの方法が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の多層配線構造を形成する工程において、半導体ウエハ上の例えばSiOCH(シリコン、酸素、炭素及び水素を含む化合物)などからなる層間絶縁膜を介して上下に積層される例えばCuなどの配線層同士を接続する導電層を形成するために、例えば有機物を含むフォトレジスト膜などを利用して、当該層間絶縁膜に対して溝やビアホールからなるダマシン構造の凹部を形成するプラズマエッチング処理を行う場合がある。尚、SiCOH膜は、SiO2膜よりも誘電率が低いため、低誘電率膜と呼ばれている。
【0003】
この層間絶縁膜と下層側の配線層との間には、ウエハの面内において層間絶縁膜に均一な深さの凹部を形成するために、またCu表面へのダメージを抑制するために、例えばSiCN(炭窒化シリコン)膜などのストップ膜が形成される。そして、層間絶縁膜に凹部を形成した後下層側のCu(配線層)を露出させるために、特許文献1に記載されているように、例えばF(フッ素)を含む処理ガスを用いて、前記ストップ膜に対してブレークなどと呼ばれるプラズマエッチング処理が行われる。また、O(酸素)を含む処理ガスのプラズマ処理が行われる場合もある。その後、例えば薬液を用いた洗浄工程を経て、層間絶縁膜に形成された凹部内に導電層が埋め込まれる。
【0004】
ところで、既述のプラズマ処理によって、プラズマに接触した部位における層間絶縁膜には、特許文献2に記載されているように、例えばC(炭素)の脱離によりダングリングボンドが残ったダメージ層が形成される。このダングリングボンドには、その後真空雰囲気あるいは大気雰囲気においてウエハを搬送することによって雰囲気中に僅かに含まれる水分が付着し、Siに例えばOH基などが結合して層間絶縁膜の比誘電率が上昇してしまう場合がある。そこで、層間絶縁膜に凹部を形成した後、例えばプラズマ処理を行うチャンバーとは別の熱処理装置において、ウエハを加熱しながら例えばSiとC(炭素)とを含む有機ガスをウエハに供給し、前記OH基などを例えばメチル基で置換する回復処理を行う手法が知られている。
【0005】
しかし、ストップ膜のエッチング処理により露出したCuには、当該エッチング処理に用いた処理ガス中の例えばOやFが入り込んでいる場合があり、またFを含む堆積物及び既述の水分が表面に付着している場合もある。従って、この凹部に導電層を埋め込むと、導電層の一部が酸化あるいはフッ化して酸化銅やフッ化銅となり、このため導電層の抵抗値が増大し、半導体装置の電気特性が悪化してしまう。また、この酸化銅やフッ化銅の形成されたウエハに対して薬液を用いた洗浄を行うと、これらの酸化銅やフッ化銅が除去されて配線層が薄くなってしまう。更に、フッ化銅やFを含む堆積物と雰囲気中あるいは薬液中の水分との反応によってHF(フッ化水素)が生成し、銅配線が溶出して導電路の断線を引き起こしてしまう。更にまた、水分の付着したウエハに対して既述の回復処理を行うと、回復処理用ガスと当該水分とが反応して例えばシラノールなどの疎水性の生成物が生成するおそれがある。このシラノールは、洗浄処理による除去が困難であり、そのため電気抵抗の増大に繋がってしまう。従って、層間絶縁膜のダメージ部分が少なく、更に配線層中の酸化物が少ない半導体装置を得ようとすると、煩雑な処理が必要になってスループットが低下してしまうおそれがある。
特許文献3及び4には、前記配線層の還元を行う技術などが記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−250861
【特許文献2】特開2007−80850(段落0008)
【特許文献3】特開2006−19601
【特許文献4】特開2009−164471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、炭素及び酸素を含む低誘電率膜のダメージ部分が少なく、金属配線中の酸化物が少ない半導体装置を高いスループットで得るための基板処理方法及びこの方法が記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理方法は、
半導体装置を製造するための基板を処理する方法において、
炭素及び酸素を含む低誘電率膜と表面部が酸化された金属層とが露出し、低誘電率膜の露出面を含む部位に炭素の脱落したダメージ層が形成された基板を収容した処理容器内に還元ガスを供給して、前記金属層の酸化物を還元する工程と、
炭素を含む回復処理用のガスを前記基板に供給して、前記ダメージ層の回復処理を行う工程と、を含み、
前記還元する工程及び前記回復処理を行う工程を共通の処理容器内において連続的に行うことを特徴とする。
【0009】
前記基板は、開口部が形成された前記低誘電率膜と、シリコンを含むストップ膜と、前記金属層とがこの順番で上層側から積層され、
前記還元する工程及び前記回復処理を行う工程の前に、前記開口部を介して酸素及びフッ素を含む処理ガスのプラズマを前記ストップ膜に供給して、当該ストップ膜をエッチングして前記金属層を露出させるエッチング工程を行い、
このエッチング工程は、前記還元処理及び回復処理を行う処理容器とは別の処理容器内において行うことが好ましい。
前記回復処理用のガス及び前記低誘電率膜にシリコンが含まれている場合には、前記還元する工程は、回復処理を行う前に行うことが好ましい。
【0010】
本発明の記憶媒体は、
炭素及び酸素を含む低誘電率膜と表面部が酸化された金属層とが露出し、低誘電率膜の露出面を含む部位に炭素の脱落したダメージ層が形成された基板に対して処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、前記基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、炭素及び酸素を含む低誘電率膜と表面部が酸化された金属層とが露出し、低誘電率膜の露出面を含む部位に炭素の脱落したダメージ層が形成された基板に対して、還元ガスの供給と炭素を含む回復処理用のガスの供給とを共通の処理容器内において行っているので、低誘電率膜のダメージ部分が少なく、金属配線中の酸化物が少ない半導体装置を高いスループットで得ることができる。また、回復処理用のガス及び前記低誘電率膜にシリコンが含まれている場合には、還元処理及び回復処理をこの順番で連続して行っているため、回復処理用のガス中に含まれるシリコンと雰囲気中の水分との反応による疎水性のシラノールの生成を抑えることができ、従って半導体装置の電気抵抗の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基板処理方法が適用される基板の一例を示す縦断面図である。
【図2】前記基板処理方法における処理の流れを示す模式図である。
【図3】前記基板処理方法における処理の流れを示す模式図である。
【図4】前記基板処理方法における処理の流れを示す模式図である。
【図5】前記基板処理方法における処理の流れを示す模式図である。
【図6】前記基板処理方法に用いられる装置の一例を示す縦断面図である。
【図7】前記基板処理方法に用いられる装置の一例を示す縦断面図である。
【図8】前記基板処理方法に用いられる装置の一例を示す平面図である。
【図9】前記基板処理方法が適用される基板の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ウエハの構成]
本発明の実施の形態の基板処理方法を説明する前に、この基板処理方法により処理が行われる、半導体装置を製造するための基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)Wの一例について図1を参照して説明する。
この図1は、ウエハW上に形成された下層側(n番目)の回路層に上層側((n+1)番目)の回路層を積層する様子を示しており、ウエハWの断面の一部を拡大している。この下層側の回路層は、例えばシリコン、炭素、酸素及び水素を含むSiCOHからなる層間絶縁膜1内に、例えばCu(銅)などの金属である配線2が横並びに例えば2箇所に互いに離間して埋め込まれた構成となっている。この配線2(層間絶縁膜1)の上層側には、後述のホール21の深さ寸法をウエハWの面内に亘って均一な深さに形成するために、また当該ホール21内に埋め込まれる有機膜7による配線2の腐食を抑えるために、例えばSiCN(炭窒化シリコン)などのSiを含むストップ膜3が形成されている。尚、配線2は、当該配線2の下層側((n−1)番目)の回路層に埋め込まれた配線(図示せず)に接続されているが、図示を省略している。また、SiCOH膜1と配線2との間には、金属の拡散を抑えるためのバリア膜が形成されているが、図示を省略している。
【0014】
ストップ膜3の上層には、SiCOHからなる低誘電率膜である層間絶縁膜4、例えば酸化シリコンからなる無機膜5及び有機物であるフォトレジスト膜6が下側からこの順番で積層されており、フォトレジスト膜6には、配線2の上方側における層間絶縁膜4に後述のホール21を形成するための開口部6aが形成されている。
【0015】
[処理の流れ]
続いて、前記ウエハWに対して行う処理の流れについて図2〜図5を参照して説明する。先ず、プラズマ処理を行う処理容器内において、例えばCF4ガス、O2(酸素)ガス及びAr(アルゴン)ガスを含む処理ガスをプラズマ化して、このプラズマをウエハWに供給する。このプラズマにより、図2(a)に示すように、フォトレジスト膜6をマスクとして層間絶縁膜4及び無機膜5がエッチングされて、ホール(開口部)21が形成される。このエッチングは、ストップ膜3に対する層間絶縁膜4のエッチング比が大きい(ストップ膜3のエッチング速度よりも層間絶縁膜4のエッチング速度が速い)条件にて行われる。従って、ホール21の深さ位置は、ウエハWの面内においてストップ膜3の上端位置で揃うことになる。
【0016】
次いで、例えばO2ガスをプラズマ化してアッシング処理を行うことにより、フォトレジスト膜6を除去する。続いて、ホール21の内部領域及びウエハWの表面が覆われるように例えば有機膜7を塗布して硬化させ、図2(b)に示すように、この有機膜7の表面に例えば酸化シリコン膜8、反射防止膜9及びフォトレジスト膜10を下側からこの順番で積層する。
【0017】
そして、同図(c)に示すように、例えば2つのホール21、21の上方位置を跨ぐように溝状の開口部が位置するパターン24をフォトレジスト膜10に形成すると共に、例えばFを含む処理ガスのプラズマを用いてパターン24を介して酸化シリコン膜8をエッチングして、フォトレジスト膜10(反射防止膜9)の下層側の有機膜7を露出させる。尚、この反射防止膜9については、例えば膜厚が薄いことから、酸化シリコン膜8と共にエッチングされる。
【0018】
次いで、例えばOを含む処理ガスに切り替えてプラズマエッチング処理を行うと、ウエハWの表面のフォトレジスト膜10が除去されて、既述のパターン24の転写された酸化シリコン膜8が露出する。また、このエッチング処理により、酸化シリコン膜8の下層側において露出した有機膜7は、当該酸化シリコン膜8をマスクとしてエッチングされていく。この有機膜7の表面の高さ位置が例えばホール21の深さ方向において概略中央位置となるまでエッチング処理を行って、続いてFを含む処理ガスによりプラズマエッチング処理を行うと、表面に露出している酸化シリコン膜8、無機膜5及び層間絶縁膜4が除去されていく。そして、図2(d)に示すように、2つのホール21、21の上方側にライン状の溝22が形成されるように、ホール21内において有機膜7の高さ位置と層間絶縁膜4の高さ位置とが揃うように当該層間絶縁膜4のエッチング処理を行う。尚、前記酸化シリコン膜8、無機膜5及び層間絶縁膜4と共に、反射防止膜9もエッチングされて除去される。
【0019】
続いて、図2(e)に示すように、Oを含む処理ガスのプラズマを用いてアッシング処理を行って、ウエハWの表面及びホール21内の有機膜7を除去する。このアッシング処理により、層間絶縁膜4にはホール21と溝22とからなる凹部23が形成される。この時、Oを含むプラズマに層間絶縁膜4が接触すると、当該層間絶縁膜4の表面(露出面)には、Cの脱離したダメージ層15が形成される。尚、既述の図2(d)において溝22を形成する工程においても、プラズマに接触した層間絶縁膜4には同様にダメージ層15が形成されているが、説明を省略している。
【0020】
しかる後、F及びOを含む処理ガスのプラズマを用いて、凹部23(ホール21)の下端位置が配線2の表面に近接するまでストップ膜3のエッチング処理を行う。そして、図2(f)に示すように、例えばCF4ガス、CHF3ガス、CH2F2ガス及びC4F8ガスの少なくとも1種と、O2(酸素)ガス及びCO2(二酸化炭素)ガスの少なくとも1種と、Ar(アルゴン)ガスとを含む処理ガスに切り替えると共に、配線2に対するFの進入(拡散)ができるだけ少なく、且つFを含む堆積物ができるだけ生成しない処理条件において前記処理ガスをプラズマ化して、ストップ膜3のオーバーエッチングを行う。即ち、配線2に対するストップ膜3のエッチング比が大きい(ストップ膜3のエッチング速度が速く、配線2のエッチング速度が遅い)エッチング条件において、ウエハWの面内においてホール21の下端位置が配線2の上端で揃うようにストップ膜3をエッチングする。
【0021】
この時、処理ガスにはFが含まれているので、例えば凹部23内にFを含む堆積物が付着しようとするが、既述のように処理条件を設定しているので、ウエハWの表面(凹部23内)にはFを含む堆積物が堆積しないか、あるいは堆積物の量が極めて少なくなる。また、処理ガスにはOとFとが含まれているので、ストップ膜3のエッチングにより配線2が露出すると、これらのOやFが配線2の表面に入り込んでいき、当該配線2の表面には図3にも示すように、酸化銅やフッ化銅を含む酸フッ化層16が形成される。この酸フッ化層16は、既述のようにウエハW内部にフッ素ができるだけ残らないように処理条件を調整していることから、フッ素の含有量が極めて少なくなる。尚、処理ガスにはFが含まれているので、層間絶縁膜4の上層のSiを含む無機膜5についてもエッチングされて薄くなる。また、既述の図3については、一つのホール21を拡大して描画している。
【0022】
次いで、このウエハWを例えば回復処理を行うための処理容器に例えば真空雰囲気において搬送すると、既述の図3に示すように、当該雰囲気中の水分が配線2(酸フッ化層16)の表面に付着すると共に、雰囲気中の水分がダメージ層15中のSiと反応して例えばSi−OHが生成する。この処理容器において、H2(水素)ガスを供給しながらウエハWを例えば250℃に加熱する還元処理を行うと、図4に示すように、配線2(酸フッ化層16)の表面に付着していた水分が蒸発すると共に、酸フッ化層16が還元されてOやFが排出されていく。
【0023】
そして、既述の還元処理を行った処理容器において、当該還元処理に続いて連続してウエハW(層間絶縁膜4)の回復処理を行う。即ち、ウエハWを例えば150〜300℃に加熱しながらSiとCH3基とを含む回復処理用ガス例えばTMSDMA(N−Trimethylsilyldimethylamine)ガスを供給すると、図5(a)、(b)に示すように、ダメージ層15中の例えばOH基が回復処理用ガスに含まれるCH3基を含む有機物により置換されて、ダメージ層15の回復処理が行われる。
その後、一連の処理を行った基板処理装置からウエハWを外部に搬出し、薬液を用いた洗浄を行った後、例えばスパッタ法により凹部23に金属の拡散を防止するためのバリア膜を介して金属膜を埋め込む。
【0024】
[装置構成]
続いて、既述の処理を行うための基板処理装置の一例について、図6〜図8を参照して説明する。先ず、エッチング処理やアッシング処理などのプラズマ処理を行う平行平板型のプラズマ処理装置70について説明する。このプラズマ処理装置70は、プラズマ処理を行うための処理容器71と、この処理容器71内に設けられ、ウエハWを載置するための載置台30と、この載置台30上のウエハWに対向するように処理容器71の天井面に設けられたガスシャワーヘッドを兼用する上部電極40と、を備えている。
処理容器71の底面の排気口72から伸びる排気管73には、バタフライバルブなどの圧力調整手段74を介して真空ポンプ等を含む真空排気装置75が接続されている。処理容器71の壁面には、ゲートバルブGによって開閉されるウエハWの搬送口76が設けられている。尚、処理容器71は接地されている。
【0025】
載置台30は、下部電極31とこの下部電極31を下方から支持する支持体32とからなり、処理容器71の底面に絶縁部材33を介して配設されている。載置台30の上部には、高圧直流電源35から印加される電圧によってウエハWを載置台30上に静電吸着するための静電チャック34が設けられている。
図6中37は、載置台30上のウエハWの温度を調整する温調媒体が通る温調流路であり、38は、載置台30上のウエハWに対して、下面側からHe(ヘリウム)ガス等の熱伝導性ガスをバックサイドガスとして供給するガス流路である。これらの温調流路37及びガス流路38により、プラズマ処理が行われている時のウエハWは、例えば20℃程度に調整される。
【0026】
前記下部電極31は、ハイパスフィルタ(HPF)30aを介して接地されており、ウエハWにバイアス電力を印加することでプラズマ中のイオンをウエハW表面に引き込むために、例えば周波数が2MHzの高周波電源31aが整合器31bを介して接続されている。下部電極31の外周縁には、プラズマを載置台30上のウエハWに収束させるために、静電チャック34を囲むようにフォーカスリング39が配置されている。
【0027】
上部電極40は、中空状に形成されており、その下面には、処理容器71内へ処理ガスを分散供給するための多数のガス吐出孔41が複数箇所に配置されている。また、上部電極40の上面中央には、ガス供給路であるガス導入管42が設けられ、このガス導入管42は、上流側において5本に分岐して、バルブ43と流量制御部44とを介してガス供給源45A〜45Eに夫々接続されている。ガス供給源45A〜45Eは、それぞれ例えばCF4ガス源、CHF3ガス源、CO2ガス源、O2ガス源及びArガス源である。図6中77は、ガス導入管42と処理容器71との間に形成された絶縁部材である。上部電極40は、ローパスフィルタ(LPF)47を介して接地されており、処理ガスをプラズマ化するための例えば60MHzの高周波電源40aが整合器40bを介して接続されている。
【0028】
次に、図7を参照して還元処理および回復処理を行う熱処理装置50について説明する。この熱処理装置50は、処理容器51と、当該処理容器51内に設けられ、ウエハWを載置するための載置台52と、を備えている。載置台52には、加熱手段であるヒーター52aが設けられており、このヒーター52aは、電源52bから供給される電力により、ウエハWを例えば50℃〜200℃に加熱できるように構成されている。この載置台52には、図示しない昇降ピンなどが設けられており、この昇降ピンにより、処理容器51の側壁の搬送口53を介して載置台52と図示しない搬送手段との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。尚、Gはゲートバルブである。
【0029】
また、処理容器51の下面には、載置台52を囲むように、周方向に等間隔に例えば4カ所にガス供給路54の一端側が開口しており、またガス供給路54の他端側には、気化器55が接続されている。この気化器55の上流側には、夫々流量調整部56a、57aを介して既述のTMSDMA源56及び窒素ガス源57が接続されており、液体状のTMSDMAを気化器55において気化させて、窒素ガスをキャリアガスとして回復処理用の有機ガスであるTMSDMAガスを処理容器51内に供給するように構成されている。また、ガス供給路54には、バルブV及び流量調整部58aを介して還元処理用のガス例えばH2(水素)ガスの貯留されたガス源58が接続されている。処理容器51の天壁には、載置台52上のウエハWに対向するように、図示しない圧力調整部を備えた真空ポンプ60が排気路59を介して接続されている。
【0030】
プラズマ処理装置70及び熱処理装置50は、図8に示すように、マルチチャンバーシステムである基板処理装置として構成されている。この基板処理装置は、例えば複数のウエハWが収納されたFOUPが載置される載置台61、大気雰囲気の第1の搬送室62、ロードロック室63及び真空雰囲気の第2の搬送室64を備えている。第2の搬送室64には、プラズマ処理装置70及び熱処理装置50が例えば夫々3箇所に気密に接続されている。
【0031】
第1の搬送室62には、載置台61上のFOUPとロードロック室63との間でウエハWの受け渡しを行うための第1の搬送手段である搬送アーム65が設けられ、第2の搬送室64には、ロードロック室63とプラズマ処理装置70及び熱処理装置50との間でウエハWの受け渡しを行うための第2の搬送手段である搬送アーム66が設けられている。
【0032】
この基板処理装置には、例えばコンピュータからなる制御部67が設けられており、この制御部67はプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えている。前記プログラムには、制御部67から基板処理装置の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させるように命令が組み込まれている。また、メモリには例えば処理圧力、処理温度、処理時間、ガス流量または電力値などの処理パラメータの値が書き込まれる領域が設けられている。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部68に格納されて制御部67にインストールされる。
【0033】
次に、前記基板処理装置におけるウエハWの処理の流れについて簡単に説明する。先ず、ウエハWを収納したFOUPを載置台61に載置して、搬送アーム65によりFOUPからウエハWを取り出してロードロック室63に搬送する。次いで、搬送アーム66によりプラズマ処理装置70の載置台30上にウエハWを載置してゲートバルブGを気密に閉じる。そして、真空排気装置75により処理容器71内を真空排気して、処理容器71内を所定の真空度に保持すると共に、ガス導入管42から処理ガスを供給する。続いて、所定の電力の高周波を上部電極40に供給して処理ガスをプラズマ化すると共に、バイアス用の高周波を所定の電力で下部電極31に供給してプラズマ中のイオンをウエハW側に引き込む。この処理ガスのプラズマがウエハWに供給されると、既述のエッチング処理が行われる。
【0034】
次いで、高周波及び処理ガスの供給を停止して、処理容器71内を真空排気する。そして、処理ガスを切り替えて既述のアッシング処理を行って、搬送アーム66によりウエハWを処理容器71内から取り出して、既述のフォトレジスト膜10などの成膜処理を行う。その後、ウエハWを基板処理装置内に戻して続く一連のプラズマ処理を行った後、ウエハWを熱処理装置50の処理容器51内に搬入する。また、載置台52上において、ウエハWを所定の設定温度例えば250℃に加熱すると共に、処理容器51内を所定の圧力に保ちながら、還元ガス(H2ガス)をウエハWに供給して還元処理を行う。
【0035】
その後還元ガスの供給を停止して、処理容器51内を真空排気すると共に、処理ガスを回復処理用ガスに切り替えて、所定の圧力において当該回復処理用ガスを例えば250℃に加熱したウエハWに供給する。こうしてウエハWに対して還元処理と回復処理とが共通の処理容器51において連続して行われる。ウエハWに対して一連の処理が終了すると、あるいはウエハW上にフォトレジスト膜10などを成膜するために外部に搬出する時には、搬送アーム66、65を介してウエハWを元のFOUPに搬送する。
【0036】
上述の実施の形態によれば、層間絶縁膜4と配線2との夫々の露出面に炭素の脱落したダメージ層15及び酸フッ化層16が夫々形成されたウエハWに対して、還元ガスの供給と炭素を含む回復処理用のガスの供給とを共通の処理容器51内において行っているので、既述のように処理温度(プラズマ供給時の温度)の低いプラズマ処理用の処理容器71内においてこれらの還元処理及び回復処理を行う場合と比べて、ウエハWの昇温(温度調整)に要する時間が短くて済み、また例えば還元処理及び回復処理を夫々別の処理容器内で行う場合よりも、ウエハWの搬送に要する時間を短縮することができる。そのため、層間絶縁膜4のダメージ部分が少なく、配線2中の酸化物が少ない半導体装置を高いスループットで得ることができる。また、還元処理及び回復処理を共通の処理容器51にて連続して行うことにより、例えばウエハWの搬送時における雰囲気中の水分の影響を抑えることができ、また当該処理容器51の有効利用を図ることができる。従って、層間絶縁膜4の比誘電率の上昇及び配線2の電気抵抗の増大を抑えた半導体装置を速やかに得ることができる。
【0037】
また、回復処理にSiを含む処理ガスを用いた場合には、当該SiとウエハWの表面に付着した水分とが反応して洗浄処理によっても除去が困難である疎水性のシラノールの生成するおそれがあるが、回復処理の前に還元処理を行うことによって、このシラノールの生成による電気抵抗の増大を抑制できる。
【0038】
また、例えば第2の搬送室64内においてウエハWを搬送することによって配線2上に雰囲気中の水分が付着している場合でも、還元処理を行う時にはウエハWを加熱しているので、当該水分を除去することができる。そのため、水分と例えば酸フッ化層16あるいは堆積物中のFとの反応によるフッ化水素(HF)の生成を抑えることができるので、このフッ化水素への配線2あるいは凹部23内に埋め込まれる金属層の溶出による導電路の断線を抑制できる。更に、酸フッ化層16を還元しているので、回復処理の後に薬液を用いた洗浄処理を行った場合でも、当該酸フッ化層16(酸化銅)の溶出を抑えることができ、そのため配線2の目減りを抑えることができる。
【0039】
ここで、従来の手法であれば、ストップ膜3をエッチングする時には、層間絶縁膜4及び配線2になるべくダメージ(層間絶縁膜4からの炭素の脱離や配線2の酸化)を与えないように、O(O2ガスまたはCO2ガス)の含有量が少ないかあるいはほとんど含まない処理ガス例えばCF系ガスを用いていた。そのため、この従来の手法では、配線2の表面には多くのFが入り込み、結合の強い(還元されにくい)フッ化物が多く生成すると共に、ウエハWの表面にはFを含む堆積物が付着していた。
【0040】
一方、本発明では還元処理を行うことを前提としているので、フッ化物よりも還元しやすい酸化物がより多く生成する条件にて、ストップ膜3のエッチング処理を行うことができる。即ち、Siを含むストップ膜3のエッチングにはFを含む処理ガスを用いる必要があるので、本発明ではFの使用量をなるべく少なくして、Fと共にOによりストップ膜3をエッチングするように処理条件を調整している。ここで、従来に比べOを増加させることにより層間絶縁膜4へのダメージは増加する傾向になるのだが、このダメージはその後行う回復処理により取り除くことができる。また、配線2に関しては、還元しやすい酸化物を多く含む酸フッ化層16を生成させることができるので、当該酸フッ化層16を容易に還元できる。また、このように処理条件を調整することにより、ウエハWの表面にはFを含む堆積物がほとんど生成しないので、当該堆積物中のFと水分との反応によるフッ化水素の生成を抑えることができ、また堆積物による導電路の抵抗値の増大を抑えることができる。
また、既述のように還元処理及び回復処理を共通の処理容器51内において行うことによって、夫々専用の処理容器を設けた場合よりも、装置のフットプリントを低減できる。
【0041】
既述の層間絶縁膜4としては、例えばSOD(Spin on Dielectric)装置で形成されるMSQ(methyl−hydrogen−SilsesQuioxane)(多孔質または緻密質)、CVD(Chemical Vapor Deposition)で形成される無機絶縁膜の1つであるSiOC系膜(従来のSiO2膜のSi−O結合にメチル基(−CH3)を導入して、Si−CH3結合を混在させたもので、Black Diamond(Applied Materials社)、Coral(Novellus社)、Aurora(ASM社)等がこれに該当し、緻密質のもの及びポーラス(多孔質)なものの両方存在する)等を適用しても良い。また、SiLK等のSiを含有しないCとOとHを有するものも層間絶縁膜4として使用することができ、同様に本発明の技術を適用可能である。また、ストップ膜3としては、Siを含む膜例えばSiC膜やSiN膜などであっても良い。更に、配線2を構成する金属材料としては、Cu以外にも例えばW(タングステン)などであっても良い。
【0042】
また、回復処理を行うために用いられる処理ガスとしては、既述のTMSDMA以外にも、メチル基(−CH3)を有するガス例えばDMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、TMDS(1,1,3,3−Tetramethyldisilazane)、TMSPyrole(1−Trimethylsilylpyrole)、BSTFA(N,O−Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)等のシリル化剤などを用いても良いし、あるいはDPM(Dipivaloyl Methane)やDMC(Dimethylcarbonate)、アセチルアセトンなどであっても良い。従って、Siを含まない処理ガスを用いて回復処理を行う場合には、回復処理に伴うシラノールが発生しないため、還元処理の前に回復処理を行っても良い。また、還元処理を行うために用いられる還元ガスとしては、水素ガスに代えて、あるいは水素ガスと共に、CO(一酸化炭素)ガスを用いても良い。
また、共通の熱処理装置50を用いて還元処理及び回復処理を行ったが、夫々別の熱処理装置50を用いて処理を行っても良い。
【0043】
既述の例では、上下の層間絶縁膜1、4間にストップ膜3が介在しているウエハWに対して処理を行う場合について説明したが、図9に示すように、このストップ膜3が形成されていないウエハWに対して処理を行う場合に本発明を適用しても良い。この場合であっても、上層側の層間絶縁膜4にホール21を形成する時にはFとOとを含む処理ガスが用いられ、層間絶縁膜4及び配線2には夫々ダメージ層15及び酸フッ化層16が生成する。
【符号の説明】
【0044】
W ウエハ
1 層間絶縁膜
2 配線
3 ストップ膜
4 層間絶縁膜
15 ダメージ層
16 酸フッ化膜
21 ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を製造するための基板を処理する方法において、
炭素及び酸素を含む低誘電率膜と表面部が酸化された金属層とが露出し、低誘電率膜の露出面を含む部位に炭素の脱落したダメージ層が形成された基板を収容した処理容器内に還元ガスを供給して、前記金属層の酸化物を還元する工程と、
炭素を含む回復処理用のガスを前記基板に供給して、前記ダメージ層の回復処理を行う工程と、を含み、
前記還元する工程及び前記回復処理を行う工程を共通の処理容器内において連続的に行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記基板は、開口部が形成された前記低誘電率膜と、シリコンを含むストップ膜と、前記金属層とがこの順番で上層側から積層され、
前記還元する工程及び前記回復処理を行う工程の前に、前記開口部を介して酸素及びフッ素を含む処理ガスのプラズマを前記ストップ膜に供給して、当該ストップ膜をエッチングして前記金属層を露出させるエッチング工程を行い、
このエッチング工程は、前記還元処理及び回復処理を行う処理容器とは別の処理容器内において行うことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記回復処理用のガス及び前記低誘電率膜はシリコンを含み、
前記還元する工程は、回復処理を行う前に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
炭素及び酸素を含む低誘電率膜と表面部が酸化された金属層とが露出し、低誘電率膜の露出面を含む部位に炭素の脱落したダメージ層が形成された基板に対して処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−151141(P2011−151141A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10278(P2010−10278)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】