説明

基板処理方法

【課題】配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきを最適なプロセス条件で行うことができるようにする。
【解決手段】表面に金属配線を有する基板を用意し、基板の表面に触媒付与液を接触させて金属配線の露出表面に金属触媒を付与する触媒付与処理を行い、基板の表面にDMABを還元剤とする液温が25〜60℃の無電解めっき液を接触させて配線の露出表面に保護膜を選択的に成膜し、その後、基板の表面を洗浄して乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、基板処理方法に係り、特に半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた配線用の微細な凹部に銅や銀等の配線材料を埋込んで構成した埋込み配線の露出表面や、メモリ素子配線の周囲に、配線を覆う合金からなる保護膜を無電解めっきで選択的に形成するのに使用される基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線溝及びビアホールに金属(配線材料)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成した配線溝やビアホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
図1(a)〜図1(d)は、半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す。先ず図(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上に、例えばSiOからなる酸化膜やLow−K材膜等の絶縁膜(層間絶縁膜)2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、配線用の微細凹部としてのビアホール3と配線溝4を形成し、その上にTaN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層6をスパッタリング等により形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、基板Wのビアホール3及び配線溝4内に銅を充填させるとともに、絶縁膜2上に銅層7を堆積させる。その後、化学機械的研磨(CMP)などにより、絶縁膜2上のバリア層5、シード層6及び銅層7を除去して、ビアホール3及び配線溝4内に充填させた銅層7の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜2の内部にシード層6と銅層7からなる配線(銅配線)8を形成する。
【0005】
次に、図1(d)に示すように、基板Wの表面に無電解めっきを施し、配線8の露出表面に、Co合金やNi合金等からなる保護膜9を選択的に形成し、これによって、配線8の表面を保護膜9で覆って保護する。
【0006】
ここで、銅配線等からなる埋込み配線の露出表面やメモリ素子配線の周囲に、Co合金等からなる保護膜を選択的に形成する無電解めっきプロセスにあっては、異なるサイズの配線表面に選択的に成膜される保護膜(めっき膜)の膜厚における面内均一性や使用する無電解めっき液の安定性を確保することが重要な課題となる。
【0007】
従来、埋込み配線、例えば銅配線の露出表面に、Co合金等からなる保護膜(めっき膜)を選択的に形成する無電解めっきプロセスは、一般に、無電解めっき液に使用される還元剤の種類及びめっき前処理としての触媒付与処理の必要性の有無によって、図2に示す第1方式と、図3に示す第2方式の2つの方式に大別される。
【0008】
図2に示す第1方式は、平坦化によって銅配線の表面を露出させた基板を前洗浄液に接触させて基板の前洗浄を行った後、基板を、例えばPd(パラジウム)を含む触媒付与液に接触させて、配線の表面にPd等の金属触媒を付与する。そして、この配線の表面に金属触媒を付与した基板を、例えば次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)に接触させて、配線の表面に、例えばCoWPからなるめっき膜(保護膜)を選択的に成膜する。しかる後、基板の表面を後洗浄し、純水等でリンスし高速で回転させて乾燥させる。
【0009】
図3に示す第2方式は、平坦化によって銅配線の表面を露出させた基板を、例えば有機アルカリをベースとする第1前洗浄液に接触させて基板の第1前洗浄を行った後、基板を、例えば有機酸をベースとする第2前洗浄液に接触させて、基板の第2前洗浄を行う。そして、この第2洗浄後の基板を、例えばDMAB(ジメチルアミンボラン)を還元剤とする無電解めっき液(DMAB系めっき液)に接触させて、配線の表面に、例えばCoWBからなるめっき膜(保護膜)を選択的に成膜する。しかる後、基板の表面を後洗浄し、純水等でリンスし高速で回転させて乾燥させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2に示す第1方式は、a)無電解めっき液が比較的安定であり、b)面内均一性の優れためっき膜(保護膜)を成膜することができ、c)無電解めっき液に基板を接触させてからめっきを開始するまでの時間(インキュベーション)は短く、そのため配線表面に配線の形状によらない均一な膜厚のめっき膜を成膜でき、d)めっき前処理の工程にPd等の金属触媒を付与する触媒付与処理を含むため、各種異なる状態の基板表面に対して同じ前処理で安定なプロセス性能を確保しやすい、というメリットを有する。しかし、a)金属触媒としてPd(パラジウム)を使用した触媒付与処理では、Pd濃度が比較的高い触媒付与液を使用するため、Pdの銅配線等への拡散や配線の触媒付与液による腐食により配線の抵抗上昇し、b)アルカリ金属フリーの無電解めっき液を調合しようとすると、比較的安定な還元剤を選定しにくい、というデメリットがある。
【0011】
一方、図3に示す第2方式は、a)触媒付与処理を行わないため、Pd等によって配線抵抗の上昇の招くおそれが薄く、b)アルカリ金属フリーの無電解めっき液を調合するために、還元剤を選定しやすい、というメリットを有する。しかし、a)プロセス温度が一般に高く、還元剤の分解による安定な無電解めっき液を維持しにくく、b)Pd等の金属触媒を使用しないため、配線間を含め膜厚の面内均一性の優れためっき膜を成膜することが困難となり、c)めっき工程が前洗浄工程に強く依存するため、各種異なる状態の基板表面に対して同じ前処理で安定なプロセス性能を確保しにくい、というデメリットを有する。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、上記2つの方式のメリットを活かし、デメリットを克服して、配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきを最適なプロセス条件で行うことができるようにした基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、表面に金属配線を有する基板を用意し、基板の表面に触媒付与液を接触させて前記金属配線の露出表面に金属触媒を付与する触媒付与処理を行い、基板の表面にDMABを還元剤とする液温が25〜60℃の無電解めっき液を接触させて配線の露出表面に保護膜を選択的に成膜し、その後、基板の表面を洗浄して乾燥させることを特徴とする基板処理方法である。
【0014】
このように、触媒付与処理を行って、配線の表面を活性化させた後、DMABを還元剤とする無電解めっき液を使用して、配線の表面にめっき膜(保護膜)を選択的に成膜することで、無電解めっき液の液温を25〜60℃に低減させて、無電解めっき液のライフタイムを大幅に延ばしながら、配線のサイズや形状等によらず、配線の表面に均一な膜厚のめっき膜を選択的に成膜することができる。また、DMABを還元剤とする無電解めっき液を使用することで、アルカリ金属フリーの無電解めっき液の調合が容易となる。
【0015】
触媒付与処理を行うことなく、DMABを還元剤とした無電解めっき液を使用して無電解めっきを行うと、均一な膜厚のめっき膜を得るために、通常、めっき液の液温を65℃以上にする必要がある。しかし、液温が60℃〜65℃あたりを超えると、DMABは、その分解速度が急激に増大してしまう。液温が25℃〜60℃の範囲のめっき液を使用することで、DMABの分解速度を緩やかすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記触媒付与処理前に、基板表面に前洗浄処理を行うことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法である。
触媒付与処理前に前洗浄処理を行うことによって、金属配線上の防食剤や酸化膜、並びに絶縁膜上の不純物残を有効に除去して、より高い選択性でより均一な膜厚のめっき膜を形成できる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記金属配線は、ダマシン工程におけるCMP処理で絶縁膜の内部に表面を露出させて形成される銅配線であることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法である。
このように、銅配線の露出表面を保護膜(めっき膜)で選択的に覆って銅配線を保護することで、EM(エレクトロマイグレーション)及びSM(ストレスマイグレーション)等の銅配線の信頼性に関わる性能を大幅に向上させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記金属配線は、絶縁膜の表面から突出していることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法である。
これにより、絶縁膜の表面から突出している、例えばメモリ素子配線等の金属配線の周囲を、例えば保磁性のある軟磁性合金からなる保護膜で覆って金属配線を保護することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記保護膜は、ボロンを含むコバルトまたはニッケル合金からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
保護膜は、例えばCoB,CoPB,CoWB,CoWPB,NiB,NiPB,NiWBまたはNiWPBからなる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記金属触媒は、パラジウムまたは銀を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
金属触媒としては、白金族元素、コバルト、ニッケルのいずれもが使用できるが、反応速度や制御のし易さなどの点から、Pdまたは銀を用いることが好ましい。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記触媒付与液は、0.005〜0.025g/Lの濃度のPdSOを含むHSO水溶液であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載に基板処理方法である。
【0022】
例えば金属触媒としてPdを使用する場合、触媒付与液として、0.005〜0.025g/Lの低い濃度のPdSOを含むHSO水溶液を使用して触媒付与処理を行うことで、DMABを還元剤とする無電解めっき液が比較的低い温度条件でもPd触媒を付与した配線の表面にめっき金属を析出させることができる。また、Pdの濃度が低いため、Pdによる配線抵抗の上昇を最大限に抑制することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、前記無電解めっき液は、アルカリ金属を含まないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに一項に記載の基板処理方法。
これにより、無電解めっき液に対するアルカリ金属フリーの要請に答えることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、無電解めっきに先立って、触媒付与処理を行うことで、配線表面の状態や配線寸法、配置などに依存することなく、面内均一性に優れためっき膜を成膜することができる。しかも、無電解めっき液の還元剤としてDMABを使用することで、無電解めっき液の液温を25〜60℃に低減させることができ、これによって、装置の製作や操作に有利になるばかりでなく、無電解めっき液のライフタイムを大幅に延ばすことができる。
しかも、例えば、Pd等の金属触媒の濃度が低い触媒付与液を使用した触媒付与処理を行っても、DMABを還元剤とした無電解のめっき液を使用した無電解めっきで触媒を付与した配線表面にめっき金属を析出させ、これによって、Pd等による配線抵抗の上昇を最大限に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の例では、図1(d)に示すように、配線8の露出表面を、CoWB合金等からなる保護膜(蓋材)9で選択的に覆って、配線8を保護膜9で保護するようにした例を示す。
【0026】
図4は、基板処理装置の平面配置図を示す。図4に示すように、この基板処理装置には、表面に形成した配線溝4内に銅等からなる配線8を形成した基板W(図1(c)参照)を収容した基板カセットを載置収容するロード・アンロードユニット20が備えられている。
【0027】
そして、排気系統を備えた矩形状のハウジング22の内部に位置して、基板のめっき前処理としての前洗浄を行う前洗浄ユニット(前処理ユニット)24、基板のめっき前処理としての触媒付与処理を行う触媒付与処理ユニット(前処理ユニット)26、金属触媒が付与された配線8の露出表面にCoWB合金等からなる保護膜9を選択的に形成する無電解めっきユニット28、保護膜9を選択的に形成した基板の表面を洗浄(後洗浄)する後洗浄ユニット30、及び後洗浄後の基板の表面を純水でリンスして乾燥させるリンス・乾燥ユニット34が配置されている。
【0028】
ハウジング22の内部の各ユニットに挟まれた位置には、基板を搬送する第1搬送ロボット36及び第2搬送ロボット38が配置されている。更に、ハウジング22の側壁には、制御ユニット40が取付けられている。
なお、この例では、めっき前処理としての前洗浄と触媒付与処理とを別々のユニットで行うようにしているが、同一のユニットで行うようにしてもよい。
【0029】
次に、この基板処理装置による一連の基板処理(無電解めっき処理)について、図5を更に参照して説明する。
先ず、CMP等の平坦化処理を施して配線8を露出させた半導体ウェーハ等の基板W(図1(c)参照)を収納してロード・アンロードユニット20に搭載した基板カセットから、1枚の基板Wを第1搬送ロボット36で取出して前洗浄ユニット24に搬送する。そして、この基板Wを、例えば常温の希硫酸または有機酸に1分程度浸漬させるか、または回転中の基板Wに向けて洗浄液を噴霧することで、絶縁膜2の表面の金属酸化膜や銅等CMP残渣等の不純物を除去し、これによって、基板Wの前洗浄を行う。
【0030】
そして、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)した後、基板Wを触媒付与処理ユニット26に搬送し、ここで、例えば常温のPdSOを含むHSO水溶液からなる触媒付与液中に基板Wを1分間程度浸漬させるか、または回転中に基板の表面に向けて触媒付与液を噴霧することで、配線8の表面に金属触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。しかる後、基板の表面を純水等でリンスする。
【0031】
この例では、金属触媒としてPdを使用し、触媒処理液として、PdSOの濃度が0.005〜0.25g/Lで、HSOの濃度が10〜70g/Lの水溶液を使用している。金属触媒としては、白金族元素、コバルト、ニッケルのいずれもが使用できるが、反応速度や制御のし易さなどの点から、Pdまたは銀を用いることが好ましい。
【0032】
金属触媒としてPdを使用し、触媒付与液として、PdSOを含むHSO水溶液を使用して、配線の表面に触媒付与処理を行う場合、PdSOの濃度は、一般に、0.02〜0.10g/L程度に設定され、HSOの濃度は、20〜50g/L程度に設定される。このようにPd濃度が高い触媒付与液を使用して配線の表面に触媒付与処理を行うと、Pdの銅等への混入や配線の触媒付与液による腐食により配線の抵抗上昇する。
【0033】
この例によれば、触媒処理液として、PdSOの濃度が0.005〜0.25g/Lで、HSOの濃度が10〜70g/LのPdの濃度が低い水溶液を使用することで、Pd等による配線抵抗の上昇を抑制することができる。しかも、下記のように、DMABを還元剤とする無電解めっき液を使用して無電解めっきを行うことで、上記触媒付与液を使用して、金属触媒としてのPdを付与した配線8の表面にめっき金属を析出させることができる。
【0034】
次に、基板Wを無電解めっきユニット28に搬送し、ここで、例えば液温が25〜60℃の、DMABを還元剤としたCoWB無電解めっき液中に基板Wを120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっきを施し、しかる後、基板Wを無電解めっき液から引き上げて、直ちに基板の表面を純水等でリンスする。これによって、図1(d)に示すように、配線8の露出表面に、CoWB合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
このDMABを還元剤とした無電解めっき液(DMAB系めっき液)の組成は、例えば、以下の通りであり、めっき液の液温は、例えば50℃である。
【0035】
Pd触媒付与処理を行うことなく、DMABを還元剤とした無電解めっき液を使用して無電解めっきを行うと、均一な膜厚のめっき膜を得るために、通常、めっき液の液温を65℃以上にする必要がある。しかし、液温が60℃〜65℃あたりを超えると、図6に示すように、DMABは、その分解速度が急激に増大してしまう。液温が25℃〜60℃の範囲のめっき液を使用することで、DMABの分解速度を緩やかすることができる。
【0036】
無電解めっき液(DMAB系めっき液)の組成
・CoSO・7HO:10g/L
・(NH・2HO:60g/L
・(NHSO4:40g/L
・HWO:2g/L
・DMAB:8g/L
・TMAH(27%):120ml/L
・pH:9.0
【0037】
このように、触媒付与処理を行って、配線8の表面を活性化させた後、DMABを還元剤とする無電解めっき液を使用して、配線8の表面に保護膜(めっき膜)9を選択的に成膜することで、無電解めっき液の液温を25〜60℃に低減させて、無電解めっき液のライフタイムを大幅に延ばしながら、配線8のサイズや形状等によらず、均一な膜厚の保護膜9を配線8の表面に選択的に成膜することができる。また、DMABを還元剤とする無電解めっき液を使用することで、アルカリ金属フリーの無電解めっき液の調合が容易となり、無電解めっき液に対するアルカリ金属フリーの要請に答えることができる。
【0038】
この保護膜9を形成した基板Wを後洗浄ユニット30に搬送し、ここで、例えば回転させた基板Wの表裏両面に後洗浄液を供給しつつ、一対のローラを基板Wの表裏両面に接触させながら自転させることで、基板Wの表裏両面をロールによってスクラブ洗浄(後洗浄)する。
【0039】
次に、後洗浄後の基板Wをリンス・乾燥ユニット34に搬送し、ここで、基板Wの表面に純水を供給して基板Wの表面を純水でリンスし、しかる後、基板Wを高速で回転させて、基板をスピン乾燥させる。そして、スピン乾燥後の基板Wを第1搬送ロボット36でロード・アンロードユニット20に搭載された基板カセットに戻す。
【0040】
上記の例では、保護膜9として、CoWB合金膜を使用した例を示しているが、CoB,CoPB,CoWPB,NiWB,NiPB,NiWPBまたはNiB等からなる保護膜を使用するようにしてもよい。また、配線材料として、銅を使用した例を示しているが、銅の他に、銅合金、銀、銀合金、金及び金合金等を使用しても良い。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0041】
(実施例1)
図4に示す基板処理装置を使用して300mmのウェーハに形成された配線の表面に保護膜を形成した。つまり、乾燥したウェーハを搬送ロボットによって基板カセットから取出し、前洗浄ユニットに入れて、表面を下向きでセットした。そして、ウェーハを20rpmで回転させながら、複数のスプレーノズルから、有機酸をベースとする洗浄液(薬液)をウェーハの全表面に噴射して、30秒の前洗浄を行った。その後、ウェーハ表面を15秒間、純水でリンスした。
【0042】
そして、ウェーハを前洗浄ユニットから取出し、触媒付与処理ユニットに搬入して、表面を下向きでセットした。そして、ウェーハを20rpmで回転させながら、複数のスプレーノズルから、PdSOを含むHSOの水溶液からなる触媒付与液をウェーハの全表面に向けて噴射して、20秒間の触媒付与処理を行った。その後、ウェーハ表面を15秒間、純水でリンスした。
この触媒付与液として、PdSOの濃度が0.015g/Lで、HSOの濃度が40g/Lの水溶液を使用した。
【0043】
次に、触媒付与処理ユニットからウェーハを取出し、無電解めっきユニットに搬入した。そして、無電解めっきユニットのめっき処理槽内の無電解めっき液中にウェーハを浸漬させて、ウェーハ表面に無電解めっき処理を行った。そして、所定めっき時間経過後、ウェーハをめっき液から引き上げ、直ちに5秒間、純水でウェーハ全面をリンスした。この無電解めっき液として、液温が50℃で、還元剤としてDMABを使用した、前述と同様な組成の無電解めっき液(DMAB系めっき液)を使用した。これによって、ウェーハ表面の配線にCoWBからなる保護膜を選択的に成膜した。
【0044】
次に、ウェーハを後洗浄ユニットに入れて、ウェーハの表裏両面をスクラブ洗浄(後洗浄)した後、ウェーハ表面を純水でリンスした。そして、ウェーハを後洗浄ユニットから取出し、リンス・乾燥ユニットに搬送して、5秒間、ウェーハ表面を純水でリンスした後、ウェーハを高速回転させて乾燥させ、基板カセットに戻した。
【0045】
(比較例1)
触媒付与液として、PdSOの濃度が0.045g/L、HSOの濃度が60g/Lの水溶液を、無電解めっき液として、次亜リン酸塩を還元剤とした、下記の組成で、液温が75℃の無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)をそれぞれ使用し、その他の条件は実施例1と同様にして、300mmのウェーハに形成された配線の表面に保護膜を形成した。
【0046】
無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)の組成
・CoSO・7HO:14g/L
・Na・2HO:70g/L
・HBO:25g/L
・NaWO・2HO:12g/L
・NaHPO・HO:21g/L
・pH:9.0
【0047】
(比較例2)
実施例1の触媒付与処理を行う代わりに、ウェーハを20rpmで回転させながら、複数のスプレーノズルから、有機酸をベースとする洗浄液をウェーハの全表面に噴射して、20秒の前洗浄(第2前洗浄)を行い、また、液温が75℃で、還元剤としてDMABを使用した、前述と同じ組成の無電解めっき液(DMAB系めっき液)を使用し、その他の条件は、比較例1と同様にして、300mmのウェーハに形成された配線の表面に保護膜を形成した。
なお、実施例1、比較例1,2では、めっき膜の膜厚が20nmに一致するようにめっき時間を調整した。めっき時間の範囲は、30〜120秒であった。
【0048】
上記実施例1及び比較例1,2で処理したウェーハの代表的な配線を選んで、めっき処理前後の配線抵抗を測定し、配線抵抗の変化から、配線抵抗の上昇率を算出した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、Pd濃度の高い触媒付与液を使用して触媒付与処理を行った比較例1にあっては、配線抵抗上昇率が最も高く、3.0%である。触媒付与処理を行うことなく、2段階の前洗浄を行った比較例2における配線抵抗上昇率は、1.9%である。それに対して、Pd濃度の低い触媒付与液を使用して触媒付与処理を行った実施例1にあっては、配線抵抗上昇率は最も低く、1.7%である。この結果から、Pd濃度の薄い触媒付与液を使用して、触媒付与処理を行うことにより、配線抵抗上昇に殆ど悪影響を与えないことが分かる。
【0051】
ウェーハ内の各ダイにおける同じ箇所の配線上のめっき膜厚を測定し、全てのダイから得られたデータを統計計算して、面内均一性として3σ値を算出した。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
触媒付与処理を行うことなく、無電解めっき処理した比較例2の面内均一性は17%となる。それに対して、触媒付与処理を行った後に無電解めっき処理を行った実施例1及び比較例1では、より均一な膜厚のめっき膜が得られたことがわかる。
一般に、同じウェーハ上には、異なるサイズまたは配列の配線が配置される。そこで、それぞれの配線上のめっき膜の膜厚を測定し、配線間均一性として最大値と最小値の差を算出した。その結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
触媒付与処理を行うことなく、無電解めっき処理した比較例2の面内均一性は21%となる。それに対して、触媒付与処理を行った後に無電解めっき処理を行った実施例1及び比較例2は、配線上のめっき膜の膜厚のバラツキが小さく、このことから、無電解めっきに先立ってPd触媒を付与することにより、配線サイズおよび配列に対する膜厚の依存性が小さくなることがわかる。
【0056】
(比較例4,5)
比較例4として、液温が75℃で、次亜リン酸(塩)を還元剤とした、上記と同じ組成の無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)を使用し、その他の条件は実施例1と同様にして、300mmのウェーハに形成された配線の表面に保護膜を形成した。また、比較例5として、PdSOを添加してない単純なHSO水溶液を触媒付与液に使用し、その他の条件は実施例1と同様にして、300mmのウェーハに形成された配線の表面に保護膜を形成した。
この比較例4,5にあっては、ウェーハの配線上に金属めっき膜は析出されなかった。
【0057】
次に、次亜リン酸塩を還元剤とした、上記と同じ組成の無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)と、DMABを還元剤とした、上記と同じ組成の無電解めっき液(DMAB系めっき液)をそれぞれ75℃、50℃の温度に連続して加熱する実験を行った。定期的に還元剤成分の濃度を測定し、標準濃度から10%低下するまでの時間の無次元値を纏めた結果を表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
この表4より、液温75℃では、DMABを還元剤とする無電解めっき液(DMAB系めっき液)の還元剤濃度変化は、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)に比べて、15倍速いことが分かる。しかし、DMABを還元剤とする無電解めっき液(DMAB系めっき液)を50℃で使用する場合、還元剤濃度の変化は、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液(次亜リン酸系めっき液)を75℃の条件で使用した時の結果とほぼ同じである。このことから、DMABを還元剤とする無電解めっき液(DMAB系めっき液)を50℃の条件で使用すれば、無電解めっき液の安定性を容易に維持できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】無電解めっきで配線の表面に保護膜を選択的に形成する例を工程順に示す図である。
【図2】従来の無電解めっきプロセスの一例を示すワークフローである。
【図3】従来の無電解めっきプロセスの他の例を示すワークフローである。
【図4】基板処理装置を示す平面配置図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるワークフローである。
【図6】液温を変更させた時の無電解めっき液中のDMAB濃度と時間との関係(DMAB分解の温度依存性)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
20 ロード・アンロードユニット
24 前洗浄ユニット(前処理ユニット)
26 触媒付与処理ユニット(前処理ユニット)
28 無電解めっきユニット
30 後洗浄ユニット
34 リンス・乾燥ユニット
40 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属配線を有する基板を用意し、
基板の表面に触媒付与液を接触させて前記金属配線の露出表面に金属触媒を付与する触媒付与処理を行い、
基板の表面にDMABを還元剤とする液温が25〜60℃の無電解めっき液を接触させて配線の露出表面に保護膜を選択的に成膜し、その後、
基板の表面を洗浄して乾燥させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記触媒付与処理前に、基板表面に前洗浄処理を行うことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記金属配線は、ダマシン工程におけるCMP処理で絶縁膜の内部に表面を露出させて形成される銅配線であることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記金属配線は、絶縁膜の表面から突出していることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記保護膜は、ボロンを含むコバルトまたはニッケル合金からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記金属触媒は、パラジウムまたは銀を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記触媒付与液は、0.005〜0.025g/Lの濃度のPdSOを含むHSO水溶液であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載に基板処理方法。
【請求項8】
前記無電解めっき液は、アルカリ金属を含まないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−263003(P2008−263003A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103449(P2007−103449)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】