説明

基板処理装置、半導体装置の製造方法、天井断熱体及び加熱装置

【課題】天井断熱材のクラックの発生を少なくし、天井断熱材の破損、落下のおそれを低減することができる基板処理装置、半導体装置の製造方法及び天井断熱材を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を処理する反応容器の外側に設けられたヒータ206を有する。このヒータ206は、環状の側壁断熱材12と、側壁断熱材12に載置される天井断熱材16と、側壁断熱材12の内側に設けられる発熱体14とを有する。ヒータ206の天井断熱材16には、応力緩和部が天井断熱材16の中心側から周縁側に向かって複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、天井断熱体及び加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置の一例として、半導体製造装置があり、さらに半導体製造装置の一例として、縦型拡散・CVD装置が知られている。このような基板処理装置においては、基板を加熱するための加熱装置が使用される。
【0003】
特許文献1は、上記加熱装置の一例として、反応容器の外側に設けられ、環状の側壁断熱体と、側壁断熱体に載置される天井断熱体と、側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、を有するものを示す。また、特許文献2は、熱変形による問題を解消するため縦型ウェーハボートの天板に中心から外周に向かって放射状にスリットを設ける技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−55811号公報
【特許文献2】特開2007−67232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱装置における断熱体の中で、特に天井断熱体についてはクラックが発生しやすく、このクラックが発展して天井部分が割れることにより天井断熱体が脱落してしまうという問題があったが、従来から天井断熱体のクラックに対する対応について考慮されてこなかった。
【0006】
本発明は、天井断熱体のクラックの発生を少なくし、天井断熱体の破損、落下のおそれを低減することができる基板処理装置、半導体装置の製造方法、天井断熱体及び加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは、基板を処理する反応容器と、該反応容器の外側を囲う、少なくとも、側壁断熱体と、該側壁断熱体に載置される天井断熱体と、前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、を有する加熱装置とを備え、前記天井断熱体には、該天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が複数設けられている基板処理装置にある。
【0008】
本発明の他の特徴とするところは、反応容器の外側を囲う、少なくとも、側壁断熱体と、該側壁断熱体に載置される天井断熱体と、を有する半導体装置の製造方法であって、前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が前記天井断熱体に発生する応力を緩和しつつ前記側壁断熱体の内側に設けられた発熱体が前記反応容器内の基板を加熱処理する半導体装置の製造方法にある。
【0009】
また、本発明の他の特徴とするところは、基板処理装置に用いられる加熱装置における側壁断熱体に載置される天井断熱体であって、該天井断熱体の中心側から周縁側に向かって前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が複数設けられている天井断熱体にある。
【0010】
また、本発明の他の特徴とするところは、側壁断熱体と、前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、前記側壁断熱体に載置される天井断熱体であって、該天井断熱体の中心側から周縁側に向かって前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が複数設けられている天井断熱体と、を備える加熱装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天井断熱体のクラックの発生を少なくし、天井断熱体の破損、落下のおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に用いた急速冷却機構を有しないヒータを示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の実施形態に用いた急速冷却機構を有するヒータを示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図4】従来のヒータにおいて、クラックが生じた天井断熱材を示し、(a)は急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材の裏面図、(b)は急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材の裏面図である。
【図5】本発明の実施形態において、天井断熱材の下側層を中心で断面化し、昇温時における温度分布を解析した図である。
【図6】本発明の実施形態において、天井断熱材の下側層を中心で断面化し、昇温時における応力分布を解析した図である。
【図7】本発明の実施形態において、天井断熱材の下側層の降温時における応力分布を解析した図である。
【図8】本発明の実施形態に用いた急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材の種々の例を示す裏面図である。
【図9】本発明の実施形態に用いた急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材の下側層の種々の例を示す裏面図である。
【図10】本発明の実施形態における応力緩和部の種々の例を示し、(a)応力緩和部が溝である天井断熱材の下側層の裏面図とA−A線断面図、(b)は応力緩和部がスリットである天井断熱材の下側層の裏面図とB−B線断面図
【図11】本発明の実施形態に用いた急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材の載置箇所の変形例を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図12】本発明の実施形態に用いた急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材の載置箇所の変形例を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図13】本発明の実施形態における第1の変形例を示す天井断熱材の斜視図である。
【図14】本発明の実施形態における応力緩和部が分割ラインである天井断熱材の下側層の裏面図である。
【図15】本発明の実施形態における第2の変形例を示す天井断熱材の裏面図である。
【図16】本発明の実施形態における第3の変形例を示す天井断熱材の下側層の裏面図である。
【図17】本発明の実施形態における第4の変形例を示し、(a)は天井断熱材の裏面図、(b)はC−C線断面図である。
【図18】本発明の実施形態における第5の変形例を示し、(a)は天井断熱材の裏面図、(b)はD−D線断面図であり、応力緩和部が分割ラインである一例を示し、(c)はD−D線断面図であり、応力緩和部が分割ラインである他の例を示す。
【図19】本発明の実施形態における第6の変形例を示す天井断熱材の下側層の裏面図である。
【図20】本発明の実施形態における第7の変形例を示す天井断熱材の下側層の裏面図である。
【図21】本発明の実施形態における第8の変形例を示す天井断熱材の下側層の裏面図である。
【図22】本発明の実施形態における第9の変形例を示し、(a)は天井断熱材の下側層の裏面図(炉内側)、(b)はE−E線断面図であり、(c)は天井断熱材の下側層の表面図(天板側)、(d)はF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉202の概略構成図であり、縦断面図として示されている。
【0014】
図1に示されているように、処理炉202は加熱装置としてのヒータ206を有する。ヒータ206は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース251に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0015】
ヒータ206の内側には、ヒータ206と同心円状に反応容器としてのプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は内部反応容器としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応容器としてのアウターチューブ205とから構成されている。インナーチューブ204は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。アウターチューブ205は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料からなり、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。
【0016】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204とアウターチューブ205に係合しており、これらを支持するように設けられている。なお、マニホールド209とアウターチューブ205との間にはシール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベース251に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ203とマニホールド209により反応容器が形成される。
【0017】
後述するシールキャップ219にはガス導入部としてのノズル230が処理室201内に連通するように接続されており、ノズル230にはガス供給管232が接続されている。ガス供給管232のノズル230との接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241を介して図示しない処理ガス供給源や不活性ガス供給源が接続されている。MFC241には、ガス流量制御部(ガス流量コントローラ)235が電気的に接続されており、供給するガスの流量が所望の量となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0018】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231は、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に配置されており、筒状空間250に連通している。排気管231のマニホールド209との接続側と反対側である下流側には圧力検出器としての圧力センサ245および圧力調整装置242を介して真空ポンプ等の真空排気装置246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。圧力調整装置242および圧力センサ245には、圧力制御部(圧力コントローラ)236が電気的に接続されており、圧力制御部236は圧力センサ245により検出された圧力に基づいて圧力調整装置242により処理室201内の圧力が所望の圧力となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0019】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面にはマニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられる。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219はプロセスチューブ203の外部に垂直に設備された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構254及びボートエレベータ115には、駆動制御部(駆動コントローラ)237が電気的に接続されており、所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0020】
基板保持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる円板形状をした断熱部材としての断熱板216が水平姿勢で多段に複数枚配置されており、ヒータ206からの熱がマニホールド209側に伝わりにくくなるよう構成されている。
【0021】
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータ206と温度センサ263には、電気的に温度制御部238が接続されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ206への通電具合を調整することにより処理室201内の温度が所望の温度分布となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。この温度センサ263には所定温度以上となると作動する温度スイッチ(図示省略)が設けられている。
【0022】
また処理室201周辺には冷却水本管(図示省略)は配設されており、この冷却水本管には、冷却水が所定量以下となると作動するフロースイッチ(図示省略)、水冷式ラジエータ(図示省略)及び水冷式サイリスタ設けられている。これら水冷式ラジエータ及び水冷式サイリスタには所定温度以上となると作動する温度スイッチ(図示省略)が設けられている。
【0023】
ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238は、操作部、入出力部をも構成し、基板処理装置全体を制御する主制御部(メインコントローラ)239に電気的に接続されている。これら、ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238、主制御部239はコントローラ240として構成されている。
【0024】
次に、上記構成に係る処理炉202を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、CVD法によりウエハ200上に薄膜を形成する方法について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0025】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を保持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201に搬入(ボートローディング)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0026】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づき圧力調節器242が、フィードバック制御される。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構254により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。
【0027】
次いで、処理ガス供給源から供給され、MFC241にて所望の流量となるように制御されたガスは、ガス供給管232を流通してノズル230から処理室201内に導入される。導入されたガスは処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出して排気管231から排気される。ガスは処理室201内を通過する際にウエハ200の表面と接触し、この際に熱CVD反応によってウエハ200の表面上に薄膜が堆積(デポジション)される。
【0028】
予め設定された処理時間が経過すると、不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、処理室201内が不活性ガスに置換されるとともに、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0029】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンローディング)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0030】
なお、一例まで、本実施の形態の処理炉にてウエハを処理する際の処理条件としては、例えば、SiN膜(シリコン窒化膜)の成膜においては、処理温度400〜800℃、処理圧力1〜50Torr、成膜ガス種SiH2Cl2,NH3、成膜ガス供給流量SiH2Cl2:0.02〜0.30slm,NH3:0.1〜2.0slmが例示され、また、Poly−Si膜(ポリシリコン膜)の成膜においては、処理温度350〜700℃、処理圧力1〜50Torr、成膜ガス種SiH4、成膜ガス供給流量0.01〜1.20slmが例示され、それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することでウエハ200に処理がなされる。
【0031】
さらにヒータ206について詳述する。
ヒータ206には、急速冷却機構を有しないものと有さないものとがある。図2は急速冷却機構を有するヒータ206を示し、図3は急速冷却機構を有するものを示す。
【0032】
図2において、急速冷却機構を有しないヒータ206は、環状に形成された(好ましくは円筒状に形成された)側壁断熱材(側壁断熱体ともいう)12を有する。この側壁断熱材12の内側(好ましくは内周に沿って)に発熱体14が配置されている。また、側壁断熱材12の上部に例えば円板状の天井断熱材(天井断熱体ともいう)16が載置されている。側壁断熱材12及び天井断熱材16とに囲まれた空間に前述した反応容器としてのプロセスチューブ203が配設されている。
【0033】
図3において、急速冷却機構を有するヒータ206は、図2に示した急速冷却機構を有しないものと比較して、天井断熱材16の構成を異にしている。天井断熱材16は、側壁断熱材12に載置された下側層18と、この下側層18上に載置された中間層20と、この中間層20上に載置された上側層22とを有する。下側層18の中心には、排気孔24が形成されている。また、中間層20には、排気溝26が形成されている。この排気溝26は、側端から中心部を越えて形成され、一端が排気孔24に接続され、他端がヒータ206の側面に開口している。この開口している他端には、ラジエータ28を介して冷却ファン30が接続され、この冷却ファン30が作動することにより、ヒータ206内の気体が排気孔24、排気溝26及びラジエータ28を介して排気され、ヒータ206内が急速に冷却される。
【0034】
側壁断熱材12及び天井断熱材16は、酸化アルミニウム又は酸化シリコン等から構成されている。
なお、図2において急速冷却機構を有しないヒータ206の天井断熱材16を複数層で形成してもよい。また、図3において下側層18、中間層20、上側層22のうち少なくとも1つ以上をさらに複数層として形成してもよい。
【0035】
このようなヒータ206においては、従来、天井断熱材16にクラックが発生しやすく、このクラックが発展して天井部分が割れることにより天井断熱材の一部が脱落してしまうという問題があった。また、クラックを介して熱が外部に漏れるので、処理室内の温度制御に悪影響を及ぼしたり、熱エネルギーがヒータ外部へ漏れることによるエネルギーの無駄が生じるおそれがあった。
【0036】
即ち、急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材16には、図4(a)に示すように、略中央部から複数にわかれてクラック32が形成される。クラック32に囲まれた天井断熱材16の一部が脱落し、ヒータ内に落下する。また、クラック32を介して予期せぬ位置から熱が逃げることになる。一方、急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16、特に下側層18においては、図4(b)に示すように、排気孔24と周縁とを接続するようにクラック32が複数発生し、急速冷却機構を有しない場合と同様に、クラック32に囲まれた下側層18の一部が脱落し、ヒータ内に落下する。また、クラック32を介して予期せぬ位置から熱が逃げることになる。
【0037】
次に、クラック32が発生するメカニズムについて、特に急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16の下側層18を対象に説明する。
【0038】
基板処理装置に用いられるヒータ206は、処理室内で基板の処理を行うにあたって、例えばローディング工程、アンローディング工程時には400℃、基板処理時には1100℃というように、昇温と降温とを繰り返す。
【0039】
図5は、昇温時における下側層18の温度分布を示す。図6は、昇温時における下側層18の応力分布を示す。
図5に示すように、排気孔24を含む中央部の温度は炉内側からの熱により1100℃程度まで上昇するが、周縁部は室温に近い。周縁部は側壁断熱材が当っているためである。したがって、中央部は温度上昇により熱膨張しようとするが、周縁部はほとんど膨張しない。図6に示すように、このときの膨脹差により周縁部近傍に引張応力が集中する。また、周縁部で、天井断熱材16の自重を支持していることにより、中央部の自重によるモーメント(応力)が周縁部に集中する。これらの応力が下側層18の引張強度を越えるとクラックが周縁部(特に下面部分)に発生する。尚、上方外壁側と炉内側とを比較しても、炉内側からの熱により下側層18の炉内側は1100℃程度まで上昇するが、上方外壁側は、約400〜600℃となり、温度が低い。これにより、応力は少なからず発生するが、周縁部と中央部との温度差の様な急激な温度勾配はないため、発生する応力も少ないものとなる。そのため、天井断熱材16の炉内側と上方外壁側との間には、周縁部にくらべてクラックが発生しにくいが、好ましくは、天井断熱材を複数層で形成し、層間を接着せずにそれぞれの層を自由に伸縮させることにより、炉内側と上方外壁側との間にクラックが発生することを防ぐことができる。
【0040】
図7は、降温時における下側層18の応力の受け方を示す。まず排気孔24から熱せられた雰囲気を排気するため、下側層18の中心部分が一時的に上昇する。次に発熱体への通電がOFFになることにより降温し、下側層18の下面より収縮する。降温開始直後は下側層18の内部は蓄熱しており、膨脹状態のため、内部と外部とに膨脹、収縮の変形量に差が発生する。次に下側層18の下面である初期冷却部分に引張応力が発生して垂直方向のクラックとなる。下側層18の周縁にクラックがすでに発生していた場合は、この引張応力によりクラックが中心に向けて伝播し、ついには排気孔24まで達するようになる。
【0041】
このようなクラックの発生を防止するために、単に天井断熱材16を分割しても、各断熱材を密着させてしまうと、これら断熱材の熱膨張・熱収縮により発生する応力を吸収しきれず、断熱材が欠けたり、割れたりしてしまう。また、天井断熱材16の落下対策として、落下途中で落下物を受け止めるための断熱クロス材からなるセーフティネット(受け網)を設ける場合も考えられる。しかし、セーフティネットは高価であり、網状に形成されているため、落下途中でセーフティネットが天井断熱材16を受け止めたとしても、網目から断熱材のかけらが落下してしまい、このかけらがパーティクルの原因になってしまうし、断熱材が落下してしまうことにより、天井部分の断熱特性に変化が生じてしまう。また、天板部分に急冷用の排気口を設けている場合、セーフティネットが受け止めている断熱材も前記排気口から排気されてしまうという問題がある。
【0042】
したがって、このようなクラックの発生を防止するために、天井断熱材16(下側層18)に複数の応力緩和部を設ける。上述したように、天井断熱材16にクラックが入る要因として、ヒータ206内の温度上昇、下降に伴う熱膨張、収縮による応力発生が考えられ、この応力を緩和してクラックの発生を抑止する。
【0043】
図8は、急速冷却機構を有しない天井断熱材16に応力緩和部34を設けた例を示す。応力緩和部34は、溝(定義については後述)からなり、天井断熱材16を中央部(この実施形態においては天井断熱材16の中心軸)から周縁部に向けて複数設けられている。応力緩和部34は、図8(a)では2つ180度隔てた位置に、図8(b)では4つ90度隔てた位置に、図8(c)では6つ60度隔てた位置に、図8(d)では8つ45度隔てた位置にそれぞれ形成されている。
【0044】
図9は、急速冷却機構を有する天井断熱材16の下側層18に応力緩和部34を設けた例を示す。応力緩和部34は、下側層18を中央部(この実施形態においては排気孔24)から周縁部に向けて複数設けられている。応力緩和部34は、図9(a)では2つ180度隔てた位置に、図9(b)では4つ90度隔てた位置に、図9(c)では6つ60度隔てた位置に、図9(d)では8つ45度隔てた位置にそれぞれ形成されている。
【0045】
このように、応力緩和部34を180度以下の角度をなすようにしたのは、天井断熱材16は、中心側に対して周方向に膨張するが、好ましくは、180度以下に少なくとも一箇所に応力緩和部34がないと、応力緩和部34のない側の応力を緩和できにくいが、180度以下に少なくとも一箇所応力緩和部34があると、全域の膨張を吸収できるからである。また、応力緩和部34間の角度を均一とすることにより、全体として均一に応力を緩和することができる。
【0046】
図10(a)は、天井断熱材16に応力緩和部34として、溝34aで構成した急速冷却機構を有する天井断熱材16を例にして示す。図10(a)において、溝34aは、天井断熱材16を円周方向に分割することなく、且つ上面まで貫通することなく切り欠いたものである。
【0047】
ここで、図3に示した急速冷却機構を有するヒータ206の下側層18に応力緩和部34を設けた場合を例にして説明する。
図3に示すように、天井断熱材16を、例えば下側層18、中間層20及び上側層22に縦分割して形成した場合、天井断熱材16の一部の落下やクラックの発生を防げる。好ましくは、天板断熱材16の下側層18にスリット34bを形成する。尚、スリット34bとは、図10(b)において、天井断熱材16を分割することなく、上面と下面との間を貫通するように切り欠いたものである。これにより、下側層18を一体化することができ、ヒータ206を製造する際の作業性が改善される。より好ましくは、下側層18の下面に上述の溝34aを形成する。これにより、天井断熱材16の上方外壁側からの熱逃げを抑止できる。より好ましくは、下側層18の中心側から途中まで、好ましくは側壁断熱材12の内側面までのS間に形成する。側端部までスリット34b又は溝34aを形成すると、このスリット34b又は溝34aを介してヒータ206内の熱が逃げるのに対し、天井断熱材16の中心側から途中まで34b又は溝34aを形成することにより、熱逃げを防止することができる。これにより、省エネルギー化することができ、周縁部等基板の円周方向での不均一な熱逃げによる温度制御性の悪化、膜厚均一性の悪化を防ぐことができる。尚、スリット34bとして説明したが、下側層18、中間層20及び上側層22を合わせた天井断熱材16全体からみると、スリットは溝と定義することができる。この場合、前述した溝34aとはスリットが層間と連通していることにより層間から熱逃げが起こる点で劣るものの他は同様な効果を奏する。
【0048】
図11は、急速冷却機構を有しないヒータ206の天井断熱材16が側壁断熱材12に載置される載置箇所の変形例である。
天井断熱材16を複数層で形成し、炉内側の層を炉内側層17とする。炉内側層17の天井断熱材16の周縁側に環状の凸部、この凸部に対向する側壁断熱材12に環状の凹部を設ける。これにより、天井断熱材16を側壁断熱材12に嵌合しやすくなる。また、載置箇所からの熱逃げを防止することができる。尚、このような構成の場合、炉内側層の中心から途中まで、好ましくは天井断熱材16の炉内側層17の凸部まで応力緩和部34を形成すると良い。
【0049】
図12は、急速冷却機構を有するヒータ206の天井断熱材16の下側層18が側壁断熱材12に載置される載置箇所の変形例である。
上述と同様に、天井断熱材16の下側層18を複数層で形成し、炉内側の層を炉内側層17とする。上述同様、炉内側層17の下側層18の周縁側に環状の凸部、この凸部に対向する側壁断熱材12に環状の凹部を設けることで、下側層18を側壁断熱材12に嵌合しやすくなり、載置箇所からの熱逃げを防止することができる。さらに、上述同様、炉内側層の中心から途中まで、好ましくは下側層18の炉内側層17の凸部まで応力緩和部34を形成すると良い。
【0050】
さらに応力緩和部34の種々の変形例について説明する。
図13は、第1の変形例を示す。この第1の変形例においては、応力緩和部34の天井断熱材16の下面に開口する角部を面取り処理し、テーパ部38が応力緩和部34の長手方向に沿って形成されている。応力緩和部34の下面に開口する部分が90度の角度のままであれば、角の部分が組立作業中の行為により誤って欠けたり、ヒータ使用中の昇降温による熱衝撃で欠ける危険性がある。しかし、テーパ部38を設けることにより、角度を大きく出来るのでこれらの危険性は低くなる。テーパ部38は面取りだけではなく、丸みを付けることでも同様の効果が得られる。なお、このテーパ部38は、応力緩和部34として、溝34aのみならず応力緩和部34がスリット34b、分割ライン34cのいずれである場合にも設けることができる。また、分割ライン34cとは、図14において、天井断熱材16を複数の分割片36に分割(この例では6個の分割片に分割)したものである。
【0051】
図15は、第2の変形例を示す。この第2の変形例は急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材16に適用されたもので、応力緩和部34は、4分割された分割ライン34cであり、周縁側より中心側の応力緩和部34の幅を大きくしている。この例では、より好ましい態様として、周縁側より中心側(中心軸)に向けて徐々に拡がっている。炉内温度は中心部が最も高くなるので、この部分の隙間を大きく採ることで熱膨張分を吸収することが出来る。応力緩和部34は、好ましくは、溝34aにすると上方外壁側からの熱逃げを抑止できる。尚、第2の変形例は、急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16にも当然適用可能である。この場合、中心軸に排気孔24を設ければよい。
【0052】
図16は、第3の変形例を示す。この第3の変形例は急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16の下側層18に適用されたもので、応力緩和部34は6本のスリット34bであり、周縁部に至らない途中から排気孔24に向けて形成され、周縁側より排気孔24(中心側)の応力緩和部の幅を大きくしている。この例では、より好ましい態様として、周縁部から排気孔24に近づくにつれて徐々に拡がるように形成されている。排気孔24部分の温度が最も高くなるので、この部分の隙間を大きく採ることで熱膨張分を吸収することが出来る。また、周縁部分が繋がり一体構造となっているので、部品点数を少なくすることが出来る。この場合も、第2の変形側と同様、応力緩和部34は、好ましくは溝34aにすると、上方外壁側からの熱逃げを抑止できる。 尚、第3の変形例は、急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材16にも当然適用可能である。この場合、周縁部に至らない途中から中心側(中心軸)に向けて徐々に拡がるように形成すれば良い。
【0053】
図17は、第4の変形例を示す。この第4の変形例は急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材16に適用されたもので、応力緩和部34は4本の溝34aであり、周縁部に至らない途中から中心側に向けて形成され、中心軸に近づくにつれて徐々に拡がるように形成され、かつ、天井断熱材16の下面(内壁)側より上面(外壁)側の溝幅を狭くしている。この例では、より好ましい態様として、断面が三角形状をなし、天井断熱材16の下面に開口している。これにより、より温度の高くなる炉内側に広い隙間がある事で熱膨張分を吸収し、温度の低い内部側は狭くする事で熱逃げを最小限にする事が出来る。尚、上述の断面は、三角形状でなくても、溝底をR面やフラット面にして、天井断熱材16の下面から溝底に近づくにしたがって徐々に応力緩和部の幅を狭くするようにしても良い。
【0054】
図18は、第5の変形例を示す。この第5の変形例は急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材16に適用されたもので、応力緩和部34は4分割された分割ライン34cであり、周縁部から中心側に向けて形成され、中心側に近づくにつれて徐々に拡がるように形成され、かつ、天井断熱材16の下面(内壁)側より上面(外壁)側の溝幅を狭くしている。この例では、より好ましい態様として、断面が三角形状をなし、天井断熱材16の下面側が拡がっている。図18(b)に示すように、分割ライン34cの全体を断面三角形状としてもよいし、図18(c)に示すように、分割ライン34cの上面に至る手前までを断面三角形状とし、残りの部分を直線状に形成してもよい。尚、上述の断面は、三角形状でなくても、溝底をR面やフラット面にして、天井断熱材16の下面から溝底に近づくにしたがって徐々に応力緩和部の幅を狭くするようにしても良い。また、第4、第5の変形例は、周縁部や周縁部に至らない途中から中心側に向けて徐々に拡がるように形成した方が、応力が緩和しやすい点ですぐれるものの、周縁部や周縁部に至らない途中から中心側に向けて徐々に拡がるように形成しなくても良い。さらに、第4、第5の変形例は、急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16にも当然適用可能である。この場合、中心軸に排気孔24を設ければ良い。
【0055】
図19は、第6の変形例を示す。第6の変形例は、急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16に適用されたもので、分割ライン34cに応力緩和部34として溝34aまたはスリット34bの少なくとも1つ以上を混合したものである。天井断熱材16が分割されることにより、製作しやすくなる。また、応力緩和部34により、応力を緩和することができる。
【0056】
図20は、第7の変形例を示す。第7の変形例は、急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16に適用されたもので、応力緩和部34として天井断熱材16の中心側から周縁側に向かって設けられた溝34aまたはスリット34bの少なくとも1つ以上の長さを異ならせたものである。加熱装置内は熱輻射・熱伝導・熱対流作用により、天井断熱材16の中心側になるに従い温度が高くなるため、中心側に近くなるに従い断熱材の熱膨張が大きくなる。また、スリットまたは溝の数が多くなれば多い分、熱逃げが起こることになる。上記のように構成することにより、熱膨張量に応じた緩和量、熱逃げ量にすることができる。尚、天井断熱材16の中心側から周縁側に向かって設けられた溝34aまたはスリット34bの少なくとも1つ以上の長さを異ならせるに限らず、好ましくは、中心側より周縁側の応力緩和部34が形成されている表面積を小さく形成すると良い。
【0057】
図21は、第8の変形例を示す。第8の変形例は、急速冷却機構を有するヒータの天井断熱材16に適用されたもので、応力緩和部34として溝34aまたはスリット34bの形態を天井断熱材16の中心側から周縁側に向かって設けた後、中心側と周縁側との間で周方向に延在するようにしたものである。このように構成すると、溝34aまたはスリット34bの中心側から周縁側に向かって設けられた部分の延長線上に応力が集中するような場合であっても、中心側と周縁側との間で周方向に延在する部分に前記応力を分散することができ、亀裂が中心側と周縁側との間で周方向に延在する部分で起こるのを防ぐことができる。
【0058】
図22は、第9の変形例を示す。第9の変形例は、天井断熱材16の応力緩和用の溝34aに対向する反対面に出っ張り(凸部)40を設けたものである。これにより、天井断熱材16の強度低下を防止することができるとともに、溝部分の断熱性低下を防止することができる。
【0059】
第6乃至第9の変形例では、急速冷却機構を有しないヒータの天井断熱材16にも当然適用可能である。この場合、排気孔24に代えて、中心軸を有するようにすれば良い。
【0060】
なお、その他の変形例として、分割ライン34cに沿って、溝34a又はスリット34bを設けるようにしても良い。具体的には、突き合わさる各断熱体の側面(突き当て面)に溝34aまたはスリット34bを設ける。これにより、断熱体上方・断熱体側方(加熱装置側方)からの放熱を防止できるとともに、熱膨張・熱収縮により発生する応力を緩和して断熱体が欠けたり、割れたりすることを抑制できる。尚、溝34aは、突き合せられる各断熱体の側面(突き当て面)にそれぞれ設けて形成するようにしても良いし、一方の断熱体の側面(突き当て面)のみに設けても良い。溝34aを天井断熱材16の内壁面に対して垂直に設ける場合のみならず、内壁面に対して傾斜して設けても良い。さらに好ましくは、溝34aを近傍の発熱体14からの発熱線の進行方向と異なる方向に向けて傾斜するように設けると良い。このように構成すると、さらに放熱を防ぐことができる。尚、加熱装置の側壁断熱体は、環状に限らず、角状であっても良い。
【0061】
本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を特徴とするが、さらに次に記載した事項も含まれる。
(1)基板を処理する反応容器と、該反応容器の外側を囲う、少なくとも、側壁断熱体と、該側壁断熱体に載置され、応力緩和用の溝が複数設けられている天井断熱体と、前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、を有する加熱装置とを備える基板処理装置。
(2)前記溝は、前記天井断熱体の中心側から周縁側に向かって設けられている(1)記載の基板処理装置。
(3)前記溝は、前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成されている(1)又は(2)記載の基板処理装置。
(4)反応容器の外側を囲う、少なくとも、側壁断熱体と、該側壁断熱体に載置される天井断熱体に複数設けられている溝が前記天井断熱体に発生する応力を緩和しつつ前記発熱体が前記反応容器内の基板を加熱処理する半導体装置の製造方法。
(5)基板処理装置に用いられる加熱装置における側壁断熱体に載置される天井断熱体であって、応力緩和用の溝が複数設けられている天井断熱体。
(6)前記溝は、前記天井断熱体の周縁側の幅より中心側の幅が大きい(2)記載の基板処理装置。
加熱装置内は熱輻射・熱伝導・熱対流作用により、天井断熱体の周縁側より中心側のほうの温度が高くなるため、周縁側より中心側のほうが断熱体の熱膨張が大きくなる。また、溝部分が大きくなると、その部分から少なからず熱逃げが起こることになる。上記のように構成することにより、熱膨張量に応じた緩和量、熱逃げ量にすることができる。
(7)前記溝は、前記天井断熱体の周縁側から中心側になるに従い幅が大きくなる(2)記載の基板処理装置。
加熱装置内は熱輻射・熱伝導・熱対流作用により、天井断熱体の中心側になるに従い温度が高くなるため、中心側に近くなるに従い断熱体の熱膨張が大きくなる。また、溝部分が大きくなると、その部分から少なからず熱逃げが起こることになる。上記のように構成することにより、熱膨張量に応じた緩和量、熱逃げ量にすることができる。
(8)前記溝は、前記天井断熱体の内壁側の幅より前記天井断熱体の外壁側の幅が狭くなっている(1)又は(2)記載の基板処理装置。
加熱装置内は熱輻射・熱伝導・熱対流作用により、天井断熱体の内壁側の方が温度が高くなるため、内壁側の方が断熱体の熱膨張が大きくなる。上記のように構成することにより、熱膨張量に応じた緩和量、熱逃げ量にすることができる。
(9)前記溝は、前記天井断熱体の内壁側から前記天井断熱体の外壁側になるに従い幅が狭くなっている(1)又は(2)記載の基板処理装置。
加熱装置内は熱輻射・熱伝導・熱対流作用により、天井断熱体の内壁側になるに従い温度が高くなるため、内壁側に近くなるに従い断熱体の熱膨張が大きくなる。上記のように構成することにより、熱膨張量に応じた緩和量、熱逃げ量にすることができる。
(10)前記溝を形成する側壁は、前記天井断熱体の内側面が面取り処理されている(1)記載の基板処理装置。
(11)前記天井断熱体は、複数に分割されており、前記溝は、前記分割された箇所に設けられている(1)又は(2)記載の基板処理装置。
(12)前記溝は、複数設けられ、其々180度以下の角度を成して設けられている(2)記載の半導体製造装置。
中心側に対して周方向に膨張するが、好ましくは、180度以下に少なくとも一箇所に溝がないと、溝の内側の応力を緩和されにくいが、180度以下に少なくとも一箇所溝があると、全域の膨張を吸収できる。
(13)前記溝が、少なくとも3箇所形成されており、それぞれの前記溝が90度より大きく180度未満の角度を成して放射状に設けられている(2)記載の半導体製造装置。
(14)前記天板断熱体の中心側には、ヒータユニット内部の雰囲気を排気する排気孔が設けられている(1)記載の半導体製造装置。
前記排気孔が設けられる場合、処理室を冷却する際に排気孔から熱せられた雰囲気を排気するため、天井断熱体の中心部が特に温度が上がりやすく、熱膨張量が顕著に大きくなってしまうが、上記(1)のように構成すると天井断熱体の一部の落下やクラックの発生を防げる。
(15)前記天井断熱体は、複数に分割されており、前記溝は、前記分割された箇所とは別の箇所に設けられている(1)又は(2)記載の基板処理装置。
(16)前記天井断熱体には、スリットが設けられており、前記溝は、前記スリットとは、別の箇所に設けられている(1)又は(2)記載の基板処理装置。
(17)前記溝は2種類以上の長さで設けられている(2)記載の基板処理装置。
(18)前記天井断熱体には、前記溝が設けられている箇所の上端側(反対側)に凸部が設けられている(1)記載の基板処理装置。
(19)基板処理装置に用いられる加熱装置であって、側壁断熱体と該側壁断熱体に載置され内側面に応力緩和用の溝が複数設けられる天井断熱体とを備える加熱装置。
(20)基板を処理する反応容器と、該反応容器の外周を囲う、少なくとも側壁断熱体と、該側壁に載置され、周縁側の幅より中心側の幅を広くした応力緩和部が設けられる天井断熱体と、前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、で構成される加熱装置とを備える基板処理装置。
(21)基板を処理する反応容器と、該反応容器の外周を囲う、少なくとも側壁断熱体と該側壁に載置され、内壁側の幅より外壁側の幅を狭くした応力緩和部が設けられる天井断熱体と、前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、で構成される加熱装置とを備える基板処理装置。
(22)前記面取り処理は、テーパ状もしくは曲面形状に処理されている前記(10)の基板処理装置。
(23)基板を処理する反応容器の外周に設けられる加熱装置の、側壁断熱体に載置される天井断熱体の内側面に複数設けられる応力緩和用の溝が発生する応力を緩和しつつ前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体が前記反応容器内の基板を加熱処理する半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0062】
202 基板処理装置
206 加熱装置(ヒータ)
12 側壁断熱材
14 発熱体
16 天井断熱材
18 下側層
20 中間層
22 上側層
24 排気孔
32 クラック
34 応力緩和部
34a 溝
34b スリット
34c 分割ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する反応容器と、
該反応容器の外側を囲う、少なくとも、側壁断熱体と、該側壁断熱体に載置される天井断熱体と、前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、を有する加熱装置とを備え、
前記天井断熱体には、該天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が複数設けられている基板処理装置。
【請求項2】
反応容器の外側を囲う、少なくとも、側壁断熱体と、該側壁断熱体に載置される天井断熱体と、を有する半導体装置の製造方法であって、前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が前記天井断熱体に発生する応力を緩和しつつ前記側壁断熱体の内側に設けられた発熱体が前記反応容器内の基板を加熱処理する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板処理装置に用いられる加熱装置における側壁断熱体に載置される天井断熱体であって、該天井断熱体の中心側から周縁側に向かって前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が複数設けられている天井断熱体。
【請求項4】
側壁断熱体と、
前記側壁断熱体の内側に設けられる発熱体と、
前記側壁断熱体に載置される天井断熱体であって、該天井断熱体の中心側から周縁側に向かって前記天井断熱体の中心側から周縁部に至る途中まで形成された溝が複数設けられている天井断熱体と、を備える加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−182489(P2012−182489A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120457(P2012−120457)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2008−35889(P2008−35889)の分割
【原出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】